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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185470
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】磁気計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/12 20060101AFI20221207BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20221207BHJP
   A61B 5/0515 20210101ALI20221207BHJP
【FI】
G01R33/12
G01R33/02 R
A61B5/0515
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093177
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】笠島 多聞
(72)【発明者】
【氏名】大川 秀一
(72)【発明者】
【氏名】小須田 正則
(72)【発明者】
【氏名】竹村 泰司
(72)【発明者】
【氏名】スコ バグース トリスナント
【テーマコード(参考)】
2G017
4C127
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA08
2G017AA15
2G017AB07
2G017AD51
2G017BA03
2G017BA09
2G017BA10
2G017CC02
4C127AA10
(57)【要約】
【課題】計測対象物を励磁することによって生じる磁化変化を検出するタイプの磁気計測装置において、励磁コイルに流す電流の電流値及び周波数を低減する。
【解決手段】磁気計測装置1は、磁性体Pを含む計測対象物に交流励磁磁界を印加することにより磁性体Pの磁化変化を線形応答させる励磁コイルC1と、磁性体Pの磁化変化によって生じる1次交流検出磁界を検出することにより1次検出信号S1を生成する検出コイルC0と、1次検出信号S1に基づいて2次交流検出磁界を生成する磁界発生コイルC2と、2次交流検出磁界を検出することにより非正弦波成分を含む2次検出信号S2を生成する磁気センサ16とを備える。これにより、磁性体Pの磁化変化を非線形応答させることなく、非正弦波成分を含む2次検出信号S2を得ることができることから、励磁コイルに流す電流の電流値及び周波数を低減できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を含む計測対象物に交流励磁磁界を印加することにより、前記磁性体の磁化変化を線形応答させる第1のコイルと、
前記磁性体の磁化変化によって生じる1次交流検出磁界を検出することにより、1次検出信号を生成する第1の磁気センサと、
前記1次検出信号に基づいて2次交流検出磁界を生成する第2のコイルと、
前記2次交流検出磁界を検出することにより、非正弦波成分を含む2次検出信号を生成する第2の磁気センサと、を備えることを特徴とする磁気計測装置。
【請求項2】
前記第1の磁気センサに印加される前記交流励磁磁界をキャンセルする第3のコイルをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気計測装置。
【請求項3】
前記2次検出信号の高調波成分を検出する信号処理回路をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気計測装置に関し、特に、磁気粒子イメージングに用いることが可能な磁気計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計測対象物を励磁することによって生じる磁化変化を検出するタイプの磁気計測装置として、磁気粒子イメージング装置が知られている(非特許文献1参照)。磁気粒子イメージング装置は、磁気粒子を含む計測対象物に交流励磁磁界を印加する励磁コイルと、励磁された磁気粒子の磁化変化によって生じる交流検出磁界を検出する磁気センサとを備えている。