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特開2022-185425着座姿勢時胴長測定装置および該方法ならびに運転姿勢設定装置および該方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185425
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】着座姿勢時胴長測定装置および該方法ならびに運転姿勢設定装置および該方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20221207BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20221207BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20221207BHJP
   B62D 1/187 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/22
A61B5/107 410
B62D1/187
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093108
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 義人
(72)【発明者】
【氏名】上村 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】大坪 智範
【テーマコード(参考)】
3B087
3D030
4C038
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B087DE08
3B087DE10
3D030DC13
3D030DD12
3D030DD52
3D030DD63
4C038VA04
4C038VB18
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】本発明は、着座姿勢において、より精度良く胴長(座高)を測定できる着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法、ならびに、これら着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法を備えた運転姿勢設定装置および運転姿勢設定方法を提供する。
【解決手段】本発明の着座姿勢時胴長測定装置は、シートに着座した対象者の目の高さを測定する目高さ測定部2と、目高さ測定部2で測定した目の高さに基づいて前記対象者の胴長を求める胴長処理部32と、胴長処理部32で対象者の胴長を求める前に、目高さ測定部2で測定した目の高さを前記シートにおけるシートバックのリクライニング角度に基づいて補正する補正部33とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した対象者の目の高さを測定する目高さ測定部と、
前記目高さ測定部で測定した目の高さに基づいて前記対象者の胴長を求める胴長処理部と、
前記胴長処理部で対象者の胴長を求める前に、前記目高さ測定部で測定した目の高さを前記シートにおけるシートバックのリクライニング角度に基づいて補正する補正部とを備える、
着座姿勢時胴長測定装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記対象者における頭部および背部がヘッドレストおよびシートバックに当接している場合に前記目高さ測定部で測定した目の高さに基づいて求められる対象者の胴長となるように、前記目高さ測定部で測定した目の高さを補正する、
請求項1に記載の着座姿勢時胴長測定装置。
【請求項3】
前記リクライニング角度と補正係数との対応関係を表す補正係数情報を記憶する補正係数情報記憶部と、
前記リクライニング角度を取得する角度取得部とをさらに備え、
前記補正部は、前記補正係数情報記憶部に記憶された補正係数情報に基づいて、前記角度取得部で取得したリクライニング角度に対応する補正係数を求め、前記目高さ測定部で測定した目の高さに前記求めた補正係数を乗算することによって、前記目高さ測定部で測定した目の高さを補正する、
請求項1または請求項2に記載の着座姿勢時胴長測定装置。
【請求項4】
シートに着座した対象者の目の高さを測定する目高さ測定工程と、
前記目高さ測定工程で測定した目の高さに基づいて前記対象者の胴長を求める胴長処理工程と、
前記胴長処理工程で対象者の胴長を求める前に、前記目高さ測定工程で測定した目の高さを前記シートにおけるシートバックのリクライニング角度に基づいて補正する補正工程とを備える、
着座姿勢時胴長測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の着座姿勢時胴長測定装置と、
前記シートとしての車両に用いられる車両用シートと、
前記対象者を乗員として前記乗員の身長の入力を受け付ける入力部と、
身体における、運転姿勢に関わる所定の各部位の寸法比率を表す寸法比率情報を身長および胴長に関連付けた身長寸法比率情報を記憶する身長寸法比率情報記憶部と、
前記車両用シートの姿勢を動かすシート駆動部と、
前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記着座姿勢時胴長測定装置で測定した胴長に関連した寸法比率情報を、前記身長寸法比率情報記憶部に記憶された身長寸法比率情報に基づいて特定する寸法比率特定部と、
前記車両用シートの姿勢が、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定部で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記シート駆動部を制御する姿勢制御部とを備える、
運転姿勢設定装置。
【請求項6】
ステアリングホイールの姿勢を変更可能なステアリング装置をさらに備え、
前記姿勢制御部は、さらに、前記ステアリングホイールの姿勢が、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定部で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記ステアリング装置も制御する、
請求項5に記載の運転姿勢設定装置。
【請求項7】
車両に用いられる車両用シートを前記シートとした請求項4に記載の着座姿勢時胴長測定方法を備え、身体における、運転姿勢に関わる所定の各部位の寸法比率を表す寸法比率情報を身長および胴長に関連付けた身長寸法比率情報を身長寸法比率情報記憶部に記憶し、前記車両用シートの姿勢を制御する運転姿勢設定方法であって、
前記対象者を乗員として前記乗員の身長の入力を受け付ける入力工程と、
前記入力工程で受け付けた乗員の身長および前記着座姿勢時胴長測定方法で測定した胴長に関連した寸法比率情報を、前記身長寸法比率情報記憶部に記憶された身長寸法比率情報に基づいて特定する寸法比率特定工程と、
前記車両用シートの姿勢が、前記入力工程で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定工程で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記車両用シートの姿勢を制御する姿勢制御工程とを備える、
運転姿勢設定方法。
【請求項8】
前記姿勢制御工程は、さらに、ステアリングホイールの姿勢が、前記入力工程で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定工程で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記ステアリングホイールの姿勢も制御する、
請求項7に記載の運転姿勢設定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した測定対象の者(対象者)の胴長を測定する着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法、ならびに、これら着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法を備え、適切な運転姿勢(ドライビングポジション)を実現できるように、車両用シートの姿勢を制御する運転姿勢設定装置および運転姿勢設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の適切な運転姿勢は、一般に、車両を安心、安全および快適に運転するために推奨される。この運転姿勢は、シートバックの傾き、前後方向におけるシートクッションの位置、上下方向におけるシートクッションの位置(高さ)およびシートクッションの座面の傾き、ならびに、ステアリングホイールの上下の位置およびステアリングホールの前後の位置のうちの一部または全部を調整することによって設定(調整)できる。乗員は、車両を運転する際に、これらのうちの一部または全部を自己の体型に応じて調整し、運転姿勢を調整するが、近年、自動的に運転姿勢を調整する技術が研究、開発されており、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された車両制御システムは、所定の基準方向に対して、光軸が所定の固定角度で傾斜するように、車両の車室内の所定位置に固定されたカメラと、少なくとも、前記カメラによって撮像された画像中の運転者の眼の位置と、前記画像の撮像時における前記基準方向に対する運転席のリクライニング角度およびスライド量と、をパラメータとして用いて、前記運転者の座高に関する身体情報を算出する身体情報算出手段と、前記身体情報算出手段によって算出された前記身体情報に応じた前記リクライニング角度および前記スライド量の推奨値を取得するシート推奨値取得手段と、実際の前記リクライニング角度および前記スライド量が前記シート推奨値取得手段によって取得された前記推奨値に一致するように制御するシート制御手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-201174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シートのシートバックの後傾が大きくなると、すなわち、リクライニング角度が大きくなると、前記シートに着座した対象者の頭部や背部がヘッドレストやシートバックに当接せずに離れる場合がある。このような場合、前記対象者の目の高さ方向の位置は、前記対象者の頭部および背部がヘッドレストおよびシートバックに当接している場合に較べてズレてしまう。