(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185477
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】カット野菜殺菌方法、カット野菜殺菌装置、カット野菜製造方法およびカット野菜製造装置
(51)【国際特許分類】
C11D 3/02 20060101AFI20221207BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20221207BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20221207BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20221207BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20221207BHJP
A23L 3/3454 20060101ALI20221207BHJP
A23B 7/157 20060101ALI20221207BHJP
A23B 7/153 20060101ALI20221207BHJP
A23B 7/154 20060101ALI20221207BHJP
B26D 3/26 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C11D3/02
C11D3/48
C11D1/72
C11D1/722
C11D17/08
A23L3/3454
A23B7/157
A23B7/153
A23B7/154
B26D3/26 605H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093196
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000115429
【氏名又は名称】ライオンハイジーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】水野 義隆
(72)【発明者】
【氏名】西村 園子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 慎一
【テーマコード(参考)】
4B021
4B169
4H003
【Fターム(参考)】
4B021LA41
4B021LW02
4B021MC01
4B021MK08
4B021MK14
4B021MK16
4B021MP02
4B169AA04
4B169HA01
4B169KB02
4B169KC08
4B169KC16
4B169KC19
4B169KC31
4H003AB27
4H003AC03
4H003AC04
4H003AC08
4H003AC23
4H003BA12
4H003DC02
4H003EA31
4H003ED02
4H003EE08
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】カット野菜へのダメージを低減させつつカット野菜の一般生菌数を低減する。
【解決手段】野菜に対して相対移動する切断刃体により切断したカット野菜を殺菌液により殺菌する。殺菌液は、(A1)成分:オゾン、(A2)成分:次亜塩素酸またはその塩、から選択される少なくとも1種と、(B)成分:下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(C)成分:水と、を含有し、前記殺菌液を前記切断刃体の刃部に注ぐことを含むことを特徴とするカット野菜殺菌方法。
R-O-[(EO)
x/(AO)
y]-H ・・・(1)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜に対して相対移動する切断刃体により切断したカット野菜を殺菌液により殺菌する野菜殺菌方法であって、
前記殺菌液は、
(A1)成分:オゾン、(A2)成分:次亜塩素酸またはその塩、から選択される少なくとも1種と、
(B)成分:下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、
(C)成分:水と、を含有し、
前記殺菌液を前記切断刃体の刃部に注ぐことを含むことを特徴とするカット野菜殺菌方法。
R-O-[(EO)x/(AO)y]-H ・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数8~24の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、AOはPO(オキシプロピレン基)及びBO(オキシブチレン基)の少なくとも一方であり、xはEOの平均繰り返し数を示す1~50の数であり、yはAOの平均繰り返し数を示す0~30の数である)。
【請求項2】
野菜に対して相対移動する切断刃体により切断してカット野菜とすることと、
前記カット野菜を殺菌液により殺菌することと、
を含むカット野菜製造方法であって、
前記カット野菜を請求項1に記載のカット野菜殺菌方法により殺菌することを特徴とするカット野菜製造方法。
【請求項3】
野菜に対して相対移動する切断刃体により切断してカット野菜とする野菜カット部と、
前記野菜カット部に殺菌液を供給して前記切断刃体の刃部に注ぐ殺菌液供給部と、
を備え、
前記殺菌液は、
