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特開2022-185339ベルト張力検出装置、及びベルト張力検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185339
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ベルト張力検出装置、及びベルト張力検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/10 20200101AFI20221207BHJP
   F16H 7/00 20060101ALI20221207BHJP
   F16H 7/12 20060101ALI20221207BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G01L5/10 Z
F16H7/00 A
F16H7/12 A
G01L5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092952
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山盛 拓人
(72)【発明者】
【氏名】大橋 勉
【テーマコード(参考)】
2F051
3J049
【Fターム(参考)】
2F051AA24
2F051AB06
2F051BA03
3J049AA01
3J049BA07
3J049BE10
3J049BG03
3J049CA08
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によりベルト張力を検知可能にしたベルト張力検出装置及びベルト張力検出方法を提供する。
【解決手段】正逆転可能な第1のサーボモータ2に連結される駆動プーリ10とベンドプーリ11とテールプーリ12等にベルト5が巻き掛けられている。ベルト5には、案内レール8、9上を移動可能な複数のパレット7を、停止、送り、停止を繰り返して送り出す複数の爪送り装置30の固定部が等間隔に固定されている。ベルト5の緩みに伴う負荷変動は、第1のサーボモータ2の出力するトルク値を検出するサーボドライバの出力値に現れる。サーボドライバの検出した検出トルク値に基づいてパーソナルコンピュータは、ベルトの緩み度を検出する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の駆動モータ(2)と、
前記第1の駆動モータの回転軸と連結される駆動プーリ(10)と、
前記駆動プーリと従動プーリ(11、12、13、15、16)に巻き掛けられるベルト(5)と、
前記ベルトに負荷をかける負荷手段(30)と、
前記第1の駆動モータの出力するトルク値を検出するトルク検出手段(21)と、
前記トルク検出手段の検出した検出トルク値に基づいて前記ベルトの緩み度を検出するベルト緩み度検出手段(23)と、を備えるベルト張力検出装置。
【請求項2】
前記第1の駆動モータは、正転及び逆転可能なサーボモータである請求項1に記載のベルト張力検出装置。
【請求項3】
前記負荷手段は、前記ベルトに固定される固定部(31)を含む爪送り装置である請求項1又は2に記載のベルト張力検出装置。
【請求項4】
前記固定部に対し往復動可能な爪本体(33)と、前記固定部に対し前記爪本体を往復駆動する第2の駆動モータ(25)とを備える請求項3に記載のベルト張力検出装置。
【請求項5】
前記爪本体を嵌合可能な溝(48)を有するパレット(7)と、
前記パレットを前記ベルトの移動する方向に平行に搬送可能に案内する案内部材(8、9)と、を備える請求項4に記載のベルト張力検出装置。
【請求項6】
前記爪送り装置は、第1の前記パレットの溝に前記爪本体の嵌合状態で前記ベルトを前進し、第1の前記パレットの前記溝に前記爪本体の非嵌合状態で前記ベルトを後進し、次の第2のパレットの溝に前記爪本体の嵌合状態で前記ベルトを前進し、前記第2のパレットの溝に前記爪本体の非嵌合状態で前記ベルトを後進し、以下同様に繰り返すことで、順次、パレットの停止、送りを繰り返し、一方向へ搬送するパレット搬送装置(60)を備える請求項5に記載のベルト張力検出装置。
【請求項7】
前記ベルト緩み度検出手段は、検出トルク値のピーク値と基準値とを比較し、前記ピーク値が前記基準値を上回るときベルト緩み度大と判定する前記ベルト緩み度判定手段を備える請求項1から6のいずれか一項に記載のベルト張力検出装置。
【請求項8】
