(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185423
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】排ガス利用装置
(51)【国際特許分類】
C10L 3/08 20060101AFI20221207BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20221207BHJP
C10L 8/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C10L3/08
C01B32/50
C10L8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093106
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】山際 勝也
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC05
4G146JD02
(57)【要約】
【課題】装置を簡易にできる排ガス利用装置を提供する。
【解決手段】排ガス利用装置は、排ガスに含まれる二酸化炭素を回収して、二酸化炭素を炭素化合物として再利用し燃料を製造する装置である。排ガス利用装置は、排ガスから二酸化炭素を回収する回収装置と、水素と回収装置が回収した二酸化炭素とを使って燃料を生成する生成装置と、を備える。回収装置から生成装置に供給される第1の混合ガスは、二酸化炭素と窒素とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスから二酸化炭素を回収する回収装置と、水素と前記回収装置が回収した前記二酸化炭素とを使って燃料を生成する生成装置と、を備える排ガス利用装置であって、
前記回収装置から前記生成装置に供給される第1の混合ガスは、前記二酸化炭素と窒素とを含む排ガス利用装置。
【請求項2】
前記生成装置から排気される第2の混合ガスのうち、前記生成装置が生成した前記燃料の量は、前記第2の混合ガスの量の55vol%以上である請求項1記載の排ガス利用装置。
【請求項3】
前記第2の混合ガスは水素を含む請求項2記載の排ガス利用装置。
【請求項4】
前記第2の混合ガスに含まれる前記水素の量は、前記第2の混合ガスの量の5vol%以上である請求項3記載の排ガス利用装置。
【請求項5】
前記第1の混合ガスに含まれる前記窒素の量は、前記第1の混合ガスの量の45vol%以下である請求項1から4のいずれかに記載の排ガス利用装置。
【請求項6】
前記排ガスの水分を除去する除去装置をさらに備え、
前記除去装置は、前記回収装置の二酸化炭素を濃縮する部分よりも上流側に配置されている請求項1から5のいずれかに記載の排ガス利用装置。
【請求項7】
前記排ガスに含まれる窒素を分離する分離装置をさらに備え、
前記分離装置は、前記回収装置の二酸化炭素を濃縮する部分よりも上流側に配置されている請求項1から6のいずれかに記載の排ガス利用装置。
【請求項8】
水の電気分解によって水素と酸素とを製造する電解装置をさらに備え、
前記生成装置は、前記電解装置が製造した前記水素が供給される請求項1から7のいずれかに記載の排ガス利用装置。
【請求項9】
前記電解装置は、水蒸気を電気分解する固体酸化物形電気分解セルを含み、
前記生成装置で生じた化学反応熱が前記水蒸気に加えられている請求項8記載の排ガス利用装置。
【請求項10】
前記電解装置が製造した前記酸素を助燃剤として燃焼装置に供給する供給装置をさらに備える請求項8又は9に記載の排ガス利用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスに含まれる二酸化炭素を使って燃料を製造する排ガス利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と排ガスから分離回収した二酸化炭素とを使って燃料を製造する排ガス利用装置として、製造した純度の高い炭化水素燃料を都市ガス導管系に注入するものが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原料である二酸化炭素の不純物が少ないほど炭化水素燃料の純度は高くなるので、先行技術では、排ガスから分離回収する二酸化炭素を精製するために装置が大型化し複雑化するという問題点がある。カーボンニュートラルの実現のためには二酸化炭素の排出量を削減する技術の普及が必要だが、高純度の燃料を製造する先行技術は、装置が大型化・複雑化するので普及が難しい。