(A1)成分:オゾン、(A2)成分:次亜塩素酸またはその塩、から選択される少なくとも1種と、
(B)成分:下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、
(C)成分:水と、を含有することを特徴とするカット野菜殺菌装置。
R-O-[(EO)x/(AO)y]-H ・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数8~24の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、AOはPO(オキシプロピレン基)及びBO(オキシブチレン基)の少なくとも一方であり、xはEOの平均繰り返し数を示す1~50の数であり、yはAOの平均繰り返し数を示す0~30の数である)。
【請求項4】
野菜に対して相対移動する切断刃体により切断してカット野菜とする野菜カット部と、
前記野菜カット部に殺菌液を供給して前記切断刃体の刃部に注ぐ殺菌液供給部と、
を備えたカット野菜製造装置であって、
前記野菜カット部および前記殺菌液供給部を含む装置として、請求項3に記載のカット野菜殺菌装置を有することを特徴とするカット野菜製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カット野菜殺菌方法、カット野菜殺菌装置、カット野菜製造方法およびカット野菜製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカット野菜の製造方法としては、ホール状態の葉物野菜を一次殺菌後、スライサーで喫食サイズにカットし、続いて、二次殺菌、水洗い、そして遠心分離装置で水切りする方法が一般的である。上記の殺菌工程では、次亜塩素酸塩を殺菌剤として用いることが一般的であるが、葉野菜へのダメージを考慮してオゾン水で殺菌する方法が提案されている。特許文献1および特許文献2には、カット時に野菜の切断面から溶出する細胞液を除去するために、野菜の切断部に清水を注ぎながら野菜をカットすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-154552号公報
【特許文献2】国際公開第2013/179378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カット野菜においては、利便性を高めるために品質保持期間の長期化が求められる。品質保持期間を長期化するためには、カット野菜の一般生菌数を一定数以下に保つ必要がある。カット野菜の一般生菌数を一定以下に保つためには、強い殺菌力を有する殺菌液による殺菌処理が行われることがある。ところが、殺菌力が強い殺菌液を用いた殺菌処理では、一般生菌数を一定数以下に保つ一方で、カット野菜にダメージを与えてしまい品質保持期間を短期化させてしまう可能性がある。
【0005】
また、野菜のカット工程において、野菜をカットするための切断刃体を介しての汚染が生じた場合、カット後の野菜に一般生菌数が急激に増加する可能性がある。上記の特許文献1および特許文献2には、野菜の切断部に清水や殺菌液を注ぎながらカットする方法が開示されているが、効果的に殺菌できているとは言えない。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、カット野菜へのダメージを低減させつつカット野菜の一般生菌数を低減できるカット野菜殺菌方法、カット野菜殺菌装置、カット野菜製造方法およびカット野菜製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、野菜に対して相対移動する切断刃体により切断したカット野菜を殺菌液により殺菌する野菜殺菌方法であって、前記殺菌液は、(A1)成分:オゾン、(A2)成分:次亜塩素酸またはその塩、から選択される少なくとも1種と、(B)成分:下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(C)成分:水と、を含有し、前記殺菌液を前記切断刃体の刃部に注ぐことを含むことを特徴とするカット野菜殺菌方法。
R-O-[(EO)x/(AO)y]-H ・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数8~24の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、AOはPO(オキシプロピレン基)及びBO(オキシブチレン基)の少なくとも一方であり、xはEOの平均繰り返し数を示す1~50の数であり、yはAOの平均繰り返し数を示す0~30の数である)。
【0008】
本発明の第2の態様に従えば、野菜に対して相対移動する切断刃体により切断してカット野菜とすることと、前記カット野菜を殺菌液により殺菌することと、
を含むカット野菜製造方法であって、前記カット野菜を第1の態様のカット野菜殺菌方法により殺菌することを特徴とするカット野菜製造方法が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様に従えば、野菜に対して相対移動する切断刃体により切断してカット野菜とする野菜カット部と、前記野菜カット部に殺菌液を供給して前記切断刃体の刃部に注ぐ殺菌液供給部と、を備え、前記殺菌液は、(A1)成分:オゾン、(A2)成分:次亜塩素酸またはその塩、から選択される少なくとも1種と、(B)成分:下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(C)成分:水と、を含有し、前記殺菌液を前記切断刃体の刃部に注ぐことを含むことを特徴とするカット野菜殺菌方法。