前記ベルト緩み度検出手段は、前記第1の駆動モータの初期駆動開始時、ベルト停止状態であってベルト送り前、検出トルク値のピーク値と基準値とを比較し、前記ピーク値が前記基準値を上回るときベルト緩み度大と判定する請求項2から6のいずれか一項に記載のベルト張力検出装置。
【請求項9】
さらに、張力調整プーリ(14)を備える請求項1から8のいずれか一項に記載のベルト張力検出装置。
【請求項10】
駆動プーリと従動プーリに巻き掛けられるベルトの張力を検出する方法であって、
前記駆動プーリを駆動する駆動モータの出力するトルク値を検出するステップと、
検出したトルク値のピーク値と基準値を比較するステップと、
前記ピーク値が前記基準値を上回るときベルト緩み度大と判定するステップと、を含むベルト張力検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト伝動装置のベルトの緩みを検出するベルト張力検出装置、及びベルト張力検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達装置の一つとして、タイミングベルトにより原動プーリから従動プーリに動力を伝達するベルト伝動装置が知られている。
この種のベルト伝動装置には、ベルトの緩みを検出する装置として、特許文献1のベルトの緩み検知装置が公知である。
【0003】
このベルト緩み検知装置は、回転ベルトの表面が一定期間摺接することによって切断される糸状の検知素子と、この検知素子が切断されると作動する報知手段とを備えている。
【0004】
プーリに巻き掛けられるベルトが経年変化等により緩み、自重等により次第に垂下すると、ベルトに摺接する検知素子が切断される。検知素子が切断されたとき、報知手段の発報、重りの落下という動作があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-39042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ベルト伝動装置のベルトに負荷が作用する機構におけるベルトの張力を検出可能とすることにある。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械要素としてのセンサを設けることなしに、簡易な構成によりベルト張力を検知可能にしたベルト張力検出装置、及びベルト張力検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のベルト張力検出装置は、第1の駆動モータ(2)と、前記第1の駆動モータの回転軸と連結される駆動プーリ(10)と、前記駆動プーリと従動プーリ(11、12、13、15、16)に巻き掛けられるベルト(5)と、前記ベルトに負荷をかける負荷手段(30)と、前記第1の駆動モータの出力するトルク値を検出するトルク検出手段(21)と、前記トルク検出手段の検出した検出トルク値に基づいて前記ベルトの緩み度を判定するベルト緩み度判定手段(23)と、を備える構成を採用する。
【0009】
一般に、複数のプーリに巻き掛けられたベルトが緩むと、ベルトに繋がった機構に位置ずれが発生する。機構の位置ずれが発生すると、反作用により発生するベルトにかかる負荷変動が駆動モータのトルク値に現れる。
【0010】
本発明によると、ベルトの挙動、状況に繋がる駆動モータのトルク値を収集する。ベルトの緩み度に相当する出力結果から分析する。分析の結果、ベルトの緩み度を検出する。
【0011】
本発明のベルト式動力伝達装置自らがもつトルクドライバなどのトルク検出手段が発出するトルク値を検出値とし、この検出トルク値に基づいてベルト張力の緩みを検出する。
【0012】
ベルトの緩み度に相当する変位量を電気信号として検出する。この電気信号としての変位量に相当する位置ずれ量が大きくなるほどトルク値が増大する。対応する位置ずれ信号に相当する変位量に基づいてベルト緩み度を検知する。
【0013】
本発明のベルト張力検出装置によると、ベルトの緩み量増大に起因して発生する検知素子の切断という物理的動作を伴わないで、ベルトの緩み度を検知することができる。
【0014】
本発明のベルト張力検出方法は、駆動プーリと従動プーリに巻き掛けられるベルトの張力を検出する方法であって、前記駆動プーリを駆動する駆動モータの出力するトルク値を検出するステップと、検出したトルク値のピーク値と基準値を比較するステップと、前記ピーク値が前記基準値を上回るときベルト緩み度大と判定するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態の爪送り装置及びパレット搬送装置を示す斜視図。
