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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185464
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20221207BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20221207BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221207BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20221207BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01L29/78 652Q
H01L27/06 102A
H01L29/78 301D
H01L29/78 301V
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 652N
H01L29/06 301V
H01L29/06 301F
H01L29/06 301G
H01L21/60 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093167
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 勅子
(72)【発明者】
【氏名】波多 俊幸
【テーマコード(参考)】
5F044
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F044AA01
5F044FF06
5F048AC10
5F048BA02
5F048BB05
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC12
5F048BD07
5F048BF01
5F048BF02
5F140AA30
5F140AB06
5F140AC21
5F140AC23
5F140BA01
5F140BA16
5F140BD05
5F140BF01
5F140BF04
5F140CA10
5F140CC02
(57)【要約】
【課題】大電流を流す用途に使用される半導体装置においてオン抵抗を低減する。
【解決手段】半導体装置10は、平面視においてゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの間に位置し、かつ、複数のワイヤW3を介して、ソース端子STと電気的に接続されたソース端子用リードSLを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体チップと、
平面視において前記半導体チップの第1辺に沿って配置された複数のリードと、
前記半導体チップと前記複数のリードとを電気的に接続する複数の接続部材と、
を含み、
前記半導体チップは、
ゲート端子と、
センス端子と、
前記ゲート端子と前記センス端子との間に位置する部分を含むフォース端子と、
を有し、
前記複数のリードは、
前記複数の接続部材のうちのゲート端子用接続部材を介して、前記ゲート端子と電気的に接続されたゲート端子用リードと、
前記複数のワイヤのうちのセンス端子用接続部材を介して、前記センス端子と電気的に接続されたセンス端子用リードと、
平面視において前記ゲート端子用リードと前記センス端子用リードとの間に位置し、かつ、前記複数の接続部材のうちのフォース端子用接続部材を介して、前記フォース端子と電気的に接続されたフォース端子用リードと、
を有する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記フォース端子用接続部材は、前記第1辺が延在する第1方向と直交する第2方向に延在する直線形状から構成されている、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記フォース端子用接続部材は、前記第1辺が延在する第1方向と直交する第2方向にだけ延在する形状から構成されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記フォース端子用接続部材は、金(Au)または銅(Cu)から成るワイヤである、半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記ゲート端子用接続部材と前記ゲート端子との接合点の数は、1つであり、
前記センス端子用接続部材と前記センス端子との接合点の数は、1つであり、
前記フォース端子用接続部材と前記フォース端子との接合点の数は、2つ以上である、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記フォース端子用接続部材の数は、前記ゲート端子用接続部材および前記センス端子用接続部材のそれぞれの数よりも多い、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、300Aの電流を流すことが可能に構成されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記フォース端子用接続部材は、アルミニウム(Al)から成るリボンである、半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記ゲート端子用接続部材と前記ゲート端子との接合点の数は、1つであり、
前記センス端子用接続部材と前記センス端子との接合点の数は、1つであり、
前記フォース端子用接続部材と前記フォース端子との接合点の数は、2つ以上である、半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、300Aの電流を流すことが可能に構成されている、半導体装置。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記フォース端子用接続部材は、銅(Cu)から成るクリップである、半導体装置。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置において、
前記ゲート端子用接続部材と前記ゲート端子との接合点の数は、1つであり、
前記センス端子用接続部材と前記センス端子との接合点の数は、1つであり、
前記フォース端子用接続部材と前記フォース端子との接合点の数は、1つである、半導体装置。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、300Aの電流を流すことが可能に構成されている、半導体装置。
【請求項14】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体チップには、パワーMOSFETが形成され、
前記センス端子は、ケルビン端子であり、
前記フォース端子は、ソース端子である、半導体装置。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置において、
前記半導体チップは、
主面と、
前記主面とは反対側の裏面と、
を有し、
前記パワーMOSFETのゲート電極と電気的に接続された前記ゲート端子は、前記主面上に形成され、
前記パワーMOSFETのソース領域と電気的に接続された前記センス端子は、前記主面上に形成され、
前記パワーMOSFETの前記ソース領域と電気的に接続された前記フォース端子は、前記主面上に形成され、
前記パワーMOSFETのドレイン電極は、前記裏面に形成されている、半導体装置。
【請求項16】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記複数のリードは、前記第1辺側にだけ配置されている、半導体装置。
【請求項17】
ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体チップと、
平面視において前記半導体チップの第1辺に沿って配置された複数のリードと、
前記半導体チップと前記複数のリードとを電気的に接続する複数の接続部材と、
を含み、
前記半導体チップは、
ゲート端子と、
複数の機能に使用可能な多機能端子と、
前記ゲート端子と前記多機能端子との間に位置する部分を含むフォース端子と、
を有し、
前記複数のリードは、
前記複数の接続部材のうちのゲート端子用接続部材を介して、前記ゲート端子と電気的に接続されたゲート端子用リードと、
前記複数の接続部材のうちの多機能端子用接続部材を介して、前記多機能端子と電気的に接続された多機能端子用リードと、
