(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185437
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】IPネットワークを介したVDESメッセージ伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04L 13/00 20060101AFI20221207BHJP
H04W 80/10 20090101ALI20221207BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20221207BHJP
【FI】
H04L13/00 305B
H04W80/10
H04W4/44
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093133
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】721001258
【氏名又は名称】瀧本 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 朋樹
【テーマコード(参考)】
5K034
5K067
【Fターム(参考)】
5K034DD01
5K034EE03
5K034FF14
5K034GG05
5K034HH61
5K034SS02
5K067AA21
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】送信機と受信機との間でオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を提供する。
【解決手段】第1アプリケーションのVDESメッセージMは、複数のブロックB
1,B
2,…,B
nに分割される。末尾ブロックを除き、上記メッセージの複数のブロック毎に、上記ブロックの受け取りのダミー確認ack
1,ack
2,…,ack
nが、送信機から上記アプリケーションにローカルに返信される。送信機は、送信した前記複数のブロックが正しく受信されたことを示すメッセージD(ack
C),S(ack
C),S(ack
Cp,ack
1
tcp),U(e,B’
1,…,B’
n’,ack
C)を受信機から受信したとき、該メッセージを上記アプリケーションに送信する前に、末尾ブロックの受け取りの確認ack
nを生成する。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と受信機との間でオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法であって、
アプリケーションによって送信されたVDESメッセージ(M)は、複数のスロット(B1,B2,…,Bn)に分割され、
末尾スロットを除き、前記メッセージの複数のスロット毎に、前記スロットの受け取りのダミー確認(ack1,ack2,…,ackn)が、送信機から前記アプリケーションにローカルに返信され、
送信機は、送信された前記複数のスロットが正しく受信されたことを示すメッセージ(D(ackC),S(ackC),S(ackC,acktcp1),U(e,B’1,…,B’n’,ackC))を受信機から受信したとき、該メッセージを前記アプリケーションに送信する前に、末尾スロットの受け取りの確認(ackn)を生成することを特徴とする伝送方法。
【請求項2】
前記アプリケーションが、VDESプロトコル層を有し、
前記ACARSメッセージが、ITU-R M.2092規格に準拠し、
受け取りの確認が、ITU-R M.2092層に送信されることを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項3】
送信機が、ITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間に、第1アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第1アダプテーション層は、末尾スロットを除き、ACARSメッセージの複数のスロット毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信し、
前記ITU-R M.2092プロトコル層は、前記メッセージの複数のスロットのすべてを前記第1アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のスロットを連結し、連結したスロットを第1 IPデータグラムにカプセル化することを特徴とする請求項2に記載の伝送方法。
【請求項4】
受信機が、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間に、第2アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第2アダプテーション層は、前記複数のスロットを復元するために、前記IPデータグラムのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、前記第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のスロットを1つずつ提供するように構成され、
スロットは、1つ前のスロットの受け取りが確認された場合にだけ提供されることを特徴とする請求項3に記載の伝送方法。
【請求項5】
第2アダプテーション層は、前記複数のスロットの受け取りの複数の確認(ack1,ack2,…,ackn)のすべてを受信したとき、前記複数のスロットの受け取りの確認を第2 IPデータグラム(D(ackC))として送信機に返信することを特徴とする請求項4に記載の伝送方法。
【請求項6】
送信機が、ITU-R M.2092プロトコル層とTCP/IP層との間に、第3アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第3アダプテーション層は、末尾スロットを除き、ACARSメッセージの複数のスロット毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信し、
前記ITU-R M.2092プロトコル層は、前記メッセージの複数のスロットのすべてを前記第3アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のスロットを連結し、連結したスロットを第1 TCPセグメントにカプセル化することを特徴とする請求項2に記
載の伝送方法。
【請求項7】
受信機が、第2アプリケーションのARINC 618プロトコル層とTCP層との間に、第4アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第4アダプテーション層は、前記複数のスロットを復元するために、前記第1 TCPセグメントのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のスロットを1つずつ提供するように構成され、
スロットは、1つ前のスロットの受け取りが確認された場合にだけ提供されることを特徴とする請求項6に記載の伝送方法。
【請求項8】
第4アダプテーション層は、前記複数のスロットの受け取りの複数の確認(ack1,ack2,…,ackn)のすべてを受信したとき、前記複数のスロットの受け取りの確認(ackC)を含んだ第2 TCPセグメント(S(ackC),S(ackC,acktcp1))と、第1 TCPセグメント(acktcp1)とを送信機に返信することを特徴とする請求項7に記載の伝送方法。
【請求項9】
送信機が、ITU-R M.2092プロトコル層とUDP/IP層との間に、第5アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第5アダプテーション層は、末尾スロットを除き、ACARSメッセージの複数のスロット毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信し、
前記ITU-R M.2092プロトコル層は、前記メッセージの複数のスロットのすべてを前記第5アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のスロットを連結し、連結したスロットを第1 UDPデータグラムにカプセル化することを特徴とする請求項2に記載の伝送方法。
【請求項10】
受信機が、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とUDP層との間に、第6アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第6アダプテーション層は、前記複数のスロットを復元するために、前記第1 UDPデータグラムのペイロードをデカプセル化及び分割し、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のスロットを1つずつ提供するように構成され、
スロットは、1つ前のスロットの受け取りが確認された場合にだけ提供され、
第6アダプテーション層は、前記複数のスロットの受け取りの複数の確認(ack1,ack2,…,ackn)のすべてを受信したとき、送信機への第2ACARSメッセージ(M’)の送信を待ち、前記複数のスロットの受け取りの確認(ackC)は、第2 UDPデータグラムに挿入される前に、第2メッセージの複数のスロットに連結されることを特徴とする請求項9に記載の伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、船舶用遠隔通信分野に関し、より詳細には、VDES(VHF Data Exchange System)メッセージの伝送に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶分野では、VDESシステムを用いて、船舶と陸上管制センターとの間でデータの伝送を行う。特に、やりとりされるのは、海運会社オペレータとのVOC(Vessel Operational Control,船舶運用管制)タイプの情報、又は、海上交通管制官とのVTC(Vessel Traffic Service Center.,海上交通管制)タイプの情報、又は、航行情報支援タイプの情報である。船上と陸上との間のデータのリンクは、通常、一般的な用語「データリンク」と称される。
