(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185337
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20221207BHJP
F01P 5/06 20060101ALI20221207BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
E02F9/00 M
F01P5/06 510Z
F01P11/10 B
F01P11/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092950
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 香織
(72)【発明者】
【氏名】井口 将利
(72)【発明者】
【氏名】江東 真也
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
(57)【要約】
【課題】熱交換器に向かう冷却空気から塵埃を除去する除去装置によって塵埃が排出される収納ケースの排出空間を清掃しやすくした作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、本体と、本体に取り付けられた作業装置と、本体に設けられたエンジンルームの内部にそれぞれ収容され、冷却空気を導く冷却ファン、冷却空気の流れに対して冷却ファンの上流側に配置されて、冷却空気と熱交換を行う熱交換器、冷却空気の流れに対して熱交換器の上流側に配置されて、冷却空気を旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去する除去装置、及び、除去装置を収納し、除去装置から塵埃が排出される排出空間を形成する収納ケースとを備え、収納ケースは、排出空間から塵埃を排出する排出口と、排出空間を清掃するときに開放されて、排出空間に向かって空気を吹き込み可能な清掃窓とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に取り付けられた作業装置と、
前記本体に設けられたエンジンルームの内部にそれぞれ収容され、冷却空気を導く冷却ファン、冷却空気の流れに対して前記冷却ファンの上流側に配置されて、冷却空気と熱交換を行う熱交換器、冷却空気の流れに対して前記熱交換器の上流側に配置されて、冷却空気を旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去する除去装置、及び、前記除去装置を収納し、前記除去装置から塵埃が排出される排出空間を形成する収納ケースとを備える作業機械であって、
前記収納ケースは、前記排出空間から塵埃を排出する排出口と、前記排出空間を清掃するときに開放されて、前記排出空間に向かって空気を吹き込み可能な清掃窓とを有することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記排出口は、前記除去装置の下方に位置して前記排出空間を形成する前記収納ケースの下面部に設けられ、
前記清掃窓は、前記除去装置の上方に位置して前記排出空間を形成する前記収納ケースの上面部に設けられたことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機械において、
前記清掃窓の開放を検知する検知センサと、
前記検知センサによって前記清掃窓の開放が検知されたときに、前記清掃窓の開放を報知する報知装置とを備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の作業機械において、
前記エンジンルームは、前記清掃窓を覆う閉位置と、前記清掃窓を露出させる開位置とに移動する開閉カバーを有し、
前記清掃窓は、前記排出空間に開口する清掃口と、前記清掃口を閉鎖する閉鎖位置と前記清掃口を開放するとともに前記開閉カバーの前記閉位置への移動を阻止する開放位置とに移動する蓋体とを有することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファンによって熱交換器へ導かれる冷却空気から塵埃を除去する除去装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルのような作業機械は、塵埃が発生する環境で使用されている。そのため、エンジンルームの内部に取り込まれた冷却空気には、塵埃が含まれている。また、冷却空気が熱交換器を通過するときに、冷却空気に含まれる塵埃が熱交換器に付着することで、熱交換器に目詰まりが発生することがある。
