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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185431
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
H02K9/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093121
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 豪成
(72)【発明者】
【氏名】竹内 智毅
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP09
5H609QQ02
5H609QQ09
5H609RR02
5H609RR51
(57)【要約】
【課題】コイルエンドを適切に冷却する技術を提供する。
【解決手段】
ステータ(20)は、軸方向端部から突出する円環状のコイルエンド(22)を備え、ロータ(30)は、軸方向の一方の端部から他方の端部に向かって気体が通過する通風孔(33)を有する。コイルエンド(22)は、通風孔(33)を通過した気体が内周側から外周側に通過する流路(221)を有し、他方の端部側のコイルエンド(22)とハウジング(40)との間には、流路(221)から出た気体を整流する冷却風制御部材(60)が備えられる。冷却風制御部材(60)は、コイルエンド(22)における気体の流れを軸方向に整流するように、コイルエンド(22)の外周及び軸方向端面に沿って延設されたガイド板(63)を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとをハウジングに収容し、気体を用いて前記ステータのコイルを冷却する回転電機であって、
前記ステータは、軸方向端部から突出する円環状のコイルエンドを備え、
前記ロータは、軸方向の一方の端部から他方の端部に向かって気体が通過する通風孔を有し、
前記コイルエンドは、前記通風孔を通過した気体が内周側から外周側に通過する流路を有し、
前記他方の端部側の前記コイルエンドと前記ハウジングとの間には、前記流路から出た気体を整流する冷却風制御部材が備えられ、
前記冷却風制御部材は、前記コイルエンドにおける気体の流れを軸方向に整流するように、前記コイルエンドの外周及び軸方向端面に沿って延設されたガイド板を備える、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記ロータの前記他方の端部には、前記ロータと供回りすることで、前記通風孔を通過した気体を前記コイルエンドの内側に送風するファンが備えられる、
回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
前記ガイド板は、周方向に所定の間隔を持って複数設けられる、
回転電機。
【請求項4】
請求項2に記載の回転電機であって、
前記冷却風制御部材は、
前記コイルエンドの内周側に当接する円筒部と、
前記円筒部から前記ハウジングの内壁に沿って延設され、前記コイルエンドと対向する対向部と、を備え、
前記ガイド板は、前記対向部から前記コイルエンドに向かって立設形成され、
前記円筒部は、前記ガイド板によって整流された気体を前記冷却風制御部材の外側へと排出する複数の導風孔を有する、
回転電機。
【請求項5】
請求項4に記載の回転電機であって、
前記円筒部の内周面は、前記ファンの軸方向外側において、前記ファンの回転軸中心に向かって突出形成されるフランジ部を有する、
回転電機。
【請求項6】
請求項4に記載の回転電機であって、
前記コイルは平角線であって、
前記コイルエンドは複数の前記平角線が折り返されて構成され、
前記導風孔は、軸方向に沿って延設される孔であって、前記コイルエンドにおいて最も内側に存在する前記平角線の軸方向の先端まで延設される、
回転電機。
【請求項7】
請求項6に記載の回転電機であって、
前記流路は、複数の前記平角線間の隙間により形成された通路であり、当該流路は、前記コイルエンドの周方向に沿って複数設けられる、
回転電機。
【請求項8】
請求項7に記載の回転電機であって、
前記ファンが有する送風口が、前記流路に対向して備えられ、
