(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185379
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】炉内覗き窓
(51)【国際特許分類】
F23M 11/04 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
F23M11/04 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093024
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】山下 岳史
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 雅光
(72)【発明者】
【氏名】山ノ口 貴敦
(57)【要約】
【課題】炉内からのガスが透明板に到達することを、大量の吹き込みガスを要することなく抑制することができる構成の炉内覗き窓を提供すること。
【解決手段】炉内覗き窓101は、筒状部材1と、筒状部材1の端部に取り付けられ、炉51の内部を覗くための透明板2と、を備える。この炉内覗き窓101は、筒状部材1に形成され、筒状部材1の軸方向Zに対して交差する方向に延びるスリット状のガス供給孔3a~6aと、ガス供給孔3a~6aから筒状部材1の内部に供給されるガスを、炉51の内部側へ導くガイド機構7と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉に設置される炉内覗き窓であって、
前記炉に一端部側が取り付けられる筒状部材と、
前記筒状部材の他端部に取り付けられ、前記炉の内部を覗くための透明板と、
を備え、
前記筒状部材に形成され、前記筒状部材の軸方向に対して交差する方向に延びるスリット状のガス供給孔と、
前記ガス供給孔から前記筒状部材の内部に供給されるガスを、前記炉の内部側へ導くガイド機構と、
を有する、炉内覗き窓。
【請求項2】
請求項1に記載の炉内覗き窓において、
前記ガイド機構の前記炉の内部側である先端よりも前記透明板側に設けられた負圧防止孔をさらに有する、炉内覗き窓。
【請求項3】
請求項2に記載の炉内覗き窓において、
前記負圧防止孔が、前記筒状部材に形成されており、
前記負圧防止孔から前記筒状部材の内部にガスが供給される、炉内覗き窓。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の炉内覗き窓において、
前記ガイド機構が、前記筒状部材の内部に配置されたガイド板である、炉内覗き窓。
【請求項5】
請求項4に記載の炉内覗き窓において、
前記ガイド板は、前記透明板から前記炉への方向において、0°を超え且つ60°以下の角度で、対向する前記筒状部材の内面に対して内側に傾斜している、炉内覗き窓。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の炉内覗き窓において、
前記筒状部材は、軸方向に対して直交する断面の形状が長方形であって、
前記筒状部材の周方向の4面全てに前記ガス供給孔が形成されている、炉内覗き窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉に設置される炉内覗き窓に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば特許文献1、2に記載の従来技術がある。その従来技術は、次のような技術である。
【0003】
特許文献1に記載の炉内覗窓装置では、覗窓本体の後方側部に、炉内方向にガス流を吹き込む第1気体供給口を設け、且つ、覗窓本体の先端開放部に、上記ガス流と交差する方向にガス流を吹き込む第2気体供給口を設けている。
上記構成により、炉内から覗窓に向かおうとする炉内ガスは、第2気体供給口から吹き出すカーテンエアにより、覗窓本体の開放部付近でシールされ、これにより、覗窓本体への炉内ガスの侵入が阻止される、とのことである。
【0004】
特許文献2に記載の覗き窓では、筒状部材内の透明板近傍にパージ流体を供給するパージ流体供給手段を設けるとともに、パージ流体供給手段から供給されたパージ流体の流れを整流する筒状多孔板を設けている。
上記構成により、筒状部材内のガスを効果的に置換することができ、透明板の汚れを防止できる、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55-79989号公報
【特許文献2】特開2005-90870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術には、次のような問題がある。まず、特許文献1に記載の技術に関し、カーテンエアの向きは、炉内から覗窓に向かおうとする炉内ガスの向きと直交する。そのため、このカーテンエアで炉内ガスをシールするには、カーテンエアとして大量のガスが必要となる。