【0003】
そこで、特許文献1に記載された建設機械では、冷却空気の流れに対して熱交換装置ユニットの上流側に除去装置を対向して配置し、除去装置によって、冷却空気に含まれる塵埃を除去している。除去装置は、冷却空気を旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去する。塵埃が除去された冷却空気は、熱交換装置ユニットへ導かれて、熱交換装置ユニットを通過する。また、除去装置は、収納ケースの内部に収納されており、収納ケースの内部に形成された排出空間に塵埃を排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
除去装置から排出された塵埃は、収納ケースの内部の壁面や凹凸に堆積して、排出空間に溜まる。また、複数の除去装置が収納ケースの内部に収納されており、除去装置のそれぞれから排出された塵埃が他の除去装置に堆積することで、除去装置による塵埃の排出に影響が生じることがある。そのため、排出空間から塵埃を排出して、排出空間を清掃する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載された建設機械では、収納ケースの排出空間を効率よく清掃するのが難しい。
【0006】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱交換器に向かう冷却空気から塵埃を除去する除去装置によって塵埃が排出される収納ケースの排出空間を清掃しやすくした作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、本体と、前記本体に取り付けられた作業装置と、前記本体に設けられたエンジンルームの内部にそれぞれ収容され、冷却空気を導く冷却ファン、冷却空気の流れに対して前記冷却ファンの上流側に配置されて、冷却空気と熱交換を行う熱交換器、冷却空気の流れに対して前記熱交換器の上流側に配置されて、冷却空気を旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去する除去装置、及び、前記除去装置を収納し、前記除去装置から塵埃が排出される排出空間を形成する収納ケースとを備える作業機械であって、前記収納ケースは、前記排出空間から塵埃を排出する排出口と、前記排出空間を清掃するときに開放されて、前記排出空間に向かって空気を吹き込み可能な清掃窓とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱交換器に向かう冷却空気から塵埃を除去する除去装置によって塵埃が排出される収納ケースの排出空間を清掃しやすくすることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る作業機械の代表例である油圧ショベルの側面図である。
【
図3】エンジンルームの内部構造を模式的に示す背面図である。
【
図6】清掃窓が閉鎖された状態の収納ケースの斜視図である。
【
図7】清掃窓が開放された状態の収納ケースの斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図10】エンジンルームの内部構造を模式的に示す背面図である。
【
図11】開閉カバーを開いた状態の上部旋回体の斜視図である。
【
図12】清掃窓の蓋体を開けたまま開閉カバーを閉じた状態の上部旋回体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明に係る作業機械の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る作業機械の代表例である油圧ショベル1の側面図である。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2に支持された上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられた作業装置4とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、油圧ショベル1の本体の一例である。下部走行体2は、左右一対の無限軌道8を備える。走行モータ(図示省略)の回転が左右一対の無限軌道8に伝達されて、無限軌道8が回転すると、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、無限軌道に代えて、装輪式であってもよい。