このため、前記特許文献1に開示された車両制御システムのように、カメラによって撮像された画像中の運転者の眼の位置と、前記画像の撮像時における基準方向に対する運転席のリクライニング角度およびスライド量と、をパラメータとして用いて、運転者の座高に関する身体情報が算出されると、前記身体情報には、前記ズレに相当する分の誤差が含まれてしまい、その結果、適切な運転姿勢を実現できるように、車両用シートの姿勢を制御できない虞がある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、着座姿勢において、より精度良く胴長(座高)を測定できる着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法、ならびに、これら着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法を備え、乗員に応じた運転姿勢を実現できるように車両用シートの姿勢をより適切に制御できる運転姿勢設定装置および運転姿勢設定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる着座姿勢時胴長測定装置は、シートに着座した対象者の目の高さを測定する目高さ測定部と、前記目高さ測定部で測定した目の高さに基づいて前記対象者の胴長を求める胴長処理部と、前記胴長処理部で対象者の胴長を求める前に、前記目高さ測定部で測定した目の高さを前記シートにおけるシートバックのリクライニング角度に基づいて補正する補正部とを備える。好ましくは、上述の着座姿勢時胴長測定装置において、前記胴長処理部は、前記補正部で補正した目の高さに基づいて前記対象者の胴長を求める。好ましくは、上述の着座姿勢時胴長測定装置において、前記補正部は、前記リクライニング角度が大きいほど、前記胴長処理部で求める対象者の胴長を長く補正する。ここで、前記胴長(座高)は、立位姿勢におけるヒップポイントから頭頂までの長さである。なお、身長は、立位姿勢における足裏から頭頂までの長さであり、脚長(足の長さ)は、立位姿勢における足裏からヒップポイントまでの長さである。
【0008】
このような着座姿勢胴長測定装置は、目高さ測定部で測定した目の高さに基づいて対象者の胴長を求める際に、前記目の高さを補正するので、胴長処理部における胴長を求めるアルゴリズムを改良する必要が無く、従前のアルゴリズムのままで、着座姿勢において、より精度良く胴長を測定できる。
【0009】
他の一態様では、上述の着座姿勢時胴長測定装置において、前記補正部は、前記対象者における頭部および背部がヘッドレストおよびシートバックに当接している場合に前記目高さ測定部で測定した目の高さに基づいて求められる対象者の胴長となるように、前記目高さ測定部で測定した目の高さを補正する。好ましくは、上述の着座姿勢時胴長測定装置において、前記目高さ測定部で測定した目の高さは、高さ方向において、前記目高さ測定部の第1高さを基準とした第2高さであり、前記胴長処理部は、高さ方向において、所定の基準面から前記目高さ測定部の第1高さまでの第1距離と、前記第1高さから前記第2高さまでの第2距離と、前記第2高さから、頭頂の第3高さまでの第3距離との第1和から、前記所定の基準面から前記シートの座面の第4高さまでの第4距離と、前記第4高さから、前記対象者のヒップポイントの第5高さまでの第5距離との第2和を減算することによって、その減算結果として前記対象者の胴長を求める。好ましくは、前記第1距離、前記第3距離、前記第4距離および前記第5距離を記憶する記憶部をさらに備える。好ましくは、前記第1距離および前記第4距離は、設計値で与えられ、前記第3距離および前記第5距離は、統計値で与えられる。好ましくは、前記第1距離、前記第3距離および前記第5距離を記憶する記憶部と、前記第4距離を取得する座面高さ取得部とをさらに備える。
【0010】
このような着座姿勢時胴長測定装置は、胴長処理部で求めた対象者の胴長が、頭部および背部がヘッドレストおよびシートバックに当接している場合の長さになるように補正するので、当該着座姿勢時胴長測定装置を他の装置が用いる場合に、他の装置を改良する必要が無い。
【0011】
他の一態様では、上述の着座姿勢時胴長測定装置において、前記リクライニング角度と補正係数との対応関係を表す補正係数情報を記憶する補正係数情報記憶部と、前記リクライニング角度を取得する角度取得部とをさらに備え、前記補正部は、前記補正係数情報記憶部に記憶された補正係数情報に基づいて、前記角度取得部で取得したリクライニング角度に対応する補正係数を求め、前記目高さ測定部で測定した目の高さに前記求めた補正係数を乗算することによって、前記目高さ測定部で測定した目の高さを補正する。好ましくは、上述の着座姿勢時胴長測定装置において、前記補正係数は、前記リクライニング角度が所定の角度(基本角度)である場合を1とし、前記リクライニング角度が大きいほど大きい値である。好ましくは、前記リクライニング角度は、前記シートバックが鉛直方向に沿っている場合を基準角度0とした場合に、前記鉛直方向と前記シートバックとのなす角度であり、前記所定の角度(基本角度)は、23度から24度までの範囲におけるいずれかの値である。
【0012】
このような着座姿勢時胴長測定装置は、補正係数を予め記憶し、目高さ測定部で測定した対象者の目の高さに補正係数を乗算するだけで、簡易、迅速に、補正できる。
【0013】
本発明の他の一態様にかかる着座姿勢時胴長測定方法は、シートに着座した対象者の目の高さを測定する目高さ測定工程と、前記目高さ測定工程で測定した目の高さに基づいて前記対象者の胴長を求める胴長処理工程と、前記胴長処理工程で対象者の胴長を求める前に、前記目高さ測定工程で測定した目の高さを前記シートにおけるシートバックのリクライニング角度に基づいて補正する補正工程とを備える。
【0014】
このような着座姿勢時胴長測定方法は、目高さ測定工程で測定した目の高さに基づいて対象者の胴長を求める際に、前記目の高さを補正するので、胴長処理工程における胴長を求めるアルゴリズムを改良する必要が無く、従前のアルゴリズムのままで、着座姿勢において、より精度良く胴長を測定できる。
【0015】
本発明の他の一態様にかかる運転姿勢設定装置は、これら上述のいずれかの着座姿勢時胴長測定装置と、前記シートとしての車両に用いられる車両用シートと、前記対象者を乗員として前記乗員の身長の入力を受け付ける入力部と、身体における、運転姿勢に関わる所定の各部位の寸法比率を表す寸法比率情報を身長および胴長に関連付けた身長寸法比率情報を記憶する身長寸法比率情報記憶部と、前記車両用シートの姿勢を動かすシート駆動部と、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記着座姿勢時胴長測定装置で測定した胴長に関連した寸法比率情報を、前記身長寸法比率情報記憶部に記憶された身長寸法比率情報に基づいて特定する寸法比率特定部と、前記車両用シートの姿勢が、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定部で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記シート駆動部を制御する姿勢制御部とを備える。好ましくは、上述の運転姿勢設定装置において、身体における所定の各第2部位の寸法比率に応じて体型を分類した互いに異なる複数のクラスそれぞれと、前記クラスを特徴付ける複数の所定の特徴量それぞれとを対応付けたクラス特徴量情報を記憶するクラス特徴量情報記憶部と、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記着座姿勢時胴長測定装置で求めた乗員の胴長に基づいて前記乗員の脚長を求めて脚長に対する胴長の比率である胴長比率を求め、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記求めた胴長比率を前記特徴量とする胴長比率処理部と、前記胴長比率処理部で処理した乗員の特徴量に対応するクラスを、前記クラス特徴量情報記憶部に記憶されたクラス特徴量情報に基づいて特定するクラス特定部とをさらに備え、前記寸法比率情報を前記身長および前記胴長に関連付けた身長寸法比率情報は、前記入力部で受け付けた乗員の身長、および、前記入力部で受け付けた乗員の身長と前記着座姿勢時胴長測定装置で測定した胴長とに基づいて求められた胴長比率、を前記特徴量として前記特徴量に対応付けられた寸法比率情報であって、前記複数の特徴量それぞれに対応付けられた前記複数のクラスそれぞれにさらに対応付けられた複数であり、前記身長寸法比率情報記憶部は、前記複数のクラスそれぞれと、前記複数の寸法比率情報それぞれとを対応付けたクラス寸法比率情報を記憶し、前記寸法比率特定部は、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記着座姿勢時胴長測定装置で測定した胴長に関連した寸法比率情報を、前記身長寸法比率情報記憶部に記憶され、前記クラス特定部で特定したクラスに対応するクラス寸法比率情報に基づいて特定する。
【0016】
これによれば、着座姿勢時胴長測定装置を備え、乗員に応じた運転姿勢を実現できるように車両用シートの姿勢をより適切に制御できる運転姿勢設定装置が提供できる。上記運転姿勢設定装置は、これら上述のいずれかの着座姿勢時胴長測定装置を備えるので、より精度良く胴長を測定できるから、車両用シートの姿勢をより精度良く制御できる。
【0017】
他の一態様では、上述の運転姿勢設定装置において、ステアリングホールの姿勢を変更可能なステアリング装置をさらに備え、前記姿勢制御部は、さらに、前記ステアリングホイールの姿勢が、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定部で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記ステアリング装置も制御する。すなわち、前記姿勢制御部は、前記車両用シートの姿勢および前記ステアリングホイールの姿勢が、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定部で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記シート駆動部および前記ステアリング装置を制御する。
【0018】
このような運転姿勢設定装置は、車両用シートの姿勢だけでなく、ステアリングホイールの姿勢も制御するので、より適切な運転姿勢を実現できる。
【0019】
