(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185467
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】束
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
E04F15/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093170
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】512083539
【氏名又は名称】株式会社HISAMITSU
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】濱田 久光
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA12
2E220AA51
2E220GB02Z
2E220GB22Y
(57)【要約】
【課題】大引のがたつきを容易に抑制することのできる束を提供する。
【解決手段】束100は、土台の上面と接触する支柱1であって、上下方向に延在する支柱孔13を含む支柱1と、支柱孔13に挿入された下端部2aと、上下方向に延在する挿入部孔22とを含む挿入部2と、挿入部2に固定され、大引を支持する大引支持部3と、支柱孔13および挿入部孔22の各々を貫通する軸部4であって、土台に埋設される下端部4aを含む軸部4と、軸部4に設けられ、大引支持部3とともに大引を挟み込むことにより大引を固定する大引固定部5と、挿入部2における任意の規制位置POよりも上側の部分が支柱孔13内へ入り込まないように、挿入部2の下方への移動を規制する規制部6とを備える。挿入部2は、規制部6によって下方への移動が規制されない状態で、支柱13に対して上下方向に移動可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートよりなる土台上に固定され、大引を支持する束であって、
前記土台の上面と接触する支柱であって、上下方向に延在する支柱孔を含む支柱と、
前記支柱孔に挿入された下端部と、上下方向に延在する挿入部孔とを含む挿入部と、
前記挿入部に固定され、前記大引を支持する大引支持部と、
前記支柱孔および前記挿入部孔の各々を貫通する軸部であって、前記土台に埋設される下端部を含む軸部と、
前記軸部に設けられ、前記大引支持部とともに前記大引を挟み込むことにより前記大引を固定する大引固定部と、
前記挿入部における任意の規制位置よりも上側の部分が前記支柱孔内へ入り込まないように、前記挿入部の下方への移動を規制する規制部とを備え、
前記挿入部は、前記規制部によって下方への移動が規制されない状態で、前記支柱に対して上下方向に移動可能である、束。
【請求項2】
前記規制部は、前記挿入部の外周面に固定され、前記支柱孔内に入り込まない形状を有する、請求項1に記載の束。
【請求項3】
前記挿入部は、第1の雄ねじ部をさらに含み、
前記規制部は、前記第1の雄ねじ部にねじ作用で嵌め込まれたナットを含む、請求項2に記載の束。
【請求項4】
前記軸部は、第2の雄ねじ部を含み、
前記大引固定部は、前記第2の雄ねじ部にねじ作用で嵌め込まれたナットを含む、請求項1~3のいずれかに記載の束。
【請求項5】
前記軸部の下端部に設けられたアンカーをさらに備えた、請求項1~4のいずれかに記載の束。
【請求項6】
前記支柱は、前記支柱孔が形成された支柱本体と、前記支柱本体に固定され、前記土台の上面と接触する土台接触部とをさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の束。
【請求項7】
前記支柱、前記挿入部、前記大引支持部、および前記規制部の各々は、前記軸部に対して移動可能である、請求項1~6のいずれかに記載の束。
【請求項8】
前記規制部によって規制された状態で前記挿入部が上方へ向かう力を受けた場合に、前記挿入部は上方へ移動する、請求項1~7のいずれかに記載の束。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、束(つか)に関し、より特定的には、コンクリートよりなる土台上に固定され、大引を支持する束に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建築物においては、一般的に、床を張るために必要となる下地を根太および大引で支え、コンクリートよりなる土台に対して大引が束(床束)で支持される。
