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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185380
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/375 20220101AFI20221207BHJP
   F24H 15/212 20220101ALI20221207BHJP
【FI】
F24H4/02 N
F24H1/18 302Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093026
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】牛島 亘
(72)【発明者】
【氏名】辻野 勇樹
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA04
3L122AA23
3L122AB26
3L122AB43
3L122AB54
3L122BB03
3L122CA05
3L122DA21
3L122DA32
3L122DA33
3L122EA34
3L122GA07
3L122GA10
(57)【要約】
【課題】水道停止時に貯湯タンクの湯水を取り出すことができ、貯湯タンク内が空になるのを防止可能な貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】水道管11の水が貯湯タンク12に給水される通常時に、貯湯タンク12内の湯水を、第1の水栓13に供給する貯湯式給湯装置10において、循環ポンプ45が作動されて貯湯タンク12から湯水を取り出し貯湯タンク12に戻す循環回路44と、作動して循環回路44を流れる湯水を加熱するヒートポンプ53と、循環ポンプ45及びヒートポンプ53を作動させて貯湯タンク12の沸上げ運転を行う機能、及び、水道管11の水が貯湯タンク12に給水されない水道停止時に、循環ポンプ45を作動させて、貯湯タンク12内の湯水が送水管58経由で第2の水栓57から出る非常時給水状態にする機能を有する制御手段を備え、制御手段は、非常時給水状態において、貯湯タンク12内が空になるのを防ぐ制御を行う。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管の水が貯湯タンクに給水される通常時に、該貯湯タンク内の湯水を、第1の水栓に供給する貯湯式給湯装置において、
循環ポンプを有し、該循環ポンプが作動されて前記貯湯タンクから湯水を取り出し該貯湯タンクに戻す循環回路と、
作動して前記循環回路を流れる湯水を加熱するヒートポンプと、
上流側端部が前記循環回路に接続された送水管の下流側端部に連結された第2の水栓と、
前記循環ポンプ及び前記ヒートポンプを作動させて前記貯湯タンクの沸上げ運転を行う機能、及び、前記水道管の水が前記貯湯タンクに給水されない水道停止時に、前記循環ポンプを作動して、前記貯湯タンク内の湯水が前記送水管経由で前記第2の水栓から出る非常時給水状態にする機能を有する制御手段とを備え、
前記非常時給水状態において、前記制御手段は、前記貯湯タンク内が空になるのを防ぐ制御を行うことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
請求項1記載の貯湯式給湯装置において、前記制御手段は、前記非常時給水状態における前記貯湯タンク内が空になるのを防ぐ制御を、前記貯湯タンク内の湯水の残量が予め定められた設定残量P以下となったのを検出して、前記循環ポンプを停止することによって行うことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項3】
請求項2記載の貯湯式給湯装置において、前記制御手段は、前記非常時給水状態での前記循環ポンプの作動時間及び該循環ポンプの回転数から、あるいは、該非常時給水状態での該循環ポンプの作動時間及び該循環ポンプの作動レベルから、前記貯湯タンク内の湯水の残量を導出することを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項4】
