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特開2022-185396鉄骨梁の複合耐火被覆構造、及び鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法
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  • 特開-鉄骨梁の複合耐火被覆構造、及び鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185396
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】鉄骨梁の複合耐火被覆構造、及び鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
E04B1/94 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093052
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊彦
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA06
2E001FA01
2E001GA11
2E001GA24
2E001HA32
2E001HA34
2E001KA01
2E001LA12
(57)【要約】
【課題】耐火ボードの破損を抑制しつつ、巻付け耐火被覆材によって耐火ボードと鉄骨梁との空間を塞ぐことを目的とする。
【解決手段】鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法は、表面34Bに金属板72が取り付けられた耐火ボード34を鉄骨梁32の側方に設置し、表面34Bを鉄骨梁32に対向させる耐火ボード設置工程と、鉄骨梁32における耐火ボード34と反対側から鉄骨梁32の下を通って耐火ボード34側に張り出す巻付け耐火被覆材80を設置する巻付け耐火被覆材80設置工程と、耐火ボード34側に張り出す巻付け耐火被覆材80の先端側に溶接固定ピン90を突き刺し、溶接固定ピン90の先端部を金属板72に溶接する溶接固定ピン施工工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に金属板が取り付けられた耐火ボードを鉄骨梁の側方に設置し、前記表面を前記鉄骨梁に対向させる耐火ボード設置工程と、
前記鉄骨梁における前記耐火ボードと反対側から該鉄骨梁の下を通って前記耐火ボード側に張り出す巻付け耐火被覆材を設置する巻付け耐火被覆材設置工程と、
前記耐火ボード側に張り出す巻付け耐火被覆材の先端側に溶接固定ピンを突き刺し、該溶接固定ピンの先端部を前記金属板に溶接する溶接固定ピン施工工程と、
を備える鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法。
【請求項2】
鉄骨梁と、
前記鉄骨梁の側方に設置されるとともに、前記鉄骨梁と対向する表面に金属板が取り付けられた耐火ボードと、
前記鉄骨梁における前記耐火ボードと反対側から該鉄骨梁の下を通って前記耐火ボード側に張り出すとともに、張り出した先端側が前記金属板に重ねられる巻付け耐火被覆材と、
前記巻付け耐火被覆材の前記先端側を貫通するとともに、先端部が前記金属板に溶接される溶接固定ピンと、
を備える鉄骨梁の複合耐火被覆構造。
【請求項3】
鉄骨梁と、
前記鉄骨梁の側方に設置され、表面が前記鉄骨梁と対向する耐火ボードと、
前記鉄骨梁の下端部から前記耐火ボード側に張り出す金属製下地材と、
前記鉄骨梁における前記耐火ボードと反対側から該鉄骨梁、及び前記金属製下地材の下を通って前記耐火ボード側に張り出すとともに、張り出した先端側が前記耐火ボードの前記表面に重ねられる巻付け耐火被覆材と
前記耐火ボード側の前記先端側を貫通するとともに、先端部が前記金属製下地材に溶接される溶接固定ピンと、
