IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-包装材料および包装袋 図1
  • 特開-包装材料および包装袋 図2
  • 特開-包装材料および包装袋 図3
  • 特開-包装材料および包装袋 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185386
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】包装材料および包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20221207BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221207BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221207BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/00 H
B32B27/32
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093038
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神永 純一
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 恭行
(72)【発明者】
【氏名】武井 遼
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
(72)【発明者】
【氏名】福上 美季
(72)【発明者】
【氏名】田中 歩実
(72)【発明者】
【氏名】福田 悠華
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086CA01
3E086CA28
4F100AA01
4F100AA01D
4F100AA19
4F100AA19D
4F100AA20
4F100AA20D
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK05
4F100AK05A
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07E
4F100AK25
4F100AK25C
4F100AK46
4F100AK46C
4F100AK51
4F100AK51C
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB03
4F100CB03E
4F100EH17
4F100EJ37
4F100EJ38
4F100EJ38A
4F100EJ67
4F100EJ67B
4F100GB15
4F100JD02
4F100JD04
4F100JK03
4F100JL12
4F100JL12E
(57)【要約】
【課題】生産性に優れる、酸素バリア性がより良好なガスバリア性フィルムを用いた包装材料とすること。
【解決手段】バリア基材と、バリア基材の第一面に、バリア性皮膜と、バリア基材とバリア性皮膜の間に、下地層および無機酸化物層の少なくとも一方を有し、樹脂基材は、2以上の樹脂層を有し、2以上の樹脂層のうち、第一面を形成する樹脂層がポリオレフィン系共重合樹脂からなり、かつ第一面は、フェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下である、ガスバリア性フィルムを用いた包装材料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材とガスバリアフィルム層とシーラント層を備えた包装材料であって、
バリアフィルム層が、バリア基材と、前記バリア基材の一方の面である第一面側に形成されるバリア性皮膜とを備え、
前記バリア基材と前記バリア性皮膜との間に、下地層および無機酸化物層の少なくと
も一方を有し、
前記バリア基材は、2以上の樹脂層を有し、
前記2以上の樹脂層のうち、前記第一面を形成する樹脂層がポリオレフィン系共重合樹脂からなり、かつ前記第一面は、下記測定方法で測定されるフェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下である、包装材料。
<測定方法>
樹脂基材の第一面の36.6mm四方の任意の領域に、白色LEDライン光源を用いて光源距離100mm、入射角83°で光照射し、測定角90°の透過光をモノクロラインカメラで撮影して撮影画像を取得し、前記撮影画像から3551画素×5684画素(2.5×4.0mm)の解析用画像を切り出し、前記解析用画像中のフェレ径8μm以上の突起をカウントする。
【請求項2】
前記バリア基材がポリオレフィン系樹脂である、請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記下地層の厚みが0.01~1μmである、請求項1~2のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項4】
前記下地層は、主成分として有機高分子を含み、
前記有機高分子は、ポリアクリル系樹脂、ポリオール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの有機高分子の反応生成物の少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項5】
前記無機酸化物層の厚みが1~200nmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項6】
前記無機酸化物層が、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素である、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項7】
前記バリア性皮膜の厚みが0.05~1μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項8】
前記バリア性皮膜が、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び金属アルコキシドの反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含む皮膜である、請求項1~7のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項9】
前記バリア性皮膜が、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及びシランカップリング剤の反応生成物の少なくとも1つを含む、請求項8に記載の包装材料。
【請求項10】
前記バリア性皮膜が、ポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシ基と多価金属化合物(B)との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項11】
前記基材が、二軸延伸ポリプロピレンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項12】
前記二軸延伸ポリプロピレンからなる基材の150℃で熱処理した際のMD熱収縮率が20%以下である、請求項11に記載の包装材料。
【請求項13】
前記シーラント層が、無延伸ポリプロピレンである、請求項11に記載の包装材料。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の包装材料のシーラント層同士を対面した状態で配置し、その周縁部の少なくとも一部をヒートシールされてなる包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を備えた包装材料および包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や品質を維持するため、内容物を変性させる気体(水蒸気、酸素、その他)の進入を防ぐ性質、つまりガスバリア性が求められる。そのため、これらの包装材料には、ガスバリア性を有するフィルム材料(ガスバリア性フィルム)が用いられる。
【0003】
ガスバリア性フィルムとしては、ガスバリア性を有する材料からなるガスバリア層を樹脂基材の表面に設けたものが知られている。ガスバリア層としては、金属箔や金属蒸着膜、ウェットコート法により形成された皮膜が知られている。皮膜としては、酸素バリア性を示すものとして、水溶性高分子、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂を含むコーティング剤から形成された樹脂膜や、水溶性高分子と無機層状鉱物とを含むコーティング剤から形成された無機層状鉱物複合樹脂膜が知られている(特許文献1)。
【0004】
さらに、ガスバリア層として、無機酸化物からなる蒸着薄膜層と、水性高分子と無機層状化合物及び金属アルコキシドを含むガスバリア性複合被膜を順次積層したガスバリア層(特許文献2)や、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシ基と多価金属化合物との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩を含むガスバリア層(特許文献3)が提案されている。
【0005】
