(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185391
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】半導電性塗料およびその製造方法ならびに電力ケーブルの端末処理方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/24 20060101AFI20221207BHJP
C09D 123/26 20060101ALI20221207BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221207BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221207BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20221207BHJP
H02G 15/02 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01B1/24 E
C09D123/26
C09D7/61
C09D7/63
C09D5/24
H02G15/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093043
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏也
(72)【発明者】
【氏名】今井 リサ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 道朝
(72)【発明者】
【氏名】稲庭 康之
(72)【発明者】
【氏名】新舘 均
【テーマコード(参考)】
4J038
5G301
5G375
【Fターム(参考)】
4J038CB141
4J038HA026
4J038KA09
4J038NA20
4J038PB09
5G301DA18
5G301DA43
5G301DD04
5G301DE01
5G375AA02
5G375BA30
5G375CB34
5G375DA02
5G375EA17
(57)【要約】
【課題】CVケーブルの外部半導電層として好適な(架橋ポリエチレン絶縁体に付着性が高い)半導電性塗料を提供する。
【解決手段】内部半導電層3、架橋ポリエチレン絶縁体4および外部半導電層5の3層同時押出による電力ケーブルの外部半導電層5に使用される半導電性塗料が開示されている。当該半導電性塗料は、バインダー樹脂、導電性カーボンおよび分散剤を含む固形成分と溶媒とで構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部半導電層、架橋ポリエチレン絶縁体および外部半導電層の3層同時押出による電力ケーブルの当該外部半導電層に使用される半導電性塗料において、
バインダー樹脂、導電性カーボンおよび分散剤を含む固形成分と溶媒とで構成され、
前記バインダー樹脂は変性ポリオレフィン樹脂でかつ前記固形成分に占める含有量が60質量%以上であり、
前記導電性カーボンはBET比表面積が370mm2/g以上のカーボンブラックでかつ前記固形成分に占める含有量が5~25質量%であり、
前記分散剤は非イオン性分散剤であって、前記固形成分に占める含有量が3~24質量%でかつ前記導電性カーボンに対する含有比率が0.5~1.5倍であり、
前記溶媒は水でかつ当該半導電性塗料に占める含有量が80質量%以下であることを特徴とする半導電性塗料。
【請求項2】
内部半導電層、架橋ポリエチレン絶縁体および外部半導電層の3層同時押出による電力ケーブルの当該外部半導電層に使用され、バインダー樹脂、導電性カーボンおよび分散剤を含む固形成分と溶媒とで構成される半導電性塗料の製造方法において、
前記バインダー樹脂として変性ポリオレフィン樹脂を、前記導電性カーボンとしてBET比表面積が370mm2/g以上のカーボンブラックを、前記分散剤として非イオン性分散剤を、前記溶媒として水をそれぞれ準備する準備工程と、
前記バインダー樹脂、前記導電性カーボン、前記分散剤および前記水を混合する混合工程とを備え、
前記混合工程では、前記バインダー樹脂の前記固形成分に占める含有量を60質量%以上と、前記導電性カーボンの前記固形成分に占める含有量を5~25質量%と、前記分散剤の前記固形成分に占める含有量を3~24質量%でかつ前記分散剤の前記導電性カーボンに対する含有比率を0.5~1.5倍と、前記溶媒の当該半導電性塗料に占める含有量を80質量%以下と設定することを特徴とする半導電性塗料の製造方法。
【請求項3】
内部半導電層、架橋ポリエチレン絶縁体および外部半導電層の3層同時押出による電力ケーブルの端末処理方法において、
前記外部半導電層を除去し前記架橋ポリエチレン絶縁体を露出させる工程と、