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、装置を簡易にできる排ガス利用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の排ガス利用装置は、必要最低限の品質の燃料を獲得しながら二酸化炭素の排出量を低減する技術である。具体的には、本発明は排ガスから二酸化炭素を回収する回収装置と、水素と回収装置が回収した二酸化炭素とを使って燃料を生成する生成装置と、を備え、回収装置から生成装置に供給される第1の混合ガスは、二酸化炭素と窒素とを含む。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、回収装置から生成装置に供給される第1の混合ガスは二酸化炭素と窒素とを含む。排ガスから分離回収する二酸化炭素を精製しなくて良いので、排ガス利用装置を簡易にできる。
【0008】
第2の態様によれば、第1の態様において、生成装置から排気される第2の混合ガスのうち燃料の量は、第2の混合ガスの量の55vol%以上である。これにより燃料を含む第2の混合ガスの可燃性を確保できる。
【0009】
第3の態様によれば、第2の態様において、第2の混合ガスは水素を含む。生成装置が金属触媒や貴金属触媒などを含む場合に、水素の還元性によって触媒能を確保できる。従って生成装置による燃料の生成を安定化できる。
【0010】
第4の態様によれば、第3の態様において、第2の混合ガスに含まれる水素の量は、第2の混合ガスの量の5vol%以上である。生成装置による燃料の生成がさらに安定化する。
【0011】
第5の態様によれば、第1から第4の態様のいずれかにおいて、第1の混合ガスに含まれる窒素の量は、第1の混合ガスの量の45vol%以下である。水素と第1の混合ガスに含まれる二酸化炭素とにより、安定した燃焼を実現できる燃料を確保できる。
【0012】
第6の態様によれば、第1から第5の態様のいずれかにおいて、排ガスの水分を除去する除去装置が、回収装置の二酸化炭素を濃縮する部分よりも上流側に配置される。回収装置による二酸化炭素の濃縮効率を確保できる。
【0013】
第7の態様によれば、第1から第6の態様のいずれかにおいて、排ガスに含まれる窒素を分離する分離装置が、回収装置の二酸化炭素を濃縮する部分よりも上流側に配置される。回収装置による二酸化炭素の濃縮効率を確保できる。
【0014】
第8の態様によれば、第1から第7の態様のいずれかにおいて、水の電気分解によって水素と酸素とを製造する電解装置が製造した水素が、生成装置に供給される。電解装置が製造する水素量は容易に調整できるので、排ガス利用装置の制御を容易にできる。
【0015】
第9の態様によれば、第8の態様において、電解装置の固体酸化物形電気分解セルは、生成装置で生じた化学反応熱が加えられた水蒸気を電気分解する。排ガス利用装置のエネルギー効率を向上できる。
【0016】
第10の態様によれば、第8又は第9の態様において、電解装置が製造した酸素が助燃剤として、供給装置によって燃焼装置に供給される。電解装置が製造した酸素を活用し、さらに燃焼装置の燃料消費率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施の形態における排ガス利用装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は一実施の形態における排ガス利用装置10のブロック図である。排ガス利用装置10は、排ガスに含まれる二酸化炭素を回収して、二酸化炭素を炭素化合物として再利用し燃料を製造する装置である。
【0019】
排ガス利用装置10は、排ガス源20が発生した排ガスから二酸化炭素を回収する回収装置13と、水素と回収装置13が回収した二酸化炭素とを使って燃料を生成する生成装置14と、を備えている。排ガス源20は、二酸化炭素を含む排ガスを排出するものであれば、特に制限はない。排ガス源20は、発電所、工場、廃棄物処理施設、天然ガス田、油田が例示される。
【0020】
回収装置13は、排ガスに含まれる二酸化炭素を分離回収して二酸化炭素を濃縮する。回収装置13において二酸化炭素を分離回収する方法は、化学吸着法、物理吸着法、膜分離法、物理分離法、深冷分離法が例示される。化学吸着法は、熱炭酸カリ吸収法、アミン法が例示される。物理吸着法は、ゼオライトや活性炭などを用いた圧力スイング法、温度スイング法が例示される。膜分離法で使われる膜は、多孔質膜、非多孔質膜(高分子膜)、液膜が例示される。多孔質膜は、無機多孔質膜、高分子多孔質膜、毛管凝縮膜が例示される。無機多孔質膜は、ゼオライト膜、ガラス分離膜、炭素膜、溶融炭酸塩担持膜が例示される。