ガスバリア性を向上するために、例えば、特許文献4では、基材の少なくとも一方の面に被膜が形成されており、被膜の表面の表面粗さパラメータRT/RAが20以下であるガスバリア性フィルムが提案されている。ここで、RTは、表面粗さ曲線の最大の山と最深の谷との距離である。RAは、中心線平均粗さである。特許文献4のガスバリア性フィルムによれば、ガスバリア性の改善が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6176239号公報
【特許文献2】特開2000-254994号公報
【特許文献3】特許第4373797号公報
【特許文献4】特開平9-150484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂基材の表面にウェットコート法、蒸着法、スパッタリング法等により皮膜を設けたガスバリア性フィルムは、製造ロットにより、酸素バリア性が安定しないことがあった。
具体的には、ガスバリア性フィルムの酸素バリア性が、本来の酸素バリア性、つまり皮膜を構成する材料および皮膜の厚みから想定される酸素バリア性よりも劣ることがあった。
特に、皮膜の厚みが薄くなると、かかる問題が生じやすい傾向があった。そのため、ガスバリア層の厚みを必要以上に厚くして対応しなければならず、生産性の悪さや過大な材料コストが問題となっていた。
【0008】
また、樹脂基材としてポリオレフィン樹脂系のフィルムは安価で水蒸気バリア性が高く、包装材料としてよく使われているが、ガスバリア性皮膜との密着性が悪いため、ヒートシール性樹脂フィルムとラミネートしてガスバリア性包装材料とした時のラミネート強度が劣る欠点があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ガスバリア性を備えた包装材料に関し、酸素バリア性を付与するための皮膜の厚みが薄くても、本来の酸素バリア性を充分に発現して優れたガスバリア性を示し、かつ、包装材料として十分な密着強度を有するガスバリア性フィルムを備えた包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、少なくとも基材とガスバリアフィルム層とシーラント層を備えた包装材料であって、バリアフィルム層が、バリア基材と、前記バリア基材の一方の面である第一面側に形成されるバリア性皮膜とを備え、前記バリア基材と前記バリア性皮膜との間に、下地層および無機酸化物層の少なくとも一方を有し、前記バリア基材は、2以上の樹脂層を有し、前記2以上の樹脂層のうち、前記第一面を形成する樹脂層がポリオレフィン系共重合樹脂からなり、かつ前記第一面は、下記測定方法で測定されるフェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下である、包装材料とする。
<測定方法>
樹脂基材の第一面の36.6mm四方の任意の領域に、白色LEDライン光源を用いて光源距離100mm、入射角83°で光照射し、測定角90°の透過光をモノクロラインカメラで撮影して撮影画像を取得し、前記撮影画像から3551画素×5684画素(2.5×4.0mm)の解析用画像を切り出し、前記解析用画像中のフェレ径8μm以上の突起をカウントする。
【0011】
また、前記バリア基材がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする。
【0012】
また、前記下地層の厚みが0.01~1μmであることを特徴とする。
【0013】
また、前記下地層は、主成分として有機高分子を含み、前記有機高分子は、ポリアクリル系樹脂、ポリオール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの有機高分子の反応生成物の少なくとも1つを含むであることを特徴とする。
【0014】
また、前記無機酸化物層の厚みが1~200nmであることを特徴とする。
【0015】
また、前記無機酸化物層が、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素であることを特徴とする。
【0016】
また、前記バリア性皮膜の厚みが0.05~1μmであることを特徴とする。
【0017】
また、前記バリア性皮膜が、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、及び金属アルコキシドの反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含む皮膜であることを特徴とする。
【0018】
また、前記バリア性皮膜が、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、及びシランカップリング剤の反応生成物の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0019】
また、前記バリア性皮膜が、ポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシ基と多価金属化合物(B)との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩を含むであることを特徴とする。
【0020】
また、前記基材が、二軸延伸ポリプロピレンであることを特徴とする。
【0021】
また、前記二軸延伸ポリプロピレンからなる基材の150℃で熱処理した際のMD熱収縮率が20%以下であることを特徴とする。
【0022】
また、前記シーラント層が、無延伸ポリプロピレンであることを特徴とする。
【0023】
また、前述の包装材料のシーラント層同士を対面した状態で配置し、その周縁部の少なくとも一部をヒートシールされてなる包装袋。
【発明の効果】
【0024】
本発明の、ガスバリア性を備えた包装材料によれば、ガスバリア性フィルムの酸素バリア性皮膜の厚みが薄くても、製造ロット間での性能ばらつきが少なく、本来の酸素バリア性を安定して発現することで、優れたガスバリア性を発揮することができ、かつ酸素バリア性皮膜の密着が良好で、十分なラミネート強度を備えた包装材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態の包装材料の断面図である。
図2】本発明の一実施形態の包装材料の断面図である。
図3】バリア基材の第一面の突起個数を測定する測定装置を説明する概略図である。
図4】突起部分を検出する原理を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1図2は本発明のガスバリア包装材料10の一実施例を示す断面図である。
図1は基材1の一方の面にガスバリアフィルム2を備え、さらにシーラント層7が積層された構成の包装材料である。基材1、ガスバリア性フィルム2、シーラント層はそれぞれ接着層8を介して貼り合わされている。ガスバリア性フィルム2はバリア基材3、下地層4、無機酸化物層5、バリア性皮膜6から構成され、図1の例では基材1側にバリア性皮膜6、シーラント層7側にバリア基材3が位置する構成となっている。
図2は基材1の一方の面にガスバリアフィルム層2を備え、さらにシーラント層7が積層された構成の包装材料であり、図1の構成との違いは基材1側にバリア基材3、シーラント層7側にバリア性皮膜6が位置する点である。
なお、接着層8がなくても貼り合わせが可能な材料の場合省略してもよい。また、図示しないが印刷層を備えていてもよい。
【0027】
[基材]
基材1は支持体となる層である。
基材1を構成する樹脂としてはポリオレフィンが好ましく、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0028】
ポリエチレンとしては、蒸着加工、印刷加工、製袋加工、充填適性などを考慮すると、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。また、柔軟性などの物性を向上させるために、例えば、共押出法により形成される、高密度ポリエチレン(HDPE)/中密度ポリエチレン(MDPE)/低密度ポリエチレン(LDPE)/中密度ポリエチレン(MDPE)/高密度ポリエチレン(HDPE)のような多層構成フィルムを、基材1として用いてもよい。
【0029】
ポリプロピレンとしては、延伸ポリプロピレンが挙げられる。一般的に、ポリプロピレンは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、ターポリマーに大別され、用途や要求性能に合わせてポリマー種が選択されるが、包装材料の基材として用いる場合は、ホモポリマーのポリプロピレンが好ましい。ホモポリマーを最表面に備えたり、ナイロンなどの耐熱性樹脂を最表面に積層したポリプロピレン基材を用い、その耐熱性の面を最外層に配した包装材料は耐熱性が向上するため、製袋時に疑似接着や温度不足によるシール強度不足の問題を低減できる。また、易接着性やシール性を付与する目的で、コア層であるホモポリマー上に、共押出法によりコポリマーやターポリマーをスキン層として形成した多層構成フィルムを、基材1として用いてもよい。
【0030】
第一のポリオレフィン層を構成するポリオレフィンフィルムは、延伸フィルムであってよく、非延伸フィルムであってよい。但し、耐衝撃性、耐熱性、耐水性、寸法安定性等の観点から、ポリオレフィンフィルムは延伸フィルムであってよい。これによりホット充填やレトルト・ボイル処理を施す用途に、積層体をより好適に用いることができる。延伸方法としては特に限定されず、インフレーションによる延伸、一軸延伸、二軸延伸等、寸法が安定したフィルムが供給可能であれば、どのような方法でもよい。