R-O-[(EO)x/(AO)y]-H ・・・(1)
(式(1)中、Rは炭素数8~24の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、AOはPO(オキシプロピレン基)及びBO(オキシブチレン基)の少なくとも一方であり、xはEOの平均繰り返し数を示す1~50の数であり、yはAOの平均繰り返し数を示す0~30の数である)。
【0010】
本発明の第4の態様に従えば、野菜に対して相対移動する切断刃体により切断してカット野菜とする野菜カット部と、前記野菜カット部に殺菌液を供給して前記切断刃体の刃部に注ぐ殺菌液供給部と、を備えたカット野菜製造装置であって、前記野菜カット部および前記殺菌液供給部を含む装置として、第3の態様のカット野菜殺菌装置を有することを特徴とするカット野菜製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、カット野菜へのダメージを低減させつつカット野菜の一般生菌数を低減できるカット野菜殺菌方法、カット野菜殺菌装置、カット野菜製造方法およびカット野菜製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、カット野菜殺菌装置20を有するカット野菜製造装置1の概略構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】カット野菜製造装置1によるカット野菜製造方法の各工程を示す図である。
【
図3】カット野菜殺菌装置20の概略的な構成図である。
【
図4】殺菌液の有無および種類と一般生菌数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のカット野菜殺菌方法、カット野菜殺菌装置、カット野菜製造方法およびカット野菜製造装置を提供の実施の形態を、
図1ないし
図4を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0014】
図1は、カット野菜殺菌装置20を有するカット野菜製造装置1の概略構成を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、カット野菜製造装置1は、前殺菌部10、カット野菜殺菌装置20、濯ぎ部50および脱水部60を有している。前殺菌部10は、予洗浄部11と、異物除去部12とを有している。
【0015】
図2は、カット野菜製造装置1によるカット野菜製造方法の各工程を示す図である。
図2に示すように、カット野菜製造方法は、前殺菌工程S10、検品工程S4、カット及び本殺菌工程S5、搬送および濯ぎ工程S6および脱水工程S7を含む。前殺菌工程S10は、ホール殺菌工程S1、野菜の前カット工程S2および異物除去工程S3を含む。
【0016】
上記カット野菜製造装置1の各構成およびカット野菜製造方法の各工程のうち、まずカット野菜殺菌装置20およびカット及び本殺菌工程S5(カット野菜殺菌方法)について説明する。
【0017】
[カット野菜殺菌装置20]
図3は、カット野菜殺菌装置20の概略的な構成図である。
図1および
図3に示すように、カット野菜殺菌装置20においては、野菜Vのカット及び本殺菌工程S5が行われる。カット野菜殺菌装置20は、野菜カット部30と、殺菌液供給部40とを備えている。
【0018】
野菜カット部30は、異物除去部12で異物除去工程S3を経た野菜Vを、一例として、喫食サイズにカットする。野菜カット部30は、第1搬送部31と、第2搬送部32と、切断刃体33と、カバー部34とを有する。
【0019】
第1搬送部31は、搬送ベルト70、従動ローラ71、いずれも図示しない駆動ローラおよびテンションローラ等を有する。搬送ベルト70は、無端帯状であり、上記の従動ローラ71、駆動ローラおよびテンションローラに掛け渡されている。搬送ベルト70の上面は、載置された野菜Vを下側から支持した状態で、駆動ローラの駆動により、
図3中、右側から左側に水平方向に搬送する搬送面72である。野菜Vの搬送方向としては、水平方向に限定されず、例えば、水平方向に対して傾斜した斜め上方向や斜め下方向に野菜Vを搬送してもよい。
図1に示すように、搬送ベルト70の幅方向両側には、搬送ベルト70の搬送方向(以下、単に搬送方向と称する)に沿ってガイド板73がそれぞれ配置されている。
【0020】
第2搬送部32は、搬送ベルト80、従動ローラ81、駆動ローラ82およびテンションローラ83等を有する。搬送ベルト80は、無端帯状であり、上記の従動ローラ81、駆動ローラ82およびテンションローラ83に掛け渡されている。第2搬送部32は、駆動ローラ82の中心に位置する揺動中心Cを中心として、搬送方向下流側の端部(従動ローラ81側)が上下方向に揺動可能である。第2搬送部32は、自重および図示しない付勢部材の付勢力により、従動ローラ81側が下側に向かう方向に付勢されている。
【0021】
搬送ベルト80は、搬送方向下流側に向かうに従って、下側に向かう方向に傾斜する傾斜面84を有している。傾斜面84と第1搬送部31の搬送面72との間に野菜Vの搬送路86が形成される。傾斜面84のうち、搬送方向下流側の端部は、搬送面72との間で野菜Vを挟持する押さえ面85である。
【0022】