水道管の水が貯湯タンクに給水される通常時に、該貯湯タンク内の湯水を、第1の水栓に供給する貯湯式給湯装置において、
循環ポンプを有し、該循環ポンプが作動されて前記貯湯タンクから湯水を取り出し該貯湯タンクに戻す循環回路と、
作動して前記循環回路を流れる湯水を加熱するヒートポンプと、
上流側端部が前記貯湯タンクに接続され送水ポンプが設けられた送水管の下流側端部に連結された第2の水栓と、
前記循環ポンプ及び前記ヒートポンプを作動させて前記貯湯タンクの沸上げ運転を行う機能、及び、前記水道管の水が前記貯湯タンクに給水されない水道停止時に、前記送水ポンプを作動して、前記貯湯タンク内の湯水が前記送水管経由で前記第2の水栓から出る非常時給水状態にする機能を有する制御手段とを備え、
前記非常時給水状態において、前記制御手段は、前記貯湯タンク内が空になるのを防ぐ制御を行うことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項5】
請求項4記載の貯湯式給湯装置において、前記制御手段は、前記非常時給水状態における前記貯湯タンク内が空になるのを防ぐ制御を、前記貯湯タンク内の湯水の残量が予め定められた設定残量P以下となったのを検出して、前記循環ポンプを停止することによって行うことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項6】
請求項5記載の貯湯式給湯装置において、前記制御手段は、前記非常時給水状態での前記送水ポンプの作動時間及び該送水ポンプの回転数から、あるいは、該非常時給水状態での該送水ポンプの作動時間及び該送水ポンプの作動レベルから、前記貯湯タンク内の湯水の残量を導出することを特徴とする貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク内の湯を外部に供給する貯湯式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式給湯装置は、貯湯タンクから出た湯に水道管からの水を混合してなる湯や水道管からの水(以下、湯又は水を「湯水」と言う)を、水道管の水圧を利用して、台所や浴室に設けられた水栓に供給する(特許文献1、2参照)。そのため、通常時、水栓を開けば、水栓から湯水を出すことができ、貯湯タンクから湯水が出るのに伴って貯湯タンクに水道管から水が注入される。
【0003】
ところが、自然災害等で水道水供給のインフラが機能しなくなって、水道管の水の流れが停止し、水道管に水圧がかからなくなった水道停止時には、水栓を開いても水栓から湯水が出ない。これに対しては、貯湯タンクの下部に排水ホースを設ける等することによって、水道停止時でも、排水ホースから貯湯タンク内の湯水を出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-196887号公報
【特許文献2】特開2017-129328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図8に示すように、ポンプ100の作動により貯湯タンク101の下部から湯水を取り出しヒートポンプ102で加熱し貯湯タンク101に戻して貯湯タンク101を沸き上げる循環回路103が設けられた貯湯式給湯装置104においては、循環回路103が凍結しないように、外気温等が所定の温度以下となった際、循環回路103に貯湯タンク101の湯水を循環させる凍結予防運転を行う。
しかしながら、水道停止時は貯湯タンク101に水道水が給水されないため、水道停止時に貯湯タンク101の排水ホースから湯水を出し続けると貯湯タンク101内が空となり、凍結予防運転ができなくなる。貯湯タンク101内が空になると、凍結予防運転以外にも制限が生じることから好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、水道停止時に貯湯タンクの湯水を取り出すことができ、貯湯タンク内が空になるのを防止可能な貯湯式給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る貯湯式給湯装置は、水道管の水が貯湯タンクに給水される通常時に、該貯湯タンク内の湯水を、第1の水栓に供給する貯湯式給湯装置において、