請求項1の半導電性塗料を前記架橋ポリエチレン絶縁体上に塗布する工程と、
前記半導電性塗料を70~150℃で5~30分加熱し乾燥させる工程と、
を備えることを特徴とする電力ケーブルの端末処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導電性塗料およびその製造方法ならびに電力ケーブルの端末処理方法にかかり、特にCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(cross-linked polyethylene insulated vinyl sheath cable)の略称)の端末処理に好適な半導電性塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
CVケーブルは電力ケーブルとして極めて幅広く普及しており、住宅や業務施設といった建築物に限らず、商業施設や工場、研究施設、学校、病院など、あらゆる種類や規模の建築物に対しても採用が可能であり、高い性能と信頼性を持つ。
従来、かかるCVケーブル(特に1980年初期以前に生産された古いCVケーブル)に対し、水トリー現象が多発していた。「水トリー現象」とは、CVケーブルを構成するポリエチレンに対し発生する劣化現象であって、水が常時存在する環境で長期間通電を継続した際に、ケーブル内外の突起や隙間、空隙、異物などにおいて、本来一定であるべき電界が不整となり、この不整部分を起点にして、絶縁物の内外に向かって枝が伸びるように劣化が進行する現象であり、これが樹木のように見えることから「水トリー(water tree)」と呼ばれる。
【0003】
近年では、絶縁体の界面突起を減少させることで、電界局部集中による水トリーの発生を抑える技術が開発され、内部半導電層・架橋ポリエチレン絶縁体・外部半導電層の3層を同時に押し出す「3層同時押出」による加工法が確立し、水トリーの発生は克服され、水トリーを原因とした事故はほぼ発生していない。
かかる3層同時押出によるCVケーブルを施工する際(たとえば変圧器と接続する際やCVケーブル同士を中間接続する際など)、端末処理工程では、外部半導電層を除去し、露出した架橋ポリエチレン絶縁体上に再度、外部半導電層を形成する必要がある。外部半導電層の形成方法の1つとして「半導電性塗料」を架橋ポリエチレン絶縁体上に塗布しこれをドライヤーなどで乾燥させる方法があり、かかる方法によれば簡便かつ短期間での施工が可能になる。
【0004】
半導電性塗料は主に、バインダー樹脂、導電性カーボン、分散剤および溶媒で構成される。溶媒として有機溶媒が使用されることが多いが、有機溶媒は自然環境に好ましくなく、その使用には局所排気装置の設置も必要となる。この点、特許文献1、2には溶媒として水を使用した、いわゆる水系の半導電性塗料が開示されており、かかる半導電性塗料を使用すれば、当該問題は解決しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5483328号公報
【特許文献2】特許第5817616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導電性塗料を外部半導電層として使用する際には、その塗布を受ける架橋ポリエチレン絶縁体が難接着素材であるため、特許文献1、2に開示されるような水系の半導電性塗料をそのまま使用することは難しい。
したがって本発明の主な目的は、自然環境に優しく局所排気装置の設置も要らない水系の半導電性塗料であって、CVケーブルの外部半導電層として好適な(架橋ポリエチレン絶縁体に付着性が高い)半導電性塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明によれば、
内部半導電層、架橋ポリエチレン絶縁体および外部半導電層の3層同時押出による電力ケーブルの当該外部半導電層に使用される半導電性塗料において、
バインダー樹脂、導電性カーボンおよび分散剤を含む固形成分と溶媒とで構成され、
前記バインダー樹脂は変性ポリオレフィン樹脂でかつ前記固形成分に占める含有量が60質量%以上であり、
前記導電性カーボンはBET比表面積が370mm2/g以上のカーボンブラックでかつ前記固形成分に占める含有量が5~25質量%であり、
前記分散剤は非イオン性分散剤であって、前記固形成分に占める含有量が3~24質量%でかつ前記導電性カーボンに対する含有比率が0.5~1.5倍であり、
前記溶媒は水でかつ当該半導電性塗料に占める含有量が80質量%以下であることを特徴とする半導電性塗料が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CVケーブルの外部半導電層として好適な(架橋ポリエチレン絶縁体に付着性が高い)半導電性塗料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】CVケーブルの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本明細書では、数値範囲を示す「~」の記載に関し、下限値および上限値はその数値範囲に含まれる。
