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特開2022-185356反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185356
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20221207BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20221207BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/54
C23C14/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092981
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】山形 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】合田 歩美
(72)【発明者】
【氏名】中野 秀亮
(72)【発明者】
【氏名】市川 顯二郎
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 大輔
【テーマコード(参考)】
2H195
4K029
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195CA01
2H195CA07
2H195CA12
2H195CA15
2H195CA16
2H195CA17
2H195CA22
2H195CA23
4K029HA02
4K029HA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、極端紫外領域の波長の光を光源としたパターニング転写用の反射型フォトマスクの射影効果を抑制または軽減し、且つ水素ラジカル耐性を有する反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを提供する。
【解決手段】本実施形態に係る反射型フォトマスクブランク10は、基板1と、反射部5と、低反射部4とをこの順に備え、低反射部4は、多層反射膜2とキャッピング層3とを備え、低反射部4は、高消衰係数材料と、Taと、Ti、Nb、W、及びMoからなる材料群のうち少なくとも一種と、を含み、且つ高消衰係数材料を50at%よりも多く含み、低反射部4における、Ti、Nb、W、及びMoからなる材料群のうち少なくとも一種の含有率はTaの含有率以下であり、低反射部4の合計膜厚は45nm以下であり、低反射部4のOD値は、1.0以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外線を光源としたパターン転写用の反射型フォトマスクを作製するための反射型フォトマスクブランクであって、
基板と、
前記基板上に形成されて入射した光を反射する反射部と、
前記反射部上に形成されて入射した光を吸収する低反射部と、を備え、
前記反射部は、多層反射膜と、キャッピング層とを備え、
前記低反射部は、EUV光に対する消衰係数が0.041よりも大きな材料である高消衰係数材料と、タンタル(Ta)と、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種と、を含み、且つ前記高消衰係数材料を50at%よりも多く含み、
前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種の含有率は、前記タンタル(Ta)の含有率以下であり、
前記低反射部の合計膜厚は、45nm以下であり、
前記低反射部のOD値(Optical Density:光学濃度)は、1.0以上であることを特徴とする反射型フォトマスクブランク。
【請求項2】
前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種の含有率は、前記タンタル(Ta)の全原子数に対して2.5at%以上であることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項3】
前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種の含有率は、前記タンタル(Ta)の全原子数に対して5at%以上であることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項4】
前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、又はモリブデン(Mo)の含有率は、前記タンタル(Ta)の全原子数に対して2.5at%以上であり、且つ前記タンタル(Ta)の含有率以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項5】
前記低反射部は、前記高消衰係数材料として、錫(Sn)と酸素(O)とを含む材料、及びインジウム(In)と酸素(O)とを含む材料の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の反射型フォトマスクブランク。
【請求項6】
極端紫外線を光源としたパターン転写用の反射型フォトマスクであって、
基板と、
前記基板上に形成されて入射した光を反射する反射部と、
前記反射部上に形成されて入射した光を吸収する低反射部と、を備え、
前記反射部は、多層反射膜と、キャッピング層とを備え、
前記低反射部は、EUV光に対する消衰係数が0.041よりも大きな材料である高消衰係数材料と、タンタル(Ta)と、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種と、を含み、且つ前記高消衰係数材料を50at%よりも多く含み、
前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種の含有率は、前記タンタル(Ta)の含有率以下であり、
前記低反射部の合計膜厚は、45nm以下であり、
前記低反射部のOD値(Optical Density:光学濃度)は、1.0以上であることを特徴とする反射型フォトマスク。
【請求項7】
前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種の含有率は、前記タンタル(Ta)の全原子数に対して2.5at%以上であることを特徴とする請求項6に記載の反射型フォトマスク。
【請求項8】
前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種の含有率は、前記タンタル(Ta)の全原子数に対して5at%以上であることを特徴とする請求項6に記載の反射型フォトマスク。
【請求項9】
前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、又はモリブデン(Mo)の含有率は、前記タンタル(Ta)の全原子数に対して2.5at%以上であり、且つ前記タンタル(Ta)の含有率以下であることを特徴とする請求項6に記載の反射型フォトマスク。
【請求項10】