【0003】
大引として木製のものを使用する場合には、大引が経時により痩せて、大引の上下方向の厚みが小さくなることがある。大引の厚みが小さくなると、束が大引を固定する力が弱まり、大引にがたつきが生じるという問題があった。
【0004】
そこで、大引のがたつきを抑止し得る技術が、下記特許文献1などにおいて提案されている。下記特許文献1には、ターンバックルと、土台接触部と、大引支持部と、軸部と、大引固定部とを備えた束が開示されている。ターンバックルは、少なくとも上下端に形成された雌ねじ部を含む。土台接触部は、ターンバックルの下端にねじ作用で嵌め込まれ、土台の上面と接触する。大引支持部は、ターンバックルの上端にねじ作用で嵌め込まれ、大引を支持する。軸部は、ターンバックル、土台接触部、および大引支持部の内部を貫通し、下端が土台に埋設される。大引固定部は、軸部の上端に設けられ、大引支持部とともに大引を挟み込むことにより大引を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の束によれば、ターンバックルを回転することで、大引支持部の高さを調節することができる。このため、大引が経時により痩せた場合にも、薄くなった大引に合わせて大引支持部の高さを調節し、薄くなった大引を大引支持部と大引固定部とで挟み込むことができる。その結果、大引のがたつきを抑制することができる。
【0007】
一方で、特許文献1の束におけるターンバックルの下端および上端の各々には、土台接触部および大引支持部の各々がねじ作用で嵌め込まれている。このため、大引支持部の高さを調節するためにはターンバックルを回転させる大きな力が必要であり、大引のがたつきを抑制することが容易ではなかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、大引のがたつきを容易に抑制することのできる束を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に従う束は、コンクリートよりなる土台上に固定され、大引を支持する束であって、土台の上面と接触する支柱であって、上下方向に延在する支柱孔を含む支柱と、支柱孔に挿入された下端部と、上下方向に延在する挿入部孔とを含む挿入部と、挿入部に固定され、大引を支持する大引支持部と、支柱孔および挿入部孔の各々を貫通する軸部であって、土台に埋設される下端部を含む軸部と、軸部に設けられ、大引支持部とともに大引を挟み込むことにより大引を固定する大引固定部と、挿入部における任意の規制位置よりも上側の部分が支柱孔内へ入り込まないように、挿入部の下方への移動を規制する規制部とを備え、挿入部は、規制部によって下方への移動が規制されない状態で、支柱に対して上下方向に移動可能である。
【0010】
上記束において好ましくは、規制部は、挿入部の外周面に固定され、支柱孔内に入り込まない形状を有する。
【0011】
上記束において好ましくは、挿入部は、第1の雄ねじ部をさらに含み、規制部は、第1の雄ねじ部にねじ作用で嵌め込まれたナットを含む。
【0012】
上記束において好ましくは、軸部は、第2の雄ねじ部を含み、大引固定部は、第2の雄ねじ部にねじ作用で嵌め込まれたナットを含む。
【0013】
上記束において好ましくは、軸部の下端部に設けられたアンカーをさらに備える。
【0014】
上記束において好ましくは、支柱は、支柱孔が形成された支柱本体と、支柱本体に固定され、土台の上面と接触する土台接触部とをさらに含む。
【0015】
上記束において好ましくは、支柱、挿入部、大引支持部、および規制部の各々は、軸部に対して移動可能である。
【0016】
上記束において好ましくは、規制部によって規制された状態で挿入部が上方へ向かう力を受けた場合に、挿入部は上方へ移動する、請求項1~7のいずれかに記載の束。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大引のがたつきを容易に抑制することのできる束を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態における束の構成を模式的に示す正面図である。