中でも高剛性でかつ高耐熱の二軸延伸ポリプロピレンを用いることが好ましく、このようなものとして、150℃で熱処理した際のMD熱収縮率が20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下のものを用いることが出来る。
【0031】
ポリオレフィンフィルムの厚さは特に限定されない。用途に応じ、当該厚さを6~200μmとすることができるが、優れた耐衝撃性と優れたガスバリア性とを得る観点から、9~50μmであってよく、12~38μmであってよい。
【0032】
基材1を構成する樹脂は、石油由来のものに限定されず、その一部又は全部が生物由来の樹脂材料(例えば、バイオマス由来のエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレン)であってもよい。バイオマス由来のポリエチレンの製造方法は、例えば、特表2010-511634号公報に開示されている。基材1は、市販のバイオマスポリエチレン(ブラスケム社製グリーンPE等)を含んでもよいし、使用済みのポリオレフィン製品やポリオレフィン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)を原料とするメカニカルリサイクルポリオレフィンを含んでもよい。
【0033】
基材1は、ポリオレフィン樹脂以外の成分を含んでいてもよい。かかる成分としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、生分解性の樹脂材料(例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉等)などが挙げられる。基材1は、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の添加剤を含んでもよい。基材1におけるポリオレフィン樹脂以外の成分の量は、基材層1の全量を基準として、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
【0034】
[ガスバリア性フィルム2]
本発明に用いられるガスバリア性フィルム2は、バリア基材3と下地層4と無機酸化物層5とバリア性皮膜6とを有する。なお下地層4および無機酸化物層5のいずれか一方は無くても構わない。
下地層4は、バリア基材3に接して積層され、下地層4のバリア基材3と接している面の反対面に無機酸化物層5が積層されている。無機酸化物層5は、下地層4に接して積層され、無機酸化物層5の下地層4と接している面の反対面にバリア性皮膜6が接して位置している。なお、下地層4が設けられない場合、無機酸化物層5がバリア基材3上に積層される。また、無機酸化物層5が設けられない場合、バリア性皮膜6が下地層4上に積層される。
【0035】
<バリア基材>
バリア基材3は、基層3aを含む2以上の樹脂層を有する。本実施形態では、基層3aと、基層3aの一方の面上に位置する表層3bとを有する。表層3bは、バリア基材3の第一面3cを構成している。バリア基材3は樹脂を含み、バリア基材3を構成する表層3b、基層3aの各層も樹脂を含む。
【0036】
基層3aは、バリア基材3の機械特性、化学的特性、熱的特性、光学特性等を調整する。機械特性とは、剛性、伸び、腰、引裂強さ、衝撃強度、突刺し強度、耐ピンホール性等である。化学的特性は、水蒸気バリア性、ガスバリア性、保香性、耐薬品性、耐油性等である。熱的特性は、融点・ガラス転移点、耐熱温度、耐寒温度、熱収縮率等である。光学特性は、透明性や光沢性等である。
【0037】
基層3aの原料となる樹脂としては、入手の平易さ、水蒸気バリア性の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。ポリプロピレンは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよい。ホモポリマーはプロピレン単体のみからなるポリプロピレンである。ランダムコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと、プロピレンとは異なる種類のコモノマーがランダムに共重合し均質的な相をなすポリプロピレンである。ブロックコポリマーは、主モノマーであるプロピレンと上記コモノマーがブロック的に共重合したり、ゴム状に重合したりすることによって不均質な相をなすポリプロピレンである。これらのポリオレフィン系樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0038】
基層3aは、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、公知の各種の添加剤から適宜選定できる。添加剤の例としては、フィラー、アンチブロッキング剤(AB剤)、耐熱安定剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料が挙げられる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。基層3aにおける添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
【0039】
基層3aは、単層構造でも多層構造でもよい。基層3aの厚みは、例えば、3~200μmであってよく、6~30μmであってよい。
【0040】
表層3bは、ポリオレフィン系共重合樹脂から構成される。ポリオレフィン系共重合樹脂としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・ペンテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体を金属イオンにより架橋したアイオノマー、プロピレン・アクリル酸共重合体等が挙げられ、それぞれランダム共重合体であってもブロック共重合体であっても構わない。これらの樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上をブレンドして用いてもよい。表層3bがポリオレフィン系共重合樹脂からなることで、バリア基材3上に積層される、下地層4、無機酸化物層5及びバリア性皮膜6のいずれかとの密着性が良好となる。
【0041】
表層3bは、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、公知の各種の添加剤から適宜選定できる。添加剤の例としては、アンチブロッキング剤(AB剤)、耐熱安定剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料が挙げられる。これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。表層3bにおける添加剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整できる。
【0042】
表層3bが、AB剤を含有する場合、バリア基材3の第一面3cには、AB剤に由来する突起が形成される。この突起によりフィルム同士の密着を防止して、フィルム原反の巻き取り、巻き出し、搬送における加工適性を向上させられる。特にAB剤の平均粒子径とその添加量は、第一面3cの突起の大きさと数に影響するため、後述する測定方法におけるフェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下となるように調整することが望ましい。
【0043】
AB剤は固体粒子であり、有機系粒子、無機系粒子等が挙げられる。有機系粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリスチレン粒子、ポリアミド粒子等が挙げられる。これら有機系粒子は、例えば、乳化重合や懸濁重合等により得られる。無機系粒子としては、シリカ粒子、ゼオライト、タルク、カオリナイト、長石等が挙げられる。これらのAB剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。AB剤としては、有機系ではポリメチルメタクリレート粒子、無機系ではシリカ粒子が好ましい。
【0044】
AB剤の平均粒径は、0.1μm以上、5μm以下が好ましい。ガスバリア性フィルム2のブロッキング防止性能とガスバリア性能を両立する観点から、AB剤の平均粒径は、1μm以上、4μm以下が特に好ましい。AB剤の平均粒径は、コールター法により測定される。
【0045】
AB剤の添加量は、例えば、表層3bの総質量に対して0.05~0.4質量%が好ましい。表層3bにおけるAB剤の添加量は、具体的には以下の式により求める。
AB剤の添加量[質量%]={(I)/100}×{(II)/100}×100
式中、(I)は、樹脂にAB剤を添加して攪拌し、押出機内に投入して混練し、溶融押出によりペレット状に形成されるマスターバッチ樹脂チップにおけるAB剤の濃度(質量%)を指す。(II)は、AB剤を含むマスターバッチ樹脂チップを、AB剤を含まない樹脂にブレンドするときの、表層3bを構成する樹脂ペレット総質量に対するAB剤を含むマスターバッチ樹脂チップの濃度(質量%)を示す。尚、基層3aにAB材を添加する場合の添加量も同様に基層3aの総質量に対して0.05~0.4質量%が好ましく、添加量は上記式により求めることができる。
【0046】
表層3bの厚みは、例えば、0.1~10μmであってよく、さらには0.5~5.0μmであってよい。
【0047】
