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特開2022-18534電着塗料用組成物およびこれを含む水性電着塗料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018534
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】電着塗料用組成物およびこれを含む水性電着塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 179/08 20060101AFI20220120BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20220120BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20220120BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20220120BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C09D179/08 B
C09D5/44 A
C09D201/02
C09D4/00
C09D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121696
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】390035219
【氏名又は名称】株式会社シミズ
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】水島 正博
(72)【発明者】
【氏名】本多 博幸
(72)【発明者】
【氏名】田鎖 暢浩
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038CH211
4J038DB391
4J038DJ051
4J038FA291
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA12
4J038NA14
4J038PA04
(57)【要約】
【課題】 優れた耐熱性および屈曲性を有する電着塗膜を形成できる電着塗料用組成物およびこれを含む水性電着塗料を提供する。
【解決手段】 本発明の電着塗料用組成物は、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーを含む。また、含有量は、例えば、三成分の合計量に対して、芳香族ポリアミドイミド樹脂を75~90重量%、ビスアリル化合物を5~15重量%、親水性カチオンポリマーを5~15重量%含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーを含む電着塗料用組成物。
【請求項2】
芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーの合計量に対して、芳香族ポリアミドイミド樹脂を75~90重量%、ビスアリル化合物を5~15重量%、親水性カチオンポリマーを5~15重量%、含むことを特徴とする請求項1に記載の電着塗料用組成物。
【請求項3】
酸中和剤を含む媒体中に請求項1または2記載の電着塗料用組成物が分散状態で含有されてなることを特徴とする水性電着塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電着塗料用組成物およびこれを含む水性電着塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗料用組成物には、その用途に応じて多種にわたる特性、たとえば絶縁性、耐熱性、耐磨耗性などが求められる。耐熱性の用途ではポリイミド樹脂、アミドイミド樹脂を用いることで特性の向上を実現している。特に昨今は車載用の用途のために振動に対する特性、後加工時の曲げ性等塗膜の屈曲性の要求が高まっている。
【0003】
これらの要求にこたえるものとして、末端がOH基又はSH基であるポリアミド樹脂もしくはポリイミド樹脂をアミンなどのアルカリで中和したアニオン型組成物(特許文献1)がある。
【0004】
また、ベンゼン環の3,3位にOH基を持つ化合物を共重合させておきそのOH基にアミノ基を有する安息香酸化合物を付加させることにより得たカチオン型組成物(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-268235号公報
【特許文献2】特開2019-094404号公報
【特許文献3】特開2019-218433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の組成物は、いずれも改善の余地があり、たとえば特許文献2のアニオン型では、陽極である被塗物の溶解が生じてしまうことから、銅や銀めっきなどの電子部品に用いられる金属には適用することが不可能である。
【0007】
また、水に分散、もしくは溶解しにくいため、溶解力の高いNMP(N-メチルピロリドン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)などの有機極性溶媒を50%以上と多量に併用しなければならず、安全面および環境面で問題がある。