前記低反射部は、前記高消衰係数材料として、錫(Sn)と酸素(O)とを含む材料、及びインジウム(In)と酸素(O)とを含む材料の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の反射型フォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外領域の光を光源としたリソグラフィで使用する反射型フォトマスク及びこれを作製するための反射型フォトマスクブランクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体デバイスの微細化に伴い、フォトリソグラフィ技術の微細化に対する要求が高まっている。フォトリソグラフィにおける転写パターンの最小解像寸法は、露光光源の波長に大きく依存し、波長が短いほど最小解像寸法を小さくできる。このため、露光光源は、従来の波長193nmのArFエキシマレーザー光から、波長13.5nmのEUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外線)領域の光に置き換わってきている。
【0003】
EUV領域の光は、ほとんどの物質で高い割合で吸収されるため、EUV露光用のフォトマスク(EUVマスク)としては、反射型のフォトマスクが使用される(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ガラス基板上にモリブデン(Mo)層及びシリコン(Si)層を交互に積層した多層膜からなる反射層を形成し、その上にタンタル(Ta)を主成分とする吸収層を形成し、この吸収層にパターンを形成することで得られたEUVフォトマスクが開示されている。
【0004】
また、EUVリソグラフィは、前記のように、光の透過を利用する屈折光学系が使用できないことから、露光機の光学系部材もレンズではなく、反射型(ミラー)となる。このため、反射型フォトマスク(EUVマスク)への入射光と反射光とが同軸上に設計できない問題があり、通常、EUVリソグラフィでは、光軸をEUVマスクの垂直方向から6度傾けて入射し、マイナス6度の角度で反射する反射光を半導体基板に導く手法が採用されている。
【0005】
このように、EUVリソグラフィではミラーを介し光軸を傾斜させることから、EUVマスクに入射するEUV光がEUVマスクのマスクパターン(パターン化された吸収層)の影をつくる、いわゆる「射影効果」と呼ばれる問題が発生することが知られている。
【0006】
現在のEUVマスクブランクでは、吸収層として膜厚60nm~90nmのタンタル(Ta)を主成分とした膜が用いられている。このマスクブランクを用いて作製したEUVマスクでパターン転写の露光を行った場合、EUV光の入射方向とマスクパターンの向きとの関係によっては、マスクパターンの影となるエッジ部分で、コントラストの低下を引き起こす恐れがある。これに伴い、半導体基板上の転写パターンのラインエッジラフネスの増加や、線幅が狙った寸法に形成できないなどの問題が生じ、転写性能が悪化することがある。
【0007】
そこで、吸収層をタンタル(Ta)からEUV光に対する吸収性(消衰係数)が高い材料への変更や、タンタル(Ta)に吸収性の高い材料を加えた反射型フォトマスクブランクが検討されている。例えば、特許文献2では、吸収層を、タンタル(Ta)を主成分として50原子%(at%)以上含み、さらにテルル(Te)、アンチモン(Sb)、白金(Pt)、ヨウ素(I)、ビスマス(Bi)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、タングステン(W)、レニウム(Re)、錫(Sn)、インジウム(In)、ポロニウム(Po)、鉄(Fe)、金(Au)、水銀(Hg)、ガリウム(Ga)及びアルミニウム(Al)から選ばれた少なくとも一種の元素を含む材料で構成した反射型フォトマスクブランクが記載されている。
【0008】
さらに、ミラーは、EUV発生による副生成物(例えば錫(Sn))や炭素(C)などによって汚染されることが知られている。汚染物質がミラーに蓄積することにより、ミラー表面の反射率が減少し、リソグラフィ装置のスループットが低下することがある。この問題に対し、特許文献3では、装置内に水素ラジカルを生成することで、水素ラジカルと汚染物質とを反応させて、ミラーからこの汚染物質を除去する方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の反射型フォトマスクブランクでは、水素ラジカルに対する耐性については言及されていない。そのため、EUV露光装置への導入によって吸収層に形成された転写パターン(マスクパターン)を安定的に維持できず、結果として転写性が悪化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-176162号公報
【特許文献2】特開2007-273678号公報
【特許文献3】特開2011-530823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、極端紫外領域の波長の光を光源としたパターニング転写用の反射型フォトマスクの射影効果を抑制または軽減し、且つ水素ラジカル耐性を有する反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクを提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、光吸収層に水素ラジカル耐性を付与することで、転写性が悪化する可能性を低減した反射型フォトマスク及びそれを作製するための反射型フォトマスクブランクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランクは、極端紫外線を光源としたパターン転写用の反射型フォトマスクを作製するための反射型フォトマスクブランクであって、基板と、前記基板上に形成されて入射した光を反射する反射部と、前記反射部上に形成されて入射した光を吸収する低反射部と、を備え、前記反射部は、多層反射膜と、キャッピング層とを備え、前記低反射部は、EUV光に対する消衰係数が0.041よりも大きな材料である高消衰係数材料と、タンタル(Ta)と、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種と、を含み、且つ前記高消衰係数材料を50at%よりも多く含み、前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種の含有率は、前記タンタル(Ta)の含有率以下であり、前記低反射部の合計膜厚は、45nm以下であり、前記低反射部のOD値(Optical Density:光学濃度)は、1.0以上である。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクは、極端紫外線を光源としたパターン転写用の反射型フォトマスクであって、基板と、前記基板上に形成されて入射した光を反射する反射部と、前記反射部上に形成されて入射した光を吸収する低反射部と、を備え、前記反射部は、多層反射膜と、キャッピング層とを備え、前記低反射部は、EUV光に対する消衰係数が0.041よりも大きな材料である高消衰係数材料と、タンタル(Ta)と、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種と、を含み、且つ前記高消衰係数材料を50at%よりも多く含み、前記低反射部における、前記チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種の含有率は、前記タンタル(Ta)の含有率以下であり、前記低反射部の合計膜厚は、45nm以下であり、前記低反射部のOD値(Optical Density:光学濃度)は、1.0以上である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、極端紫外領域の波長の光を光源としたパターニングにおいて半導体基板への転写性能が向上し、フォトマスクの製造時、並びに使用時において外部環境に対し耐性を期待できる。つまり、本発明の一態様に係る反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクであれば、極端紫外領域の波長の光を光源としたパターニング転写用の反射型フォトマスクの射影効果を抑制または軽減し、且つ、水素ラジカル耐性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクブランクの構造を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクの構造を示す概略断面図である。