切断刃体33は、搬送ベルト70および搬送ベルト80の搬送方向の下流側端部と対向する位置に設けられている。つまり、切断刃体33は、搬送路86の下流側の端部に配置されている。切断刃体33は、搬送路86から搬出された野菜Vに対して相対移動して野菜Vを切断(カット)する。野菜Vに対する相対移動は、回転移動や往復移動を選択できる。本実施形態の切断刃体33は、水平方向に延びる回転軸線Jを中心として回転する。本実施形態における回転軸線Jは、一例として、搬送面72よりも上側で、搬送ベルト70の幅方向(以下、単に幅方向と称する)で搬送ベルト70よりもカット野菜殺菌装置20の中心側に位置する。
【0023】
切断刃体33は、搬送路86と対向する側に刃部35を有している。刃部35は、搬送路86の下流側の端部から搬出された野菜Vを喫食サイズに切断(カット)する。回転軸線Jを中心とする径方向の刃部35の位置は、回転軸線Jを中心とする搬送路86の位置に少なくとも配置される。刃部35は、回転軸線Jを中心とする周方向に連続的または断続的(間欠的)に配置される。刃部35の形状、個数、配置は、野菜Vの種類、カット後の野菜Vの形状(輪切り、千切り、おろし状、丸千、短冊等)、厚さ等によって種々変更可能なように、交換可能であることが好ましい。
【0024】
カバー部34は、切断刃体33の上方および搬送方向下流側を覆う。カバー部34は、切断刃体33の下方には開口している。従って、切断刃体33によって喫食サイズにカットされた野菜Vは、下方に落下して図示しない容器に回収される。カバー部34は、一例として、ヒンジを介して回動可能に設けられ、切断刃体33を覆う閉位置と、切断刃体33を露出させる開位置との間を移動する。
【0025】
殺菌液供給部40は、
図3に示すように、野菜カット部30に殺菌液Lを供給する。殺菌液供給部40は、カバー部34の天板34aに設けられた注入管41と、注入管41に接続された供給管42とを有する。殺菌液供給部40は、供給管42および注入管41を介して野菜カット部30に殺菌液Lを注入する。注入管41は、上下方向に延び天板34aを貫通している。注入管41の幅方向の位置は、搬送ベルト70の幅方向の位置である。注入管41の搬送方向の位置は、刃部35の搬送方向の位置である。従って、殺菌液供給部40から注入管41を介して注入された殺菌液Lは、掛け流し状態で上方から刃部35に注がれる。刃部35に殺菌液Lを供給する方向は、上方からに限定されず、下方から殺菌液Lを供給する構成、水平方向に横側から殺菌液Lを供給する構成、斜め方向に殺菌液Lを供給する構成等、適宜選択可能である。
【0026】
カット野菜に対する最終的な殺菌を本殺菌と称する。本殺菌には、殺菌液Lが用いられる。すなわち、殺菌液Lによる野菜Vの殺菌は、本殺菌である。
殺菌液Lは、カット野菜に対する本殺菌で用いられる。
殺菌液Lは、以下に示す(A1)成分と(A2)成分から選択される少なくとも1種、(B)成分及び(C)成分を含有する組成物である。
殺菌液は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて(A1)成分、(A2)成分、(B)成分、(C)成分及び水以外の任意成分をさらに含有してもよい。
【0027】
<(A1)成分>
(A1)成分は、オゾンである。
殺菌液中の(A1)成分は、殺菌液中に気泡として存在してもよいし、殺菌液中に溶存していてもよいが、殺菌液中に溶存していることが好ましい。
殺菌液中に(A1)成分を気泡として存在させる場合には、(A1)成分を気泡径100μm未満の微細気泡(ファインバブル)とすることが好ましい。
【0028】
(A1)成分の含有量は、殺菌液の総質量に対して1~20質量ppmであり、1~5質量ppmが好ましく、1~2質量ppmがより好ましい。(A1)成分の含有量が上記下限値以上であれば、殺菌力が向上する。(A1)成分の含有量が2質量ppm以下であれば、環境への曝露量を軽減できる。(A1)成分の含有量が20質量ppm以下であれば、分解剤として活性炭や二酸化マンガンを用いることで環境への曝露量を軽減できる。
【0029】
<(A2)成分>
(A2)成分は、次亜塩素酸またはその塩である。
塩としては、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウム等の亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケル等の他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウム等の塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A2)成分としては、入手の容易性等の観点から、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムが好ましい。
(A2)成分の含有量は、殺菌液の総質量に対して有効塩素濃度として30~100質量ppmであり、30~50質量ppmが好ましい。(A2)成分の含有量が上記下限値以上であれば、殺菌力が向上する。(A2)成分の含有量が上記上限値以下であれば、野菜へのダメージを軽減できる。
【0030】
<(B)成分>
(B)成分は、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。
R-O-[(EO)x/(AO)y]-H ・・・(1)
【0031】