平面視において前記ゲート端子用リードと前記多機能端子用リードとの間に位置し、かつ、前記複数の接続部材のうちのフォース端子用接続部材を介して、前記フォース端子と電気的に接続されたフォース端子用リードと、
を有し、
前記半導体チップにパワーMOSFETが形成されている場合、前記多機能端子はケルビン端子であり、
前記半導体チップに双方向サイリスタが形成されている場合、前記多機能端子は前記フォース端子であり、かつ、前記多機能端子用リードは前記フォース端子用リードと同じ機能を有する別のリードである、半導体装置。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体装置において、
前記フォース端子用接続部材は、前記第1辺が延在する第1方向と直交する第2方向に延在する直線形状から構成されている、半導体装置。
【請求項19】
請求項12に記載の半導体装置において、
前記フォース端子用接続部材は、前記第1辺が延在する第1方向と直交する第2方向にだけ延在する形状から構成されている、半導体装置。
【請求項20】
請求項19に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、300Aの電流を流すことが可能に構成されている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、インバータの構成要素となる半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-294384号公報(特許文献1)には、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が形成された半導体装置のオン抵抗を低減する技術が記載されている。
【0003】
特開2009-231805号公報(特許文献2)にも、パワーMOSFETが形成された半導体装置のオン抵抗を低減する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-294384号公報
【特許文献2】特開2009-231805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、パワー半導体素子が形成された半導体装置に大電流を流すことが検討されている。例えば、3相インバータに使用される半導体装置に300A程度の電流を流すことが検討されている。この点に関し、半導体装置に大電流を流す場合、半導体装置に存在するオン抵抗が半導体装置の性能に大きな影響を及ぼす。したがって、大電流を流す用途に使用される半導体装置においては、オン抵抗を低減する工夫が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態における半導体装置は、平面視においてゲート端子用リードとセンス端子用リードとの間に位置し、かつ、複数の接続部材のうちのフォース端子用接続部材を介して、フォース端子と電気的に接続されたフォース端子用リードを有する。
【0007】
また、他の実施の形態における半導体装置は、平面視においてゲート端子用リードと多機能端子用リードとの間に位置し、かつ、複数の接続部材のうちのフォース端子用接続部材を介して、フォース端子と電気的に接続されたフォース端子用リードを有する。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インバータ回路および3相誘導モータを含む回路構成を示す回路図である。
図2】インバータ回路を実現する実装レイアウト例を示す模式図である。
図3】半導体装置の内部構造を模式的に示す図である。
図4】ケルビン端子用リードを設けない場合のパワーMOSFETの接続構成を模式的に示す回路図である。
図5】ケルビン端子用リードを設ける場合のパワーMOSFETの接続構成を模式的に示す回路図である。
図6】実施の形態における半導体装置のパッケージ構成を示す模式図である。
図7】パワーMOSFETの一例であるnチャネル型のトレンチゲート型パワーMOSFETを示す半導体チップの要部断面図である。
図8】変形例1における半導体装置の模式的な構成を示す図である。
図9】変形例2における半導体装置の模式的な構成を示す図である。
図10】変形例3における半導体装置の模式的な構成を示す図である。
図11】変形例4における半導体装置の模式的な構成を示す図である。
図12】変形例5における半導体装置の模式的な構成を示す図である。
図13】実施の形態における技術的思想を具現化したワイヤの配置を模式的に示す図である。
図14】関連技術の一例を具現化したワイヤの配置を模式的に示す図である。
図15】関連技術の他の一例を具現化したワイヤの配置を模式的に示す図である。
図16】半導体チップの占有面積を一定面積とした場合、本実施の形態における技術的思想を具現化したワイヤを配置する構成を模式的に示す図である。
図17】関連技術を具現化したワイヤを配置する構成を模式的に示す図である。
図18】双方向サイリスタの回路図である。
図19】双方向サイリスタの構造を模式的に示す図である。
図20】これまでの双方向サイリスタを含む半導体装置の構成を示す図である。
図21】これまでのパワーMOSFETを含む半導体装置の構成を示す図である。
図22】双方向サイリスタが形成された半導体装置に関し、実施の形態における複数のリードの配置レイアウトを適用した半導体装置の一例を示す図である。
図23】双方向サイリスタが形成された半導体装置に関し、実施の形態における複数のリードの配置レイアウトを適用した半導体装置の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0011】
<3相インバータ回路の構成例>
本実施の形態における半導体装置は、例えば、エアコンなどに使用される3相誘導モータの駆動回路に使用されるものである。具体的に、この駆動回路には、インバータ回路が含まれ、このインバータ回路は直流電力を交流電力に変換する機能を有する回路である。
【0012】
図1は、インバータ回路および3相誘導モータを含むモータ回路の構成を示す回路図である。図1において、モータ回路は、3相誘導モータMTおよびインバータ回路INVを有している。3相誘導モータMTは、位相の異なる3相の電圧により駆動するように構成されている。具体的に、3相誘導モータMTでは、位相が120度ずれたU相、V相、W相と呼ばれる3相交流を利用して導体であるロータRTの回りに回転磁界を発生させる。この場合、ロータRTの回りを磁界が回転することになる。このことは、導体であるロータRTを横切る磁束が変化することを意味する。この結果、導体であるロータRTに電磁誘導が生じて、ロータRTに誘導電流が流れる。そして、回転磁界中で誘導電流が流れるということは、フレミングの左手の法則によって、ロータRTに力が加わることを意味し、この力によって、ロータRTが回転することになる。このように3相誘導モータMTでは、3相交流を利用することにより、ロータRTを回転させることができることがわかる。つまり、3相誘導モータMTでは、3相交流が必要となる。そこで、モータ回路では、直流から交流を作り出すインバータ回路INVを利用することにより、3相誘導モータに3相交流を供給している。
【0013】
以下に、このインバータ回路INVの構成例について説明する。
【0014】
図1に示すように、例えば、インバータ回路INVには、3相に対応してスイッチング素子Q1とダイオードFWDが設けられている。すなわち、インバータ回路INVでは、例えば、図1に示すようなスイッチング素子Q1とダイオードFWDを逆並列接続した構成により、インバータ回路INVの構成要素を実現している。例えば、図1において、第1レグLG1の上アームおよび下アーム、第2レグLG2の上アームおよび下アーム、第3レグLG3の上アームおよび下アームのそれぞれは、スイッチング素子Q1とダイオードFWDを逆並列接続した構成要素から構成されることになる。
【0015】
言い換えれば、インバータ回路INVでは、正電位端子PTと3相誘導モータMTの各相(U相、V相、W相)との間にスイッチング素子Q1とダイオードFWDが逆並列に接続されており、かつ、3相誘導モータMTの各相と負電位端子NTとの間にもスイッチング素子Q1とダイオードFWDが逆並列に接続されている。つまり、単相ごとに2つのスイッチング素子Q1と2つのダイオードFWDが設けられており、3相で6つのスイッチング素子Q1と6つのダイオードFWDが設けられている。そして、個々のスイッチング素子Q1のゲート電極には、ゲート制御回路GCCが接続されており、このゲート制御回路GCCによって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が制御されるようになっている。このように構成されたインバータ回路INVにおいて、ゲート制御回路GCCでスイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御することにより、直流電力を3相交流電力に変換して、この3相交流電力を3相誘導モータMTに供給するようになっている。
