(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185473
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】道路舗装用組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20221207BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20221207BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20221207BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221207BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221207BHJP
C09D 177/00 20060101ALI20221207BHJP
E01C 7/35 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K5/5415
C09D5/02
C09D7/61
C09D7/63
C09D177/00
E01C7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093185
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】垣内 宏樹
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
2D051AD01
2D051AG11
2D051AG19
2D051AH03
4J002CL031
4J002DJ018
4J002EF027
4J002EF057
4J002EX066
4J002FD099
4J002FD146
4J002FD207
4J002FD208
4J002HA07
4J038DH021
4J038HA446
4J038JC34
4J038KA08
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA11
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性を有する道路舗装用組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミドエマルション(A)及びエポキシシラン系カップリング剤(B)を含有する道路舗装用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドエマルション(A)及びエポキシシラン系カップリング剤(B)を含有する道路舗装用組成物。
【請求項2】
エポキシシラン系カップリング剤(B)が、ジアルコキシシリル基を有するエポキシシラン系カップリング剤である、請求項1に記載の道路舗装用組成物。
【請求項3】
ジアルコキシシリル基がジメトキシシリル基である、請求項2に記載の道路舗装用組成物。
【請求項4】
エポキシシラン系カップリング剤(B)の含有量が、ポリアミドエマルション(A)の固形分100質量部に対して、5質量部以上12質量部以下である、請求項1~3のいずれかに記載の道路舗装用組成物。
【請求項5】
ポリアミドエマルション(A)が、ポリアミド(a1)、並びに、炭素数8以上24以下の分岐鎖脂肪族カルボン酸及び炭素数8以上24以下の2級カルボキシ基含有直鎖脂肪族カルボン酸から選択される少なくとも1種のカルボン酸化合物(a2)を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の道路舗装用組成物。
【請求項6】
カルボン酸化合物(a2)に対するポリアミド(a1)の質量比〔(a1):(a2)〕が、80:20以上99:1以下である、請求項5に記載の道路舗装用組成物。
【請求項7】
ポリアミド(a1)の酸価が、15mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である、請求項5又は6に記載の道路舗装用組成物。
【請求項8】
ポリアミド(a1)の結晶化熱量(ΔHc)が、2J/g以上13J/g以下である、請求項5~7のいずれかに記載の道路舗装用組成物。
【請求項9】
珪砂を更に含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の道路舗装用組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の道路舗装用組成物において、更に顔料を含有する、カラー舗装用塗料組成物。
【請求項11】
ポリアミドエマルション(A)及びエポキシシラン系カップリング剤(B)を混合する工程、及び、得られた混合物を舗装表面に施工する工程を有する、道路の舗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装用組成物及びカラー舗装用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年交通状況の多様化から、車道から明確に区別された歩道や自転車道が整備されることが増えてきた。そのような舗装にカラー舗装を用いることで、着色により車道と自転車道や歩道を明確に区別できる。カラー舗装はアクリル樹脂やポリエステル樹脂の水分散体が主に用いられている。
特許文献1には、常温での施工が可能であって、施工後早期に充分な強度が発現し、効率よく舗装体の形成又は補修を可能とする道路舗装用の組成物として、特定の酸価を有する樹脂(A)を塩基性化合物で中和した水分散体と、炭素数1~5のアルコキシ基及びアミノ基を有するシランカップリング剤と、を含有し道路の舗装における骨材の結合材又は舗装体の表面層を構成する道路舗装用組成物が開示されている。