を備える鉄骨梁の複合耐火被覆構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨梁の複合耐火被覆構造、及び鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨梁と、鉄骨梁の側方に設置される耐火ボードと、鉄骨梁を耐火被覆するとともに、鉄骨梁の下から張り出し、鉄骨梁と耐火ボードとの空間を塞ぐ耐火被覆材とを備える鉄骨梁の複合耐火被覆構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-190613号公報
【特許文献2】特開2014-173379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような鉄骨梁の複合耐火被覆構造において、耐火被覆材として巻付け耐火被覆材を用いることが考えられる。この場合、耐火ボードに対する巻付け耐火被覆材の取り付け方法としては、鉄骨梁の側方に設置された耐火ボードに、鉄骨梁の下から張り出す巻付け耐火被覆材の先端側をビスで取り付けることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記の取り付け方法では、耐火ボードにビスを捻じ込む際に、耐火ボードが破損等する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、耐火ボードの破損を抑制しつつ、巻付け耐火被覆材によって耐火ボードと鉄骨梁との空間を塞ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法は、表面に金属板が取り付けられた耐火ボードを鉄骨梁の側方に設置し、前記表面を前記鉄骨梁に対向させる耐火ボード設置工程と、前記鉄骨梁における前記耐火ボードと反対側から該鉄骨梁の下を通って前記耐火ボード側に張り出す巻付け耐火被覆材を設置する巻付け耐火被覆材設置工程と、前記耐火ボード側に張り出す巻付け耐火被覆材の先端側に溶接固定ピンを突き刺し、該溶接固定ピンの先端部を前記金属板に溶接する溶接固定ピン施工工程と、を備える。
【0008】
請求項1に係る鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法によれば、先ず、耐火ボード設置工程において、表面に金属板が取り付けられた耐火ボードを鉄骨梁の側方に設置し、耐火ボードの表面を鉄骨梁に対向させる。
【0009】
次に、巻付け耐火被覆材設置工程において、鉄骨梁における耐火ボードと反対側から鉄骨梁の下を通って耐火ボード側に張り出す巻付け耐火被覆材を設置する。
【0010】
次に、溶接固定ピン施工工程において、鉄骨梁の下から耐火ボード側に張り出す巻付け耐火被覆材の先端側に溶接固定ピンを突き刺し、当該溶接固定ピンの先端部を金属板に溶接する。
【0011】
このように本発明では、耐火ボードの表面に取り付けられた金属板に溶接固定ピンの先端部を溶接することにより、巻付け耐火被覆材の先端側を耐火ボードに取り付ける。したがって、耐火ボードの破損を抑制しつつ、巻付け耐火被覆材によって耐火ボードと鉄骨梁との空間を塞ぐことができる。
【0012】
また、本発明では、耐火ボード設置工程において、金属板が予め取り付けられた耐火ボードを鉄骨梁の側方に設置する。そのため、本発明では、耐火ボードの設置後に、耐火ボードに金属板を取り付ける場合と比較して、施工し易い状態で、金属板を耐火ボードに取り付けることができる。したがって、耐火ボードの破損がさらに抑制される。
【0013】
また、耐火ボードの設置後に、耐火ボードが破損すると、耐火ボードの交換に手間がかかる。これに対して本発明では、耐火ボードの設置前に、金属板を耐火ボードに取り付けることにより、仮に耐火ボードが破損したとしても、耐火ボードを容易に交換することができる。したがって、施工性が向上する。
【0014】
