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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185384
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】抗菌性を有する脱酸素剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3436 20060101AFI20221207BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20221207BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20221207BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20221207BHJP
   A01N 25/26 20060101ALI20221207BHJP
   A23L 3/3499 20060101ALI20221207BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A23L3/3436
A01P1/00
A01P3/00
A01N35/02
A01N25/26
A23L3/3499
B01J20/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093036
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 野枝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠也
【テーマコード(参考)】
4B021
4G066
4H011
【Fターム(参考)】
4B021LA01
4B021MC01
4B021MC04
4B021MK02
4B021MK08
4B021MK17
4B021MK19
4G066AA05C
4G066AA13C
4G066AA15C
4G066AA16C
4G066AA20C
4G066AA30C
4G066AA37C
4G066AA39C
4G066AA43C
4G066AA50C
4G066AA61C
4G066AA64C
4G066AA70C
4G066AB06B
4G066AB26B
4G066BA09
4G066CA37
4G066EA07
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB05
4H011BC03
4H011BC05
4H011BC09
4H011BC18
4H011BC19
4H011BC20
4H011DA04
4H011DH02
4H011DH10
(57)【要約】
【課題】脱酸素剤に空間抗菌性を付与し、食品の風味など接触する物品の特性を損なわず、内容物の保存性を高めた脱酸素剤で、特に、流通過程だけではなく、消費者が自宅で商品を開封した後も抗菌性が維持される脱酸素剤を提供する。
【解決手段】抗菌性を付与した脱酸素剤であり、酸素吸収組成物と分子量が200以下のアルデヒド化合物からなる群から選択される抗菌性薬剤を含む造粒物と、前記造粒物の表面に厚み1mm以下の層を形成して付着してなる親水性無機微粒子とを備える複数の複合粒子を含む粉体である脱酸素剤であって、前記酸素吸収組成物が、酸素吸収物質を含む液剤、アルカリ性化合物、及び遷移金属化合物を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分を混合、造粒してなる脱酸素剤であって、
前記脱酸素剤は親水性微粒子で被覆されており、
被覆層の厚みが1mm以下であり、
前記脱酸素剤は、酸素吸収物質を担持した多孔質担持体、アルカリ性化合物、遷移金属化合物、抗菌性薬剤から構成されており、
前記抗菌性薬剤は分子量200以下のアルデヒド化合物であることを特徴とする抗菌性を有する脱酸素剤。
【請求項2】
前記アルデヒド化合物がバインダーに担持されていることを特徴とする請求項1記載の抗菌性を有することを特徴とする脱酸素剤。
【請求項3】
前記バインダーが両親媒性を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の抗菌性を有することを特徴とする脱酸素剤。
【請求項4】
前記バインダーがポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのいずれかからなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の抗菌性を有することを特徴とする脱酸素剤。
【請求項5】
前記抗菌性薬剤が(E)-2-ヘキセナール、ヘキサナール、シンナムアルデヒド、シトラール、及びデカナールからなる群から選択されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の抗菌性を有することを特徴とする脱酸素剤。
【請求項6】
前記抗菌性薬剤の添加量が0.01~20.0質量%であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の抗菌性を有する脱酸素剤。
【請求項7】