バリア基材3は、少なくとも表層3bと基層3aを含む、共押出フィルムであることが好ましい。バリア基材3は、延伸フィルムでも未延伸フィルムでもよい。
【0048】
バリア基材3は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有することが好ましい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは特に水蒸気バリア性能に優れるため、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有することで、ガスバリア性フィルム2の水蒸気バリア性が向上する。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等の少なくとも1種がフィルム状に加工されたものであってよい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、共押出フィルムであることが好ましい。
【0049】
基層3aは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるものであってもよく、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと他の樹脂フィルムとが積層されたものであってもよい。他の樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、およびポリイミドフィルム等のエンジニアリングプラスチックフィルムが挙げられる。
【0050】
バリア基材3の厚みは、特に限定されるものではなく、包装材料としての適性や他の皮膜の積層適性を考慮しつつ、価格や用途によって適宜選択される。バリア基材3の厚みは、実用的には3μm~200μmが好ましく、5μm~120μmがより好ましく、6μm~30μmがさらに好ましい。
【0051】
バリア基材3の第一面3cは、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理およびオゾン処理からなる群から選ばれる少なくとも1種の処理が施されていてもよい。
【0052】
バリア基材3の第一面3cにAB剤による突起が形成されると、フィルムのブロッキングを防止できる反面、大きな凸部においては、その上に形成される下地層4、無機酸化物層5及びバリア性皮膜6に、ガス透過の経路となる膜欠陥が生じやすくなり、ガスバリア性フィルム2の酸素バリア性が低下する恐れが生じる。しかし本発明のガ
スバリア性フィルム2のバリア基材3の第一面は、以下に示す測定方法により測定したフェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下であることを特徴とし、膜欠陥が生じ難い。バリア基材3の第一面3cは、フェレ径8μm以上の突起が17個/mm以下であることがより好ましく、フェレ径8μm以上の突起が15個/mm以下であることがさらに好ましく、フェレ径8μm以上の突起が0個/mmであっても構わない。フェレ径が8μm以上の突起は、第一面3cの平坦部から突起頂点までの高さが1μmを超えるものが多く、酸素バリア性皮膜の膜欠陥を発生させやすい。そのためフェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下であると、下地層4、無機酸化物層5及びバリア性皮膜6に膜欠陥が生じ難くなるため、ガスバリア性フィルム2の酸素バリア性をより良好にしやすい。なお、バリア基材3の第一面に形成される突起は、AB剤由来のものでもよく、他の要因によるものでもよく、特に限定されない。本明細書において、バリア基材3の第一面の突起個数は、下記測定方法により測定される値である。
【0053】
<測定方法>
バリア基材3の36.6mm四方の任意の領域に、バリア基材3の第一面の反対側の面である第二面側から白色LEDライン光源を用いて光源距離100mm、入射角83°で光照射する。測定角90°の透過光をモノクロラインカメラで撮影して撮影画像を取得する。取得した撮影画像から3551画素×5684画素(2.5×4.0mm)の解析用画像を切り出す。切り出した解析用画像を画像解析ソフトによりフェレ径が8μm以上の突起を抽出してその数をカウントし、mmあたりに換算して、フェレ径8μm以上の突起数とする。
【0054】
以下に、バリア基材3の第一面の突起個数の測定方法について、図面を参照して説明する。まず、その測定装置について説明する。
【0055】
(測定装置)
図3に示すように、バリア基材3の第一面3cの突起個数を測定する測定装置1は、サンプルホルダ21と、光源23と、モノクロラインカメラ25とを備える。サンプルホルダ21は、搬送装置28の上に設置され、水平方向に移動できる。サンプルホルダ21の中央部には、抜き穴22が形成されている。光源23は、サンプルホルダ21の下方に位置して、光源距離100mmの位置に設置され、光源制御装置24が接続されている。モノクロラインカメラ25は、サンプルホルダ21の上方に位置しており、モノクロラインカメラ25には、マクロレンズ26が装着されている。モノクロラインカメラ25には、画像処理装置27が接続されている。画像処理装置27には、搬送制御部29が接続されている。搬送制御部29は、搬送装置28に接続されている。
【0056】
サンプルホルダ21は、平坦で水平であれば特に限定されず、公知のホルダを用いてもよい。光源23としては、可視光の白色LEDライン光源が好ましい。
【0057】
モノクロラインカメラ25は、16384画素、1画素のセンササイズが3.52μmのものを用いることが好ましい。モノクロラインカメラ25は、カメラリンクやUSB等の規格のインターフェースを介して、画像処理装置27で制御されることが好ましい。画像処理装置27は、例えば、モノクロラインカメラ25と接続するフレームグラバ等を搭載したパソコンと、フレームグラバを制御する画像処理ソフトウェア等とで構成される。フレームグラバ等を搭載したパソコンや、フレームグラバを制御する画像処理ソフトウェアは、広く頒布又は市販されており、画像処理装置27としては、それらが使用できる。画像処理ソフトウェアとしては、例えば、アメリカ国立衛生研究所(NIH)開発のパブリックドメインのソフトウェア「IMAGEJ」が挙げられる。
【0058】
搬送装置28は、ステッピングモーターで駆動する一軸ステージ等を用いることが好ましい。搬送装置28は、搬送制御部29により、搬送速度や搬送開始、搬送停止等の制御がなされる。
【0059】
(サンプル準備)
次に、バリア基材3の第一面の突起個数の測定方法について説明する。図2に示すように、まず、バリア基材3の第一面3cをモノクロラインカメラ25の側に向けて、サンプルホルダ21に面内で高低差が生じないようにバリア基材3を固定する。バリア基材3を固定する際には、バリア基材3の端部をOPPテープやマスキングテープ等を用いて固定することが好ましい。バリア基材3の画像測定位置30を抜き穴22に合わせるように樹脂基材20をサンプルホルダ21に固定する。
【0060】
(撮影画像の取得)
次に、光源23から白色LEDライン光を入射する。光源23の光量は、光源制御装置24で調整できる。入射光L1の光量は、画像測定位置30での光量が442ルクスとなるように光源制御装置24を用いて調整することが好ましい。光源23からの入射光L1は、第一面21に対する入射角13を83°として、垂直方向から7°斜めにずらし、第一面3cに対して測定角14が90°となる位置にモノクロラインカメラ25を設置して、画像測定位置30を透過した透過光L2を、マクロレンズ26を介して、モノクロラインカメラ25で撮影する。このとき、マクロレンズ26の倍率を5倍、F値を2.8、分解能は0.704μmとする。画像測定位置30での、モノクロラインカメラ25の測定範囲は36.6mm四方の領域とし、光源23の有効な照明範囲は、36.6mm四方の領域以上とする。
【0061】
透過光L2の測定範囲は、第一面3cの36.6mm四方の領域である。測定範囲が上記の領域となるように、搬送装置28を移動させる。搬送装置28がステッピングモーター等の場合、搬送速度を示すパルス信号を画像処理装置27に取込む。搬送装置28を移動させる搬送速度は、空間分解能と取込み周波数との積に等しくなるように設定することが好ましい。空間分解能は、モノクロラインカメラ25のセンササイズ(3.52μm)と、マクロレンズ26の倍率(5倍)とから決定される。取込み周波数は、モノクロラインカメラ25の一ラインの取込み周波数である。搬送速度は、空間分解能と取込み周波数との積に等しくなるように設定し、バリア基材3は、モノクロラインカメラ25の画像測定位置30において連続して搬送される。画像測定位置30において、モノクロラインカメラ25でバリア基材3の第一面3cの画像が測定され、撮影される。
【0062】
モノクロラインカメラ25の露光時間を80μsとする。取込み周波数の周期が露光時間より長くなるよう設定する。バリア基材3を搬送し、バリア基材3の搬送方向に5684画素以上の撮影画像を取得する。
【0063】
(画像の解析)
取得した撮影画像において、モノクロラインカメラ25のセンサ並び方向(バリア基材3の搬送方向と直交する方向)に該当する中心3551画素と、搬送方向に5684画素とを切り出し、解析用画像とする。搬送方向には、5684画素以上切り出して測定範囲を広くすることも可能である。切り出した解析用画像を画像解析ソフトにて解析する。
【0064】