【
図5】束を用いて大引を土台上に固定する方法を示す第1の工程を示す図である。
【
図6】束を用いて大引を土台上に固定する方法を示す第2の工程を示す図である。
【
図7】束を用いて大引を土台上に固定する方法を示す第3の工程を示す図である。
【
図8】束を用いて大引を土台上に固定する方法を示す第4の工程を示す図である。
【
図10】束の調整方法の第2の工程を示す図である。
【
図11】束の調整方法の第3の工程を示す図である。
【
図12】本発明の一実施の形態の第1の変形例における束の構成を模式的に示す断面図である。
【
図13】本発明の一実施の形態の第2の変形例において用いられるクランプ機構を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1および
図2は、本発明の一実施の形態における束の構成を模式的に示す図である。
図1は正面図であり、
図2は
図1のII-II線に沿った断面図である。なお、
図2においては、束の一部が拡大して示されている。
【0021】
図1および
図2を参照して、本実施の形態の束(床束)100(束の一例)は、たとえば住宅などの1階床下において、コンクリートよりなる土台上に固定される。束100は、大引を支持し、床の荷重を地面に伝える役割を果たす。
【0022】
束100は、主としてたとえば鋼よりなっており、支柱1(支柱の一例)と、挿入部2(挿入部の一例)と、大引支持部3(大引支持部の一例)と、軸部4(軸部の一例)と、大引固定部5(大引固定部の一例)と、規制部6(規制部の一例)と、アンカー(ホイールアンカー)7(アンカーの一例)を備えている。支柱1は、土台の上面と接触する。支柱1は、支柱本体11(支柱本体の一例)と、土台接触部12(土台接触部の一例)と、支柱孔13(支柱孔の一例)と、雌ねじ部14とを含んでいる。
【0023】
支柱本体11は、略円筒形状を有している。支柱本体11の上下方向の中央部の外周面は外方に膨らんでいる。束100の中心軸AXと直交する断面で見た場合、支柱本体11の上下方向の中央部の断面積は、支柱本体11の上端部および下端部の各々の断面積よりも大きいことが好ましい。これにより、支柱本体11が把持しやすくなる。
【0024】
土台接触部12は、支柱本体11のたとえば下端部11a付近に固定されている。土台接触部12は土台の上面に接触する。土台接触部12は、支柱本体11の下端部11aに対してねじ作用による嵌め込みにより固定されている。土台接触部12は、プレート121と、雄ねじ部122とを含んでいる。プレート12の下面は土台の上面に接触する。雄ねじ部122は、プレート121から上方に延在している。
【0025】
支柱孔13は、支柱本体11および土台接触部12の各々の内部に形成されている。支柱孔13は、中心軸AXと同軸であり、上下方向に延在している。
【0026】
雌ねじ部14は、支柱孔13の内周面における支柱本体11の下端部11a付近の部分にのみ形成されている。雄ねじ部122は、雌ねじ部14に対してねじ作用により嵌め込まれている。
【0027】
挿入部2は、大引支持部3の高さを調整する。挿入部2は、略円筒形状を有している。挿入部2における下端部2aを含む部分は、支柱孔13に挿入されている。挿入部2は、大引支持部3の高さを調整する。挿入部2は、挿入部本体21と、挿入部孔22(挿入部孔の一例)と、雄ねじ部23(第1の雄ねじ部の一例)とを含んでいる。
【0028】
挿入部本体21は、略円筒形状を有している。中心軸AXと直交する断面で見た場合、挿入部本体21は、上下方向全体にわたって略同一の断面を有している。
【0029】
挿入部孔22は、挿入部本体21の内部に形成されている。挿入部孔22は、中心軸AXと同軸であり、上下方向に延在している。挿入部孔22の内周面には雌ねじが形成されていない。
【0030】
雄ねじ部23は、挿入部本体21の外周面に形成されている。雄ねじ部23は、挿入部本体21の外周面の一部にのみ形成されていてもよいし、挿入部本体21の外周面全体に形成されていてもよい。雄ねじ部23は、支柱孔13の内周面に対してねじ作用により嵌め込むためのものではない。