【0007】
次に、特許文献2に記載の技術では、筒状多孔板の孔から筒状部材内へ、透明板に対して平行にパージ流体を吐出させている。この構成であると、筒状多孔板の孔から吐出するパージ流体のうち、透明板に近い側の孔から吐出したパージ流体の一部の流れは、一旦、透明板に向かう流れとなる。そのため、筒状部材が短いと、機器内部からのガスが、透明板に向かう上記パージ流体に巻き込まれ、透明板に達してしまう場合がある。その結果、上記ガスに含まれるダストで透明板が汚れる。機器内部からのガスが、透明板に達しないようにするには、大量のパージ流体を筒状部材内に供給するか、筒状部材を長くするかのいずれかを行うことを要する。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、炉内からのガスが透明板に到達することを、大量の吹き込みガスを要することなく抑制することができる構成の炉内覗き窓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、炉に設置される炉内覗き窓であって、前記炉に一端部側が取り付けられる筒状部材と、前記筒状部材の他端部に取り付けられ、前記炉の内部を覗くための透明板と、を備える。この炉内覗き窓は、前記筒状部材に形成され、前記筒状部材の軸方向に対して交差する方向に延びるスリット状のガス供給孔と、前記ガス供給孔から前記筒状部材の内部に供給されるガスを、前記炉の内部側へ導くガイド機構と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス供給孔が軸方向に対して交差する方向に延びるスリット状とされていること、および上記ガイド機構により、筒状部材内に供給されたガスが透明板に向かう反流を抑えることができ、その結果、炉内からのガスが透明板に到達することを、大量の吹き込みガスを要することなく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る炉内覗き窓の平断面図である。
【
図2】
図1に示す炉内覗き窓のA-A矢視図である。
【
図3】
図1に示す炉内覗き窓を構成する筒状部材単品の平面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る炉内覗き窓の平断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る炉内覗き窓の平断面図である。
【
図6】筒状部材に形成されるガス供給孔の変形例を示すための筒状部材単品の平面図である。
【
図8】炉内からのガスが透明板に達することを抑制できる効果を検証したときの検証方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の炉内覗き窓は、例えば、放射性廃棄物を焼却するための炉に設置されるが、本発明の炉内覗き窓は、上記炉以外の用途の焼却炉に設置されてもよい。
【0013】
(第1実施形態)
図1~3を参照しつつ本発明の第1実施形態に係る炉内覗き窓101について説明する。炉内覗き窓101は、炉51に一端部側が取り付けられる筒状部材1と、筒状部材1の他端部に取り付けられ、炉51の内部を覗くための透明板2と、を備える。なお、
図1などでは、筒状部材1の端面と、炉51の内面とが面一となっているが、筒状部材1の一部が、炉51内に挿入されてもよい。
【0014】
本実施形態の筒状部材1は、軸方向Zに対して直交する断面の形状が長方形、すなわち、矩形のダクトとされている。なお、正方形は長方形に含まれる。筒状部材1は、互いに直交する4枚の長方形の板部材3、4、5、6を有する。
【0015】
板部材3、4、5、6には、筒状部材1の軸方向Zに対して交差する方向に延びるスリット状のガス供給孔としてのスリット3a、4a、5a、6aが、それぞれ形成されている。すなわち、筒状部材1の周方向の4面全てにスリット状の上記ガス供給孔が形成されている。スリット3a~6aは、筒状部材1の軸方向Zに対して直交する方向に延びているが、軸方向Zに対して直交する方向に対して多少傾く方向に延びていてもよい。
【0016】
上記スリット3a~6aは、炉51と透明板2との間の透明板2側であって、透明板2の近くに形成されている。上記スリット3a~6aは、各板部材3~6の幅方向W(
図1に示す幅方向Wは、板部材3、5の幅方向)において、一端から他端まで形成されることが好ましいが、製作容易性等を考慮して筒状部材1の各面を1枚の板部材3~6で形成する場合は、本実施形態のように、各板部材3~6の幅方向W両端部の僅かな部分を除いて、スリット3a~6aが形成される。なお、筒状部材1の各面を2枚の板部材で形成したとしても、当該2枚の板部材を、それぞれ、後述するフランジ板12、およびボックス部材14で支持することができるので、筒状部材1の全周にわたって途切れることなく連続するスリットが、筒状部材1に形成されてもよい。