図3】EUV光の波長における屈折率nと消衰係数kを示すマップである。
図4】本発明の実施形態の変形例に係る反射型フォトマスクの構造を示す概略断面図である。
図5】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクブランクの構造を示す概略断面図である。
図6】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクの製造工程を示す概略断面図である。
図7】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクの製造工程を示す概略断面図である。
図8】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクの製造工程を示す概略断面図である。
図9】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクの構造を示す概略断面図である。
図10】本発明の実施例に係る反射型フォトマスクの設計パターンの形状を示す概略平面図である。
図11】本発明の比較例に係る反射型フォトマスクブランクの構造を示す概略断面図である。
図12】本発明の比較例に係る反射型フォトマスクの構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
図1は、本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクブランク10の構造を示す概略断面図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る反射型フォトマスク20の構造を示す概略断面図である。ここで、図2に示す本発明の実施形態に係る反射型フォトマスク20は、図1に示す本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクブランク10の低反射部4をパターニングして形成したものである。
【0017】
(全体構造)
図1に示すように、本発明の実施形態に係る反射型フォトマスクブランク10は、基板1と、基板1上に形成された多層反射膜2と、多層反射膜2の上に形成されたキャッピング層3を備えている。これにより、基板1上には多層反射膜2及びキャッピング層3を有する反射部5が形成されており、反射部5上に低反射部4を備えている。
【0018】
(基板)
本発明の実施形態に係る基板1には、例えば、平坦なシリコン(Si)基板や合成石英基板等を用いることができる。また、基板1には、チタン(Ti)を添加した低熱膨張ガラスを用いることができるが、熱膨張率の小さい材料であれば、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
(多層反射膜)
本発明の実施形態に係る多層反射膜2は、露光光であるEUV光(極端紫外光)を反射するものであればよく、EUV光に対する屈折率の大きく異なる材料の組み合わせによる多層反射膜であってもよい。多層反射膜2としては、例えば、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)、またはモリブデン(Mo)とベリリウム(Be)といった組み合わせの層を40周期程度繰り返し積層することにより形成したものであってもよい。
【0020】
(キャッピング層)
本発明の実施形態に係るキャッピング層3は、低反射部4に転写パターン(マスクパターン)を形成する際に行われるドライエッチングに対して耐性を有する材質で形成されており、低反射部4をエッチングする際に、多層反射膜2へのダメージを防ぐエッチングストッパとして機能するものである。キャッピング層3は、例えば、Ru(ルテニウム)で形成されている。ここで、多層反射膜2の材質やエッチング条件により、キャッピング層3は形成されていなくてもかまわない。また、図示しないが、基板1の多層反射膜2を形成していない面に裏面導電膜を形成することができる。裏面導電膜は、反射型フォトマスク20を露光機に設置するときに静電チャックの原理を利用して固定するための膜である。
【0021】
(低反射部)
図2に示すように、反射型フォトマスクブランク10の低反射部4の一部を除去することにより、即ち低反射部4をパターニングすることにより、反射型フォトマスク20の低反射部パターン4aが形成される。EUVリソグラフィにおいて、EUV光は斜めに入射し、反射部5で反射されるが、低反射部パターン4aが光路の妨げとなる射影効果により、ウェハ(半導体基板)上への転写性能が悪化することがある。この転写性能の悪化は、EUV光を吸収する低反射部4の厚さを薄くすることで低減される。低反射部4の厚さを薄くするためには、従来の材料よりEUV光に対し吸収性の高い材料、つまり波長13.5nmに対する消衰係数kの高い材料を適用することが好ましい。
【0022】
図3は、一部の金属材料のEUV光の波長13.5nmに対する光学定数を示すグラフである。図3の横軸は屈折率nを表し、縦軸は消衰係数kを示している。従来の低反射部4の主材料であるタンタル(Ta)の消衰係数kは0.041である。それより大きい消衰係数kを有する材料であれば、従来に比べて低反射部4の厚さを薄くすることが可能である。
上記のような消衰係数kを満たす材料としては、図3に示すように、例えば、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、インジウム(In)、コバルト(Co)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、テルル(Te)がある。
【0023】
反射部5からの反射光の強度をRmとし、低反射部4からの反射光の強度をRaとし、反射部5と低反射部4の光強度のコントラストを表す指標である光学濃度(OD:Optical Density)値は、以下の式(1)で規定される。
OD=-log(Ra/Rm) ・・・式(1)
OD値は大きいほうがコントラストは良く、高い転写性が得られる。パターン転写にはOD>1が必要であるが、上記従来との比較により、OD値は1.5以上であると、更に好ましい。
【0024】