式(1)中、Rは炭素数8~24の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、AOはオキシプロピレン基及びオキシブチレン基の少なくとも一方であり、xはEOの平均繰り返し数を示す1~50の数であり、yはAOの平均繰り返し数を示す0~30の数である。
【0032】
Rにおける炭化水素基の炭素数は8~24であり、8~22が好ましく、10~22がより好ましい。
Rにおける炭化水素基としては、アルキル基、アルキレン基、アルキルアリール基などが挙げられる。
Rにおける炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
Rにおける炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよく、有していなくてもよい。
Rとしては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
-O-に結合するRの炭素原子は、第一級炭素原子であってもよく、第二級炭素原子であってもよい。
AOはオキシプロピレン基(PO)及びオキシブチレン基(BO)の少なくとも一方である。
【0033】
xは、1~50の数であり、6~30が好ましい。
yは、0~30の数である。AOがPOを含む場合、POの平均繰り返し数(y1)は0~30の数が好ましく、1~20の数がより好ましい。AOがBOを含む場合、BOの平均繰り返し数(y2)は0~5の数が好ましく、0~2の数がより好ましく、0~1の数がさらに好ましい。ただし、y1及びy2の合計が0~30である。
【0034】
(B)成分は、例えば第一級アルコール又は第二級アルコール(R-OH)にエチレンオキシドを付加すること、又は、R-OHにエチレンオキシドと、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドの少なくとも一方とを付加することにより得ることができる。
【0035】
yが0超である場合、すなわち、(B)成分がEOとPO、EOとBO、又はEOとPOとBOを有する場合、EOとPO、EOとBO、又はEOとPOとBOの分布(配列順)に特に限定はなく、ブロック状に配列していてもよく、ランダム状に配列していてもよい。ブロック重合の場合、3つ以上のブロックが配列していてもよい。また、ランダム状の配列とブロック状の配列の組み合わせでもよい。
EOとPOとをブロック状に配列させる方法としては、例えば、R-OHにエチレンオキシドを導入した後にプロピレンオキシドを導入する方法、R-OHにプロピレンオキシドを導入した後にエチレンオキシドを導入する方法、R-OHにエチレンオキシドを導入した後にプロピレンオキシドを導入し、さらに、エチレンオキシドを導入する方法等が挙げられる。
EOとBOとをブロック状に配列させる方法としては、例えば、R-OHにエチレンオキシドを導入した後にブチレンオキシドを導入する方法、R-OHにブチレンオキシドを導入した後にエチレンオキシドを導入する方法、R-OHにエチレンオキシドを導入した後にブチレンオキシドを導入し、さらに、エチレンオキシドを導入する方法等が挙げられる。
【0036】
(B)成分の含有量は、殺菌液の総質量に対して1~500質量ppmであり、5~500質量ppmが好ましく、5~50質量ppmがより好ましい。(B)成分の含有量の含有量が上記範囲内であれば、殺菌力が向上する。
【0037】
(B)成分としては市販品を用いることができ、例えばBASF社製の商品名「Plurafac」シリーズ、商品名「Lutensol」シリーズ;新日本理化株式会社製の商品名「コニオン」シリーズ;株式会社日本触媒製の商品名「ソフタノール」シリーズ;日本エマルジョン株式会社製の商品名「EMALEX」シリーズ;第一工業製薬株式会社製の商品名「ノイゲン」シリーズ;ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「ライオノール」シリーズ、商品名「レオコール」シリーズなどが挙げられる。
【0038】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0039】
<(C)成分>
(C)成分は、水である。
(C)成分としては、イオン交換水、蒸留水、精製水、水道水などが挙げられる。
(C)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(C)成分は、温度が低い場合の野菜の品質低下抑制および界面活性剤の溶解性低下の観点から温度を3~10℃とすることが好ましい。
(C)成分の含有量は、殺菌液の総質量から、(A1)成分、(A2)成分、(B)成分及び任意成分の含有量の合計を除いた残部である。
【0040】
<任意成分>
任意成分としては、例えば(B)成分以外の界面活性剤(以下、「他の界面活性剤」ともいう。)、防腐剤、ハイドロトロープ剤、pH調整剤などが挙げられる。
任意成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0041】
他の界面活性剤としては、(B)成分以外のノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、(B)成分以外のノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が好ましい。