【0016】
<スイッチング素子の種類>
例えば、インバータ回路INVに使用されるスイッチング素子Q1としては、パワーMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を挙げることができる。
【0017】
<ダイオードの必要性>
上述したように、インバータ回路INVには、スイッチング素子Q1が使用されるが、このスイッチング素子Q1として、IGBTを使用する場合、IGBTと逆並列接続されるダイオードFWDを設ける必要がある。
【0018】
単に、スイッチング素子Q1によってスイッチ機能を実現する観点からは、スイッチング素子Q1としてのIGBTは必要であるが、ダイオードFWDを設ける必要性はないものと考えられる。この点に関し、例えば、負荷がモータである場合のように、インバータ回路INVに接続される負荷にインダクタンスが含まれている場合には、ダイオードFWDを設ける必要があるのである。以下に、この理由について説明する。
【0019】
ダイオードFWDは、負荷がインダクタンスを含まない純抵抗である場合、還流するエネルギーがないため不要である。しかし、負荷にモータのようなインダクタンスを含む回路が接続されている場合、オンしているスイッチとは逆方向に負荷電流が流れるモードがある。すなわち、負荷にインダクタンスが含まれている場合、負荷のインダクタンスからインバータ回路INVへエネルギーが戻ることがある(電流が逆流することがある)。
【0020】
このとき、IGBT単体では、この還流電流を流し得る機能をもたないので、IGBTと逆並列にダイオードFWDを接続する必要がある。すなわち、インバータ回路INVにおいて、モータ制御のように負荷にインダクタンスを含む場合、IGBTをターンオフしたとき、インダクタンスに蓄えられたエネルギー(1/2LI)を必ず放出しなければならない。ところが、IGBT単体では、インダクタンスに蓄えられたエネルギーを開放するための還流電流を流すことができない。そこで、このインダクタンスに蓄えられた電気エネルギーを還流するため、IGBTと逆並列にダイオードFWDを接続する。つまり、ダイオードFWDは、インダクタンスに蓄えられた電気エネルギーを開放するために還流電流を流すという機能を有している。以上のことから、インダクタンスを含む負荷に接続されるインバータ回路においては、スイッチング素子Q1としてIGBTを採用する場合、IGBTと逆並列にダイオードFWDを設ける必要性があることがわかる。このダイオードFWDは、フリーホイールダイオードと呼ばれる。
【0021】
これに対し、スイッチング素子Q1として、パワーMOSFETを使用する場合、原理的に、パワーMOSFETと逆並列接続されるフリーホイールダイオードを設ける必要はない。なぜなら、パワーMOSFETのデバイス構造では、必然的に、pn接合ダイオードであるボディダイオードが寄生的に形成される結果、このボディダイオードがフリーホイールダイオードとして機能するからである。
【0022】
ただし、スイッチング素子Q1として、パワーMOSFETを使用する場合であっても、pn接合ダイオードよりも順方向電圧降下の小さなショットキーダイオードをフリーホイールダイオードとして使用することもある。
【0023】
本実施の形態における技術的思想は、スイッチング素子Q1にIGBTやパワーMOSFETのいずれを使用する構成においても適用可能であるが、以下の説明では、スイッチング素子Q1をパワーMOSFETから構成する場合の例を取り挙げる。そして、フリーホイールダイオードの有無は、本実施の形態における技術的思想の説明には直接関係しないことから、以下では、簡単のため、フリーホイールダイオードは存在しないものとして、本実施の形態における技術的思想を説明することにする。
【0024】
<インバータ回路の実装レイアウト例>
図2は、インバータ回路を実現する実装レイアウト例を示す模式図である。
【0025】
図2において、マザーボードには、電源配線VLと配線WL1~配線WL3とグランド配線GLとが形成されている。電源配線VLには、電源電位が供給される一方、グランド配線GLには、グランド電位(接地電位)が供給される。また、配線WL1は3相誘導モータのU相と接続され、配線WL2は3相誘導モータのV相と接続され、配線WL3は3相誘導モータのW相と接続される。
【0026】
図2に示すように、電源配線VLと配線WL1との間には、半導体装置SA1が接続される一方、配線WL1とグランド配線GLとの間には、半導体装置SA2が接続されている。すなわち、半導体装置SA1と半導体装置SA2は、電源配線VLとグランド配線GLとの間で直列接続されており、図1に示すインバータ回路INVの第1レグLG1を構成している。つまり、半導体装置SA1は、第1レグLG1の上アームを構成しているとともに、半導体装置SA2は、第1レグLG1の下アームを構成している。そして、半導体装置SA1および半導体装置SA2のそれぞれは、スイッチング素子Q1として機能するパワーMOSFETが形成された半導体チップを有している。
【0027】
同様に、電源配線VLと配線WL2との間には、半導体装置SA3が接続される一方、配線WL2とグランド配線GLとの間には、半導体装置SA4が接続されている。すなわち、半導体装置SA3と半導体装置SA4は、電源配線VLとグランド配線GLとの間で直列接続されており、図1に示すインバータ回路INVの第2レグLG2を構成している。つまり、半導体装置SA3は、第2レグLG2の上アームを構成しているとともに、半導体装置SA4は、第2レグLG2の下アームを構成している。そして、半導体装置SA3および半導体装置SA4のそれぞれは、スイッチング素子Q1として機能するパワーMOSFETが形成された半導体チップを有している。
【0028】
さらに、電源配線VLと配線WL3との間には、半導体装置SA5が接続される一方、配線WL3とグランド配線GLとの間には、半導体装置SA6が接続されている。すなわち、半導体装置SA5と半導体装置SA6は、電源配線VLとグランド配線GLとの間で直列接続されており、図1に示すインバータ回路INVの第3グLG3を構成している。つまり、半導体装置SA5は、第3レグLG3の上アームを構成しているとともに、半導体装置SA6は、第3レグLG3の下アームを構成している。そして、半導体装置SA5および半導体装置SA6のそれぞれは、スイッチング素子Q1として機能するパワーMOSFETが形成された半導体チップを有している。
【0029】
以上のようにして、電源配線VL1、配線WL1~配線WL3およびグランド配線GLが形成されたマザーボード上に6つの半導体装置SA1~半導体装置SA6を図2に示すように配置することにより、インバータ回路に対応した実装レイアウトを実現できる。
【0030】
<「TOパッケージ」の利点>
本実施の形態では、例えば、図2に示すように、パワーMOSFETが形成された半導体チップを有する半導体装置SAのパッケージ構造体として、「TO(Transistor Outline)パッケージ」が採用されている。ここで、「TOパッケージ」とは、平面視において、半導体装置の第1辺にだけ複数のリードが配置されたパッケージ構造体として定義される。この点において、「TOパッケージ」は、平面視において、半導体装置の第1辺だけでなく、第1辺とは反対側の第2辺にも複数のリードが配置される「SON(Small Outline Non-Leaded)パッケージ」や「SOP(Small Outline Package)パッケージ」とは異なり、さらには、半導体装置の4つの辺すべてに複数のリードが配置される「QFN(Quad Flat Non-leaded)パッケージ」や「QFP(Quad Flat Package)パッケージ」とも異なる。本実施の形態で採用されている「TOパッケージ」によれば、例えば、図2に示すように、半導体装置SAの第1辺にだけ複数のリードが配置されているため、上述したその他のパッケージよりも、マザーボード上の配線の引き回しがしやすくなる利点が得られる。すなわち、「TOパッケージ」を採用することによって、簡素化したレイアウトでインバータ回路に対応した実装レイアウトを実現できる(図2参照)。
【0031】
本発明者は、上述した利点を有する「TOパッケージ」から半導体装置SAを構成することを前提として、半導体装置SAのオン抵抗を低減する観点から検討した結果、「TOパッケージ」では、オン抵抗を低減することを実現する観点から、以下に示す改善の余地が存在することを新規に見出したので、この点について説明する。