【0031】
大引支持部3は、大引を下方から支持する。大引支持部3は、挿入部2のたとえば上端部2b付近に固定されている。大引支持部3は、板状であり、大引の下面に接触する。大引支持部3は、挿入部2に対してたとえば溶接または接着などの方法で固定されている。大引支持部3は、挿入部2の上端部2bに対してねじ作用による嵌め込みにより固定されていてもよい。大引支持部3は、大引受け部31と、ゴムシート32とを含んでいる。大引受け部31は、板状であり、大引を下方から支持する。ゴムシート32は、大引受け部31の上面に設けられており、大引と接触する。ゴムシート32は、大引における大引受け部31からの圧力が加わる部分を保護する役割を果たす。
【0032】
大引支持部3は、大引の側面に接触する壁部であって、大引受け部31に対してほぼ垂直に延在する壁部をさらに含んでいてもよい。
【0033】
軸部4は、支柱孔13および挿入部孔22の各々を貫通している。軸部4の下端部4aは、土台に埋設される。軸部4は、支柱1、挿入部2、大引支持部3、および規制部6のいずれにも固定されていない。支柱1、挿入部2、大引支持部3、および規制部6の各々は、軸部4に対して相対的に移動可能である。軸部4の下端部4aは土台に埋設される。
【0034】
軸部4は、軸部4の下端部4aから上端部4bに向かって5つの領域RG1、RG2、RG3、RG4、およびRG5の各々に区分される。軸部4における下端部4a付近の領域RG1は、支柱孔13および挿入部孔22の各々から露出している。軸部4における領域RG1に隣接する領域RG2は、支柱孔13内に挿入されている一方、挿入部孔22から露出している。軸部4における領域RG2に隣接する領域RG3は、支柱孔13内および挿入部孔22内の各々に挿入されている。軸部4における領域RG3に隣接する領域RG4は、挿入部孔22内に挿入されている一方、支柱孔13から露出している。軸部4における領域RG4に隣接する領域RG5は、支柱孔13および挿入部孔22の各々から露出している。
【0035】
軸部4は、軸部本体41と、雄ねじ部42とを含んでいる。軸部本体41は、上下方向に延在している。雄ねじ部42は、軸部本体41の外周面に形成されている。雄ねじ部42は、軸部本体41の外周面の一部の領域にのみ形成されていてもよいし、軸部本体41の外周面全体に形成されていてもよい。
【0036】
大引固定部5は、軸部4の上端部4b付近に設けられている。大引固定部5は、大引支持部3とともに大引を挟み込むことにより大引を固定する。この挟み込みの力は、
図1中上下方向の力である。軸部4に対する大引固定部5を固定する位置は、上下方向で変更することが可能である。本実施の形態における大引固定部5は、ナット51(大引固定部のナットの一例)と、ワッシャ52と、プレート53とを含んでいる。ナット51は、雄ねじ部42a(第2の雄ねじ部の一例)に対してねじ作用で嵌め込まれている。雄ねじ部42aは、雄ねじ部42における軸部4の上端部4b付近の部分に相当する。ナット51の上下方向の位置は、雄ねじ部42aに対するナット51の嵌め込み位置によって調整可能である。ナット51は、大引の上面に対して力を加える。
【0037】
ワッシャ52は、軸部4におけるナット51とプレート53との間の位置に嵌め込まれている。ワッシャ52は、軸部4を挿入するための挿入孔521を含んでいる。
【0038】
プレート53は、軸部4におけるワッシャ52よりも下方の位置に嵌め込まれている。プレート53は、大引に接触する部分であり、大引に対して力を加える部分の面積を増やす役割を果たす。プレート53はたとえば円の平面形状を有している。プレート53は、軸部4を挿入するための挿入孔531を含んでいる。
【0039】
軸部4に大引固定部5を固定する方法は、ねじ作用での嵌め込み以外の方法であってもよい。
【0040】
軸部4の上端部4b付近の雄ねじ部42aは、大引固定部5がナット51を含む場合に、大引固定部5を軸部4にねじ作用にて嵌め込むためのものである。本実施の形態では、軸部4の加工を容易にするために、軸部4は寸切りボルトよりなっており、軸部4の全体に雄ねじ部42が形成されている。
【0041】