【0012】
上部旋回体3は、旋回モータ(図示省略)によって旋回可能な状態で下部走行体2に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前方左側に配置されたキャブ7と、旋回フレーム5の後部に配置されたカウンタウェイト6と、エンジンルーム(建屋)10とを主に備える。作業装置4は、土砂の掘削作業などを行うフロント作業機であり、旋回フレーム5の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0013】
作業装置4は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム4aと、ブーム4aの先端に揺動可能に支持されたアーム4bと、アーム4bの先端に揺動可能に支持されたバケット4cと、ブーム4a、アーム4b、及び、バケット4cを駆動させる油圧シリンダ4d~4fとを含む。カウンタウェイト6は、作業装置4との重量バランスを取るための重量物であり、上部旋回体3の後端において、旋回フレーム5に支持されている。
【0014】
キャブ7には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ7の内部には、オペレータが着席するシート(図示省略)と、シートに着席したオペレータが操作する操作装置(ステアリング、ペダル、レバー、スイッチなど)が配置されている。キャブ7に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、作業装置4が動作する。
【0015】
エンジンルーム10は、上部旋回体3のキャブ7とカウンタウェイト6の間に設けられて、作業装置4及びキャブ7より後方で、カウンタウェイト6より前方において、旋回フレーム5に支持されている。また、エンジンルーム10は、旋回フレーム5の左右方向の全域に延設されている。エンジンルーム10は、その上部がエンジンカバー12によって覆われており、左側部は後述する除去装置40が露出している。
【0016】
図2は、
図1に示す上部旋回体3の斜視図である。
図2では、上部旋回体3の一部を省略している。
図3は、エンジンルーム10の内部構造を模式的に示す背面図である。
【0017】
エンジンルーム10の内部には、油圧ポンプ20、エンジン21、冷却ファン22、熱交換器23、及び、収納ケース30が、右側から左側に向けて順に収容されている。エンジン21は、油圧ショベル1の駆動源であり、油圧ショベル1を動作させるための駆動力を発生させる。油圧ポンプ20は、エンジン21によって駆動されて、作動油タンク(図示省略)に貯留された作動油を走行モータ、旋回モータ、及び、油圧シリンダ4d~4fに供給する。
【0018】
エンジン21の内部には、冷却液(例えば、水、油)が通過する冷却液通路が形成されている。冷却液は、熱交換器23から供給され、冷却液通路を通過してエンジン21を冷却した後、再び熱交換器23に還流する。熱交換器23は、エンジン21から還流した冷却液を冷却するラジエータ(図示省略)を含み、ラジエータによって冷却された冷却液をエンジン21に再び供給する。なお、熱交換器23は、ラジエータ以外の熱交換器、例えば、作動油を冷却するオイルクーラ、ターボ過給されたエンジン21の吸気を冷却するインタークーラを含んでいてもよい。
【0019】
冷却ファン22は、エンジン21の駆動軸にプーリとベルトを介して取り付けられ、エンジン21から伝達される駆動力によって回転する。冷却ファン22の回転に伴い、エンジンルーム10の内部に冷却空気の流れが誘起される。これにより、冷却ファン22は、エンジン21及び熱交換器23を冷却するための冷却空気の流れを発生させる。収納ケース30、熱交換器23、冷却ファン22、及び、エンジン21は、冷却ファン22による冷却空気の流れの上流側から下流側に向けて順に配置されている。エンジン21は、冷却空気の流れに対して冷却ファン22の下流側に配置されて、冷却ファン22が発生する冷却空気により冷却される。
【0020】
熱交換器23は、冷却空気の流れに対して冷却ファン22の上流側に配置されて、冷却ファン22と対向する。冷却ファン22は、熱交換器23と冷却ファン22との間に負圧を発生させて、熱交換器23に冷却空気を導く。冷却ファン22の回転に伴い、エンジンルーム10の外部の空気(外気)は、エンジンルーム10の内部に冷却空気として取り込まれて、熱交換器23を通過する。熱交換器23は、冷却ファン22によって導かれた冷却空気と熱交換を行う。