図2図1のII-II線断面図。
図3図1のIII部分の拡大斜視図。
図4】本発明の第一実施形態の爪送り装置と第2の駆動モータを示す部分拡大斜視図。
図5図4のV-V線断面図。
図6】本発明の第一実施形態によるシステム構成のブロック図。
図7】本発明の第一実施形態による動作の一例を示すフローチャート。
図8図3に対応する図であって、爪本体の解除状態を示す拡大斜視図。
図9】本発明の第一実施形態の張力調整プーリを示す部分拡大斜視図である。
図10】本発明の第一実施形態による装置の実験データを示す図であって、検出トルク値とベルト動作と爪送り動作の関係を示す特性図。
図11図10のXI部分の拡大特性図。
図12】本発明の第一実施形態によるパレットに対する送り爪及びベルトの動作イメージを説明する模式図。
図13】ベルト張力基準時の送り爪とパレットの関係を示す模式的説明図。
図14】ベルト張力低下時の送り爪とパレットの関係を示す模式的説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第一実施形態)
【0017】
第一実施形態は、パレット搬送装置を駆動するベルト伝動装置に本発明のベルト張力検出装置を適用したものである。
図1は本発明を適用した第一実施形態のベルト張力検出装置の機械部分を示す。
【0018】
ベルト伝動装置35は、図1図2及び図3に示すように、フレーム1に取り付けられる第1のサーボモータ2の回転軸3に駆動プーリ10が固定されている。駆動プーリ10に、巻き掛けられるベルト5は、ベンドプーリ11、テールプーリ12、ベンドプーリ13、張力調整プーリ14、ベンドプーリ15及びベンドプーリ16に巻き掛けられている。
【0019】
負荷手段としての複数の爪送り装置30は、ベンドプーリ11とテールプーリ12との間のベルト5に取り付けられている。複数の爪送り装置30は、図3から図5に示すように、上側のベルト5にベルトの延びる方向に等間隔で複数個の固定部31が固定されている。
【0020】
複数の爪送り装置30は、図4及び図5に示すように、特許請求の範囲に記載の第2の駆動モータに相当する第2のサーボモータ25の回転軸に取り付けられる円盤26に偏心して偏心板27が設けられる。
【0021】
円盤26の正転又は逆転により、偏心板27に連結されるシャフト39を経由してシャフト28が正転または逆転方向に回動する。シャフト28が軸芯線を中心として回動すると、レバー38の他端に回動可能に取り付けられるアーム29が往復動し、アーム29の他端に連結されるレバー40が支点43を中心として回動し、レバー40の他端に連結される可動板44が矢印45方向に往復移動可能になっている。可動板44に係合する爪本体33は、固定部31に対し矢印45方向に往復移動可能になっている。図5は、爪本体33がパレット7の溝48に嵌合する状態を示すが、爪本体33がパレット7の溝48に対し図5で右方向に移動すると解除する状態になる。
【0022】
複数のパレット7は、図1に示すように、案内レール8、9上を矢印17方向に移動可能になっている。パレット7は側面に溝48を有し、溝48に爪送り装置30の爪本体33が嵌合可能になっている。図3はパレット7の溝48への爪本体33の嵌合状態を示し、図8はパレット7の溝48への爪本体33の解除状態を示す。
【0023】
第2のサーボモータ25の駆動により、図3に示すように、爪本体33が伸長した状態で嵌合状態になり、図8に示すように、爪本体33が収縮した状態で解除状態になる。ベルト5に等間隔に配列される複数の爪送り装置30は、第1のサーボモータ2によるベルトの位置制御に連動する第2のサーボモータ25による爪送り装置30の位置制御により、パレット7を順次、停止、送り、を繰り返し、図1に示す矢印17方向に搬送する。
【0024】
次に、図12A、B、C、Dに基づいて、ベルト伝動装置35と爪送り装置30の連動によるパレットの搬送について、説明する。
【0025】
まず図12Aに示すように、ベルト5に固定される固定部31に対し爪本体33がパレット7の溝48から解放された解除状態にある。この状態から第2のサーボモータ25の正転駆動により爪本体33が2点鎖線で示す方向に移動する。
【0026】
次に図12Bに示すように、爪本体33がパレット7の溝48に嵌合し、第1のサーボモータ2の正転駆動によりベルト5を矢印46方向に移動する(前進する)と、爪本体33に噛み合うパレット7がこの移動方向と平行な方向にパレット搬送方向に移動する。
