(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185427
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】トレース装置、トレース方法およびトレースプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20221207BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20221207BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093110
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 健二
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA34
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA58
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
3C100CC02
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】ユーザによるイベントの選択に応じて、選択されたイベントに対応したトレース情報を適正に提供し、ユーザの利便性を向上させる。
【解決手段】本開示のトレース装置は、生産ラインに含まれる複数の機器から予め定められた取得周期で動作ログを取得して記憶装置に記憶させると共に、複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択された際に、ユーザにより選択された選択イベントの発生日時から上記取得周期に相当する時間が経過するまでの間に複数の機器から取得した動作ログのうち、少なくとも選択イベントが発生した機器から取得した動作ログを記憶装置から読み出してトレース情報として出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ラインに含まれる複数の機器から予め定められた取得周期で動作ログを取得して記憶装置に記憶させると共に、ユーザの要求に応じて前記動作ログに基づくトレース情報を出力するトレース装置であって、
前記複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択された際に、ユーザにより選択された選択イベントの発生日時から前記取得周期に相当する時間が経過するまでの間に前記複数の機器から取得した前記動作ログのうち、少なくとも前記選択イベントが発生した前記機器から取得した前記動作ログを前記記憶装置から読み出して前記トレース情報として出力するトレース装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトレース装置において、
前記選択イベントのイベントコードに基づいて前記記憶装置から読み出す前記動作ログを選別するトレース装置。
【請求項3】
請求項2に記載のトレース装置において、
複数の前記イベントコードごとにトレースの対象となる対象機器が予め定められており、ユーザにより前記選択イベントが選択された際に、前記選択イベントの前記イベントコードに対応した前記対象機器の前記動作ログを前記記憶装置から読み出して前記トレース情報として出力するトレース装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のトレース装置において、
前記選択イベントがエラーイベントであり、かつ前記選択イベントの発生日時から前記選択イベントについて予め定められた関連時間だけ前までの間に前記選択イベントに関連した別のエラーイベントが発生している場合、前記選択イベントの発生日時から前記関連時間だけ前までの間に取得した前記動作ログの少なくとも一部を前記記憶装置から読み出して前記トレース情報として出力するトレース装置。
【請求項5】
生産ラインに含まれる複数の機器から動作ログを取得して記憶装置に記憶させると共に、ユーザの要求に応じて前記動作ログに基づくトレース情報を出力するトレース装置であって、
前記複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択され、ユーザにより選択された選択イベントがエラーイベントであり、かつ前記選択イベントの発生日時から所定時間だけ前までの間に前記選択イベントに関連した別のエラーイベントが発生している場合、前記選択イベントの発生日時から前記所定時間だけ前までの間に前記複数の機器から取得した前記動作ログの少なくとも一部を前記記憶装置から読み出して前記トレース情報として出力するトレース装置。
【請求項6】
生産ラインに含まれる複数の機器から予め定められた取得周期で動作ログを取得して記憶装置に記憶させると共に、ユーザの要求に応じて前記動作ログに基づくトレース情報を出力するトレース方法であって、