【0021】
回収装置13の二酸化炭素を濃縮する部分と排ガス源20との間(回収装置13の二酸化炭素を濃縮する部分よりも上流側)に除去装置11が配置される。除去装置11は、排ガスの水分を除去する装置である。除去装置11は、例えば排ガス源20と回収装置13とをつなぐ配管に配置される。回収装置13に除去装置11を結合しても良い。
【0022】
除去装置11において排ガスから水分(水蒸気)を除去する方法は、凝縮、物理吸着、化学反応が例示される。除去装置11によって水分が除去された排ガスが回収装置13に供給されるので、回収装置13による二酸化炭素の濃縮効率を確保できる。特に、膜分離法を利用して回収装置13が二酸化炭素を濃縮する場合に除去装置11が配置されると、回収装置13の効率低下を防ぎつつ回収装置13を小型化できるので好ましい。
【0023】
回収装置13の二酸化炭素を濃縮する部分と排ガス源20との間(回収装置13の二酸化炭素を濃縮する部分よりも上流側)に分離装置12が配置される。分離装置12は、排ガスに含まれる窒素を分離する装置である。分離装置12は、例えば排ガス源20と回収装置13とをつなぐ配管に配置される。回収装置13に分離装置12を結合しても良い。
【0024】
分離装置12において排ガスから窒素を分離する方法は、膜分離法が例示される。分離装置12は、分離装置12が設けられていない場合に回収装置13が二酸化炭素を濃縮する効率に比べ、二酸化炭素の濃縮効率を向上できる。従って回収装置13による二酸化炭素の濃縮効率を確保できる。特に、膜分離法を利用して回収装置13が二酸化炭素を濃縮する場合に分離装置12が配置されると、回収装置13の効率低下を防ぎつつ回収装置13を小型化できるので好ましい。本実施形態では、分離装置12は除去装置11の下流側に配置されている。これにより排ガスに含まれる水分による分離装置12の機能の低下を低減し、分離装置12による窒素分離の効率を確保できる。
【0025】
回収装置13において排ガスから分離回収された二酸化炭素を含む第1の混合ガスは、生成装置14に供給される。生成装置14は、水素と第1の混合ガスに含まれる二酸化炭素とを使って燃料を製造する。生成装置14は、二酸化炭素を水素で還元して燃料を生成する。燃料は可燃性生成物であり、メタン、一酸化炭素、メタノール、ホルムアルデヒド等が例示される。二酸化炭素は、燃料のエネルギー準位に比べてエネルギー準位が低く、安定である。そこで生成装置14では、例えば触媒を使って活性化エネルギーを低下させ、二酸化炭素から燃料への化学反応を進行させる。
【0026】
排ガスに触媒毒が含まれる場合には、触媒毒を除去する装置が備えられていても良い。触媒により触媒毒は異なるが、触媒がNiの場合には、触媒毒はS,P,Si等が例示される。
【0027】
生成装置14の触媒は均一系触媒、不均一系触媒のいずれも良い。触媒の種類を変えることによって反応経路を制御できるので、生成装置14では目的とする燃料を選択的に合成できる。触媒は、Co系、Ni系、Fe系、Cu系、Zn系などの金属触媒、Ru系、Rh系、Pt系、Ir系、Pd系などの貴金属触媒、Ru等の金属を担持したCeO2等の希土類酸化物、Ni-La2O3-Ru等の三元複合触媒、Ni-Zr系などのアモルファス合金、TiO2、ZrO2、NaTaO3、BaLa4TiO15等の光触媒などが例示される。触媒は、生成する燃料の種類に応じて選択される。
【0028】
回収装置13から生成装置14に供給される第1の混合ガスは、二酸化炭素と窒素とを含む。第1の混合ガスには、二酸化炭素および窒素以外に、排ガスに含まれる酸素、除去装置11が除去しきれなかった水蒸気が含まれていても良い。第1の混合ガスが二酸化炭素と窒素とを含むようにすれば、第1の混合ガスを処理して二酸化炭素の純度が高くなるように精製しなくて済む。従って排ガス利用装置10を簡易にできる。
【0029】
第1の混合ガスは、二酸化炭素以外の不純物を、第1の混合ガスの10vol%以上含んでいても良い。第1の混合ガスの不純物は少ない方が、生成装置14が排出する第2の混合ガスに含まれる燃料の割合は増えるが、第1の混合ガスから不純物を分離する装置の複雑化を招く。従って第1の混合ガスの不純物が多いほど、排ガス利用装置10を簡易にできる。
【0030】