前記送風口の軸方向幅は、前記コイルエンドの前記流路の軸方向幅と略同一である、
回転電機。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の回転電機であって、
前記導風孔の総開口断面積は、前記コイルエンドの前記流路の総開口断面積よりも、少なくとも大きい、
回転電機。
【請求項10】
請求項4に記載の回転電機であって、
前記ハウジングには、前記導風孔を通過した気体を前記ハウジングの外側に排気する排出パイプが備えられ、
前記排出パイプの入口は、前記ロータの回転方向の接線方向に向かって開口しており、かつ、前記冷却風制御部材の前記導風孔の位置よりも径方向内側に配置される、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のコイルエンドは電流が流れることにより発熱するため、適切な冷却が必要となる。
【0003】
特許文献1には、コイルエンドの冷却のため、コイルエンドの一部を覆う通風ガイドを備える回転電機の冷却装置が開示されている。通風ガイドは、コイルエンドを覆う囲い板と、この囲い板の内周でコイルエンドを2つの通風路に区分する仕切部材とを備えることで、遠心方向の冷却風でコイルエンドを冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-89046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のように、コイルエンドの一部を覆うような囲いを設けた場合には、コイルエンドに十分に風が当たらない部分が発生する。このため、必ずしも適切にコイルエンドを冷却できないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、コイルエンドを適切に冷却する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様によれば、ロータとステータとをハウジングに収容し、気体を用いてステータのコイルを冷却する回転電機に適用される。ステータは、軸方向端部から突出する円環状のコイルエンドを備える。ロータは、軸方向の一方の端部から他方の端部に向かって気体が通過する通風孔を有する。コイルエンドは、通風孔を通過した気体が内周側から外周側に通過する流路を有し、他方の端部側のコイルエンドとハウジングとの間には、流路から出た気体を整流する冷却風制御部材が備えられる。冷却風制御部材は、コイルエンドにおける気体の流れを軸方向に整流するように、コイルエンドの外周及び軸方向端面に沿って延設されたガイド板を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロータの通風孔から出た気体が、コイルエンドの流路を通過した後、コイルエンドの外周及び軸方向端面に沿って延設されたガイド板によって軸方向に整流されるので、気体をコイルエンドの周囲に流すことが可能となりコイルエンドを適切に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態のモータの断面図である。
図2図2は、第2コイルエンド付近の説明図である。
図3図3は、冷却風制御部材の斜視図である。
図4図4は、冷却風整流部材と第2コイルエンドとの構成の説明図である。
図5図5は、ロータの外周部分の説明図である。
図6図6は、排出口の説明図である。
図7図7は、冷却構造の説明図である。
図8図8は、別の変形例の冷却構造の説明図である。
図9図9は、更に別の変形例の冷却構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る回転電機としてのモータ10の説明図であり、軸方向断面図を示す。図2は、第2コイルエンド22付近の断面図を示す。
【0012】
モータ10は、円環状に形成されたステータ20と、ステータ20の内側に回転自在に装着されたロータ30と、ロータ30に嵌装される回転軸31と、ステータ20及びロータ30を内装するハウジング40と、を備えて構成される。
【0013】
ステータ20に形成されるスロットには平角線からなる巻線が挿入されており、ステータ20の軸方向の両端部には第1コイルエンド21、第2コイルエンド22が形成される。ステータ20の一方の端部には、第1コイルエンド21が軸方向に突出する。ステータ20の他方の端部には、第2コイルエンド22が軸方向に突出する。ステータ20の巻線に電流を流すことで、ロータ30に備えられる永久磁石との作用によってロータ30が回転する。