他の界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(B)成分以外のノニオン界面活性剤としては、例えばアルキルフェノール、高級アミン等のアルキレンオキシド付加体、脂肪酸アルカノールアミン型のノニオン界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド型のノニオン界面活性剤、多価アルコール脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加体、多価アルコール脂肪酸エーテル、アルキル(又はアルケニル)アミンオキシド、硬化ヒマシ油のアルキレンオキシド付加体、ソルビタン脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルキルポリグリコシド型のノニオン界面活性剤などが挙げられる。
(B)成分以外のノニオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0043】
アニオン界面活性剤としては、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩(LAS)、α-オレフィンスルホン酸又はその塩(AOS)、内部オレフィンスルホン酸又はその塩(IOS)、ヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩、アルキル基を有するアルカンスルホン酸又はその塩、α-スルホ脂肪酸エステル又はその塩(MES)、アルキルエーテルカルボン酸又はその塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸又はその塩、アルキルアミドエーテルカルボン酸又はその塩、アルケニルアミドエーテルカルボン酸又はその塩、アシルアミノカルボン酸又はその塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、ポリキシアルキレンアルキルリン酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル又はその塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル又はその塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤、高級脂肪酸又はその塩等が挙げられる。
アニオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0044】
カチオン界面活性剤としては、例えばアルキルアミドアミンなどが挙げられる。
カチオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0045】
両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、イミダゾリン型、アルキルアミノスルホン型、アルキルアミノカルボン酸型、アルキルアミドカルボン酸型、アミドアミノ酸型、リン酸型などが挙げられる。
両性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0046】
半極性界面活性剤としては、例えばドデシルジメチルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドなどが挙げられる。
半極性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0047】
防腐剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、メチルイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアリゾノン、ベンズイソチアゾリノンなどが挙げられる。
防腐剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0048】
ハイドロトロープ剤としては、例えば、炭素数2~4の1価アルコール、炭素数2~12の多価アルコール、炭素数4~12のグリセリルエーテル、炭素数3~12のグリコールエーテル、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸、安息香酸塩などが挙げられる。
炭素数2~4の1価アルコールとしては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ターシャリーブタノール等が挙げられる。
炭素数2~12の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、イソプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
炭素数4~12のグリセリルエーテルとしては、ヘキシルグリセリルエーテル、メチルグリセリルエーテル、エチルグリセリルエーテル、プロピルグリセリルエーテル、ブチルグリセリルエーテル、ペンチルグリセリルエーテル、ヘプチルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル等が挙げられる。
炭素数3~12のグリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等が挙げられる。
ハイドロトロープ剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0049】