図4には、本測定系において、バリア基材3表面の微小な突起や窪みを検出できる原理を示した。ラインカメラで、測定角θ1より、入射角θ2を小さくすると、突起部分では画像の上方向が明るく、下方向が暗く3次元的に可視化される。窪み部分ではその上下が逆になる。球面レンズに似た屈折によるものと推測される。この傾向を利用して解析用画像から、明るい粒子及び暗い粒子を、それぞれ輝度、サイズ、真円度で選別、2値化して、上が明るく下が暗い粒子を突起として抽出、抽出された粒子のフェレ径データを取得する。図4には、本発明の実施例のバリア基材3の第一面3cの撮影画像と、上記のアルゴリズムにて突起部分を抽出した解析画像を示した。こうして抽出されたフェレ径データから、解析用画像内のフェレ径8μm以上の粒子の個数をカウントして、mm面積あたりの個数に換算した値を突起個数とした。
【0065】
<下地層>
下地層4は、バリア基材3と、無機酸化物層5またはバリア性皮膜6との間に設けられる。下地層4は、有機高分子を主成分として含有する層であり、プライマー層と呼ばれることもある。下地層4を設けることによって、無機酸化物層5またはバリア性皮膜6の成膜性や密着強度を向上させることができる。
【0066】
下地層4における有機高分子の含有量は、例えば70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。有機高分子としては、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられ、バリア基材3と無機酸化物層50或いはバリア性皮膜6との密着強度の耐熱水性を考慮すると、ポリアクリル系樹脂、ポリオール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれら有機高分子の反応生成物の少なくとも1つを含むことが好ましい。また下地層4は、シランカップリング剤や有機チタネートまたは変性シリコーンオイルを含んでいてもよい。
【0067】
有機高分子としてさらに好ましくは、高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類とイソシアネート化合物との反応により生成したウレタン結合を有する有機高分子、および/または高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類とシランカップリング剤またはその加水分解物のような有機シラン化合物との反応生成物を含む有機高分子が挙げられる。
【0068】
ポリオール類としては、例えば、アクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリスチルポリオール、及びポリウレタンポリオール等から選択される少なくとも一種が挙げられる。アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるものであってもよく、アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られるものであってもよい。アクリル酸誘導体モノマーとしては、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。アクリル酸誘導体モノマーと共重合させるモノマーとしては、スチレン等が挙げられる。
【0069】
イソシアネート化合物は、ポリオールと反応して生じるウレタン結合により樹脂基材20と無機酸化物層5またはバリア性皮膜6との密着性を高める作用を有する。すなわち、イソシアネート化合物は、架橋剤又は硬化剤として機能する。イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、及びこれらの誘導体が挙げられる。上述のイソシアネート化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0070】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、Γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、Γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、Γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びΓ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。有機シラン化合物は、これらのシランカップリング剤の加水分解物であってもよい。有機シラン化合物は、上述のシランカップリング剤及びその加水分解物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0071】
下地層4は、有機溶媒中に上述の成分を任意の割合で配合して混合液を調製し、樹脂基材20の第一面3c上に調製した混合液を用いて形成することができる。混合液は、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤;フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤;レベリング剤;流動調整剤;触媒;架橋反応促進剤;充填剤等を含有してもよい。
【0072】
混合液は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、又はシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式、或いは、ロールコート、ナイフエッジコート、又はグラビアコートなどの周知の塗布方式を用いてバリア基材3の上にコーティングすることができる。コーティング後、例えば50~200℃に加熱し、乾燥及び/又は硬化することによって、下地層4を形成することができる。
【0073】
下地層4の厚さは、特に制限されず、例えば、0.005~5μmであってもよい。
厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。下地層4の厚みとしては、0.01~1μmが好ましく、0.01~0.5μmがより好ましい。下地層4の厚みが0.01μm以上であれば、バリア基材3と無機酸化物層5またはバリア性皮膜30との十分な密着強度が得られ、酸素バリア性も良好となる。下地層4の厚みが1μm以下であれば、均一な塗工面を形成することが容易であり、また、乾燥負荷や製造コストを抑制できる。
【0074】
<無機酸化物層>
無機酸化物層5は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられ、特に酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素が、生産性に優れ、かつ耐熱、耐湿熱での酸素バリア性及び水蒸気バリア性に優れることから好ましい。なお無機酸化物層5は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。無機酸化物層5の厚みは、1~200nmが好ましく、厚みが1nm以上であれば、優れた酸素バリア性と水蒸気バリア性が得られ、厚みが200nm以下であれば、製造コストを低く抑えられるとともに、折り曲げや引っ張りなどの外力による亀裂が生じ難く、バリア性の劣化を抑えられる。無機酸化物層5は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ気相成長法(CVD)等の公知の成膜方法によって形成することができる。
【0075】
<バリア性皮膜>
バリア性皮膜6は、ウェットコート法により形成される酸素バリア性皮膜として公知のものであってよい。バリア性皮膜6は、下地層4または無機酸化物層5の上にウェットコート法によりコーティング剤からなる塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより得られる。なお、塗膜は、湿潤膜であり、皮膜は、乾燥膜である。
【0076】
バリア性皮膜6としては、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つと、水溶性高分子とを含む皮膜(有機無機複合皮膜)が好ましい。さらにシランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方をさらに含む皮膜が好ましい。
【0077】
有機無機複合膜に含まれる金属アルコキシド及びその加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシラン[SI(OC]及びトリイソプロポキシアルミニウム[AL(OC]等の一般式M(OR)Nで表されるもの、並びにその加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0078】
有機無機複合膜における、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量は、例えば、40~70質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、有機無機複合膜における、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の下限は50質量%であってもよい。同様の観点から、有機無機複合膜における、金属アルコキシド及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の上限は65質量%であってもよい。
【0079】