前記抗菌性薬剤の添加量が0.1~5.0質量%であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の抗菌性を有することを特徴とする脱酸素剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性能を併せ持つ脱酸素剤に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物の酸化防止のため、脱酸素剤の利用が知られる。特に、食品の長期保存のため、食品包装容器内に脱酸素剤が封入されることがある。脱酸素剤により、流通過程の包装容器内の好気性細菌やカビの増殖を防ぎ、食品の劣化を抑制する、いわゆる抗菌・抗カビ効果が作用する。
【0003】
食品包装容器においては、消費者による包装開封後は容器内に酸素が侵入し、食品の劣化が進行する。そこで、開封後の抗菌・抗カビ性を維持するため目的で、脱酸素剤と抗菌剤の併用が有効となる。
【0004】
先行文献1では、脱酸素剤にエタノール蒸気発散の機能を付与したエタノール蒸気発散型脱酸素剤が報告されている。しかしながら、食品にエタノール特有の匂いがついてしまう、或いは、包装開封時にエタノール特有の匂いが出る等、食品の風味を損なう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6420619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、粒状の脱酸素剤に関して、抗菌、殺菌性を付与し内容物の保存性を高めた脱酸素剤を提供することにある。特に、流通過程だけでなく、消費者が自宅で商品を開封した後も、抗菌性が維持されることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の成分を混合、造粒してなる脱酸素剤であって、前記脱酸素剤は親水性微粒子で被覆されており、被覆層の厚みが1mm以下であり、前記脱酸素剤は、酸素吸収物質を担持した多孔質担持体、アルカリ性化合物、遷移金属化合物、抗菌性薬剤から構成されており、前記抗菌性薬剤は分子量200以下のアルデヒド化合物であることを特徴とする。
【0008】
また、前記アルデヒド化合物がバインダーに担持されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記バインダーが両親媒性を有することを特徴とする。

また、前記バインダーがポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのいずれかからなることを特徴とする。
【0010】
また、前記抗菌性薬剤が(E)-2-ヘキセナール、ヘキサナール、シンナムアルデヒド、シトラール、及びデカナールからなる群から選択されることを特徴とする。
【0011】
また、前記抗菌性薬剤の添加量が0.01~20.0質量%である抗菌性を付与したことを特徴とする。
【0012】
また、前記抗菌性薬剤の添加量が0.1~5.0質量%質量%である抗菌性を付与したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、流通過程だけでなく、包装袋を開封後も抗菌性を維持することが可能となる。発明者らは分子量200以下のアルデヒド化合物からなる群から選択された抗菌性薬剤を併用することで、包装袋を開封後もこれらの抗菌性薬剤によって、再封後も包装袋内で良好な抗菌性が得られることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】抗菌性を付与した脱酸素剤の概略図。
図2】培養終了時の培地の状態を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1に示したように、一実施形態に係る抗菌性を有する脱酸素剤100は、多孔質の担持体、及び前記担持体に担持された酸素吸収組成物、及び抗菌性薬剤を含む粉体を造粒した造粒物10と、造粒物10の表面に付着している親水性無機微粒子20とから主として構成される。本実施形態に係る脱酸素剤に含まれる複合粒子の数は、例えば、脱酸素剤1g当たり、10個以上10000個以下であってもよい。
【0017】
脱酸素剤100の粉体を構成する個々の複合粒子の質量は、複合粒子1個当たり0.3mg以上、又は0.5mg以上であってもよく、10.0mg以下、又は7.0mg以下であってもよい。複合粒子がこのように微小であると、より高い酸素吸収能力が得られる傾向がある。
【0018】
造粒物10を構成する担持体は、酸素吸収組成物を担持できる多孔質粒子であればよい。通常、担持体に酸素吸収組成物が含浸することで、酸素吸収物質が担持体に担持される。担持体は、例えば、活性炭、ゼオライト粒子、ベントナイト粒子、活性アルミナ粒子、活性白土、ケイ酸カルシウム粒子、及び珪藻土から選ばれる。
【0019】
酸素吸収組成物は、酸素吸収物質を含む液剤、アルカリ性化合物、及び遷移金属化合物を含有する。
【0020】
酸素吸収物質を含む液剤は、常温(例えば5~35℃)で液状の酸素吸収物質であってもよいし、液状又は固体の酸素吸収物質を含む溶液であってもよい。酸素吸収物質は、酸素吸収組成物の主剤であり、酸素を吸収する物質である。酸素吸収物質は、例えば、それ自身が酸化することによって酸素を消費し、酸素を吸収する化合物であってもよい。本実施形態では、常温で液状、または溶媒へ溶解した状態の酸素吸収物質を用いることができる。
【0021】