本発明の他の一態様にかかる運転姿勢設定方法は、車両に用いられる車両用シートを前記シートとした上述の着座姿勢時胴長測定方法を備え、身体における、運転姿勢に関わる所定の各部位の寸法比率を表す寸法比率情報を身長および胴長に関連付けた身長寸法比率情報を身長寸法比率情報記憶部に記憶し、前記車両用シートの姿勢を制御する方法であって、前記対象者を乗員として前記乗員の身長の入力を受け付ける入力工程と、前記入力工程で受け付けた乗員の身長および前記着座姿勢時胴長測定方法で測定した胴長に関連した寸法比率情報を、前記身長寸法比率情報記憶部に記憶された身長寸法比率情報に基づいて特定する寸法比率特定工程と、前記車両用シートの姿勢が、前記入力工程で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定工程で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記車両用シートの姿勢を制御する姿勢制御工程とを備える。
【0020】
これによれば、着座姿勢時胴長測定方法を備え、乗員に応じた運転姿勢を実現できるように車両用シートの姿勢をより適切に制御できる運転姿勢設定方法が提供できる。上記運転姿勢設定方法は、上述の着座姿勢時胴長測定方法を備えるので、より精度良く胴長を測定できるから、車両用シートの姿勢をより精度良く制御できる。
【0021】
他の一態様では、上述の運転姿勢設定方法において、前記姿勢制御工程は、さらに、ステアリングホイールの姿勢が、前記入力工程で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定工程で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記ステアリングホイールの姿勢も制御する。
【0022】
このような運転姿勢設定方法は、車両用シートの姿勢だけでなく、ステアリングホイールの姿勢も制御するので、より適切な運転姿勢を実現できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法は、着座姿勢において、より精度良く胴長(座高)を測定できる。本発明によれば、これら着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法を備え、乗員に応じた運転姿勢を実現できるように車両用シートの姿勢をより適切に制御できる運転姿勢設定装置および運転姿勢設定方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態における着座姿勢時胴長測定装置を備えた運転姿勢設定装置の構成を示すブロック図である。
図2】前記運転姿勢設定装置の第2入力部を説明するための図である。
図3】前記運転姿勢設定装置の第1入力部および目高さ測定部を説明するための図である。
図4】一例として、クラス特徴量情報を説明するための図である。
図5】適切な運転姿勢を説明するための図である。
図6】胴長の算出方法、ならびに、身長、胴長および脚長の定義を説明するための図である。
図7】一例として、補正係数情報を説明するための図である。
図8】着座姿勢時での胴長測定における補正方法を説明するための図である。
図9】前記運転姿勢設定装置の動作を示すフローチャートである。
図10】一例として、表示装置に表示される各画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0026】
実施形態における運転姿勢設定装置は、車両用シートに着座した乗員に対し適切な運転姿勢(ドライビングポジション)を実現できるように、車両用シートの姿勢を制御する装置である。この運転姿勢設定装置は、車両に用いられる車両用シートと、前記車両用シートに着座した乗員の胴長を測定する着座姿勢時胴長測定装置と、前記乗員の身長の入力を受け付ける入力部と、身体における、運転姿勢に関わる所定の各部位の寸法比率を表す寸法比率情報を身長および胴長に関連付けた身長寸法比率情報を記憶する身長寸法比率情報記憶部と、前記車両用シートの姿勢を動かすシート駆動部と、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記着座姿勢時胴長測定装置で測定した胴長に関連した寸法比率情報を、前記身長寸法比率情報記憶部に記憶された身長寸法比率情報に基づいて特定する寸法比率特定部と、前記車両用シートの姿勢が、前記入力部で受け付けた乗員の身長および前記寸法比率特定部で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、前記シート駆動部を制御する姿勢制御部とを備える。前記着座姿勢時胴長測定装置は、シート(上述では車両用シート)に着座した対象者(上述では乗員)の目の高さを測定する目高さ測定部と、前記目高さ測定部で測定した目の高さに基づいて前記対象者の胴長を求める胴長処理部と、前記胴長処理部で対象者の胴長を求める前に、前記目高さ測定部で測定した目の高さを前記シートにおけるシートバックのリクライニング角度に基づいて補正する補正部とを備える。このような着座姿勢時胴長測定装置を備えた運転姿勢設定装置について、以下、より具体的に説明する。
【0027】
図1は、実施形態における着座姿勢時胴長測定装置を備えた運転姿勢設定装置の構成を示すブロック図である。図2は、前記運転姿勢設定装置の第2入力部を説明するための図である。図2Aは、斜視図であり、図2Bは、側面図である。図3は、前記運転姿勢設定装置の第1入力部および目高さ測定部を説明するための図である。図3Aは、運転席(車両用シートの一例)辺りの斜視図であり、図3Bは、その側面図である。図4は、一例として、クラス特徴量情報を説明するための図である。図5は、適切な運転姿勢を説明するための図である。図6は、胴長の算出方法、ならびに、身長、胴長および脚長の定義を説明するための図である。図6Aは、胴長の算出方法を説明するための図であり、図6Bは、身長、胴長および脚長の定義を説明するための図である。図7は、一例として、補正係数情報を説明するための図である。図7の横軸は、リクライニング角度であり、その縦軸は、補正係数である。図8は、着座姿勢時での胴長測定における補正方法を説明するための図である。図8Aは、リクライニング角度の相違による目高さの相違を説明するための図であり、図8Bは、背中がシートバックから離れ、上体が前屈み気味になっている様子を説明するための図であり、図8Cは、背中がシートバックに当接し、上体がシートバックに沿って伸びている様子を説明するための図である。
【0028】
ここで、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」および「下」等の方向を表す用語は、車両の前進走行の際の進行方向を「前」とした場合における車両の各方向を指すものとする。
【0029】
実施形態における運転姿勢設定装置Dは、例えば、図1に示すように、入力部1と、目高さ測定部2と、制御処理部3と、記憶部4と、シート駆動部5と、ステアリング装置6と、表示装置7とを備える。
【0030】
シート駆動部5は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って車両用シートSTの姿勢を動かす装置である。車両用シートSTは、車両に用いられ、乗員DVが着座するための装置であり、例えば、図2に示すように、座面を形成するシートクッションSCと、その下端(一方端)でシートクッションSCの後端(他方端)に取り付けられ、背もたれとなるシートバックSBと、シートバックSBの上端(他方端)に取り付けられる枕状のヘッドレストHRとを備える。車両用シートSTには、シート駆動部5が組み込まれている。シート駆動部5は、本実施形態では、例えば、シートバックSBの傾きを調整する電動のリクライニング機構51と、前後方向におけるシートクッションSCの位置(前後位置)を調整する電動のスライド機構52と、上下方向におけるシートクッションSCの位置(上下位置、高さ)を調整する電動のリフト機構53と、シートクッションSCの前端(一方端)の高さを上下方向に調整することで、シートクッションSCの座面の傾きを調整する電動のチルト機構54とを備える。このような電動化されたリクライニング機構51、スライド機構52、リフト機構53およびチルト機構54は、公知の常套手段によって構成され、例えば、特開2011-79472号公報、特開2019-172016号公報および特開2006-218882号公報等に開示されている。前記シートバックSBの傾きは、水平面(例えば車両のフロア面FL等)の法線と、シートバックSBの略高さ方向に延びる延長方向に沿った直線とのなす角度(リクライニング角度、リクライニング角の角度)によって表される。シートバックSBが鉛直方向(法線方向)に沿っている場合のリクライニング角度がリクライニング角度の基準角度0[度]とされる。したがって、リクライニング角度が小さいほどシートバックSBは、鉛直に近く立った姿勢となり、リクライニング角度が大きいほどシートバックSBは、後傾し、水平に近く寝た姿勢となる。前記座面の傾きは、前記水平面と前記座面とのなす角度によって表される。
【0031】
入力部1は、制御処理部3に接続され、例えば、車両用シートSTの姿勢を動かす指示(車両用シートSTの姿勢を調整する指示)等の各種指示(各種コマンド)、および、例えば乗員DVの身長等の運転姿勢設定装置D(着座姿勢時胴長測定装置)を動作させる上で必要な各種データを運転姿勢設定装置Dに入力する装置である。入力部1は、本実施形態では、図1ないし図3に示すように、第1入力部11と、第2入力部12と、第3入力部13とを備える。
【0032】
第1入力部11は、前記身長等の各種データの入力を受け付ける装置である。第1入力部11は、例えばテンキー等の複数のスイッチを備えて構成されてよいが、本実施形態では、軸周りに回転可能であって軸方向にプッシュ可能な円柱状のダイヤルスイッチであり、例えば、図3Aに示すように、車両室内において、運転席と助手席とを隔てるセンターコンソールに配置される。このダイヤルスイッチでは、ダイヤルスイッチを回転することによって、例えば後述の図10Bに示すように、表示装置7(例えばヘッドアップディスプレイ(HUD)あるいはセンターディスプレイ等)に表示される数値が回転方向に応じて増減し(例えば時計回りの回転によって前記数値が増加し、反時計回りの回転によって前記数値が減少する)、ダイヤルスイッチをプッシュすることによって、表示装置7に表示されている数値が確定し、当該運転姿勢設定装置D(着座姿勢時胴長測定装置)に入力される。
【0033】
第2入力部12は、車両用シートSTの姿勢を動かす指示を入力する装置である。第2入力部12は、本実施形態では、例えば、図2に示すように、シートバックSBの傾きを調整する指示を入力するシートバック用スイッチ(SBスイッチ)121と、シートクッションSCにおける前後位置、上下位置および座面の傾きそれぞれを調整する各指示を入力するシートクッション用スイッチ(SCスイッチ)122とを備え、SBスイッチ121とSCスイッチ122とで車両用シートSTの側面視形状を模すように、車両用シートSTの下部側面に配設される。SBスイッチ121は、下端部を回転軸に略前後方向に傾くように構成される。SCスイッチ122は、略中央部を回転軸に前端および後端それぞれを略上下方向に傾くように構成され、さらに、前後方向に動くように構成される。