請求項2に記載の鉄骨梁の複合耐火被覆構造は、鉄骨梁と、前記鉄骨梁の側方に設置されるとともに、前記鉄骨梁と対向する表面に金属板が取り付けられた耐火ボードと、前記鉄骨梁における前記耐火ボードと反対側から該鉄骨梁の下を通って前記耐火ボード側に張り出すとともに、張り出した先端側が前記金属板に重ねられる巻付け耐火被覆材と、前記巻付け耐火被覆材の前記先端側を貫通するとともに、先端部が前記金属板に溶接される溶接固定ピンと、を備える。
【0015】
請求項2に係る鉄骨梁の複合耐火被覆構造によれば、耐火ボードは、鉄骨梁の側方に設置される。また、鉄骨梁と対向する耐火ボードの表面には、金属板が取り付けられる。この金属板には、鉄骨梁における耐火ボードと反対側から、当該鉄骨梁の下を通って耐火ボード側に張り出す巻付け耐火被覆材の先端側が重ねられる。この巻付け耐火被覆材の先端側は、当該先端側を貫通するとともに、先端部が金属板に溶接される溶接固定ピンによって耐火ボードに取り付けられる。
【0016】
このように耐火ボードに金属板を取り付けることにより、溶接固定ピンによって巻付け耐火被覆材の先端側を耐火ボードに容易に取り付けることができる。したがって、耐火ボードの破損を抑制しつつ、巻付け耐火被覆材によって耐火ボードと鉄骨梁との空間を塞ぐことができる。
【0017】
また、金属板は、耐火ボードの設置前に、耐火ボードに取り付けることができる。そのため、本発明では、耐火ボードの設置後に、耐火ボードに金属板を取り付ける場合と比較して、施工し易い状態で、金属板を耐火ボードに取り付けることができる。したがって、耐火ボードの破損がさらに抑制される。
【0018】
さらに、耐火ボードの設置後に、耐火ボードが破損した場合、耐火ボードの交換に手間がかかる。これに対して本発明では、耐火ボードの設置前に、金属板を耐火ボードに取り付けることにより、仮に耐火ボードが破損したとしても、耐火ボードを容易に交換することができる。したがって、施工性が向上する。
【0019】
請求項3に記載の鉄骨梁の複合耐火被覆構造は、鉄骨梁と、前記鉄骨梁の側方に設置され、表面が前記鉄骨梁と対向する耐火ボードと、前記鉄骨梁の下端部から前記耐火ボード側に張り出す金属製下地材と、前記鉄骨梁における前記耐火ボードと反対側から該鉄骨梁、及び前記金属製下地材の下を通って前記耐火ボード側に張り出すとともに、張り出した先端側が前記耐火ボードの前記表面に重ねられる巻付け耐火被覆材と前記耐火ボード側の前記先端側を貫通するとともに、先端部が前記金属製下地材に溶接される溶接固定ピンと、を備える。
【0020】
請求項3に係る鉄骨梁の複合耐火被覆構造によれば、耐火ボードは、鉄骨梁の側方に配置され、表面が鉄骨梁と対向する。この耐火ボードの表面には、鉄骨梁における耐火ボードと反対側から、当該鉄骨梁、及び鉄骨梁の下端部から耐火ボード側に張り出す金属製下地材の下を通って耐火ボード側に張り出す巻付け耐火被覆材の先端側が重ねられる。巻付け耐火被覆材の先端側は、当該先端側を貫通するとともに、先端部が金属製下地材に溶接される溶接固定ピンによって金属製下地材に取り付けられる。
【0021】
このように鉄骨梁の下端部に金属製下地材を設けることにより、溶接固定ピンによって巻付け耐火被覆材を金属製下地材に容易に取り付けることができる。したがって、耐火ボードの破損を抑制しつつ、巻付け耐火被覆材によって耐火ボードと鉄骨梁との空間を塞ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、耐火ボードの破損を抑制しつつ、巻付け耐火被覆材によって耐火ボードと鉄骨梁との空間を塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第一実施形態に係る鉄骨梁の複合耐火被覆構造が適用された鉄骨梁を示す断面図である。
図2図1に示される鉄骨梁を示す拡大断面図である。
図3図2に示される耐火ボードを鉄骨梁側から見た正面図である。
図4】第二実施形態に係る鉄骨梁の複合耐火被覆構造が適用された鉄骨梁を示す断面図である。
図5図4の5-5線に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0025】
(鉄骨梁)