また、骨材と強固に結合し、塗膜耐水性を向上する効果が期待できる樹脂として、ポリアミド樹脂が知られている。
特許文献2には、実質的に乳化剤や界面活性剤を含まず、良好な密着性、柔軟性、耐薬品性、耐熱接着性を有するポリアミド樹脂塗膜を得ることができる水性分散体であって、室温でも分散安定性に優れ、緻密な塗膜を形成するのに十分な小粒子径のポリアミド樹脂水性分散体として、ジカルボン酸成分として特定量のダイマー酸を含み、特定の酸価及び特定の数平均粒子径を有するダイマー酸系ポリアミド樹脂が水性媒体中に分散した水性分散体であって、特定の塩基性化合物を含有し、かつ特定の水性分散化助剤を実質的に含有しないポリアミド樹脂水性分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-126998号公報
【特許文献2】特開2011-094072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術において、舗装の耐摩耗性が十分でない場合がある。
また、特許文献2に記載のポリアミド樹脂を使用する場合は、アミド結合により骨材と強固に結合し耐摩耗性を向上する効果が期待できるが、硬化剤添加による更なる耐摩耗性の向上がみられない場合があった
本発明は、耐摩耗性を有する道路舗装用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の〔1〕~〔4〕に関する。
〔1〕 ポリアミドエマルション(A)及びエポキシシラン系カップリング剤(B)を含有する道路舗装用組成物。
〔2〕 珪砂を更に含有する、上記〔1〕に記載の道路舗装用組成物。
〔3〕 上記〔2〕に記載の道路舗装用組成物において、更に顔料を含有する、カラー舗装用塗料組成物。
〔4〕 ポリアミドエマルション(A)及びエポキシシラン系カップリング剤(B)を混合する工程、及び、得られた混合物を舗装表面に施工する工程を有する、道路の舗装方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐摩耗性を有する道路舗装用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[道路舗装用組成物]
本発明の道路舗装用組成物は、ポリアミドエマルション(A)及びエポキシシラン系カップリング剤(B)を含有する。
以上によれば、耐摩耗性を有する道路舗装用組成物が得られる。更にこの技術を応用して、カラー舗装用塗料組成物を提供することができる。
本発明の効果が得られる詳細な機構は不明であるが、一部は以下のように考えられる。例えばアミン系シランカップリング剤を使用する場合、ポリアミドのカルボン酸とシランカップリング剤のアミンがイオン結合することができずに、ポリアミドを介した硬化反応が起きないため、耐摩耗性の向上がみられなかったと推測する。本発明はエポキシ系のシランカップリング剤を用いることで、エポキシ基とカルボン酸末端がエポキシ開環反応により共有結合で結合することでポリアミドを介した硬化反応が進行する。よって耐摩耗性も向上することを見出した。
【0008】
〔ポリアミドエマルション(A)〕
ポリアミドエマルション(A)は、ポリアミド(a1)が水系媒体中に分散してなる、O/W型エマルションである。
水系媒体は、水が質量比で最大割合を占めている分散媒体である。水系媒体中の水の含有量は、耐摩耗性の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
水以外の成分としては、メタノール、エタノール等の炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
本発明の好ましい態様の1つは、水系媒体が実質的に水のみからなる。
【0009】
ポリアミドエマルションにおける固形分含有量は、耐摩耗性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、分散性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0010】
ポリアミドエマルション(A)におけるエマルション粒子の体積中位粒径(D50)は、分散性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、そして、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1000nm以下、更に好ましくは300nm以下である。
体積中位粒径は、ポリアミド(a1)の分子量、酸価、中和度の調整や転相乳化条件等を変えることによって適宜調整することができる。
本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。体積中位粒径(D50)は、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0011】
<ポリアミド(a1)>
ポリアミドは、アミド結合(-CONH-)を有する高分子化合物であり、カルボン酸成分由来の構成成分及びアミン成分由来の構成成分を含む。すなわち、カルボン酸成分とアミン成分の重縮合物である。ポリアミドは、カルボン酸成分とアミン成分との縮重合反応、環状ラクタムの開環重合反応、アミノ酸やその誘導体の自己縮合反応等により得ることができる。
【0012】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分としては、一価カルボン酸、二価カルボン酸、重合脂肪酸を用いることができる。
一価カルボン酸としては、炭素数4以上、好ましくは炭素数8以上、より好ましくは炭素数12以上であり、そして炭素数24以下、好ましくは炭素数22以下の飽和又は不飽和脂肪族一価カルボン酸が挙げられる。