【0032】
<改善の余地>
図3は、半導体装置SAの内部構造を模式的に示す図である。
【0033】
図3において、例えば、樹脂からなる封止体MRの内部には、ダイパッドDPが配置されている。このダイパッドDP上には、半導体チップCHPが搭載されている。この半導体チップCHPには、パワーMOSFETが形成されている。半導体チップCHPの表面には、パワーMOSFETのゲート電極と電気的に接続されたゲート端子GTと、パワーMOSFETのソース領域と電気的に接続されたケルビン端子KTおよびソース端子STが形成されている。一方、図3では図示されないが、半導体チップCHPの裏面には、パワーMOSFETのドレイン電極が形成されており、このドレイン電極がダイパッドDPと電気的に接続されている。
【0034】
次に、封止体MRの辺S1には、封止体MRから突出するように複数のリードが配置されている。具体的に、複数のリードには、ゲート端子用リードGLと、ケルビン端子用リードKLと、ソース端子用リードSLとが含まれている。
【0035】
ゲート端子用リードGLは、ゲート端子用接続部材であるワイヤW1を介してゲート端子GTと電気的に接続されている。また、ケルビン端子用リードKLは、ケルビン端子用接続部材であるワイヤW2を介してケルビン端子KTと電気的に接続されている。さらに、ソース端子用リードSLが、ソース端子用接続部材である複数のワイヤW3でソース端子STと電気的に接続されている。
【0036】
このようにして、「TOパッケージ」である半導体装置SAが構成されている。
【0037】
ここで、図3に示すように、半導体装置SAでは、ゲート端子用リードGLの隣りにケルビン端子用リードKLが配置されている。この結果、ソース端子STとソース端子用リードSLとの相対位置がずれることによって、ソース端子STとソース端子用リードSLとを接続するワイヤW3が屈曲することになる。すなわち、半導体装置SAでは、屈曲したワイヤW3を使用して、ソース端子STとソース端子用リードSLとが接続される。このような屈曲したワイヤW3を使用する場合、ソース端子STとソース端子用リードSLとを最短距離で接続できないことによってワイヤW3の抵抗値の上昇を招く。
【0038】
この点に関し、本発明者は、半導体装置SAに300A程度の大電流を流すことを検討しており、この場合、屈曲したワイヤW3による抵抗値の増加がオン抵抗の低減を図る上で無視できない影響を及ぼすことを新規に見出した。特に、屈曲したワイヤW3は、大電流を流すソース端子STとソース端子用リードSLとを接続しており、屈曲したワイヤW3自体に大電流が流れる。この結果、屈曲に起因するわずかな抵抗値の上昇でも大きな電圧降下およびジュール熱の発生を招くことから、屈曲したワイヤW3は、大電流を流す用途の半導体装置SAに適用すると、無視できない性能低下を招く要因となる。このように、「TOパッケージ」である半導体装置SAには、オン抵抗の低減に代表される性能向上を図る観点から改善の余地が存在する。
【0039】
そこで、本発明者は、「TOパッケージ」である半導体装置SAにおいて、屈曲したワイヤW3を用いなければならない原因について詳細に検討したので、この点を説明する。
【0040】
図3に示すように、屈曲したワイヤW3を用いなければならない原因は、ゲート端子用リードGLの隣りにケルビン端子用リードKLが配置されている結果、ソース端子用リードSLをソース端子STの配置位置に対応した辺S1の中央部に配置できないのが主原因であると考えられる。この点に関し、なぜゲート端子用リードGLの隣りにケルビン端子用リードKLを配置する必要があるのかを説明する前に、まず、ケルビン端子用リードKLを設ける技術的意義について説明する。
【0041】
<<ケルビン端子用リードを設ける技術的意義>>
図4は、ケルビン端子用リードKLを設けない場合のパワーMOSFET100の接続構成を模式的に示す回路図である。図4に示すように、パワーMOSFET100は、ダイパッドDPとソース端子用リードSLとの間に設けられており、「抵抗R」は、例えば、ワイヤW3による抵抗値を含むパッケージ抵抗を表している。そして、パワーMOSFET100のゲート電極は、ゲート端子用リードGLと電気的に接続されている。
【0042】
ここで、ソース端子用リードSLとゲート端子用リードGLとの間の電圧V1が、例えば、図1に示すゲート制御回路GCCに入力される。そして、ゲート制御回路GCCは、入力した電圧V1に基づいて、パワーMOSFET100のスイッチング動作を制御する。このとき、ゲート制御回路GCCによるパワーMOSFET100の制御を安定して実施するためには、電圧V1が図4に示す電圧VGSと等しいことが要求される。
【0043】
ところが、図4に示す接続構成では、ダイパッドDPとソース端子用リードSLとの間に大きなドレイン電流IDが流れる。これにより、パッケージ抵抗(「抵抗R」)にも大電流が流れることに起因して大きな電圧降下が生じる。このことは、電圧V1が電圧VGSとは大きく異なる値となることを意味する。したがって、図4に示すパワーMOSFET100の接続構成では、ゲート制御回路GCCによるパワーMOSFET100の制御が不安定になるおそれがある。
【0044】
これに対し、図5は、ケルビン端子用リードKLを設ける場合のパワーMOSFET100の接続構成を模式的に示す回路図である。図5に示す接続構成では、パワーMOSFET100のソース(ソース端子)と接続されるソース端子用リードSLだけでなく、パワーMOSFET100のソース(ケルビン端子)と接続されるケルビン端子用リードKLも設けられている。この結果、図5に示すように、ダイパッドDPとソース端子用リードSLとの間に大きなドレイン電流IDが流れても、ケルビン端子用リードKLにはドレイン電流IDが流れない。このことは、ケルビン端子用リードKLとゲート端子用リードGLとの間の電圧V1が、パッケージ抵抗(「抵抗R」)にドレイン電流IDが流れることによる電圧降下の影響を受けないことを意味する。これにより、ケルビン端子用リードKLとゲート端子用リードGLとの間の電圧V1は電圧VGSとほぼ等しくなる。
【0045】
したがって、図5に示すパワーMOSFET100の接続構成では、ゲート制御回路GCCによるパワーMOSFET100の制御を安定化させることができる。すなわち、ケルビン端子用リードKLは、ドレイン電流IDに起因する電圧降下の影響を受けることなく、電圧VGSとほぼ等しい値の電圧V1をゲート制御回路GCCに入力させることによって、ゲート制御回路GCCによるパワーMOSFET100の制御を安定化させるという技術的意義を有しているといえる。
【0046】
<<ケルビン端子用リードをゲート端子用リードの隣りに配置する理由>>
上述したケルビン端子用リードKLを設ける技術的意義を考慮すると、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの間の電圧V1を電圧VGSにほぼ等しくするためには、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの間の寄生抵抗が小さいことが望ましい。このような理由から、ケルビン端子用リードKLをゲート端子用リードGLの隣りに配置しているのである。そして、「TOパッケージ」では、ゲート端子用リードGLの隣りにケルビン端子用リードKLを配置する結果、ソース端子STとソース端子用リードSLとを接続するワイヤW3が屈曲してしまうのである。
【0047】
この点に関し、「TOパッケージ」以外の上述したパッケージでは、複数のリードが配置される辺が第1辺だけでなく他の辺も存在することから、たとえ、ゲート端子用リードGLの隣りにケルビン端子用リードKLを配置する必要があっても、例えば、第1辺とは異なる第2辺に互いに隣り合うゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとを配置しながら、第1辺にソース端子用リードSLを配置することよって、ソース端子用リードSLを屈曲させなくてもよい構成を容易に実現できる。ただし、「TOパッケージ」以外の上述したパッケージではマザーボードでの配線の引き回しが複雑になってしまう。
【0048】
これに対し、「TOパッケージ」では、複数のリードが配置されている辺が辺S1に限定されていることから、マザーボードでの配線の引き回しが容易となる利点が得られる。一方、「TOパッケージ」では、複数のリードが配置されている辺が辺S1に限定されているために、ゲート端子用リードGLの隣りにケルビン端子用リードKLを配置すると、ソース端子用リードSLをソース端子STの配置位置に対応した辺S1の中央部に配置できない。このことから、ケルビン端子用リードKLが邪魔となって、ソース端子STとソース端子用リードSLとを最短距離のワイヤW3で接続することが困難となり、ワイヤW3を屈曲させる必要がある。すなわち、ワイヤW3の屈曲という改善の余地は、ケルビン端子用リードKLを含む「TOパッケージ」で顕在化する改善の余地である。