pH調整剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルプロパノール、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ジエチレントリアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン等の有機塩基;塩酸、硫酸等の無機酸;クエン酸、シュウ酸等の有機酸などが挙げられる。
pH調整剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0050】
<pH>
殺菌液の25℃におけるpHは3~8が好ましく、4~8がより好ましく、4~7がさらに好ましい。殺菌液のpHが上記下限値以上であれば、刃部35の劣化が軽減できる。殺菌液のpHが上記上限値以下であれば、(A1)成分と(A2)成分から選択される少なくとも1種の安定性が良くなり殺菌力が向上する。
殺菌液のpHは、JIS Z 8802:2011「pH測定方法」に準拠した方法により測定される値を示す。
【0051】
<製造方法>
殺菌液の製造方法は限定されない。例えば、殺菌液は(A1)成分と(A2)成分から選択される少なくとも1種と(C)成分とで殺菌剤含有水を調製しておき、得られた殺菌剤含有水に(B)成分と、必要に応じて任意成分とを添加することで得られる。
殺菌剤含有水中に(A2)成分が含有されない場合の(A1)成分の濃度は、1~20質量ppmであり、1~5質量ppmが好ましく、1~2質量ppmがより好ましい。
殺菌剤含有水中に(A1)成分が含有されない場合の(A2)成分の濃度は、有効塩素濃度として30~100質量ppmであり、30~50質量ppmが好ましい。
なお、殺菌剤含有水中に(A1)成分および(A2)成分の両方が含有される構成であってもよい。
【0052】
殺菌液中に(A1)成分を気泡として存在させる場合には、(A1)成分をファインバブルとしたオゾン水を調製することが好ましい。
マイクロバブルの発生方法としては、例えば加圧溶解型マイクロバブル発生装置、二相流旋回型マイクロバブル発生装置等を用いて、(A1)成分を含有するガス(オゾン含有ガス)を(C)成分に混合する方法、多孔質材料を介して(C)成分中にオゾン含有ガスを送り込む方法、エジェクターやベンチュリー管で(C)成分とオゾン含有ガスとを混合する方法などが挙げられる。
【0053】
殺菌液中に(A1)成分を溶存させる場合には、(A1)成分が(C)成分に溶存したオゾン水を調製することが好ましい。
(C)成分に(A1)成分を溶存させる方法としては、(C)成分中で(A1)成分を生成する方法と、オゾン含有ガスを(C)成分に溶解させる方法などが挙げられる。
(C)成分中で(A1)成分を生成する方法としては、電気分解法が最も一般的である。
オゾン含有ガスを(C)成分に溶解させる方法としては、紫外線照射、放電又は放射線照射により(A1)成分を発生させ、発生した(A1)成分を含有するガス(オゾン含有ガス)で(C)成分を曝気する方法、ディフューザーを用いてオゾン含有ガスを(C)成分に曝気する方法、エジェクターやベンチュリー管で(C)成分とオゾン含有ガスとを混合する方法又はポリテトラフルオロエチレン製の膜等を通じて、オゾン含有ガスを(C)成分に溶解させる方法などが挙げられる。
【0054】
また、(B)成分及び(C)成分と、必要に応じて任意成分とを混合して薬液を調製し、殺菌液中の(A1)成分と(A2)成分から選択される少なくとも1種、及び(B)成分の含有量が上述した範囲内となるように、得られた薬液をオゾン水、または次亜塩素酸またはその塩の水溶液で希釈して殺菌液を製造してもよい。さらに、薬液中で(A1)成分を発生させたり、薬液中にオゾン含有ガスを溶解させたりして、殺菌液を製造してもよい。
薬液中の(B)成分の含有量は、薬液の総質量に対して0.1~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。
薬液中の(C)成分の含有量は、薬液の総質量に対して40~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。
薬液中のアニオン界面活性剤の含有量は、薬液の総質量に対して0.1~4.0質量%が好ましく、0.3~1.2質量%がより好ましい。
薬液中のその他成分の含有量は、薬液の総質量に対して0.1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
薬液中のpH調整剤の含有量は、薬液の総質量に対して1~5質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がより好ましい。
薬液の25℃におけるpHは3~8が好ましく、4~8がより好ましく、4~7がさらに好ましい。薬液のpHは、殺菌液のpHと同様の方法により測定される値である。
【0055】