磁気センサには、交流検出磁界だけでなく交流励磁磁界も印加されるが、磁気粒子の磁化変化を非線形応答させることにより、磁気センサの出力信号に含まれる検出信号成分と励磁成分(ノイズ成分)を信号処理によって分離することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】B. Gleich and J. Weizenecker, Nature, 435, 1214 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁気粒子などの磁性体の磁化変化を非線形応答させるためには、非常に強い交流励磁磁界を計測対象物に印加する必要がある。しかも、非線形応答させた磁化変化を高感度に検出するためには、交流励磁磁界の周波数を例えば20kHz以上の高周波に設定する必要もある。このため、人体のように計測対象物がある程度大きなサイズを有する場合には、励磁コイルに極めて大きな高周波電流を流す必要があり、現実的ではなかった。
【0005】
したがって、本発明は、計測対象物を励磁することによって生じる磁化変化を検出するタイプの磁気計測装置において、励磁コイルに流す電流の電流値及び周波数を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による磁気計測装置は、磁性体を含む計測対象物に交流励磁磁界を印加することにより磁性体の磁化変化を線形応答させる第1のコイルと、磁性体の磁化変化によって生じる1次交流検出磁界を検出することにより1次検出信号を生成する第1の磁気センサと、1次検出信号に基づいて2次交流検出磁界を生成する第2のコイルと、2次交流検出磁界を検出することにより非正弦波成分を含む2次検出信号を生成する第2の磁気センサとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1の磁気センサによって生成した1次検出信号を再度磁界に変換し、この磁界を第2の磁気センサによって検出していることから、磁性体の磁化変化を非線形応答させることなく、非正弦波成分を含む2次検出信号を得ることができる。これにより、第1のコイルに流す電流の電流値が小さく且つ周波数が低くても、磁性体の磁化変化を高感度に検出することが可能となる。
【0008】
本発明による磁気計測装置は、第1の磁気センサに印加される交流励磁磁界をキャンセルする第3のコイルをさらに備えていても構わない。これによれば、1次検出信号に含まれるノイズ成分を低減することが可能となる。
【0009】
本発明による磁気計測装置は、2次検出信号の高調波成分を検出する信号処理回路をさらに備えていても構わない。これによれば、2次検出信号に含まれるノイズ成分を除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、計測対象物を励磁することによって生じる磁化変化を検出するタイプの磁気計測装置において、励磁コイルに流す電流の電流値及び周波数を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態による磁気計測装置1の構成を説明するための模式図である。
図2図2は、磁性体Pの磁化変化を説明するための模式図である。
図3図3は、磁気センサ16の回路図である。
図4図4は、磁性体Pの磁化変化を説明するための模式的なグラフであり、縦軸が磁化M、横軸が磁界Hを示している。
図5図5は、2次検出信号S2の変化を説明するための模式的なグラフであり、縦軸が電圧V、横軸が磁界Hを示している。
図6図6は各信号の波形を示すグラフであり、(a)は交流励磁電流i1の波形、(b)は1次検出信号S1の波形、(c)は2次検出信号S2の波形、(d)~(h)は2次検出信号S2に含まれる3次高調波、5次高調波、7次高調波、9次高調波及び11次高調波の波形を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による磁気計測装置1の構成を説明するための模式図である。
【0014】
本実施形態による磁気計測装置1は、計測領域Aに位置する計測対象物内の磁性体Pを検出する装置であり、図1に示すように、傾斜直流磁界φを生成する磁石11,12と、励磁コイルC1に接続された励磁回路13と、磁性体Pの磁化変化によって生じる1次交流検出磁界を検出する検出コイルC0とを備えている。磁性体Pは、ナノサイズである磁性ナノ粒子であっても構わない。磁性体Pとして磁性ナノ粒子を用いれば、計測対象物を人体とすることが可能である。