大引固定部5がナット以外のものよりなる場合には、軸部4の上端部4b付近には雄ねじ部42aが形成されている必要は無い。また、大引固定部5がナットを含む場合には、軸部4の少なくとも上端部4b付近に雄ねじ部42aが形成されていればよい。
【0042】
規制部6は、挿入部2における任意の規制位置POよりも上側の部分(挿入部2における上端部2bを含む部分)が支柱孔13内へ入り込まないように、挿入部2の下方への移動を規制する。本実施の形態における規制部6は、挿入部2の外周面に固定されている。規制部6は、支柱孔13内に入り込まない形状を有している。挿入部2における規制部6の下面に対応する位置が、規制位置POとなる。規制位置POは、規制部6を固定する位置により調整可能である。
【0043】
挿入部2は支柱1に拘束されていない。挿入部2は、規制部6によって下方への移動が規制されない状態で、支柱13に対して上下方向に移動可能である。挿入部2の下端部2aが支柱孔13に挿入された場合、挿入部2は自重により支柱1に対して下方に移動し、規制部6の下面が支柱1の上面1aと接触する位置で挿入部2は静止する。支柱1の上面1aには、規制部6を通じて挿入部2および大引支持部3の自重に相当する力が加わる。
【0044】
この静止状態では、挿入部2における規制位置POよりも下側の部分(挿入部2における下端部2aを含む部分)は、支柱孔13内へ挿入されている。挿入部2における規制位置POよりも上側の部分は、支柱孔13から露出している。このようにして、規制部6は、挿入部2における規制位置POよりも上側の部分が支柱孔13内へ入り込まないように、挿入部2の下方への移動を規制する。
【0045】
なお、規制部6は、規制部6の上方への移動を規制しない。したがって、規制部6によって挿入部2の下方への移動が規制された状態で、挿入部2が上方へ向かう力を受けた場合に、挿入部2は上方へ移動する。
【0046】
本実施の形態における規制部6は、ナット61(規制部のナットの一例)とワッシャ62とを含んでいる。ナット61は、雄ねじ部23に対してねじ作用で嵌め込まれている。ナット61の上下方向の位置は、雄ねじ部23に対するナット61の嵌め込み位置によって変わる。ナット61の上下方向の位置により規制位置POは調整される。
【0047】
ワッシャ62は、ナット61と支柱本体11との間の位置に嵌め込まれている。ワッシャ62は、挿入部2を挿入するための挿入孔621を含んでいる。
【0048】
規制部6は、上述以外の方法で挿入部2の下方向への移動を規制してもよい。
【0049】
アンカー7は、軸部4の下端部4aに設けられている。アンカー7は、軸部4の下端部4aを覆っており、雄ねじ部42b(第3の雄ねじ部の一例)に対してねじ作用により嵌め込まれている。雄ねじ部42bは、雄ねじ部42における軸部4の下端部4a付近の部分に相当する。アンカー7を設けることによって、土台に対して束100をより安定的に固定することができる。なお、アンカー7は軸部4の下端部4aに接着などの他の方法で固定されていてもよい。
【0050】
アンカー7がねじ作用による嵌め込み以外の方法で軸部4の下端部4aに固定される場合には、軸部4の下端部4a付近には雄ねじ部42bが形成されている必要は無い。また、アンカー7がねじ作用による嵌め込みにより軸部4の下端部4aに固定される場合には、軸部4の少なくとも下端部4a付近に雄ねじ部42bが形成されていればよい。
【0051】
【0052】
図3を参照して、土台接触部12は、複数の孔123と、接続孔124とをさらに含んでいる。複数の孔123の各々は、束100を土台に固定するためのねじを通すためのものである。接続孔124は、プレート121の中央部に形成されている。接続孔124は、支柱孔13と接続されている。接続孔124の周囲には雄ねじ部122が形成されている。プレート121における雄ねじ部122の周囲は、局所的に上方に隆起している。
【0053】
【0054】
図4を参照して、大引支持部3において、大引受け部31の上面の大部分はゴムシート32で覆われている。大引受け部31には接続孔311が形成されている。ゴムシート32には、接続孔321が形成されている。接続孔311および321の各々は中心軸AXの位置に形成されている。接続孔311および322の各々は、挿入部孔22に接続されている。
【0055】