【0021】
熱交換器23に導かれる冷却空気の流れに対して熱交換器23の上流側の位置には、収納ケース30が熱交換器23と対向して配置されている。収納ケース30は、直方体形状に形成されて、上部旋回体3に取り付けられている。収納ケース30の内部には、複数の除去装置40が収納されている。収納ケース30と除去装置40は、エンジンルーム10の側部に露呈して設けられている。複数の除去装置40は、縦方向及び横方向に互いに間隔をあけて設けられて、冷却ファン22による冷却空気の流れに対して熱交換器23の上流側に配置される。除去装置40は、冷却空気の流れを旋回流に変化させ、旋回流中に含まれる塵埃を遠心力によって除去する。
【0022】
冷却空気は、エンジンルーム10の内部で、除去装置40、熱交換器23、冷却ファン22、及び、エンジン21を順に通過する。除去装置40は、熱交換器23と対向して配置されて、熱交換器23に導かれる冷却空気に含まれる塵埃を除去する。
【0023】
図4は、切断した除去装置40の斜視図である。
図5は、切断した除去装置40の側面図である。除去装置40は、収納ケース30において冷却空気の流れの上流側に位置する上流側壁31と冷却空気の流れの下流側に位置する下流側壁32とに取り付けられて、収納ケース30の内部に形成された排出空間33に収納されている。排出空間33は、収納ケース30の内部空間における除去装置40の外部に位置する空間である。除去装置40は、排出空間33に塵埃を排出する。
【0024】
除去装置40は、例えば、合成樹脂によって作製されており、円筒形状の第1筒体41と第2筒体50とを有する。第1筒体41は、冷却空気の流れの上流側の一端に位置する上流側開口部42と、冷却空気の流れの下流側の他端に位置する下流側開口部43と、上流側開口部42から下流側開口部43まで延びる空洞部44とを有する。第1筒体41の上流側開口部42は、収納ケース30の上流側壁31に形成された上流側孔部31a内に配置されて、加熱による変形によって、上流側孔部31aに隙間なく固着されている。第1筒体41の下流側開口部43は、排出空間33に配置されている。
【0025】
除去装置40は、第1筒体41の内周面に固着された螺旋状の羽根45と、羽根45を支持する軸部46と、軸部46を第1筒体41の内周面に連結する連結部47とを有する。羽根45は、第1筒体41の空洞部44内で上流側開口部42側の位置に設けられて、除去装置40に導かれた冷却空気の流れを旋回流に変化させる。これにより、冷却空気は、空洞部44内で旋回して、空洞部44の内周面に吹き付けられる。
【0026】
第2筒体50は、冷却空気の流れの上流側の一端に位置する上流側開口部51と、冷却空気の流れの下流側の他端に位置する下流側開口部52と、上流側開口部51から下流側開口部52まで延びる空洞部53と、上流側開口部51の外周面に設けられた環状の補強部54とを有する。第2筒体50の下流側開口部52は、収納ケース30の下流側壁32に形成された下流側孔部32a内に配置されて、加熱による変形によって、下流側孔部32aに隙間なく固着されている。
【0027】
第2筒体50の上流側開口部51の外径は、下流側開口部52の外径、及び、第1筒体41の下流側開口部43の内径よりも小さい。第2筒体50の上流側開口部51は、第1筒体41の空洞部44内に位置し、第1筒体41の下流側開口部43よりも冷却空気の流れの上流側に配置されている。第2筒体50の上流側開口部51と第1筒体41の下流側開口部43との間の箇所には、第2筒体50の外周面と第1筒体41の内周面との間に、塵埃を排出可能な隙間48が形成されている。
【0028】
冷却空気は、除去装置40に導かれて、第1筒体41の上流側開口部42に流入する。第1筒体41内で、冷却空気の流れは、羽根45によって旋回流に変化して、空洞部44内を流れる。冷却空気に含まれる塵埃は、旋回流の遠心力を受けて第1筒体41の内周面に向かって吹き付けられ、遠心力によって冷却空気から分離して除去される。塵埃が除去された清浄な冷却空気は、第2筒体50の上流側開口部51から空洞部53を経て下流側開口部52から流出する。
【0029】
除去装置40は、塵埃を除去した後に、冷却空気を熱交換器23に向けて流出させて、塵埃を除去した冷却空気を熱交換器23へ導く。冷却空気から分離した塵埃は、第1筒体41の内周面に沿って流れて、第1筒体41と第2筒体50の間の隙間48から除去装置40の外部に向かって、冷却空気の一部と共に排出される。塵埃は、除去装置40から収納ケース30の排出空間33に排出されて、排出空間33に溜まる。
