IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワイテックの特許一覧 ▶ 株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナルの特許一覧 ▶ 株式会社キーレックスの特許一覧

<>
  • 特開-スパッタ付着防止具 図1
  • 特開-スパッタ付着防止具 図2
  • 特開-スパッタ付着防止具 図3
  • 特開-スパッタ付着防止具 図4
  • 特開-スパッタ付着防止具 図5
  • 特開-スパッタ付着防止具 図6A
  • 特開-スパッタ付着防止具 図6B
  • 特開-スパッタ付着防止具 図7
  • 特開-スパッタ付着防止具 図8
  • 特開-スパッタ付着防止具 図9
  • 特開-スパッタ付着防止具 図10
  • 特開-スパッタ付着防止具 図11
  • 特開-スパッタ付着防止具 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185335
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】スパッタ付着防止具
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
B23K9/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092948
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(71)【出願人】
【識別番号】520200584
【氏名又は名称】株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナル
(71)【出願人】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿谷 直紀
(72)【発明者】
【氏名】花田 優介
(57)【要約】
【課題】溶接時のスパッタがナットの内面に付着するのを抑制してスパッタの除去作業を不要にする。
【解決手段】ナット100に挿入されるピン状部材1の内部には、気体導入孔2a、3dが形成されている。ピン状部材1には、上流端が気体導入孔3dに連通する一方、下流端がピン状部材1の外面に開口する気体吐出孔31が形成されている。気体吐出孔31の下流端は、ナット100におけるネジ溝100aが形成されている部位よりも外方に開口するとともに、開口の向きが気体をナット100の端面に向けて吐出させるように設定されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接時に飛散するスパッタがナットのネジ溝に付着するのを抑制するスパッタ付着防止具において、
前記ナットに対して当該ナットの中心線方向一方から挿入されるピン状部材を備え、
前記ピン状部材の挿入方向先端部は前記ナットへの挿入状態で当該ナットの中心線方向他方の端面から突出するように形成され、
前記ピン状部材の内部には、挿入方向基端部に開口し、挿入方向先端部へ向けて延びる気体導入孔が形成され、
前記ピン状部材には、上流端が前記気体導入孔に連通する一方、下流端が当該ピン状部材の外面に開口する気体吐出孔が形成され、
前記気体吐出孔の下流端は、前記ピン状部材の前記ナットへの挿入状態で、前記ナットにおける前記ネジ溝が形成されている部位よりも中心線方向他方に開口するとともに、当該開口の向きが気体を前記ナットの他方の端面に向けて吐出させるように設定されているスパッタ付着防止具。
【請求項2】
請求項1に記載のスパッタ付着防止具において、
複数の前記気体吐出孔が前記ピン状部材の周方向に互いに間隔をあけて形成されているスパッタ付着防止具。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスパッタ付着防止具において、
前記気体吐出孔の下流端は、当該気体吐出孔の上流端よりも前記ピン状部材の挿入方向先端部寄りに位置付けられているスパッタ付着防止具。
【請求項4】
請求項1または2に記載のスパッタ付着防止具において、
前記気体吐出孔の下流端は、当該気体吐出孔の上流端よりも前記ピン状部材の挿入方向基端部寄りに位置付けられているスパッタ付着防止具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のスパッタ付着防止具において、
前記ピン状部材には、上流端が前記気体導入孔に連通する一方、下流端が当該ピン状部材の外面において前記ナットの前記ネジ溝と対向する部位に開口する補助吐出孔が形成されているスパッタ付着防止具。
【請求項6】
溶接時に飛散するスパッタがナットのネジ溝に付着するのを抑制するスパッタ付着防止具において、
前記ナットに対して当該ナットの中心線方向一方から挿入されるピン状部材を備え、
前記ピン状部材の挿入方向先端部は前記ナットへの挿入状態で当該ナットの中心線方向他方の端面から突出するように形成され、