【0014】
巻線は、ステータ20の一方の端部から他方の端部を介して一方の端部へと戻るように折り返し形状を有する複数の平角線から構成される。
【0015】
第1コイルエンド21は、平角線がステータ20の一方の端部から軸方向に起立した後周方向に屈曲し、端部に向かって軸方向に延設される。第1コイルエンド21の端部は、互いに接合された複数の接合部が軸方向に突設する。
【0016】
第2コイルエンド22は、平角線がステータ20の他方の端部から軸方向に起立し、周方向に屈曲する。この部分では複数の平角線が交錯する交錯部222(図2参照)を構成する。平角線は、屈曲部分からステータ20の方向に軸方向に折り返される。第2コイルエンド22のステータ20付近の根元部分は、起立した平角線と平角線との間隙により、流路221が形成される。流路221は、第2コイルエンド22の径方向内側から径方向外側に冷却風が通過する流路であって、周方向に沿って複数形成される。
【0017】
ロータ30は、一方の端部から他方の端部へと軸方向に貫通する通風孔33を備える。通風孔33は、周方向に複数設けられる。通風孔33は、後述するように、第1収容室41から第2収容室42へと冷却風が通過する通路となる。ロータ30は、通風孔33を通過する冷却風により冷却される。
【0018】
ハウジング40は、ステータ20、ロータ30及び回転軸31を内装する。回転軸31は、ベアリング32を介してハウジング40に回転自在に支持される。
【0019】
ハウジング40は、その内周にステータ20を支持する。ステータ20の一方の端部側には第1収容室41が設けられ、ステータ20の他方の端部側には第2収容室42が設けられる。第1収容室41には、ステータ20の一方の端部から突出する第1コイルエンド21が収容される。第2収容室42には、ステータ20の他方の端部から突出する第2コイルエンド22が収容される。
【0020】
第1収容室41の内壁と第1コイルエンド21との間、及び、第2収容室42の内壁と第2コイルエンド22との間は、絶縁のための適切な距離が確保される。
【0021】
ロータ30の他方の端部には、回転軸31に固定されたファン35が備えられる。ファン35は複数の羽根を備え、ロータ30の回転に伴って回転することで、ロータ30の通風孔33から吸気して、ロータ30の他方の端部から周方向外側に向かう風の流れ(冷却風)を発生させる。これにより、ファン35は、ハウジング40の内部で、第1収容室41から第2収容室42に向かう冷却風の流れを発生させる。
【0022】
ファン35は複数の羽根を備えており、羽根の軸方向幅が冷却風を送風する送風口となる。図2に示すように、ファン35の送風口の軸方向幅W1は、ファン35が対向して設けられる第2コイルエンド22の流路221の軸方向幅W2と略同一に形成される。このように構成することにより、ファン35から送られる冷却風が、第2コイルエンド22の交錯部222に邪魔されることなく、第2コイルエンド22の内周側から外周側に通過する。
【0023】
図1に示すように、第1収容室41には、ハウジング40の外部から空気を導入する導入口44が備えられる。第2収容室には、ハウジング40の外部へと空気を排出する排出パイプ45が備えられる。
【0024】
このような構成により、モータ10の駆動によりファン35が回転すると、導入口44から導入された外部の空気が冷却風として第1収容室41に導入され、第1コイルエンド21を冷却する。冷却風は、ロータ30の通風孔33を通過してファン35を介して第2収容室42に送られる。第2収容室42において冷却風が第2コイルエンド22を冷却する。その後、冷却風は排出パイプ45から排出される。このようにして、モータ10が気体により空冷される。
【0025】
なお、本実施形態の冷却風に用いる気体は、大気から導入される空気を用いるが、これに限られず、他の気体(例えば二酸化炭素や六フッ化硫黄)を用いてもよい。また、モータ10に導入される冷却風は、モータ10の外部で熱交換器により冷却するように構成してもよい。
【0026】
次に、第2コイルエンド22の冷却について説明する。
【0027】