【0003】
VDESシステムは、さまざま伝送媒体(当分野では、媒体とも称される)、より正確には、データ伝送のためのさまざまなタイプのサブネットワーク、すなわち、MF、HF、VHF又はVDES通信衛星サブネットワークを使用する。VHF遠隔通信サブネットワークは、ポイントツーポイントリンクによる陸上の送信機/受信機との直接通信状態を可能にするが、通信範囲が比較的狭い。一方、人工衛星遠隔通信サブネットワークは、極地を除き、世界中をカバーするが、通信コストがかさむ。MF、HF及びVDES通信衛星サブネットワークは、極地をカバーする。
【0004】
通常、陸上へのデータ送信は、船上遠隔通信モジュール又はCMU(Communications Management Unit,通信管理ユニット)を用いて行われ、それらは、いくつかのパラメータに従って、最適な伝送媒体(VHF、HF、MF、VDES通信衛星)を自動的に選択する。
【0005】
しかしながら、インマルサット(登録商標)などの衛星通信媒体は、陸上との通信がますます高いスループットを要求するようになっているにもかかわらず、アクセス可用性の観点から限界に達しようとしている。さらに、送信するデータの容量増大に起因して、通信コストが海運会社の経費を圧迫している。
【0006】
この状況を打破するために、海運分野の研究者らは、VDESメッセージの転送に一般的な公衆伝送媒体を使用する方法を提案した。すなわち、船舶は、港に係留しているとき、航行しているとき、又は入港段階にあるとき、GPRSネットワーク、Wi-Fi端末又はWiMAX局を介して、船舶管理センタ又は海運会社の運用センタとの接続を確立できる。そして、VDESメッセージの伝送は、例えば、国際公開第WO2006/026632号に記載されたように、そのようなメッセージをIPデータグラムにカプセル化することによって達成される。したがって、これは、オーバーIP VDES(VDES over IP)又はVDESoIPと称される。
【0007】
船舶と海運会社の運用センタとの間でやりとりされるVDESメッセージは、これらのメッセージがIPデータグラムにカプセル化されているか否かにかかわらず、ITU-R M.2092規格に準拠していなければならない。ITU-R M.2092プロトコルは、VDESメッセージの区分を512字の有効な文字列の基本スロットとし、先のスロットの受け取り確認を受信するまでは、新たなスロットの送信を行わない。この「止まって待つ(stop and wait)」受け取り確認メカニズムは、非常に強固であるという利点はあるものの、IP伝送に対しては具合が悪い。これについては、以降で説明する。
【0008】
図1は、送信機(例えば、船舶)と受信機(例えば、海運会社の基地)との間のIPを介したVDESメッセージ伝送を概略的に示す。
【0009】
図には、ITU-R M.2092アプリケーション層と、VDESoIPと示されたアダプテーション層と、IP層とが、送信機側と受信機側との双方に図示されている。アダプテーション層は、IP層への翻訳を行う。また、船舶と、海運会社センタにメッセージをリレーする陸上局との間に、マリンインタフェースが図示されている。
【0010】
VDESメッセージMは、最大n個(n≦2250)のスロットB1,B2,…,Bnに分割される。各スロットは、最大512字の有効な文字列から成る。この分割は、送信機のITU-R M.2092層によって実行される。まず、第1スロットB1が、マリンインタフェースを介した伝送の前に、VDESoIP層によってIPデータグラムにカプセル化される。データグラムは、陸上局によって受信され、宛先IPアドレスの所までインターネット網を介してルーティングされる。スロットB1は、VDESoIP層によってデータグラムI(B1)からデカプセル化され、ITU-R M.2092層に送信される。スロットの完全性をチェックした後、ITU-R M.2092層は、確認メッセージack1(又は、受け取り確認、両者は表現の違いに過ぎない)を送信する。このメッセージは、VDESoIP層によってIPデータグラムにカプセル化される。確認メッセージは、船舶によって受信され、VDESoIP層によってデカプセル化され、次いで、ITU-R M.2092層に送信される。そして、この層が、第2スロットB2を送信する。メッセージスロット毎に、上記手順が繰り返される。
【0011】
留意すべきは、ITU-R M.2092層によって引き起こされる確認メカニズムが、VDESメッセージの転送レートに対する重大な不利益となっているということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第WO2006/026632号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、伝送のセキュリティを損なうことなく、オーバーIP VDESメッセージを伝送するためのプロトコルを提案することにある。上記プロトコルでは、それらのスループットの限界に悩まされることがない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、送信機と受信機との間でオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法として定義される。アプリケーションによって送信されたVDESメッセージは、複数のスロットに分割される。末尾スロットを除き、上記メッセージの複数のスロット毎に、上記スロットの受け取りのダミー確認が、送信機から上記アプリケーションにローカルに返信される。送信機は、送信された上記複数のスロットが正しく受信されたことを示すメッセージを受信機から受信したとき、該メッセージを上記アプリケーションに送信する前に、末尾スロットの受け取りの確認を生成する。
【0015】
典型的に、上記アプリケーションは、ITU-R M.2092プロトコル層を有し、上記VDESメッセージは、この規格に準拠し、受け取りの確認は、この層に送信される。
【0016】
第1実施態様によれば、送信機は、ITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間に、第1アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第1アダプテーション層は、末尾スロットを除き、VDESメッセージの複数のスロット毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信する。上記ITU-R M.2092プロトコル層は、上記メッセージの複数のスロットのすべてを上記第1アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のスロットを連結し、連結したスロットを第1 IPデータグラムにカプセル化する。
【0017】
対称的な方法で、受信機は、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間に、第2アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第2アダプテーション層は、上記複数のスロットを復元するために、上記IPデータグラムのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、上記第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のスロットを1つずつ提供するように構成される。スロットは、1つ前のスロットの受け取りが確認された場合にだけ提供される。
【0018】
好ましくは、第2アダプテーション層は、上記複数のスロットの受け取りの複数の確認のすべてを受信したとき、上記複数のスロットの受け取りの確認を第2 IPデータグラムとして送信機に返信する。
【0019】
第2実施態様によれば、送信機は、ITU-R M.2092プロトコル層とTCP/IP層との間に、第3アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第3アダプテーション層は、末尾スロットを除き、VDESメッセージの複数のスロット毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信する。上記ITU-R M.2092プロトコル層は、上記メッセージの複数のスロットのすべてを上記第3アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のスロットを連結し、連結したスロットを第1 TCPセグメントにカプセル化する。
【0020】
有利には、受信機は、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とTCP/IP層との間に、第4アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第4アダプテーション層は、上記複数のスロットを復元するために、上記第1 TCPセグメントのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のスロットを1つずつ提供するように構成される。スロットは、1つ前のスロットの受け取りが確認された場合にだけ提供される。
【0021】
好ましくは、第4アダプテーション層は、上記複数のスロットの受け取りの複数の確認のすべてを受信したとき、上記複数のスロットの受け取りの確認を含んだ第2 TCPセグメントと、第1 TCPセグメントとを送信機に返信する。
【0022】