前記複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択された際に、ユーザにより選択された選択イベントの発生日時から前記取得周期に相当する時間が経過するまでの間に前記複数の機器から取得した前記動作ログのうち、少なくとも前記選択イベントが発生した前記機器から取得した前記動作ログを前記記憶装置から読み出し、読み出した前記動作ログを前記トレース情報として出力するトレース方法。
【請求項7】
生産ラインに含まれる複数の機器から動作ログを取得して記憶装置に記憶させると共に、ユーザの要求に応じて前記動作ログに基づくトレース情報を出力するトレース方法であって、
前記複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択され、ユーザにより選択された選択イベントがエラーイベントであり、かつ前記選択イベントの発生日時から所定時間だけ前までの間に前記選択イベントに関連した別のエラーイベントが発生している場合、前記選択イベントの発生日時から前記所定時間だけ前までの間に前記複数の機器から取得した前記動作ログの少なくとも一部を前記記憶装置から読み出し、読み出した前記動作ログを前記トレース情報として出力するトレース方法。
【請求項8】
コンピュータに、
生産ラインに含まれる複数の機器から予め定められた取得周期で動作ログを取得して記憶装置に記憶させる手順と、
前記複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択された際に、ユーザにより選択された選択イベントの発生日時から前記取得周期に相当する時間が経過するまでの間に前記複数の機器から取得した前記動作ログのうち、少なくとも前記選択イベントが発生した前記機器から取得した前記動作ログを前記記憶装置から読み出してトレース情報として出力する手順と、
を実行させるトレースプログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
生産ラインに含まれる複数の機器から動作ログを取得して記憶装置に記憶させる手順と、
前記複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択され、ユーザにより選択された選択イベントがエラーイベントであり、かつ前記選択イベントの発生日時から所定時間だけ前までの間に前記選択イベントに関連した別のエラーイベントが発生している場合、前記選択イベントの発生日時から前記所定時間だけ前までの間に前記複数の機器から取得した前記動作ログの少なくとも一部を前記記憶装置から読み出して前記トレース情報として出力する手順と、
を実行させるトレースプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産ラインに含まれる複数の機器から動作ログを取得すると共にユーザの要求に応じて当該動作ログに基づくトレース情報を出力するためのトレース装置、トレース方法およびトレースプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造物を生産する生産ラインの各設備が出力するイベントと当該製造物とを紐付けするトレーサビリティシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このトレーサビリティシステムは、イベントと製造物IDとを紐付けるためのルールの設定を支援するラインモデル設計部と、設備が出力するイベントを受け取ると共に、ルールを用いてイベントと製造物IDとを紐付け、かつ紐付けの結果を用いて製造物IDから当該製造物IDに対応する製造物の全設備におけるイベントをトレースするトレース実行部と、トレース実行部によりトレースされたトレース結果を出力するトレース結果出力部とを含む。かかるトレーサビリティシステムによれば、製造物の製造物IDから生産ラインの各設備において発生したイベントを特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような製造物IDだけではなく、生産ラインに含まれる何れかの機器(設備)で発生したイベントをキーとして製造物の生産過程等におけるトレース情報(トレース結果)を得ることができれば、ユーザの利便性を向上させることができるであろう。ただし、イベントの選択に加えて、取り出し対象となるトレース情報の日時範囲の設定をユーザに委ねた場合、日時範囲の誤入力や範囲の拡げ過ぎにより目的のトレース情報を速やかに取り出すことができなくなったり、取り出されるトレース情報の容量が過大になってしまったりするおそれがある。そして、上記特許文献1には、イベントをキーとしたトレース情報の取得手順が開示も示唆もされていない。
【0005】