有機無機複合膜に含まれる水溶性高分子は、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等の多糖類、及びアクリルポリオール系等の高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000~180000である。
【0080】
ポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えばポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0081】
有機無機複合膜における、水溶性高分子の含有量は、例えば、15~50質量%である。有機無機複合膜における、水溶性高分子の含有量の下限は、酸素透過度を一層低減する観点から20質量%であってもよい。有機無機複合膜における、水溶性高分子の含有量の上限は、酸素透過度を一層低減する観点から45質量%であってもよい。
【0082】
有機無機複合膜に含まれるシランカップリング剤及びその加水分解物としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤及びその加水分解物としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、Γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、Γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、Γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、Γ-メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン、及びこれらの加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0083】
シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方は、有機官能基として、エポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、Γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、及びΒ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。
【0084】
有機官能基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、バリア性皮膜6の酸素バリア性と、下地層4または無機酸化物層5との接着性を一層向上することができる。特に、シランカップリング剤及びその加水分解物のエポキシ基とポリビニルアルコールの水酸基とは、相互作用によって、酸素バリア性と下地層4または無機酸化物層5との接着性に特に優れるバリア性皮膜6を形成することができる。
【0085】
有機無機複合膜における、シランカップリング剤及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量は、例えば、1~15質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、有機無機複合膜における、シランカップリング剤及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の下限は2質量%であってもよい。同様の観点から、有機無機複合膜における、シランカップリング剤及びその加水分解物、乃至はその反応生成物の少なくとも1つの合計含有量の上限は12質量%であってもよい。
【0086】
有機無機複合膜には、層状構造を有する結晶性の無機層状化合物を含んでいても構わない。無機層状化合物としては、例えば、カオリナイト族、スメクタイト族、又はマイカ族等に代表される粘土鉱物が挙げられる。これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機層状化合物の粒径は、例えば0.1~10μmである。無機層状化合物のアスペスト比は、例えば50~5000である。
【0087】
無機層状化合物としては、層状構造の層間に水溶性高分子が入り込むこと(インターカレーション)によって、優れた酸素バリア性と密着強度を有する皮膜を形成できることから、スメクタイト族の粘土鉱物が好ましい。スメクタイト族の粘土鉱物の具体例としては、モンモリトロナイト、ヘクトライト、及びサポナイト、水膨潤性合成雲母等が挙げられる。
【0088】
また、バリア性皮膜6の別の好ましい例として、ポリカルボン酸系重合体(A)のカルボキシ基と多価金属化合物(B)との反応生成物であるカルボン酸の多価金属塩を含む皮膜(ポリカルボン酸の多価金属塩皮膜)が挙げられる。この場合、ポリカルボン酸系重合体(A)と多価金属化合物(B)を混合したコーティング剤を塗布、加熱乾燥することで形成されるポリカルボン酸の多価金属塩皮膜であっても、ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してA皮膜を形成した上に、多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してB皮膜を形成し、A/B層間で架橋反応させて形成されるポリカルボン酸の多価金属塩皮膜であっても構わない。
【0089】
[ポリカルボン酸系重合体(A)]
ポリカルボン酸系重合体とは、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体である。ポリカルボン酸系重合体としては、たとえば、エチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これらのポリカルボン酸系重合体は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0090】
成分としては、上記の中でも、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性の観点から、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸及びクロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が好ましく、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が特に好ましい。該重合体において、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位の割合は、80MOL%以上であることが好ましく、90MOL%以上であることがより好ましい(ただし該重合体を構成する全構成単位の合計を100MOL%とする)。該重合体は、単独重合体でも、共重合体でもよい。該重合体が、上記構成単位以外の他の構成単位を含む共重合体である場合、該他の構成単位としては、例えば前述のエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位などが挙げられる。
【0091】
ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、2,000~10,000,000の範囲内が好ましく、5,000~1,000,000がより好ましい。数平均分子量が2,000未満では、得られるガスバリア性フィルムは充分な耐水性を達成できず、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化の発生が起こる場合がある。他方、数平均分子量が10,000,000を超えると、バリア性皮膜6を形成する際のコーティング剤の粘度が高くなり、塗工性が損なわれる場合がある。なお、上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0092】
ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してA皮膜を形成した後に前記B皮膜を形成する場合には、ポリカルボン酸系重合体は、カルボキシ基の一部が予め塩基性化合物で中和されていてもよい。ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシ基の一部を予め中和することにより、A皮膜の耐水性や耐熱性をさらに向上させることができる。塩基性化合物としては、多価金属化合物、一価金属化合物およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物が好ましい。多価金属化合物としては、後述する多価金属化合物(B)の説明で例示する化合物を用いることができる。一価金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0093】
ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤には各種添加剤を加えることができ、添加剤としては、バリア性能を損なわない範囲で架橋剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、アンチブロッキング剤、静電防止剤、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤などがあげられる。
【0094】