【0011】
[CVケーブル]
図1に示すとおり、CVケーブル1は導体2、内部半導電層3、絶縁体4、外部半導電層5、遮蔽テープ6、押えテープ7およびシース8から構成されている。
導体2は軟銅線による円形圧縮より線から構成されている。
絶縁体4は架橋ポリエチレンから構成されている。内部半導電層3および外部半導電層5は架橋ポリオレフィンにカーボンを混合した半導電性材料から構成されている。これら内部半導電層3、絶縁体4および外部半導電層5は製造の際に3層同時に押し出され形成される。本発明にかかる半導電性塗料はCVケーブル1の端末処理工程において外部半導電層5が部分的に除去された際にその部分に補充的に使用され外部半導電層5を形成するようになっている。
遮蔽テープ6は軟銅テープから構成されている。押えテープ7は汎用のものから構成されている。シース8はビニルから構成されている。
【0012】
[半導電性塗料]
半導電性塗料は上記のとおり、CVケーブル1の端末処理において外部半導電層5の除去部分に対し補充的に使用され外部半導電層5の一部を構成するようになっている。
半導電性塗料は固形成分(不揮発性成分)と溶媒とで構成され、固形成分としてバインダー樹脂、導電性カーボンおよび分散剤が含まれている。
以下、各原料や製造方法について説明する。
【0013】
(1)バインダー樹脂
バインダー樹脂は、好ましくは不飽和カルボン酸および/またはその誘導体でグラフト変性されたポリオレフィン樹脂(変性ポリオレフィン樹脂)である。
かかる変性ポリオレフィン樹脂は、特に限定されるものではないが、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1,4-メチル-1-ペンテンなどの炭素数2以上20以下、好ましくは2以上8以下のα-オレフィンの単独重合体、またはこれらの任意の2種以上を原料モノマーとする共重合体の変性樹脂である。
かかる変性ポリオレフィン樹脂は、シクロペンテン、シクロヘキセン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、5-ビニル-2-ノルボルネンの鎖状または環状ポリエン、スチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニルなどをコモノマーとして使用する共重合体の変性樹脂であってもよい。
【0014】
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する不飽和カルボン酸化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物(たとえば、不飽和ジカルボン酸の無水物)であり、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。このような不飽和カルボン酸および/またはその誘導体としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸、エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸が挙げられる。
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、たとえば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸など対応する酸無水物の形態を有していてもよい。
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、たとえば、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等の形態を有するものであってもよく、このような不飽和カルボン酸誘導体として、具体的には塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
変性ポリオレフィン樹脂組成物中のグラフト量は、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1~10質量%程度である。
【0015】
変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは20,000~200,000、より好ましくは30,000~150,000である。重量平均分子量の測定法としては公知の方法、たとえばGPC法、光散乱法等により求めることができる。