第3実施態様によれば、送信機は、ITU-R M.2092プロトコル層とUDP/IP層との間に、第5アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第5アダプテーション層は、末尾スロットを除き、VDESメッセージの複数のスロット毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信する。上記ITU-R M.2092プロトコル層は、上記メッセージの複数のスロットのすべてを上記第5アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のスロットを連結し、連結したスロットを第1 UDPデータグラムにカプセル化する。
【0023】
有利には、受信機は、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とUDP層との間に、第6アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第6アダプテーション層は、上記複数のスロットを復元するために、上記第1 UDPデータグラムのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のスロットを1つずつ提供するように構成される。スロットは、1つ前のスロットの受け取りが確認された場合にだけ提供される。第6アダプテーション層は、上記複数のスロットの受け取りの複数の確認のすべてを受信したとき、送信機への第2VDESメッセージの送信を待ち、上記複数のスロットの受け取りの確認は、第2 UDPデータグラムに挿入される前に、第2メッセージの複数のスロットに連結される。
【0024】
本発明のその他の特徴及び利点は、発明の好適な実施形態及び添付の図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】当分野では既知のオーバーIP VDESメッセージを伝送するためのプロトコルを概略的に示す。
【
図2】本発明による伝送方法を実現する機能を有した、オーバーIP VDESメッセージを伝送するシステムを示す。
【
図3】本発明の一実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を概略的に示す。
【
図4A】本発明の第1変形実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を示す。
【
図4B】本発明の第2変形実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を示す。
【
図5】本発明の第3変形実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、オーバーIP VDESメッセージを送信/受信するためのシステムについて再確認を行う。本発明のより良い理解を得るために、そのようなシステムの例示的な実施形態を
図2に示す。しかしながら、当業者は、この例示的な実施形態が説明を目的としたものであり、限定を意図しないということを理解する。本発明は、あらゆる構成のVDESoIPメッセージ伝送システムに適用されてよい。
【0027】
オーバーIP VDESシステムは、3つの部分に区分できる。すなわち、船上部210と、陸上ネットワーク部220と、海運会社センタに固有の部分230とである。
【0028】
船上部は、CMU(Communications Management Unit)船舶電子モジュール211を具備する。その構成が、プロトコル層として概略的に図示されている。
【0029】
CMUモジュールは、海運会社センタ、海上交通支援施設及び海上交通管制センタ及び航行情報支援サービスとのデータ交換にそれぞれ専用のVOC及びVTC及び航行情報支援サービスアプリケーションを内蔵している。VOCタイプのデータは、ITU-R M.2092プロトコル層を介したVDESメッセージを用いて伝送される。これらのメッセージは、従来の伝送媒体212、例えば、VHF、HF、又はVDES通信衛星送信機か、又は、第1変換モジュール213かのいずれかに送信される。第1変換モジュールは、CMUに含まれていてもいなくてもよい。以下で詳細に説明されるように、この変換モジュールは、アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間で、VDESoIPと称されるプロトコルアダプテーション層を使用する。
【0030】
従来の伝送媒体が選択された場合、メッセージは、VDESネットワークの陸上局に伝送される。この局221は、ゲートウェイ223を備え、ITU-R M.2092プロトコルへの変換を実行する。ITU-R M.2092規格が、例えば、サービスプロバイダ(DSP)と海運会社運用センタとの間で、VDESメッセージを陸上へ伝送するためのプロトコルに関するものであることに留意されたい。
【0031】
IPを介した伝送が選択された場合、VDESメッセージは、ゲートウェイ213に送信される。VDESメッセージに含まれたIPデータグラムは、宛先IPアドレスの所までインターネット網を介してルーティングされる。船舶と陸上との間のリンクは、一般的な公衆遠隔通信インフラストラクチャ、例えば、GPRSネットワーク、Wi-Fi端末、Wi-MAX局などを介して確立される。
【0032】
海運会社部は、端末231を具備する。上記端末は、一方に、変換ゲートウェイを通過して、すなわち、従来の伝送媒体を介して、VDESメッセージを受信するように構成されたITU-R M.2092プロトコル層と、他方に、IPネットワークを通過したVDESメッセージを受信するように構成されたプロトコル層とを具備する。具体的には、端末231は、アダプテーション層VDESoIPに属し、スロットのデカプセル化及びVDES層618への伝送能力を有した第2変換モジュール233と、符号234で示されたVDESプロトコルアダプテーション層とを具備する。マルチプレクサ235は、ITU-R M.2092規格に従って、VDESメッセージを端末231に内蔵された複数の制御アプリケーション部VOC1,…,VOCNに向かわせる。
【0033】
本発明は、VDESoIP層の第1及び第2変換モジュールに関するものである。通常の原理は、メッセージの複数のスロットのすべてを1つのIPデータグラムに格納し、末尾のスロットの受け取り確認を除き、VDESメッセージの複数のスロットの受け取り確認をローカルにシミュレートする。そして、末尾のスロットの受け取り確認は、メッセージの複数のスロットすべての受け取り確認として用いられる。
【0034】
具体的には、
図3が、本発明の第1実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を示している。
【0035】
ITU-R M.2092アプリケーション層と、VDESoIPアダプテーション層と、船上部310用のIP層と、陸上部320とが、再び図示されている。船上部と陸上部との間のリンクは、マリンインタフェースを介して確立され、有利には、一般的な公衆遠隔通信インフラストラクチャに基づいている。
【0036】
VDESメッセージMが送信機内蔵されたアプリケーション、例えば、CMU、によって送信される場合、このメッセージは、ITU-R M.2092層によって、n個のスロットB1,…,Bnに分割される。本規格の現状ではn≦16であるが、本発明が所与のスロット数に限定されないということに留意されたい。
【0037】
第1スロットB1は、VDESoIP層に送信され、次いで、VDESoIP層は、ダミー受け取り確認ack1を返信する。それによって、ITU-R M.2092層が第2スロットB2を送信できるようになる。上記手順は、末尾から2番目のスロットBn-1が送信されるまで反復される。ITU-R M.2092層がダミー受け取り確認ackn-1を受信したとき、末尾スロットBnが送信される。しかしながら、末尾スロットに対しては、ダミーではない受け取り確認が返信される。次いで、メッセージのn個のスロットは、1つのIPデータグラムにカプセル化される合成スロットを形成するように結合される。合成スロットは、D(B1,…,Bn)と表される。このデータグラムは、その宛先IPアドレスの所までルーティングされる。部位320のIP層がインターネットの標準的なルーティング方法に対応するということに留意されたい。
【0038】
宛先IPアドレスでは、すなわち、実際には、海運会社センタでは、VDESoIPは、スロットB1,…,Bnを復元するために、分割の前に、IPデータグラムの合成スロットをデカプセル化する。次いで、第1スロットB1がITU-R M.2092アプリケーション層に送信され、その完全性がチェックされ、正しく受信できていた場合には、受け取り確認ack1がVDESoIP層に返される。上記プロセスは、スロット毎に連続して繰り返される。VDESメッセージMは、宛先アプリケーション(例えば、VOCタイプのアプリケーション)のITU-R M.2092層によって、複数のスロットB1,…,Bnから再構築される。
【0039】
VDESoIP層は、先の複数のスロットのn-1個の受け取り確認をすでに受信しているにもかかわらず提供される最後の受け取り確認acknを受信したとき、n個のスロットが正しく受信されたことを意味する合成受け取り確認メッセージackCを送信する。メッセージackCは、単純に、受け取り確認メッセージack1,…,acknの要素を結合して生成される。そして、このメッセージは、船舶のCMUモジュールのIPアドレスへルーティングされる前に、D(ackC)のようにIPデータグラムに含められる。
【0040】
CMUのVDESoIP層は、受け取り確認メッセージackCを復元し、末尾スロットacknの受け取り確認メッセージに変換する。ackCからacknへの変換は、単純に、合成メッセージの切り捨てによって行われる。ITU-R M.2092層が最後の受け取り確認acknを受信したときには、メッセージMが実際に宛先で受信されたと見なす。
【0041】