前記ピン状部材の内部には、挿入方向基端部に開口し、挿入方向先端部へ向けて延びる気体導入孔が形成され、
前記ピン状部材には、上流端が前記気体導入孔に連通する一方、下流端が当該ピン状部材の外面において前記ネジ溝と対向するように開口する気体吐出孔が形成され、
前記気体吐出孔の上流端と、当該気体吐出孔の下流端とは、前記ピン状部材の周方向の位置が異なっているスパッタ付着防止具。
【請求項7】
請求項6に記載のスパッタ付着防止具において、
前記気体吐出孔の下流端は、前記ナットの内面における中心線方向中央よりも他方寄りの部位と対向するように位置付けられているスパッタ付着防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接作業中に周囲に飛散するスパッタが溶接箇所以外の部分に付着するのを防止するスパッタ付着防止具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼材等からなる部材を溶接する際には、スパッタが溶接箇所の周囲に飛散して溶接箇所以外の部分に付着する。例えば、ネジ孔を有する部材を溶接する際には、スパッタがネジ孔の内面や中心線方向の端部に位置する傾斜面に付着することがある。こうなるとネジの螺合不良が起こってしまうので、溶接工程の後、ネジ孔の内面や上記傾斜面に付着したスパッタを除去するためにネジさらいを行う必要がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1、2に開示されているようなスパッタ付着防止具が利用されることがある。特許文献1のスパッタ付着防止具は、ネジ孔に差し込まれるピン状部材と、ピン状部材を軸方向に変位可能に支持するバネとを備えている。また、特許文献2のスパッタ付着防止具は、ネジ孔に差し込まれる中空状のガイドピンを備えている。このガイドピンには、ガス吐出孔がネジ孔の中心線方向中央部に位置するネジ溝に対して径方向に正対するように設けられている。溶接時には、ガイドピンの内部に供給されたガスがガス吐出孔からネジ溝へ向けて噴出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-202480号公報
【特許文献2】特開2021-013953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のピン状部材は、多少の芯ずれを許容しながら、ネジ孔へ容易に差し込むことができるように先細形状をなすように形成されるとともに、ネジ孔よりも小径に形成されている。このため、ピン状部材をネジ孔に差し込んだ状態で、ピン状部材の外周面とネジ孔との間に隙間ができてしまい、この隙間へスパッタが侵入してネジ孔の内面や上記傾斜面に付着することがある。
【0006】
また、特許文献2のガス吐出孔は、ネジ溝に対して正対するように開口しているので、噴出したガスはネジ溝に衝突することになる。ガス吐出孔とネジ溝との間は狭く、ガス吐出孔からのガスの吐出を邪魔するようにネジ溝が位置しているので、ガスの吐出量を多くすることは難しく、スパッタの付着抑制効果が低くなるおそれがある。また、ガス吐出孔とネジ溝との間が狭いということは、ガスを勢いよく吐出させたとしても、ネジ溝にすぐに衝突して勢いが弱まってしまい、このことによっても、スパッタの付着抑制効果が低くなるおそれがある。さらに、ネジ孔の中心線方向中央部に位置するネジ溝に向けてガスが吐出されるので、吐出されたガスはネジ孔の中心線方向中央部からナットの両方の端面へ向かってそれぞれ流れることになる。このガスの流路は上述したようにピン状部材とネジ溝との間で狭くなっていることでガスの流通抵抗が大きくなってしまい、しかも、ネジ孔の中心線方向両側へ分散することでナットの各開口近傍の流速は低下しやすい。従って、スパッタの付着抑制効果が低くなるおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶接時のスパッタがナットの内面や上記傾斜面に付着するのを抑制してスパッタの除去作業を不要にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面では、溶接時に飛散するスパッタがナットのネジ溝に付着するのを抑制するスパッタ付着防止具を前提とし、スパッタ付着防止具は、前記ナットに対して当該ナットの中心線方向一方から挿入されるピン状部材を備えている。前記ピン状部材の挿入方向先端部は前記ナットへの挿入状態で当該ナットの中心線方向他方の端面から突出するように形成され、前記ピン状部材の内部には、挿入方向基端部に開口し、挿入方向先端部へ向けて延びる気体導入孔が形成されている。前記ピン状部材には、上流端が前記気体導入孔に連通する一方、下流端が当該ピン状部材の外面に開口する気体吐出孔が形成されている。前記気体吐出孔の下流端は、前記ピン状部材の前記ナットへの挿入状態で、前記ナットにおける前記ネジ溝が形成されている部位よりも中心線方向他方に開口するとともに、当該開口の向きが気体を前記ナットの他方の端面に向けて吐出させるように設定されている。
【0009】