【0030】
図2、
図3に示すように、収納ケース30は、排出空間33から塵埃を排出する排出口34と、排出空間33の清掃に用いられる開閉可能な清掃窓35とを有する。排出空間33は、収納ケース30の内部で清掃窓35から排出口34まで形成されている。排出口34と清掃窓35は、排出空間33と連通し、排出空間33と収納ケース30の外部との間に位置する。
【0031】
排出口34は、常に開放されている。排出空間33は、排出口34によって収納ケース30の外部に向けて開放される。排出空間33に溜まった塵埃は、排出口34から収納ケース30の外部へ排出される。清掃窓35は、排出空間33の清掃時に開かれ、排出空間33の清掃時以外の時は閉じられる。清掃窓35を開くと、排出空間33は、清掃窓35によって収納ケース30の外部に向けて開放される。清掃窓35を閉じると、排出空間33は、清掃窓35によって閉鎖される。
【0032】
収納ケース30は、上流側壁31、下流側壁32、下面部36、及び、上面部37によって排出空間33を形成する。排出口34は、収納ケース30の下面部36に設けられており、下面部36及び排出口34は、除去装置40及び排出空間33の下方に位置する。清掃窓35は、収納ケース30の上面部37に設けられており、上面部37及び清掃窓35は、除去装置40及び排出空間33の上方に位置する。また、清掃窓35は、排出口34の上方に配置され、排出空間33及び除去装置40を挟んで、排出口34と上下方向において対向する位置に設けられている。複数の除去装置40は、排出空間33における清掃窓35と排出口34との間の箇所に配置される。
【0033】
排出口34は、収納ケース30の下面部36に形成されて、排出空間33に向かって開口する。排出空間33の塵埃は、重力によって下方に落ちて、排出口34から排出される。排出口34から除去装置40までの上下方向の距離(クリアランス)は、清掃窓35から除去装置40までの上下方向の距離よりも長い。そのため、排出口34から排出空間33に向かって空気が流入しても、流入した空気によって、除去装置40の内部に生じる旋回流は妨げられない。
【0034】
図6は、清掃窓35が閉鎖された状態の収納ケース30の斜視図である。
図7は、清掃窓35が開放された状態の収納ケース30の斜視図である。清掃窓35は、収納ケース30の上面部37に形成されて排出空間33に向かって開口する清掃口35aと、清掃口35aを開閉する蓋体35bとを有する。蓋体35bは、例えば、ヒンジによって上面部37に回動可能に取り付けられて、ボルト又は蝶ボルトによって上面部37に固定される。
【0035】
蓋体35bの縁部に沿って板状のゴム材(図示省略)が取り付けられている。蓋体35bによって清掃口35aを閉鎖したときに、蓋体35bのゴム材が上面部37に当接する。ゴム材によって、蓋体35bと上面部37との間に隙間が生じるのが防止される。蓋体35bを清掃口35aから離隔することで、清掃口35a及び清掃窓35が開放される。
【0036】
排出空間33を清掃するときには、エンジン21を停止した状態で、清掃窓35を開放し、清掃窓35を介して、排出空間33を収納ケース30の外部に向かって開放する。清掃窓35は、清掃口35aを通して、排出空間33に向かって空気を吹き込み可能である。
【0037】
例えば、エアブローによって、排出空間33の塵埃を除去するための空気を清掃窓35の清掃口35aから排出空間33の内部に吹き込む。エアブローの空気によって、塵埃は、排出空間33の内部で排出口34に向かって吹き飛ばされて、排出口34から排出される。これにより、塵埃が排出空間33から排出されて除去され、排出空間33が清掃される。
【0038】
清掃窓35が開放された状態で冷却ファン22を回転すると、清掃窓35から排出空間33に向かって空気が流入し、流入した空気によって、除去装置40の隙間48から除去装置40の内部に向かう空気の流れが生じる。これにより、除去装置40の内部に生じる旋回流が妨げられて、除去装置40の内部で塵埃に作用する遠心力が小さくなる。そこで、清掃窓35が開放された状態で油圧ショベル1を稼働したときには、
図8に示す警告装置60によって、油圧ショベル1を操作するオペレータに対し清掃窓35の開放を警告する。
図8は、警告装置60の構成を示すブロック図である。
【0039】