複数のスロットB1,…,Bnのうちの1つが破損したか又は宛先で受信できなかった場合、受け取り確認メッセージackCは送信されず、したがって、メッセージacknはITU-R M.2092層に送信されない。そして、この層は、所定の待機時間の後、メッセージM、すなわち、複数のスロットB1,…,Bnすべてを返信することを決定する。
【0042】
上記では、VDESメッセージの送信機が船舶のCMUであり、かつ受信機が海運会社センタである、換言すれば、通信は下り方向通信(ダウンリンク)であると仮定した。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、本法が上り方向通信(アップリンク)にも同様に適応できることは明白である。
【0043】
この実施形態によるVDESメッセージ伝送方法によって、有利には、次のスロットの送信の前に、スロットの実際の受け取り確認を待つ必要を無くすことができるということに留意されたい。さらに、メッセージを伝送するために、n個のデータグラムの代わりに、1つのIPデータグラムだけが送信されることで、マリンインタフェース上のトラフィックと、恐らくは、伝送コストとをより一層効果的に削減できるということに留意されたい。
【0044】
上記の発明の実施形態は、使用される基礎となる伝送プロトコル、特に、TCPのよう
なコネクション型であるか、又は、UDPのようなコネクションレス型であるかを考慮していない。
【0045】
続いて、以下では、両シチュエーションについて説明する。
【0046】
図4Aは、第1変形実施例を示す。この場合、VDESメッセージ伝送方法は、標準的なTCP転送プロトコルを使用する。TCP/IPプロトコルスタックが、送信機側及び受信機側に示される。TCP層が、送信機と宛先との間の接続を確立及び維持するということ、及び、TCPデータグラムの適切な受信を保証するためにTCP層自身の受け取り確認メカニズムを使用するということに留意されたい。
【0047】
この変形例がTCPトランスポート層にいかなる修正も要求せず、したがって、実際にはVDESoIPと称される層が、ITU-R M.2092アプリケーション層とTCPトランスポート層とのアダプテーションを行う。具体的には、すでに記載したダミー受け取り確認メカニズムに従って、ITU-R M.2092層によって届けられた複数のスロットB1,…,Bnは、TCPセグメントに結合及びカプセル化される。TCP接続が確立されれば、S(B1,…,Bn)と表されるTCPセグメントは、宛先TCPソケットに送信される。当然ながら、TCPセグメントの送信は、当業者には既知の方法で、IPデータグラムへの組み込むを伴う。
【0048】
TCPセグメントが宛先TCPソケットによって受信されたとき、TCPプロトコルによって提供されたように、受け取りの確認acktcp1が送信機に返信されるVDESoIP層からITU-R M.2092層への複数のスロットの配信は、すでに、
図2を参照して説明されたので、ここでは繰り返さない。
【0049】
VDESoIP層は、ITU-R M.2092層からの受け取りの確認ack1~acknを受信したとき、受け取りの合成確認ackCをTCP層に送信する。TCP層は、S(ackC)と表されるTCPセグメントとして、受け取りの合成確認を送信機のTCPソケットに送信する。ついで、CMUのTCP層によってセグメントS(ackC)が受信されたとき、acktcp2と表される受け取りの確認は、TCPプロトコルに従って、陸上に返信される。次いで、受信の確認は、すでに説明したように、末尾スロットを確認するメッセージacknに変換される。
【0050】
この変形実施例によって、現在のTCP/IPプロトコルスタック上で
図3の実施形態を直接実施することが可能となる。
【0051】
しかしながら、マリンインタフェース上の4つの別のTCPセグメント、すなわち、S(B1,…,Bn)、acktcp1、S(ackC)、及びacktcp2の伝送を必要とすることに留意されたい。
【0052】
図4Bは、先に記載した実施形態の第2変形実施形態を示す。この第2変形実施形態には、マリンインタフェースを介した送信のTCPセグメントの数を削減可能とする。
【0053】
具体的には、第2変形実施形態は、第1変形実施形態とは異なり、受け取り確認acktcp1が独立して送信されない。この第2変形実施形態は、TCP層がVDESoIP層から合成受け取り確認ackCを受信するまで、S(B1,…,Bn)の受け取りの確認の送信を遅らせることによって、又は、ITU-R M.2092層によって複数のスロットB1,…,Bnを処理するための時間Δτが、n=16となる最長の場合に、受け取りの確認を生成するために必要な時間よりも短いか否かを確認することによって、達成される。処理時間Δτは、プロセッサの適切な選択によって、より効率的な圧縮アルゴリズムによって
(すなわち、スロットの数及びサイズを減少させることによって)、又はさらに高速のエラーチェックアルゴリズムによって、短縮できる。
【0054】
いかなる場合でも、合成受け取り確認ackCは、1つのTCPセグメント中のS(B1,…,Bn)の受け取りの確認S(ackC,acktcp1)として送信される。CMUの対応するTCPポートによってこのセグメントが受信されたとき、受け取り確認acktcp2が、陸上に返信される。受け取り確認プロセスの残りの部分については、第1変形実施形態のそれと同様である。結局のところ、3つのTCPセグメント、すなわち、S(B1,…,Bn)、S(ackC,acktcp1)、及びacktcp2だけが、送信されるVDESメッセージのためにインタフェースを通過する。
【0055】
図5は、第3実施形態を示す。この場合、VDESメッセージ伝送方法は、いかなる特別な受け取り確認メカニズムも有さない転送プロトコル、例えば、UDPプロトコル、を使用する。UDPプロトコルがデータグラムの正確な転送を保証しないコネクションレス型プロトコルであることに留意されたい。
【0056】
この変形実施形態の基礎となる着想は、下り側経路を介してすでに受信されているメッセージの受け取りの確認を返信するために、上り側経路を介したVDESメッセージの送信を待つことにある。対照的な方法で、上り方向経路を介してすでに受信されているメッセージの受け取りの確認を返信するために、下り方向経路を介したメッセージの転送を待つ。下り方向経路上のVDESメッセージMの伝送の場合について、
図5に示す。
【0057】
メッセージMの伝送は、
図4にすでに説明されており、トランスポート層については、ここでは簡単にしか説明しない。換言すれば、複数のスロットB1,…,Bnは、VDESoIP層に送信され、VDESoIP層は、それらを連結し、UDPデータグラムにカプセル化する。次いで、U(B1,…,Bn)と表されるUDPデータグラムは、標準的な方法で、IPデータグラムに組み込まれる。IPデータグラムが宛先で受信されたとき、データグラムU(B1,…,Bn)は、IPデータグラムから抽出され、複数のスロットB1,…,Bnが、UDP層によってITU-R M.2092層に連続して届けられる。VDESoIP層によって受信された受け取りの確認ack1,…,acknは、この層によって、受け取りの合成確認ackCに変換され、待機状態とされる。
【0058】
海運会社センタの陸上局が上り方向経路を介してVDESメッセージM’、例えば、メッセージMへの応答、を送信したとき、受け取りの確認ackCは、UDPデータグラムにメッセージM’の複数のスロットに含められる。具体的には、メッセージM’は、ITU-R M.2092層によって、n’≦16である複数のスロットB’1,…,B’n’に分割される。スロットB’1は、VDESoIP層に送信され、VDESoIP層は、ダミー受信確認ack’1を返す。上記プロセスは、ダミー受信確認が送信されない末尾スロットを除き、以降のスロットに対して繰り返される。このことは、ダウンリンクに対して、すでに説明した。VDESoIP層は、複数のスロットB’1,…,B’n’を保有しているとき、受け取りの確認が保留中であるか否かをチェックする。保留中の場合、受け取りの確認は、同一のUDPデータグラムに複数のスロットB’1,…,B’n’を含んでいる。受け取りの確認の積み込みは、場合により、指数部ヘッダでのデータグラムへの信号化で行われる。
【0059】
有利には、n個のスロットB1,…,BnがVDESoIP層で受信されたとき、タイムアウト期間τmaxでタイマがロードされる。タイムアウト期間τmaxの間にメッセージM’がVDESoIP層によって送信された場合、受け取りの確認ackCは、先の説明の通り、メッセージM’の複数のスロットを含んでいる。一方で、タイムアウト期間が経過した場合、上り方向経路を介したメッセージM’の送信は未だ無く、受け取りの確認が、別個の
UDPデータグラムによって送信される。タイムアウト期間は、適切に、特に、下り方向経路上のVDESメッセージ伝送バッファの使用率に応じて、決定される。したがって、高い使用率に対しては、ITU-R M.2092層による新たなメッセージの送信に遅れが生じないように、間隔τmaxは、比較的短くなるように選択される。
【0060】
図5に示された場合では、受け取りの合成確認ackCは、U(e,B’1,…,B’n’,ackC)と表されるデータグラムとして、複数のスロットB’1,…,B’nを連結している。ここで、eは、上記のヘッダである。そして、当然ながら、このUDPデータグラムは、IPデータグラムに組み込まれ、船舶のCMUへルーティングされる。宛先において、データグラムU(e,B’1,…,B’n’,ackC)は、IPデータグラムから抽出される。次いで、VDESoIP層は、ヘッダeの存在によって受け取りの確認の存在を認識する。複数のスロットB’1,…,B’nのほかに、受信確認ackCもまた、ITU-R M.2092層へ届けられる前に、抽出及び分割される。また、ヘッダeは、上り方向経路上のVDESメッセージバッファの使用率を示す。下り方向経路についても同様に、タイマは、複数のスロットB’1,…,B’nが受信されるとすぐに、タイムアウト期間τ’maxでロードされる。この期間は、ヘッダに示された使用率によって決まる。上記の通り、タイムアウト期間は、メッセージM’の受け取りの確認に対する最大待ち時間を定義する。受け取りの確認ack’Cは、下り方向経路上の新たなメッセージを含んだUDPデータグラムU(e’,B1,…,Bn,ack’C)によって伝送されるか、又は、当初の通り、タイムアウト期間が経過したときに別個のUDPデータグラムによって伝送される。データグラムU(e’,B’1,…,B’n,ack’C)は、有利には、下り方向経路上の伝送バッファの状態を示すヘッダを有する。