【0015】
磁石11,12は、計測領域Aにおける傾斜直流磁界φの強度がほぼゼロとなるよう、S極又はN極が向かい合うように配置されている。磁石11,12の代わりにコイルを用いても構わない。また、計測領域Aを空間的に移動させる機構を有していても構わない。励磁回路13は、励磁コイルC1に交流励磁電流i1を流す回路であり、これにより、計測領域Aには交流励磁磁界が印加される。交流励磁電流i1の波形は正弦波である。後述するように、交流励磁磁界の強度は、計測領域Aに位置する磁性体Pの磁化変化が線形応答する強度に設定される。線形応答とは、磁性体Pが非飽和領域で磁化変化することを意味する。したがって、磁化変化が完全に直線的である場合に限らず、非飽和領域で磁化変化する限り、多少の非線形成分が含まれていても構わない。
【0016】
図2は、磁性体Pの磁化変化を説明するための模式図である。
【0017】
図2(a)に示す例では、磁性体Pに励磁磁界を印加すると、所定の方向に磁化Mを有する磁性体P自体が回転し、その結果、磁化Mの方向が変化する。また、図2(b)に示す例では、磁性体Pに励磁磁界を印加すると、磁性体Pの内部の磁化Mが回転する。これらのいずれの場合であっても、磁性体Pに励磁磁界を印加することにより、磁性体Pの磁化Mの方向が変化する。また、励磁磁界の印加により、図2(a)に示す磁性体P自体の回転と、図2(b)に示す磁性体Pの内部の磁化Mの回転の両方が生じても構わない。本実施形態においては、磁性体Pに励磁磁界を印加することによる磁化Mの方向の変化を「磁化変化」と定義する。
【0018】
磁性体Pの磁化変化は、1次交流検出磁界を発生させる。1次交流検出磁界は、第1の磁気センサである検出コイルC0によって検出され、1次検出信号S1が生成される。本実施形態においては、1次交流検出磁界を検出する磁気センサとして検出コイルC0を用いているが、1次交流検出磁界を検出する磁気センサがこれに限定されるものではなく、感磁素子を用いた磁気センサであっても構わない。また、交流励磁磁界は、計測領域Aの外側に存在する磁性体Pにも印加されるが、計測領域Aの外側の領域は、所定の強度を有する傾斜直流磁界φによって磁化Mの方向が固定されているため、磁化変化は実質的に生じない。このため、検出コイルC0は、計測領域Aに位置する磁性体Pの磁化変化を選択的に検出することができる。
【0019】
また、検出コイルC0に印加される交流励磁磁界は、キャンセルコイルC3によってキャンセルされる。キャンセルコイルC3には、補償回路14によってキャンセル電流i3が流れ、これにより、検出コイルC0に印加される交流励磁磁界が打ち消される。但し、検出コイルC0に印加される交流励磁磁界を完全に打ち消すことは困難であり、1次検出信号S1には交流励磁磁界に起因する若干のノイズ成分が重畳する。
【0020】
1次検出信号S1はアンプ回路15に入力される。アンプ回路15は、差動アンプやフィルタ回路などを含むアナログ回路であり、1次検出信号S1に基づいて磁界発生コイルC2に交流検出電流i2を供給する。これにより、磁界発生コイルC2からは2次交流検出磁界が発生する。ここで、アンプ回路15はアナログ回路であることから遅延はほとんど生じず、1次交流検出磁界に応じてほぼリアルタイムに2次交流検出磁界が生成される。2次交流検出磁界は、第2の磁気センサ16によって検出され、2次検出信号S2が生成される。
【0021】
図3は、磁気センサ16の回路図である。
【0022】
図3に示すように、磁気センサ16は、フルブリッジ接続された感磁素子21~24によって構成されている。感磁素子21~24としては、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子やGMR(巨大磁気抵抗効果)素子、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子などの磁気抵抗効果素子や、ホール素子、MI(磁気インピーダンス)素子など、低周波においても感度が高く、磁気飽和する素子を用いることができる。そして、磁気センサ16は、感磁素子21,22と感磁素子23,24に対して、磁界発生コイルC2から生じる2次交流検出磁界が互いに逆方向に印加されるよう構成される。これにより、磁気センサ16からは、2次交流検出磁界に応じた2次検出信号S2が出力される。磁気センサ16としては、4つの感磁素子をフルブリッジ接続したものに限らず、2つの感磁素子をハーフブリッジ接続したものや、単一の感磁素子を用いたものであっても構わない。