【0008】
これに対して、特許文献3のカチオン型組成物の場合には、ポリイミドワニスと親水性カチオンポリマーとを反応させており、反応の制御が必要となっている。また反応性を考慮した場合、選択できる材料の種類が限られるという問題がある。
【0009】
さらに、特許文献1は、耐熱絶縁性および屈曲性に優れた塗料組成物ではあるものの、重縮合ポリイミドの含有量が最大60%のとき、熱架橋イミドの含有量が10%を超えると屈曲性が低下し、親水性カチオンポリマーの含有量が10%を超えると耐熱性が低下するという課題がある。
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーを含む電着塗料用組成物が、優れた耐熱性および屈曲性を有する電着塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーを含む電着塗料用組成物である。
【0012】
また、本発明は、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーの合計量に対して、芳香族ポリアミドイミド樹脂を75~90重量%、ビスアリル化合物を5~15重量%、親水性カチオンポリマーを5~15重量%、含むことを特徴とする。
【0013】
また、酸中和剤を含む媒体中に上記の電着塗料用組成物が分散状態で含有されてなることを特徴とする水性電着塗料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電着塗料用組成物は、被塗物に電着塗装により塗膜を形成し、硬化させた場合には、優れた耐熱性および屈曲性を有するので、振動に対する特性、後加工時の曲げ性等塗膜の屈曲性が必要な車載用機器の塗装用途に最適である。また、親水性カチオンポリマーと芳香族ポリアミドイミドだけでは電着塗料化しても分離沈降が生じるが、親水性カチオンポリマーと芳香族ポリアミドイミド樹脂に相溶するビスアリル化合物を含有することにより、反応させることなく、電着塗料組成物として安定する。
【0015】
また、本発明の水性電着塗料は、酸中和剤を含む媒体中に電着塗料用組成物を分散状態で含有させたことによって、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーの三者のブレンドを行い、樹脂間の絡み合いならびに相溶をもって親水性カチオンポリマーと芳香族ポリアミドイミド樹脂とを反応させることなく水中への分散を可能としている。
【0016】
また組成の特性により、耐熱性および絶縁性が向上し、有機溶剤の使用量が少なくなることで、均一コーティング性が良好で、かつ安全面および環境面についても優れた特性を有している。
【0017】
また、本発明の水性電着塗料は、芳香族ポリアミドイミド樹脂を含むことで、耐熱性、絶縁性に優れ、ビスアリル化合物を含むことで、親水性カチオンポリマーとの芳香族ポリアミドイミド樹脂の抱きこみ性をもってカチオン化を達成し、さらなる耐熱性、絶縁性の向上が実現できる。
【0018】
また、ビスアリル化合物と親水性カチオンポリマーとによる芳香族ポリアミドイミド樹脂の抱きこみによって、芳香族ポリアミドイミド樹脂と親水性カチオンポリマーとを反応させる必要が無く、塗料を容易に製造することができる。
【0019】
また、親水性カチオンポリマーを含むことで、芳香族ポリアミドイミド樹脂を水に分散、もしくは溶解させることが可能で、有機溶剤の使用量低減によって安全面、環境面においても優れた特性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の電着塗料用組成物は、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーを含む。それぞれの含有量は、例えば、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーの合計量に対して、芳香族ポリアミドイミド樹脂が75~90重量%であり、ビスアリル化合物が5~15重量%であり、親水性カチオンポリマーが5~15重量%である。
【0021】
本発明において、芳香族ポリアミドイミド樹脂は、特に限定されないが、たとえば重量平均分子量が5000以上のものがあげられ、さらには10000以上のものがあげられる。
【0022】
また、芳香族ポリアミドイミド樹脂としては、50000以下のものがあげられ、30000以下のものがあげられる。
【0023】
好ましい芳香族ポリアミドイミド樹脂としては、前記平均分子量が5000以上50000以下のものがあげられ、より好ましい芳香族ポリアミドイミド樹脂としては、前記平均分子量が10000以上30000以下のものがあげられる。
【0024】
前記平均分子量が5000以下では塗膜形成時に連続膜にならず塗膜クラックが発生するおそれがあり、50000以上では溶剤への樹脂溶解性が低下し、樹脂固形分が30%以下では塗料作成時の溶剤量が増え塗料安定性が低下するおそれがある。
【0025】
かかる芳香族ポリアミドイミド樹脂は、既知の芳香族ポリアミドイミド樹脂であってもよく、必要に応じて、既知方法によって製造されたものであってもよい。
【0026】
芳香族ポリアミドイミド樹脂としては、たとえば、一般式(1)
【化1】
(ただし、式(1)中、Rはベンゼン環、ナフタレン環または式(1a)
【化2】