【0061】
最終的には、送信されたVDESメッセージに対して、1つのデータグラム、すなわち、下り方向経路のメッセージのU(e’,B1,…,Bn,ack’C)と、上り方向経路のメッセージのU(e,B’1,…,B’n,ackC)とが、マリンインタフェースを介して、通常通り伝送される。
【符号の説明】
【0062】
210 船上部
211 船舶電子モジュール
212 従来の伝送媒体
213 第1変換モジュール
220 陸上ネットワーク部
221 VDESネットワーク陸上局
223 ゲートウェイ
230 海運会社センタ部
231 海運会社端末
233 第2変換モジュール
234 VDESプロトコルアダプテーション層
235 マルチプレクサ
【手続補正書】
【提出日】2021-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と受信機との間でオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法であって、
アプリケーションによって送信されたVDESメッセージ(M)は、複数のブロック(B1,B2,…,Bn)に分割され、
末尾ブロックを除き、前記メッセージの複数のブロック毎に、前記ブロックの受け取りのダミー確認(ack1,ack2,…,ackn)が、送信機から前記アプリケーションにローカルに返信され、
送信機は、送信された前記複数のブロックが正しく受信されたことを示すメッセージ(D(ackC),S(ackC),S(ackC,acktcp1),U(e,B’1,…,B’n’,ackC))を受信機から受信したとき、該メッセージを前記アプリケーションに送信する前に、末尾ブロックの受け取りの確認(ackn)を生成することを特徴とする伝送方法。
【請求項2】
前記アプリケーションが、VDESプロトコル層を有し、
前記VDESメッセージが、ITU-R M.2092規格に準拠し、
受け取りの確認が、ITU-R M.2092層に送信されることを特徴とする請求項1に記載の伝送方法。
【請求項3】
送信機が、ITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間に、第1アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第1アダプテーション層は、末尾ブロックを除き、VDESメッセージの複数のブロック毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信し、
前記ITU-R M.2092プロトコル層は、前記メッセージの複数のブロックのすべてを前記第1アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のブロックを連結し、連結したブロックを第1 IPデータグラムにカプセル化することを特徴とする請求項2に記載の伝送方法。
【請求項4】
受信機が、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間に、第2アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第2アダプテーション層は、前記複数のブロックを復元するために、前記IPデータグラムのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、前記第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のブロックを1つずつ提供するように構成され、
ブロックは、1つ前のブロックの受け取りが確認された場合にだけ提供されることを特徴とする請求項3に記載の伝送方法。
【請求項5】
第2アダプテーション層は、前記複数のブロックの受け取りの複数の確認(ack1,ack2,…,ackn)のすべてを受信したとき、前記複数のブロックの受け取りの確認を第2 IPデータグラム(D(ackC))として送信機に返信することを特徴とする請求項4に記載の伝送方法。
【請求項6】
送信機が、ITU-R M.2092プロトコル層とTCP/IP層との間に、第3アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第3アダプテーション層は、末尾ブロックを除き、VDESメッセージの複数のブロック毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信し、
前記ITU-R M.2092プロトコル層は、前記メッセージの複数のブロックのすべてを前記第3アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のブロックを連結し、連結したブロックを第1 TCPセグメントにカプセル化することを特徴とする請求項2に記載の伝送方法。
【請求項7】
受信機が、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とTCP層との間に、第4アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第4アダプテーション層は、前記複数のブロックを復元するために、前記第1 TCPセグメントのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のブロックを1つずつ提供するように構成され、
ブロックは、1つ前のブロックの受け取りが確認された場合にだけ提供されることを特徴とする請求項6に記載の伝送方法。
【請求項8】
第4アダプテーション層は、前記複数のブロックの受け取りの複数の確認(ack1,ack2,…,ackn)のすべてを受信したとき、前記複数のブロックの受け取りの確認(ackC)を含んだ第2 TCPセグメント(S(ackC),S(ackC,acktcp1))と、第1 TCPセグメント(acktcp1)とを送信機に返信することを特徴とする請求項7に記載の伝送方法。
【請求項9】
送信機が、ITU-R M.2092プロトコル層とUDP/IP層との間に、第5アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第5アダプテーション層は、末尾ブロックを除き、VDESメッセージの複数のブロック毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信し、
前記ITU-R M.2092プロトコル層は、前記メッセージの複数のブロックのすべてを前記第5アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のブロックを連結し、連結したブロックを第1 UDPデータグラムにカプセル化することを特徴とする請求項2に記載の伝送方法。
【請求項10】
受信機が、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とUDP層との間に、第6アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有し、
前記第6アダプテーション層は、前記複数のブロックを復元するために、前記第1 UDPデータグラムのペイロードをデカプセル化及び分割し、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のブロックを1つずつ提供するように構成され、
ブロックは、1つ前のブロックの受け取りが確認された場合にだけ提供され、
第6アダプテーション層は、前記複数のブロックの受け取りの複数の確認(ack1,ack2,…,ackn)のすべてを受信したとき、送信機への第2VDESメッセージ(M’)の送信を待ち、前記複数のブロックの受け取りの確認(ackC)は、第2 UDPデータグラムに挿入される前に、第2メッセージの複数のブロックに連結されることを特徴とする請求項9に記載の伝送方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、船舶用遠隔通信分野に関し、より詳細には、VDES(VHF Data Exchange System)メッセージの伝送に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶分野では、アナログ送信機/受信機などを用いて、船舶と陸上管制センターとの間でデータの伝送を行う。特に、やりとりされるのは、海運会社オペレータとのVOC(Vessel Operational Control,船舶運用管制)タイプの情報、又は、海上交通管制官とのVTC(Vessel Traffic Service Center.,海上交通管制)タイプの情報、又は、航行情報支援タイプの情報である。船上と陸上との間のデータのリンクは、通常、一般的な用語「データリンク」と称される。
【0003】
通常、陸上へのデータ送信は、音声無線機やファクシミリといった個別の無線設備を用いて行われ、それらは、いくつかのパラメータに従って、最適な伝送媒体(VHF、HF、MF、インマルサット(登録商標))や無線設備を任意で選択する必要がある。
【0004】
しかしながら、インマルサット(登録商標)などの衛星通信媒体は、陸上との通信がますます高いスループットを要求するようになっているにもかかわらず、アクセス可用性の観点から限界に達しようとしている。さらに、送信するデータの容量増大に起因して、通信コストが海運会社の経費を圧迫している。
【0005】