【0017】
各スリット3a~6aから筒状部材1の内部に供給されるガスを、炉51の内部側へ導くガイド機構としてのガイド板7が、筒状部材1の内部に配置されている。
【0018】
本実施形態のガイド板7は、四角錐台形状のガイド板であって、4枚の板部材8、9、10、11で構成されている。各板部材8~11は、それぞれ、上記スリット3a~6aと対向する位置に配置される。なお、筒状部材1の内部に供給されるガスを、炉51の内部側へ導ける角度であれば特に限定されるものではないが、各板部材8~11(ガイド板7)は、透明板2から炉51への方向において、0°を超え且つ60°以下の角度αで、対向する筒状部材1の内面に対して内側に傾斜していることが好ましい。この構成によると、透明板2に向かう反流の発生をより抑えることができる。本実施形態では、角度αは、45°とされている。
【0019】
ガイド板7の炉51の内部側である先端Pよりも透明板2側であって、スリット3a~6aよりも透明板2側には、負圧防止孔3b、4b、5b、6bが設けられている。各負圧防止孔3b~6bは、筒状部材1を構成する板部材3~6にそれぞれ形成されている。また、本実施形態では、各負圧防止孔3b~6bは、各板部材3~6にそれぞれ複数形成されている。
【0020】
筒状部材1の透明板2側の外周には、スリット3a~6a、および負圧防止孔3b~6bを介して、筒状部材1の内部にガスを供給する(吹き込む)ためのボックス部材14が取り付けられている。ボックス部材14は、筒状ケーシング15と、筒状ケーシング15の端面に固定される板部材16とで構成される。筒状ケーシング15には、ガス供給口15aが形成されており、図示を省略するガス供給手段(送風機、ガス圧縮機など)からのガスは、ガス供給口15aからボックス部材14内に導入され、その後、各スリット3a~6a、および各負圧防止孔3b~6bから筒状部材1内に供給される。なお、各スリット3a~6aから筒状部材1内に供給されるガス量の方が、対応する各負圧防止孔3b~6bから筒状部材1内に供給されるガス量よりも大きくなるようにされることが好ましい。例えば、各スリット3a~6aの合計開口面積は、各負圧防止孔3b~6bの合計開口面積よりも大きくされる。
【0021】
本実施形態では、筒状ケーシング15にガス供給口15aが1つ形成され、1つのガス供給口15aからボックス部材14内に導入されたガスが、各スリット3a~6a、および各負圧防止孔3b~6bから筒状部材1内に供給されるが、ガス供給口15aは複数、形成されていてもよい。透明板2の汚れ防止のために筒状部材1内に供給される(吹き込まれる)上記ガスは、空気、およびアルゴンガスなどの不活性ガスである。
【0022】
筒状部材1の端面にはフランジ板12が取り付けられ、透明板2は、支持枠13を介してフランジ板12に固定される。なお、筒状部材1に対する透明板2の固定方法は、これに限られるものではない。透明板2の材料は、例えば、耐熱ガラスである。
【0023】
透明板2の汚れ防止の作用について説明する。
図1において、筒状部材1内の実線の矢印は、各スリット3a~6aから筒状部材1内に吹き込まれたガスの流れを示す。なお、厳密には、筒状部材1内の実線の矢印は、スリット4a、6aから筒状部材1内に吹き込まれたガスの流れを示す。また、
図1において、ガイド板7と透明板2との間に記載された筒状部材1内の点線の矢印は、各負圧防止孔3b~6bから筒状部材1内に吹き込まれたガスの流れを示す。なお、厳密には、筒状部材1内の点線の矢印は、負圧防止孔4b、6bから筒状部材1内に吹き込まれたガスの流れを示す。
【0024】
各スリット3a~6aから筒状部材1内へガスが吹き込まれると、吹き込まれたガスは、ガイド板7により炉51の内部側へ導かれる。
【0025】
ここで、仮に、スリット3a~6aが、スリット状のガス供給孔ではなく、所定の間隔をあけて形成された複数の孔のような場合、隣り合う孔の間で、孔近傍よりも圧力が低くなる箇所が生じ、すなわちガス圧力の不均一性が生じ、これにより、筒状部材1内へ吹き込まれたガスの一部は、一旦、炉51とは反対側の透明板2に向かう反流となることが懸念される。
【0026】
しかしながら、本実施形態の炉内覗き窓101では、ガス供給孔がスリット3a~6aとされていることで、いわば「面」の形態で筒状部材1内へガスが吹き込まれるので、ガスの吹き込み部において、ガス圧力の不均一性が抑制される。なおかつ、各スリット3a~6aから筒状部材1内へ吹き込まれたガスは、ガイド板7により炉51の内部側へ導かれる。これらにより、透明板2に向かう上記反流の発生を抑えることができる。その結果、炉51内からのダストを含むガスが上記反流に巻き込まれて透明板2に到達し、透明板2が汚れることを防止することができる。