(ただし、式(1a)中、Xは酸素原子、メチレン、イオウ原子であることを表す)
の化合物であることを表し、Rは炭素数2~12のアルキレンまたは重合度が100~2000のポリエチレンであることを表す)で示される化合物であり、nは、10~150の整数を表す)
で示されるアミドイミド樹脂があげられる。
【0027】
かかる芳香族ポリアミドイミド樹脂は、新たに合成されたものであってもよく、既知のものであってもよい。
【0028】
既知方法により芳香族ポリアミドイミド樹脂を製造する場合の1例として、トリメリット酸無水物と芳香族イソシアネートをイソシアネート法により製造する場合をもとに説明する。
【0029】
具体的には、芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5ナフタレンジイソシアネートなどあげられ、このうちジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0030】
トリメリット酸無水物と芳香族イソシアネートとの反応は、イソシアネート法の既知方法によって実施することができ、たとえば、溶媒中で、トリメリット酸無水物と芳香族イソシアネートとを、撹拌下、120~180℃で、1~5時間反応させることにより、芳香族ポリアミドイミド樹脂を製造することができる。
【0031】
反応溶媒としては、たとえばN―メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、1,3―ジメチル-2-イミダゾリジノンなどの非プロトン性極性溶媒があげられる。
【0032】
前記反応により製造される芳香族ポリアミドイミド樹脂は、その末端基がカルボキシル基でもイソシアネート基をジオール化合物と反応させて水酸基にしてもよい。
【0033】
ビスアリル化合物としては、分子内にビスアリル基を有する熱架橋剤を意味するものであって、具体的には、たとえばN,N’-m-キシレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミドなどのビスアリルマレイミド化合物、N,N’-m-キシレンビスナジイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスアリルナジイミドなどのビスアリルナジイミド化合物があげられる。
【0034】
ビスアリル化合物は芳香族ポリアミドイミド樹脂および親水性カチオンポリマー樹脂と相溶し、電着塗膜に共析する。架橋反応は熱架橋イミド樹脂間あるいは芳香族アミドイミド樹脂、親水性カチオンポリマー樹脂中に存在する水酸基との間でなされる。
【0035】
なお、ビスアリル化合物の組成割合が5重量%より少ないときは各樹脂間の相溶性が低下し樹脂が水中に分散、あるいは溶解しにくい。結果として外観平滑性、絶縁性も低下する。15重量%より大きい場合は架橋過多となり、十分な屈曲性が得られない。熱架橋イミドの組成割合としては、上記のとおり5~15重量%が好ましく、さらに5~10重量%がより好ましい。
【0036】
親水性カチオンポリマーとしては、たとえばアクリル共重合体、エポキシアミンアダクト樹脂などがあげられる。
【0037】
アクリル共重合体としては、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルアミノ誘導体、ヒドロキシアルキル誘導体、ビニル誘導体を共重合させたものがあげられる。
【0038】
アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルアミノ誘導体としては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドなどがあげられる。
【0039】
アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルヒドロキシ誘導体としては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルなどがあげられる。
【0040】
ビニル誘導体としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボニル、メタクリル酸2-(パーフロロオクチル)エチル、メタクリル酸トリフロロメチル、スチレンなどがあげられる。
【0041】
前記共重合体は、既知のものであってもよく、適宜前記アクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体を共重合させたものであってもよい。共重合は既知の方法によって実施することができ、たとえば、前記アクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体を溶媒に溶解し、重合開始剤の存在下に、加熱還流下で反応させることにより、実施することができる。
【0042】
また、エポキシアミンアダクト樹脂としては、エポキシ樹脂のエポキシ基を1級および2級アミンで変性したものがあげられる。
【0043】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(三菱ケミカル株式会社製))およびノボラックフェノール型エポキシ樹脂(商品名:エピコート152、エピコート154(三菱ケミカル株式会社製))などがあげられる。
【0044】