【0034】
車両用シートSTの姿勢のマニュアル調整では、図2Aに示すように、SBスイッチ121が前方(または後方)に傾けられると、制御処理部3は、SBスイッチ121が傾いている間、シートバックSBを前方(または後方)に傾け、リクライニング角度が徐々に小さくなるように(または大きくなるように)、リクライニング機構51を制御し、SBスイッチ121が復帰すると(元の中立位置に戻されると)、制御処理部3は、リクライニング機構51を停止し、シートバックSBは、そのリクライニング角度でその姿勢を維持する。図2Aに示すように、SCスイッチ122が前方(または後方)に動かされると、制御処理部3は、SCスイッチ122が前方(または後方)に位置している間、シートクッションSCが前方(または後方)に徐々に移動するように、スライド機構52を制御する。SCスイッチ122が復帰すると、制御処理部3は、スライド機構52を停止し、シートクッションSCは、その前後位置でその姿勢を維持する。図2Aに示すように、SCスイッチ122の後端が上方(または下方)に傾けられると、制御処理部3は、SCスイッチ122が傾いて上方(または下方)に位置している間、シートクッションSCが徐々に上がるように(または下がるように)、リフト機構53を制御し、SCスイッチ122が復帰すると、制御処理部3は、リフト機構53を停止し、シートクッションSCは、その上下位置(高さ)でその姿勢を維持する。図2Aに示すように、SCスイッチ122の前端が上方(または下方)に傾けられると、制御処理部3は、SCスイッチ122が傾いて上方(または下方)に位置している間、シートクッションSCの前端が徐々に上がるように(または下がるように)、チルト機構54を制御し、SCスイッチ122が復帰すると、制御処理部3は、チルト機構54を停止し、シートクッションSCは、その座面の傾きでその姿勢を維持する。
【0035】
第3入力部13は、ステアリングホイールの姿勢を動かす指示を入力する装置である。第3入力部13は、ステアリングホイールの上下位置を調整する指示を入力するチルト用スイッチ(TRスイッチ)と、ステアリングホイールの前後位置を調整する指示を入力するテレスコピック用スイッチ(TSスイッチ)とを備え、ステアリング装置6の周辺に配設される。
【0036】
目高さ測定部2は、車両用シートSTに着座した乗員DVの目の高さ(目高さ、高さ方向における目の位置)を計測する装置である。目高さ測定部2は、本実施形態では、例えば、目高さデータ取得部21と、目高さ処理部36(22)とを備える。目高さデータ取得部21は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、車両用シートSTに着座した乗員DVの目高さを計測するための所定のデータを取得する装置である。目高さ処理部36(22)は、本実施形態では、後述の制御処理プログラムの実行によって制御処理部3に機能的に構成され、目高さデータ取得部21で取得した前記所定のデータを処理することによって乗員DVの目高さを求めるものである。
【0037】
例えば、目高さデータ取得部21は、車両用シートSTに着座した乗員DVの画像を生成するカメラを備え、所定の場所、例えば、図3Aに示すように、車度や回転数等を表示するダッシュボードの横に配置された表示装置7の一方側端部(あるいは上端部等)に配置される。人々の顔幅は、統計的に、個人差が少ないことから、統計的に予め求められた固定値(顔幅固定値)とされ、目高さ処理部36(22)は、前記カメラで生成した前記乗員の画像および前記顔幅固定値に基づいて目高さを求めるものである。より具体的には、目高さ処理部36(22)は、まず、前記カメラで生成した前記乗員DVの画像における、乗員DVの顔が写り込むと想定される予め規定された所定の画像領域から、例えばエッジフィルタや円形のハフ変換等により顔の外輪郭を抽出し、あるいは例えば顔のパターンマッチングにより顔の外輪郭を抽出し、この顔の外輪郭における最大幅を持つ幅方向に沿う1ライン内に存在する画素数を求める。前記所定の画像領域は、例えば、前記カメラの配置位置、車両用シートSTの配置位置、前記カメラにおける焦点距離や光軸方向等によって予め求められ、記憶部4に記憶される。次に、目高さ処理部36(22)は、前記顔幅固定値を前記求めた画素数で除算し、前記カメラにおける焦点距離等のカメラパラメータを考慮して1画素に写り込む被写体の実長を求める。次に、目高さ処理部36(22)は、前記所定の画像領域(あるいは前記顔の外輪郭内における画像領域)から、例えば白色フィルタ等の画像処理によって白目部分を抽出して白目部分の画素位置を求め、前記乗員DVの画像の最下端(あるいは前記カメラの光軸が通る画素位置(通常、画像の中央画素位置))から前記求めた白目部分の画素位置までの画素数を求め、この求めた画素数に前記求めた1画素に写り込む被写体の実長を乗算することによって目高さを求める。なお、前記カメラの光軸が水平方向に沿わず、角度を持つ場合には、前記目高さの算出に、この角度が考慮される。また、画素が正方形ではなく矩形である場合には縦横比から幅方向(横方向)の1画素に写り込む被写体の実長が縦方向の1画素に写り込む被写体の実長に換算され、これが前記目高さの算出に用いられる。
【0038】
前記目高さは、所定の基準の位置から計測される。前記目高さの基準の位置は、例えば、車両の床面の位置、シートクッションSCの座面の位置、あるいは、車両用シートSTの姿勢に応じたヒップポイントHPの位置等であってよいが、本実施形態では、図3Bおよび図6Aに示すように、高さ方向における目高さデータ取得部21の配設位置としている。
【0039】
なお、上述では、カメラパラメータを用いて1画素に写り込む被写体の実長が求められたが、カメラパラメータは、予め既知であるので、前記1ライン内に存在する画素数から1画素に写り込む被写体の実長を換算する関数式(あるいはテーブル)が予め作成され、前記1ライン内に存在する画素数から、この関数式によって1画素に写り込む被写体の実長が求められてもよい。
【0040】
あるいは、例えば、目高さデータ取得部21は、車両用シートSTに着座した乗員DVの画像を生成するカメラと、車両用シートSTに着座した乗員DVまでの距離を測定する距離計(例えば赤外光パルス距離計等)とを備え、例えば、上述と同様に配置される。目高さ処理部36(22)は、前記カメラで生成した前記乗員DVの画像、および、前記距離計で測定した前記乗員DVまでの距離に基づいて、前記乗員DVの目高さを求める。この場合では、目高さ処理部36(22)は、前記測定した乗員DVまでの距離および前記カメラのカメラパラメータ等から1画素に写り込む被写体の実長を求め、以下、上述と同様に、前記乗員DVの目高さを求める。なお、前記距離計に代え、いわゆるステレオカメラであってもよい。この場合では、ステレオカメラの一方が目高さデータ取得部21の前記カメラとして利用できる(兼用できる)。
【0041】
ステアリング装置6は、ステアリングホールの姿勢を変更可能であって、操舵輪を操舵するための機構である。ステアリング装置6は、例えば、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールに連結されるステアリングシャフトと、前記ステアリングホイールの操作によって前記ステアリングシャフトに生じる舵角を検出する舵角センサと、前記舵角センサで検出した舵角に応じて前記操舵輪に操舵角を与える操舵角駆動機構とを備え、前記ステアリングシャフトは、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って前記ステアリングホイールを電動で上下させるチルト機構と、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って前記ステアリングホイールを電動で前後させるテレスコピック機構とを備える。このような電動化されたチルト機構およびテレスコピック機構は、公知の常套手段で構成され、例えば、特開2020-19327号公報や特開2019-23050号公報等に開示されている。
【0042】
ステアリングホイールの姿勢のマニュアル調整では、前記TRスイッチによってステアリングホイールの上下位置を上げるように(または下げるように)指示されると、制御処理部3は、ステアリング装置6の前記チルト機構によってステアリングホイールの上下位置を徐々に上げ(または下げ)、前記TRスイッチが復帰すると、制御処理部3は、ステアリング装置6の前記チルト機構を停止し、ステアリングホイールは、その上下位置でその姿勢を維持する。前記TSスイッチによってステアリングホイールの前後位置を前方(または後方)に移動するように指示されると、制御処理部3は、ステアリング装置6の前記テレスコピック機構によってステアリングホイールの前後位置を徐々に前方(または後方)に移動し、前記TSスイッチが復帰すると、制御処理部3は、ステアリング装置6の前記テレスコピック機構を停止し、ステアリングホイールは、その上下位置でその姿勢を維持する。
【0043】
表示装置7は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、例えば第1入力部11で入力される身長等の所定の情報を表示する装置であり、例えば液晶表示装置(LCD)のセンターディスプレイやヘッドアップディスプレイ等である。
【0044】
記憶部4は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、例えば、運転姿勢設定装置D(着座姿勢時胴長測定装置)の各部1、2、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、目高さ測定部2で測定した乗員DVの目高さに基づいて乗員DVの胴長を求める胴長処理プログラムや、前記胴長処理プログラムで乗員DVの胴長を求める前に、目高さ測定部2で測定した目高さを車両用シートSTにおけるシートバックSBのリクライニング角度に基づいて補正する補正プログラムや、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および前記胴長処理プログラムで求めた乗員DVの胴長に関連した寸法比率情報を、後述の身長寸法比率情報記憶部42に記憶された身長寸法比率情報に基づいて特定する寸法比率特定プログラムや、車両用シートSTの姿勢が、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および前記寸法比率特定プログラムで特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、シート駆動部5を制御する姿勢制御プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、クラス特徴量情報や身長寸法比率情報(クラス寸法比率情報)や補正係数情報等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部4は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部4は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部3のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。記憶部4は、クラス特徴量情報記憶部41と、身長寸法比率情報記憶部(クラス寸法比率情報記憶部)42と、補正係数情報記憶部43とを機能的に備える。