飽和脂肪族一価カルボン酸の具体例としては、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
不飽和脂肪族一価カルボン酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルシン酸、天然油脂より得られる混合脂肪酸(トール油脂肪酸、米ヌカ脂肪酸、大豆油脂肪酸、牛脂脂肪酸等)等が挙げられる。
二価カルボン酸としては、炭素数4以上、好ましくは炭素数6以上の脂肪族又は芳香族二価カルボン酸が挙げられ、その具体例としては、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
【0013】
重合脂肪酸は、不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸を重合して得られる重合物、又は不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸のエステル化物を重合して得られる重合物である。重合脂肪酸としては、植物油脂由来の二価カルボン酸の脱水縮合反応により得られるものが挙げられる。
不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸としては、通常1以上3以下の不飽和結合を有する総炭素数が8以上24以下の不飽和脂肪酸が挙げられ、その具体例としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、天然の乾性油脂肪酸、天然の半乾性油脂肪酸等が挙げられる。
また、不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸のエステル化物としては、上記不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸と脂肪族アルコール、好ましくは、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコールとのエステル化物が挙げられる。
不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸を重合して得られる重合物、又は不飽和結合を有する一塩基性脂肪酸のエステル化物を重合して得られる重合物である重合脂肪酸は、二量体を主成分とするものが好ましい。例えば、炭素数18以上の不飽和脂肪酸の重合物として、その組成が、炭素数18の一塩基酸(単量体)0~10質量%、炭素数36の二塩基酸(二量体)60~99質量%、炭素数54の三塩基酸以上の酸(三量体以上)30質量%以下のものが市販品として入手できる。
上記のカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、一価カルボン酸と重合脂肪酸とを併用することがより好ましい。
【0014】
カルボン酸成分の中では、少なくとも一価カルボン酸を含むことが好ましく、その含有量は、カルボン酸成分全量基準で、耐摩耗性の観点から、好ましくは5モル当量%以上、より好ましくは8モル当量%以上、更に好ましくは10モル当量%以上であり、そして、好ましくは50モル当量%以下である。
カルボン酸成分として、一価カルボン酸と重合脂肪酸を併用する場合は、含有量は、カルボン酸成分全量基準で、一価カルボン酸が、好ましくは10モル当量%以上、より好ましくは15モル当量%以上であり、そして、好ましくは50モル当量%未満、より好ましくは40モル当量%未満である。また、カルボン酸成分全量基準で、重合脂肪酸が、好ましくは50モル当量%以上、より好ましくは60モル当量%以上であり、そして、好ましくは90モル当量%未満、より好ましくは85モル当量%未満である。
【0015】
(アミン成分)
アミン成分としては、ポリアミン、アミノカルボン酸、アミノアルコール等が挙げられる。
【0016】
ポリアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂肪族トリアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、炭素数2以上6以下の脂肪族ジアミンが好ましく、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。中でも、好ましくは、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンである。
脂肪族トリアミンとしては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ベンゼントリアミン等が挙げられる。中でも、好ましくは、ジエチレントリアミンである。
脂環式ジアミンとしては、イソホロンジアミン、トリシクロデカンジアミン、ノルボルナンジアミンなどが挙げられる。中でも、好ましくは、イソホロンジアミンである。
芳香族ジアミンとしては、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、メチレンビスクロロアニリン等が挙げられる。中でも、好ましくは、キシリレンジアミンである。
【0017】
ポリアミンは、耐摩耗性の観点から、脂肪族ジアミン、脂肪族トリアミン、脂環式ジアミン及び芳香族ジアミンから選ばれる、同種又は異種の少なくとも2種以上のポリアミンを含み、少なくとも1種は脂肪族ジアミンである。中でも、アミン成分は、2種以上のポリアミンとして、好ましくは1種の脂肪族ジアミン、並びに、別の1種以上の脂肪族ジアミン、1種以上の脂肪族トリアミン、1種以上の脂環式トリアミン及び1種以上の芳香族ジアミンから選ばれる1種以上の合計2種以上のポリアミン、より好ましくは2種以上の脂肪族ジアミン及び1種以上の脂環式ジアミンの合計3種以上のポリアミンを含む。