そこで、本開示は、ユーザによるイベントの選択に応じて、選択されたイベントに対応したトレース情報を適正に提供し、ユーザの利便性を向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のトレース装置は、生産ラインに含まれる複数の機器から予め定められた取得周期で動作ログを取得して記憶装置に記憶させると共に、ユーザの要求に応じて前記動作ログに基づくトレース情報を出力するトレース装置であって、前記複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択された際に、ユーザにより選択された選択イベントの発生日時から前記取得周期に相当する時間が経過するまでの間に前記複数の機器から取得した前記動作ログのうち、少なくとも前記選択イベントが発生した前記機器から取得した前記動作ログを前記記憶装置から読み出して前記トレース情報として出力するものである。
【0007】
本開示のトレース装置は、生産ラインに含まれる複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択された際に、ユーザにより選択された選択イベントの発生日時から動作ログの取得周期に相当する時間が経過するまでの間に複数の機器から取得した動作ログのうち、少なくとも選択イベントが発生した機器から取得した動作ログを記憶装置から読み出す。そして、トレース装置は、読み出した動作ログを選択イベントに対応したトレース情報として出力する。すなわち、選択イベントの発生日時から上記取得周期に相当する時間が経過するまでの間に当該選択イベントが発生した機器から取得された動作ログには、動作ログの生成に不具合等が生じていない限り、選択イベントが必ず記録されている。従って、本開示のトレース装置によれば、取り出し対象となるトレース情報の日時範囲の設定をユーザに委ねることなく、選択イベントのログを含むトレース情報をユーザに提供することができる。この結果、ユーザによるイベントの選択に応じて、選択されたイベントに対応したトレース情報を適正に提供し、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0008】
本開示の他のトレース装置は、生産ラインに含まれる複数の機器から動作ログを取得して記憶装置に記憶させると共に、ユーザの要求に応じて前記動作ログに基づくトレース情報を出力するトレース装置であって、前記複数の機器で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択され、ユーザにより選択された選択イベントがエラーイベントであり、かつ前記選択イベントの発生日時から所定時間だけ前までの間に前記選択イベントに関連した別のエラーイベントが発生している場合、前記選択イベントの発生日時から前記所定時間だけ前までの間に前記複数の機器から取得した前記動作ログの少なくとも一部を前記記憶装置から読み出して前記トレース情報として出力するものである。かかるトレース装置によれば、ユーザによるイベントの選択に応じて、選択されたエラーイベントの発生原因の特定等に極めて有用なトレース情報を適正に提供し、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のトレース装置を含む生産ラインを示す概略構成図である。
【
図2】本開示のトレース装置を構成する制御装置を示すブロック図である。
【
図3】本開示のトレース装置により実行される処理を例示するフローチャートである。
【
図4】本開示のトレース装置の表示装置に表示される装置イベントログを示す説明図である。
【
図5】本開示のトレース装置により用いられるテーブルを示す説明図である。
【
図6】本開示のトレース装置により用いられる別のテーブルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示のトレース装置であるライン制御装置10を含む生産ライン1を示す概略構成図である。同図に示す生産ライン1は、ライン制御装置10により管理・制御されて部品Pが実装された基板Sを生産するものであり、当該ライン制御装置10に加えて、印刷装置2、印刷検査装置3、保管部(バッファステーション)4、複数(本実施形態では、例えば4台)の部品実装機5、実装検査装置6、リフロー装置7、リフロー検査装置8等を含む。印刷装置2、印刷検査装置3、保管部4、複数の部品実装機5、実装検査装置6、リフロー装置7およびリフロー検査装置8は、予め定められた基板Sの搬送方向に沿って、この順番に配列される。
【0012】
印刷装置2は、基板Sの配線パターン上に、はんだを印刷するものであり、基板Sを搬送する基板搬送装置や、印刷ヘッド、当該印刷ヘッドを移動させるヘッド移動装置、スクリーンマスクが固定された固定枠、CPU,ROM,RAM、不揮発性の記憶装置、入出力インターフェース等を含むコンピュータである制御装置等(何れも図示省略)を含む。印刷検査装置3は、印刷装置2により基板Sに印刷されたはんだの状態を検査するものであり、検査機構および当該検査機構を制御する制御装置(コンピュータ)等を含む。印刷装置2および印刷検査装置3の制御装置は、それぞれ無線または有線通信を介してライン制御装置10と相互に情報をやり取りする。
【0013】