【0045】
クラス特徴量情報記憶部41は、クラス特徴量情報を記憶するものである。前記クラス特徴量情報は、身体における所定の各部位(体型分類用部位)の寸法比率に応じて体型を分類した互いに異なる複数のクラス(体型クラス、グループ、体型グループ)それぞれと、前記クラスを特徴付ける複数の所定の特徴量それぞれとを対応付けた情報である。前記体型分類用部位は、体型を分類する観点から適宜に設定される部位であり、例えば、腕部、体幹および脚部等である。
【0046】
車両は、様々な地域や国の仕向地に輸出され、利用される場合もあり、このような場合、仕向地における人々の体型は、例えば、白色人種のように相対的に脚部が長かったり、逆に、黄色人種のよう相対的に胴部が長かったり等の、仕向地に応じて様々である。このような場合、運転姿勢は、仕向地における人々の体型に合わせる必要がある。このため、車両を仕向地に応じて作り分けることが考えられるが、これでは、前記作り分ける工数が必要となり、大量生産によるメリットが低減してしまう。このため、本実施形態は、乗員の体型を自動的に特定し、これにより、前記作り分ける工数を低減し、低コスト化を図るものである。
【0047】
この体型の特定に当たり、身体には、例えば、頭部、腕部、手部、頸部、体幹部、脚部および足部等の様々な部位が存在し、さらに、例えば、前記腕部は、上腕部および前腕部等の各部位に分けることができ、また例えば、前記脚部は、大腿部および脛部等の各部位に分けることができる。一方、人々の体型は、例えば遺伝情報や気候風土や生活習慣等の様々な因子に依存して例えば人種別(例えば黄色人種、黒人種および白人種等)や地域別(例えばアジア地域、欧州地域および北米地域等)や民族別(国別)等の観点から分類できる。さらに、性別により体型は、一般に異なり、性別別にも分類できる。このような様々に分類される各体型では、一例では、各体型ごとに、身体における所定の各部位の寸法比率が統計的に決定できる。身体における所定の各部位の寸法比率に応じて体型を互いに異なる複数のクラスに分類した場合、前記クラスを特徴付ける特徴量が検討され、調査された。上述のように、身体における各部位は、様々であるため、発明者は、例えば頭部の大きさを特徴量と仮定してクラスを特徴付けられるか否かを調査したり、あるいは例えば、脚長を特徴量と仮定してクラスを特徴付けられるか否かを調査したり等のトライアンドエラーを繰り返した。その多数の調査結果から、発明者は、身長および脚長に対する胴長の比率である胴長比率(=胴長/脚長)が前記クラスを特徴付ける特徴量と成り得ることを見出した。このため、本実施形態では、前記特徴量は、身長および胴長比率である。胴長比率が1より大きいほど(胴長/脚長>1)、胴長が脚長より長くなり(胴長>脚長)、胴長比率が1より小さいほど(胴長/脚長<1)、脚長が胴長より長くなる(胴長<脚長)。図6Bに示すように、前記身長は、立位姿勢における足裏から頭頂までの長さであり、前記脚長(足の長さ)は、立位姿勢における足裏からヒップポイントHPまでの長さであり、前記胴長(座高)は、立位姿勢におけるヒップポイントHPから頭頂までの長さである。
【0048】
上述のように、前記様々に分類される各体型では、一例では、各体型ごとに、身体における所定の各部位の寸法比率が統計的に決定できるので、前記複数のクラスは、例えば、人種別に分類されたクラスまたは人種別および性別別に分類されたクラスであってよく、あるいは、例えば、前記複数のクラスは、地域別に分類されたクラスまたは地域別および性別別に分類されたクラスであってよく、あるいは、例えば、前記複数のクラスは、民族別(国別)に分類されたクラスまたは民族別(国別)および性別別に分類されたクラスであってよい。
【0049】
本実施形態では、体型は、図4に示すように、6個の第1ないし第6クラスに分類され、特徴量は、上述のように身長および胴長比率であり、胴長比率は、前記調査結果から、身長の関数になっている。図4の横軸は、身長であり、その縦軸は、胴長比率である。第1クラスASMは、アジア地域の男性(例えば日本人男性等)であり、身長が高くなるに従って胴長比率が小さくなる右下がりのプロファイルを持つ直線(第1関数直線)である。第2クラスASFは、アジア地域の女性(例えば日本人女性等)であり、身長が高くなるに従って胴長比率が若干小さくなる右下がりのプロファイルを持つ直線(第2関数直線)である。第3クラスEPMは、欧州地域の男性(例えばドイツ人男性等)であり、身長が高くなるに従って胴長比率が若干大きくなる右上がりのプロファイルを持つ直線(第3関数直線)である。第4クラスEPFは、欧州地域の女性(例えばドイツ人女性等)であり、身長が高くなるに従って胴長比率が小さくなる右下がりのプロファイルを持つ直線(第4関数直線)である。第5クラスNAMは、北米地域の男性(例えばアメリカ人男性等)であり、身長が高くなるに従って胴長比率が若干大きくなる右上がりのプロファイルを持つ直線(第5関数直線)である。第6クラスNAFは、北米地域の女性(例えばアメリカ人女性等)であり、身長が高くなるに従って胴長比率が大きくなる右上がりのプロファイルを持つ直線(第6関数直線)である。右下がりでは、第1クラスASMの傾きが最も大きく、第2クラスASFの傾きが最も小さく、第4クラスEPFの傾きは、第1および第2クラスASM、ASFの各傾きの間である。右上がりでは、第6クラスNAFの傾きが最も大きく、第5クラスNAMの傾きが最も小さく、第3クラスEPMの傾きは、第5および第6クラスNAM、NAFの各傾きの間である。各クラスにおける身長の各範囲は、各クラスの身長分布によって異なる範囲となっている。
【0050】
これら第1ないし第6クラスの各特徴量(第1ないし第6特徴量)は、身長に対する胴長比率の各関数直線の各式(第1ないし第6関数式)で表される。第1クラスASMは、第1特徴量の第1関数式と対応付けられ、第2クラスASFは、第2特徴量の第2関数式と対応付けられ、第3クラスEPMは、第3特徴量の第3関数式と対応付けられ、第4クラスEPFは、第4特徴量の第4関数式と対応付けられ、第5クラスNAMは、第5特徴量の第5関数式と対応付けられ、第6クラスNAFは、第6特徴量の第6関数式と対応付けられ、これらが、クラス特徴量情報として、クラス特徴量情報記憶部41に記憶される。なお、上述では、関数式が用いられたが身長と胴長比率とのテーブルであってもよい(第1ないし第6関数直線に対応した第1ないし第6テーブル)。
【0051】
身長寸法比率情報記憶部42は、身長寸法比率情報を記憶するものである。前記身長寸法比率情報は、身体における、運転姿勢に関わる所定の各部位(運転姿勢関連部位)の寸法比率を表す寸法比率情報を身長および胴長に関連付けた情報である。上述のように、運転姿勢は、体型に関連し、体型は、クラスに分類され、クラスは、その特徴量(ここでは、身長および胴長比率)に対応付けられている。このため、本実施形態では、前記寸法比率情報を前記身長および前記胴長に関連付けた前記身長寸法比率情報は、前記特徴量に対応付けられた寸法比率情報であって、前記複数の特徴量それぞれに対応付けられた前記複数のクラスそれぞれにさらに対応付けられた複数である。すなわち、身長寸法比率情報記憶部42は、前記複数のクラスそれぞれと、前記複数の寸法比率情報それぞれとを対応付けたクラス寸法比率情報を記憶する。適切な運転姿勢は、公知であり、例えば、図5に示すように、踵をフロアに付けてブレーキペダルとアクセルペダルとを踏み替えができ、ステアリングホイールに手首が載せられ、ステアリングホイールに干渉されずに、ダッシュボードの車速や回転数等が視認でき、前方の視界が確保できる姿勢である。この適切な運転姿勢は、足首角φ1、膝角φ2、ヒップ角φ3、腋角φ4および肘角φ5によって規定され、これら足首角φ1、膝角φ2、ヒップ角φ3、腋角φ4および肘角φ5は、それぞれ、上述の姿勢となるように、複数のサンプルから予め所定の範囲に設定される。このような適切な運転姿勢の算出方法も公知であり、前記運転姿勢関連部位は、例えば、腕部(上腕部および前腕部)、手部、体幹部、脚部(大腿部および脛部)、足部および臀部等である。これら各運転姿勢関連部位の寸法比率が例えば胴長に対して統計的に予め求められる。例えば公開されている人体寸法データが利用されてもよい。なお、臀部の厚さや腕部の長さのように胴長に相関しないものは、固定値として寸法比率情報に含まれる。本実施形態では、第1ないし第6クラスに応じて第1ないし第6寸法比率情報が予め用意され、第1ないし第6クラスそれぞれと第1ないし第6寸法比率情報とを対応付けてクラス寸法比率情報として身長寸法比率情報記憶部(クラス寸法比率情報記憶部)42に記憶される。
【0052】
補正係数情報記憶部43は、補正係数情報を記憶するものである。前記補正係数情報は、リクライニング角度と補正係数との対応関係を表す情報である。より具体的には、前記リクライニング角度が大きいほど前記胴長処理プログラムで求める乗員DVの胴長を長く補正するために、より詳しくは、乗員DVにおける頭部および背部がヘッドレストHRおよびシートバックSBに当接している場合に目高さ測定部2で測定した目高さに基づいて求められる前記乗員DVの胴長となるように(前記乗員DVの胴長と一致するように)、あるいは、乗員DVの背部がシートバックSBに当接している場合に目高さ測定部2で測定した目高さに基づいて求められる前記乗員DVの胴長となるように(前記乗員DVの胴長と一致するように)、前記目高さ測定部2で測定した目高さを補正するために、例えば、図7に示すように、前記補正係数は、リクライニング角度が所定の角度(基本角度)θ0である場合を1とし、前記リクライニング角度が大きいほど大きい値である。前記基本角度は、好ましくは、23度から24度までの範囲におけるいずれかの値である。
【0053】