循環ポンプを有し、該循環ポンプが作動して前記貯湯タンクから湯水を取り出し該貯湯タンクに戻す循環回路と、作動して前記循環回路を流れる湯水を加熱するヒートポンプと、上流側端部が前記循環回路に接続された送水管の下流側端部に連結された第2の水栓と、前記循環ポンプ及び前記ヒートポンプを作動させて前記貯湯タンクの沸上げ運転を行う機能、及び、前記水道管の水が前記貯湯タンクに給水されない水道停止時に、前記循環ポンプを作動して、前記貯湯タンク内の湯水が前記送水管経由で前記第2の水栓から出る非常時給水状態にする機能を有する制御手段とを備え、前記非常時給水状態において、前記制御手段は、前記貯湯タンク内が空になるのを防ぐ制御を行う。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る貯湯式給湯装置は、水道管の水が貯湯タンクに給水される通常時に、該貯湯タンク内の湯水を、第1の水栓に供給する貯湯式給湯装置において、循環ポンプを有し、該循環ポンプが作動されて前記貯湯タンクから湯水を取り出し該貯湯タンクに戻す循環回路と、作動して前記循環回路を流れる湯水を加熱するヒートポンプと、上流側端部が前記貯湯タンクに接続され送水ポンプが設けられた送水管の下流側端部に連結された第2の水栓と、前記循環ポンプ及び前記ヒートポンプを作動させて前記貯湯タンクの沸上げ運転を行う機能、及び、前記水道管の水が前記貯湯タンクに給水されない水道停止時に、前記送水ポンプを作動して、前記貯湯タンク内の湯水が前記送水管経由で前記第2の水栓から出る非常時給水状態にする機能を有する制御手段とを備え、前記非常時給水状態において、前記制御手段は、前記貯湯タンク内が空になるのを防ぐ制御を行う。
【発明の効果】
【0009】
第1、第2の発明に係る貯湯式給湯装置は、水道管の水が貯湯タンクに給水されない水道停止時に、制御手段により、循環ポンプ(又は送水ポンプ)を作動して、貯湯タンク内の湯水が送水管経由で第2の水栓から出る非常時給水状態にし、非常時給水状態において、貯湯タンク内が空になるのを防ぐ制御を行うので、水道停止時に貯湯タンクの湯水を取り出すことができ、かつ、貯湯タンク内が空になるのを防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る貯湯式給湯装置の説明図である。
図2】制御手段の接続を示すブロック図である。
図3】貯湯タンクの沸上げの様子を示す説明図である。
図4】貯湯タンクの沸上げの様子を示す説明図である。
図5】凍結予防運転の様子を示す説明図である。
図6】非常時給水状態の様子を示す説明図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る貯湯式給湯装置の説明図である。
図8】従来の貯湯式給湯装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る貯湯式給湯装置10は、水道管11の水が貯湯タンク12に給水される通常時に、貯湯タンク12内の湯水を、第1の水栓13に供給する装置である。
【0012】
貯湯タンク12には、図1に示すように、複数(本実施の形態では6個)の温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14eが取り付けられている。温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14eは、温度センサ14が最も高い位置に配され、温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14eの順に取り付け位置が低くなっている。
貯湯タンク12の下部には、減圧弁15、温度センサ16及び逆止弁17、18、19が設けられた水道管11の一端部が連結されている。
【0013】
貯湯タンク12の上部には、下流側端部が第1の水栓13に接続された給湯管20の上端側端部が連結されている。給湯管20には上流側端部から下流側端部に向けて、逆止弁21、混合弁24、水量センサ22及び温度センサ23が設けられ、混合弁24には水道管11の別の端部が連結されている。混合弁24は、図2に示すように、ICチップ等によって構成された制御手段25に、温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14e、16、23及び水量センサ22と共に接続されている。