アミン成分が構造の異なる2種以上のポリアミンを含むことによって、ポリアミド分子同士のアミド基の配向性を調整することができる。これによって、ポリアミドの分子間相互作用等を起因とした結晶化や水素結合量を低減できることから、分散体の凝集を抑制することができると考えられる。さらに、構造の異なる2種以上ポリアミンを含むことによって、ポリアミドの軟化点を下げることが可能となり、所望の軟化点を容易に調整できる。なお、アミン成分が単一種からなる場合、該ポリアミドは高い軟化点を示す傾向がある。
【0018】
2種以上の脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンが好ましい。また、脂環式ジアミンとして、イソホロンジアミンが好ましい。
【0019】
ポリアミン中、最多量のポリアミン種は、好ましくは脂肪族ジアミンであり、より好ましくはエチレンジアミンである。最多量のポリアミン種の量は、耐摩耗性の観点から、アミン成分全量に対して、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは65モル%以上であり、そして、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは75モル%以下である。
脂環式ジアミンを含有する場合、その含有量は、アミン全量に対して、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上、更に好ましくは3モル%以上であり、そして、好ましくは10モル%以下、より好ましくは8モル%以下、更に好ましくは7モル%以下である。
【0020】
(ポリアミドの物性)
本発明で用いられるポリアミドの軟化点は、耐摩耗性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
ポリアミドの酸価は、耐摩耗性及びポットライフの観点から、好ましくは15mgKOH/g以上、より好ましくは18mgKOH/g以上、更に好ましくは22mgKOH/g以上であり、そして、耐摩耗性の観点から、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
ポリアミドのアミン価は、耐摩耗性の観点から、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.2mgKOH/g以上、更に好ましくは0.4mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは7mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以下、更に好ましくは3mgKOH/g以下である。
ポリアミドの軟化点、酸価及びアミン価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリアミドは、耐摩耗性の観点から、JIS-K7121に準じた示差走査熱量測定(DSC)において、20℃/minで降温し、5℃/minで降温したときに得られる結晶化熱量(ΔHc)は、好ましくは2J/g以上、より好ましくは2J/g超、更に好ましくは3J/g以上、更に好ましくは4.5J/g以上であり、そして、耐摩耗性及びポットライフの観点から、好ましくは13J/g以下、より好ましくは10J/g以下、更に好ましくは8J/g以下である。
結晶化熱量(ΔHc)は、ポリアミドを昇温速度20℃/minで昇温し、5℃/minで降温したときに現れる発熱ピーク(結晶化ピーク)の温度を結晶化ピーク温度Tc(℃)としたときの、Tcのピーク面積であり、その測定は、実施例に記載の方法で行うことができる。
【0021】
(中和度)
ポリアミドは、分散性の観点から、酸基の少なくとも一部を中和することができる。この場合の中和剤の使用当量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、好ましくは140モル%以下、より好ましくは120モル%以下である、更に好ましくは110モル%以下である。
ここで中和度(モル%)は、具体的には、次式によって求めることができる。中和度が100モル%以下の場合、中和剤の使用当量と同義である。
中和度(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{ポリアミドの酸価(mgKOH/g)×ポリアミドの質量(g)}/(56×1,000)]〕×100
ポリアミドの中和に用いる中和剤としては、塩基性化合物等が挙げられる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン類が挙げられ、高温安定性の観点から、好ましくはアンモニア又は有機アミン類である。有機アミン類としては、トリエチルアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等が好ましい。好ましくは含窒素塩基性物質、より好ましくはN,N-ジメチルエタノールアミンである。
【0022】
(ポリアミドの製造方法)
ポリアミドは、カルボン酸成分とアミン成分とを、好ましくは一価カルボン酸と重合脂肪酸とを含むカルボン酸成分と、ポリアミンを含むアミン成分とを、公知の反応条件下で重縮合反応させることにより得ることができる。
本発明に用いられるポリアミドは、耐摩耗性の観点から、アミン成分に対しカルボン酸成分のモル当量比を過剰にすることが好ましい。具体的には、アミン成分のアミノ基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基のモル当量比(カルボキシ基/アミノ基)は好ましくは1.0/1.0超、より好ましくは1.15/1.0以上、更に好ましくは1.1/1.0以上であり、そして、好ましくは1.4/1.0以下、より好ましくは1.3/1.0以下、更に好ましくは1.25/1.0以下である。