【0049】
そこで、本実施の形態では、ケルビン端子用リードKLを含む「TOパッケージ」で顕在化するワイヤW3の屈曲に起因する改善の余地を克服する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
【0050】
<半導体装置のパッケージ構成>
図6は、本実施の形態における半導体装置10のパッケージ構成を示す模式図である。
【0051】
図6において、半導体装置10は、「TOパッケージ」であり、例えば、樹脂からなる封止体MRの内部に配置されたダイパッドDPを有する。そして、このダイパッドDP上には、半導体チップCHPが搭載されている。半導体チップCHPには、パワーMOSFETが形成されている。この半導体チップCHPの表面には、パワーMOSFETのゲート電極と電気的に接続されたゲート端子GTと、パワーMOSFETのソース領域と電気的に接続されたソース端子STと、パワーMOSFETのソース領域と電気的に接続されたケルビン端子KTが形成されている。このとき、図6に示すように、平面視において、ソース端子STは、ゲート端子GTとケルビン端子KTとの間に位置する部分を含む。一方、図6では図示されないが、半導体チップCHPの裏面には、ドレイン電極が形成されており、このドレイン電極はダイパッドDPと電気的に接続されている。
【0052】
ソース端子STは、電流を流す目的の「フォース端子」であり、ケルビン端子KTは、電圧を検出する目的の「センス端子」である。
【0053】
次に、図6に示すように、封止体MRの辺S1には、封止体MRから突出するように複数のリードが配置されている。言い換えれば、封止体MRの辺S1と並行する半導体チップの第1辺に沿って、複数のリードが配置されている。具体的に、複数のリードには、ゲート端子用リードGLと、ケルビン端子用リードKLと、ソース端子用リードSLとが含まれている。ゲート端子用リードGLは、ゲート端子用接続部材であるワイヤ(ボンディングワイヤ)W1を介してゲート端子GTと電気的に接続されている。また、ケルビン端子用リードKLは、ケルビン端子用接続部材であるワイヤ(ボンディングワイヤ)W2を介してケルビン端子KTと電気的に接続されている。さらに、ソース端子用リードSLが、ソース端子用接続部材である複数のワイヤ(ボンディングワイヤ)W3でソース端子STと電気的に接続されている。なお、本実施の形態では、ワイヤW1、ワイヤW2およびワイヤW3のそれぞれは、例えば、金(Au)から成るが、銅(Cu)から成るワイヤを使用してもよい。
【0054】
ここで、本実施の形態では、図6に示すように、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとが互いに隣り合うように配置されておらず、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの間に複数のソース端子用リードSLが配置されている。
【0055】
そして、ソース端子STとソース端子用リードSLとを電気的に接続する複数のワイヤW3のそれぞれは、辺S1が延在するx方向(第1方向)と直交するy方向(第2方向)に延在する直線形状から構成されている。言い換えれば、複数のワイヤW3のそれぞれは、x方向と直交するy方向にだけ延在するストレート形状から構成されている。
【0056】
また、図6に示すように、複数のワイヤW3のそれぞれは、ソース端子STと複数箇所で接合されている。例えば、各ワイヤW3とソース端子STとは、接合点P1および接合点P2で接続されている。すなわち、ワイヤW1とゲート端子GTとの接合点の数は1つであり、また、ワイヤW2とケルビン端子KTとの接合点の数は1つであるのに対し、各ワイヤW3とソース端子STとの接合点の数は2つである。つまり、ソース端子STと複数のワイヤW3のそれぞれとの接合箇所を増やすことで、ソース端子STとソース端子用リードSLとの間の電流経路上のオン抵抗を低減することができる。そして、図6に示すように、複数のワイヤW3を介してソース端子STとソース端子用リードSLとを互いに、かつ、電気的に接続するだけでなく、各ワイヤW3をソース端子STと複数箇所で接合することにより、ソース端子STとソース端子用リードSLとの間に大電流(300A)を流すことができる。なお、本実施の形態では、図6に示すように、各ワイヤW3とソース端子STとの接合点の数が2つであることについて説明したが、2つ以上であってもよい。
【0057】
一方、各ワイヤW3とソース端子用リードSLとは、接合点P3で接続されている。すなわち、各ワイヤW3とソース端子用リードSLとの接合点の数は1つである。これは、図6に示すように、ソース端子用リードSLの面積(特に、ワイヤW3が延在するy方向に沿ったソース端子リードSLの長さ)が、ソース端子STの面積(特に、ワイヤW3が延在するy方向に沿ったソース端子STの長さ)よりも小さい(短い)ためである。
【0058】
このようにして、「TOパッケージ」である半導体装置10は、例えば、300Aの電流を流すことができるように構成されている。
【0059】
<パワーMOSFETのデバイス構造>
続いて、半導体チップCHPに形成されているパワーMOSFETのデバイス構造について説明する。図7は、パワーMOSFETの一例であるnチャネル型のトレンチゲート型パワーMOSFETを示す半導体チップCHPの要部断面図である。
【0060】
図7において、n型単結晶シリコンからなる半導体基板20の表面には、n型単結晶シリコンからなるエピタキシャル層21が形成されている。半導体基板20およびエピタキシャル層21は、パワーMOSFETのドレインを構成している。
【0061】
エピタキシャル層21の一部には、p型ウェル22が形成されている。また、エピタキシャル層21の表面の一部には、酸化シリコン膜23が形成されており、他の一部には、複数の溝24が形成されている。エピタキシャル層21の表面のうち、酸化シリコン膜23で覆われた領域は、素子分離領域を構成している一方、溝24が形成されている領域は、素子形成領域(アクティブ領域)を構成している。図示はしないが、溝24の平面形状は、四角形、六角形、八角形などの多角形や一方向に延在するストライプ形状である。
【0062】
溝24の底部および側壁には、パワーMOSFETのゲート絶縁膜を構成する酸化シリコン膜25が形成されている。また、溝24の内部には、パワーMOSFETの下層ゲート電極を構成する多結晶シリコン膜26Aが埋め込まれている。一方、酸化シリコン膜23の上部には、多結晶シリコン膜26Aと同一工程で堆積した多結晶シリコン膜からなるゲート引き出し電極26Bが形成されている。下層ゲート電極(多結晶シリコン膜26A)とゲート引き出し電極26Bは、図示しない領域で電気的に接続されている。
【0063】
素子形成領域のエピタキシャル層21には、溝24よりも浅いp型半導体領域27が形成されている。このp型半導体領域27は、ボディ領域と呼ばれ、パワーMOSFETのチャネル領域(反転層)が形成される領域である。p型半導体領域27の上部には、p型半導体領域27よりも不純物濃度の高いp型半導体領域28が形成されており、さらに、p型半導体領域28の上部には、n型半導体領域29が形成されている。p型半導体領域28は、パワーMOSFETのパンチスルーストッパ層を構成している一方、n型半導体領域29は、パワーMOSFETのソース領域を構成している。
【0064】
パワーMOSFETが形成された素子形成領域の上部およびゲート引き出し電極26Bが形成された素子分離領域の上部には、2層の酸化シリコン膜30および酸化シリコン膜31が形成されている。素子形成領域には、酸化シリコン膜30、酸化シリコン膜31、p型半導体領域28およびn型半導体領域29を貫通してp型半導体領域27に達する接続孔32が形成されている。素子分離領域には、酸化シリコン膜30および酸化シリコン膜31を貫通してゲート引き出し電極26Bに達する接続孔33が形成されている。
【0065】
接続孔32および接続孔33の内部を含む酸化シリコン膜31の上部には、例えば、薄いチタンタングステン膜(TiW膜)と厚いアルミニウム膜(Al膜)との積層膜から構成されたソース電極40およびゲート電極41が形成されている。素子形成領域に形成されたソース電極40は、接続孔32を通じてパワーMOSFETのソース領域と電気的に接続されている。この接続孔32の底部には、ソース端子STとp型半導体領域27とをオーミック接触させるためのp型半導体領域35が形成されている。また、素子分離領域に形成されたゲート電極41は、接続孔33の下部のゲート引き出し電極26Bを介してパワーMOSFETの下層ゲート電極(多結晶シリコン膜26A)に接続されている。