警告装置60は、油圧ショベル1に搭載されたコントローラ61と、収納ケース30に取り付けられた近接センサ(検知センサ)62と、キャブ7の内部に設けられたモニタ(報知装置)63を含む。コントローラ61は、CPU(Central Processing Unit)64、ROM(Read Only Memory)65、及び、RAM(Random Access Memory)66を有する。コントローラ61は、ROM65に格納されたプログラムをCPU64が読み出して実行することによって、警告処理を実行する。RAM66は、CPU64がプログラムを実行する際のワークエリアとして用いられる。
【0040】
但し、コントローラ61の構成は、特に限定されず、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0041】
近接センサ62は、清掃窓35の開放を検知する検知センサの一例である。近接センサ62は、例えば、清掃口35aを開放する蓋体35bに近接して配置され、蓋体35bを検知することで、清掃窓35の開放を検知する。近接センサ62は、清掃窓35の開放を検知したときに、検知信号をコントローラ61へ出力する。コントローラ61は、例えば、油圧ショベル1の稼働後に、近接センサ62から取得した検知信号に基づき、清掃窓35が開放されている旨をモニタ63に表示させる。モニタ63は、報知装置の一例であり、近接センサ62によって清掃窓35の開放が検知されたときに、オペレータに清掃窓35の開放を報知する。
【0042】
第1実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0043】
清掃窓35から排出空間33に向かって吹き込む空気によって、排出口34へ向かう空気の流れが排出空間33の内部に生じる。排出空間33の内部の塵埃は、空気の流れによって、排出口34に向かって移動して、排出口34から排出される。このように、収納ケースの排出空間33を清掃しやすくすることができる。
【0044】
除去装置40に堆積した塵埃を除去することで、塵埃が除去装置40から円滑に排出され、除去装置40によって塵埃が効率よく除去される。清掃窓35を閉鎖することで、清掃窓35から排出空間33に向かう空気の流入が防止される。その結果、除去装置40の内部で、旋回流が妨げられず、塵埃が遠心力によって確実に分離される。
【0045】
排出空間33の清掃時には、収納ケース30の上面部37に設けた清掃窓35から空気を吹き込み、収納ケース30の下面部36に設けた排出口34から塵埃を排出する。そのため、排出空間33の内部の塵埃を上から下に向かって排出口34まで効率よく移動させて、塵埃を排出口34から収納ケース30の外部に容易に排出することができる。これにより、排出空間33を効率よく清掃することができる。モニタ63によって清掃窓35の開放を報知することで、清掃窓35を閉鎖し忘れるのを防止することができる。
【0046】
なお、清掃窓35の開放を報知する報知装置は、モニタ63に限定されず、例えば、音による報知、又は、光による報知であってもよい。また、清掃窓35の開放を検知する検知センサは、近接センサ62に限定されず、例えば、近接センサ62以外の非接触式の検知センサ、又は、接触式の検知センサであってもよい。清掃窓35は、収納ケース30の上面部37に限定されず、例えば、上流側壁31の除去装置40よりも上方に位置する部分、上流側壁31の除去装置40の側方に位置する部分、又は、収納ケース30の側面部に設けるようにしてもよい。
【0047】
除去装置40は、合成樹脂に限定されず、例えば、鉄材などの金属によって作製して、ボルト及びナットにより、収納ケース30に取り付けてもよい。収納ケース30は、直方体形状以外の形状に形成してもよく、例えば、冷却空気の流れの上流側からみたときにホームベース型をなすホームベース形状に形成してもよい。ホームベース形状の収納ケース30では、ホームベースの次第に幅が狭くなる部分が下側に位置するように、収納ケース30の下側部分を下方に向かって次第に幅が狭くなるように形成する。冷却ファン22は、エンジン21によって駆動されるファンに限定されず、例えば、電動駆動ファン、又は、油圧駆動ファンであってもよい。また、エンジンルーム10の内部に、2つ以上の冷却ファン22を設けてもよい。
【0048】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る油圧ショベル100について説明する。
図9は、第2実施形態に係る油圧ショベル100の側面図である。