変性ポリオレフィン樹脂の示差走査型熱量計(以下、「DSC」ともいう。)による融点(以下、「Tm」ともいう。)は、好ましくは50℃~135℃であり、より好ましくは60℃~100℃である。
【0016】
変性ポリオレフィン樹脂は、公知の方法で得られるもののほか、日本製紙社製アウローレンAE-202、AE-301、AE-502などの市販品の変性ポリオレフィン水性エマルジョンまたは水性ディスパージョンを用いてもよい。
バインダー樹脂の固形成分に占める含有量は60質量%以上である。
【0017】
(2)導電性カーボン
導電性カーボンは好ましくはカーボンブラックであり、市販のカーボンブラックを使用することができる。
市販のカーボンブラックとしては、ケッチェンブラックEC300J、ケッチェンブラックEC600JD、ライオナイトEC200L、カーボンECP、カーボンECP600JD、カーボンECP200L(以上、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SUPER P-Li(以上、Imerys製)、BLACK PEARLS 2000、VULCAN P、VULCAN XCmax 22、VULCAN XC72R(以上、CABOT製)、デンカブラック(粉状、プレス50%、プレス75%、プレス100%、粒状、FX-35、HS-100)、DENKA BLACK Li(以上、デンカ株式会社製、アセチレンブラック)、AB50、AB75(以上、IRPC製)OMCARB CH600、OMCARB CH210(以上、OMSK製)などが挙げられ、これらのなかでもライオナイトEC200Lが好ましい。
導電性カーボンは好ましくはBET比表面積が370mm2/g以上のカーボンブラックであり、たとえばケッチェンブラックがこれに該当する。
導電性カーボンの固形成分に占める含有量は5~25質量%である。CVケーブル1の外部半導電層5に要求される導電性を担保するには導電性カーボンの固形成分に占める含有量として5~25質量%を確保する必要がある。導電性カーボンの含有量が25質量%を超えると半導電性塗料の架橋ポリエチレン絶縁体4に対する付着性が低下する可能性がある。
【0018】
(3)分散剤
分散剤は半導電性塗料中で導電性カーボンを分散させるものであり、好ましくは非イオン性分散剤を使用することができる。
当該分散剤は好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルヒドロキシエーテルカルボン酸塩などであり、たとえば、ビックケミー・ジャパン社製DISPERBYK190などを使用することができる。
分散剤の固形成分に占める含有量は3~24質量%でかつ固形成分における分散剤の導電性カーボンに対する含有比率は0.5~1.5倍である。CVケーブル1の外部半導電層5に要求される導電性を担保するには導電性カーボンを一定程度以上に分散させる必要があり、分散剤の固形成分に占める含有量として3~24質量%を確保しかつ固形成分における分散剤の導電性カーボンに対する含有比率として0.5~1.5倍を確保する必要がある。分散剤の含有量が24質量%を超えると半導電性塗料の架橋ポリエチレン絶縁体4に対する付着性が低下する可能性がある。分散剤の導電性カーボンに対する含有比率が0.5倍未満であると導電性カーボンの分散性に劣り、塗料としての実用性に劣る可能性がある。
【0019】
(4)溶媒
溶媒は好ましくは水であり、現実には工業用精製水を使用することができる。
溶媒の半導電性塗料に占める含有量は80質量%以下である。
なお、変性ポリオレフィン樹脂の使用に際し、日本製紙社製アウローレンAE-202、AE-301、AE-502などの市販品の変性ポリオレフィン水性エマルジョンまたは水性ディスパージョンを用いる場合、その水は当該溶媒の一部となる。
分散剤の使用に際しても、その分散媒の水は当該溶媒の一部となる。
【0020】
(5)添加剤および製造方法
半導電性塗料には、必要に応じてさらに添加剤を加えてもよい。添加剤としては、シリコン系やフッ素系の消泡剤、ポリアクリル酸や添加剤としてのポリビニルアルコールなどの粘度調整剤等が挙げられる。
半導電性塗料の製造方法としては、各材料をロールやディスパー、バンバリーミキサー、押し出し機などの混練機を用いて混練する方法が挙げられる。
【0021】
[CVケーブルの端末処理方法(半導電性塗料の使用方法)]
たとえば、CVケーブル1を変圧器と接続する際やCVケーブル1同士を中間接続する際など、CVケーブル1の端末処理が必要となる。
当該端末処理方法では、始めにシース8から押えテープ7および遮蔽テープ6まで除去(皮むき)する。
その後、外部半導電層5を除去し、架橋ポリエチレン絶縁体4を露出させる。
その後、半導電性塗料を架橋ポリエチレン絶縁体4上に塗布する。
その後、半導電性塗料を70~150℃で5~30分加熱し乾燥させる。
なお、半導電性塗料の塗布および乾燥は1回に限らず、複数回にわたり繰り返しおこなってもよい。