第1の混合ガスに含まれる窒素の量は、第1の混合ガスの量の45vol%以下が好ましい。生成装置14による燃料(特にメタン)の生成効率を確保するためである。なお、第1の混合ガスに含まれる不純物の量が、第1の混合ガスの量の10vol%未満であると、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素が含まれる第2の混合ガスの燃焼範囲が適度な広さになるので扱い易くなる。第1の混合ガスに含まれる不純物の量が、第1の混合ガスの量の5vol%以下であると、エタン、プロパン、ブタン等の炭素数が大きい炭化水素を生成し易くなるので好ましい。特に第1の混合ガスに含まれる不純物の量が、第1の混合ガスの量の1vol%以下であると、高純度の燃料とほぼ同等に第2の混合ガスを扱うことができる。
【0031】
第1の混合ガスに窒素が含まれていなくても第2の混合ガスの燃焼特性に影響を与えない。但し、第1の混合ガスに窒素が5vol%以上含まれると回収装置13を簡易にし易い。第1の混合ガスに窒素が10vol%以上含まれると回収装置13をさらに簡易にできる。
【0032】
生成装置14が排出する第2の混合ガスには、燃料以外に、水素および第1の混合ガスの成分(二酸化炭素、窒素、酸素、水蒸気)が含まれていても良い。第2の混合ガスのうち、燃料以外のガスの量は、第2の混合ガスの量の5-45vol%が好ましい。燃料(特にメタン)を含む第2の混合ガスの可燃性を確保するためである。生成装置14が排出する第2の混合ガスに熱量調整剤を注入して、第2の混合ガスには熱量調整の機能を有するプロパンやブタン等の炭化水素が含まれていても良い。
【0033】
生成装置14が生成した燃料を含む第2の混合ガスを、排ガス源20を含む敷地内の施設が利用するようにすれば、ガスの運搬に係るコストを低減できるので好ましい。排ガス利用装置10を簡易にすることにより、排ガス利用装置10を小型化し、排ガス利用装置10の設置に必要なスペースを小さくできる。排ガス源20ごとに排ガス利用装置10を設置できるので、排ガス源20が排出する二酸化炭素を炭素資源として排ガス源20ごとに再利用できる。排ガス利用装置10は、販売の目的となる燃料を製造するのではなく、排ガス源20を含む敷地内の施設が利用できる程度の必要最低限の品質の燃料を製造しながら、二酸化炭素の排出量を削減できる。
【0034】
第2の混合ガスは水素を含むのが好ましい。生成装置14が金属触媒や貴金属触媒などを含む場合に、水素の還元性によって触媒の酸化を低減し、触媒能を確保できるからである。これにより生成装置14による燃料の生成を安定化できる。第2の混合ガスが水素を含む場合に、第2の混合ガスに含まれる水素の量は、第2の混合ガスの量の5vol%以上が好ましい。触媒能を確保し、生成装置14による燃料の生成をさらに安定化するためである。
【0035】
本実施形態では、電解装置15が製造した水素が、生成装置14に供給される。電解装置15は、水の電気分解によって水素と酸素とを製造する。電解装置15が製造する水素量は電力によって容易に調整できるので、排ガス利用装置10の制御を容易にできる。
【0036】
電解装置15において水を電気分解する方法は、アルカリ水電解、固体高分子電解質水電解、高温水蒸気電解が例示される。高温水蒸気電解は、アルカリ水電解や固体高分子電解質水電解に比べ、少ない電力で多くの水素が製造できるので好ましい。電解装置15が固体酸化物形電気分解セルを用いた高温水蒸気電解を行うものであり、その水蒸気の生成に、生成装置14で生じた化学反応熱を利用していると、排ガス利用装置10のエネルギー効率を向上できるので好ましい。
【0037】
電解装置15への電力供給は、集中型電源、分散型電源のいずれも良い。二酸化炭素の排出削減のため、電解装置15へ供給される電力は、再生可能エネルギー由来の電力が好ましい。再生可能エネルギー由来の電力を出力する発電装置は、太陽光発電装置、風力発電装置、水力発電装置、波力発電装置、地熱発電装置、バイオマス発電装置が例示される。
【0038】
供給装置16は、電解装置15が製造した酸素を、助燃剤として燃焼装置21に供給する。これにより電解装置15が製造した酸素を有効活用できる。燃焼装置21は助燃剤が供給されることで燃料消費率が向上する。供給装置16はポンプ、ブロワが例示される。燃焼装置21はボイラー、燃焼炉が例示される。燃焼装置21は生成装置14が製造した燃料を燃焼する装置でも良いし、生成装置14が製造した燃料とは異なる別の燃料を燃焼する装置でも良い。排ガス源20が燃焼装置21であっても良い。電解装置15が製造した酸素を助燃剤として排ガス源20を含む敷地内の施設が利用すれば、酸素の運搬に係るコストを低減できるので好ましい。