このような酸素吸収物質は、例えば、グリセリン、1,2-グリコール、及び糖アルコールからなる群から選ばれる1種以上の化合物である。1,2-グリコールの具体例としては、エチレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられる。糖アルコールの具体例としては、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、アドニトール、マンニトール、及びソルビトールが挙げられる。液剤が酸素吸収物質の溶液であるとき、酸素吸収物質が溶解する溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、i2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2―メチル-1-プロパノール、2-メチル―2-プロパノール及び2-メチル―2-ブタノール等の低級脂肪族アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール及びトリメチレングリコール等のグリコール;並びにフェノールが挙げられる。酸素吸収物質はこれらを単独でも、複数組み合わせても用いることができる。
【0022】
酸素吸収物質の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常80~200質量部であり、100~180質量部であってもよい。酸素吸収物質の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0023】
酸素吸収物質は、酸素を吸収する反応に水を必要とする場合がある。このため、酸素吸収物質自身が常温で液体であっても、必要に応じて水を液剤に添加することができる。必要に応じて添加される水の量は、酸素吸収物質100質量部に対して、通常0~80質量部であり、20~60質量部であってもよい。水の量は、担持体100質量部に対して、通常0~90質量部であり、20~70質量部であってもよい。
【0024】
アルカリ性化合物は、水に溶解したときにアルカリ性の水溶液を形成する化合物である。酸素吸収物質が水酸基を持つ場合、水酸基をアルカリ性化合物がイオン化させることで、酸素吸収反応が活性化される。酸素吸収組成物の状態では、アルカリ性化合物の一部が酸素吸収物質を含む液剤に溶解していることが多い。
【0025】
アルカリ性化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、第三リン酸塩、又は第二リン酸塩であってもよい。アルカリ性化合物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化ラジウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、及び第二リン酸カリウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。
【0026】
アルカリ性化合物の量は、担持体の質量100質量部に対して、通常100~300質量部であり、150~250質量部であってもよい。酸素吸収物質の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0027】
遷移金属化合物は、遷移金属元素を含む化合物であり、酸素吸収物質の酸素吸収反応を促進するために添加される。遷移金属化合物は、酸素吸収組成物の状態では、酸素吸収物質を含む液剤に溶解していることが多い。遷移金属元素の具体例としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、及びマンガンが挙げられる。遷移金属化合物は、例えば、遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、有機酸塩、酸化物、水酸化物、又はキレート化合物であってもよい。遷移金属化合物は、遷移金属元素を含む複塩であってもよい。遷移金属化合物は、塩化銅(I)、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、水酸化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、塩化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、及び塩化ニッケルからなる群より選ばれる1種以上の化合物であってもよい。
【0028】
遷移金属化合物の量は、担持体100質量部に対して、通常10~70質量部であり、30~50質量部であってもよい。遷移金属化合物の量がこれらの範囲内にあると、適切な酸素吸収能力を有する脱酸素剤が得られ易い傾向がある。
【0029】
酸素吸収組成物は、必要によりその他の物質を更に含有していてもよい。その他の物質としては、例えば、カテコール系化合物が挙げられる。その他の物質の量は、担持体の質
量100質量部に対して、通常、30質量部以下程度である。
【0030】
抗菌性薬剤は、分子量が200以下、好ましくは60以上200以下、より好ましくは90以上200以下であるアルデヒド化合物である。用いることができるアルデヒド化合物の非制限的な例は、(E)-2-ヘキセナール(分子量98.14)、ヘキサナール(分子量100.16)、ベンズアルデヒド(分子量106.12)、オクタナール(分子量128.21)、シンナムアルデヒド(分子量132.16)、アニスアルデヒド(分子量136.15)、ピペロナール(分子量150.13)、ペリルアルデヒド(分子量150.22)、バニリン(分子量152.15)、シトラール(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール)(分子量152.23)、シトロネラール(分子量154.25)、デカナール(分子量156.27)、およびヒドロキシシトロネラール(分子量172.26)を含む。好ましいアルデヒド化合物は、(E)-2-ヘキセナール、ヘキサナール、シンナムアルデヒド、シトラール、およびデカナールを含む。
【0031】