【0022】
以上の本実施形態によれば、半導電性塗料が一定の材料で構成されかつその配合量が一定である場合に、CVケーブル1の端末処理において架橋ポリエチレン絶縁体4に対し半導電性塗料の付着性が向上し、架橋ポリエチレン絶縁体4に付着性が高い、CVケーブル1の外部半導電層5を形成することができる(下記実施例参照)。
かかる外部半導電層5は基本的に半導電性塗料の固形成分から構成され、半導電性塗料から溶媒が揮発した材料から構成される。
なお、本実施形態によれば、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」に貢献することも可能となる。
【実施例0023】
(1)サンプルの準備
表1および表2に記載の条件でバインダー樹脂、導電性カーボン、分散剤および溶媒をポリカップに計量し、スパチュラで混合した。表1および表2中の「%」は正確には質量%を表す。
その後、当該混合物を、3本のロールミルに挿通し、半導電性塗料サンプルを作製した。サンプル中にダマ(凝集体)が残っている場合にはこれが消失するまで、当該混合物を3本のロールミルに繰り返し挿通した。
【0024】
(2)サンプルの評価
(2.1)表面抵抗率の測定
四探針法を用いて23℃でのサンプルの表面抵抗率を測定した。サンプルサイズは60mm×60mmとした。測定結果を表1および表2に示す。
ここでは表面抵抗率が1.0×106Ω/□未満であれば、半導電性塗料の基本的特性たる導電性を担保していると判断した。
【0025】
(2.2)導電性カーボンの分散性
サンプルに対しJIS K 5600-5-6に準拠した試験を実施し、サンプルの分散度を測定し、導電性カーボンの分散性を評価した。200μmの粒ゲージを使用した。測定結果を表1および表2に示す。
表1および表2中、「◎」「○」「△」「×」の基準は下記のとおりである。
◎:3mm幅の読取りゲージの値が20μm以下
○:3mm幅の読取りゲージの値が20μ超で50μm以下
△:3mm幅の読取りゲージの値が50μ超で100μm以下
×:3mm幅の読取りゲージの値が100μ超
ここでは導電性カーボンの分散性が◎または○であれば、半導電性塗料の基本的特性たる塗料実用性を担保している(塗料として実用可能である)と判断した。
【0026】
(2.3)XLPEへの付着性
サンプルに対しJIS K 5600-5-6に準拠した碁盤目試験を実施し、サンプルの架橋ポリエチレン(XLPE;cross-linked polyethylene)への付着性を評価した。碁盤目試験で使用した基材、碁盤目およびテープの仕様は下記のとおりである。
基材:XLPEプレスシート(エネオスNUC社製HFDJ-4201)を#400サンドペーパーで粗面化した
碁盤目:100マス(1mm間隔)
テープ:半導電性架橋ポリエチレンテープ(日東シンコー社製ACPテープ)
試験結果を表1および表2に示す。
表1および表2中、「◎」「○」「△」「×」の基準は下記のとおりである。
◎:剥がれなし
○:剥がれの程度が5%未満
△:剥がれの程度が5~35%
×:剥がれの程度が36%以上
【0027】
【0028】
【0029】
(3)まとめ
表1および表2に示すとおり、実施例1-7では導電性、塗料実用性およびXLPEへの付着性が優れているのに対し、比較例1-7では下記の技術的課題がある。
比較例1ではバインダー樹脂としてウレタン樹脂が使用され、当該樹脂はXLPEに対し非相溶であり、XLPEへの付着性に劣っている。
比較例2ではバインダー樹脂の含有量が過小であり(導電性カーボンおよび分散剤の含有量が過大であり)、XLPEへの付着性に劣っている。
比較例3では導電性カーボンとしてアセチレンブラックが使用され、当該導電性カーボンのBET比表面積が小さく、表面抵抗率が高く導電性に劣っている。
比較例4では比較例2と同様に、バインダー樹脂の含有量が過小であり(導電性カーボンおよび分散剤の含有量が過大であり)、XLPEへの付着性に劣っている。比較例4では導電性カーボンとしてアセチレンブラックが使用され、その含有量が増量されているため、表面抵抗率が低く導電性には優れている。
比較例5では分散剤としてラウリルトリメチルアンモニウムクロライドが使用され、当該分散剤が陽イオン性であり、導電性カーボンの分散性に劣り、塗料としての実用性に劣っている。
比較例6では分散剤の含有量が過小であり、導電性カーボンの分散性に劣り、塗料としての実用性に劣っている。
比較例7では分散剤としてラウリルトリメチルアンモニウムクロライドが使用され、陽イオン性の分散剤の含有量が過大であっても、導電性カーボンの分散性に劣り、塗料としての実用性に劣っている。
以上からバインダー樹脂、導電性カーボン、分散剤および溶媒の組成や含有量を一定にすることが、CVケーブルの外部半導電層として好適な半導電性塗料を提供するのに、有用であることがわかった。