この状況を打破するために、海運分野の研究者らは、メッセージをVDESを用いて伝送する方法を提案した。VDESは、さまざま伝送媒体(当分野では、媒体とも称される)、より正確には、データ伝送のためのさまざまなタイプのサブネットワーク、すなわち、VHF又はVDES通信衛星サブネットワークを使用する。VHF遠隔通信サブネットワークは、ポイントツーポイントリンクによる陸上の送信機/受信機との直接通信状態を可能にするが、通信範囲が比較的狭い。一方、VDES通信衛星サブネットワークは、極地を含む、世界中をカバーするが、通信コストがかさむ。
【0006】
しかしながら、VDESを含んだ船舶無線設備は船舶の航行中以外での運用が制限されており、継続的なメッセージの伝送が困難となっている。
【0007】
VDESメッセージの伝送は、例えば、国際公開第WO2006/026632号に記載されたように、そのようなメッセージをIPデータグラムにカプセル化することによって達成することができる。
すなわち、船舶が、港に係留しているとき、航行しているとき、又は入港段階にあるとき、船舶無線設備運用上の制限を受けることがない、GPRSネットワーク、Wi-Fi局又はWiMAX局を介して、船舶管理センタ又は海運会社の運用センタとの接続を確立できる。したがって、これは、オーバーIP VDES(VDES over IP)又はVDESoIPと称することができる。
【0008】
船舶と海運会社の運用センタとの間でやりとりされるVDESメッセージは、これらのメッセージがIPデータグラムにカプセル化されているか否かにかかわらず、ITU-R M.2092規格に準拠していなければならない。ITU-R M.2092プロトコルは、VDESメッセージの区分を512字の有効な文字列の基本ブロックとし、先のブロックの受け取り確認を受信するまでは、新たなブロックの送信を行わない。この「止まって待つ(stop and wait)」受け取り確認メカニズムは、非常に強固であるという利点はあるものの、IP伝送に対しては具合が悪い。これについては、以降で説明する。
【0009】
図1は、送信機(例えば、船舶)と受信機(例えば、海運会社の基地)との間のIPを介したVDESメッセージ伝送を概略的に示す。
図には、ITU-R M.2092アプリケーション層と、VDESoIPと示されたアダプテーション層と、IP層とが、送信機側と受信機側との双方に図示されている。アダプテーション層は、IP層への翻訳を行う。また、船舶と、海運会社センタにメッセージをリレーする陸上局との間に、マリンインタフェースが図示されている。
【0010】
VDESメッセージMは、最大n個(n≦2250)のブロックB1,B2,…,Bnに分割される。各ブロックは、最大512字の有効な文字列から成る。この分割は、送信機のITU-R M.2092層によって実行される。まず、第1ブロックB1が、マリンインタフェースを介した伝送の前に、VDESoIP層によってIPデータグラムにカプセル化される。データグラムは、陸上局によって受信され、宛先IPアドレスの所までインターネット網を介してルーティングされる。ブロックB1は、VDESoIP層によってデータグラムI(B1)からデカプセル化され、ITU-R M.2092層に送信される。ブロックの完全性をチェックした後、ITU-R M.2092層は、確認メッセージack1(又は、受け取り確認、両者は表現の違いに過ぎない)を送信する。このメッセージは、VDESoIP層によってIPデータグラムにカプセル化される。確認メッセージは、船舶によって受信され、VDESoIP層によってデカプセル化され、次いで、ITU-R M.2092層に送信される。そして、この層が、第2ブロックB2を送信する。メッセージブロック毎に、上記手順が繰り返される。
【0011】
留意すべきは、ITU-R M.2092層によって引き起こされる確認メカニズムが、VDESメッセージの転送レートに対する重大な不利益となっているということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第WO2006/026632号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、船舶と陸上間、船舶と船舶間の通信において伝送のセキュリティを損なうことなく、オーバーIP VDESメッセージを伝送するためのプロトコルを提案することにある。上記プロトコルでは、船舶において無線設備の運用上の制限に悩まされることがない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、送信機と受信機との間でオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法として定義される。アプリケーションによって送信されたVDESメッセージは、複数のブロックに分割される。末尾ブロックを除き、上記メッセージの複数のブロック毎に、上記ブロックの受け取りのダミー確認が、送信機から上記アプリケーションにローカルに返信される。送信機は、送信された上記複数のブロックが正しく受信されたことを示すメッセージを受信機から受信したとき、該メッセージを上記アプリケーションに送信する前に、末尾ブロックの受け取りの確認を生成する。
【0015】
典型的に、上記アプリケーションは、ITU-R M.2092プロトコル層を有し、上記VDESメッセージは、この規格に準拠し、受け取りの確認は、この層に送信される。
【0016】
第1実施態様によれば、送信機は、ITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間に、第1アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第1アダプテーション層は、末尾ブロックを除き、VDESメッセージの複数のブロック毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信する。上記ITU-R M.2092プロトコル層は、上記メッセージの複数のブロックのすべてを上記第1アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のブロックを連結し、連結したブロックを第1 IPデータグラムにカプセル化する。
【0017】
対称的な方法で、受信機は、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間に、第2アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第2アダプテーション層は、上記複数のブロックを復元するために、上記IPデータグラムのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、上記第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のブロックを1つずつ提供するように構成される。ブロックは、1つ前のブロックの受け取りが確認された場合にだけ提供される。
【0018】
好ましくは、第2アダプテーション層は、上記複数のブロックの受け取りの複数の確認のすべてを受信したとき、上記複数のブロックの受け取りの確認を第2 IPデータグラムとして送信機に返信する。
【0019】
第2実施態様によれば、送信機は、ITU-R M.2092プロトコル層とTCP/IP層との間に、第3アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第3アダプテーション層は、末尾ブロックを除き、VDESメッセージの複数のブロック毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信する。上記ITU-R M.2092プロトコル層は、上記メッセージの複数のブロックのすべてを上記第3アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のブロックを連結し、連結したブロックを第1 TCPセグメントにカプセル化する。
【0020】
有利には、受信機は、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とTCP/IP層との間に、第4アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第4アダプテーション層は、上記複数のブロックを復元するために、上記第1 TCPセグメントのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のブロックを1つずつ提供するように構成される。ブロックは、1つ前のブロックの受け取りが確認された場合にだけ提供される。
【0021】
好ましくは、第4アダプテーション層は、上記複数のブロックの受け取りの複数の確認のすべてを受信したとき、上記複数のブロックの受け取りの確認を含んだ第2 TCPセグメントと、第1 TCPセグメントとを送信機に返信する。
【0022】
第3実施態様によれば、送信機は、ITU-R M.2092プロトコル層とUDP/IP層との間に、第5アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第5アダプテーション層は、末尾ブロックを除き、VDESメッセージの複数のブロック毎に、ダミー確認をITU-R M.2092プロトコル層に返信する。上記ITU-R M.2092プロトコル層は、上記メッセージの複数のブロックのすべてを上記第5アダプテーション層から受信したとき、受信した複数のブロックを連結し、連結したブロックを第1 UDPデータグラムにカプセル化する。
【0023】
有利には、受信機は、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とUDP層との間に、第6アダプテーション層と称されるプロトコルアダプテーション層を有する。上記第6アダプテーション層は、上記複数のブロックを復元するために、上記第1 UDPデータグラムのうちの有効なデータをデカプセル化及び分割し、第2アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層に、複数のブロックを1つずつ提供するように構成される。ブロックは、1つ前のブロックの受け取りが確認された場合にだけ提供される。第6アダプテーション層は、上記複数のブロックの受け取りの複数の確認のすべてを受信したとき、送信機への第2VDESメッセージの送信を待ち、上記複数のブロックの受け取りの確認は、第2 UDPデータグラムに挿入される前に、第2メッセージの複数のブロックに連結される。