ポリカルボン酸系重合体(A)を主成分とするコーティング剤に用いる溶媒は水性媒体が好ましい。水性媒体としては、水、水溶性または親水性有機溶剤、またはこれらの混合物が挙げられる。水性媒体は通常、水または水を主成分として含むものである。水性媒体中の水の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。水溶性または親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、アセトニトリル類のニトリル類等が挙げられる。
【0095】
[多価金属化合物(B)]
多価金属化合物は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と反応してポリカルボン酸の多価金属塩を形成する化合物であれば特に限定されず、酸化亜鉛粒子、酸化マグネシウム粒子、マグネシウムメトキシド、酸化銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらを単独或いは複数を混合して用いてもよい。バリア性皮膜の酸素バリア性の観点から酸化亜鉛が好ましい。
【0096】
酸化亜鉛は紫外線吸収能を有す無機材料であり、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は特に限定されないが、ガスバリア性、透明性、コーティング適性の観点から、平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤を塗布、乾燥してB皮膜を形成する場合は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化亜鉛粒子のほかに、各種添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、コーティング剤に用いる溶媒に可溶又は分散可能な樹脂、該溶媒に可溶又は分散可能な分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤等を含有してもよい。
【0097】
上記の中でも、コーティング剤に用いる溶媒に可溶または分散可能な樹脂を含有することが好ましい。これにより、コーティング剤の塗工性、製膜性が向上する。このような樹脂としては、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0098】
また、コーティング剤に用いる溶媒に可溶又は分散可能な分散剤を含有することが好ましい。これにより、多価金属化合物の分散性が向上する。該分散剤としては、アニオン系界面活性剤や、ノニオン系界面活性剤を用いることができる。該界面活性剤としては、(ポリ)カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルフォコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、芳香族リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ソルビタンアルキルエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の各種界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0099】
多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤に添加剤が含まれている場合には、多価金属化合物と添加剤との質量比(多価金属化合物:添加剤)は、30:70~99:1の範囲内であることが好ましく、50:50~98:2の範囲内であることが好ましい。
【0100】
多価金属化合物(B)を主成分とするコーティング剤に用いる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、N-プロピルアルコール、N-ブチルアルコール、N-ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。また、これらの溶媒は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、塗工性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水が好ましい。また製造性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、水が好ましい。
【0101】
ポリカルボン酸系重合体(A)と多価金属化合物(B)を混合したコーティング剤を塗布、乾燥してポリカルボン酸の多価金属塩皮膜を形成する場合には、前記したポリカルボン酸系重合体(A)と前記した多価金属化合物(B)と、水またはアルコール類を溶媒として、該溶媒に溶解或いは分散可能な樹脂や分散剤、および必要に応じて添加剤を混合して、コーティング剤として、公知のコーティング方法にて塗布、乾燥することで、ポリカルボン酸の多価金属塩皮膜を形成することができる。コート法として、例えばキャスト法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0102】
バリア性皮膜6の厚みは、要求される酸素バリア性に応じて設定され、例えば0.05~5μmであってよい。バリア性皮膜6の厚みとしては、0.05~1μmが好ましく、0.1~0.5μmがより好ましい。バリア性皮膜6の厚みが0.05μm以上であれば、充分な酸素バリア性が得られやすい。バリア性皮膜6の厚みが1μm以下であれば、均一な塗工面を形成することが容易で、乾燥負荷や製造コストを抑制できる。
【0103】
バリア性皮膜6において、前記の有機無機複合皮膜や、前記のポリカルボン酸の多価金属塩皮膜を有するガスバリア性フィルムは、ボイル処理やレトルト殺菌処理を行っても優れた酸素バリア性を示し、シーラントフィルムとラミネートして、ボイル、レトルト処理用包装材料としても、十分な密着強度やシール強度を有し、さらに、金属箔や金属蒸着膜にはない透明さと、耐屈曲性や耐延伸性に優れ、ダイオキシン等の有害物質発生のリスクもない等の利点がある。
また、バリア性皮膜6は複数層からなっていてもよい。
【0104】
[ガスバリア性フィルムの製造方法]
ガスバリア性フィルム2は、バリア基材3の第一面3cに、下地層4及び無機酸化物層50のいずれか一方、または下地層4と無機酸化物層5の双方を形成した後、下地層4または無機酸化物層5の上にバリア性皮膜6を形成することにより製造できる。本発明のガスバリア性フィルム2の製造方法は、例えば、選別工程と、下地層形成工程と、無機酸化物層形成工程と、バリア性皮膜形成工程とを有する。
【0105】
選別工程としては、例えば、表面のフェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下である樹脂基材原反をバリア基材3として選別する工程が挙げられる。樹脂基材原反の表面の突起個数は、上述したバリア基材3の第一面3cの突起個数の測定方法と同様の方法で測定される。バリア基材3としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造し
たものを用いてもよい。
【0106】
下地層形成工程としては、例えば、バリア基材3の少なくとも第一面3cにコーティング剤をウェットコート法により塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥(溶媒を除去)することにより下地層4を形成する工程が挙げられる。コーティング剤の塗布方法としては、公知のウェットコート法を用いることができる。ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等が挙げられる。コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥条件としては、例えば90℃で10秒間の条件が挙げられる。
【0107】
無機酸化物層形成工程としては、例えば、バリア基材3の第一面3c、または下地層4上に、前記した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ気相成長法(CVD)等により無機酸化物層5を成膜する工程が挙げられる。
【0108】
バリア性皮膜形成工程としては、例えば、下地層4、または無機酸化物層5の上に、コーティング剤をウェットコート法により塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥(溶媒を除去)することによりバリア性皮膜6を形成する工程が挙げられる。コーティング剤の塗布方法としては、公知のウェットコート法を用いることができる。ウェットコート法としては、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等が挙げられる。コーティング剤からなる塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥条件としては、例えば90℃で10秒間の条件が挙げられる。
バリア性皮膜6は、一度の塗布、乾燥により形成しても、同種のコーティング剤或いは異種のコーティング剤により、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成しても構わない。
【0109】
ガスバリア性フィルム2の製造方法が選別工程を有する場合、表面のフェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下であるバリア基材3を効率よく適用できる。このため、選別工程を有することにより、酸素バリア性をより向上したガスバリア性フィルムを効率よく製造できる。加えて、選別工程を有することにより、印刷適性が良好なガスバリア性フィルム100を効率よく製造できる。