【0014】
制御手段25には、第1の水栓13に供給する湯水の温度を入力する操作をはじめとする種々の入力操作がなされる操作端末26が接続されている。
制御手段25は、温度センサ14、16、23及び水量センサ22の各計測値を検知し、これらの計測値を基に、貯湯タンク12の上部から供給される湯と水道管11の水の混合弁24による混合比を調整して、混合弁24から第1の水栓13に送られる湯水の温度が操作端末26で設定された温度になるように制御する。
【0015】
また、給湯管20には、図1に示すように、浴槽Bに湯を供給する湯張り管27の上流側端部及び浴槽Bの湯を加熱する熱交循環回路28の上流側端部が接続されている。
湯張り管27には、上流側端部から浴槽Bに接続された下流側端部に向けて逆止弁29、混合弁30、水量センサ31、電磁弁32、逆止弁33及び温度センサ34が順に設けられ、混合弁30には水道管11の別の端部が連結されている。混合弁30、水量センサ31、電磁弁32及び温度センサ34は、図2に示すように、制御手段25に接続されている。
【0016】
操作端末26で浴槽Bの湯張り操作がなされると、制御手段25は、電磁弁32を開いて、混合弁30で混合された貯湯タンク12の上部からの湯水と水道管11の水が浴槽Bに送られるようにし、温度センサ14、16、34及び水量センサ31の各検出値を基に、貯湯タンク12の上部からの湯水と水道管11の水との混合比を調整して、浴槽Bに送られる湯水の温度が、操作端末26で設定された温度となるように制御する。
【0017】
熱交循環回路28は、図1に示すように、逆止弁36及びポンプ37を有し、下流側端部が貯湯タンク12に連結されている。浴槽Bには、水位センサ38、水流スイッチ39、温度センサ40及びポンプ41が設けられ、下流側端部が湯張り管27に接続された風呂循環回路42の上流側端部が連結されている。熱交循環回路28及び風呂循環回路42には、熱交換器43が取り付けられ、ポンプ37、41、水位センサ38、水流スイッチ39及び温度センサ40は、図2に示すように、制御手段25に接続されている。
【0018】
操作端末26で追焚きの操作がなされると、制御手段25は、ポンプ37、41を作動して、貯湯タンク12の上部の湯水が給湯管20の一部及び熱交循環回路28を通って貯湯タンク12に戻るようにすると共に、浴槽B内の湯水が風呂循環回路42及び湯張り管27の一部を通って浴槽Bに戻るようにする。これによって、熱交循環回路28を流れる湯水と風呂循環回路42を流れる湯水とが熱交換器43により熱交換されて、風呂循環回路42を流れる湯水が加熱され、浴槽B内の湯水の温度が上昇する。
【0019】
通常時、水道管11内には所定の水圧が生じており、第1の水栓13が開かれると(あるいは、浴槽Bの湯張りがなされると)、水道管11の水圧によって、第1の水栓13から湯水が出て(浴槽Bに湯水が流入して)、貯湯タンク12の上部から送り出された湯と同量の水が水道管11から貯湯タンク12の下部に流入する。そのため、通常時、貯湯タンク12内は湯水で満たされている。
これに対し、水道管11内に所定の水圧が生じていない水道停止時には、第1の水栓13を開いても、電磁弁32を開いても、貯湯タンク12内の湯水は貯湯タンク12の上部から給湯管20には出ず、第1の水栓13や浴槽Bに湯水が送られることはない。
【0020】
また、貯湯タンク12の下部には、2つの下流側端部がそれぞれ貯湯タンク12の上部及び下部に連結された循環回路44の上流側端部が連結されている。循環回路44は、図1図2に示すように、それぞれ制御手段25に接続された循環ポンプ45及び切替手段47を有し、制御手段25によって循環ポンプ45が作動されて、図3図4に示すように、貯湯タンク12の下部から湯水を取り出し循環させて貯湯タンク12の上部又は下部に戻す。循環ポンプ45の作動のために制御手段25から循環ポンプ45に送信される指令信号には、循環ポンプ45の作動レベル(出力レベル)を決める出力指示値が含まれる。制御手段25は作動中の循環ポンプ45の回転数を検出できる。