車両用シートSTのシートバックSBの後傾が大きくなると(リクライニング角度が大きくなると)、例えば、図8Aに示すように、前記車両用シートSTに着座した乗員DVの頭部や背部がヘッドレストHRやシートバックSBに当接せずに離れる場合がある。このような場合、図8Cに示す、前記乗員DVにおける頭部や背部がヘッドレストHRおよびシートバックSBに当接して相対的に伸びている状態における乗員DVの上体は、第1腰椎点LSPで折れ、図8Bに示すように、相対的に前屈み気味の状態になる((図8Cに示す線分C7P-HPと線分LSP-HPとのなす角度φ2)<(図8Bに示す線分C7P-HPと線分LSP-HPとのなす角度φ1))。この結果、前記乗員DVの目の高さ方向の位置は、図8Aに示すように、前記乗員DVにおける頭部および背部がヘッドレストHRおよびシートバックSBに当接している場合に較べて、あるいは、前記乗員DVの背部がシートバックSBに当接している場合に較べて、下方にズレてしまい、前記目高さ測定部2で測定した目高さは、前記乗員DVにおける頭部および背部がヘッドレストおよびシートバックに当接している場合に較べて、あるいは、前記乗員DVの背部がシートバックSBに当接している場合に較べて、低くなる。図8Aに示す例では、衝突の際のヘッドレストHRの機能を考慮して頭部がヘッドレストから所定の距離(設計値)だけ離間し、背部がシートバックSBに当接している姿勢が標準状態とされている。前記補正係数は、上述のように、リクライニング角度が大きいほど大きい値に設定されるので、運転姿勢設定装置D(着座姿勢時胴長測定装置)は、このズレを補正でき、乗員DVにおける頭部および背部がヘッドレストHRおよびシートバックSBに当接している場合(あるいは乗員DVの背部がシートバックSBに当接している場合)に目高さ測定部2で測定される目高さに補正できる。したがって、運転姿勢設定装置D(着座姿勢時胴長測定装置)は、乗員DVにおける頭部および背部がヘッドレストHRおよびシートバックSBに当接している場合(あるいは乗員DVの背部がシートバックSBに当接している場合)に目高さ測定部2で測定した目高さに基づいて求められる前記乗員DVの胴長に補正できる。なお、図8Bおよび図8Cに示す各点(●)は、上体の姿勢を表すための点であり、上から、目点EP、耳じゅ点TRP、第1頸椎点C1P、第7頸椎点C7P、第1腰椎点LSPおよびヒップポイントHPである。上体は、一般に、ヒップポイントHPを基点にその姿勢を変化させる。
【0054】
このようなリクライニング角度と補正係数との対応関係は、複数のサンプルから予め作成され、関数式またはテーブルによって表され、補正係数情報として補正係数情報記憶部43に記憶される。
【0055】
制御処理部3は、運転姿勢設定装置D(着座姿勢時胴長測定装置)の各部1、2、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、車両用シートSTに着座した乗員DVの胴長を測定し、この測定した胴長の前記乗員DVに応じた適切な運転姿勢を実現できるように、車両用シートSTの姿勢を制御するための回路である。制御処理部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部3には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部31、胴長処理部32、補正部33、寸法比率特定部34、姿勢制御部35および目高さ処理部36(22)が機能的に構成される。
【0056】
制御部31は、運転姿勢設定装置D(着座姿勢時胴長測定装置)の各部1、2、4~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、運転姿勢設定装置D(着座姿勢時胴長測定装置)全体の制御を司るものである。
【0057】
目高さ処理部36(22)は、上述のように、目高さデータ取得部21で取得した前記所定のデータを処理することによって乗員DVの目高さを求めるものである。
【0058】
胴長処理部32は、目高さ測定部2で測定した目高さ(目高さ処理部36(22)で求めた目高さ)に基づいて乗員DVの胴長を求めるものである。より具体的には、胴長処理部32は、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および目高さ測定部2で測定した目高さに基づいて乗員DVの胴長を求める。本実施形態では、シートクッションSCにおける座面の高さおよび前記座面の傾きが変更可能であるので、胴長処理部32は、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長、目高さ測定部2で測定した乗員DVの目高さ、乗員DVが着座している車両用シートSTの座面の高さおよび前記座面の傾きに基づいて乗員DVの胴長を求める。
【0059】
より詳しくは、例えば、図6に示すように、胴長H6は、車両用シートSTが取り付けられているフロア面FLから目高さデータ取得部(上述の例ではカメラ)21の配設位置までの第1距離(第1高さ)H1と、目高さデータ取得部(上述の例ではカメラ)21の配設位置から乗員DVの目の位置までの第2距離(乗員DVの目高さ)H2と、乗員DVの目の位置から前記乗員DVの頂部の位置までの第3距離(第3高さ)H3との和から、フロア面FLから車両用シートSTの座面までの第4距離(座面の高さ)H4と、車両用シートSTの座面からヒップポイントHPまでの第5距離(第5高さ)H5との和を減算することによって、その減算結果として求められる(H6=(H1+H2+H3)-(H4+H5))。第1距離H1は、設計値で与えられる。乗員DVの目高さH2は、目高さ測定部2で測定することで与えられる。第3距離H3は、統計的に予め求められた例えば前記人体寸法データで与えられる。第4距離H4は、設計値(リフト量0での座面の高さおよびチルト量0での座面の傾き)、リフト機構53の状態値(現在のリフト量)およびチルト機構54の状態値(現在のチルト量)から求められ与えられる。前記現在のリフト量および現在のチルト量は、例えばリフト機構53およびチルト機構54から胴長処理部32によって取得される。あるいは、例えば、前記現在のリフト量および現在のチルト量は、前記現在のリフト量および現在のチルト量に制御した姿勢制御部35の制御値(制御指令)が姿勢制御部35から胴長処理部32によって取得され、これら各制御値から求められる。第5距離H5は、統計的に予め求められた例えば前記人体寸法データで与えられる臀部の厚みから求められる。これら第1距離H1、第3距離H3、第4距離H4を求めるための前記設計値および第5距離H5は、前記各種の所定のデータの一つとして記憶部4に予め記憶される。なお、この胴長の算出では、第3距離H3および第5距離H5は、クラスによらない固定値(例えば各クラスの平均値等)とされる。
【0060】
補正部33は、胴長処理部32で乗員DVの胴長を求める前に、目高さ測定部2で測定した目高さを車両用シートSTにおけるシートバックSBのリクライニング角度に基づいて補正するものである。補正部33は、前記リクライニング角度が大きいほど、胴長処理部32で求める乗員DVの胴長を長く補正する。より具体的には、補正部33は、乗員DVにおける頭部および背部がヘッドレストHRおよびシートバックSBに当接している場合に(あるいは、乗員DVの背部がシートバックSBに当接している場合に)目高さ測定部2で測定した目高さに基づいて求められる乗員DVの胴長となるように、目高さ測定部2で測定した目高さを補正する。より詳しくは、補正部33は、リクライニング機構51からリクライニング角度を取得し(あるいは前記現在のリクライニング角度に制御した姿勢制御部35の制御値(制御指令)を姿勢制御部35から取得し)、補正係数情報記憶部43に記憶された補正係数情報に基づいて、前記取得したリクライニング角度に対応する補正係数を求め、目高さ測定部2で測定した目高さに前記求めた補正係数を乗算することによって、前記目高さ測定部2で測定した目高さを補正する。したがって、胴長処理部32は、補正部33で補正した目高さに基づいて前記乗員DVの胴長を求める((前記第2距離H2)=(補正部33で補正した目高さ))。
【0061】
寸法比率特定部34は、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および胴長処理部32で求めた胴長に関連した寸法比率情報を、身長寸法比率情報記憶部42に記憶された身長寸法比率情報に基づいて特定するものである。本実施形態では、上述したように、体型は、クラスに分類され、クラスは、その特徴量(ここでは、身長および胴長比率)に対応付けられているので、寸法比率特定部34は、乗員DVに対応する寸法比率情報を、乗員DVのクラスに対応するクラス寸法比率情報に基づいて特定する。より具体的には、寸法比率特定部34は、胴長比率処理部341と、クラス特定部342と、比率特定部343とを機能的に備える。
【0062】
胴長比率処理部341は、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および胴長処理部32で求めた胴長に基づいて乗員DVの脚長を求めて胴長比率を求め、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および前記求めた胴長比率を、前記特徴量とするものである。前記脚長は、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長から、前記求めた胴長を減算することによって、その減算結果として求められる(脚長=身長-胴長)。
【0063】
クラス特定部342は、胴長比率処理部341で処理した乗員DVの特徴量(本実施形態では身長および胴長比率)に対応するクラスを、クラス特徴量情報記憶部41に記憶されたクラス特徴量情報に基づいて特定するものである。より具体的には、クラス特定部342は、身長および胴長比率を2軸とする2次元座標空間において、複数のクラスそれぞれに対応付けられた複数の身長および胴長比率の中から、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および胴長比率処理部341で求めた胴長比率に最も近似した身長および胴長比率を選定し、この選定した身長および胴長比率に対応するクラスを、第1入力部11で受け付けた身長および胴長比率処理部341で求めた胴長比率(乗員DVの特徴量)に対応するクラスとして特定する。前記最も近似した身長および胴長比率は、例えば、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長であって、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長に対応する複数のクラスの各胴長比率の中の、胴長比率処理部341で求めた胴長比率に最も近い胴長比率である。例えば、図4に示すように、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長がTLであって、胴長比率処理部341で求めた胴長比率がRTである場合に、クラス特定部342は、前記最も近似した身長および胴長比率として、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長TLであって、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長TLに対応する複数のクラスの各胴長比率の中の、胴長比率処理部341で求めた胴長比率RTに最も近い胴長比率RCを選定し、これら身長TLおよび胴長比率RCを持つ第3クラスEPMを特定する。なお、上述では、クラス特定部342は、身長を固定して各クラスの胴長比率の中から最も近い胴長比率を選定したが、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および胴長比率処理部341で求めた胴長比率と各クラスの各関数直線との距離を求めて距離的に最も近い関数直線のクラスを特定してもよい。すなわち、前記最も近似した身長および胴長比率は、前記複数のクラスそれぞれに対応付けられた複数の身長および胴長比率の中の、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および胴長比率処理部341で求めた胴長比率に距離的に最も近い身長および胴長比率であってもよい。