この構成によれば、ピン状部材をナットへ中心線方向一方から挿入すると、当該ピン状部材の先端部がナットの中心線方向他方から突出する。ピン状部材が挿入状態にあるときに気体を気体導入孔へ導入すると、気体導入孔に導入された気体が気体吐出孔の下流端から吐出される。このとき、気体吐出孔の下流端は、ナットにおけるネジ溝が形成されている部位よりも中心線方向他方に開口しているので、吐出された気体がネジ溝に衝突しにくくなり、これにより、気体の吐出量を多くすることが可能になるとともに、気体の勢いを強く保つことが可能になる。吐出量が多くかつ勢いの強い気体がナットの他方の端面に向けて流れるので、溶接時にナットの周囲に飛散するスパッタがナットの内部に入りにくくなり、よって、スパッタがナットのネジ溝に付着しにくくなる。
【0010】
本開示の第2の側面では、複数の前記気体吐出孔が前記ピン状部材の周方向に互いに間隔をあけて形成されているものである。
【0011】
この構成によれば、ピン状部材の外面における複数箇所から吐出した気体がナットの端面に向けて流れるので、スパッタの付着抑制効果がより一層高まる。
【0012】
本開示の第3の側面では、前記気体吐出孔の下流端は、当該気体吐出孔の上流端よりも前記ピン状部材の挿入方向先端部寄りに位置付けられているものである。
【0013】
この構成によれば、気体吐出孔から吐出された気体の流れがピン状部材の挿入方向先端部方向へ向くことになる。これにより、ナットから遠ざかる方向の気流を発生させることができるので、ナットに向かってきたスパッタを気流によって吹き飛ばすことができる。
【0014】
本開示の第4の側面では、前記気体吐出孔の下流端は、当該気体吐出孔の上流端よりも前記ピン状部材の挿入方向基端部寄りに位置付けられているものである。
【0015】
この構成によれば、気体吐出孔から吐出された気体の流れがナットの他方の端面へ向かう流れとなるので、ナットの他方の端面に向かってきたスパッタを気流によって吹き飛ばすことができる。
【0016】
本開示の第5の側面では、前記ピン状部材には、上流端が前記気体導入孔に連通する一方、下流端が当該ピン状部材の外面において前記ナットの前記ネジ溝と対向する部位に開口する補助吐出孔が形成されているものである。
【0017】
この構成によれば、気体導入孔に導入された気体が補助吐出孔から吐出すると、ネジ溝へ衝突する。これにより、ネジ溝に付着するスパッタをより一層少なくすることができる。
【0018】
本開示の第6の側面では、前記ピン状部材には、上流端が前記気体導入孔に連通する一方、下流端が当該ピン状部材の外面において前記ネジ溝と対向するように開口する気体吐出孔が形成されており、前記気体吐出孔の上流端と、当該気体吐出孔の下流端とは、前記ピン状部材の周方向の位置が異なっているものである。
【0019】
この構成によれば、ピン状部材をナットへ中心線方向一方から挿入すると、当該ピン状部材の先端部がナットの中心線方向他方から突出する。ピン状部材が挿入状態にあるときに気体を気体導入孔へ導入すると、気体導入孔に導入された気体が気体吐出孔の下流端から吐出される。このとき、気体吐出孔の上流端と下流端とは、ピン状部材の周方向の位置が異なっているので、気体吐出孔から吐出された気体の流れは、ネジ溝に正対することなく、ネジ溝に対して斜めに当たることになる。これにより、従来例のようなネジ溝に正対する流れに比べて気体が流通し易くなる。そして、ネジ溝は螺旋状をなしているので、ネジ溝に対して斜めに当たった気体はネジ溝に沿う流れを形成し易く、よって、気体がネジ溝に沿って流れてナットの端面から流出し、この流出時の気体の流速が高くなるので、溶接時にナットの周囲に飛散するスパッタがナットの内部に入りにくくなり、よって、スパッタがナットのネジ溝に付着しにくくなる。
【0020】
本開示の第7の側面では、前記気体吐出孔の下流端は、前記ナットの内面における中心線方向中央よりも他方寄りの部位と対向するように位置付けられているものである。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、吐出量が多くかつ勢いの強い気体をナットの端面に向けて流すことができるので、溶接時のスパッタがナットの内面や上記傾斜面に付着するのを抑制してスパッタの除去作業を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態1に係るスパッタ付着防止具の側面図である。
図2】上記スパッタ付着防止具の断面図である。
図3】上記スパッタ付着防止具の平面図である。
図4】ナット及び板材の断面図である。
図5】上記スパッタ付着防止具をナットに挿入した状態を示す断面図である。
図6A】本発明の実施形態2に係る図5相当図である。
図6B】実施形態2に係る図3相当図である。
図7】実施形態3に係る図5相当図である。
図8】実施形態4に係る図5相当図である。
図9】スパッタ付着試験装置を示す斜視図である。
図10】比較例に係る図5相当図である。
図11】スパッタ付着試験の結果を示すグラフである。