第1コイルエンド21、第2コイルエンド22は電流が流れることにより発熱するため、適切な冷却が必要となる。本実施形態のモータ10は、ロータ30の一方側の端部にファン35が備えられ、ファン35が発生する冷却風により、第1コイルエンド21及び第2コイルエンド22が冷却されるように構成されている。
【0028】
ファン35は、回転軸31に対して放射状に延設される複数の羽根を備え、回転軸31から径方向外側に存在する第2コイルエンド22に向かって冷却風を送風する。
【0029】
このとき、ロータ30の回転による遠心力により、冷却風は、回転軸31を中心とした旋回方向(周方向)に向かうようになる。しかしながら、冷却風が旋回流となった場合は、第2コイルエンド22の最外周付近まで十分に冷却風が到達することなく排出パイプ45へと向かうため、第2コイルエンド22が十分に冷却されない可能性がある。
【0030】
そこで、本実施形態のモータ10は、以降に説明するように、第2コイルエンド22に、冷却風の流れを制御して、第2コイルエンド22を適切に冷却するための冷却風制御部材60を備えた。
【0031】
図3は、冷却風制御部材60の斜視図を示す。
【0032】
図2で前述したように、冷却風制御部材60は、第2コイルエンド22と、ハウジング40の第2収容室42の内壁との間に介在する。
【0033】
図3に示すように、冷却風制御部材60は、円筒形状の円筒部61と、円筒部61に連接する略円盤形状の対向部62と、対向部62に立設形成される複数のガイド板63とを備える。
【0034】
円筒部61は、第2コイルエンド22の内周に当接する。対向部62は、円筒部61から第2収容室42の内壁に沿って連設され、第2コイルエンド22の軸方向の端面と対向する位置に形成される。対向部62は、第2収容室42に内壁に当接する。ガイド板63は、対向部62から第2コイルエンド22に向かって立設形成され、第2コイルエンド22における気体の流れを軸方向に整流する。
【0035】
円筒部61は、第2コイルエンド22を構成する平角線にその外周面で当接する当接部611を備える。また、円筒部61は、ファン35の軸方向外側において、内周面から回転軸中心方向に突出形成されるフランジ部612を備える。フランジ部612は、ファン35の冷却風が冷却風制御部材60の外側の第2収容室42に漏れないようにファン35の軸方向外側を閉鎖する。
【0036】
円筒部61は、当接部611から軸方向外側(第2収容室42の内壁)に向かうに従って、径方向外側に傾斜して延設し、第2収容室42の内壁に到達する位置で対向部62に連結する。円筒部61には、軸方向に沿って延設される孔であって、円筒部61の内側と外側とを連通する導風孔64が複数形成される。導風孔64は、円筒部61のフランジ部612よりも軸方向の外側に位置している。
【0037】
ガイド板63は、対向部62に円周方向に渡って所定の間隔で立設配置される。ガイド板63の内周側は、第2コイルエンド22の外周及び軸方向端面に沿った形状に形成され、ガイド板63の外周側は、第2収容室42の内壁形状に沿った形状に形成される。ガイド板63のステータ20側の端部は、第2コイルエンド22の平角線の起立形状部分付近まで延設される。
【0038】
このように構成された冷却風制御部材60を第2コイルエンド22と第2収容室42の内壁との間に介在させることにより、ファン35から径方向外側に送られた冷却風が、ロータ30の回転による遠心力で周方向に旋回することなく、第2コイルエンド22を冷却する。
【0039】
より具体的には、図2の白抜き矢印で示すように、ファンか35から送られる冷却風は、第2コイルエンド22の流路221を通過して第2コイルエンド22の径方向外側に送られる。
【0040】
冷却風制御部材60において、ガイド板63が第2コイルエンド22の外周に沿って複数配置されているので、冷却風は、周方向に旋回することなく、ガイド板63に整流されつつ、第2コイルエンド22の外周側を軸方向に進む。
【0041】
その後、冷却風は、対向部62及び円筒部61に沿って、第2コイルエンド22の軸方向外側の端面付近を経て径方向内側に進んだ後、円筒部61に形成された導風孔64から冷却風制御部材60の外側に排出され、第2収容室42の空間に送られる。
【0042】
このようにして、ファン35から送られる冷却風が、第2コイルエンド22の流路221を通過した後、第2コイルエンド22の外周形状に沿って軸方向及び径方向に流れるようになるので、第2コイルエンド22を適切に冷却できる。