従来のEUV反射型フォトマスクの低反射部4には、上述のようにTaを主成分とする化合物材料が適用されてきた。この場合、OD値で1以上を得るには、低反射部4の膜厚は40nm以上必要であり、OD値で2以上を得るには、低反射部4の膜厚は70nm以上必要であった。タンタル(Ta)の消衰係数kは0.041であり、消衰係数kが0.041よりも大きい材料を主成分とする場合、タンタル(Ta)を主成分に用いた場合に比べて低反射部4の薄膜化が可能であるが、特に、錫(Sn)とインジウム(In)の各酸化物は塩素系ガスによるエッチング加工が可能であるため低反射部4の候補材料として望ましい。
【0025】
例えば、消衰係数kが0.06以上の錫(Sn)と酸素(O)とを含む材料、あるいはインジウム(In)と酸素(O)とを含む材料を低反射部4に適用することで、少なくともOD値が1以上であれば低反射部4の膜厚を17nmまで薄膜化することが可能であり、OD値が2以上であれば低反射部4の膜厚を45nm以下にすることが可能である。ただし、低反射部4の膜厚が45nmを超えると、従来のTaを主成分とした化合物材料で形成された膜厚60nmの低反射部4と射影効果が同程度となってしまう。
【0026】
そのため、本発明の実施形態における低反射部4は、消衰係数kが0.041よりも大きい材料(以下、高消衰係数材料とも称する)を50at%よりも多く含み、その膜厚が45nm以下であることを特徴とする。つまり、低反射部4の膜厚が45nm以下の範囲内であると、タンタル(Ta)を主成分とした化合物材料で形成された従来の低反射部4に比べて、射影効果を十分に低減することができ、転写性能が向上する。また、上述の高消衰係数材料の含有量は、低反射部4全体の原子数に対して55at%以上であれば好ましく、60at%以上であればさらに好ましい。
また、上述した「主成分」とは、低反射部4全体の原子数に対して50at%以上含んでいる成分をいう。
【0027】
更に、微細なパターンを転写するためには、反射部5と低反射部4から反射した光の強度のコントラストは高い方が望ましい。よって、低反射部4のOD値は1.5以上であることが、より好ましい。
なお、高消衰係数材料のうち錫(Sn)と酸素(O)とを含む材料、あるいはインジウム(In)と酸素(O)とを含む材料は、塩素系ガスに対するエッチング加工性に優れ、かつ、高融点であるため露光による耐熱性が高いという特徴を有する。
また、高消衰係数材料のうち錫(Sn)と酸素(O)とを含む材料は、洗浄耐性にも優れるという特徴を有する。
【0028】
また、反射型フォトマスク20は、水素ラジカル環境下に曝されるため、低反射部4を構成する材料が水素ラジカル耐性の高い光吸収材料でなければ、反射型フォトマスク20は長期の使用に耐えられない。本実施形態においては、マイクロ波プラズマを使って、電力1kWで水素圧力が0.36ミリバール(mbar)以下の水素ラジカル環境下で、膜減り速さ0.1nm/s以下の材料またはその材料で形成された層を、水素ラジカル耐性の高い材料または層とする。
【0029】
しかしながら、高消衰係数材料には水素ラジカル耐性の低い材料が存在し、例えば、低反射部4を構成する材料として酸化錫のみを用いた場合や、例えば、錫(Sn)と酸素(O)の原子数比が1:2以下(即ち、錫(Sn)と酸素(O)との原子数比(O/Sn)が0.5未満)の材料を用いた場合では、水素ラジカル耐性が良好でないことが確認された。
なお、上記原子数比は、膜厚1μmに成膜された材料をEDX(エネルギー分散型X線分析)で測定した結果である。
【0030】
ここで、後述するタンタル(Ta)を含み、且つ、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群(以下、添加合金材料とも称する)のうち少なくとも一種を含む材料は、低反射部4の水素ラジカル耐性を高める材料としての条件を満たす。
【0031】
タンタル(Ta)は、水素ラジカル耐性の向上に寄与する材料であり、上述の添加合金材料を含む材料は、タンタル(Ta)と組み合わせることで材料全体の機械的強度が高まり、化合物としての安定性の向上に寄与する材料である。
ここで、低反射部4全体の原子数に対して、タンタル(Ta)の含有量が10at%以上であり、且つ、添加合金材料の含有量がタンタル(Ta)の原子数に対して2.5at%以上であれば、上述の水素ラジカル耐性試験における低反射部4の膜減り速さが0.1nm/s以下となった。これにより、上記組成の材料は、水素ラジカル耐性の高い材料であることが確認された。
【0032】
また、上述のタンタル(Ta)の含有量は、低反射部4全体の原子数に対して15at%以上であれば好ましく、20at%以上であればさらに好ましい。なお、タンタル(Ta)の含有量は、低反射部4の全体の原子数に対して50at%未満であれば高消衰係数材料の転写性の影響が大きくなるため、好ましい。また、タンタル(Ta)の含有量は、低反射部4の全体の原子数に対して40at%未満であれば高消衰係数材料の転写性の影響がさらに大きくなるため、より好ましく、35at%未満であればさらに好ましい。
【0033】
また、上述の添加合金材料の含有量は、タンタル(Ta)の原子数に対して2.5at%以上であれば優れた水素ラジカル耐性を付与できるため好ましく、5.0at%以上であればさらに好ましい。なお、添加合金材料の含有量は、タンタル(Ta)の原子数に対して15at%以下であれば好ましく、10at%以下であれば、低反射部4の光学定数への影響が微量となり、更に好ましい。
【0034】
以上のように、本実施形態の低反射部4は、EUV光に対する消衰係数が0.041よりも大きな材料である高消衰係数材料と、タンタル(Ta)と、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種を含む添加合金材料と、を含有し、且つ高消衰係数材料を、低反射部4を構成する全原子数に対して50at%よりも多く含み、低反射部4における、添加合金材料の含有率は、タンタル(Ta)の含有率以下であり、低反射部4の合計膜厚は、45nm以下であり、低反射部4のOD値は、1.0以上である。
【0035】
このような構成であれば、低反射部4に優れた水素ラジカル耐性が付与されて低反射部4の耐久性が向上し、転写性の悪化を低減した反射型フォトマスク20及びそれを作製するための反射型フォトマスクブランク10を提供することができる。
また、低反射部4における、添加合金材料の含有率は、タンタル(Ta)の全原子数に対して2.5at%以上であれば好ましく、5at%以上であればさらに好ましい。
なお、低反射部4における、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、又はモリブデン(Mo)の含有率は、タンタル(Ta)の全原子数に対して2.5at%以上であり、且つ低反射部4におけるタンタル(Ta)の含有率以下であってもよい。
【0036】
なお、低反射部4を構成する材料は、例えば、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、ストロンチウム(Sr)、テクネチウム(Tc)、ロジウム(Rh)、バリウム(Ba)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、金(Au)などを含有することで、ラフネス、面内寸法均一性、転写像の面内均一性が向上し、十分にアモルファスである材料とすることができる。
【0037】
また、低反射部4を構成する材料は、例えば、クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)などを含有することで、水素ラジカルとの反応が生じにくく、より水素ラジカル耐性のある材料とすることができる。なお、上述した材料の各含有量は、低反射部4全体の原子数に対して1at%以上10at%以下の範囲内であれば好ましく、2at%以上5at%以下の範囲内であればさらに好ましい。