図12】実施形態5に係る図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
(実施形態1)
図1図3は、本発明の実施形態1に係るスパッタ付着防止具Aを示すものである。スパッタ付着防止具Aは、図4に示すような金属製のナット100に挿入された状態(挿入状態を図5に示す)で使用される器具であり、溶接時に飛散するスパッタがナット100のネジ溝100aに付着するのを抑制するためのものである。スパッタ付着防止具Aは、例えば産業用ロボット(図示せず)のアーム部に取り付けておき、ロボットによって所望の箇所へ移動させて使用することができる。または、溶接工程の組付け治具上でスライド機構等によりスパッタ付着防止具Aをナット100に抜き差しして使用することもできる。ナット100が複数ある場合には、複数のスパッタ付着防止具Aを同時に使用することができる。また、スパッタ付着防止具Aを、あるナット100で使用した後、別のナット100に使用することもできる。
【0025】
スパッタ付着防止具Aの構造を説明する前に、ナット100及び板材101について説明する。ナット100は、例えば六角ナット等であり、フランジ付きであってもよいし、フランジ無しであってもよい。ナット100の内面にネジ溝100aが形成されている。言い換えると、ナット100の内面(ネジ孔の内面)は、ネジ溝100aで構成されている。
【0026】
この実施形態の説明では、図4に示すように、ナット100の上方の端面を符号100bで示し、ナット100の下方の端面を符号100cで示す。ナット100の中心線方向一方を図4における下方とし、ナット100の中心線方向他方を図4における上方とする。従って、下方の端面100cが中心線方向一方の端面となり、上方の端面100bが中心線方向他方の端面となるが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、スパッタ付着防止具Aを使用する際のナット100の向きを限定するものではない。ナット100は、その中心線が水平方向に向く姿勢で配置されていてもよいし、傾斜する姿勢で配置されていてもよい。
【0027】
ナット100の中心線方向他方の端面100b及び中心線方向一方の端面100cにはそれぞれネジ孔が開口している。ナット100の中心線方向他方の端面100bにおけるネジ孔の開口周りは、径方向内方へ行くほど下(中心線方向一方)に位置するように傾斜した傾斜面100dで構成されている。この傾斜面100dには、ネジ溝100aが形成されていない。
【0028】
板材101は、金属製であり、貫通孔101aを有している。貫通孔101aは円形であり、ナット100のネジ孔の径(内径)よりも大きく、ナット100の外径よりも小さな径を有している。ナット100は板材101に対して、当該ナット100の中心線が貫通孔101aの中心と一致するように配置された状態で溶接されている。溶接時には、ナット100の中心線方向一方の端面100cを板材101に当接させた状態で溶接する。
【0029】
板材101の形状や大きさは任意に設定することができる。例えば板材101が自動車の部品であってもよく、この場合、板材101は鋼板等で構成される。板材101は、例えばプレス成形品であってもよい。
【0030】
次に、図1図3図5に基づいてスパッタ付着防止具Aの構造について説明する。スパッタ付着防止具Aは、ナット100に対して当該ナット100の中心線方向一方から挿入されるピン状部材1と、配管4とを備えている。この実施形態の説明では、スパッタ付着防止具Aのピン状部材1の基端側を図1等における下側とし、ピン状部材1の先端側を図1等における上側とするが、スパッタ付着防止具Aの向きは図示した向きに限られるものではなく、例えば、上下が反転した姿勢、傾斜した姿勢、水平方向に延びる姿勢等で使用することもできる。つまり、使用時におけるスパッタ付着防止具Aの姿勢は、ナット100の姿勢に対応させればよい。
【0031】
図5に示すように、ピン状部材1の中心線方向の長さは、ナット100の中心線方向の寸法と、板材101の厚みとを加えた長さよりも長く設定されている。これにより、ピン状部材1をナット100及び板材101の貫通孔101aに挿入した状態で、ピン状部材1の挿入方向先端部はナット100の中心線方向他方の端面100bから突出することになる。ピン状部材1の挿入方向は、当該ピン状部材1の中心線方向と一致している。
【0032】
図2に示すように、ピン状部材1は、基端側部材2と先端側部材3とを備えている。基端側部材2及び先端側部材3は、金属製であり、基端側部材2及び先端側部材3の近傍で溶接が行われた際の熱によって溶けたり、容易に変形しないようになっている。基端側部材2は、全体として上下方向に延びる中心線を有する円筒状をなしており、一体成形品で構成されている。基端側部材2には、上流側気体導入孔2aが中心線方向に貫通するように形成されている。上流側気体導入孔2aの中心線方向に直交する方向の断面は、略円形に形成されているが、これに限らず、多角形状であってもよいし、長円形状であってもよい。基端側部材2の中心線は、ピン状部材1の中心線と一致している。ピン状部材1は、2部品で構成することなく、1部品で構成されていてもよいし、3部品以上で構成されていてもよい。