【0023】
2次検出信号S2は、アンプ17を介して信号処理回路18に供給される。信号処理回路18は、2次検出信号S2に含まれる高調波成分を抽出することによって3次検出信号S3を生成する。3次検出信号S3は、本実施形態による磁気計測装置1の最終的な出力信号であり、計測領域Aに位置する磁性体Pの磁化変化を示している。そして、3次検出信号S3を画像化する画像化装置を用いれば、磁気粒子イメージング装置を構成することが可能となる。
【0024】
以上が本実施形態による磁気計測装置1の構成である。次に、本実施形態による磁気計測装置1の動作について説明する。
【0025】
まず、励磁回路13は、計測領域Aに位置する磁性体Pの磁化変化が線形応答するよう、励磁コイルC1に交流励磁電流i1を流す。つまり、励磁コイルC1に供給される交流励磁電流i1は、磁性体Pの磁化変化を非線形応答させるために必要な電流量よりも十分に小さい電流量に設定される。
【0026】
図4は、磁性体Pの磁化変化を説明するための模式的なグラフであり、縦軸が磁化M、横軸が磁界Hを示している。
【0027】
図4に示すように、磁界Hの振幅をH1に設定すると、磁性体Pの磁化Mが飽和し、磁性体Pの磁化Mは磁化m1と磁化m2の間で非線形応答する。この場合、1次検出信号S1に含まれる検出信号成分は非正弦波となる。ここで、計測対象物が人体サイズである場合、磁性ナノ粒子からなる磁性体Pの磁化Mを非線形応答させるためには、約6mTの強力な磁界が必要となる。一方、磁界Hの振幅をH2(<H1)に設定すると、磁性体Pの磁化Mは非飽和領域で変化するため、磁化m3と磁化m4の間で線形応答する。この場合、1次検出信号S1に含まれる検出信号成分は正弦波となる。
【0028】
このように、交流励磁電流i1の電流量は、磁性体Pの磁化変化が線形応答する電流量に抑えられることから、磁性体Pの磁化変化を非線形応答させる場合と比べ、交流励磁電流i1の電流量が大幅に低減される。ここで、計測対象物が人体サイズである場合、磁性ナノ粒子からなる磁性体Pの磁化Mを線形応答させるための磁界は、例えば0.1mTで足りる。つまり、磁性体Pの磁化変化を非線形応答させる場合の1/10以下の電流量となる。
【0029】
このように、本実施形態においては、励磁コイルC1によって磁性体Pの磁化変化を線形応答させていることから、検出コイルC0によって生成される1次検出信号S1のうち、1次交流検出磁界に起因する検出信号成分は正弦波となる。1次検出信号S1には、キャンセルし切れていない交流励磁磁界に起因するノイズ成分も含まれている。但し、ノイズ成分は、キャンセルコイルC3によって十分に抑えられているため、そのレベルは十分に小さく、検出信号成分が支配的である。1次検出信号S1は、アンプ回路15によって交流検出電流i2に変換され、これにより磁界発生コイルC2からは2次交流検出磁界が発生する。2次交流検出磁界は、磁気センサ16によって検出され、2次検出信号S2が生成される。
【0030】
図5は、2次検出信号S2の変化を説明するための模式的なグラフであり、縦軸が電圧V、横軸が磁界Hを示している。
【0031】
図5に示すように、2次交流検出磁界に含まれる検出信号成分の振幅はH3である。2次交流検出磁界のうち振幅がH3である成分に対しては、感磁素子21~24の磁気抵抗効果が飽和し、2次検出信号S2の電圧Vは電圧v1と電圧v2の間で非線形応答する。この場合、2次検出信号S2に含まれる検出信号成分は非正弦波となる。一方、2次交流検出磁界に含まれるノイズ成分の振幅はH4(<H3)である。2次交流検出磁界のうち振幅がH4である成分に対しては、感磁素子21~24が非飽和領域で動作するため、2次検出信号S2の電圧Vは電圧v3と電圧v4の間で線形応答する。
【0032】
ここで、検出信号成分によって感磁素子21~24を非線形応答させ、ノイズ成分によって感磁素子21~24を線形応答させるためには、計測領域Aに磁性体Pが存在しない状態、つまり、検出信号成分が含まれない状態で予備的な磁気計測動作を行い、交流励磁磁界に起因するノイズ成分によって感磁素子21~24が線形応答するよう、アンプ回路15のゲインやフィルタ特性などを調整すれば良い。