保管部4は、本実施形態において、生産ライン1の印刷検査装置3と最上流側の部品実装機5との間に組み込まれており、複数(本実施形態では、2つ)の保管スペース41と、それぞれ無人搬送車(AGV)100の電動コンベヤ110との間で物品を受け渡すように対応する保管スペース41に設置された複数(本実施形態では、2つ)の電動コンベヤ42とを含む。また、本実施形態において、生産ライン1のライン制御装置10は、保管部4に設置されており、保管部4の電動コンベヤ42といった制御対象を制御する。かかる保管部4には、生産ライン1における生産効率を向上させるべく、部品Pが実装された基板Sの生産に使用される複数の物品が一時的に保管される。本実施形態において、保管部4に保管される物品は、各部品実装機5に装着されるフィーダ5Fであり、部品実装機5に装着される予定(使用前)の複数のフィーダ5Fが一方の保管スペース41に保管され、部品実装機5から取り外された使用済みの複数のフィーダ5Fが他方の保管スペース41に保管される。
【0014】
フィーダ5Fは、カセット式のテープフィーダであり、テープリールと、テープ送り機構と、フィーダコネクタと、テープ送り機構を制御するフィーダ制御装置とを含む(何れも図示省略)。テープリールには、複数の部品Pを収容したテープが巻回されている。各テープリールにおいて、複数の部品Pは、テープの表面を覆うフィルムによってそれぞれ保護されており、当該フィルムは、部品Pが部品実装機5における部品供給位置に達する前に剥がされる。テープ送り機構は、テープリールからテープを引き出して当該部品供給位置へ送り出す。フィーダ制御装置は、CPU,ROM,RAM等を有するマイクロコンピュータ等を含むものである。
【0015】
また、本実施形態では、保管部4と無人搬送車100との間で複数のフィーダ5Fを一括して受け渡すために、箱状の収容ケース(マガジン)90が用いられる。収容ケース90は、それぞれフィーダ5Fが差し込まれる複数(例えば、30個)のスロットと、それぞれ対応するフィーダ5Fのフィーダコネクタと結合可能な複数(例えば、30個)のコネクタとを含む。複数(例えば、30個)のフィーダ5Fは、フィーダコネクタが収容ケース90の対応するコネクタと結合するように対応するスロットに差し込まれ、収容ケース90内に収容される。更に、収容ケース90は、上記複数のコネクタに接続されると共に保管部4の保管スペース41に設けられたコネクタ(図示省略)と結合可能な図示しない外部コネクタを有しており、各フィーダ5Fは、対応するコネクタおよび当該外部コネクタを介してライン制御装置10や図示しない保管部4の電源に接続される。これにより、各フィーダ5Fとライン制御装置10とが通信可能となり、各フィーダ5Fのフィーダ情報をライン制御装置10に取り込むことができる。なお、1つの収容ケース90内に収容される複数のフィーダ5Fは、互いに異なる部品を収容するものであってもよく、互いに同一の部品を収容するものであってもよい。
【0016】
更に、生産ライン1は、ローダ9を含む。ローダ9は、基板Sの搬送方向に沿って移動して保管部4と複数の部品実装機5との間でフィーダ5Fを受け渡すようにライン制御装置10により制御される。すなわち、ローダ9は、該当する部品実装機5から使用済みの複数のフィーダ5Fを回収して保管部4の上記他方の保管スペース41に保管されている収容ケース90に格納する。また、ローダ9は、保管部4の上記一方の保管スペース41(収容ケース90)から使用前の複数のフィーダ5Fを取り出して該当する部品実装機5に装着する。
【0017】
複数の部品実装機5は、何れもフィーダ5Fにより送り出されるテープから部品Pを採取して基板S上に搭載可能な表面実装機であり、
図1に示すように、印刷検査装置3の下流側に基板Sの搬送方向に沿って配列される。各部品実装機5は、筐体、複数のフィーダ5Fが装着されるフィーダセット台、基板搬送装置、XY移動装置、少なくとも1つの吸着ノズルを含む実装ヘッド、パーツカメラ、マークカメラ、ノズルステーション(何れも図示省略)、および制御装置50等を含む。各部品実装機5の制御装置50は、
図2に示すように、CPU50a,ROM50b,RAM50c、不揮発性の記憶装置50d、入出力インターフェース50e等を含むコンピュータであり、無線または有線通信を介してライン制御装置10と相互に情報をやり取りする。また、制御装置50は、パーツカメラおよびマークカメラの撮像データや、基板搬送装置、XY移動装置、実装ヘッド等に設置された図示しない各種センサの検出値等を取得する。更に、制御装置50は、ライン制御装置10からの情報や、パーツカメラおよびマークカメラの撮像データ、各種センサの検出値等に基づいて生産プログラムを実行し、複数のフィーダ5F(部品供給ユニット)、基板搬送装置、XY移動装置、実装ヘッド等を制御する。生産プログラムは、生産ライン1の複数の部品実装機5における基板Sに対する部品Pの搭載順序や、基板Sの生産数等を規定するものあり、ROM50b等に格納されている。
【0018】