【0033】
上流側気体導入孔2aの下流端は、基端側部材2の基端面(下端面)2bに開口しており、略円形である。上流側気体導入孔2aの下流端の開口には、図1に示す配管4の下流端が接続されている。配管4は、例えば可撓性を有するホース等で構成されており、所定圧に調整された空気(気体の一例)をピン状部材1の内部へ供給するための部材である。この配管4の上流端は、例えば工場エアの配管やコンプレッサの吐出側等に接続することができる。配管4には、工場エアの圧力を低下させずに導入してもよいし、工場エアの圧力を低下させた状態で導入してもよい。
【0034】
基端側部材2の中心線方向中央よりも先端側の所定領域には、当該領域よりも基端側に比べて小径に形成された小径部2cが形成されている。小径部2cの外面は、雄ネジ部で構成されている。基端側部材2が小径部2cを有していることで、基端側部材2の外面には段差ができることになる。尚、上流側気体導入孔2aの中心線と直交する方向の断面形状は、中心線方向一端部から他端部まで同一形状とされているが、途中で変化していてもよい。
【0035】
先端側部材3は、全体として上下方向に延びる中心線を有する円柱状をなしており、一体成形品で構成されている。先端側部材3の中心線もピン状部材1の中心線と一致している。先端側部材3の先端部3aは、基端部に比べて細くなっており、先端側部材3の中心線方向に直交する方向の断面形状は、中心線方向中央部から先端部3aに向かって徐々に小さくなっている。先端側部材3の基端面3bは、中心線に対して直交する方向に延びており、基端側部材2の外面に形成された段部に当接するようになっている。先端側部材3には、下流側気体導入孔3dが基端面3bに開口して先端側へ向けて延びるように形成されている。下流側気体導入孔3dの基端側の内面には、基端側部材2の小径部2cの外面で構成された雄ネジ部に螺合する雌ネジ部3cが形成されている。基端側部材2の小径部2cを先端側部材3の下流側気体導入孔3dに差し込んでネジの螺合方向に回転させることにより、基端側部材2を先端側部材3に固定することができる。つまり、先端側部材3が基端側部材2に着脱可能に取り付けられているので、例えば先端側部材3のみ新品に交換することが可能である。基端側部材2の先端側部材3への固定構造は、ネジによる構造でなくてもよく、例えば圧入構造等であってもよい。
【0036】
下流側気体導入孔3dは、先端側部材3の中心線方向中央部近傍まで延びており、下流側気体導入孔3dの下流端部は、小径部2cよりもピン状部材1の先端部寄りに位置している。従って、下流側気体導入孔3dの下流端部と、小径部2cの先端部とは、ピン状部材1の中心線方向に離れている。上流側気体導入孔2aと下流側気体導入孔3dとが互いに連通している。上流側気体導入孔2aと下流側気体導入孔3dとは、ピン状部材1の内部に形成されており、ピン状部材1の挿入方向基端部に開口するとともに、挿入方向先端部へ向けて延びる気体導入孔を形成するものである。
【0037】
下流側気体導入孔3dの中心線に直交する方向の断面形状は略円形とされている。下流側気体導入孔3dには、小径部2cが途中まで差し込まれた状態になっているので、下流側気体導入孔3dにおける小径部2cよりも下流側の断面積は小径部2cの断面積よりも広くなる。
【0038】
先端側部材3には、複数の気体吐出孔31が形成されている。この実施形態では、図3に示すように、気体吐出孔31が6つ形成されている場合について説明するが、気体吐出孔31の数は6つに限られるものではなく、5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。6つの気体吐出孔31は、ピン状部材1の周方向に互いに間隔をあけて形成されており、気体吐出孔31の間隔は等間隔が好ましいが、不等間隔であってもよい。気体吐出孔31が複数形成されている場合、それらの長さ及び径は同一にすることができるが、異なっていてもよい。6つの気体吐出孔31は、先端側部材3の中心線を中心として放射状に延びている。
【0039】
各気体吐出孔31の上流端は下流側気体導入孔3dに連通する一方、各気体吐出孔31の下流端は先端側部材3の外面に開口している。各気体吐出孔31の上流端は、下流側気体導入孔3dの内面に開口しており、各気体吐出孔31の上流端の開口が下流側気体導入孔3dに接続されている。これにより、下流側気体導入孔3dに導入された空気が各気体吐出孔31へ流入可能になる。
【0040】