【0021】
切替手段47は、循環回路44において循環ポンプ45の下流側に設けられ、循環回路44は、切替手段47より下流側が2つに分岐し、一方が貯湯タンク12の上部に接続され、他方が貯湯タンク12の下部に接続されている。
循環回路44には、循環ポンプ45と切替手段47の間に、循環流路48により接続された膨張弁49、熱交換器50、圧縮機51及び熱交換器52を具備するヒートポンプ53が取り付けられている。循環回路44を循環する湯水は、熱交換器52を通過して切替手段47に送られる。
【0022】
循環流路48には冷媒が充填されている。冷媒は、圧縮機51(ヒートポンプ53)の作動により、循環流路48を循環し、膨張弁49を通過して減圧され、熱交換器50を通過の際に大気中の熱を取り込み、圧縮機51を通過して圧縮され、熱交換器52を通過の際に循環回路44を流れる湯水に熱を与える。従って、ヒートポンプ53は、作動して、循環回路44を流れる湯水を加熱する。
【0023】
ヒートポンプ53は、更に、外気温を計測する温度センサ54を具備し、循環回路44には、循環回路44内の湯水の温度を計測する温度センサ55、56が熱交換器52の上流側及び下流側にそれぞれ取り付けられている。膨張弁49、圧縮機51、温度センサ54、55、56は、図2に示すように、制御手段25に接続された制御手段74に接続されている。
【0024】
切替手段47は、熱交換器52を通過した湯水の送り先を貯湯タンク12の上部及び下部の一方から他方に切り替えることができる。制御手段25は、温度センサ14、14a、14b、14c、14d、14eの各計測温度を基に貯湯タンク12内で沸き上がっている湯の量が少なくなったのを検知すると、循環ポンプ45及び圧縮機51(ヒートポンプ53)を作動させて貯湯タンク12の沸上げ運転を行わせる。
【0025】
貯湯タンク12の沸上げ運転が開始されると、制御手段25は、温度センサ55、56の各計測温度を基に圧縮機51の作動レベル及び膨張弁49の開度(減圧レベル)を調整する。温度センサ56の計測温が所定値未満の際、図3に示すように、制御手段25により切替手段47の湯水の送り先が貯湯タンク12の下部にされ、循環回路44は、貯湯タンク12の下部の水を貯湯タンク12の下部に戻す状態となり、低温の湯水が貯湯タンク12の上部に流入することを防止する。
【0026】
そして、制御手段25は、温度センサ56の計測温度が所定値以上になったことを検知したタイミングで、図4に示すように、切替手段47の湯水の送り先を貯湯タンク12の上部に切り替える。これにより、循環回路44は、貯湯タンク12の下部の水を取得して貯湯タンク12の上部に戻す状態となり、ヒートポンプ53によって加熱された湯水を貯湯タンク12の上部に供給する。
【0027】
また、制御手段25は、冬季等の気温が低い時期に循環回路44内の湯水が凍結しないように、温度センサ54、55、56の計測温度が所定の温度以下(例えば、温度センサ54の計測温度が3℃以下、かつ、温度センサ55、56の少なくとも一方の計測温度が3℃以下)となった際、図5に示すように、圧縮機51(ヒートポンプ53)は停止した状態で、切替手段47の湯水の送り先を貯湯タンク12の下部にし、循環ポンプ45を作動させ、貯湯タンク12の湯水を循環回路44に循環させる凍結予防運転を循環回路44に行わせる。
【0028】
よって、制御手段25は、ヒートポンプ53を停止した状態で循環ポンプ45を作動させて循環回路44の凍結を予防する機能を有する。凍結予防運転は、温度センサ54、55、56の計測温度が所定の温度以上(例えば、温度センサ54の計測温度が6℃以上、又は、温度センサ55、56の少なくとも一方の計測温度が6℃以上)になると終了する。なお、凍結予防運転を所定時間(例えば、5分間)行っても、温度センサ54、55、56の計測温度が凍結予防運転を終了する温度にならない場合は、沸上げ運転がなされる。
【0029】
また、貯湯式給湯装置10は、図1に示すように、上流側端部が循環回路44の循環ポンプ45及び熱交換器52の間の領域に接続された送水管58と、送水管58の下流側端部に連結された第2の水栓57とを有している。