実装検査装置6は、各部品実装機5により実装された部品Pの実装状態を検査するものであり、検査機構および当該検査機構を制御する制御装置(コンピュータ)等を含む。実装検査装置6の制御装置も、無線または有線通信を介してライン制御装置10と相互に情報をやり取りする。リフロー装置7は、実装検査装置6の下流側に配置され、当該実装検査装置6からの基板Sを搬送する基板搬送装置と、当該基板搬送装置により搬送される基板Sを加熱する加熱部と、基板搬送装置や加熱部等を制御する制御装置とを含む。リフロー装置7は、加熱部で基板Sを予め定められたリフロー温度(例えば220℃-250℃)に加熱することにより基板S上のはんだを溶融させる。これにより、溶融したはんだが冷却されて固化することで各部品が基板Sの配線パターンに電気的に接続、固定されることになる。リフロー検査装置8は、リフロー処理が施された基板S上の部品Pの状態を検査するものであり、検査機構および当該検査機構を制御する制御装置等を含む。リフロー装置7およびリフロー検査装置8の制御装置は、何れもCPU,ROM,RAM、記憶装置等を含むコンピュータであり、それぞれ無線または有線通信を介してライン制御装置10と相互に情報をやり取りする。
【0019】
ライン制御装置10は、
図2に示すように、CPU10a,ROM10b,RAM10c、例えばハードディスクドライブあるいはソリッドステートドライブといった不揮発性の記憶装置10dおよび入出力インターフェース10e等を含むと共に、キーボード、マウスといった入力デバイスや表示装置(何れも図示省略)が接続されたコンピュータである。ライン制御装置10の記憶装置10dには、基板Sの生産に関連した各種生産情報が記憶される。生産情報には、基板Sに実装される部品Pの在庫状態や供給状態、基板Sの生産計画(部品Pの使用計画を含む)、基板Sの生産状態、生産ライン1を構成する複数の部品実装機5等の稼動状況等が含まれる。また、ライン制御装置10は、機器側からの要求等に応じて、印刷装置2の印刷制御部、各部品実装機5の制御装置50、リフロー装置7のリフロー制御部等に各種指令信号等を与える。なお、ライン制御装置10は、サーバおよびネットワークを介して当該サーバに接続される端末により構成されてもよい。
【0020】
ここで、上記生産ライン1を構成する複数の機器、すなわち印刷装置2、印刷検査装置3、保管部4の機器、複数の部品実装機5、実装検査装置6、リフロー装置7、リフロー検査装置8、ローダ9およびライン制御装置10の少なくとも何れか1つにおいて不具合が発生した場合には、当該不具合の原因等を特定するために各機器の動作ログが必要となる。また、各機器の動作状況の確認や、新たに導入される部品実装機5等を実際に稼働させてデバッグ作業を行う際にも、各機器の動作ログが必要となる。
【0021】
このため、複数の部品実装機5の制御装置50、印刷装置2、印刷検査装置3、実装検査装置6、リフロー装置7およびリフロー検査装置8の図示しない制御装置は、所定時間(本実施形態では、例えば30秒)内に対応する部品実装機5等で発生したイベント(稼働状態、エラー、警告等の事象)等を記録した動作ログ(ファイル)を討議所定時間(本実施形態では、例えば30秒)おきに生成する。また、ライン制御装置10は、保管部4の制御対象、ローダ9および自機の動作ログを所定時間(本実施形態では、例えば30秒)おきに機器ごとに生成する。更に、ライン制御装置10は、予め定められた取得周期(本実施形態では、例えば30秒)おきに複数の部品実装機5の制御装置50、印刷装置2、印刷検査装置3、実装検査装置6、リフロー装置7およびリフロー検査装置8の図示しない制御装置に対して動作ログの送信を要求し、各機器から受信した動作ログを機器ごとに記憶装置10dに記憶させると共に、自らが生成した動作ログを機器ごとに記憶装置10dに記憶させる。なお、複数の部品実装機5の制御装置50、印刷装置2、印刷検査装置3、実装検査装置6、リフロー装置7およびリフロー検査装置8の図示しない制御装置は、動作ログをライン制御装置10に送信した後、当該動作ログを削除して新たな動作ログを生成する。
【0022】
また、本実施形態において、ライン制御装置10には、当該ライン制御装置10を生産ライン1の管理者といったユーザの要求に応じて記憶装置10dに記憶された動作ログに基づくトレース情報を出力するトレース装置として機能させるトレースプログラムがインスロールされている。そして、ユーザは、ライン制御装置10あるいは当該ライン制御装置10に無線または有線通信を介して接続される図示しない端末を操作して上記トレースプログラムを実行させることにより、所望のトレース情報を取り出すことが可能となる。
【0023】
すなわち、ユーザは、ライン制御装置10あるいは端末の表示装置上で、取り出したいトレース情報の日時範囲を設定したり、トレース情報を取り出したい機器を選択したりすることで、所望のトレース情報を取り出すことができる。ただし、ユーザが日時範囲を誤入力したり、日時範囲を拡げ過ぎたり、機器の数を増やしたりした場合、目的のトレース情報を速やかに取り出すことができなくなったり、取り出されるトレース情報の容量が過大になってしまったりするおそれもある。これを踏まえて、ライン制御装置10をトレース装置として機能させるトレースプログラムは、生産ライン1を構成する複数の機器で発生した複数のイベントの中から何れかのイベントが選択されると、当該何れかのイベント(以下、「選択イベント」という。)に対応したトレース情報を自動的に過不足なく取り出すように作成されている。