【0066】
ソース電極40およびゲート電極41の上部には、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜で構成された表面保護膜42が形成されている。そして、表面保護膜42の一部を除去してソース電極40を露出することによってソース端子STが形成され、表面保護膜の他の一部を除去してゲート電極41を露出することによってゲート端子GTが形成されている。なお、図7には示されていないが、ケルビン端子も形成される。
【0067】
以上のようにして、半導体チップCHPの主面上にゲート端子GTとケルビン端子(KT)とソース端子STとが形成されていることになる。
【0068】
<実施の形態における特徴>
次に、本実施の形態における特徴点について説明する。
【0069】
本実施の形態における特徴点は、例えば、図6に示すように、平面視においてゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの間にソース端子用リードSLを配置する点にある。これにより、ソース端子用リードSLをソース端子STの配置位置に対応した辺S1の中央部に配置することができるため、ソース端子STとソース端子用リードSLとを接続するワイヤW3が屈曲することを抑制できる。すなわち、本実施の形態における特徴点によれば、ソース端子STとソース端子用リードSLとを接続するワイヤW3を辺S1が延在するx方向と直交するy方向に延在する直線形状から構成することができる。言い換えれば、本実施の形態における特徴点によれば、複数のワイヤW3のそれぞれをx方向と直交するy方向にだけ延在するストレート形状から構成できる。
【0070】
この結果、本実施の形態によれば、300A程度の大電流が流れる複数のワイヤW3が屈曲していないことから、ワイヤW3の屈曲に起因するオン抵抗の増加や寄生インダクタンスの増加に代表される無視できない性能低下を抑制することができる。つまり、本実施の形態によれば、ソース端子STとソース端子用リードSLとを最短長さのワイヤW3で接続することができるため、半導体装置10の性能向上を図ることができる。
【0071】
ここで、「<<ケルビン端子用リードをゲート端子用リードの隣りに配置する理由>>」の項目で説明したように、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの間の電圧V1を電圧VGSにほぼ等しくするためには、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの間の寄生抵抗が小さいことが望ましい。このことから、ケルビン端子用リードKLをゲート端子用リードGLの隣りに配置する構成が採用されていた。
【0072】
この点に関し、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとによって電圧V1を検出する回路は、電流を流すための回路ではなく電圧を検出するセンス回路である。このことは、センス回路に多少の抵抗が加わっても、大きな電流が流れないことから、電圧V1の検出に対する電圧降下の影響も少ないのではないかと本発明者は考えた。すなわち、本発明者は、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの距離を離しても電圧V1の検出に与える影響は大きくないという判断に至ったのである。それよりも、本発明者は、300A程度の大電流を流す用途に使用される半導体装置10においては、大電流が流れるワイヤW3が屈曲することに起因するオン抵抗および寄生インダクタンスの増加の方が半導体装置10の性能低下に与える影響が大きいと考えたのである。
【0073】
以上のことを考慮して、本発明者は、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとを互いに隣り合うように配置する構成に替えて、「平面視においてゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの間にソース端子用リードSLを配置する」という本実施の形態における特徴点の構成を採用するに至ったのである。この結果、本実施の形態によれば、ワイヤW3の屈曲に起因するオン抵抗の増加や寄生インダクタンスの増加に代表される無視できない性能低下を抑制することができ、これによって、半導体装置10の性能向上を図ることができるという顕著な効果を得ることができたのである。
【0074】
<<端子の上位概念化>>
本実施の形態では、半導体チップCHPに形成されているスイッチング素子Q1として、パワーMOSFETを例に挙げて説明している。この場合、半導体チップCHPの表面には、ゲート端子GTとケルビン端子KTとソース端子STが形成されている。
【0075】
ただし、本実施の形態における技術的思想は、スイッチング素子Q1をパワーMOSFETから構成する態様に限らず、スイッチング素子Q1をIGBTから構成する態様にも適用することができる。この場合、半導体チップCHPの表面には、ゲート端子GTとケルビン端子KTとエミッタ端子が形成されていることになる。
【0076】
そして、ケルビン端子KTは、電圧を検出するための端子であり、電圧を検出する端子は、「センス端子」と呼ばれることから、ケルビン端子KTは、「センス端子」の一態様である。また、ソース端子STおよびエミッタ端子は、電流を流すための端子であり、電流を流すことを目的とする端子は、「フォース端子」と呼ばれることから、ソース端子STおよびエミッタ端子は、「フォース端子」の一態様である。
【0077】
さらに、後述する変形例で説明するように、各ワイヤ(ボンディングワイヤ)W1~W3は、「リボン」や「クリップ」に替えてもよいことを考慮すると、「ワイヤ」、「リボン」および「クリップ」は、接続部材の一態様である。
【0078】
以上のことを踏まえて、用語を上位概念化すると以下のようになる。
(1)ゲート端子GT
(2)ケルビン端子KT→「センス端子」
(3)ソース端子STおよびエミッタ端子→「フォース端子」
(4)ゲート端子用リードGL
(5)ケルビン端子用リードKL→「センス端子用リード」
(6)ソース端子用リードSL(エミッタ端子用リード)→「フォース端子用リード」
(7)ワイヤW1→「ゲート端子用接続部材」
(8)ワイヤW2→「センス端子用接続部材」
(9)ワイヤW3(リボン、クリップ)→「フォース端子用接続部材」
【0079】
このような用語の上位概念化を考慮すると、本実施の形態における特徴点は、「平面視においてゲート端子用リードGLと「センス端子用リード」との間に「フォース端子用リード」を配置するということになる。これにより、「フォース端子用リード」を「フォース端子」の配置位置に対応した辺の中央部に配置することができるため、「フォース端子」と「フォース端子用リード」とを接続する「フォース端子用接続部材」が屈曲することを抑制できる。すなわち、本実施の形態における特徴点によれば、「フォース端子」と「フォース端子用リード」とを接続する「フォース端子用接続部材」を直線形状から構成することができる。言い換えれば、本実施の形態における特徴点によれば、「フォース端子用接続部材」をストレート形状から構成できる。
【0080】
<変形例1>
図8は、本変形例1における半導体装置10Aの模式的な構成を示す図である。
【0081】
図8に示すように、本変形例1における半導体装置10Aでは、図6に示す半導体装置10に対して、半導体チップCHPに形成されているゲート端子GTの位置とケルビン端子KTの位置が入れ替わっている。これにより、半導体装置10Aでは、ワイヤW1を介してゲート端子GTと接続されるゲート端子用リードGLと、ワイヤW2を介してケルビン端子KTと接続されるケルビン端子用リードKLの位置も入れ替わっている。
【0082】
以上のように、「平面視においてゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとの間にソース端子用リードSLを配置する」という本実施の形態における特徴点を採用すると、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLに対して対称な実装構成が実現される。この結果、本実施の形態における特徴点を採用すると、図6に示す半導体装置10の構成だけでなく、図8に示す半導体装置10Aの構成も実現できる。このことから、本実施の形態における技術的思想は、実装レイアウトのバリエーションを増やすことができるという点においても有用な技術的思想である。
【0083】
<変形例2>
図9は、本変形例2における半導体装置10Bの模式的な構成を示す図である。