接続孔311および322の各々には、軸部4が挿入されている。接続孔321は接続孔311よりも大きく、接続孔321を通じて大引受け部31の一部が露出している。大引受け部31における接続孔311の周囲の部分は、下方に凹んでいる。ゴムシート32は、大引受け部31に貼り付けられていてもよい。
【0056】
次に、束を用いて大引を土台上に固定する方法について、
図5~
図8を用いて説明する。なお
図7では、説明の便宜のため、挿入部2における支柱孔13内に挿入された部分が示されている。
【0057】
図5を参照して、始めに、たとえば土台BS上において、束100を設置する位置を決定し、その位置に孔を開ける。次にその孔にアンカー7を挿入する。これにより、アンカー7が土台BS内に固定される。
【0058】
図6を参照して、次に、軸部4の下端部4aをアンカー7に対して嵌め込むことにより、アンカー7に軸部4が固定される。アンカー7に軸部4を固定する際には、大引固定部5は軸部4から外されていることが好ましい。アンカー7に軸部4が固定されると、支柱1は、自重により軸部4に沿って下方に移動する。その結果、土台接触部12は土台BSの上面に接触する。土台接触部12は、土台BSに対してねじ(図示無し)や接着剤などで固定される。また、挿入部2、大引支持部3、および規制部6の各々は、自重により軸部4に沿って下方に移動する。挿入部2、大引支持部3、および規制部6の各々は、規制部6の下面が支柱1の上面1aに接触する位置まで一体的に移動する。
【0059】
図7を参照して、次に、大引支持部3における大引との接触面の高さ(ここでは、土台BSの上面からゴムシート32の上面までの長さ)L1を、大引を設ける予定の高さに調整する。高さL1の調整は、規制位置PO(言い換えれば、挿入部2における規制部6を固定する位置)を調整することにより行われる。
【0060】
具体的には、挿入部2の下端部2aに近づく方向に規制部6を移動させると、規制位置POが挿入部2の下端部2aに近づく方向に移動する。挿入部2における支柱孔13内に挿入された部分が減少し、挿入部2における支柱孔13から露出した部分の長さL11が増加する。土台BSの上面から支柱本体11の上面までの長さ(つまり、支柱1の上下方向の長さ)L12は一定である。高さL1は、長さL11と、長さL12と、大引支持部3の上下方向の厚みとの和に相当する。このため、長さL11が増加すると、高さL1は増加する。一方、挿入部2の上端部2bに近づく方向に規制部6を移動させると、規制位置POが挿入部2の上端部2bに近づく方向に移動する。挿入部2における支柱孔13内に挿入された部分が増加し、挿入部2における支柱孔13から露出した部分の長さL11が減少する。その結果、高さL1は減少する。
【0061】
ナット61を雄ねじ部23に対してねじ作用で嵌め込むことにより、規制部6が挿入部2に固定されている場合、ナット61を矢印AR1で示す方向に回転すると、挿入部2の下端部2aに近づく方向に規制部6が移動し、高さL1が増加する。ナット61を矢印AR2で示す方向に回転すると、挿入部2の上端部2bに近づく方向に規制部6が移動し、高さL1が減少する。
【0062】
図8を参照して、次に、孔PLが予め形成された木材よりなる大引WDを準備し、孔PLに軸部4を挿入するようにして、大引WDを大引支持部3上に配置する。孔PLに軸部4を挿入することで、大引WDをより安定的に大引支持部3上に配置することができる。このとき、大引WDは大引支持部3に対してさらにねじで固定されてもよい。
【0063】
その後、大引固定部5を上端部4bから軸部4に嵌め込み、大引固定部5を軸部4に沿って下方に移動させることで、大引WDを上方から大引固定部5で締め付ける。これにより、大引支持部3と大引固定部5とで大引WDが挟み込まれる。大引固定部5がナット51を含む場合には、ナット51を回転させることにより大引固定部5は移動される。
【0064】
大引支持部3と大引固定部5とで大引WDが挟み込まれた状態では、大引固定部5における大引との接触面の高さ(ここでは、土台BSの上面から大引固定部5の下面までの長さ)L2は、高さL1と大引WDの厚さd1との和の高さL2に相当する。
【0065】
以上の工程により、大引WDが土台BS上に固定される。
【0066】
続いて、大引が経時により痩せて、大引の上下方向の厚みが小さくなった場合における、束の調整方法について、
図9~