【0024】
図3は、ユーザにより選択された選択イベントをキーとしてトレース情報を取り出す手順を示すフローチャートである。本実施形態では、上記トレースプログラムが起動された後、表示装置の表示画面上に表示されたメニュー上で「装置イベントログ」というタブをクリックすることで、選択イベントをキーとしたトレース情報の取り出しが可能となる。ユーザにより当該タブがクリックされると、ライン制御装置10のCPU10aは、
図4に示すような装置イベントログを表示装置に表示させる(ステップS100)。装置イベントログは、図示するように、予め定められた日時範囲あるいはユーザにより指定された日時範囲内で発生した複数のイベントの発生日時、当該イベントが発生した機器の名称(ID)、イベントの種別、イベントコードやイベントの内容等を含むイベントデータを示すものである。
【0025】
装置イベントログを表示装置に表示させた後、CPU10aは、ユーザにより装置イベントログに含まれるイベントの何れかが選択されたか否かを判定し(ステップS110)、ユーザが何れかのイベント(選択イベント)を選択したと判定すると(ステップS110:YES)、選択イベントのイベントコードを取得する(ステップS120)。更に、CPU10aは、ステップS120にて取得したイベントコードに対応したトレース対象機器を特定する(ステップS130)。本実施形態では、複数のイベントコードごとにトレースの対象となる機器であるトレース対象機器を規定した
図5に示すようなテーブルが予め作成されている。ステップS130において、CPU10aは、
図5のテーブルを参照して選択イベント(イベントコード)に対応したトレース対象機器を特定する。本実施形態において、
図5からわかるように、トレース対象機器には、少なくとも選択イベントが発生した機器が含まれる。
【0026】
ステップS130の処理の後、CPU10aは、上記複数の機器から取得した動作ログのうち、トレース対象機器から取得した動作ログを記憶装置10dから読み出す(ステップS140)。より詳細には、ステップS140において、CPU10aは、ユーザにより選択された選択イベントの発生日時を取得した上で、当該選択イベントの発生日時から上述の動作ログの取得周期に相当する時間(本実施形態では、例えば30秒)が経過するまでの間に選択イベントのイベントコードに対応したトレース対象機器から取得した動作ログを記憶装置10dから読み出す。
【0027】
続いて、CPU10aは、ステップS120にて取得した選択イベントのイベントコードから当該選択イベントがエラーイベントであるか否かを判定する(ステップS150)。選択イベントがエラーイベントであると判定した場合(ステップS150:YES)、CPU10aは、ステップS120にて取得したイベントコードに基づいて、選択イベントに関連した別のエラーイベント(以下、「関連イベント」という。)のイベントコード(以下、「関連エラーコード」という。)と関連時間とを特定する(ステップS160)。関連イベントは、選択イベントの発生原因となったり当該選択イベントを誘発したりするイベントである。また、関連時間は、選択イベントが発生した場合に、当該選択イベントの発生前に関連イベントが発生している可能性がある時間である。本実施形態では、複数のエラーコード(イベントコード)ごとに関連イベントの関連エラーコードと関連時間とを規定した
図6に示すようなテーブルが予め作成されており、ステップS160において、CPU10aは、
図6のテーブルから選択イベントに対応した関連エラーコードおよび関連時間を特定する。
【0028】
更に、CPU10aは、ステップS160にて関連エラーコードが特定されたか否か、すなわち選択イベントの関連イベントが存在しているか否かを判定する(ステップS170)。選択イベントの関連イベントが存在していると判定した場合(ステップS170:YES)、CPU10aは、選択イベントの発生日時からステップS160にて特定した当該選択イベントについて予め定められた関連時間だけ前までの間に関連イベントが発生しているか否かを判定する(ステップS180)。関連イベントが選択イベントの発生前に発生していると判定した場合(ステップS180:YES)、CPU10aは、選択イベントの発生日時から関連時間(所定時間)だけ前までの間にステップS130にて特定したトレース対象機器から取得した動作ログを記憶装置10dから読み出す(ステップS190)。
【0029】
ステップS190の処理の後、CPU10aは、ステップS140およびS190にて読み出した動作ログを予め定められたフォーマットで表示装置に表示させ(ステップS200)、
図3のルーチンを終了させる。また、ステップS150にて選択イベントがエラーイベントではないと判定した場合(ステップS150:NO)、CPU10aは、ステップS160-S190の処理をスキップし、ステップS140にて読み出した動作ログ(のみ)を予め定められたフォーマットで表示装置に表示させ(ステップS200)、