【0024】
本発明のその他の特徴及び利点は、発明の好適な実施形態及び添付の図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】当分野では既知のオーバーIP VDESメッセージを伝送するためのプロトコルを概略的に示す。
【
図2】本発明による伝送方法を実現する機能を有した、オーバーIP VDESメッセージを伝送するシステムを示す。
【
図3】本発明の一実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を概略的に示す。
【
図4A】本発明の第1変形実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を示す。
【
図4B】本発明の第2変形実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を示す。
【
図5】本発明の第3変形実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、オーバーIP VDESメッセージを送信/受信するためのシステムについて再確認を行う。本発明のより良い理解を得るために、そのようなシステムの例示的な実施形態を
図2に示す。しかしながら、当業者は、この例示的な実施形態が説明を目的としたものであり、限定を意図しないということを理解する。本発明は、あらゆる構成のVDESoIPメッセージ伝送システムに適用されてよい。
【0027】
オーバーIP VDESシステムは、3つの部分に区分できる。すなわち、船上部210と、陸上ネットワーク部220と、海運会社センタに固有の部分230とである。
【0028】
船上部は、船上通信モジュール/CMU(Communications Management Unit,通信管理ユニット)211を具備する。その構成が、プロトコル層として概略的に図示されている。
【0029】
CMUモジュールは、海運会社センタ、海上交通支援施設及び海上交通管制センタ及び航行情報支援サービスとのデータ交換にそれぞれ専用のVOC及びVTC及び航行情報支援サービスアプリケーションを内蔵している。VOCタイプのデータは、ITU-R M.2092プロトコル層を介したVDESメッセージを用いて伝送される。これらのメッセージは、従来の伝送媒体212、例えば、UHF、VHF、HF、MF又はVDES衛星送信機か、又は、第1変換モジュール213かのいずれかに送信される。第1変換モジュールは、CMUに含まれていてもいなくてもよい。以下で詳細に説明されるように、この変換モジュールは、アプリケーションのITU-R M.2092プロトコル層とIP層との間で、VDESoIPと称されるプロトコルアダプテーション層を使用する。
【0030】
従来の伝送媒体が選択された場合、メッセージは、VDESネットワークの陸上局に伝送される。この局221は、ゲートウェイ223を備え、ITU-R M.2092プロトコルへの変換を実行する。ITU-R M.2092規格が、例えば、サービスプロバイダ(DSP)と海運会社運用センタとの間で、VDESメッセージを陸上へ伝送するためのプロトコルに関するものであることに留意されたい。
【0031】
IPを介した伝送が選択された場合、VDESメッセージは、ゲートウェイ213に送信される。VDESメッセージに含まれたIPデータグラムは、宛先IPアドレスの所までインターネット網を介してルーティングされる。船舶と陸上との間のリンクは、一般的な公衆遠隔通信インフラストラクチャ、例えば、GPRSネットワーク、Wi-Fi局、Wi-MAX局、インマルサット(登録商標)などの通信衛星局などを介して確立される。
【0032】
海運会社部は、端末231を具備する。上記端末は、一方に、変換ゲートウェイを通過して、すなわち、従来の伝送媒体を介して、VDESメッセージを受信するように構成されたITU-R M.2092プロトコル層と、他方に、IPネットワークを通過したVDESメッセージを受信するように構成されたプロトコル層とを具備する。具体的には、端末231は、アダプテーション層VDESoIPに属し、ブロックのデカプセル化及びVDES層618への伝送能力を有した第2変換モジュール233と、符号234で示されたVDESプロトコルアダプテーション層とを具備する。マルチプレクサ235は、ITU-R M.2092規格に従って、VDESメッセージを端末231に内蔵された複数の制御アプリケーション部VOC1,…,VOCnに向かわせる。
【0033】
本発明は、VDESoIP層の第1及び第2変換モジュールに関するものである。通常の原理は、メッセージの複数のブロックのすべてを1つのIPデータグラムに格納し、末尾のブロックの受け取り確認を除き、VDESメッセージの複数のブロックの受け取り確認をローカルにシミュレートする。そして、末尾のブロックの受け取り確認は、メッセージの複数のブロックすべての受け取り確認として用いられる。
【0034】
具体的には、
図3が、本発明の第1実施形態によるオーバーIP VDESメッセージを伝送するための方法を示している。
【0035】
ITU-R M.2092アプリケーション層と、VDESoIPアダプテーション層と、船上部310用のIP層と、陸上部320とが、再び図示されている。船上部と陸上部との間のリンクは、マリンインタフェースを介して確立され、有利には、一般的な公衆遠隔通信インフラストラクチャに基づいている。
【0036】
VDESメッセージMが送信機内蔵されたアプリケーション、例えば、CMU、によって送信される場合、このメッセージは、ITU-R M.2092層によって、n個のブロックB1,…,Bnに分割される。本規格の現状ではn≦16であるが、本発明が所与のブロック数に限定されないということに留意されたい。
【0037】
第1ブロックB1は、VDESoIP層に送信され、次いで、VDESoIP層は、ダミー受け取り確認ack1を返信する。それによって、ITU-R M.2092層が第2ブロックB2を送信できるようになる。上記手順は、末尾から2番目のブロックBn-1が送信されるまで反復される。ITU-R M.2092層がダミー受け取り確認ackn-1を受信したとき、末尾ブロックBnが送信される。しかしながら、末尾ブロックに対しては、ダミーではない受け取り確認が返信される。次いで、メッセージのn個のブロックは、1つのIPデータグラムにカプセル化される合成ブロックを形成するように結合される。合成ブロックは、D(B1,…,Bn)と表される。このデータグラムは、その宛先IPアドレスの所までルーティングされる。部位320のIP層がインターネットの標準的なルーティング方法に対応するということに留意されたい。
【0038】
宛先IPアドレスでは、すなわち、実際には、海運会社センタでは、VDESoIPは、ブロックB1,…,Bnを復元するために、分割の前に、IPデータグラムの合成ブロックをデカプセル化する。次いで、第1ブロックB1がITU-R M.2092アプリケーション層に送信され、その完全性がチェックされ、正しく受信できていた場合には、受け取り確認ack1がVDESoIP層に返される。上記プロセスは、ブロック毎に連続して繰り返される。VDESメッセージMは、宛先アプリケーション(例えば、VOCタイプのアプリケーション)のITU-R M.2092層によって、複数のブロックB1,…,Bnから再構築される。
【0039】
VDESoIP層は、先の複数のブロックのn-1個の受け取り確認をすでに受信しているにもかかわらず提供される最後の受け取り確認acknを受信したとき、n個のブロックが正しく受信されたことを意味する合成受け取り確認メッセージackCを送信する。メッセージackCは、単純に、受け取り確認メッセージack1,…,acknの要素を結合して生成される。そして、このメッセージは、船舶のCMUモジュールのIPアドレスへルーティングされる前に、D(ackC)のようにIPデータグラムに含められる。
【0040】
CMUのVDESoIP層は、受け取り確認メッセージackCを復元し、末尾ブロックacknの受け取り確認メッセージに変換する。ackCからacknへの変換は、単純に、合成メッセージの切り捨てによって行われる。ITU-R M.2092層が最後の受け取り確認acknを受信したときには、メッセージMが実際に宛先で受信されたと見なす。
【0041】
複数のブロックB1,…,Bnのうちの1つが破損したか又は宛先で受信できなかった場合、受け取り確認メッセージackCは送信されず、したがって、メッセージacknはITU-R M.2092層に送信されない。そして、この層は、所定の待機時間の後、メッセージM、すなわち、複数のブロックB1,…,Bnすべてを返信することを決定する。
【0042】
上記では、VDESメッセージの送信機が船舶のCMUであり、かつ受信機が海運会社センタである、換言すれば、通信は下り方向通信(ダウンリンク)であると仮定した。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、本法が上り方向通信(アップリンク)にも同様に適応できることは明白である。
【0043】
この実施形態によるVDESメッセージ伝送方法によって、有利には、次のブロックの送信の前に、ブロックの実際の受け取り確認を待つ必要を無くすことができるということに留意されたい。さらに、メッセージを伝送するために、n個のデータグラムの代わりに、1つのIPデータグラムだけが送信されることで、マリンインタフェース上のトラフィックと、恐らくは、伝送コストとをより一層効果的に削減できるということに留意されたい。
【0044】
上記の発明の実施形態は、使用される基礎となる伝送プロトコル、特に、TCPのようなコネクション型であるか、又は、UDPのようなコネクションレス型であるかを考慮していない。
【0045】
続いて、以下では、両シチュエーションについて説明する。