重縮合反応温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。
ポリアミドは、このカルボン酸成分とアミン成分のモル当量比条件下、反応温度と反応時間の調整、場合によっては一価カルボン酸やモノアミンの添加によって、容易に製造することができる。
【0023】
〔カルボン酸化合物(a2)〕
ポリアミドエマルション(A)は、耐摩耗性及びポットライフの観点から、好ましくはカルボン酸化合物を更に含む。
カルボン酸化合物は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられ、耐摩耗性及びポットライフの観点から、好ましくはモノカルボン酸である。
カルボン酸化合物は、耐摩耗性及びポットライフの観点から、炭素数が8以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、24以下でであり、好ましく23以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
【0024】
中でも、カルボン酸化合物として、炭素数8以上24以下の分岐鎖脂肪族カルボン酸及び炭素数8以上24以下の2級カルボキシ基含有直鎖脂肪族カルボン酸から選択される少なくとも1種のカルボン酸化合物(a2)が好ましい。
「2級カルボキシ基」とは、カルボキシ基が結合する炭素原子が、2個の炭素原子が結合した第2級炭素原子であるカルボキシ基をいう。
炭素数8以上24以下の分岐鎖脂肪族カルボン酸化合物及び炭素数8以上24以下の2級カルボキシ基含有直鎖脂肪族カルボン酸化合物の具体例としては、イソステアリン酸(2,2,4,8,10,10-ヘキサメチルウンデカン-5-カルボン酸)、16-メチルヘプタデカン酸、2-ヘキシルデカン酸、2-エチルヘキサン酸、4-メチルノナン酸、オクチルデカン酸、ヘキシルドデカン酸、イソアラキン酸、2-プロピル吉草酸等が挙げられる。これらのカルボン酸化合物は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0025】
ポリアミドエマルション(A)中のカルボン酸化合物(a2)の含有量は、耐摩耗性及びポットライフの観点から、ポリアミド(a1)及びカルボン酸化合物(a2)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは6質量部以上であり、そして、耐摩耗性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは14質量部以下である。
換言すると、カルボン酸化合物(a2)に対するポリアミド(a1)の質量比〔(a1):(a2)〕は、耐摩耗性の観点から、好ましくは80:20以上、より好ましくは82:18以上、更に好ましくは86:14以上であり、そして、好ましくは100:0以下、より好ましくは99:1以下、更に好ましくは97:3以下、更に好ましくは94:6以下である。
【0026】
[ポリアミドエマルションの製造方法]
ポリアミドエマルションは、公知のポリアミドの分散方法により製造することができる。例えば、ポリアミド(a1)及び必要に応じてカルボン酸化合物(a2)を、水系媒体中で、必要に応じて界面活性剤存在下で、乳化機により強制乳化させる方法、転相乳化する方法等が挙げられる。ポリアミドエマルションの製造方法は、耐摩耗性及びポットライフの観点から、好ましくは転相乳化する方法である。
【0027】
〔工程1〕
ポリアミドエマルションの製造方法の好ましい態様は、下記の工程1を含む。
工程1:ポリアミド(a1)及び必要に応じてカルボン酸化合物(a2)の有機溶媒溶液に水系媒体を添加して転相乳化する工程
(有機溶媒)
工程1おける有機溶媒溶液は、ポリアミド(a1)及び必要に応じてカルボン酸化合物(a2)を有機溶媒に溶解させた溶液である。
有機溶媒としては、アセトン、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン及びテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられ、好ましくは水溶性で水より沸点の低い有機溶媒である。
特に、有機溶媒として、好ましくはイソプロピルアルコールとTHFの混合溶媒である。この場合、イソプロピルアルコール/THFの質量比は、好ましくは40/60以上、より好ましくは45/55以上、そして、好ましくは60/40以下、より好ましくは55/45以下であり、更に好ましくは50/50以下である。
有機溶媒の使用量は、ポリアミド(a1)及び必要に応じてカルボン酸化合物(a2)の合計質量100質量部に対し、好ましくは80質量部以上、より好ましくは90質量部以上であり、そして、200質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。
転相乳化時の有機溶媒相(油相)の温度は、耐摩耗性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0028】
(水系媒体)
工程1において、前記有機溶媒溶液に水系媒体を、好ましくは撹拌しながら添加する。
水系媒体としては、上記の水系媒体を使用することができる。
水系媒体の使用量は、ポリアミド(a1)及び必要に応じて含むことができるカルボン酸化合物(a2)の合計質量100質量部に対し、好ましくは100質量部以上、より好ましくは200質量部以上であり、そして、1000質量部以下、より好ましくは600質量部以下である。
水系媒体とともに、ポリアミド(a1)を中和する観点から、好ましくは塩基性化合物を更に添加する。
また、道路舗装用エマルションにおけるエマルション粒子の体積中位粒径(D50)を調整する観点から、界面活性剤を更に添加することができる。