図1には、本実施形態に係る鉄骨梁の複合耐火被覆構造が適用された鉄骨梁32が示されている。鉄骨梁32は、H形鋼で形成されている。この鉄骨梁32は、上下方向に互いに対向する上側フランジ32B及び下側フランジ32Cと、上側フランジ32B及び下側フランジ32Cを接続するウェブ32Aとを有している。
【0026】
鉄骨梁32は、スラブ20の端部に沿って配置され、当該スラブ20の端部を支持している。スラブ20は、鉄筋コンクリート造とされており、複数階からなる構造物の所定階の床を形成している。これらの鉄骨梁32及びスラブ20の室外側(矢印OUT側)には、カーテンウォール12が設置されている。
【0027】
(カーテンウォール)
カーテンウォール12は、構造物の外壁(外装)を構成している。このカーテンウォール12は、複数の方立14と、隣り合う方立14に架設された上下の無目16と、複数の方立14及び無目16で囲まれた枠内に配置された窓ガラス18とを有している。方立14は、図示しない方立ブラケット及びファスナーを介してスラブ20に支持されている。
【0028】
(耐火ボード)
カーテンウォール12は、スラブ20を挟んで構造物の上下階に渡って配置されている。このカーテンウォール12のスパンドレル部には、耐火ボード34(カーテンウォール用耐火ボード)が設けられている。耐火ボード34は、例えば、繊維混入けい酸カルシウム板や、石膏ボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード等によって形成されている。
【0029】
耐火ボード34は、カーテンウォール12の室内側に、窓ガラス18と対向した状態で取り付けられている。また、耐火ボード34の外周部は、方立14及び無目16に沿って設けられた枠状のレール36によって保持されている。
【0030】
耐火ボード34は、スラブ20の端部との間に空間Dを空けて配置されている。また、耐火ボード34は、スラブ20を挟んで構造物の上下階に渡って配置されている。この耐火ボード34の上部は、ナット部材42及び取付部材44を介してスラブ20に支持されている。
【0031】
図2に示されるように、ナット部材42は、耐火ボード34に形成された貫通孔に挿入される雌ネジ部42Aと、雌ネジ部42Aの室外側の端部からつば状に張り出し、耐火ボード34の室外側の表面(外面)34Aに面接触される保持部42Bとを有している。
【0032】
取付部材44は、断面L字状の鋼板等によって形成されている。この取付部材44は、スラブ20の上面に取り付けられる取付部44Aと、耐火ボード34の室内側の表面(内面)34Bに面接触される保持部44Bとを有している。
【0033】
取付部44Aには、取付孔54が形成されている。この取付孔54に挿入されたボルト56を、スラブ20の上面に埋設されたアンカーナット58に締め込むことにより、取付部材44がスラブ20の上面に固定されている。
【0034】
保持部44Bは、耐火ボード34の表面34Bに重ねられている。また、保持部44Bには、取付孔52が形成されている。この取付孔52に挿入されたボルト38を、ナット部材42の雌ネジ部42Aに締め込むことにより、保持部44Bが耐火ボード34の表面34Bに固定されている。
【0035】
また、ナット部材42の雌ネジ部42Aにボルト38を締め込むことにより、ナット部材42の保持部42Bと取付部材44の保持部44Bとの間で、耐火ボード34が両側から挟み込まれた状態で保持されている。これにより、耐火ボード34の破損が抑制されている。
【0036】
スラブ20の端部には、複数の規制部材60が取り付けられている。複数の規制部材60は、耐火ボード34の横幅方向に間隔を空けて配置されている。各規制部材60は、クランク状に屈曲されている。この規制部材60は、取付部60A、対向部60B、及び張出し部60Cを有している。
【0037】
取付部60Aは、スラブ20の上面と取付部材44の取付部44Aとの間に配置されている。また、取付部60Aには、取付孔62が形成されている。この取付孔62、及び取付部材44の取付孔54に挿入されたボルト56をアンカーナット58に締め込むことにより、規制部材60及び取付部材44がスラブ20の上面に固定されている。