【0064】
比率特定部343は、クラス特定部342で特定したクラスに対応する寸法比率情報を、身長寸法比率情報記憶部42に記憶されたクラス寸法比率情報に基づいて特定するものである。図4に示す上述の例では、クラス特定部342で特定した第3クラスEPMに対応する第3寸法比率情報が特定される。
【0065】
姿勢制御部35は、車両用シートSTの姿勢が、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および寸法比率特定部34で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、シート駆動部5を制御するものである。前記特許文献1と同様に、車両用シートSTの姿勢を制御することで、適切な運転姿勢が実現されてよいが、より適切な運転姿勢を実現するために、本実施形態では、姿勢制御部35は、さらに、ステアリングホイールの姿勢が、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および寸法比率特定部34で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、ステアリング装置6も制御する。すなわち、姿勢制御部35は、車両用シートSTの姿勢およびステアリングホイールの姿勢が、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および寸法比率特定部34で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、シート駆動部5およびステアリング装置6を制御する。より具体的には、姿勢制御部35は、まず、身体における、運転姿勢に関わる所定の各運転姿勢関連部位の寸法を、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および寸法比率特定部34で特定した寸法比率情報から求める。例えば、大腿部の寸法を求める場合、寸法比率特定部34で特定した寸法比率情報の大腿部の寸法比率に、胴長処理部32で求めた胴長を乗算することによって大腿部の寸法が求められる。この場合において、図4に示す上述の例のように、特徴量としての、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および胴長比率処理部341で求めた胴長比率が、各クラスの特徴量に一致せずに最も近似した特徴量を選定してクラスを特定した場合、運転姿勢に関わる所定の各運転姿勢関連部位の寸法は、その差分に基づいて補正されてもよい。より具体的には、姿勢制御部35は、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および寸法比率特定部34で特定した寸法比率情報に基づき前記各運転姿勢関連部位の各長さを求め、身長および胴長比率の2次元座標空間における、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および胴長比率処理部341で求めた胴長比率で表される第1点(図4に示す例では点MP)と前記最も近似した身長および胴長比率で表される第2点(図4に示す例では点CP)と間の差分に基づいて前記求めた各運転姿勢関連部位の各長さを補正する。例えば、前記差分が前記クラスの特徴量に対しx[%]である際に、胴長比率処理部341で求めた胴長比率が前記クラスの特徴量の1つとしての胴長比率より大きい場合には、前記求めた各運転姿勢関連部位の各長さがx[%]だけ長くなるようにそれぞれ補正され、胴長比率処理部341で求めた胴長比率が前記クラスの特徴量の1つとしての胴寸法比率より小さい場合には、前記求めた各運転姿勢関連部位の各長さがx[%]だけ短くなるようにそれぞれ補正される。ここで、上述のように胴長と相関しない運転姿勢関連部位は、固定値であるので、姿勢制御部35は、前記各運転姿勢関連部位のうち、脚長を除く胴長と相関する運転姿勢関連部位(例えば顔の上下長等)のみ補正する(胴長と相関しない運転姿勢関連部位、例えば臀部の厚さや腕部の長さ等は、補正せずに、その固定値がそのまま用いられる)。そして、姿勢制御部35は、公知の常套手段によって、この補正した各運転姿勢関連部位の各長さに基づく運転姿勢に応じた車両用シートSTの姿勢およびステアリングホイールの姿勢を求め、車両用シートSTの姿勢およびステアリングホイールの姿勢がこの求めた車両用シートSTの姿勢およびステアリングホイールの姿勢になるように、シート駆動部5およびステアリング装置6を制御する。運転姿勢に応じた車両用シートSTの姿勢およびステアリングホイールの姿勢については、例えば、特開2017-33320号公報、特開2016-165961号公報および特開2019-38320号公報等が参照できる。
【0066】
なお、補正部33は、前記胴長処理部で対象者の胴長を求める前に、前記目高さ測定部で測定した目の高さを前記シートにおけるシートバックのリクライニング角度に基づいて補正する補正部の一例に相当し、前記リクライニング角度を取得する角度取得部の一例にも相当する。
【0067】
次に、本実施形態の動作について説明する。図9は、前記運転姿勢設定装置の動作を示すフローチャートである。図10は、一例として、表示装置に表示される各画面を示す図である。図10Aは、乗員登録を行う場合のトップ画面を示し、図10Bは、身長を第1入力部11で入力するための身長入力画面を示し、図10Cは、目高さを測定する場合の注意事項を表示するための目高さ測定注意事項画面を示し、図10Dは、乗員情報を編集するための乗員情報編集画面を示す。
【0068】
このような運転姿勢設定装置D(着座姿勢時胴長測定装置)は、車両が稼働を始めると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部3には、制御部31、胴長処理部32、補正部33、寸法比率特定部34、姿勢制御部35および目高さ処理部36(22)が機能的に構成され、寸法比率特定部34には、胴長比率処理部341、クラス特定部342および比率特定部343が機能的に構成される。そして、例えば、前記車両の稼働開始や、運転姿勢の設定開始の指示を入力するスイッチ(不図示)の操作等に応じて、以下の運転姿勢の設定に関する動作が開始される。
【0069】
図9において、運転姿勢設定装置Dは、まず、制御処理部3の制御部31によって、乗員登録を行う場合のトップ画面を表示装置7に表示する(S1)。
【0070】
例えば、運転姿勢設定装置Dは、乗員DVの登録機能および認証機能(検出機能)をさらに備えており、このトップ画面91は、例えば、図10Aに示すように、運転姿勢設定装置Dが認証した乗員DVで良いか否かを入力するための「OK」ボタン911と、運転姿勢設定装置Dに登録されている乗員名を表示するとともに運転姿勢設定装置Dが認証した乗員(認証結果)を表示する乗員名表示領域912、913と、乗員DVの新たな登録を実施する指示を入力するための「新規登録」ボタン914とを備える。例えば、記憶部4に、乗員名と認証結果とを対応付けた乗員登録情報が記憶され、処理S1の実行の際に、乗員登録情報に登録(記憶)されている乗員名が乗員名表示領域912、913に表示され、目高さデータ取得部21の前記カメラで撮像した乗員DVの画像に基づき公知の常套手段によって顔認証が実施され、この実施により得られた認証結果が乗員登録情報にある場合には、前記認証結果に対応付けられた乗員名を表示した乗員名表示領域912(または乗員名表示領域913)の枠が強調表示される。例えば、細い枠線が太い枠線に変更されることで、枠が強調表示される。第1入力部11のダイヤルスイッチを回転操作すると、枠の強調表示が、「OK」ボタン911、乗員名表示領域912、乗員名表示領域913、「新規登録」ボタン914、「OK」ボタン911、・・・の順に順次にサイクリックに移動し、前記ダイヤルスイッチをプッシュ操作すると、強調表示されている枠の内容が運転姿勢設定装置Dに入力される。図10Aに示す例では、「新規登録」ボタン914の枠が強調表示されており、ここでは、この表示状態で前記ダイヤルスイッチがプッシュ操作されるものとする。このようなトップ画面91のデータは、後述の画面のデータと共に、前記各種の所定のデータの1つとして、記憶部4に予め記憶される。
【0071】
前記ダイヤルスイッチがプッシュ操作されると、例えば「完了するまで車両を停止させたままにしてください」等の、運転姿勢を調整する際の注意事項を表示する図略の運転姿勢調整注意事項画面が表示され、所定時間経過後や移行指示の入力(例えば前記図略の運転姿勢調整注意事項画面に表示された「OK」ボタンの入力操作)により、運転姿勢設定装置Dは、制御部31によって、身長を第1入力部11で入力するための身長入力画面を表示装置7に表示し、乗員DVの身長の入力を受け付ける(S2)。
【0072】
この身長入力画面92は、例えば、図10Bに示すように、入力候補の数値を表示して入力するための入力候補数値表示領域921を備える。この入力候補数値表示領域921は、1個の数値を表示するように構成されてよいが、図10Bに示す例では、複数の数値、この例では、5個の数値を表示するために、5個の第1ないし第5サブ入力候補数値表示領域921-1~921-5で構成されている。第1入力部11のダイヤルスイッチを回転操作すると、枠の強調表示が、回転方向に応じて、例えば反時計回りの回転操作では第5サブ入力候補数値表示領域921-5から第1サブ入力候補数値表示領域921-1の方へ順次に移動し、第1サブ入力候補数値表示領域921-1に到達すると、入力候補数値表示領域921に表示されている数値自体が順次に増加して表示され、一方、時計回りの回転操作では、枠の強調表示が、第1サブ入力候補数値表示領域921-1から第5サブ入力候補数値表示領域921-5の方へ順次に移動し、第5サブ入力候補数値表示領域921-5に到達すると、入力候補数値表示領域921に表示されている数値自体が順次に減少して表示される。図10Bに示す例では、第1ないし第5サブ入力候補数値表示領域921-1~921-5それぞれには、「170cm」ないし「174cm」それぞれが表示され、「170cm」を表示する第1サブ入力候補数値表示領域921-1の枠が強調表示されており、ここでは、この表示状態で前記ダイヤルスイッチがプッシュ操作されるものとする。これにより、乗員DVの身長として、「170cm」が運転姿勢設定装置Dに入力される。