【0027】
また、本実施形態では、ガイド板7と透明板2との間の空間に負圧防止孔3b~6bからガスが供給されることで、ガイド板7の先端Pと透明板2との間の空間が、ガイド板7の先端Pよりも炉51側の空間よりも圧力が低くなること、すなわち、ガイド板7の先端Pと透明板2との間の空間が負圧になることが抑制され、透明板2に向かう上記反流の発生をより抑えることができる。
【0028】
炉51内からのガスが透明板2に達することを抑制できる効果を検証した結果について説明する。
図8は、その検証方法を示す図である。
【0029】
上記検証は、
図1~3に示す第1実施形態に係る炉内覗き窓101と、
図7に示す比較例に係る炉内覗き窓150とを用いて行った。第1実施形態に係る炉内覗き窓101と、
図7に示す比較例に係る炉内覗き窓150との相違点は次のとおりである。比較例に係る炉内覗き窓150は、ガイド板7(ガイド機構)、および負圧防止孔3b~6bを有さない。なお、炉内覗き窓150のその他の構成は、炉内覗き窓101と同じである。
【0030】
図8に示すように、炉内覗き窓101(炉内覗き窓150)の先端から1.5m離れた位置に扇風機52を配置するとともに、扇風機52から炉内覗き窓101の方向へ0.5mの位置に水噴霧手段53を配置した。また、図示を省略するが、炉内覗き窓を構成する筒状部材1の4面のうちの1面のスリット等を避けた部分を、透明のアクリル板にして、側方から目視で容易に内部が確認できるようにした。なお、扇風機52からの風は、炉51内からのガスを模擬したものであり、水噴霧手段53からの噴霧水は、当該ガスに含まれるダストを模擬したものである。
【0031】
検証実験の条件は次のとおりである。各炉内覗き窓101、150を構成する筒状部材1の形状は、縦100mm×横150mm×長さ(奥行)300mmである。また、筒状部材1の4面のうちの板部材3、5、すなわち長辺に形成したスリット3a、5aの形状は、幅4mm×長さ140mmである。板部材4、6、すなわち短辺に形成したスリット4a、6aの形状は、幅4mm×長さ90mmである。
【0032】
また、炉内覗き窓101の筒状部材1の4面のうちの板部材3、5に形成した負圧防止孔3b、5bは、それぞれ、φ5×6個である。炉内覗き窓101の筒状部材1の板部材4、6に形成した負圧防止孔4b、6bは、それぞれ、φ5×4個である。各スリット3a~6aの合計開口面積は、各負圧防止孔3b~6bの合計開口面積の4倍である。
【0033】
また、各炉内覗き窓101、150のガス供給口15aから筒状部材1内へ吹き込む空気流量を、30.2m3/h、55.3m3/h、69.9m3/h、77.4m3/hと4段階で変化させた。扇風機52から各炉内覗き窓101、150への風の風速は、扇風機52を出たところで3.7m/sとした(実測値)。水噴霧手段53の先端から噴霧する噴霧水の粒径は、130μmである。各炉内覗き窓101、150の先端部分での噴霧水の速度は、3.1m/sである(計算値)。
【0034】
検証実験の結果は次のとおりである。まず、比較例に係る炉内覗き窓150では、ガス供給口15aから筒状部材1内へ吹き込む空気流量を、4段階で変化させた全てのケースにおいて、扇風機52の風にのった噴霧水は、筒状部材1の中に入り込み、透明板2に水滴として付着した。なお、炉内覗き窓150の出口(ガス供給口15aから吹き込まれた空気の出口)では、空気の流れは安定しているように見えたが、上記のとおり、扇風機52の風にのった噴霧水は、透明板2に水滴として付着した。すなわち、筒状部材1の内部では、空気の流れが乱れている可能性が高い。
【0035】
なお、上記炉内覗き窓150であっても、ガス供給口15aからスリットを介して筒状部材1内へ大量のガスを吹き込めば、透明板2への噴霧水の付着を防止することができると想定される。
【0036】
これに対して、本発明の第1実施形態に係る炉内覗き窓101では、ガス供給口15aから筒状部材1内へ吹き込む空気流量を4段階で変化させた全てのケースにおいて、噴霧水は透明板2に付着しなかった。扇風機52の風にのった噴霧水が筒状部材1の中に入り込むことは確認されたが、ガイド板7の前方で供給口15aから吹き込まれた空気流により噴霧水は遮断され、それ以上奥に入り込まなかった。この検証実験により、炉内覗き窓101によると、炉51内からのダストを含むガスで透明板2が汚れることを、大量の吹き込みガスを要することなく抑制できることがわかる。
【0037】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る炉内覗き窓102を示す。第1実施形態の炉内覗き窓101との違いは次のとおりある。なお、第2実施形態に係る炉内覗き窓102に関し、第1実施形態の炉内覗き窓101と同様の部材については、同一の符号を付している(他の実施形態についても同様)。