【0043】
次に、冷却風制御部材60と第2コイルエンド22との関係を説明する。
【0044】
図4は、本実施形態のモータ10の説明図であり、第2コイルエンド22の内周側から観察した場合の説明図である。
【0045】
前述したように、第2コイルエンド22の根元部分は、起立した平角線と平角線との間隙により、冷却風が通過する流路221が形成されている。なお、図4に示すように、複数の平角線が径方向に同一の位置で起立している。ファン35から送られる冷却風は、この流路221を通過して、第2コイルエンド22の周囲を通過した後に、冷却風制御部材60の円筒部61の導風孔64を通過する。
【0046】
本実施形態では、各導風孔64の孔断面積(軸方向断面)の合計である総開口断面積を、第2コイルエンド22の各流路221の断面積(軸方向断面)の合計である総開口断面積よりも大きく形成する。
【0047】
このように構成することにより、冷却風制御部材60を第2コイルエンド22に設けた場合にも、ファン35から送られる冷却風の流量を制限することがなく、第2コイルエンド22を適切に冷却できる。
【0048】
また、冷却風制御部材60の当接部611は、第2コイルエンド22を構成する平角線のうち、交錯部222の最も内周であって、最もステータ20に近い側の層を構成する平角線に当接する(図4の矢視A)。そして、円筒部61において、導風孔64は、第2コイルエンド22の最もステータ20に近い側の平角線の先端まで開口するように構成される。
【0049】
このように構成することにより、第2コイルエンド22の周囲を流れる冷却風が、第2コイルエンド22の内周側の最もステータに近い側の平角線まで届くようになり、第2コイルエンド22の全体をくまなく冷却できる。
【0050】
図5は、本実施形態のモータ10の説明図であり、第2コイルエンド22の外周側から観察した場合の説明図である。
【0051】
冷却風制御部材60のガイド板63は、第2コイルエンド22の外周において、冷却風の流れを適切に導くような位置に備えられることが望ましい。
【0052】
そこで、図5に示すように、ガイド板63が備えられる位置を、第2コイルエンド22のステータ20付近の根元部分で起立した平角線の位置と略同一の位置に備える。より具体的には、冷却風制御部材60は、起立する2箇所の平角線に対して一つのガイド板63が位置するように構成されている。
【0053】
このように構成することにより、冷却風の軸方向の流れがガイド板63に邪魔されることなく第2コイルエンドの周囲を流通するので、第2コイルエンド22を適切に冷却できる。
【0054】
次に、排出パイプ45と第2コイルエンド22との関係を説明する。
【0055】
図6は、本実施形態のモータ10の説明図であり、第2コイルエンド22の軸方向外側から観察した場合の説明図である。
【0056】
排出パイプ45は、第2収容室42において、ロータ30の回転方向に対して接線方向に延設され、その入口は接線方向に向かって開口し、第2コイルエンド22よりも内周側の位置、すなわち、冷却風制御部材60の導風孔64よりも内周側の位置に配置される。
【0057】
冷却風制御部材60の導風孔64から出た冷却風は、ロータ30の回転による遠心力でロータ30の回転方向の旋回流となる(図6の矢印B)。そこで、排出パイプ45は、この旋回流の流れ方向、すなわち、ロータ30の回転方向に対して接線方向に開口することで、第2収容室42内の冷却風をスムーズにハウジング40の外部に排出することができる。
【0058】
以上説明したように、本発明の実施形態では、ロータ30とステータ20とをハウジング40に収容し、気体を用いてステータ20のコイルを冷却する回転電機としてもモータ10に関する。ステータ20は、軸方向端部から突出する円環状の第2コイルエンド22を備え、ロータ30は、軸方向の一方の端部から他方の端部に向かって気体が通過する通風孔33を有し、第2コイルエンド22は、通風孔33を通過した気体が内周側から外周側に通過する流路221を有する。第2コイルエンド22とハウジング40との間には、流路221から出た気体を整流する冷却風制御部材60が備えられ、冷却風制御部材60は、第2コイルエンド22における気体の流れを軸方向に整流するガイド板63を第2コイルエンド22の外周側に備える。
【0059】