図5に示すように、各気体吐出孔31の下流端は、ピン状部材1のナット100への挿入状態で、ナット100におけるネジ溝100aが形成されている部位よりも中心線方向他方に開口するように、当該下流端の中心線方向の位置が設定されている。さらに、各気体吐出孔31の下流端の開口の向きは、空気をナット100の端面100bに向けて吐出させるように設定されている。具体的には、ピン状部材1をナット100へ所定位置まで挿入すると、各気体吐出孔31の下流端の開口は、ナット100のネジ溝100aの上端部よりも上に位置付けられており、当該ナット100の端面100bの一部を構成している傾斜面100dに対して径方向内方から対向するように配置される。各気体吐出孔31の下流端の開口が傾斜面100dに対向するように配置されているということは、吐出された空気が傾斜面100dに向けて流れるということであり、そのような空気の流れとなるように各気体吐出孔31の下流端の開口の位置及び向きが設定されている。また、各気体吐出孔31の下流端の開口と、傾斜面100dとが対向しているが、傾斜面100dが上側へ行くほど各気体吐出孔31の下流端から離れる方向に傾斜しているので、各気体吐出孔31から吐出される空気の流れは傾斜面100dに対して正対することはなく、上方へ向けて流れ易くなる。
【0041】
さらに、各気体吐出孔31の下流端は、当該気体吐出孔31の上流端よりもピン状部材1の挿入方向先端部寄りに位置付けられている。つまり、各気体吐出孔31は先端側部材3を径方向に貫通する貫通孔で構成されていることから、所定の長さを有している。各気体吐出孔31の下流端が上流端よりもピン状部材1の先端部寄りに位置付けられていることで、各気体吐出孔31がピン状部材1の中心線に対して径方向外側へ行くほどピン状部材1の先端部に近づくように傾斜することになる。ピン状部材1の中心線に直交する仮想の直交面を想定した時、この直交面と、気体吐出孔31の延びる方向とのなす角度は、25゜以上40゜以下の範囲で設定することができる。この実施形態では、上記直交面と、気体吐出孔31の延びる方向とのなす角度が30゜に設定されている。
【0042】
(スパッタ付着防止具Aの使用方法)
次に、上記のように構成されたスパッタ付着防止具Aの使用方法について説明する。図5に示すように、まず、ピン状部材1をナット100へ中心線方向一方から挿入する。挿入すると、ピン状部材1の先端部3aがナット100の中心線方向他方から突出する。ピン状部材1が挿入状態にあるときに空気を配管4から基端側部材2の上流側気体導入孔2aへ導入すると、先端側部材3の下流側気体導入孔3dを流通する。下流側気体導入孔3dを流通した空気は、各気体吐出孔31に流入し、各気体吐出孔31の下流端の開口から吐出する。
【0043】
このとき、各気体吐出孔31の下流端は、ナット100におけるネジ溝100aが形成されている部位よりも外方に位置する傾斜面100dに開口しているので、吐出された空気がネジ溝100aに衝突しにくくなり、これにより、空気の吐出量を多くすることが可能になるとともに、空気の勢いを強く保つことが可能になる。この吐出量が多くかつ勢いの強い空気がナット100の他方の端面100bに向けて流れるので、溶接時にナット100の周囲に飛散するスパッタがナット100の内部、即ちネジ溝100aに入りにくくなり、よって、スパッタがナット100のネジ溝100aに付着しにくくなる。尚、配管4から供給する気体は、空気の他に、例えば窒素や二酸化炭素等の気体であってもよい。
【0044】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係るスパッタ付着防止具Aによれば、各気体吐出孔31から吐出する空気の流れを利用することで、溶接時のスパッタがナット100のネジ溝100aに付着するのを抑制してスパッタの除去作業を不要にすることができる。
【0045】
(実施形態2)
図6A及び図6Bは、本発明の実施形態2に係るスパッタ付着防止具Aを示すものである。実施形態2では、気体吐出孔32が実施形態1の気体吐出孔31とは異なっている。他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0046】
すなわち、実施形態2では、気体吐出孔32の下流端がピン状部材1の外面においてナット100のネジ溝100aと対向するように開口している。具体的には、気体吐出孔32の下流端は、ナット100の内面における中心線方向中央よりも他方寄りの部位と対向しており、傾斜面100dよりも下に位置付けられている。
【0047】
気体吐出孔32の上流端と、気体吐出孔32の下流端とは、ピン状部材1の周方向の位置が異なっている。これにより、気体吐出孔32は、ピン状部材1の半径方向に延びる仮想線に対して傾斜することになる。また、下流側気体導入孔3dの断面形状が円であり、この円の接線方向に複数の気体吐出孔32が延びている。
【0048】
この実施形態2では、ピン状部材1がナット100へ挿入された状態にあるときに空気を気体導入孔3dへ導入すると、気体導入孔3dに導入された空気が気体吐出孔32の下流端から吐出される。このとき、気体吐出孔32の上流端と下流端とは、ピン状部材1の周方向の位置が異なっているので、気体吐出孔32の下流端から吐出された空気の流れは、ネジ溝100aに正対することなく、ネジ溝100aに対して斜めに当たることになる。これにより、空気が流通し易くなる。そして、ネジ溝100aは螺旋状をなしているので、ネジ溝100aに対して斜めに当たった空気はネジ溝100aに沿う流れを形成し易く、よって、空気がネジ溝100aに沿って流れてナット100の端面100bから流出し、この流出時の空気の流速が高くなるので、溶接時にナット100の周囲に飛散するスパッタがナット100の内部に入りにくくなり、よって、スパッタがナット100のネジ溝100aに付着しにくくなる。