【0038】
規制部材60の対向部60Bは、取付部60Aの一端部からスラブ20の端面に沿って下方へ延出している。この対向部60Bの下端部には、張出し部60Cが設けられている。張出し部60Cは、対向部60Bの下端部から耐火ボード34側に張り出すとともに、その先端部がナット部材42よりも下方で、耐火ボード34の表面34Bと接触している。これにより、耐火ボード34がナット部材42を支点として、スラブ20側に傾くことが抑制されている。
【0039】
隣り合う規制部材60の張出し部60Cには、板材64が渡されている。板材64は、耐火ボード34とスラブ20の空間Dに沿って配置されている。また、板材64の上には、ロックウール等の層間塞ぎ材66が載置されている。この層間塞ぎ材66によって、耐火ボード34とスラブ20の空間Dを塞ぐことにより、火災時に、空間Dからスラブ20の上階に熱気や炎が流入することが抑制されている。
【0040】
なお、本実施形態では、ナット部材42を用いて耐火ボード34を保持する方法を示したが、耐火ボード34を保持する方法は、これによらなくてもよい。耐火ボード34は、鉄骨梁32や床(スラブ20)等の躯体に支持されていればよい。
【0041】
(鉄骨梁の複合耐火被覆構造)
鉄骨梁32は、耐火ボード34及び巻付け耐火被覆材80の複合耐火構造によって耐火被覆されている。具体的には、耐火ボード34は、鉄骨梁32の室外側(矢印OUT側)の側方に配置され、その表面34Bが鉄骨梁32の室外側の側面32S1と対向して配置されている。この耐火ボード34によって、鉄骨梁32の室外側の側面32S1が耐火被覆されている。
【0042】
なお、鉄骨梁32の室外側の側面32S1とは、室外側(矢印OUT側)を向くウェブ32Aの表面、上側フランジ32Bの端面、及び下側フランジ32Cの端面を含む概念である。
【0043】
耐火ボード34の鉄骨梁32側(矢印IN側)の表面34Bには、裏打ち材70及び金属板72が取り付けられている。これらの裏打ち材70及び金属板72は、耐火ボード34の設置前に、耐火ボード34に予め取り付けられている。
【0044】
裏打ち材70は、ロックウールや、けい酸カルシウム板等によって角柱状に形成されており、耐火ボード34の表面に接着剤等によって接合されている。また、裏打ち材70は、鉄骨梁32の下端部(下側フランジ32C)と対向している。
【0045】
図3に示されるように、裏打ち材70は、耐火ボード34の横幅方向に沿って配置されており、耐火ボード34の一端側から他端側に渡っている。この裏打ち材70の下には、金属板72が取り付けられている。
【0046】
金属板72は、鋼板等によって形成されている。また、金属板72は、裏打ち材70の下側に、裏打ち材70と隣接して配置されている。金属板72は、耐火ボード34の横幅方向に沿って配置されており、耐火ボード34の一端側から他端側に渡っている。また、金属板72には、複数の貫通孔が形成されている。複数の貫通孔は、金属板72の長手方向に間隔を空けて配置されている。これらの貫通孔に挿入されたビス74によって、金属板72が耐火ボード34に取り付けられている。
【0047】
なお、金属板72は、ビス74に限らず、例えば、耐火ボード34に埋設された鬼目ナットに、金属板72の貫通孔に挿入されたボルトを締め込むことにより、耐火ボード34に取り付けても良い。
【0048】
また、裏打ち材70は、必ずしも設置が必要ではなく、省略してもよい。ここで、裏打ち材70は、耐火ボード34と下面被覆部84の先端側84Tの接触面から、内部(鉄骨梁32側)に侵入する熱を遮断するために設置している。そのため、下面被覆部84の先端側84Tを耐火ボード34に沿って下側に折り返し、かつ、折り返し長さを十分確保すれば、内部(鉄骨梁32側)への熱の侵入を防止することが可能であり、この場合、裏打ち材70を省略することができる。
【0049】
(巻付け耐火被覆材)