界面活性剤の使用量は、ポリアミド(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0029】
(転相乳化)
転相乳化は、水系媒体並びに必要に応じて塩基性化合物及び界面活性剤を添加した後、好ましくは有機溶剤を留去して水系に転相する。
有機溶剤の留去は、好ましくは8kPa以上50kPa以下の減圧条件下、かつ、好ましくは25℃以上70℃以下の温度条件下で行う。
有機溶剤の含有量が、道路舗装用エマルションに対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下となるように、有機溶剤の留去を行うことが好ましい。
また、得られる処理液に塩基性化合物等を添加して、pHが6以上10以下となるように調整することが好ましい。
【0030】
かくして、水分散体である道路舗装用エマルションが製造される。
本発明の道路舗装用エマルションは以上のようにして得られる水分散体そのものであってもよく、更に水系媒体を添加したものでもよい。
【0031】
〔エポキシシラン系カップリング剤(B)〕
本発明の道路舗装用組成物は、硬化剤として、エポキシシラン系カップリング剤(B)を含む。
エポキシシラン系カップリング剤(B)としては、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等の炭素数1~5のアルコキシ基及びグリシジル基を有するエポキシシラン系カップリング剤が挙げられる。これらのエポキシシラン系カップリング剤は、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
中でも、耐摩耗性及びポットライフの観点から、好ましくは3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシリル基を有するエポキシシラン系カップリング剤であり、より好ましくは3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジメトキシシリル基を有するエポキシシラン系カップリング剤である。
エポキシシラン系カップリング剤(B)の市販品としては、信越化学工業株式会社製のKBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403等が挙げられる。
【0032】
エポキシシラン系カップリング剤(B)の含有量は、耐摩耗性の観点から、ポリアミドエマルション(A)の固形分100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは7質量部以上であり、そして、ポットライフの観点から、好ましくは12質量部以下、より好ましくは11質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0033】
〔骨材〕
道路舗装用組成物は、骨材を更に含むことができる。骨材によって表面が粗面となり、スリップの効果を発揮する。更に、道路舗装体がアスファルト混合物を用いた排水性舗装体である場合、硬化した道路舗装用組成物が排水性舗装体の空隙内で骨材を被覆するように層を形成し、骨材をより強固に結合することができる。
骨材としては、砂利、砂等の天然骨材;砕石、砕砂、フィラー等の加工骨材;再生骨材;セラミック、スラグ等の人工物が挙げられる、砕砂の具体例としては珪砂、石灰石が挙げられる。砂の具体例としては、天然珪砂が挙げられる。中でも、好ましくは珪砂である。
珪砂の粒度は特に制限はない。例えば、JIS G 5901:2016で規定する粒度が4号以上7号以下である珪砂を使用できる。道路舗装用組成物の施工方法に応じて、珪砂を適宜使い分けることができる。例えば、レーキ、刷毛等による塗布で施工する場合、珪砂の粒度は、好ましくは5号以上6号以下である。また、スプレー等による吹付で施工する場合、珪砂の粒度は、好ましくは6号以上7号以下である。
これらの骨材は、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
骨材の含有量は、耐摩耗性の観点から、エマルション固形分100質量部に対し300質量部以上、より好ましくは400質量部以上、さらに好ましくは450質量部以上であり、そして、好ましくは800質量部以下、さらに好ましくは700質量部以下、より好ましくは600質量部以下である。
【0034】
〔その他成分〕
道路舗装用組成物は、前記成分の他に、公知の各種添加剤、例えば、造膜助剤、剥離防止剤、酸化防止剤、プロセスオイル等を更に含有することができる。
道路舗装用組成物及びカラー舗装用塗料組成物は、造膜助剤を併用することで、可撓性が付与され施工後の強度を更に向上させることができる。造膜助剤としては、ガラス転移温度が20℃以下の熱可塑性樹脂の水分散体が挙げられる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-20℃以上であり、そして、好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下である。
熱可塑性樹脂の具体例としては、スチレン-アクリル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、それらの水系ラテックスが挙げられる。これらの中では、可撓性を付与する観点から、スチレン-アクリル系水分散体が好ましい。
造膜助剤の含有量は、耐摩耗性の観点から、エマルション固形分100質量部に対し1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
【0035】
[カラー舗装用塗料組成物]
道路舗装用組成物は、顔料を更に含むカラー舗装用塗料組成物であることができる。カラー舗装用塗料組成物は、着色表面層により、歩道の色分け、一旦停止ゾーンの表示等を明確に行うことができる。