【0038】
また、低反射部4を構成する材料は、例えば、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、ハフニウム(Hf)などを含有することで、図4に示すように、水素ラジカル耐性を有するような酸化皮膜6を、低反射部4の露出した表面を覆うように形成することができる。なお、上述した材料の各含有量は、低反射部4全体の原子数に対して1at%以上10at%以下の範囲内であれば好ましく、2at%以上5at%以下の範囲内であればさらに好ましい。
【0039】
また、低反射部4を構成する材料は、例えば、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、白金(Pt)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)などを含有することで、マスク洗浄に一般に使用されるSPMやAPMのような薬液に対し反応性が低く、より洗浄耐性のある材料とすることができる。
また、低反射部4を構成する材料は、例えば、窒化ケイ素(SiN)、酸化タンタル(TaO)などを含有することで、波長190nm~260nmの光吸収が高く検査光のコントラスト向上性のある材料とすることができる。
【0040】
また、低反射部4を構成する材料は、例えば、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)などを含有することで、13.5nmの波長に対する屈折率nが0.95未満であり位相シフト性を向上する材料とすることができる。
以上、低反射部4に含有可能な材料の効果の一例を記述したが、各材料の効果は上記の例に限定されず、複数に該当してもよい。
【0041】
また、反射型フォトマスク20は、上述したように、水素ラジカル環境下に曝されるため、低反射部4を構成する材料が水素ラジカル耐性の高い材料でなければ、長期の使用に耐えられない。本実施形態においては、0.36ミリバール(mbar)以下の真空中で、電力1kWのマイクロ波プラズマを使い水素プラズマを発生させ、水素ラジカルリッチな環境下において、膜減り速さが0.1nm/s以下の材料を、水素ラジカル耐性の高い材料とする。
【0042】
なお、表1に示す「水素ラジカル耐性」(膜減り速さの評価試験の結果)では、膜減り速さの測定を複数回繰り返し、その全てにおいて膜減り速さが0.1nm/s以下であった場合を「○」と評価し、水素ラジカル処理開始直後で数nmの膜減りがあったものの、その後膜減り速さが0.1nm/s以下であった場合を「△」と評価し、その全てにおいて膜減り速さが0.1nm/s超であった場合を「×」と評価した。
【0043】
以下、本発明に係る反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクの実施例について説明する。
[実施例1]
図5に示すように、低熱膨張特性を有する合成石英の基板11の上に、シリコン(Si)とモリブデン(Mo)を一対とする積層膜が40枚積層されて形成された多層反射膜12を形成する。多層反射膜12の膜厚は280nmであった。
次に、多層反射膜12上に、中間膜としてルテニウム(Ru)で形成されたキャッピング層13を、膜厚が2.5nmになるように成膜した。これにより、基板11上には多層反射膜12及びキャッピング層13を有する反射部16が形成されている。
【0044】
次に、キャッピング層13の上に、低反射部14を酸化銀(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が54:45:1の比率で均質となる材料で、その膜厚が35nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。
【0045】
次に、基板11の多層反射膜12が形成されていない側の面に窒化クロムで形成された裏面導電膜15を100nmの厚さで成膜し、実施例1の反射型フォトマスクブランク100を作製した。
基板11上へのそれぞれの膜の成膜には、多元スパッタリング装置を用いた。各々の膜の膜厚は、スパッタリング時間で制御した。
【0046】
次に、反射型フォトマスク200の作製方法について図6から図9を用いて説明する。
図6に示すように、反射型フォトマスクブランク100に備えられた低反射部14の上に、ポジ型化学増幅型レジスト(SEBP9012:信越化学社製)を120nmの膜厚にスピンコートで成膜し、110℃で10分間ベークし、レジスト膜17を形成した。
次いで、電子線描画機(JBX3030:日本電子社製)によってポジ型化学増幅型レジストで形成されたレジスト膜17に所定のパターンを描画した。その後、110℃、10分間ベーク処理を施し、次いでスプレー現像(SFG3000:シグマメルテック社製)した。これにより、図7に示すように、レジストパターン17aを形成した。
【0047】
次に、塩素系ガスを主体としたドライエッチングにより低反射部14のパターニングを行い、低反射部パターンを形成した。これにより、図8に示すように低反射部パターン14aを形成した。
次に、残ったレジストパターン17aの剥離を行い、図9に示すように本実施例に係る反射型フォトマスク200を作製した。
次に、本実施例による反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った。その後、AFM(原子間力顕微鏡)で膜厚を測定し、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、本実施例に係る反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかる。
【0048】
本実施例において、低反射部14に形成した低反射部パターン14aは、転写評価用の反射型フォトマスク200上で、線幅64nmLS(ラインアンドスペース)パターン、AFMを用いた低反射部14の膜厚測定用の線幅200nmLSパターン、EUV反射率測定用の4mm角の低反射部除去部を含んでいる。線幅64nmLSパターンは、EUVの斜め照射による射影効果の影響が見えやすくなるように、図10に示すようにx方向とy方向それぞれに設計した。
【0049】
[実施例2]
低反射部14を酸化銀(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が53.9:44:2.1の比率で均質となる材料で、その膜厚が35nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。なお、低反射部14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
【0050】
[実施例3]
低反射部14を酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が53.9:44:2.1の比率で均質となる材料で、その膜厚が35nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。なお、低反射部14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
【0051】
[実施例4]