図3のルーチンを終了させる。更に、ステップS170にて選択イベントの関連イベントが存在していないと判定した場合(ステップS170:NO)、CPU10aは、ステップS180-S190の処理をスキップし、ステップS140にて読み出した動作ログ(のみ)を予め定められたフォーマットで表示装置に表示させ(ステップS200)、
図3のルーチンを終了させる。また、ステップS180にて関連イベントが選択イベントの発生前に発生していないと判定した場合(ステップS180:NO)、CPU10aは、ステップS190の処理をスキップし、ステップS140にて読み出した動作ログ(のみ)を予め定められたフォーマットで表示装置に表示させ(ステップS200)、
図3のルーチンを終了させる。
【0030】
以上説明したように、トレース装置としてのライン制御装置10は、生産ライン1に含まれる複数の機器、すなわち印刷装置2、印刷検査装置3、保管部4の機器、複数の部品実装機5、実装検査装置6、リフロー装置7、リフロー検査装置8、ローダ9および当該ライン制御装置10で発生した複数のイベントの中からユーザにより何れかのイベントが選択された際に、ユーザにより選択された選択イベントの発生日時から動作ログの取得周期に相当する時間が経過するまでの間に複数の機器から取得した動作ログのうち、少なくとも選択イベントが発生した機器から取得した動作ログを記憶装置10dから読み出す(ステップS100-S140)。そして、ライン制御装置10は、読み出した動作ログを選択イベントに対応したトレース情報として表示装置に表示(出力)させる(ステップS200)。すなわち、選択イベントの発生日時から上記取得周期に相当する時間が経過するまでの間に当該選択イベントが発生した機器から取得された動作ログには、動作ログの生成に不具合等が生じていない限り、選択イベントが必ず記録されている。従って、トレース装置としてのライン制御装置10によれば、取り出し対象となるトレース情報の日時範囲の設定をユーザに委ねることなく、選択イベントのログを含むトレース情報をユーザに提供することができる。この結果、ユーザによるイベントの選択に応じて、選択されたイベントに対応したトレース情報を適正に提供し、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0031】
また、ライン制御装置10は、選択イベントのイベントコードに基づいて記憶装置10dから読み出す動作ログを選別する(ステップS140,S190)。すなわち、ライン制御装置10では、
図5に示すように、複数のイベントコードごとに動作ログの読み出し対象となる対象機器が予め定められており、ライン制御装置10は、ユーザにより選択イベントが選択された際に、選択イベントのイベントコードに対応した対象機器の動作ログを記憶装置10dから読み出してトレース情報として出力する。これにより、取り出されるトレース情報の容量が過大になってしまうのを良好に抑制することが可能となる。
【0032】
更に、ライン制御装置10は、選択イベントがエラーイベントであり、かつ選択イベントの発生日時から選択イベントについて予め定められた関連時間(所定時間)だけ前までの間に選択イベントに関連した別のエラーイベントが発生している場合(ステップS150-S180)、選択イベントの発生日時から関連時間だけ前までの間に取得した動作ログの少なくとも一部を記憶装置10dから読み出してトレース情報として出力する(ステップS190,S200)。これにより、ユーザによるイベントの選択に応じて、選択されたエラーイベントの発生原因の特定等に極めて有用なトレース情報を適正に提供し、ユーザの利便性をより一層向上させることが可能となる。
【0033】
なお、上記実施形態では、ステップS190にて、選択イベントの発生日時から関連時間だけ前までの間にステップS130にて特定したトレース対象機器から取得された動作ログが記憶装置10dから読み出されるが、これに限られるものではない。すなわち、ステップS190では、選択イベントの発生日時から関連時間だけ前までの間に関連エラーコードに対して予め定められたトレース対象機器から取得された動作ログが記憶装置10dから読み出されてもよい。また、例えば、ユーザがエラーイベントの発生原因の特定を希望しており、表示装置の表示画面上で当該ユーザにより所定の操作がなされた場合には、ステップS140の処理が省略されてもよく、ステップS200では、ステップS190にて読み出された動作ログのみが予め定められたフォーマットで表示装置に表示されてもよい。
【0034】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示の発明は、トレース装置の製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 生産ライン、2 印刷装置、3 印刷検査装置、4 保管部、5 部品実装機、50 制御装置、5F フィーダ、6 実装検査装置、7 リフロー装置、8 リフロー検査装置、10 ライン制御装置(トレース装置)、10a,50a CPU、10b,50b ROM,10c,50c RAM、10d,50d 記憶装置、10e,50e 入出力インターフェース、P 部品、S 基板。