1級アミンとしては、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノn-プロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミンなどを用いることができ、2級アミンとしては、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジn-プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミン、ジn-ブチルアミンなどを用いることができる。
【0045】
エポキシアミンアダクト樹脂の製造方法は、既知のものであってよく、適宜前記エポキシ樹脂のエポキシ基を1級および2級アミンで変性することにより製造することができる。たとえば、エポキシ樹脂を溶媒に溶解し、加温撹拌下に前記アミンを徐々に加え、加熱することにより、容易に製造することができる。
【0046】
親水性カチオンポリマーは、芳香族ポリアミドイミド樹脂およびビスアリル化合物を酸性水中に分散させ、電着塗装法により被塗物に芳香族ポリアミドイミド樹脂およびビスアリル化合物を析出させる。
【0047】
なお、親水性カチオンポリマーが5重量%より小さい場合は、樹脂が水に溶解しにくく、15重量%より大きい場合は、ポリイミド樹脂およびビスアリル化合物の共析率が低下し、耐熱性、絶縁性が得られない。親水性カチオンポリマーの組成割合としては、上記のとおり5~15重量%が好ましく、5~10重量%がさらに好ましい。
【0048】
なお、上記樹脂の混合物を水中に分散させるための中和剤としては、乳酸、酢酸、蟻酸、コハク酸、酪酸などの有機酸を用いることができる。使用量としては塗料1リットルに対して0.2~8gであり、0.5g~7gがより好ましく、1~6gがさらに好ましい。
【0049】
本発明における被塗物は、金属はもちろんのことであるが、シリコン、チタン酸インジウムなど半導体、電気伝導性セラミックス微粒子など、電気伝導性を有するすべての導体に適用できる。すなわち、対象基材は、電着塗装ができれば限定はないが、ステンレススチール(SUS304)、アルミニウムもしくはアルマイトを施したアルミニウム素材、めっき素材またはめっきを施した物品、ダイカストなどにも適用できる。
【0050】
めっき素材としては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、たとえば、純鉄、炭素鋼、高抗張力鋼(低合金鋼、マルエージング鋼)、磁性鋼、非磁性鋼、高マンガン鋼、ステンレス鋼(マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト・フェライト系ステンレス、析出硬化型ステンレスなど)、超合金鋼などの鉄系金属、銅および銅合金(無酸素銅、りん青銅、タフピッチ銅、アルミ青銅、ベリリウム銅、高力黄銅、丹銅、洋白、黄銅、快削黄銅、ネバール黄銅など)、鉄・ニッケル合金、ニッケル・クロム合金、ニッケル、クロム、アルミニウムおよびアルミニウム合金、マグネシウムおよびマグネシウム合金、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびこれらの合金、モリブデン、タングステンおよびこれらの合金、ニオブ、タンタルおよびこれらの合金、セラミックス微粒子類(アルミナ、ジルコアなど)などがあげられる。
【0051】
めっき素材表面に施されるめっきの種類は特に制限されず、この分野で常用されるめっきをいずれも採用できる。
【0052】
たとえば、銅・ニッケル・クロムめっき、ニッケル・ボロン・タングステンめっき、ニッケル・ボロンめっき、黄銅めっき、ブロンズめっきなどの各種合金めっき、金めっき、銀めっき、銅めっき、錫めっき、ロジウムめっき、パラジウムめっき、白金めっき、カドミウムめっき、ニッケルめっき、クロムめっき、黒色クロムめっき、亜鉛めっき、黒色ニッケルめっき、黒色ロジウムめっき、亜鉛めっき、工業用(硬質)クロムめっきなどがあげられる。また、ダイカストとしては、亜鉛ダイカスト、アルミニウムダイカスト、マグネシウムダイカストおよび焼結合金ダイカストなどがあげられる。
【0053】
さらに、本発明において、被塗物としては、電着塗装が可能なものであれば、特に限定されない。たとえば、電子部品、具体的にはトランジスタ、ダイオード等の半導体素子、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、トランス等の受動素子(チップ部品)、電磁石、ソレノイド、電気モータ、リレー、スピーカー、メーター等の電磁石関係部品、水晶振動子、セラミック発信子等の圧電素子、電線、プリント配線板、コネクタ、ソケット、プラグ、スイッチ等の配線関係部品、テストプローブ、プローブガイド、検査用テストピン、検査用ベース材、電気接点等の電子部品検査用装置部材、LED、電球、蛍光灯、ヒーター、電熱線、ヒューズ、アンテナ、ヒートシンク、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の2次電池、直流モータ、ユニバーサルモータ、同期モータ、誘導モータ等の交流モータ、ステッピングモータなどのモータ、トロイダルコイル、チョークコイル、エッジワイズコイル、リアクトルコイルなどのコイル関係部品、自動車の内燃機関の排気通路、吸気通路、それらを接続する排気再循環通路、該通路に設置される、排気循環流量調整弁、それを収納する金属製の排気再循環筐体、それらに使用される配管部品、圧力センサ等の電子部品、電子機器、電子部品、電子機器を保護するケース、カバー部品などの排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)EGRユニット、ラジエータ、インタークーラー、オイルクーラー(エンジンオイル用/ステアリング用/トランスミッション用/デフ用パワーテイクオフ用/)、エバポレーター、コンデンサ(凝縮器)、ヒーターコア、空冷エンジンのヒートエクスチェンジャー(暖房用排気熱交換器)などの熱交換器、モータ、発電機など電気機器に用いられる軸受け、それらの電子部品、電子機器を収納するケース、カバー部品、検査用部品などがあげられる。