【0110】
ガスバリア性フィルム2は、必要に応じて、印刷層、保護層、遮光層、接着剤層、ヒートシール可能な熱融着層、その他の機能層等をさらに有していてもよい。ガスバリア性フィルム2がヒートシール可能な熱融着層を有する場合、この熱融着層は、ガスバリア性フィルム2の少なくとも一方の最表層に配置される。ガスバリア性フィルム2が熱融着層を有することにより、ガスバリア性フィルム2が、熱シールによって密封可能なもの(例えば、包装体や蓋体)となる。熱融着層は、例えば、バリア基材3の片面又は両面に本実施形態の下地層4や無機酸化物層5、バリア性皮膜6を形成して得られた積層体に、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の公知の接着剤を用いて、公知のドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法等により積層することができる。
【0111】
[シーラント層]
シーラント層7は、包装材料10においてヒートシールによる封止性を付与する層であり、ポリオレフィンを含有する。また、シーラント層7におけるポリオレフィンの含有量は、例えば、70質量%以上であり、40~90質量%であってもよい。シーラント層7のポリオレフィンの含有量が70質量%以上であることで、包装材料10のポリオレフィンの含有量(包装材料10の全量基準)を90質量%以上としやすく、モノマテリアルを実現しやすい。
【0112】
シーラント層7を構成する樹脂材料として、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を使用することができる。
シーラント層7がポリエチレンの場合は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができる。また、剛性を付与するなどの目的で、ガスバリアフィルム2を高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)とし、内容物側を低密度ポリエチレン(LDPE)となるように共押出された積層構成のフィルムも使用可能である。
さらに、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を単独で、あるいはブレンドまたは共押出等で積層して使用することができる。シーラント層7の厚さは、例えば、40~150μmである。なお、シーラント層7として、バイオマス由来のポリオレフィンを使用してもよく、例えばエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレンを一部又は全部に含むシーラントフィルムを使用してもよい。このようなシーラントフィルムは例えば特開2013-177531号に開示されている。また、シーラント層7は、使用済みのポリオレフィン製品やポリオレフィン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)を原料とするメカニカルリサイクルポリオレフィンを含んでいてもよい。
【0113】
包装材料10のシーラント層7同士が対面した状態で配置し、その周縁部の少なくとも一部をヒートシールすることによって包装袋を作製することができる。包装袋の態様として、ピロー袋、スタンディングパウチ、三方シール袋、四方シール袋等が挙げられる。このとき耐熱性の基材を用いることで製袋時の疑似接着(本来接着されるべきでないところが張り付いてしまう不良)や、基材とシーラントとの融点の差が小さいことで十分な接着温度や時間をかけられずシール強度不足となってしまうことを防ぐことができる。
なお、包装材料10は、包装袋の他に、例えば、容器等の包装製品、化粧シート、トレー等のシート成形品、光学フィルム、樹脂板、各種ラベル材料、蓋材、及びラミネートチューブ等の各種用途に適用することができる。
【0114】
基材1とガスバリア性フィルム2の間、ガスバリア性フィルム2とシーラント層7の間には接着層8を備えていてもよい。
接着層8を構成する接着剤は、接着方法に合わせて選定することができ、例えば、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤などを用いることができる。接着層8を設けることで、基材1とシーラント層7の層間密着性を高くしてデラミネーションしにくくなり、パウチとしての耐圧性や耐衝撃性を保持することができる。例えば、一液硬化型もしくは二液硬化型ウレタン系接着剤等の接着剤で貼りあわせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼りあわせるノンソルベントドライラミネート法、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、貼りあわせるエクストルージョンラミネート法等、を挙げることができる。
接着層8は、塩素を含まないことが好ましい。接着層8が塩素を含まないことで、接着剤やリサイクル後の再生樹脂が着色したり、加熱処理によって臭いが発生したりすることを防ぐことができる。接着層8としてバイオマス材料を含む接着剤を使用すると環境配慮の観点から好ましい。環境配慮の観点から、接着は溶剤を使用しない方法が好ましい。
【0115】
包装材料10は印刷層を備えていてもよい。印刷層は基材1上で包装材料の最表面、基材1とガスバリア性フィルム2の間、ガスバリア性フィルム3とシーラント層7の間に設けることができる。ガスバリアフィルム2上に印刷層を設ける場合は、バリア性皮膜6形成面とは反対側のバリア基材3上に設けることが好ましい。
【0116】
印刷層は、例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、又はゴム系などのバインダー樹脂に、各種顔料、可塑剤、乾燥剤、及び安定剤などを添加してなるインキを用いて形成される層である。この印刷層によって、文字、絵柄などを表示することができる。
【0117】
インキは、水性インキであっても油性インキであってもよいが、水性インキであることが好ましい。水性インキは、水又はアルコールを溶剤に使用するため、環境負荷をより低減することができる。特に、接着剤組成物が無溶剤型接着剤組成物である場合には、インキとして水性インキを使用すると、環境負荷を大幅に低減することができる。また、インキは、バイオマスインキであってもバイオマスインキでなくてもよいが、環境負荷を低減する観点からは、バイオマスインキであることが好ましい。ここで、バイオマスインキとは、上述したバインダー樹脂をバイオマス由来にしたものをいう。
印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法を用いることができる。
【0118】
<作用効果>
本発明に用いられるガスバリア性フィルム2は、第一面3cを形成する樹脂層がポリオレフィン系共重合樹脂からなり、かつ第一面は、前記測定方法で測定されるフェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下であるバリア基材3の第一面3cに、下地層4または無機酸化物層50のいずれか一方、または下地層4と無機酸化物層5の双方が積層され、さらにバリア性皮膜6が積層されている。本発明のガスバリア性フィルム2は、表層3bがポリオレフィン系共重合樹脂からなり、フェレ径8μm以上の突起が20個/mm以下であるバリア基材3に、下地層4または無機酸化物層5のいずれか一方またはその双方を介して、バリア性皮膜6を形成しているため、基材表面の大きな突起に起因する膜欠陥が生じにくく、酸素バリア性をより良好にでき、バリア性皮膜6の密着を良好にできる。加えて、本発明のガスバリア性フィルム2は、下地層4、無機酸化物層5、バリア性皮膜6の厚みをむやみに厚くする必要がないため、生産性の向上や材料使用量の削減が図られる。
したがって、このガスバリア性フィルム2を包装用材料として用いることにより、包装用材料として十分なラミネート強度を有し、安価に内容物の品質保持性を高めることができる。
【0119】
本発明の包装材料は、優れたガスバリア性を安定的に示し、レトルト処理後においても優れたガスバリア性を示す。また、基材フィルムの表面状態を簡易に把握でき、バリア性皮膜を薄膜化しても品質を安定化出来て、原材料コストの削減が可能となる。さらに、レトルト処理しても充分なラミネート強度を有する。本発明包装材料は、ボイル処理、レトルト処理用の包装材料としても好適に利用可能であり、内容物の品質保持性を高めることができる。特に基材として二軸延伸ポリプロピレンを用い、シーラント層として無延伸ポリプロピレン用いることで、高温化の処理にも適していながら、包装材料10のポリオレフィンの含有量(包装材料10の全量基準)を90質量%以上としやすく、モノマテリアルを実現することが可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 基材
2 ガスバリア性フィルム層
3 バリア基材
3a 基層
3b 表層
3c 第一面
3d 第二面
4 下地層
5 無機酸化物層
6 バリア性皮膜
7 シーラント
8 接着剤
10 包装材料
20 測定装置
21 サンプルホルダ
22 抜き穴
23 光源
24 光源制御装置
25 モノクロラインカメラ
26 マクロレンズ
27 画像処理装置
28 搬送装置
29 搬送制御部
30 画像測定位置
31 入射角
32 測定角
L1 入射光
L2 透過光
図1
図2
図3
図4