【0046】
図4Aは、第1変形実施例を示す。この場合、VDESメッセージ伝送方法は、標準的なTCP転送プロトコルを使用する。TCP/IPプロトコルスタックが、送信機側及び受信機側に示される。TCP層が、送信機と宛先との間の接続を確立及び維持するということ、及び、TCPデータグラムの適切な受信を保証するためにTCP層自身の受け取り確認メカニズムを使用するということに留意されたい。
【0047】
この変形例がTCPトランスポート層にいかなる修正も要求せず、したがって、実際にはVDESoIPと称される層が、ITU-R M.2092アプリケーション層とTCPトランスポート層とのアダプテーションを行う。具体的には、すでに記載したダミー受け取り確認メカニズムに従って、ITU-R M.2092層によって届けられた複数のブロックB1,…,Bnは、TCPセグメントに結合及びカプセル化される。TCP接続が確立されれば、S(B1,…,Bn)と表されるTCPセグメントは、宛先TCPソケットに送信される。当然ながら、TCPセグメントの送信は、当業者には既知の方法で、IPデータグラムへの組み込むを伴う。
【0048】
TCPセグメントが宛先TCPソケットによって受信されたとき、TCPプロトコルによって提供されたように、受け取りの確認acktcp1が送信機に返信されるVDESoIP層からITU-R M.2092層への複数の
ブロックの配信は、すでに、
図2を参照して説明されたので、ここでは繰り返さない。
【0049】
VDESoIP層は、ITU-R M.2092層からの受け取りの確認ack1~acknを受信したとき、受け取りの合成確認ackCをTCP層に送信する。TCP層は、S(ackC)と表されるTCPセグメントとして、受け取りの合成確認を送信機のTCPソケットに送信する。ついで、CMUのTCP層によってセグメントS(ackC)が受信されたとき、acktcp2と表される受け取りの確認は、TCPプロトコルに従って、陸上に返信される。次いで、受信の確認は、すでに説明したように、末尾ブロックを確認するメッセージacknに変換される。
【0050】
この変形実施例によって、現在のTCP/IPプロトコルスタック上で
図3の実施形態を直接実施することが可能となる。
【0051】
しかしながら、マリンインタフェース上の4つの別のTCPセグメント、すなわち、S(B1,…,Bn)、acktcp1、S(ackC)、及びacktcp2の伝送を必要とすることに留意されたい。
【0052】
図4Bは、先に記載した実施形態の第2変形実施形態を示す。この第2変形実施形態には、マリンインタフェースを介した送信のTCPセグメントの数を削減可能とする。
【0053】
具体的には、第2変形実施形態は、第1変形実施形態とは異なり、受け取り確認acktcp1が独立して送信されない。この第2変形実施形態は、TCP層がVDESoIP層から合成受け取り確認ackCを受信するまで、S(B1,…,Bn)の受け取りの確認の送信を遅らせることによって、又は、ITU-R M.2092層によって複数のブロックB1,…,Bnを処理するための時間Δτが、n=16となる最長の場合に、受け取りの確認を生成するために必要な時間よりも短いか否かを確認することによって、達成される。処理時間Δτは、プロセッサの適切な選択によって、より効率的な圧縮アルゴリズムによって(すなわち、ブロックの数及びサイズを減少させることによって)、又はさらに高速のエラーチェックアルゴリズムによって、短縮できる。
【0054】
いかなる場合でも、合成受け取り確認ackCは、1つのTCPセグメント中のS(B1,…,Bn)の受け取りの確認S(ackC,acktcp1)として送信される。CMUの対応するTCPポートによってこのセグメントが受信されたとき、受け取り確認acktcp2が、陸上に返信される。受け取り確認プロセスの残りの部分については、第1変形実施形態のそれと同様である。結局のところ、3つのTCPセグメント、すなわち、S(B1,…,Bn)、S(ackC,acktcp1)、及びacktcp2だけが、送信されるVDESメッセージのためにインタフェースを通過する。
【0055】
図5は、第3実施形態を示す。この場合、VDESメッセージ伝送方法は、いかなる特別な受け取り確認メカニズムも有さない転送プロトコル、例えば、UDPプロトコル、を使用する。UDPプロトコルがデータグラムの正確な転送を保証しないコネクションレス型プロトコルであることに留意されたい。
【0056】
この変形実施形態の基礎となる着想は、下り側経路を介してすでに受信されているメッセージの受け取りの確認を返信するために、上り側経路を介したVDESメッセージの送信を待つことにある。対照的な方法で、上り方向経路を介してすでに受信されているメッセージの受け取りの確認を返信するために、下り方向経路を介したメッセージの転送を待つ。下り方向経路上のVDESメッセージMの伝送の場合について、
図5に示す。
【0057】
メッセージMの伝送は、
図4にすでに説明されており、トランスポート層については、ここでは簡単にしか説明しない。換言すれば、複数の
ブロックB1,…,Bnは、VDESoIP層に送信され、VDESoIP層は、それらを連結し、UDPデータグラムにカプセル化する。次いで、U(B1,…,Bn)と表されるUDPデータグラムは、標準的な方法で、IPデータグラムに組み込まれる。IPデータグラムが宛先で受信されたとき、データグラムU(B1,…,Bn)は、IPデータグラムから抽出され、複数の
ブロックB1,…,Bnが、UDP層によってITU-R M.2092層に連続して届けられる。VDESoIP層によって受信された受け取りの確認ack1,…,acknは、この層によって、受け取りの合成確認ackCに変換され、待機状態とされる。
【0058】
海運会社センタの陸上局が上り方向経路を介してVDESメッセージM’、例えば、メッセージMへの応答、を送信したとき、受け取りの確認ackCは、UDPデータグラムにメッセージM’の複数のブロックに含められる。具体的には、メッセージM’は、ITU-R M.2092層によって、n’≦16である複数のブロックB’1,…,B’n’に分割される。ブロックB’1は、VDESoIP層に送信され、VDESoIP層は、ダミー受信確認ack’1を返す。上記プロセスは、ダミー受信確認が送信されない末尾ブロックを除き、以降のブロックに対して繰り返される。このことは、ダウンリンクに対して、すでに説明した。VDESoIP層は、複数のブロックB’1,…,B’n’を保有しているとき、受け取りの確認が保留中であるか否かをチェックする。保留中の場合、受け取りの確認は、同一のUDPデータグラムに複数のブロックB’1,…,B’n’を含んでいる。受け取りの確認の積み込みは、場合により、指数部ヘッダでのデータグラムへの信号化で行われる。
【0059】
有利には、n個のブロックB1,…,BnがVDESoIP層で受信されたとき、タイムアウト期間τmaxでタイマがロードされる。タイムアウト期間τmaxの間にメッセージM’がVDESoIP層によって送信された場合、受け取りの確認ackCは、先の説明の通り、メッセージM’の複数のブロックを含んでいる。一方で、タイムアウト期間が経過した場合、上り方向経路を介したメッセージM’の送信は未だ無く、受け取りの確認が、別個の
UDPデータグラムによって送信される。タイムアウト期間は、適切に、特に、下り方向経路上のVDESメッセージ伝送バッファの使用率に応じて、決定される。したがって、高い使用率に対しては、ITU-R M.2092層による新たなメッセージの送信に遅れが生じないように、間隔τmaxは、比較的短くなるように選択される。
【0060】
図5に示された場合では、受け取りの合成確認ackCは、U(e,B’1,…,B’n’,ackC)と表されるデータグラムとして、複数の
ブロックB’1,…,B’nを連結している。ここで、eは、上記のヘッダである。そして、当然ながら、このUDPデータグラムは、IPデータグラムに組み込まれ、船舶のCMUへルーティングされる。宛先において、データグラムU(e,B’1,…,B’n’,ackC)は、IPデータグラムから抽出される。次いで、VDESoIP層は、ヘッダeの存在によって受け取りの確認の存在を認識する。複数の
ブロックB’1,…,B’nのほかに、受信確認ackCもまた、ITU-R M.2092層へ届けられる前に、抽出及び分割される。また、ヘッダeは、上り方向経路上のVDESメッセージバッファの使用率を示す。下り方向経路についても同様に、タイマは、複数の
ブロックB’1,…,B’nが受信されるとすぐに、タイムアウト期間τ’maxでロードされる。この期間は、ヘッダに示された使用率によって決まる。上記の通り、タイムアウト期間は、メッセージM’の受け取りの確認に対する最大待ち時間を定義する。受け取りの確認ack’Cは、下り方向経路上の新たなメッセージを含んだUDPデータグラムU(e’,B1,…,Bn,ack’C)によって伝送されるか、又は、当初の通り、タイムアウト期間が経過したときに別個のUDPデータグラムによって伝送される。データグラムU(e’,B’1,…,B’n,ack’C)は、有利には、下り方向経路上の伝送バッファの状態を示すヘッダを有する。
【0061】
最終的には、送信されたVDESメッセージに対して、1つのデータグラム、すなわち、下り方向経路のメッセージのU(e’,B1,…,Bn,ack’C)と、上り方向経路のメッセージのU(e,B’1,…,B’n,ackC)とが、マリンインタフェースを介して、通常通り伝送される。
【符号の説明】
【0062】
210 船上部
211 船上通信モジュール/CMU(Communications Management Unit,通信管理ユニット)
212 従来の伝送媒体
213 第1変換モジュール
220 陸上ネットワーク部
221 VDESネットワーク陸上局
223 ゲートウェイ
230 海運会社センタ部
231 海運会社端末
233 第2変換モジュール
234 VDESプロトコルアダプテーション層
235 マルチプレクサ
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】