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により限定されるものではない。
【0055】
本発明の効果は、膜厚(JIS K5600-1-7)、外観(目視)、鉛筆硬度(JIS K5600-5-4)、碁盤目剥離試験(JIS K5600-5-6)、屈曲性試験(JIS K5600-5-1)、耐熱試験(220℃で500時間加熱後の絶縁耐圧測定)の評価項目で評価した。
【0056】
<評価方法>
各評価項目と評価方法は以下のとおりである。
膜厚:JIS試験法(K5600-1-7)に従い、マイクロメーターを用い、塗装前後の試験片の厚みを測定し、差を算出して膜厚とした。
【0057】
外観:試験片を目視及び指触で観察することにより、表面状態および平滑かどうかを判定した。
【0058】
鉛筆硬度:JIS試験法(K5600-5-4)に従い、試験片を水平な塗膜面に次第に硬度を増して鉛筆を押しつけることによって鉛筆硬度を測定した。試験の間,鉛筆は塗面に対して角度45ー,荷重750gで加圧するように取り付ける
【0059】
碁盤目剥離試験:JIS試験法(K5600-5-6)に従い、試験片に多重刃カッターを用い1mm間隔に10本碁盤目切り目をいれ、粘着テープを張り瞬間的に引きはがして、剥がれの状態を確認することにより、判定した。100/100(剥がれ無し)を合格とした。
【0060】
耐熱試験:加熱前の絶縁性は、試験片を耐電圧試験器(MODEL 8526、鶴賀電機株式会社製)を用いて測定した。また、220℃、500時間の耐熱試験を実施後、耐電圧を同様に測定し、加熱前後の絶縁性の変化を評価した。
【0061】
屈曲試験:JIS試験法(K5600-5-1)に従い、円筒型マンドレル屈曲試験機NO.514型、(安田精機製作所製)を用いて、試験片を180°折り曲げて、割れ抵抗性をマンドレル径で判定する。亀裂及び剥がれが発生しない最小の径で判定し、小さい程、屈曲性(折り曲げ性)が優れており良好であるが、最も小さい径である2mmでも亀裂及び剥がれが発生しない事を合格と判定した。
【0062】
芳香族ポリアミドイミド樹脂としてA-1、A-2の2種類、ビスアリル化合物としてB-1、B-2の2種類、親水性カチオンポリマーとしてC-1、C-2の2種類をそれぞれ用いた。
【0063】
芳香族ポリアミドイミド樹脂A-1の合成
N-メチルピロリドン(NMP)127gと4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート69g(0.28モル)と無水トリメリット酸58g(0.3モル)の混合物を、撹拌下に、150℃で3時間反応させて末端が-COOH基である芳香族ポリアミドイミド(PAI)溶液(PAI/NMP=50/50%)を得た。
【0064】
芳香族ポリアミドイミド樹脂A-2の合成
N-メチルピロリドン(NMP)129.8gと4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート74g(0.3モル)と無水トリメリット酸54g(0.28モル)とを用いる他は、前記と同様に実施して、末端が-NCO基である芳香族ポリアミドイミド(PAI)溶液を得た。60℃まで冷却後1,4ブタンジオール1.8g(0.02モル)を加えて、60℃、3時間攪拌してポリアミドイミドのNCO基を1,4-ブタンジオールと反応させて末端-OH基ポリアミドイミド溶液を得た。(PAI/NMP=50/50%)
【0065】
ビスアリル化合物B-1としてN,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドを用いた。
【0066】
ビスアリル化合物B-2としてN,N’-m-キシレンビスナジイミドを用いた。
【0067】
親水性カチオンポリマーC-1の製造
イソプロピルアルコール60gを加熱還流し、これに2,2,2-トリフルオロメチルメタリレート25g、メタクリル酸メチル20g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル30g、アクリル酸n-ブチル25g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル15g、スチレン25gおよび重合開始剤であるベンゾインパーオキサイドを1gの混合物を、8分割し、10分間隔で順次滴下する。
【0068】
ついで、70~80℃で5~6時間反応させ、反応液にベンゾインパーオキサイドを0.1g添加し、さらに約1時間モノマー臭がなくなるまで還流させ、固形分濃度70%、粘度20,000cps(25℃)、MEQ63の黄色透明な樹脂溶液を得た。