低反射部14を酸化銀(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で、その膜厚が26nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。なお、低反射部14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
【0052】
[実施例5]
低反射部14を酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で、その膜厚が26nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。なお、低反射部14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
【0053】
[実施例6]
低反射部14を酸化インジウム(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で、その膜厚が26nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。なお、低反射部14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
【0054】
[実施例7]
低反射部14を酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとチタン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で、その膜厚が26nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。なお、低反射部14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
【0055】
[実施例8]
低反射部14を酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとニオブ(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で、その膜厚が26nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。なお、低反射部14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例8の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
【0056】
[実施例9]
低反射部14を酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとモリブデン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で、その膜厚が26nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。なお、低反射部14以外は、実施例1と同様の方法で、実施例9の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
【0057】
[比較例1]
低反射部14を酸化銀(高消衰係数材料)とタンタルが55:45の比率で均質となる材料で、その膜厚が35nmとなるよう成膜した。この時の組成比はラザフォード後方散乱分析法(RBS)による分析結果に基づき算出している。また、低反射部14の結晶性をXRD(X線回析装置)で測定したところ、アモルファスであることがわかった。これにより、反射部16上には低反射部14が形成されている。なお、低反射部14以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の反射型フォトマスクブランク100及び反射型フォトマスク200を作製した。
【0058】
[比較例2]
図11に示すように、吸収層241を窒化タンタルで形成し、その膜厚が58nmになるよう成膜した。また、最表層242は酸化タンタルで形成し、その膜厚が2nmになるよう成膜した。これにより、反射部16上には吸収層241及び最表層242を有する低反射部24が形成されている。本比較例は、従来のタンタルを主成分とした既存膜の反射型フォトマスクを想定したものである。
ただし、窒化タンタルと酸化タンタルは上層下層で分かれており、連続的に組成が変化する膜ではない。
なお、吸収層241、最表層242の成膜以外は、実施例1と同様の方法で、図11及び図12に示す比較例2の反射型フォトマスクブランク101及び低反射部パターン24aを備えた反射型フォトマスク201を作製した。
【0059】
前述の実施例及び比較例において作製した反射型フォトマスクの反射部領域の反射率Rmと低反射部領域の反射率RaとをEUV光による反射率測定装置でそれぞれ測定した。反射率Rmの測定は4mm角の低反射部除去部で行った。その測定結果から、上述した式(1)を用いてOD値を算出した。
【0060】
(ウェハ露光評価)
EUV露光装置(NXE3300B:ASML社製)を用いて、EUVポジ型化学増幅型レジストを塗布した半導体ウェハ上に、実施例及び比較例で作製した反射型フォトマスクの低反射部パターン14a、24aを転写露光した。このとき、露光量は、図10のx方向のLSパターンが設計通りに転写するように調節した。その後、電子線寸法測定機により転写されたレジストパターンの観察及び線幅測定を実施し、解像性の確認を行った。
このとき、HV-バイアスは既存膜の6.1nmを「△」、6.1nm未満であれば「○」、4.5nm以下であれば「◎」とし、OD値は1.5以上であれば「○」、1.7以上であれば「◎」とした。なお、HV-バイアスについては、「△」以上の評価であれば、使用上何ら問題はないため、合格とした。また、OD値については、「○」以上の評価であれば、使用上何ら問題はないため、合格とした。
これらの評価結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
表1において、比較例2では、吸収層241が窒化タンタルで構成され、且つその膜厚が58nm、最表層242が酸化タンタルで構成され、且つその膜厚が2nmの、Ta系既存膜におけるフォトマスクのウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。比較例2の反射型フォトマスク201のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減り速さは0.1nm/s以下となった。OD値は1.5でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアス(水平-垂直寸法差)は6.1nmとなり、解像するがシャドウイング効果の影響が大きく、転写性の低い結果となった。
【0063】
なお、比較例2の反射型フォトマスク201を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、比較例2の反射型フォトマスク201は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0064】