図11を用いて説明する。なお
図10では、説明の便宜のため、挿入部2における支柱孔13内に挿入された部分が示されている。
【0067】
図9を参照して、ここでは、大引WDが経時により痩せて、大引WDの上下方向の厚みが、厚みd1(
図8)から厚みd2(d1>d2)に変化した場合を想定する。この場合、大引支持部3と大引WDとの間、または大引固定部5と大引WDとの間には隙間が生じる。大引支持部3と大引固定部5とで大引WDを挟み込む力が弱まり、大引WDにがたつきが生じる。
【0068】
図10を参照して、大引WDにがたつきが生じた場合、挿入部2が回転しないように大引支持部3を手などで固定した状態で、ナット61を矢印AR2で示す方向に回転させる。この際、挿入部2および大引支持部3を手動により上方に移動させた状態(挿入部2における支柱孔13内に挿入された部分を減少させた状態)で、ナット61を回転させることが好ましい。ナット61の回転により、挿入部2の下端部2aに近づく方向(下方)に規制部6および規制位置POの各々が移動する。規制部6および規制位置POの各々が下方に移動するにしたがって、挿入部2における支柱孔13内に挿入された部分が減少する。挿入部2における支柱孔13から露出した部分の長さL11が長くなる。大引支持部3が上昇し、大引支持部3と大引固定部5との隙間が狭まる。その結果、大引支持部3と大引固定部5とで大引WDを再び挟み込むことができる。
【0069】
大引WDにがたつきが生じた場合には、上述のように規制部6のみが移動され、大引固定部5は移動されないことが好ましい。大引固定部5における大引WDとの接触面の高さL2は、土台BSからの大引WDの上面の高さや床の下地の高さを規定するものであり、これらの高さは経時によって変わるものではないからである。
【0070】
図11を参照して、規制部6のみが移動された場合、大引支持部3における大引WDとの接触面の高さは、高さL2と厚さd2との差に相当する高さL3に増加する。
【0071】
一方、大引WDにがたつきが生じた場合に、上述のように規制部6を移動させるとともに、ナット51を回転させることなどにより大引固定部5を軸部4に沿って下方に移動させてもよい。この場合には、規制部6の移動量を小さくすることができる。
【0072】
以上の工程により、束100の調整が完了する。なお、上述の束100の調整は、大引が経時により痩せた場合のみならず、任意のタイミングで行われる。
【0073】
[実施の形態の効果]
【0074】
本実施の形態によれば、挿入部における規制位置を規制部によって調整することにより、大引支持部の高さを調節することができる。これにより、ターンバックルを回転させる従来技術と比較して、少ない力で大引支持部の高さを調節することができ、大引支持部と大引固定部とで大引を挟み込むことにより、大引のがたつきを容易に抑制することができる。
【0075】
また、規制部は、挿入部の外周面に固定され、支柱孔内に入り込まない形状を有しているので、挿入部における規制位置を容易に調節することができる。
【0076】
また、挿入部に規制部のナットがねじ作用で嵌め込まれているので、挿入部における規制位置を容易に調節することができる。
【0077】
また、軸部に大引固定部のナットがねじ作用で嵌め込まれているので、軸部における大引固定部を設ける位置を容易に調節することができる。
【0078】
また、軸部の下端部にアンカーを設けることにより、土台に対して束をより安定的に固定することができる。
【0079】
また、支柱が土台接触部を含むことにより、土台に対して束をより安定的に固定することができる。
【0080】
また、支柱、挿入部、大引支持部、および規制部の各々が軸部に対して移動可能であるため、軸部の長さにかかわらず、土台の上面に支柱を容易に接触させることができる。
さらに、規制部によって規制された状態で挿入部が上方へ向かう力を受けた場合に、挿入部は上方へ移動するので、大引支持部の高さを容易に上昇することができる。
【0081】
[変形例]
【0082】
図12は、本発明の一実施の形態の第1の変形例における束の構成を模式的に示す断面図である。
【0083】
図12を参照して、土台接触部12は、支柱本体11と一体的に形成されていてもよい。また、土台接触部12は、上述のように支柱本体11に対してねじ作用による嵌め込みにより固定される方法の他、支柱本体11に対してたとえば溶接または接着などの方法で固定されていてもよい。