【0033】
これにより、2次交流検出磁界に含まれる検出信号成分は、2次検出信号S2の非正弦波成分に変換され、2次交流検出磁界に含まれるノイズ成分は、2次検出信号S2の正弦波成分に変換される。つまり、1次検出信号S1に含まれる検出信号成分及びノイズ成分は、いずれも正弦波であるものの、磁界発生コイルC2を用いて再度磁界に変換し、さらに、磁気センサ16を用いて2次検出信号S2に再変換することにより、検出信号成分とノイズ成分が非正弦波成分と正弦波成分に分離される。
【0034】
このようにして生成された2次検出信号S2は、アンプ17を介して信号処理回路18に供給される。信号処理回路18は、2次検出信号S2に含まれる高調波成分を抽出することによって3次検出信号S3を生成する。上述の通り、2次検出信号S2に含まれる検出信号成分は非正弦波成分からなるため、高調波が生じる。これに対し、2次検出信号S2に含まれるノイズ成分は正弦波成分からなるため、高調波がほとんど生じない。このため、2次検出信号S2に含まれる高調波成分を検出することによって、検出信号成分を選択的に抽出することが可能となる。
【0035】
図6は各信号の波形を示すグラフであり、(a)は交流励磁電流i1の波形、(b)は1次検出信号S1の波形、(c)は2次検出信号S2の波形、(d)~(h)は2次検出信号S2に含まれる3次高調波、5次高調波、7次高調波、9次高調波及び11次高調波の波形を示している。また、図6(b)~(h)において、実線は検出信号成分を示し、破線はノイズ成分を示している。
【0036】
図6(a)に示すように、交流励磁電流i1は正弦波である。そして、本実施形態においては、交流励磁磁界によって磁性体Pの磁化Mを線形応答させていることから、図6(b)に示すように、1次検出信号S1に含まれる検出信号成分及びノイズ成分は、いずれも正弦波となる。しかしながら、本実施形態においては、磁界発生コイルC2及び磁気センサ16を用いて、検出信号成分を非正弦波に変化させていることから、図6(c)に示すように、2次検出信号S2に含まれる検出信号成分は非正弦波となり、2次検出信号S2に含まれるノイズ成分は正弦波となる。その結果、図6(d)~(h)に示すように、検出信号成分については大きな高調波が現れる一方、ノイズ成分についてはほとんど高調波が現れない。一例として、1次検出信号S1に含まれる検出信号成分及びノイズ成分の比(SN比)が9.6dBである場合、2次検出信号S2に含まれる3次高調波、5次高調波、7次高調波、9次高調波及び11次高調波のSN比は、それぞれ11.1dB、15.3dB、14.7dB、13.3dB及び9.0dBとなる。
【0037】
したがって、信号処理回路18によって2次検出信号S2から所定の高調波成分を抽出すれば、磁性体Pの磁化変化に起因する検出信号成分を取り出すことが可能となる。このようにして抽出された検出信号成分は、3次検出信号S3として外部に出力される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態による磁気計測装置1は、交流励磁磁界によって磁性体Pの磁化Mを線形応答させる一方、磁界発生コイルC2及び磁気センサ16を用いて、検出信号成分を選択的に非正弦波に変化させていることから、交流励磁電流i1の電流量を大幅に小さくすることが可能となるばかりでなく、交流励磁電流i1の周波数を10kHz程度に下げても十分なSN比を確保することが可能となる。しかも、物理デバイスを用いて1次検出信号S1を2次検出信号S2に変換していることから、1次検出信号S1を直接信号処理する場合のような遅延も生じない。これにより、人体のように比較的大きなサイズを有する計測対象物に対する磁気粒子イメージングが可能となる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 磁気計測装置
11,12 磁石
13 励磁回路
14 補償回路
15 アンプ回路
16 磁気センサ
17 アンプ
18 信号処理回路
21~24 感磁素子
A 計測領域
C0 検出コイル
C1 励磁コイル
C2 磁界発生コイル
C3 キャンセルコイル
P 磁性体
S1 1次検出信号
S2 2次検出信号
S3 3次検出信号
i1 交流励磁電流
i2 交流検出電流
i3 キャンセル電流
φ 傾斜直流磁界
図1
図2
図3
図4
図5
図6