このような構成によって、ロータ30の通風孔33から出た気体が、第2コイルエンド22の流路221を通過した後、ガイド板63により軸方向に整流されるので、冷却風を第2コイルエンド22の周囲を取り巻くように流れることができるので、第2コイルエンド22を適切に冷却することができる。
【0060】
また、ロータ30の他方の端部には、ロータ30と供回りすることで通風孔33を通過した気体を第2コイルエンド22の内側に送風するファン35が備えられる。ファン35により冷却風が第2コイルエンド22の内側に送風されるので、第2コイルエンド22を冷却することができる。
【0061】
また、ガイド板63は、周方向に所定の間隔を持って複数設けられるので、冷却風がガイド板63に整流されて、旋回方向の流れをより確実に抑制できる。
【0062】
また、冷却風制御部材60は、第2コイルエンド22の内周側に当接する円筒部61と、円筒部61からハウジング40の内壁に沿って延設され、第2コイルエンド22と対向する対向部62と、を備える。ガイド板63は、対向部62から第2コイルエンド22に向かって立設形成される。円筒部61は、ガイド板63によって整流された気体を冷却風制御部材60の外側へと排出する複数の導風孔64を有する。
【0063】
このような構成により、冷却風制御部材60が第2コイルエンド22の周囲を取り囲みながら、第2コイルエンド22の冷却風の流れを整流するので、第2コイルエンド22の全体をくまなく冷却できる。
【0064】
また、円筒部61の内周面は、ファン35の軸方向外側において、ファン35の回転軸中心に向かって突出形成されるフランジ部612を有する。フランジ部612は、ファン35の端部に触れない程度に近接して配置されることで、ファン35から出た冷却風が冷却風制御部材60の外側の第2収容室42に漏れることがない。
【0065】
また、コイルは平角線であって、第2コイルエンド22は複数の平角線が折り返されて構成される。導風孔64は、軸方向に沿って延設される孔であって、第2コイルエンド22において最も内側に存在する平角線の軸方向の先端まで延設される。
【0066】
このような構成により、導風孔64が最も内側の平角線まで開口することで、第2コイルエンド22を構成する平角線をまんべんなく冷却することができる。
回転電機。
【0067】
また、第2コイルエンド22の流路221は、複数の平角線間の隙間により形成された通路である。当該流路221は、第2コイルエンド22の周方向に沿って複数設けられる。これにより、流路221に冷却風が流通することで、第2コイルエンド22の根元部分が冷却される。
【0068】
また、ファン35が有する送風口が、流路221に対向して備えられ、送風口の軸方向幅は、第2コイルエンド22の流路221の軸方向幅と略同一である。ファン35から出た冷却風が、交錯部222に邪魔されることなく、第2コイルエンド22を通過できる。
【0069】
また、導風孔64の総開口断面積は、第2コイルエンド22の流路の総開口断面積と略同一であるので、ファン35により第2コイルエンド22に導入された冷却風が冷却風制御部材60の構造に邪魔されることなく第2コイルエンド22の周囲を通過することができる。
【0070】
また、ハウジング40には、導風孔64を通過した気体をハウジング40の外側に排気する排出パイプ45が備えられる。排出パイプ45の入口は、ロータ30の回転方向の接線方向に向かって開口しており、かつ、冷却風制御部材60の導風孔の位置よりも径方向内側に配置される。
【0071】
このような構成により、冷却風制御部材60から出て、ロータ30の回転により旋回流となった冷却風が、その流れ方向で排出パイプ45の入口に向かうため、冷却風がモータ10の外部にスムーズに排出される。
【0072】
次に、本発明の実施形態の変形例を説明する。
【0073】
図7は、本実施形態の変形例のモータ10の説明図である。
【0074】
図7に示す変形例は、モータ10に導入する冷却風を、熱交換器を用いて冷却する構成を示す。なお、モータ10の構成は図1で前述した構成と同一であるため、その説明は省略する。
【0075】
第1収容室41の導入口44には第1配管71が連結され、第2収容室42の排出パイプ45には、第2配管72が接続される。第1配管71と第2配管72との間には、熱交換器80が備えられる。
【0076】