図2に示されるように、巻付け耐火被覆材80は、シート状に成形されたロックウールや、セラミックウール等によって形成されている。この巻付け耐火被覆材80は、鉄骨梁32における耐火ボード34と反対側(矢印IN側)の側面32S2、及び鉄骨梁32の下面32Lを耐火被覆するとともに、鉄骨梁32の下を通って耐火ボード34側に張り出している。
【0050】
具体的には、巻付け耐火被覆材80は、鉄骨梁32の材軸方向から見て、全体として、L字形状に屈曲されている。この巻付け耐火被覆材80は、鉄骨梁32の室内側の側面32S2を耐火被覆する側面被覆部82と、鉄骨梁32の下面32Lを耐火被覆する下面被覆部84とを有している。
【0051】
なお、鉄骨梁32の室内側の側面32S2とは、室内側(矢印IN側)を向くウェブ32Aの表面、上側フランジ32Bの端面、及び下側フランジ32Cの端面を含む概念である。
【0052】
側面被覆部82は、鉄骨梁32の室内側の側面32S2を覆うように、鉄骨梁32の梁成方向に沿って配置されている。また、側面被覆部82は、鉄骨梁32の上側フランジ32Bと下側フランジ32Cとに渡って配置されており、その上端側82Uが溶接固定ピン90によって上側フランジ32Bの端部に取り付けられている。
【0053】
下面被覆部84は、鉄骨梁32の下側フランジ32Cの下面32Lを覆うように、鉄骨梁32の梁幅方向に沿って配置されている。また、下面被覆部84は、側面被覆部82の下端部から下側フランジ32Cの下面に沿って耐火ボード34側へ延出している。この下面被覆部84は、溶接固定ピン90によって、下側フランジ32Cの下面に取り付けられている。
【0054】
下面被覆部84の先端側84Tは、裏打ち材70の下面に沿って配置されるとともに、金属板72の上から耐火ボード34の表面34Bに重ねられている。また、下面被覆部84の先端側84Tは、複数の溶接固定ピン90によって金属板72に取り付けられている。この下面被覆部84によって、耐火ボード34と鉄骨梁32との間の空間Hが塞がれている。
【0055】
複数の溶接固定ピン90は、耐火ボード34の横幅方向に間隔を空けて配置されている。各溶接固定ピン90は、円板状のフランジ90Aと、フランジ90Aの中心に立てられたピン90Bとを有している。
【0056】
ピン90Bは、下面被覆部84の先端側84Tを下側から貫通し、その先端部が金属板72に突き当てられている。この状態で、図示しない溶接機(溶接ガン)からフランジ90Aを介してピン90Bに電流を流すことにより、ピン90Bの先端部が金属板72に溶接されている。また、フランジ90Aは、下面被覆部84の下面に係合されている。この溶接固定ピン90によって、下面被覆部84の先端側84Tが、耐火ボード34の表面34Bに取り付けられている。
【0057】
これにより、火災時に、耐火ボード34の表面34Bと下面被覆部84の先端側84Tとの隙間から、熱気や炎が鉄骨梁32側に流入することが抑制されている。また、裏打ち材70の下面に沿って下面被覆部84の先端側84Tを配置することにより、火災時に、耐火ボード34の表面34Bと下面被覆部84の先端側84Tとの隙間から、熱気や炎が鉄骨梁32側に流入することがさらに抑制されている。
【0058】
(鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法)
次に、鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法の一例について説明する。
【0059】
(耐火ボード設置工程)
図1に示されるように、先ず、耐火ボード設置工程では、カーテンウォール12を鉄骨梁32の室外側の側方に設置する。また、図2に示されるように、裏打ち材70及び金属板72が表面34Bに予め取り付けられた耐火ボード34を、鉄骨梁32の室外側の側方に設置し、耐火ボード34の表面34Bを鉄骨梁32の室外側の側面32S2と対向させる。
【0060】
次に、巻付け耐火被覆材設置工程において、鉄骨梁32における耐火ボード34と反対側から当該鉄骨梁32の下を通って耐火ボード34側に張り出す巻付け耐火被覆材80を設置する。
【0061】