制御手段25は、水道管11の水が貯湯タンク12に給水されない水道停止時に、操作端末26に所定の入力操作がなされることにより、循環ポンプ45を作動させて、図6に示すように、貯湯式給湯装置10を、貯湯タンク12内の湯水が送水管58経由で第2の水栓57から出る状態(以下、この状態を「非常時給水状態」とする)にする機能を有する。
【0030】
非常時給水状態で、利用者は、第2の水栓57を開くことによって、貯湯タンク12内の湯水を第2の水栓57から出すことができる。
本実施の形態のように、循環ポンプ45を利用して貯湯タンク12内の湯水を第2の水栓57から出す場合、重力のみを利用して貯湯タンク12内の湯水を第2の水栓57から出す場合に比べて、貯湯タンク12から第2の水栓57までの距離を長くできる等、第2の水栓57の配置の自由度が高くなる。
【0031】
貯湯タンク12内の湯水が第2の水栓57から出るのに伴って、貯湯タンク12には負圧作動弁59から取り込まれた空気が流入し、貯湯タンク12内は上部から空気が溜まる。なお、通常時、循環ポンプ45を作動しても第2の水栓57から湯水が出ないように、第2の水栓57は閉じられている。
【0032】
制御手段25は、切替手段47を、循環回路44の湯水を貯湯タンク12の上部及び下部のいずれにも送らない状態にすることができる。本実施の形態では、非常時給水状態において、切替手段47が、制御手段25によって、湯水を貯湯タンク12の上部及び下部のいずれにも送らない状態又は湯水を貯湯タンク12の下部に送る状態のいずれかにされる。なお、図6は、切替手段47を、循環回路44の湯水を貯湯タンク12の上部及び下部のいずれにも送らない状態とした様子を示している。
【0033】
切替手段47の構造によっては、切替手段47を、貯湯タンク12の上部及び下部のいずれにも湯水を送らない状態にしても、貯湯タンク12の上部及び下部の少なくとも一方に微量の湯水が送られることがある。そのため、循環回路44の湯水を貯湯タンク12の上部及び下部のいずれにも送らない状態とは、切替手段47を貯湯タンク12の上部及び下部のどちらにも積極的に(意図的に)湯水を送らない状態を意味する。
【0034】
ここで、貯湯タンク12内が空になると、凍結予防運転を行えなくなる。また、貯湯タンク12内に流入した空気の温度を冷却するために、貯湯タンク12の下部の水を循環回路44経由で貯湯タンク12の上部に戻す機能を設ける場合、当該機能は貯湯タンク12内が空になると行えない。
そこで、非常時給水状態において、制御手段25は、貯湯タンク12内の湯水の残量が予め定められた設定残量P以下となったのを検出して、循環ポンプ45を停止し、貯湯タンク12内の湯水が減少しないようにし、凍結予防運転が可能な状態(必要時に応じて凍結予防運転を行える状態)を維持する制御、即ち、貯湯タンク12内が空になるのを防ぐ制御を行う。
本実施の形態では、設定残量Pが30L以上100L以下の値であり、制御手段25が、非常時給水状態での循環ポンプ45の作動時間から貯湯タンク12内の湯水の残量を導出する。
【0035】
循環ポンプ45は、第2の水栓57から出る湯水量(単位時間当たりの湯水量、以下同じ)が多いと回転数(作動レベル)が上昇し、同湯水量が少ないと回転数が低下する設計になっている。そこで、制御手段25は、非常時給水状態における循環ポンプ45の作動時間及び循環ポンプ45の回転数を基に、第2の水栓57から出た湯水量を算出して貯湯タンク12内の湯水の残量を求める。
【0036】
制御手段25は、非常時給水状態における循環ポンプ45の作動時間及び循環ポンプ45の作動レベルを基に、第2の水栓57から出た湯水量を算出して貯湯タンク12内の湯水の残量を求めてもよい。制御手段25は、非常時給水状態において制御手段25から循環ポンプ45に送信した出力指示値から循環ポンプ45の作動レベルの情報を得る。
なお、第2の水栓57から高温の湯が出る可能性があるため、本実施の形態では、第2の水栓57近くに、第2の水栓57の使用方法等に加えて熱湯が出ることについての注意喚起を記した注意書きが設けられている。
【0037】