【0073】
前記乗員DVの身長の入力を受け付けると、運転姿勢設定装置Dは、制御部31によって、目高さを測定する場合の注意事項を表示するための、例えば図10Cに示す目高さ測定注意事項画面93を表示装置7に表示し、目高さ測定部2によって、乗員の目高さを測定する(S3)。
【0074】
前記乗員DVの目高さを測定すると、運転姿勢設定装置Dは、制御処理部3の胴長処理部32および補正部33によって、処理S2によって第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および目高さ測定部2で測定した乗員DVの目高さに基づいて、補正後の乗員DVの胴長を求める(S4)。より具体的には、補正部33は、リクライニング機構51からリクライニング角度を取得し、補正係数情報記憶部43に記憶された補正係数情報に基づいて、この取得したリクライニング角度に対応する補正係数を求め、処理S3によって目高さ測定部2で測定した目高さに、この求めた補正係数を乗算することによって、前記、処理S3によって目高さ測定部2で測定した目高さを補正する((補正後の目高さ)=(処理S3によって目高さ測定部2で測定した目高さ)×補正係数))。そして、胴長処理部32は、第1距離H1と、第2距離H2(=補正後の目高さ)と、第3距離H3との第1和から、第4距離と第5距離との第2和を減算することによって、その減算結果として乗員DVの胴長H6を求める(H6=(H1+H2+H3)-(H4+H5))。
【0075】
前記乗員DVの胴長を求めると、前記乗員DVに対応する寸法比率情報を特定するために、運転姿勢設定装置Dは、制御処理部3における寸法比率特定部34の胴長比率処理部341によって、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および胴長処理部32で求めた胴長に基づいて乗員DVの脚長を求めて胴長比率を求め、第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長およびこの求めた胴長比率を、前記特徴量とし(S5)、寸法比率特定部34のクラス特定部342によって、前記特徴量(本実施形態では身長および胴長比率)に対応するクラスを、クラス特徴量情報記憶部41に記憶されたクラス特徴量情報に基づいて特定し(S6)、寸法比率特定部34の比率特定部343によって、クラス特定部342で特定したクラスに対応する寸法比率情報を、身長寸法比率情報記憶部42に記憶されたクラス寸法比率情報に基づいて特定する(S7)。
【0076】
前記乗員DVに対応する寸法比率情報を特定すると、運転姿勢設定装置Dは、制御処理部3の姿勢制御部35によって、車両用シートSTの姿勢およびステアリングホイールの姿勢が、処理S2によって第1入力部11で受け付けた乗員DVの身長および上述のように寸法比率特定部34の比率特定部343で特定した寸法比率情報に基づく運転姿勢に応じた姿勢になるように、シート駆動部5およびステアリング装置6を制御する(S8)。
【0077】
このように目高さ測定部2で測定した目高さを補正して乗員DVの胴長が求められ、複数の体型クラスの中から乗員DVのクラスが自動的に特定され、乗員DVの体型に合った運転姿勢を実現できるように車両用シートSTの姿勢およびステアリングホイールの姿勢が制御されたので、ここで、本処理が終了されてもよいが、本実施形態では、乗員DVの好みに応じて車両用シートSTの姿勢およびステアリングホイールの姿勢がマニュアル(手動)で調整可能となっており、乗員DVは、好みに応じて(必要に応じて)、第2入力部12や第3入力部13を用いて車両用シートSTの姿勢やステアリングホイールの姿勢を調整し、第2入力部12や第3入力部13の入力操作を受け付けると、運転姿勢設定装置Dは、制御処理部3の姿勢制御部35によって、第2入力部12や第3入力部13の入力操作に応じてシート駆動部5やステアリング装置6を制御する(S9)。これによりマニュアル調整が実行される。
【0078】
例えば処理S8の実行終了から、予め設定された所定の時間(マニュアル調整用時間)の経過によって、あるいは例えば図略のマニュアル調整の終了を入力するための図略の入力部の入力操作等によって、マニュアル調整が終了すると、運転姿勢設定装置Dは、制御処理部3の制御部31によって、現在の車両用シートSTの姿勢およびステアリングホールの姿勢を登録(記憶)し、乗員情報を編集するための乗員情報編集画面を表示装置7に表示し、後述の「完了」ボタン941に対する第1入力部11のダイヤルスイッチによる入力操作を受け付けると、現在の車両用シートSTの姿勢およびステアリングホールの姿勢を乗員名に対応付けて前記乗員登録情報にさらに登録されて記憶され、本処理を終了する。
【0079】
この乗員情報編集画面94は、例えば、図10Dに示すように、乗員登録情報を更新して記憶部4に記憶し、本処理を終了する指示を入力するための「完了」ボタン941と、乗員名を入力、編集する指示を入力するための「ドライバー名編集」ボタン942と、アイコンを変更する指示を入力するための「アイコンの変更」ボタン943と、乗員名を入力し、編集するための乗員名入力編集欄944とを備える。第1入力部11のダイヤルスイッチの回転操作によって「完了」ボタン991が選択され、前記ダイヤルスイッチがプッシュ操作されると、前記確定した現在の車両用シートSTの姿勢(車両用シートSTにおけるリクライニング角、シートクッションSCの前後位置、シートクッションSCの上下位置および座面の傾き)およびステアリングホイールの姿勢(ステアリングホイールにおける上下位置および前後位置)が、乗員名入力編集欄944に表示されている乗員名と対応付けられて前記乗員登録情報にさらに登録されて記憶される。
【0080】
以上説明したように、実施形態における運転姿勢設定装置Dに備えられた着座姿勢時胴長測定およびこれに実装された着座姿勢時胴長測定方法は、目高さ測定部2で測定した目高さに基づいて乗員DVの胴長を求める際に、前記目高さを補正するので、胴長処理部32における胴長を求めるアルゴリズムを改良する必要が無く、従前のアルゴリズムのままで、着座姿勢において、より精度良く胴長を測定できる。
【0081】
上記着座姿勢時胴長測定および着座姿勢時胴長測定方法は、胴長処理部32で求めた乗員DVの胴長が、頭部および背部がヘッドレストHRおよびシートバックSBに当接している場合(あるいは背部がシートバックSBに当接している場合)の長さになるように補正するので、当該着座姿勢時胴長測定装置を他の装置が用いる場合に、他の装置を改良する必要が無い。例えば、上述では、当該着座姿勢時胴長測定装置が運転姿勢設定装置Dに用いられ、乗員DVのクラスが身長および胴長比率の特徴量を用いて特定されるが、このクラスを特定するアルゴリズムを改良する必要が無い。
【0082】
上記着座姿勢時胴長測定および着座姿勢時胴長測定方法は、補正係数を予め記憶し、目高さ測定部2で測定した乗員DVの目高さに補正係数を乗算するだけで、簡易、迅速に、補正できる。
【0083】
本実施形態によれば、上記着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法を備え、乗員DVに応じた運転姿勢を実現できるように車両用シートSTの姿勢をより適切に制御できる運転姿勢設定装置Dおよび運転姿勢設定方法が提供できる。上記運転姿勢設定装置および運転姿勢設定方法は、上記着座姿勢時胴長測定装置および着座姿勢時胴長測定方法を備えるので、より精度良く胴長を測定できるから、車両用シートSTの姿勢をより精度良く制御できる。
【0084】
上記運転姿勢設定装置および運転姿勢設定方法は、車両用シートSTの姿勢だけでなく、ステアリングホイールの姿勢も制御するので、より適切な運転姿勢を実現できる。
【0085】
上記運転姿勢設定装置および運転姿勢設定方法は、乗員DVのクラスを自動的に特定するので、乗員DVによるクラスの入力が必要なく、車両を仕向地に応じて作り分ける必要が無い。このため、前記作り分ける工数が低減でき、大量生産によるメリットが享受でき低コスト化が可能となる。上記運転姿勢設定装置および運転姿勢設定方法は、乗員DVのクラスを特定できるので、乗員DVのクラスに応じた適切な運転姿勢を自動的に実現できる。
【0086】
上記運転姿勢設定装置および運転姿勢設定方法は、各運転姿勢関連部位の各長さを補正するので、車両用シートSTに着座した乗員DVに応じた適切な運転姿勢を実現できる。
【0087】
なお、上述の実施形態では、車両用シートSTの姿勢を制御するために、シート駆動部5におけるリクライニング機構51、スライド機構52、リフト機構53およびチルト機構54それぞれが制御されたが、シート駆動部5におけるリクライニング機構51、スライド機構52、リフト機構53およびチルト機構54のうちの少なくとも1つが制御されてもよい。同様に、ステアリングホイールの姿勢を制御するために、ステアリング装置6におけるテレスコピック機構およびチルト機構それぞれが制御されたが、ステアリング装置6におけるテレスコピック機構およびチルト機構のうちの少なくとも一方が制御されてもよい。ここで、チルト機構54を備えずにシートクッションSCにおける座面の傾きが固定である場合、胴長の算出では、前記座面の傾きは、設計値が用いられる。リフト機構53を備えずにシートクッションSCにおける座面の高さが固定である場合、胴長の算出では、前記座面の高さは、設計値が用いられる。
【0088】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0089】
D 着座姿勢時胴長測定装置を備える運転姿勢設定装置
1 入力部
2 目高さ測定部
3 制御処理部
4 記憶部
5 シート駆動部
6 ステアリング装置
7 表示装置
11 第1入力部
12 第2入力部
13 第3入力部
21 目高さデータ取得部
22(36) 目高さ処理部
31 制御部
32 胴長処理部
33 補正部
34 寸法比率特定部
35 姿勢制御部
41 クラス特徴量情報記憶部
42 身長寸法比率情報記憶部
43 補正係数情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10