【0027】
次いで図12Cに示すように、ベルト5を停止し、第2のサーボモータ25の逆転駆動によりパレット7の溝48から爪本体33を解除する。
【0028】
続いて図12Dに示すように、第2のサーボモータ25を停止し、パレット7を当該位置に維持し、第1のサーボモータ2を逆転し、ベルト5を矢印47の戻し方向に戻す(後進する)。
このようにして、図12のA、B、C、Dの操作を順に繰り返すと、ベルト5の往復移動(停止、送り、停止、戻り)を繰り返し、複数のパレット7の停止と送りを順次繰り返し、複数のパレット7を一方向に搬送する。
【0029】
次に、ベルト5を駆動する動作について説明する。
【0030】
第1のサーボモータ2は、正転、逆転、停止のいずれかの各動作を行う。図6に示すように、パーソナルコンピュータPC23の指令により制御装置としてのプログラマブルロジックコントローラ(PLC)22からサーボドライバ21に指示し、サーボドライバ21の駆動信号を第1のサーボモータ2に出力する。
【0031】
サーボドライバ21は、PLC22からの指令に追従し、サーボモータ2の出力トルク、回転速度、及び位置を制御する。PLC22は、サーボモータ2へベルト位置の目標値を出力する。このPLC22からの目標値を受ける図示しないサーボアンプは、サーボモータ2が目標値どおりに動くために必要な出力(電力)を供給する。図示しないエンコーダが実際のサーボモータ2の回転位置や速度を検出し、その電気信号をサーボアンプにフィードバック信号を返す。エンコーダがサーボモータ2からの信号を摂取し、それをサーボアンプ側に戻す。そして、PLC22の出力した目標値とフィードバック信号を比較して、その誤差がゼロに近づくように、サーボモータ2の出力を制御する。
【0032】
これにより、サーボモータ2の回転軸3と一体回転する駆動プーリ10がベルト5を所望の位置に制御する。回転軸3の停止、正転、停止、逆転、停止を所望の速度、位置に制御し、ベルト5を駆動する。ベルト5は、停止、送り、停止、戻りの動作を繰り返す。この第1のサーボモータ2に同期して第2のサーボモータ25を駆動し、爪送り装置30を位置制御する。これにより、パレット7を順次、搬送方向に、送り、停止、送りを繰り返し、図1に示す矢印17の一方向に搬送する。
【0033】
ベルト伝動装置35は、爪送り装置30から作用する負荷によりベルト5にトルク変動を与える。例えば図13に示すように、当初基準のベルト張力であったものが、次第にベルト張力が緩んでくると、図14に示すように、爪本体33と パレット7の溝48との嵌合時に衝突による負荷増大が発生する。
【0034】
経年変化に伴うベルト5の緩み等により爪本体33のパレット7の溝への嵌合状態と解除状態との繰り返しの挙動変化の反作用によりベルト5を経由して駆動プーリ10から第1のサーボモータ2の検出するトルク値に変動を生じる。
【0035】
図6に示すように、第1のサーボモータ2に作用する負荷をサーボドライバ21が検出し、この検出した負荷信号をPLC22を経由してPC23に出力し、PC23が検出トルク値を演算し処理し判定する。ここに、サーボドライバ21は、特許請求の範囲に記載のトルク検出手段に相当し、PC23は特許請求の範囲に記載のベルト緩み度判定手段に相当する。
【0036】
図7に示すように、PC23は、入力した検出トルク値を検出し(ステップS51)、検出トルク値が基準値を超えているか否かを判別し(ステップS52)、検出トルク値が基準値を超えているとき、ベルト張力異常発生であると判別し、異常張力であることを発報表示する(ステップS53)。検出トルク値が基準値を超えていないときは、前の処理に戻る。
【0037】
このようにして、サーボモータ2に作用する負荷に基づいてトルク値を分析し、操作者にベルト5の張力異常発生を告知する。
(実験1)
【0038】
実験1は、ベルト張力を一つの要素として変化する第1のサーボモータにかかる負荷について、動作期間:2秒、この動作期間における検出トルク値の出力の推移を比較した。
【0039】
サーボモータのトルク実験結果について1サイクルの生波形を図10に示す。図10は、ベルト設定張力の異なる各実験例1から4について、検出トルク値の推移を示す。
【0040】
実験条件は、実験例1から実験例4について、ベルト張力基準値から下記のとおりとした。
実験例1:ベルト張力基準、
実験例2:ベルト張力190N、
実験例3:ベルト張力105N、
実験例4:ベルト張力 50N以下、とした。
【0041】