表1において、実施例1では、低反射部14が酸化銀(高消衰係数)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が54:45:1の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が35nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。実施例1の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル処理開始直後で1nmの膜減りがあったものの、その後膜減りは観測されなかった。OD値は2.5でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは5.7nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた。
【0065】
なお、実施例1の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、実施例1の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0066】
表1において、実施例2では、低反射部14が酸化銀(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が53.9:44:2.1の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が35nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。実施例2の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減りは観測されず、優れた水素ラジカル耐性が得られた。OD値は2.4でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは5.6nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた。
【0067】
なお、実施例2の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、実施例2の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0068】
表1において、実施例3では、低反射部14が酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が53.9:44:2.1の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が35nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。実施例3の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減りは観測されず、優れた水素ラジカル耐性が得られた。OD値は1.7でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは4.6nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた。
【0069】
なお、実施例3の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、実施例3の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0070】
表1において、実施例4では、低反射部14が酸化銀(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が26nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。実施例4の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減りは観測されず、優れた水素ラジカル耐性が得られた。OD値は1.6でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは3.8nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた
【0071】
なお、実施例4の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、実施例4の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0072】
表1において、実施例5では、低反射部14が酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が26nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。実施例5の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減りは観測されず、優れた水素ラジカル耐性が得られた。OD値は1.7でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは3.0nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた。
【0073】
なお、実施例5の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、実施例5の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0074】
表1において、実施例6では、低反射部14が酸化インジウム(高消衰係数材料)とタンタルとタングステン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が26nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。実施例6の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減りは観測されず、優れた水素ラジカル耐性が得られた。OD値は1.7でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは3.0nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた。
【0075】
なお、実施例6の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、実施例6の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0076】
表1において、実施例7では、低反射部14が酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとチタン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が26nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。実施例7の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減りは観測されず、優れた水素ラジカル耐性が得られた。OD値は1.7でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは3.0nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた。