より具体的には、鉄骨梁32の室内側の側面32S2に沿って巻付け耐火被覆材80の側面被覆部82を配置し、その上端側82Uを溶接固定ピン90によって鉄骨梁32の上側フランジ32Bの端部に取り付ける。
【0062】
また、鉄骨梁32の下側フランジ32Cの下面に沿って巻付け耐火被覆材80の下面被覆部84を配置し、当該下面被覆部84を溶接固定ピン90によって下側フランジ32Cの下面に取り付ける。さらに、下面被覆部84の先端側84Tを裏打ち材70の下面に沿って配置するとともに、当該先端側84Tを金属板72の上から耐火ボード34の表面34Bに重ねる。
【0063】
この状態で、下面被覆部84の先端側84Tに溶接固定ピン90のピン90Bを突き刺し、ピン90Bの先端部を金属板72に突き当てるとともに、フランジ90Aを下面被覆部84の下面に係合させる。この状態で、図示しない溶接機から、フランジ90Aを介してピン90Bに電流を流し、ピン90Bの先端部を金属板72に溶接する。これにより、下面被覆部84の先端側84Tが耐火ボード34に取り付けられる。
【0064】
以上の手順により、鉄骨梁32が耐火ボード34及び巻付け耐火被覆材80によって耐火被覆される。
【0065】
なお、本実施形態に係る鉄骨梁の複合耐火被覆構造の施工方法は、上記した手順に限らず、上記の手順を適宜入れ替えても良い。また、上記の手順に加えて、新たな手順を加えても良い。
【0066】
(作用及び効果)
次に、第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0067】
図2に示されるように、本実施形態では、溶接固定ピン90のピン90Bの先端部を金属板72に溶接することにより、巻付け耐火被覆材80における下面被覆部84の先端側84Tを耐火ボード34に取り付ける。したがって、耐火ボード34の破損を抑制しつつ、巻付け耐火被覆材80の下面被覆部84によって耐火ボード34と鉄骨梁32との空間Hを塞ぐことができる。
【0068】
また、耐火ボード設置工程において、金属板72が予め取り付けられた耐火ボード34を鉄骨梁32の側方に設置する。そのため、本実施形態では、耐火ボード34の設置後に、耐火ボード34に金属板72を取り付ける場合と比較して、施工し易い状態で、ビス74によって金属板72を耐火ボード34に取り付けることができる。したがって、耐火ボード34の破損がさらに抑制される。
【0069】
また、耐火ボード34の設置後に、耐火ボード34が破損すると、耐火ボード34の交換に手間がかかる。これに対して本実施形態では、耐火ボード34の設置前に、金属板72を耐火ボード34に取り付けることにより、仮に耐火ボード34が破損したとしても、耐火ボード34を容易に交換することができる。したがって、施工性が向上する。
【0070】
さらに、金属板72は、裏打ち材70の下側に、裏打ち材70と隣接して配置されている。これにより、裏打ち材70の下面に沿って下面被覆部84の先端側84Tを配置することにより、下面被覆部84の先端側84Tを金属板72に容易に重ねることができる。したがって、施工性がさらに向上する。
【0071】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0072】
図4に示されるように、第二実施形態に係る鉄骨梁の複合耐火被覆構造では、鉄骨梁32の下端部に取り付けられた金属製下地材100に、巻付け耐火被覆材80の下面被覆部84の先端側84Tが溶接固定ピン90によって取り付けられている。
【0073】
(鋼製下地材)
図5に示されるように、金属製下地材100は、複数の力骨102と、金属板104とを有している。複数の力骨102は、直線状の棒鉄筋等によって形成されている。また、複数の力骨102は、鉄骨梁32の材軸方向に間隔を空けて配置されている。
【0074】
各力骨102は、鉄骨梁32の下端部から耐火ボード34側に突出した状態で、鉄骨梁32の下端部に取り付けられている。より具体的には、各力骨102の一端側は、鉄骨梁32の下側フランジ32Cの下面に溶接等によって接合されている。そして、耐火ボード34側に延出する複数の力骨102の先端側に、金属板104が取り付けられている。