実験例1から実験例4について、ベルトの停止、送り、停止、戻りを2秒間で行うことを1サイクルとした。ベルトの送り期間は爪入りの状態に対応し、ベルトの戻り期間は爪抜きの状態に対応する。
【0042】
上記1サイクルにおけるパレットの搬送開始前、ベルト停止状態であってベルトの送り前、第1サーボモータの初期動作時、ベルトの緩み度に対応する検出トルク値の変動が大きく現れる。その結果の波形を拡大した図を図11に示す。
【0043】
ベルトの緩みの小さいとき(初期のベルト設定張力が維持されているとき)、実験例1に示すように、検出トルク値のピーク55は基準値を下回る。ベルト張力の緩みが生じてくると、送り動作の初動前、実験例2、3、4に示すように検出トルク値のピーク56、57、58は基準値を超える。
【0044】
ベルト送り開始前のベルト停止時に検出される最大トルク値は、ベルト張力の緩み度が大きくなるにしたがい、大きくなることが判る。
【0045】
本実施形態では、検出トルク値が特定基準値を超えたとき、ベルト張力の緩みについての異常値の発報要と判定する。
【0046】
本実施形態によると、ベルトを備えた動力伝達装置においては機械設備を運転しながらベルト張力の緩み検知が可能になるという効果がある。
【0047】
本発明では、検出トルク値の分析結果に基づいて、ベルト張力の異状を告知することができる。
【0048】
ベルトの緩みに起因する位置ずれを防止する。ベルト張力の点検を要せずして、点検不要になることから稼働率の向上をはかることができる。設備や機械の運転を停止せずとも運転しながらベルト張力の検知をすることができる。
【0049】
このため、機械設備が故障する前にベルト張力を調整することによって、故障回数を減らし、運転する設備または機械の稼働率の低下を防止することができる。
ベルトの緩みが異状検知されたとき、図9に示すベルト張力機構の張力調整プーリ14を上下に位置調整することでベルトの張力調整をする。
【0050】
一般に、ベルト伝動装置は、原動軸の正転、停止、逆転、停止の動作を繰り返せば、経年変化により、ベルトの緩み度が次第に増大していく。
【0051】
このベルト緩み量の大きさの程度の結果は、トルク検出手段の検出トルク値及びその推移(所定期間の検出トルク値の変化)に基づいて判別する。判別の結果、ベルト緩み量判定手段が緩み量検出信号を出力する。
【0052】
ベルト緩み量判定手段の出力結果に基づいて、操作者はベルト緩み量の程度を知ることができる。
【0053】
したがって、本発明のベルト張力検出装置によると、ベルト駆動用モータの制御装置の動作に基づいて、ベルト緩み度を検知することができる。ベルトの現実の緩み量(実緩み量)を検知する機械要素としてのセンサを設けることなしに、また、センサを含む機械による物理的張力計測なしに、さらに操作者による触診なしに、ベルト緩み度を検知することができる。
【0054】
ベルト伝動装置の運転を継続し、その運転中に、ベルトの緩みの異状が発生したときには、コンピュータが出力異状信号を出力する。したがって、現実の故障発生を回避することができる。
【0055】
しかも、コンピュータが出力する異状信号を操作者が検知することで、故障発生前にベルト張力を調整する機械的操作を行うことができる。これにより、故障発生を防止し、設備の稼働率を向上することができる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、負荷手段を爪送り装置としたが、本発明では、負荷手段は、ベルトに負荷を作用する機構、機械等であればなんでもよい。負荷手段の個数、形態は限られない。
【0056】
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0057】
2 第1のサーボモータ(第1の駆動モータ)、
5 ベルト、
7 パレット、
8、9 案内レール(案内部材)、
10 駆動プーリ(回転体)、
11 ベンドプーリ、
12 テールプーリ、
14 張力調整プーリ、
21 サーボドライバ(トルク検出手段)、
22 プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、
23 パーソナルコンピュータ(PC)(ベルト緩み判定手段)、
25 第2のサーボモータ(第2の駆動モータ)、
30 爪送り装置(負荷手段)、
31 固定部、
32 可動部、
33 爪本体、
35 ベルト伝動装置、
48 溝、
60 パレット搬送装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14