また、制御手段25は、操作端末26への所定の入力操作により、貯湯式給湯装置10を、ヒートポンプ53の作動、浴槽Bへの湯張り、及び、浴槽B内の湯水の追い焚きを禁止する非常時制限状態にすることができる。本実施の形態では、操作端末26において、貯湯式給湯装置10を非常時制限状態にする入力操作と、貯湯式給湯装置10を非常時給水状態にする入力操作とが共通の釦でなされる。
【0038】
制御手段25は、同釦が一定時間(例えば、5秒間)継続的に押下(長押し)されることで、貯湯式給湯装置10を非常時制限状態とし、同釦が再度長押しされることで、貯湯式給湯装置10の非常時制限状態を解除する。非常時制限状態の貯湯式給湯装置10は、同釦が長押しではなく通常押しされることにより、制御手段25によって、非常時制限状態を維持した上で非常時給水状態となり、同釦が再度通常押しされると非常時給水状態のみが解除される。
【0039】
ここで、貯湯式給湯装置10は、送水管58の上流側端部が循環回路44に連結されているが、これに限定されない。図7を参照して、送水管71の上流側端部が貯湯タンク12に連結された貯湯式給湯装置70について説明する。なお、貯湯式給湯装置70において、貯湯式給湯装置10と同様の構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
本発明の第2の実施の形態に係る貯湯式給湯装置70は、図7に示すように、第2の水栓72が、上流側端部が貯湯タンク12の下部に接続された送水管71の下流側端部に連結され、送水管71には制御手段に接続された送水ポンプ73が設けられている。
【0040】
制御手段は、水道停止時に、送水ポンプ73を作動させて、貯湯タンク12内の湯水が送水管71経由で第2の水栓72から出る非常時給水状態にし、非常時給水状態において、貯湯タンク12内の湯水の残量が予め定められた設定残量P以下となったのを検出して、送水ポンプ73を停止する。制御手段は、非常時給水状態での送水ポンプ73の作動時間及び送水ポンプ73の回転数から、あるいは、非常時給水状態での送水ポンプ73の作動時間及び送水ポンプ73の作動レベルから貯湯タンク12内の湯水の残量を導出する。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、制御手段は、貯湯タンク内が空になるのを防ぐ制御を、負圧作動弁から貯湯タンク内に流入する空気の量の累積値が予め定めた値となったのを検出して、循環ポンプを停止するようにしてもよい。
【0042】
また、貯湯タンク内の湯水の残量を検出する場合、第2の水栓からの出水で減少する貯湯タンク内の湯水の残量を、送水管に設けた水量センサの計測値を基に導出するようにすることができる。但し、この場合、循環ポンプの作動時間から貯湯タンク内の湯水の残量を導出する場合に比べて、部品点数が増加する。
そして、循環回路は切替手段を有する必要はない。例えば、自家発電機の発電時に生じる排熱を利用して循環回路の湯水を加熱し貯湯タンクの沸上げを行う場合、循環回路は切替手段を有する必要はない。この場合、加熱手段で加熱された湯水の送り先は貯湯タンクの上部となる。
【符号の説明】
【0043】
10:貯湯式給湯装置、11:水道管、12:貯湯タンク、13:第1の水栓、14、14a、14b、14c、14d、14e:温度センサ、15:減圧弁、16:温度センサ、17、18、19:逆止弁、20:給湯管、21:逆止弁、22:水量センサ、23:温度センサ、24:混合弁、25:制御手段、26:操作端末、27:湯張り管、28:熱交循環回路、29:逆止弁、30:混合弁、31:水量センサ、32:電磁弁、33:逆止弁、34:温度センサ、36:逆止弁、37:ポンプ、38:水位センサ、39:水流スイッチ、40:温度センサ、41:ポンプ、42:風呂循環回路、43:熱交換器、44:循環回路、45:循環ポンプ、47:切替手段、48、循環流路、49:膨張弁、50:熱交換器、51:圧縮機、52:熱交換器、53:ヒートポンプ、54、55、56:温度センサ、57:第2の水栓、58:送水管、59:負圧作動弁、70:貯湯式給湯装置、71:送水管、72:第2の水栓、73:送水ポンプ、74:制御手段、B:浴槽
図1
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