【0036】
〔顔料〕
顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。顔料は1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、スレン顔料、金属錯体顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
無機顔料の具体例としては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物;真珠光沢顔料等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
顔料の含有量はエマルションの固形分100質量部に対し、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは16質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0037】
〔舗装方法〕
本発明の道路舗装用組成物又はカラー舗装用塗料組成物を、アスファルト舗装層又はコンクリート舗装層である舗装表面上に施工することで、樹脂からなる表面層又は着色表面層を形成することができる。
従って、本発明は、前記道路舗装用組成物又はカラー舗装用塗料組成物を、舗装表面上に施工する工程を含む、道路の舗装方法をも提供する。
舗装表面上への施工は、例えばレーキ、刷毛等による塗布、スプレー等による吹付により行うことができる。道路舗装用組成物及びカラー舗装用塗料組成物は、水の蒸発により水分の蒸発により常温で反応、硬化させることができるため、施工温度は常温(例えば、20℃以上35℃以下)とすることができる。
【実施例0038】
各種物性については、以下の方法により、測定及び評価を行った。
なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、部及び%は質量基準である。
【0039】
(1)ポリアミドの軟化点の測定
ポリアミドの軟化点は、「JIS K2207:2006石油アスファルト」に示されている環球法によって測定した。
【0040】
(2)ポリアミドの酸価の測定
ポリアミドの酸価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルとの混合溶媒から、メタノールとクロロホルムとの混合溶媒(メタノール:クロロホルム=1:1(容量比))に変更した。
【0041】
(3)ポリアミドのアミン価の測定
ポリアミドのアミン価は、JIS K7237:1995の方法に基づき測定した。ただし測定溶媒のみJIS K7237:1995に規定のo-ニトロトルエン及び酢酸との混合溶媒から、メタノールとクロロホルムとの混合溶媒(メタノール:クロロホルム=1:1(容量比))に変更した。
【0042】
(4)ポリアミドの結晶化熱量(ΔHc)の測定
JIS-K7121に準じた示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度20℃/minで150℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却し、結晶化発熱曲線を得た。その結晶化発熱曲線から得られた発熱ピークの面積から熱量を算出し、結晶化熱量(ΔHc)とした。
【0043】
(5)ポリアミドエマルションの体積中位粒径(D50)の測定
測定装置:レーザー回折型粒径測定機(株式会社堀場製作所製)
測定条件:測定対象試料に蒸留水を加え、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度に調整した。その後、3万個の粒子の粒径を測定し、得られた粒径分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
【0044】
(6)ポリアミドエマルションの固形分濃度の測定
赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製、「FD-230」)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、変動幅0.05%)の条件にて乾燥し、測定試料の水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
【0045】
製造例1(ポリアミドPA1の製造)
表1に示す量にて、オレイン酸(花王株式会社製、商品名:ルナックO-V)、プロピオン酸、及び重合脂肪酸(ダイマー酸、築野食品工業株式会社製、商品名:ツノダイム205)を含むカルボン酸成分と、エチレンジアミン(EDA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)およびイソホロンジアミン(IPDA)からなるアミン成分とを、温度計、攪拌系、脱水管及び窒素吹き込み管を備えた四つ口丸底フラスコに入れ、混合物を攪拌し、内容物の着色防止のため僅かの窒素を流した後、210℃で3時間、さらに減圧下(13.3kPa)で2時間反応させ、冷却後、粉砕してポリアミドPA1を得た。結果を表1に示す。
【0046】
製造例2~8(ポリアミドPA2~PA8の製造)
カルボン酸成分及びアミン成分の組成を表1に示す通りとした以外は、製造例1と同様にして、ポリアミドPA2~PA8を得た。結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
製造例9(ポリアミドエマルションEm1の製造、転相乳化)