前述のように、モータ10の駆動によりファン35が冷却風を第2コイルエンド22に送ることで、第2コイルエンド22が冷却される。
【0077】
冷却風は、排出パイプ45を介して第2配管72を通じてハウジング40の外部に排出され、第2配管72を介して熱交換器80に送られる。熱交換器80は、熱交換を行うことで冷却風の気体の温度を低下させる。
【0078】
熱交換器80により温度が低下した冷却風は、導入口44を介して、再びモータ10のハウジング40の内部(第1収容室41)に導入される。冷却風は第1収容室41内を流動して第1コイルエンド21を冷却する。冷却風は、その後、ファン35の作用により、ロータ30の通風孔33を経由して、第2収容室42に向かい、第2コイルエンド22を冷却する。
【0079】
このように、気体を冷却する熱交換器80を備えて冷却風の温度を低下させることで、モータ10内部に導入される冷却風の温度を制御することができる。
【0080】
図8は、本実施形態の別の変形例のモータ10の説明図である。
【0081】
図8に示す変形例は、図7に示す変形例に類似するが、ロータ30の一方側の端部(図中右側)にもファン36を備えることが異なる。なお、その他の構成は、図7で前述した構成と同一であるため、その説明は省略する。
【0082】
図8に示すように、ロータ30は、一方の端部にファン36を備える。ファン36は、ロータ30の回転と共に回転することにより、冷却風を、第1収容室41からロータ30の通風孔33を介して第2収容室42へと送る。第2収容室42においては、ファン35が冷却風を第2コイルエンド22に送ることで、第2コイルエンド22が冷却される。
【0083】
このような構成により、図1及び図7で前述した構成のようにロータ30の他方側の端部に一つのファン35を備えた場合と比較して、冷却風の風量を増加させることができる。
【0084】
図9は、本実施形態のさらに別の変形例のモータ10の説明図である。
【0085】
図9に示す変形例は、図8に示す変形例に類似するが、ロータ30の一方の端部のみにファン36を備え、ロータ30の他方の端部にはファンを備えないことが異なる。なお、その他の構成は、図7で前述した構成と同一であるため、その説明は省略する。
【0086】
図9に示すように、ロータ30の他方の端部には、ファン36によりロータ30の通風孔33から送られた冷却風を、径方向外側に向かうように向きを変える導風板38が備えられている。
【0087】
これにより、ロータ30の一方の端部のファン36は、ロータ30の回転と共に回転することにより、冷却風を、第1収容室41からロータ30の通風孔33を介して第2収容室42へと送る。第2収容室42においては、導風板により、冷却風を第2コイルエンド22に送ることで、第2コイルエンド22が冷却される。
【0088】
このように、ロータ30の一方側の端部のみにファン36を備え、ロータ30の他方側の端部には冷却風の向きを変える構成である導風板38を備えた。このような構成によっても、第2コイルエンド22を適切に冷却することができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態、及びその変形例について説明したが、上記実施形態及び変形例は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0090】
本実施形態のモータ10は、例えば電動自動車に搭載され、車輪を駆動する電動機として機能する。また、モータ10は、車輪の回転による駆動力を受けて発電(回生)を行なう発電機としても機能する。なお、モータ10は、自動車以外の装置、例えば各種電気機器又は産業機械の駆動装置として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10:モータ、20:ステータ、22:第2コイルエンド、30:ロータ、33:通風孔、35:ファン、36:ファン、38:導風板、40:ハウジング、41:第1収容室、42:第2収容室、44:導入口、45:排出口、60:冷却風制御部材、61:円筒部、62:対向部、63:ガイド板、64:導風孔、71:第1配管、72:第2配管、80:熱交換器、221:流路、222:交錯部、611:当接部、612:フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9