【実施例0039】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0040】
(試験1)
直径5mm、長さ5mmのペレット状の触媒を体積0.1Lの容器に充填した。容器内を温度500℃、圧力122kPaに保ち、二酸化炭素と水素とを種々の割合で混ぜた混合ガスを給気口から容器に供給し、触媒を混合ガスに曝し、混合ガスを容器の排気口から排気する試験を1000時間行った。混合ガスの流量は20L/minであった。試験はNi、Cu-ZrOの2種類の触媒について行った。
【0041】
試験後、給気口に近い上流部、排気口に近い下流部、上流部と下流部との間の中間部に触媒を区分けしながら容器から取り出した。上流部、中流部および下流部からそれぞれ無作為に触媒を抽出し、触媒が酸化しているか否かをX線回折法により調べた。触媒が全く酸化していなかったものをAと判定し、触媒が一部でも酸化していたものをBと判定した。表1に結果を示す。表1に示す水素の割合(vol%)は、容器の排気口から排出する混合ガスの水素濃度から求めた。
【0042】
【表1】
表1に示すように混合ガスに含まれる水素の量が、混合ガスの量の5vol%以上の場合に判定がAであった。
【0043】
本実施例によれば、混合ガスに含まれる水素の量が、混合ガスの量の5vol%以上であると、触媒の酸化を低減できることが明らかになった。生成装置14において、2種類の触媒のうちNiはメタン化触媒として有効であり、Cu-ZnOはメタノール化触媒として有効である。混合ガスに含まれる水素の量が、混合ガスの量の5vol%以上であると、生成装置14において触媒の酸化が低減し触媒能が確保されるので、燃料の生成を安定化できることが明らかになった。
【0044】
(試験2)
燃料(メタン又はメタノール)、空気および窒素からなる種々の混合ガスを作製した。メタノールは常温常圧下で液体なので、容積約1Lの真空デシケータ(圧力1kPa)に所定量の空気および窒素を注入後、噴霧により真空デシケータに所定量のメタノールを注入して、気化したメタノールを含む混合ガスを作製した。
【0045】
小さい穴のあいたゴム栓をゴム風船の口に取り付け、ゴム栓の穴にシリンジを差し込み、混合ガスをシリンジからゴム風船の中に約20mL注入した。混合ガスが漏れないようにゴム風船の口をつまみ、ゴム栓からシリンジを抜き、シリンジの代わりに、電気仕掛けの点火装置がついた気密性を有する棒状体をゴム栓の穴に差し込んだ。点火装置を作動して、風船内部の混合ガスに火がつくか否かを調べる試験を行った。試験は3回行った。
【0046】
表2に、燃料の種類、混合ガス中の燃料、空気および窒素の体積(vol%)、着火の有無を記した。混合ガス中の燃料と酸素とがほぼ過不足なく反応するように、メタンが燃料の場合、混合ガス中の燃料と空気との割合は1:11(体積比)とし、メタノールが燃料の場合、混合ガス中の燃料と空気との割合は2:15(体積比)とした。表2に記す窒素は、空気中の窒素を含まない。表2において、+は3回の試験の全てが着火したことを示し、-は3回の試験において着火しないことがあったことを示す。
【0047】
【表2】
表2に示すように混合ガスに含まれる窒素の量が、混合ガスの45vol%以下の場合に、混合ガスに安定に着火することが明らかになった。
【0048】
回収装置13から生成装置14に供給される第1の混合ガスは二酸化炭素と窒素とを含む。生成装置14では二酸化炭素を還元して燃料を製造する。第1の混合ガスに含まれる窒素は、二酸化炭素の還元反応に関係しない。燃料であるメタンやメタノールの分子1つの中に存在するC原子の数は1つであり、燃料の原料である二酸化炭素の分子1つの中に存在するC原子の数も1つである。二酸化炭素が燃料に変化する前後で、分子1つの中に存在するC原子の数は変化しない。従って試験2の結果は、第1の混合ガスに含まれる窒素の量が、第1の混合ガスの量の45vol%以下であると、メタンやメタノールを燃料として含む第2の混合ガスの着火性を確保できることを示している。
【0049】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0050】
実施形態では、電解装置15によって、生成装置14に供給する水素を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えばタンクや水素吸蔵材料に貯蔵した水素を生成装置14に供給しても良い。