【0049】
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3に係るスパッタ付着防止具Aを示すものである。実施形態3では、気体吐出孔31が実施形態1のものとは異なる方向に延びている。他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0050】
この実施形態3では、気体吐出孔31の下流端は、当該気体吐出孔31の上流端よりもピン状部材1の挿入方向基端部寄りに位置付けられている。つまり、気体吐出孔31の下流端と上流端の中心線方向の位置関係が実施形態1のものと反対になっている。これにより、気体吐出孔31の下流端の開口は、ナット100の傾斜面100dに向けて開口することになるので、空気がナット100の他方の端面100bに向けて吐出する。
【0051】
この実施形態3においても、勢いの強い空気をナット100の他方の端面100bに向けて吐出することができるので、溶接時にナット100の周囲に飛散するスパッタがナット100の内部に入りにくくなり、よって、スパッタがナット100のネジ溝100aに付着しにくくなる。
【0052】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4に係るスパッタ付着防止具Aを示すものである。実施形態4では、実施形態1のものに対して補助吐出孔21が追加で設けられている点で異なっている。他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0053】
補助吐出孔21の上流端は、気体吐出孔31の下流端よりもピン状部材1の基端部寄りに位置付けられており、基端側部材2の上流側気体導入孔2aに連通している。一方、補助吐出孔21の下流端は、気体吐出孔31の下流端よりもピン状部材1の基端部寄りに位置付けられており、当該ピン状部材1の外面においてナット100のネジ溝100aと対向する部位に開口している。補助吐出孔21は、ピン状部材1の中心線に対して直交する方向に延びているが、ピン状部材1の中心線に対して傾斜していてもよい。また、補助吐出孔21の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。補助吐出孔21を複数形成する場合には、ピン状部材1の周方向に等間隔を形成してもよいし、不等間隔に形成してもよい。
【0054】
この実施形態3では、実施形態1の作用効果に加えて、上流側気体導入孔2aに導入された空気が補助吐出孔21からも吐出してナット100のネジ溝100aへ衝突する。これにより、ネジ溝100aに付着するスパッタをより一層少なくすることができる。
【0055】
(スパッタ付着試験)
次に、図9に示すようなスパッタ付着試験装置Bを用いたスパッタ付着試験について説明する。まず、スパッタ付着試験装置Bについて説明すると、このスパッタ付着試験装置Bは、溶接トーチ200と、ワーク201と、ワーク支持板202とを備えている。溶接トーチ200は、一般に自動車部品の溶接現場等で使用されているものであり、先端部から芯材が連続して供給されるとともに、例えばロボット等に把持されて所定の溶接経路を移動するようになっている。
【0056】
ワーク201は、例えば自動車部品等で使用されている鋼板等である。ワーク支持板202は、ワーク201を傾斜状態で支持するための部材である。ワーク支持板202の表面には、ワーク201を位置決めするための複数のブロック状部材202aが固定されている。ワーク支持板202は、ステー203を介して図示しない支柱等に固定されている。ステー203には、ナット100を保持するナット保持部材204がネジ205によって着脱可能に取り付けられている。ナット保持部材204に形成された開口部からナット100の端面100bが上方へ臨むようになっている。板材101もナット100と共に保持されている。この試験で使用したナット100の呼び径はM14であり、ピッチ1.5であるが、本発明はこのナット100への適用に限られるものではなく、各種サイズのナットに適用可能である。呼び径はM14の場合、ピン状部材1の最大外径部の外径は、12.35mmとすることができ、この外径はナット100のサイズによって変更することができる。ピン状部材1の外面とナット100の内面との間には、コンマ数mmの隙間ができるように、当該ピン状部材1の最大外径部の外径を設定することができる。また、例えば実施形態1では、気体吐出孔31の径は、1.0mmとしているが、0.8mm以上1.2mm以下の範囲であっても、後述する効果を奏することができる。
【0057】