【0077】
なお、実施例7の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、実施例7の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0078】
表1において、実施例8では、低反射部14が酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとニオブ(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が26nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。実施例8の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減りは観測されず、優れた水素ラジカル耐性が得られた。OD値は1.7でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは3.0nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた。
【0079】
なお、実施例8の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、実施例8の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0080】
表1において、実施例9では、低反射部14が酸化錫(高消衰係数材料)とタンタルとモリブデン(添加合金材料)が78:20:2の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が26nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。実施例9の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減りは観測されず、優れた水素ラジカル耐性が得られた。OD値は1.7でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは3.0nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた。
【0081】
なお、実施例9の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、実施例9の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0082】
表1において、比較例1では、低反射部14が酸化銀(高消衰係数材料)とタンタルが55:45の比率で均質となる材料で構成され、且つその膜厚が35nmのフォトマスクにおけるウェハ上のレジストパターン寸法とマスク特性とを示している。比較例1の反射型フォトマスク200のとき、水素ラジカル耐性評価による膜減り速さは0.11nm/sであった。OD値は1.7でパターン転写可能なコントラストが得られた。EUV光によるパターニングの結果、H-Vバイアスは3.0nmとなり、比較例2と比べて優れたパターン転写性が得られた。
【0083】
なお、比較例1の反射型フォトマスク200を、80℃の硫酸に10分間浸漬し、その後アンモニアと過酸化水素と水を1:1:20の割合で混合した洗浄液を満たした洗浄槽に、500Wのメガソニックを用いて10分間浸漬し、10分間流水し、洗浄を行った後、成膜時の膜厚と比較したが、膜厚に変化は見られなかった。この結果から、比較例1の反射型フォトマスク200は優れた洗浄耐性を備えることがわかった。
【0084】
実施例1と既存膜(比較例2)とを比較すると、実施例1の反射型フォトマスクの水素ラジカル耐性は既存膜を用いた反射型フォトマスクにわずかに劣るものの、実施例1の反射型フォトマスクのパターン転写性は既存膜を用いた反射型フォトマスクよりも優れることがわかった。なお、実施例1の反射型フォトマスクは、既存膜のそれより水素ラジカル耐性がわずかに劣り、パターン転写性は優れていることから、判定結果を「△」と表記し「合格」として取り扱った。
【0085】
実施例2~9と既存膜(比較例2)とを比較すると、実施例2~9の各反射型フォトマスクの水素ラジカル耐性は既存膜を用いた反射型フォトマスクと同等であり、実施例2~9の各反射型フォトマスクのパターン転写性は既存膜を用いた反射型フォトマスクよりも優れることがわかった。なお、実施例2~9の各反射型フォトマスクは、水素ラジカル耐性とパターン転写性の両方が既存膜(比較例4)のそれよりも優れているため、判定結果を「〇」と表記し「合格」として取り扱った。
比較例1の反射型フォトマスクは、水素ラジカル耐性が既存膜(比較例2)のそれよりも明らかに劣っているため、判定結果を「×」と表記し「不合格」として取り扱った。
【0086】
これにより、低反射部14が、EUV光に対する消衰係数が0.041よりも大きな材料である高消衰係数材料を50at%よりも多く含み、且つタンタル(Ta)を含み、且つチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)からなる材料群のうち少なくとも一種を含み、その含有率(添加合金材料の含有率)が低反射部14に含まれるタンタル(Ta)の含有率以下であり、膜厚が45nm以下であり、OD値が1.0以上である反射型フォトマスク200であれば、パターン転写性、水素ラジカル耐性は良好であり、射影効果を低減でき、長寿命であり且つ転写性能が高くなるという結果となった。即ち、より転写性能に優れた反射型フォトマスク200を得られることが確認できた。換言すると、上記実施形態に係る反射型フォトマスクブランク100を用いることで、極端紫外領域の波長の光を光源としたパターニング転写用の反射型フォトマスクの射影効果を抑制または軽減でき、優れた水素ラジカル耐性を有する反射型フォトマスク200を作製できることが確認できた、と言える。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る反射型フォトマスクブランク及び反射型フォトマスクは、半導体集積回路などの製造工程において、EUV露光によって微細なパターンを形成するために好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1・・・・・基板
2・・・・・多層反射膜
3・・・・・キャッピング層
4・・・・・低反射部
4a・・・・低反射部パターン
5・・・・・反射部
6・・・・・酸化皮膜
6a・・・・酸化皮膜パターン
10・・・・反射型フォトマスクブランク
20・・・・反射型フォトマスク
11・・・・基板
12・・・・多層反射膜
13・・・・キャッピング層
14・・・・低反射部
14a・・・低反射部パターン
24・・・・低反射部
241・・・吸収層
242・・・最表層
24a・・・低反射部パターン
15・・・・裏面導電膜
16・・・・反射部
17・・・・レジスト膜
17a・・・レジストパターン
100・・・反射型フォトマスクブランク
200・・・反射型フォトマスク
101・・・反射型フォトマスクブランク
201・・・反射型フォトマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12