撹拌器「スリーワンモーターBL300」(新東科学株式会社製)、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積2Lの容器に、製造例1で得たポリアミドPA1を90g、モノカルボン酸C1(東京化成工業株式会社製、Isostearic Acid:別名2,2,4,8,10,10-Hexamethylundecane-5-carboxylic Acid)10g、イソプロピルアルコール(IPA)50g、テトラヒドロフラン(THF)50gを入れ、50℃にて3時間かけてポリアミドを溶解させた。30℃まで冷却後、溶液に中和剤N1(2-ジメチルアミノエタノール)を、ポリアミドPA1とカルボン酸化合物C1の酸価に対して中和度100モル%になるように添加し60分撹拌した。
次いで、30℃に保持したまま、200r/minで撹拌しながら、脱イオン水400gを120分かけて添加し、転相乳化した。50℃に加熱後、イソプロピルアルコール、THFを減圧下で留去し水系分散体を得た。撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、300メッシュ金網でろ過し、ポリアミドエマルションEm1を得た。結果を表2に示す。
【0049】
製造例10~16(ポリアミドエマルションEm2~Em8の製造)
ポリアミドの種類を表2に示す通りとした以外は、製造例9と同様にして、ポリアミドエマルションEm2~Em8を得た。結果を表2に示す。
【0050】
製造例17~24(ポリアミドエマルションEm9~Em16の製造)
カルボン酸化合物の使用量又はカルボン酸化合物の種類を表2に示す通りとした以外は、製造例9と同様にして、ポリアミドエマルションEm9~Em16を得た。結果を表2に示す。
【0051】
製造例25(ポリアミドエマルションEm17の製造、高圧乳化)
撹拌機およびヒーター付きの密閉できる耐圧2リットル容ガラス容器に、製造例1で得たポリアミドPA1を90g、モノカルボン酸C1(東京化成工業株式会社製、Isostearic Acid:別名2,2,4,8,10,10-Hexamethylundecane-5-carboxylic Acid)10g、イソプロピルアルコール(IPA)50g、テトラヒドロフラン(THF)50g、脱イオン水100gを入れ、中和剤N1(2-ジメチルアミノエタノール)を、ポリアミドPA1とモノカルボン酸C1の酸価に対して中和度100モル%になるように添加した。
回転速度を200r/minで撹拌しながら系内を加熱し、120℃にて1時間加熱撹拌を行った。その後撹拌しながら30℃まで冷却後、300gの脱イオン水を追加した。得られた水分散体を撹拌器「スリーワンモーターBL300」(新東科学株式会社製)、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積2Lの容器に移し50℃に加熱後、イソプロピルアルコール、THFを減圧下で留去し水系分散体を得た。撹拌を行いながら水系分散体を30℃に冷却した後、300メッシュ金網でろ過し、ポリアミドエマルション(Em17)を得た。結果を表2に示す。
を表2に示す。
【0052】
【0053】
実施例1
<塗料の作製>
1Lステンレスビーカーに、製造例9で得たポリアミドエマルジョンEm1に脱イオン水を加え固形分20%に調整した水分散液100gと、造膜助剤としてアクリルエマルジョン(高圧ガス工業株式会社製ペガール809)4.3gと、豊浦珪砂(豊浦硅石鉱業株式会社製)133g、硬化剤B1(エポキシ系シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製:KBM-402)を入れ、タービン型撹拌翼をセットした撹拌機にて200r/minで10分混合し、道路舗装用組成物である塗料を得た。
<塗膜作製>
得られた塗料をスレート版(アズワン社販売テストピース;スレート板)に10.5g(1.0kg/1.0m2)を塗布しゴムへらで平らにならした。その後、2時間室温にて乾燥後した。塗料を10.5g塗布及び乾燥を合計3回繰り返し、3層塗布したのち室温にて3日間静置し乾燥し、塗膜試料を作製した。
【0054】
<耐摩耗性試験>
作製した塗膜試料を耐擦過性試験機(テスター産業株式会社製、AB-201 サザランド型インクラボテスター)に固定し、摩擦面に紙やすり(トラスコ中山株式会社製、布やすり#40)を固定した台座上部に3090gの重りを載せて試料に7.8kN/m2の荷重がかかるように設置した。試験機を稼働し、試料を1000回摩耗するごとに紙やすりを新品に交換及び試料から剥離した摩耗くずを除去し、合計3000回摩耗した。摩耗前後の重量損失を計量し、耐摩耗性とした。結果を表3に示す。
【0055】
<ポットライフの評価>
作製した塗料10gを、105ml容のポリエチレン製容器(株式会社サンプラテック製、サンプラ容器)に入れ、室温にて1時間静置した。静置後静かに横向きに倒し塗料を流動させ、20秒以内に容器開口部上端まで塗料が到達したら合格とし、室温にて更に1時間静置した。20秒以内に容器開口部上端に到達しなくなった静置時間をポットライフとした。結果を表3に示す。
【0056】
実施例2~8
硬化剤の種類又は硬化剤の仕込み量を表3に示す通りとした以外は、実施例1と同様にして、塗料を作製し、塗膜試料を作製して耐摩耗性試験を実施した。結果を表3に示す。
【0057】
実施例9~24
ポリアミドエマルジョンを表3に示す通りとした以外は、実施例1と同様にして、塗料を作製し、塗膜試料を作製して耐摩耗性試験を実施した。結果を表3に示す。
【0058】
比較例1
硬化剤を使用しない以外は、実施例1と同様にして、塗料を作製し、塗膜試料を作製して耐摩耗性試験を実施した。結果を表3に示す。
【0059】
【0060】
表3から、ポリアミドエマルションと特定の硬化剤を組み合わせる本発明の道路用組成物は、耐摩耗性に優れることが分かる。
また、ポリアミドと硬化剤を併用する場合、ポットライフの低下が問題となる場合があった。本発明の道路舗装用組成物は、硬化剤を併用しているにも関わらず、ポットライフが良好である。