抗菌性薬剤は徐放性を付与するためにバインダーに担持することが好ましい。前項記載の抗菌性薬剤をバインダーに担持することで低温化では放出速度を低減し、脱酸素剤が酸素を吸収し発熱すると徐放速度を速めることができる。バインダーとしてアラビアゴム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルブチラール、エチルセルロースなどが利用できる。中でも両親媒性のポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好適に利用できる。
【0032】
抗菌性薬剤の添加濃度は1~20%であることが望ましく、1%未満になると抗菌性を発現するのに十分な薬剤量の揮発が得られず、20%以上になると薬剤量を増やす効果が得られず、また粒の強度が低下するなど造粒性低下の問題が生じる可能性がある。
【0033】
無機微粒子が付着する前の造粒物10の粒径(最大幅)は、特に制限されないが、例えば0.3~8.0mm、又は0.3mm以上5mm未満であってもよい。
【0034】
担持体及び酸素吸収組成物、抗菌性薬剤から構成される造粒物10は、担持体と、酸素吸収組成物、抗菌性薬剤を構成する成分とを含む混合物を造粒することにより、得ることができる。酸素吸収組成物を構成する各成分は、一括して混合してもよいし、別々に混合してもよい。混合するための混合機は、特に限定されるものではなく、例えば、円筒型、V型等の容器回転型混合機であってもよいし、リボン型、水平スクリュー型、バドル型、遊星運動型等の容器固定型混合機であってもよい。造粒は、例えば所定の開孔を有するスクリーンを用いた押出し造粒法によって行うことができる。
【0035】
親水性無機微粒子20は、親水性の無機物質を主成分として含む非水溶性の粒子である。親水性無機微粒子20は、その全体質量を基準として、通常、50質量%以上の親水性の無機物質を含む。親水性の無機物質としては、例えば、親水性二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム、及びケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
【0036】
親水性無機微粒子20が酸素吸収組成物を吸収し易い性質を有することが、脱酸素剤の酸素吸収能力向上に寄与し得る。親水性無機微粒子が酸素吸収組成物を吸収する程度は、親水性無機微粒子20の吸液量によって評価することができる。この吸液量は、酸素吸収組成物を構成する酸素吸収物質を含む液剤及び遷移金属化合物からなる試験液を親水性無機微粒子20の粉末に吸液させる方法により、測定される。吸液量測定用の試験液は、酸素吸収物質を含む液剤、及び遷移金属化合物を、酸素吸収組成物における質量比と同じ質量比で含む。この方法で測定される吸液量(1g当たりの親水性無機微粒子20に吸液さ
れた試験液の質量)が、2.0g/g以上であると、高い酸素吸収能力が得られる傾向がある。同様の観点から、この吸液量は2.5g/g以上、又は3.0g/g以上であってもよい。吸液量の上限は、特に制限されないが、例えば20g/g以下であってもよい。
【0037】
以上例示した平均粒径、細孔容積、比表面積及び吸液量を有する親水性無機微粒子20は、通常の方法によって製造することが可能であり、市販品の中から適宜選択して入手することもできる。
【0038】
脱酸素剤は、担持体及び酸素吸収組成物、抗菌性薬剤を含む複数の造粒物10を含む造粒物粉体と複数の親水性無機微粒子20とを混ぜ合わせることにより、造粒物10の表面に親水性無機微粒子20を付着させる工程を備える方法によって、得ることができる。造粒物10粉体と親水性無機微粒子20とが全体として混ぜ合わせられた混合粉体を形成することにより、個々の造粒物の表面に複数の親水性無機微粒子が付着する。例えば、造粒物10と、親水性無機微粒子20とを混合し、得られた混合物を振とうすることにより、造粒物10に親水性無機微粒子20を付着させることができる。
【0039】
上記のような粉体同士を混ぜ合わせる方法により造粒物10に付着した親水性無機微粒子20は、比較的薄い層を形成しており、この点で、本実施形態の脱酸素剤の形態は、例えば打錠成形によって得られた外郭部を有する錠剤とは一般に異なる。具体的には、造粒物10の表面に付着している親水性無機微粒子20は、厚み1mm以下、又は0.7mm以下の層を形成し得る。親水性無機微粒子20の層が薄いことは、複合粒子の表面をエネルギー分散型X線分析(EDX分析)によって元素分析したときに、造粒物10を構成する材料(酸素吸収物質、アルカリ性化合物又は遷移金属化合物)に含まれる元素が検出されることから、確認することもできる。一般に、本実施形態に係る脱酸素剤の場合、造粒物10を構成する材料に含まれる少なくとも1種の元素が、0.05原子数%以上、又は0.1原子数%以上の濃度で検出されることが多い。一方、造粒物10を内包するある程度の厚さの外郭部が打錠成形によって形成されている場合、造粒物10を構成する材料の元素がEDX分析によって実質的に検出されることはない。
【0040】
一実施形態に係る脱酸素包装体は、上記の実施形態に係る脱酸素剤と、この脱酸素剤を収容した通気性包材とから主として構成され得る。通気性包材は、当該技術分野で通常用いられるものから適宜選択することができる。通気性包材の具体例としては、有孔プラスチックフィルム、不織布、マイクロポーラスフィルム、紙又はこれらの組み合わせからなる基材よって形成された袋体が挙げられる。この脱酸素剤包装体は、例えば、各種の食品包装容器の中に収容して、食品の鮮度維持等の目的で使用することができる。
【0041】
一実施形態に係る食品包装体は、上記脱酸素剤包装体と、この脱酸素剤包装体が封入された食品包装容器とを備える。食品包装容器は、食品包装の分野で通常用いられるものから適宜選択することができ、密封可能な容器が好適である。食品包装容器としては、袋体、深絞り包装体、トレイ包装体、ストレッチ包装体等が挙げられる。