【0038】
第1実施形態の炉内覗き窓101では、負圧防止孔3b~6bが筒状部材1に形成されている。これに対して、本実施形態の炉内覗き窓102では、ガイド板7に負圧防止孔10aが形成されている。なお、
図4には、ガイド板7を構成する板部材10に形成された負圧防止孔10aのみが示されているが、ガイド板7を構成する残りの板部材8、9、11(
図2参照)にも負圧防止孔が形成されていることが好ましい。
【0039】
この構成によると、負圧防止孔が筒状部材1に設けられた第1実施形態の炉内覗き窓101と同様、ガイド板7の先端Pと透明板2との間の空間が負圧になることを抑制することができる。
【0040】
このように、負圧防止孔の位置は、ガイド板7(ガイド機構)の先端Pよりも透明板2側であればよく、上記のように筒状部材1ではなく、ガイド板7に負圧防止孔10aが形成されてもよい。なお、第1実施形態の炉内覗き窓101のように、負圧防止孔3b~6bが筒状部材1に形成され、負圧防止孔3b~6bから筒状部材1の内部にガスが供給される方が、ガイド板7と透明板2との間の空間が負圧になることを強制的に抑えることができるので好ましい。また、図示を省略するガス供給手段(送風機、ガス圧縮機など)からのガスは一般的に清浄であるので、当該ガスを、負圧防止孔3b~6bを介してガイド板7と透明板2との間に吹き込むことで、予備的な透明板2の清掃効果が得られ、炉51内からのダストを含むガスで透明板2が汚れることを、より抑制することが可能となる。
【0041】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る炉内覗き窓103を示す。第1実施形態の炉内覗き窓101との違いは次のとおりある。
【0042】
本実施形態の炉内覗き窓103は、第1実施形態の炉内覗き窓101が備えるガイド板7を有さない。本実施形態では、
図5にスリット4a、6aを示すように、ガス供給孔としてのスリット3a~6aの奥行きを、第1実施形態におけるスリット3a~6aよりも長くすることで、炉51の内部側へガスを導くガイド機構としての役割を各スリット3a~6a自体に担わせている。すなわち、本実施形態では、スリット状のガス供給孔と、炉51の内部側へガスを導くガイド機構とを一体としている。
【0043】
具体的には、
図5に示すように、例えば、筒状部材1の透明板2が隣接する部分の厚みを大きくするべく、その外周4面全てに、所定の厚みの板部材17が固定される。そして、筒状部材1と板部材17とが共孔加工されるなどして、奥行きの長いスリット3a~6aが形成される。なお、筒状部材1の内部に供給されるガスを、炉51の内部側へ導ける角度であれば特に限定されるものではないが、各スリット3a~6aは、透明板2から炉51への方向において、0°を超え且つ60°以下の角度βで、筒状部材1の内面に対して内側に傾斜していることが好ましい。本実施形態では、角度βは、45°とされている。
【0044】
また、より簡易な構造としては、筒状部材1の板厚がある程度あれば、本実施形態のように筒状部材1の外周面に板部材17を固定するなどして、筒状部材1の厚みを局部的に大きくすることなく、軸方向Zに対して斜めのスリットを筒状部材1に形成し、筒状部材1の内部にスリットから供給されるガスを、炉51の内部側へ導くようにしてもよい。
【0045】
ただし、第1実施形態や第2実施形態のように、筒状部材1の内部にガイド板7を配置したほうが、筒状部材1の内部に供給されるガスを、より確実に炉51の内部側へ導くことができる。
【0046】
なお、本実施形態の場合、
図5に示すように、ガイド機構の先端は、各スリット3a~6aの炉51側の先端Pということになり、負圧防止孔3b~6bは、このガイド機構の先端よりも透明板2側に位置する。
【0047】
(スリットの変形例)
図6は、スリット状のガス供給孔の変形例を示す。
図6に示すように、
図3に示すスリット3aなどのような細長い長方形の孔に代えて、密に近接する複数の孔18を筒状部材1に一列に形成し、この密に近接する複数の孔18をスリット状のガス供給孔としてもよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行うことは可能である。
【0049】
例えば、筒状部材1は、円筒形状の部材であってもよい。同様に、透明板2は円形などであってもよい。
【0050】
ガイド機構の炉51の内部側である先端よりも透明板2側に設けられる負圧防止孔は、必須ではない。
【符号の説明】
【0051】
1:筒状部材
2:透明板
3a、4a、5a、6a:スリット(スリット状のガス供給孔)
3b、4b、5b、6b、10a:負圧防止孔
7:ガイド板(ガイド機構)
51:炉
101、102、103:炉内覗き窓