【0084】
図9において、本実施の形態における特徴点を採用すると、ソース端子用リードSLをソース端子STの配置位置に対応した辺S1の中央部に配置することができる。このため、ソース端子STとソース端子用リードSLとを接続するソース端子用接続部材として、図6に示すワイヤW3に替えて、アルミニウム(Al)から成るリボンRBNを使用することもできる。
【0085】
この場合、図9に示すように、リボンRBNは、ソース端子STと複数箇所で接合されている。例えば、リボンRBNとソース端子STとは、接合点P4および接合点P5で接続されている。すなわち、ワイヤW1とゲート端子GTとの接合点の数は1つであり、また、ワイヤW2とケルビン端子KTとの接合点の数は1つであるのに対し、リボンRBNとソース端子STとの接合点の数は2つである。つまり、上記実施の形態と同様、ソース端子STとリボンRBNとの接合箇所を増やすことで、ソース端子STとソース端子用リードSLとの間の電流経路上のオン抵抗を低減することができる。ここで、本変形例2で使用するリボンRBNの幅は、上記実施の形態で使用する各ワイヤW1~W3の幅よりも太い。そして、図9に示すように、1つのリボンRBNを介してソース端子STとソース端子用リードSLとを互いに、かつ、電気的に接続するだけでなく、リボンRBNをソース端子STと複数箇所で接合することにより、ソース端子STとソース端子用リードSLとの間に大電流(300A)を流すことができる。なお、本変形例2では、図9に示すように、リボンRBNとソース端子STとの接合点の数が2つであることについて説明したが、2つ以上であってもよい。また、リボンRBNとソース端子用リードSLとは、接合点P6で接続されている。すなわち、リボンRBNとソース端子リードSLとの接合点の数は1つである。
【0086】
<変形例3>
図10は、本変形例3における半導体装置10Cの模式的な構成を示す図である。
【0087】
図10において、本実施の形態における特徴点を採用すると、ソース端子用リードSLをソース端子STの配置位置に対応した辺S1の中央部に配置することができる。このため、ソース端子STとソース端子用リードSLとを接続するソース端子用接続部材として、図6に示すワイヤW3に替えて、図9に示すリボンRBNを使用するだけでなく、図10に示すように、リボンRBN1およびリボンRBN2を使用することもできる。
【0088】
<変形例4>
図11は、本変形例4における半導体装置10Dの模式的な構成を示す図である。
【0089】
図11において、本実施の形態における特徴点を採用すると、ソース端子用リードSLをソース端子STの配置位置に対応した辺S1の中央部に配置することができる。このため、ソース端子STとソース端子用リードSLとを接続するソース端子用接続部材として、図6に示すワイヤW3に替えて、図11に示す幅広ワイヤW4を使用することもできる。
【0090】
<変形例5>
図12は、本変形例5における半導体装置10Eの模式的な構成を示す図である。
【0091】
図12において、本実施の形態における特徴点を採用すると、ソース端子用リードSLをソース端子STの配置位置に対応した辺S1の中央部に配置することができる。このため、ソース端子STとソース端子用リードSLとを接続するソース端子用接続部材として、図6に示すワイヤW3に替えて、図12に示すクリップCLPを使用することもできる。
【0092】
この場合、図12に示すように、クリップCLPは、ソース端子STと1箇所で接合されている。例えば、クリップCLPとソース端子STとは、接合点P7で接続されている。すなわち、ワイヤW1とゲート端子GTとの接合点の数は1つであり、また、ワイヤW2とケルビン端子KTとの接合点の数は1つであり、さらに、クリップCLPとソース端子STとの接合点の数も1つである。ここで、本変形例5で使用するクリップCLPの幅は、上記実施の形態で使用する各ワイヤW1~W3の幅よりも太い。また、本変形例5で使用するクリップCLPの厚さは、上記変形例2で使用するリボンRBNの厚さよりも厚い。そのため、上記実施の形態や上記変形例2とは異なり、ソース端子STとクリップCLPとの接合箇所を増やさなくても、上記した幅および厚さを備え、かつ、銅(Cu)から成るクリップCLPを使用することで、ソース端子STとソース端子用リードSLとの間の電流経路上のオン抵抗を低減することができる。なお、クリップCLPとソース端子用リードSLとは、接合点P8で接続されている。すなわち、クリップCLPとソース端子リードSLとの接合点の数は1つである。
【0093】
<実施の形態におけるさらなる利点>
例えば、ゲート端子用リードGLとケルビン端子用リードKLとを隣り合うように配置した「TOパッケージ」において、ソース端子STとソース端子用リードSLとを接続するワイヤW3を屈曲させないようにする構成例として、屈曲していない直線形状のワイヤW3を斜めに配置する構成も考えられる。この技術を関連技術と呼ぶことにすると、本実施の形態における技術的思想は、関連技術に対しても優位性を有することを説明する。
【0094】
図13は、本実施の形態における技術的思想を具現化したワイヤW3の配置を模式的に示す図である。図13において、ワイヤW3は、y方向にだけ延在する直線形状から構成されており、y方向からのワイヤW3の傾きを示すワイヤ角度θは0°である。この場合、例えば、6本のワイヤW3を配置するために必要な半導体チップの面積を占有面積200Aで表している。
【0095】
次に、図14は、関連技術の一例を具現化したワイヤW3の配置を模式的に示す図である。図14において、ワイヤW3は、y方向から傾いた直線形状から構成されており、y方向からのワイヤW3の傾きを示すワイヤ角度θは12°である。この場合、例えば、6本のワイヤW3を配置するために必要な半導体チップの面積を占有面積200Bで表している。
【0096】
続いて、図15は、関連技術の他の一例を具現化したワイヤW3の配置を模式的に示す図である。図15において、ワイヤW3は、y方向から傾いた直線形状から構成されており、y方向からのワイヤW3の傾きを示すワイヤ角度θは45°である。この場合、例えば、6本のワイヤW3を配置するために必要な半導体チップの面積を占有面積200Cで表している。
【0097】
図13図15を見るとわかるように、6本のワイヤW3を配置するために必要な半導体チップの面積は、占有面積200A<占有面積200B<占有面積200Cとなっている。つまり、本実施の形態における技術的思想を具現化してワイヤW3をy方向にだけ延在する直線形状から構成すると、関連技術を具現化してワイヤW3をy方向から傾いた直線形状から構成する場合よりも、半導体チップにおけるワイヤW3の占有面積を小さくできることがわかる。このことは、本実施の形態によれば、使用するワイヤW3の本数を同じにする場合、関連技術よりも半導体チップのサイズをシュリンクできることを意味する。このように本実施の形態における技術的思想は、オン抵抗を低減できるだけでなく、半導体チップのサイズを縮小化することもできる点で優れている。
【0098】
さらに、本実施の形態における技術的思想の関連技術に対する優位性について別の表現を使用して説明する。図16は、半導体チップの占有面積を面積200とした場合、本実施の形態における技術的思想を具現化したワイヤW3を配置する構成を模式的に示す図である。図16に示すように、y方向にだけ延在する直線形状から構成されたワイヤW3を使用すると、面積200に7本のワイヤW3を配置することができる。
【0099】
一方、図17は、半導体チップの占有面積を面積200とした場合、関連技術を具現化したワイヤW3を配置する構成を模式的に示す図である。図17に示すように、y方向から傾いた直線形状から構成されたワイヤW3を使用すると、面積200に6本のワイヤW3しか配置することができないことがわかる。
【0100】
このように、ワイヤW3の形状に本実施の形態における技術的思想を適用すると、関連技術よりも、同じ半導体チップの面積200に配置できるワイヤW3の本数を増加させることができることがわかる。このことは、同じサイズの半導体チップを使用する場合、関連技術よりも本実施の形態の方が、半導体チップに配置できるワイヤW3の本数を増加させることができる結果、オン抵抗を低減できることを意味する。したがって、この観点からも、本実施の形態における技術的思想は優れているということができる。
【0101】
<応用例>
次に、本実施の形態における技術的思想の応用例について説明する。具体的には、本実施の形態における複数のリードの配置レイアウトが、パワーMOSFETを含む半導体装置だけでなく、双方向サイリスタを含む半導体装置にも適用可能であることについて説明する。つまり、複数のリードの配置レイアウトに関する工夫が、パワーMOSFETを含む半導体装置と双方向サイリスタを含む半導体装置の共通化に寄与することを説明する。