【0084】
図13は、本発明の一実施の形態の第2の変形例において用いられるクランプ機構を模式的に示す断面図である。
【0085】
図13を参照して、クランプ機構8は、シートクランプと呼ばれるものであり、U字部81と、雄ねじ部82と、挿入孔83を含んでいる。U字部81は、その両端に雌ねじ部811および812を含んでいる。雄ねじ部82は、雌ねじ部811および812の各々に対してねじ作用により嵌め込まれている。雄ねじ部82は、雌ねじ部811に嵌め込まれ、その後雌ねじ部812に嵌め込まれている。U字部81および雄ねじ部82によって、クランプ機構の挿入孔83が構成されている。挿入孔83内には、クランプ機構が固定される対象物(挿入部2など)が挿入される。雌ねじ部812に対する雄ねじ部82の締め込み量によって、U字部81の両端部の間隔tが変化し、挿入孔83のサイズが変化する。このため、雌ねじ部812に対する雄ねじ部82の嵌め込み量を増加することにより、挿入孔83のサイズが減少し、クランプ機構8が対象物の外周面に固定される。雌ねじ部812に対する雄ねじ部82の嵌め込み量を減少することにより、挿入孔83のサイズが増加し、挿入物へのクランプ機構8の固定が解除される。
【0086】
規制部6は、挿入部2の外周面に固定されたクランプ機構8により構成されてもよい。この場合、挿入孔83内には挿入部2が挿入される。規制部6が支柱孔13内に入り込まない形状を有しているので、挿入部2が支柱孔13に入り込むことが規制される。
【0087】
規制部6は、支柱1に固定されたクランプ機構8により構成されてもよい。この場合、挿入孔83は支柱孔13と接続され、挿入孔83内には挿入部2が挿入される。挿入孔83の締め付けにより挿入部2が支柱1に対して固定され、挿入部2が支柱孔13に入り込むことが規制される。
【0088】
大引固定部5は、軸部4の外周面に設けられたクランプ機構8により構成されてもよい。この場合、挿入孔83内には軸部4が挿入される。
【0089】
[その他]
【0090】
本実施の形態では、束が鋼よりなる場合について説明したが、束を構成する材料は鋼以外のものであってもよく、たとえばアルミニウム、鉄、樹脂、またはプラスチックなどであってもよい。大引を構成する材料は、木材以外のものであってもよく、たとえば鋼、鉄などであってもよい。本実施の形態によれば、大引が木材以外の材料よりなる場合にも、そのがたつきを抑制することができる。
【0091】
上述の実施の形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 支柱
1a 支柱の上面
2 挿入部(挿入部の一例)
2a 挿入部の下端部
2b 挿入部の上端部
3 大引支持部(大引支持部の一例)
4 軸部(軸部の一例)
4a 軸部の下端部
4b 軸部の上端部
5 大引固定部(大引固定部の一例)
6 規制部(規制部の一例)
7 アンカー(アンカーの一例)
8 クランプ機構
11 支柱の支柱本体(支柱本体の一例)
11a 支柱本体の下端部
12 支柱の土台接触部(土台接触部の一例)
13 支柱の支柱孔(支柱孔の一例)
14 支柱の雌ねじ部
21 挿入部の挿入部本体
22 挿入部の挿入部孔(挿入部孔の一例)
23 挿入部の雄ねじ部(第1の雄ねじ部の一例)
31 大引支持部の大引受け部
32 大引支持部のゴムシート
41 軸部の軸部本体
42,42a,42b 軸部の雄ねじ部(第2および第3の雄ねじ部の一例)
51 大引固定部のナット(大引固定部のナットの一例)
52 大引固定部のワッシャ
53 大引固定部のプレート
61 規制部のナット(規制部のナットの一例)
62 規制部のワッシャ
81 クランプ機構のU字部
82 クランプ機構の雄ねじ部
83 クランプ機構の挿入孔
100 束(床束)(束の一例)
121 土台接触部のプレート
122 土台接触部の雄ねじ部
123 土台接触部の孔
124 土台接触部の接続孔
311 大引受け部の接続孔
321 ゴムシートの接続孔
521,621 ワッシャの挿入孔
531 プレートの挿入孔
811,812 U字部の雌ねじ部
AX 中心軸
RG1,RG2,RG3,RG4,RG5 軸部の領域