【0075】
金属板104は、鉄骨梁32の材軸方向に延びる帯状の鋼板等によって形成されている。この金属板104は、複数の力骨102の先端側の下側に配置されており、これらの力骨102の先端側に溶接等によって接合されている。
【0076】
図4に示されるように、巻付け耐火被覆材80の下面被覆部84は、金属製下地材100の下面に沿って耐火ボード34側に延出しており、その先端側84Tが耐火ボード34の表面34Bに重ねられている。この下面被覆部84の先端側84Tは、複数の溶接固定ピン90によって、金属製下地材100の金属板104に取り付けられている。この下面被覆部84によって、耐火ボード34と鉄骨梁32との間に空間Hが塞がれている。
【0077】
より具体的には、溶接固定ピン90のピン90Bは、下面被覆部84の先端側84Tを下側から貫通し、その先端部が金属板104に突き当てられている。この状態で、図示しない溶接機(溶接ガン)からフランジ90Aを介してピン90Bに電流を流すことにより、ピン90Bの先端部が金属板104に溶接されている。また、フランジ90Aは、下面被覆部84の下面に係合されている。この溶接固定ピン90によって、下面被覆部84の先端側84Tが、金属製下地材100の金属板104に取り付けられている。
【0078】
これにより、火災時に、耐火ボード34の表面34Bと下面被覆部84の先端側84Tとの隙間から、熱気や炎が鉄骨梁32側に流入することが抑制されている。また、裏打ち材70の下面に沿って下面被覆部84の先端側84Tを配置することにより、火災時に、耐火ボード34の表面34Bと下面被覆部84の先端側84Tとの隙間から、熱気や炎が鉄骨梁32側に流入することがさらに抑制されている。
【0079】
(作用及び効果)
次に、第二実施形態の作用及び効果について説明する。
【0080】
本実施形態によれば、鉄骨梁32の下端部に金属製下地材100を設けることにより、溶接固定ピン90によって、巻付け耐火被覆材80における下面被覆部84の先端側84Tを金属製下地材100の金属板104に取り付けることができる。したがって、耐火ボード34の破損を抑制しつつ、巻付け耐火被覆材80の下面被覆部84によって耐火ボード34と鉄骨梁32との空間Hを塞ぐことができる。
【0081】
また、本実施形態では、上記第一実施形態のように、耐火ボード34に金属板104をビス74(図2参照)によって取り付ける必要がないため、ビス74による耐火ボード34の破損が抑制される。
【0082】
なお、本実施形態の金属製下地材100では、複数の力骨102の先端側に1枚の金属板104が取り付けられている。しかし、複数の力骨102の先端側には、金属板をそれぞれ取り付けても良い。
【0083】
また、本実施形態の金属製下地材100は、複数の力骨102と、金属板104とを備えている。しかし、金属製下地材100から金属板104を省略し、力骨102の先端側に溶接固定ピン90を溶接しても良い。
【0084】
また、金属製下地材100は、力骨102等に限らず、例えば、L形鋼、C形鋼、H形鋼等の形鋼や、鋼管鋼等でも良い。
【0085】
(変形例)
次に、上記第一実施形態及び第二実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態にも適宜適用可能である。
【0086】
上記実施形態に係る耐火ボード34は、カーテンウォール12に取り付けられている。しかし、耐火ボード34は、カーテンウォール12に限らず、プレキャストコンクリート板や、ALC板、押出成形セメント板(ECP)等の外装材に取り付けることも可能である。
【0087】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
32 鉄骨梁
34 耐火ボード
34B 表面(耐火ボードの表面)
72 金属板
80 巻付け耐火被覆材
84T 先端側(巻付け耐火被覆材の先端側)
90 溶接固定ピン
100 金属製下地材
図1
図2
図3
図4
図5