【0102】
図18は、双方向サイリスタの回路図である。また、図19は、双方向サイリスタの構造を模式的に示す図である。
【0103】
双方向サイリスタとは、パワー半導体素子の一種であり、双方向の電流を1つのゲート電極で制御できる半導体素子である。原理的に、双方向サイリスタは、図18および図19に示すように、一方向の電流を制御できるサイリスタ300Aとサイリスタ300Bを逆並列に接続することにより、双方向の電流を制御するように構成されている。双方向サイリスタは、双方向に電流を流せることから、交流電源の制御に幅広く利用されている。双方向サイリスタは、図18および図19に示すように、メイン端子MT1とメイン端子MT2とゲート端子GTの3つの端子を有しており、ゲート端子GTに制御信号を与えることにより、メイン端子MT1からメイン端子MT2に電流を流すことができるだけでなく、逆にメイン端子MT2からメイン端子MT1に電流を流すこともできる。なお、メイン端子MT1は、第1アノード端子とも呼ばれ、メイン端子MT2は、第2アノード端子とも呼ばれる。
【0104】
図20は、これまでの双方向サイリスタを含む半導体装置50Aの構成を模式的に示す図である。図20に示すように、メイン端子MT2となるダイパッドDP上には、双方向サイリスタが形成された半導体チップCHP1が搭載されている。そして、半導体チップCHP1の表面には、メイン端子MT1とゲート端子GTが形成されている。また、封止体MRの1辺に沿ってゲート端子用リードGLとメイン端子用リードMTLが配置されている。ここで、ゲート端子GTとゲート端子用リードGLはワイヤW1で電気的に接続されている一方、メイン端子MT1とメイン端子用リードMTLはワイヤW5で電気的に接続されている。ここで、図20に示すように、複数のワイヤW5のそれぞれは、メイン端子MT1と複数箇所で接合されている。例えば、各ワイヤW5とメイン端子MT1とは、接合点P1および接合点P2で接続されている。つまり、各ワイヤW5とメイン端子MT1との接合点の数は2つである。一方、各ワイヤW5とメイン端子用リードMTLとは、接合点P3で接続されている。つまり、各ワイヤW5とメイン端子用リードMTLとの接合点の数は1つである。このようにして、半導体装置50Aが構成されている。
【0105】
これに対し、図21は、これまでのパワーMOSFETを含む半導体装置50Bの構成を模式的に示す図である。図21に示すように、ドレインとなるダイパッドDP上には、パワーMOSFETが形成された半導体チップCHP2が搭載されている。そして、半導体チップCHP2の表面には、ソース端子STとゲート端子GTが形成されている。また、封止体MRの1辺に沿ってゲート端子用リードGLとソース端子用リードSLが配置されている。ここで、ゲート端子GTとゲート端子用リードGLはワイヤW1で電気的に接続されている一方、ソース端子STとソース端子用リードSLはワイヤW3で電気的に接続されている。ここで、図21に示すように、複数のワイヤW3のそれぞれは、ソース端子STと複数箇所で接合されている。例えば、各ワイヤW3とソース端子ST1とは、接合点P1および接合点P2で接続されている。つまり、各ワイヤW3とソース端子ST1との接合点の数は2つである。一方、各ワイヤW3とソース端子用リードSLとは、接合点P3で接続されている。つまり、各ワイヤW3とソース端子用リードSLとの接合点の数は1つである。このようにして、半導体装置50Bが構成されている。
【0106】
図20図21を見てわかるように、双方向サイリスタが形成された半導体チップCHP1のゲート端子GTの配置位置と、パワーMOSFETが形成された半導体チップCHP2のゲート端子GTの配置位置が逆になっている。この結果、半導体装置50Aにおけるゲート端子用リードGLとメイン端子用リードMTLの配列と、半導体装置50Bにおけるゲート端子用リードGLとソース端子用リードSLの配列が異なる。したがって、現状の半導体装置50Aと半導体装置50Bでは、複数のリードの配置レイアウトの共通化は困難であることがわかる。この点に関し、本実施の形態における複数のリードの配置レイアウトに関する工夫点を適用すると、双方向サイリスタを含む半導体装置50AとパワーMOSFETを含む半導体装置50Bにおいて、複数のリードの配置レイアウトの共通化を図ることができる。以下に、この点について説明する。
【0107】
まず、図6には、パワーMOSFETが形成された半導体装置に関し、本実施の形態における複数のリードの配置レイアウトを適用した半導体装置10が示されている。
【0108】
一方、図22には、双方向サイリスタが形成された半導体装置に関し、本実施の形態における複数のリードの配置レイアウトを適用した半導体装置60Aが示されている。
【0109】
図6図22の両方を比較するとわかるように、本実施の形態における複数のリードの配置レイアウトを適用することにより、パワーMOSFETを含む半導体装置10と双方向サイリスタを含む半導体装置60Aの両方が実現可能であることがわかる。
【0110】
特に、図22に示す多機能端子用リードFLは、双方向サイリスタを含む半導体装置60Aにおいては、ワイヤW5Aを介してメイン端子MT1と電気的に接続されるように構成される。一方、この多機能端子用リードFLは、パワーMOSFETを含む半導体装置10においては、ワイヤW2を介してケルビン端子KTと接続されるケルビン端子用リードKLとして機能する。これにより、本実施の形態における複数のリードの配置レイアウトを適用することにより、パワーMOSFETを含む半導体装置10と双方向サイリスタを含む半導体装置60Aの両方が実現される。つまり、本実施の形態によれば、パワーMOSFETを含む半導体装置10と双方向サイリスタを含む半導体装置60Aの両方において、多機能端子用リードFLをうまく使用することによって、複数のリードの配置レイアウトの共通化が可能となることがわかる。したがって、本実施の形態における技術的思想は、互いに異なる機能を有す半導体装置での複数のリードの配置レイアウトの共通化を図ることができる点で汎用性に優れているということもできる。
【0111】
なお、図22に示すように、ワイヤW5Aは、メイン端子MT1と複数箇所で接合されている。例えば、ワイヤW5Aとメイン端子MT1とは、接合点P1および接合点P2で接続されている。つまり、ワイヤW5Aとメイン端子MT1との接合点の数は2つである。一方、ワイヤW5Aと多機能端子用リードFLとは、接合点P3Aで接続されている。つまり、ワイヤW5Aと多機能端子用リードFLとの接合点の数は1つである。
【0112】
また、図22に示すように、ワイヤW5Bは、メイン端子MT1と複数箇所で接合されている。例えば、ワイヤW5Bとメイン端子MT1とは、接合点P1および接合点P2で接続されている。つまり、ワイヤW5Bとメイン端子MT1との接合点の数は2つである。一方、ワイヤW5Bとメイン端子用リードMTLとは、接合点P3Bで接続されている。つまり、ワイヤW5Bとメイン端子用リードMTLとの接合点の数は1つである。
【0113】
なお、図22には、双方向サイリスタが形成された半導体装置に関し、本実施の形態における複数のリードの配置レイアウトを適用した半導体装置60Aが示されているが、これに限らず、例えば、図23に示す半導体装置60Bのように構成することもできる。この場合、半導体装置60Bに含まれるワイヤW5Bには屈曲部位が存在しないことから、半導体装置60Aよりもオン抵抗を低減できると考えられる。
【0114】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0115】
CHP 半導体チップ
CHP1 半導体チップ
CHP2 半導体チップ
CLP クリップ
DP ダイパッド
KT ケルビン端子(センス端子)
KL ケルビン端子用リード(センス端子用リード)
FL 多機能端子用リード
GT ゲート端子
GL ゲート端子用リード
P1 接合点
P2 接合点
P3 接合点
P3A 接合点
P3B 接合点
P4 接合点
P5 接合点
P6 接合点
P7 接合点
P8 接合点
RBN リボン
RBN1 リボン
RBN2 リボン
ST ソース端子(フォース端子)
SL ソース端子用リード(フォース端子用リード)
W1 ワイヤ(ボンディングワイヤ)
W2 ワイヤ(ボンディングワイヤ)
W3 ワイヤ(ボンディングワイヤ)
W4 ワイヤ(ボンディングワイヤ)
W5A ワイヤ(ボンディングワイヤ)
W5B ワイヤ(ボンディングワイヤ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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