【0069】
親水性カチオンポリマーC-2の製造
500gのエピコート1001をプロピレングリコールモノメチルエーテル300g溶解し、90℃を保ちつつ、撹拌下にメチルエタノールアミン200gを、60分間を要して滴下する。滴下終了後120℃で90分間加熱し、固形分濃度70%、粘度13,000cps(25℃)、MEQ190の黄色透明な樹脂溶液を得た。
【0070】
(1)実施例1~6、比較例1~4の塗料作成
表1に記載のとおり、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ビスアリル化合物および親水性カチオンポリマーをそれぞれ適量混合する。酸中和剤として乳酸を加えて60℃、2時間混合、中和し、純水を投入して水中に分散させて実施例1~6、比較例1~4の水性電着塗料を製造した。
【0071】
(2)電着塗装
次に、塗膜の特性評価を行うために試験片への電着塗装を行った。
表1に記載の実施例1~6および比較例1~4の塗料を2リットル槽に入れ、液温を25℃に保持する。陽極にカーボン板を使用し、陰極に試験片である銅板(150×100mm)を使用して電着塗装を行った。
【0072】
まず、銅板を50℃で5分間の弱アルカリ脱脂を行い、水洗する。濃度1%の硝酸を用いて室温で1分間の中和を行い水洗する。
【0073】
ついで、イオン交換水洗を行い、実施例1~6および比較例1~4の塗料を用いて電圧100Vで1分間の電着塗装を行う。水洗し、乾燥(100℃で15分間)した後、180℃、30分間の焼付を行う。
【0074】
試験片に対して各種測定および試験を行い、塗膜の特性評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
表中の記号は以下のことを表す。
*:塗料化できなかったことを示す。**:肌荒れ、ピンホールが認められたことを示す。
***:クラックが発生し絶縁測定不可
【0076】
また、評価結果において以下のとおり。
注1:表中の基盤目剥離試験の結果は、基盤上の100個の基盤目に対して剥離した基盤目数を表す。
注2:表中の絶縁性1は、加熱前の耐電圧(kV)を示す。
注3:表中の絶縁性2は、加熱後の耐電圧(kV)を示す。
注4:表中の絶縁変化率は、「加熱後の耐電圧(kV)/加熱前の耐電圧(kV)×100」で算出したものである。
注5:比較例1は、樹脂が分離沈降して塗料化できなかった。
【0077】
比較例1は親水性カチオンポリマーを含まない組成、比較例2はビスアリル化合物を含まない組成、比較例3は芳香族ポリアミドイミド樹脂が本発明の範囲外となる組成、比較例4は既存の電着塗料(株式会社シミズ製、商品名 エレコートPI)である。
【0078】
まず、表1から明らかなように、膜厚に関しては、実施例が30μm±2μmの範囲に収まっているのに対して、比較例2は40μmと厚くなっており表面の凹凸があり、外観でも塗膜にピンホールも見られたが、これはビスアリル化合物が配合されてないため、樹脂間の絡み合いならびに相溶が十分になされず、電着粒子が崩れ、膜厚及び外観に異常をきたしたものと考えられる。比較例3は芳香族ポリアミドイミド樹脂が本発明の範囲外となる組成であるが、アミドイミド成分が少ないため耐熱絶縁性が不十分な結果を示した。
【0079】
鉛筆硬度においては、ビスアリル化合物の配合量が多い程高い数字を示した。碁盤目剥離試験では、比較例2を除いては100/100であった。比較例2はビスアリル化合物が配合されてないため、樹脂間の絡み合いならびに相溶が十分になされず、塗膜の連続性が無く密着性が低下したと考えられる。
【0080】
耐熱絶縁性は過熱試験220℃、500時間の前後での絶縁性の変化で評価した。実施例に関しては、耐熱試験後の絶縁性も大きな変化が無く良好であるのに対して、比較例2は加熱前でも絶縁性が低く、比較例3および4は耐熱試験後の絶縁性が大きく劣化した。これは耐熱成分である芳香族ポリアミド樹脂もしくはポリイミド樹脂成分が少ないため、塗膜劣化が起こったものと考えられる。
【0081】
屈曲性については、実施例に関しては2mm径でも亀裂及び剥がれが生じず、屈曲性は良好といえるが、比較例2では8mm径で亀裂が発生し、比較例3では2mm径で亀裂が発生し、比較例4では6mm径で亀裂が発生したため、屈曲性は不足しているとの結果であった。
【0082】
以上のように、本発明の電着塗料組成物およびこれを含む水性電着塗料は、塗膜を形成させた場合には、該塗膜に優れた耐熱性および絶縁性を付与し、屈曲性も向上するとともに安全面および環境面においても優れた特性を有している、
【0083】
本発明によれば、ビスアリル化合物、親水性カチオンポリマーおよび芳香族ポリアミドイミド樹脂の三者をブレンドすることにより、樹脂間の絡み合いならびに相溶をもって親水性カチオンポリマーと芳香族ポリアミドイミド樹脂を反応させることなく水中への分散を可能としている。すなわち、親水性カチオンポリマーと芳香族ポリアミドイミドだけでは電着塗料化しても分離沈降が生じるが、親水性カチオンポリマーと芳香族ポリアミドイミド樹脂に相溶するビスアリル化合物を含有することにより、反応させることなく、電着塗料組成物として安定する。
【0084】
また組成の特性により耐熱性、および絶縁性、屈曲性が向上し、有機溶剤の使用量が少なくなることで均一コーティング性が良好でかつ安全面および環境面についても優れた特性を有している。