【実施例0042】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
表1に示す原料、すなわち活性炭と、酸素吸収物質、アルカリ性化合物、遷移金属塩を含む酸素吸収組成物、及びプレ混合によりあらかじめ抗菌性薬剤を担持させたバインダーとを密封状態で均一に混合し混合物を得た。得られた混合物をスクリーン孔径1.0mmφ、開孔率22.6%のスクリーンを設けた押出し造粒機により造粒し、顆粒状の造粒物
10を得た。次に、親水性無機微粒子20として親水性二酸化ケイ素を被覆し、抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。概略図を図1に提示した。
【0044】
【表1】
【0045】
[実施例2]
抗菌性薬剤添加量を0.1とした以外は実施例1同様に抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。
【0046】
[実施例3]
抗菌性薬剤添加量を5.0とした以外は実施例1同様に抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。
【0047】
[実施例4]
抗菌性薬剤がシトラールである以外は実施例1同様に抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。
【0048】
[実施例5]
抗菌剤添加量を20.0とした以外は実施例1同様に抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。
【0049】
[実施例6]
バインダーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである以外は実施例同様に抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。
【0050】
[実施例7]
バインダーがポリビニルピロリドンである以外は実施例同様に抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。
【0051】
[実施例8]
抗菌剤添加量を0.01とした以外は実施例1同様に抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。
【0052】
[実施例9]
バインダーを添加しないこと以外は実施例1同様に抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。
【0053】
[実施例10]
バインダーがポリビニルブチラールであること以外は実施例1同様に抗菌性を付与した脱酸素剤100を得た。
【0054】
[比較例1]
抗菌性薬剤を添加しない以外は実施例1同様に脱酸素剤を得た。
【0055】
(造粒物の充填)
実施例1~10、及び比較例1にて作製した3.0gの脱酸素剤を、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/紙/ポリエチレン/から構成され、貫通孔を有する積層体によって形成された60mm×60mmサイズの包装体に充填した。
【0056】
(保存テスト)
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートに酸化アルミニウムを蒸着した酸素不透過性のフィルムに、厚さ30μmのポリエチレンフィルムにウレタン接着剤を用いて貼り合わせし、熱融着層を形成した。次に、熱融着層同士が対向するようにして10cm×25cmの内寸を有するパウチを得た。次に直径5cmの円形シャーレにポテトデキストロース培地を作成し、クロコウジカビ(Aspergillus niger)を1.0×10cfu/mlの濃度で含む菌液を塗布し、実施例1~10、比較例1の小袋と一緒にパウチ内に収容した。
【0057】
パウチ内に収容した培地を、10℃の条件で1週間培養後、パウチを開封した。2時間程度開封状態を保持した後、再度開封部を熱融着して密封し10℃で1週間培養した。培養後、パウチを開封し2時間程度開封状態を保持した後、再封しさらに10℃で1週間培養した。
【0058】
それぞれ培養終了時の培地の状態を、抗カビ性として評価した。Aspergillus nigerの生育が視覚的に観察されない場合をレベル1、生育が視覚的にわずかに観察された場合をレベル2、生育が視覚的に観察されるが生育が不十分と判断される場合をレベル3、生育が視覚的に十分に認識され生育が十分と判断される場合をレベル4とした。目視により観察されたレベル1~4の様子を図2に提示した。
【0059】
表2に実施例1~10、及び比較例の抗カビ性評価結果を記載した。1週間後の開封時にはいずれのシャーレにもカビの生育は認められなかった。一方、抗菌性薬剤を添加した系では、2週間後(再封後)も抗カビ性が見られたのに対し、抗菌性薬剤未添加の比較例ではカビの生育が認められた。さらに3週間後まで保存すると、バインダー不使用のもの、抗菌性薬剤の添加量が0.01質量部のもの、バインダーがポリビニルブチラールであると抗菌性が発現されなかった。以上より、抗菌性薬剤を両親媒性のバインダー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンのいずれかに担持すると開封後も薬剤が徐放されて長期間抗菌性が持続することが確認された。
【0060】
【表2】
【符号の説明】
【0061】
10 造粒物
20 親水性無機微粒子
100 抗菌性を付与した脱酸素剤
図1
図2