試験時には、ナット100及び板材101をステー203に保持するとともに、本発明に係るスパッタ付着防止具Aを図5に示すように所定位置にセットする。そして、配管4に空気を供給する。供給する空気の圧力は、0.02MPa以上0.05MPa以下の範囲とした。これにより、1つの気体吐出孔31からの空気の吐出量が1分間に3リットルとなる。つまり、気体吐出孔31が6つあるので、配管4の空気の流量は1分間に18リットルとなる。尚、1つの気体吐出孔31からの空気の吐出量が1分間に2.5リットル以上3.5リットル以下の範囲で設定することができ、この範囲であれば後述する効果を奏することができる。尚、代表として実施形態1を例に説明している。
【0058】
ワーク201の表面には、溶接トーチ200によって溶接ビード201aを形成する。溶接ビード201aの始点が図9の左上、終点が図9の右下となるように、蛇行した溶接ビード201aを形成する。溶接ビード201aの長さ(溶接長に相当)は、約460mmである。溶接ビード201aの終点とナット100との距離は、約36mmである。溶接ビード201aの始点とナット100との距離は、約100mmである。
【0059】
また、比較例として、図10に示すようなピン状部材10を用意した。比較例のピン状部材10は、基端側部材20と先端側部材30とを備えており、それぞれに孔部20a、30dが形成されているが、気体吐出孔は形成されていない。基端側部材20及び先端側部材30の外形状は、気体吐出孔が開口していない点を除いて、実施形態1の基端側部材2及び先端側部材3の外形状と略同様である。
【0060】
図11にスパッタ付着試験の結果を示す。「比較例」とは、比較例のピン状部材10をナット100に挿入して上記試験を行った場合であり、また「実施形態1」~「実施形態4」とは、実施形態1~4のピン状部材1をそれぞれナット100に挿入して上記試験を行った場合である。
【0061】
図11における「ナットへの付着」とは、ネジさらいが必要な程度のスパッタがナット100のネジ溝100aに付着した回数を試験回数で割って求めた割合であり、「ピンへの付着」とは、除去が必要な程度のスパッタがピン状部材1、10に付着した回数を試験回数で割って求めた割合である。
【0062】
比較例では、「ナットへの付着」が100%の割合で起こっていた。また、比較例では、「ピンへの付着」が70%の割合で起こっていた。
【0063】
これに対し、実施形態1では、「ナットへの付着」が10%、「ピンへの付着」が20%であった。また、実施形態2では、「ナットへの付着」が30%、「ピンへの付着」が70%であった。また、実施形態3では、「ナットへの付着」が20%、「ピンへの付着」が50%であった。また、実施形態4では、「ナットへの付着」が20%「ピンへの付着」が80%であった。このように、実施形態1~4では、比較例に対してナットへの付着回数が著しく低下していることが分かる。実際の試験時の様子を観察すると、スパッタがナット100に接触したとしても、その接触したスパッタが空気によって吹き飛ばされていることがあり、このことによってもスパッタの付着を抑制することができる。
【0064】
また、実施形態1や3では、スパッタがピン状部材1に付着するのを抑制することができる。これにより、例えば溶接後、ピン状部材1をナット100から抜くときにスパッタがネジ溝100aへ入り込んでしまうのを抑制することができるので、ネジさらいの頻度をより一層低下させることができる。また、実施形態1は、他の実施形態に比べてナットへの付着抑制効果が高くなっているが、その理由は、空気が上方へ向けて吐出する形態となっていて、飛来するスパッタを効率よく吹き払うことができているためと考えられる。尚、実施形態2~4のものでも、空気が傾斜面100dに当たっていることから上方へ向く流れを形成することができ、これにより、ナットへの付着抑制効果が得られている。
【0065】
(実施形態5)
図12は、本発明の実施形態5に係るスパッタ付着防止具Aを示すものである。実施形態5では、実施形態1のものに対して気体吐出孔31の形状が異なっている。他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0066】
気体吐出孔31は、先端側部材3の一部を切り欠くことによって形成されており、下流側気体導入孔3dと連通している。気体吐出孔31の開口は、先端側部材3の周方向に長い形状とされている。これにより、上述したような試験を行った際には、少なくとも実施形態1と同程度の試験結果を得ることができるとともに、空気をより広範囲に流出させることができ、更なる効果の向上が見込める。
【0067】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明に係るスパッタ付着防止具は、例えばナットを有する部材の近傍で溶接が行われる場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ピン状部材
2a 上流側気体導入孔
3d 下流側気体導入孔
21 補助吐出孔
31、32 気体吐出孔
100 ナット
100a ネジ溝
A スパッタ付着防止具
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12