図9に示すように、第2実施形態に係る油圧ショベル100において、エンジンルーム10-1は、その側部を形成する開閉可能な開閉カバー11と、上部を形成するエンジンカバー12とを有している。そして、開閉カバー11には、外気を取り込む給気口13が形成されており、除去装置40が開閉カバー11によって覆われた構成となっている。以下、第2実施形態の特徴を中心に説明し、第1実施形態で説明した事項については説明を省略する。
【0049】
図10は、エンジンルーム10-1の内部構造を模式的に示す背面図である。
図11は、開閉カバー11を開いた状態の上部旋回体3の斜視図、
図12は、清掃窓35の蓋体35bを開けたまま開閉カバー11を閉じた状態の上部旋回体3の斜視図である。なお、
図11,12において、上部旋回体3の一部を省略している。
【0050】
第2実施形態では、開閉カバー11に設けられた給気口13を介してエンジンルーム10-1内に冷却空気が取り込まれる(
図10参照)。そして、開閉カバー11を開いたときに、エンジンルーム10が開放され、開閉カバー11を閉じたときに、エンジンルーム10が閉鎖される。閉じた状態の開閉カバー11は、冷却空気の流れに対して収納ケース30の上流側に配置されて、収納ケース30を覆う。開いた状態の開閉カバー11は、収納ケース30をエンジンルーム10の外部に向かって露出させる(
図11参照)。このように、開閉カバー11は、清掃窓35を覆う閉位置と清掃窓35を露出させる開位置とに移動して開閉する。排出空間33を清掃するときに、開閉カバー11は、閉位置から開位置に向かって移動して開かれる。排出空間33の清掃後に、開閉カバー11は、開位置から閉位置に向かって移動して閉じられる。
【0051】
清掃窓35の蓋体35bは、清掃口35aを閉鎖する閉鎖位置と清掃口35aを開放する開放位置とに移動して開閉する。清掃口35aは、閉鎖位置の蓋体35bによって覆われて閉鎖される。排出空間33を清掃するときに、蓋体35bは、閉鎖位置から開放位置に移動して、清掃口35a及び清掃窓35を開放する(
図11参照)。開放位置の蓋体35bは、収納ケース30から上方に向かって突出する。排出空間33の清掃後に、蓋体35bは、開放位置から閉鎖位置に移動して、清掃口35a及び清掃窓35を閉鎖する。
【0052】
蓋体35bは、開放位置に配置された状態で、開位置から閉位置に向かって移動する開閉カバー11の移動経路に配置される。そのため、開放位置の蓋体35bは、開位置から閉位置に向かって移動する開閉カバー11と当接して、開閉カバー11の閉位置への移動を阻止する。開閉カバー11は、開位置と閉位置の間の途中位置で停止して、蓋体35bによって、閉まらない状態に維持される(
図12参照)。この場合には、開閉カバー11を開位置に向かって移動させて蓋体35bから離した後、蓋体35bを閉鎖位置に移動し、開閉カバー11を閉位置に移動させる。蓋体35bは、閉鎖位置に配置された状態で、開閉カバー11によって覆われて、エンジンルーム10の内部に収容される。
【0053】
第2実施形態によれば、上記した第1実施形態と同様の作用効果を奏することに加えて、例えば以下の作用効果を奏する。
【0054】
開放位置の蓋体35bによって開閉カバー11が閉まるのを阻止することで、清掃窓35が開放されていることを容易に認識させることができる。これにより、清掃窓35を閉鎖し忘れるのを防止することができる。
【0055】
第1、第2実施形態では、油圧ショベル1,100に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は、例えば、ホイールローダ、ダンプトラックを含む他の種類の作業機械にも適用可能であり、同様の効果を奏する。このように、本発明は、除去装置によって熱交換器に向かう冷却空気から塵埃を除去する種々の作業機械に適用できる。
【0056】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1,100 油圧ショベル
2 下部走行体(本体)
3 上部旋回体(本体)
4 作業装置
10,10-1 エンジンルーム
11 開閉カバー
20 油圧ポンプ
21 エンジン
22 冷却ファン
23 熱交換器
30 収納ケース
33 排出空間
34 排出口
35 清掃窓
35a 清掃口
35b 蓋体
36 下面部
37 上面部
40 除去装置
41 第1筒体
50 第2筒体
60 警告装置
61 コントローラ
62 近接センサ(検知センサ)
63 モニタ(報知装置)