殺菌液供給部40は、例えば、オゾン水発生器で発生したオゾン水((A1)成分および(C)成分)と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル水溶液((B)成分および(C)成分)を混合した殺菌液Lを刃部35に注ぐ。オゾン水とポリオキシアルキレンアルキルエーテル水溶液との混合は、特に限定されない。例えば、オゾン水が供給される主管に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル水溶液が供給される副管が接続され、オゾン水の流動で副管に生じる負圧でポリオキシアルキレンアルキルエーテル水溶液が吸引されてオゾン水とポリオキシアルキレンアルキルエーテル水溶液とが混合されるアスピレーターを混合器として用いる構成、オゾン水が供給される主管に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル水溶液がチューブポンプで供給される逆止弁により主管側にのみ流動可能な副管が接続され、主管内部で混合されたオゾン水とポリオキシアルキレンアルキルエーテル水溶液が排出される構成、オゾン水とポリオキシアルキレンアルキルエーテル水溶液とをタンク内で混合し、混合した殺菌液Lをポンプにより送液する構成等を選択できる。なお、オゾン水に代えて、次亜塩素酸またはその塩の水溶液((A2)成分および(C)成分)を使用する構成であってもよい。
【0056】
上記構成のカット野菜殺菌装置20を用いて、野菜Vのカット及び本殺菌工程S5を実施する際の動作について説明する。カット野菜殺菌装置20においては、野菜Vに対して回転移動する切断刃体33により切断してカット野菜とすることと、カット野菜を殺菌液により殺菌することが行われる。
【0057】
切断対象物である野菜Vが搬送ベルト70搬送面72に載せられ、
図3における右側から左側にむけて搬送されると、野菜Vは搬送途中から搬送ベルト80の押さえ面85で押さえられ、搬送路86の搬送終端部である前端部に到着した時点で搬送面72と押さえ面85との間で、切断刃体33からの負荷で位置ずれしない程度の挟持力をもって挟持される。
【0058】
このとき、第2搬送部32は、野菜Vによって押し上げられる形で第2搬送部32の自重および付勢部材の付勢力に抗して、揺動中心Cを中心として従動ローラ81側が上方に移動する。
【0059】
搬送面72と押さえ面85との間で挟持された野菜Vは、搬送路86から突出する先端側から、回転する切断刃体33の刃部35によって、刃部35の形状に応じた形状で連続的に喫食サイズにカットされる。切断刃体33による野菜Vのカット時には、殺菌液供給部40から供給された殺菌液Lが刃部35に連続的に注がれる。
【0060】
殺菌液Lに殺菌力が強い次亜塩素酸またはその塩等を高濃度に含有する水溶液を用いた場合には、野菜Vの食味が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態では、オゾンや低濃度の次亜塩素酸またはその塩を含む殺菌液Lを用いることで、カット野菜へのダメージを低減しカット野菜の食味低下を抑制できる。また、オゾンや低濃度の次亜塩素酸またはその塩を含む水溶液に加えてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む殺菌液Lを用いて殺菌することで、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含まない場合と比較して効果的にカット野菜を殺菌できる。
【0061】
また、連続的に野菜Vを切断した場合、野菜Vの切り口から出る有機物が刃部35に付着して二次汚染が生じる可能性がある。本実施形態では、殺菌液Lを刃部35に連続的に注ぎ刃部35を殺菌しているため、刃部35の二次汚染を抑制できる。さらに、本実施形態では、搬送路86と対向する位置の刃部35に殺菌液Lを注いでいるため、野菜Vの切断時に刃部35に注がれた殺菌液Lが野菜Vに付着することで野菜Vの殺菌も同時に行うことができる。従って、本実施形態では、カット野菜の一般生菌数を低減することが可能になる。
【0062】
また、刃部35でカットした野菜Vを、上記殺菌液Lを貯留したタンクに浸漬して殺菌することも考えられる。この場合、野菜Vの切り口から出る有機物が殺菌液Lに含まれるオゾンを消費してしまい、野菜Vに対する殺菌力が低下する。これに対して、本実施形態では、殺菌液Lを刃部35に掛け流しで注いでいるため、刃部35に注がれる殺菌液Lにおけるオゾン濃度の低下を抑制でき、刃部35および野菜Vに対する殺菌力の低下を抑えることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、カットした野菜Vを貯留した殺菌液Lに浸漬して殺菌せずに、刃部35で野菜Vをカットしながら刃部35に注ぐ殺菌液Lによりカット野菜Vを殺菌するため、喫食サイズに野菜Vをカットする際に用いる水使用量を大幅に削減することが可能になる。
【0064】
[カット野菜製造装置1]
続いて、カット野菜製造装置1およびカット野菜製造装置1を用いたカット野菜製造方法について詳細に説明する。なお、上述したカット野菜殺菌装置20およびカット野菜殺菌装置20を用いたカット野菜殺菌方法については、簡略的に説明する場合がある。
【0065】
予洗浄部11は、カット野菜殺菌装置20で切断および殺菌される前の野菜Vを予洗浄および前殺菌するエリアである。予洗浄部11においては、前殺菌工程S10におけるホール殺菌工程S1が行われる。
【0066】
本実施形態の予洗浄部11は、カット前でホール状の野菜Vを予洗浄する。予洗浄部11は、一例として、コンベアにより複数の野菜Vを搬送し、搬送経路に設けられたノズルから薬剤を含む前殺菌液を噴霧して野菜Vに対する前殺菌を行う。予洗浄部11としては、貯留槽に貯溜された薬剤を含む殺菌液に野菜Vを浸漬する構成であってもよい。
【0067】
前殺菌液は、上述した(A2)成分:次亜塩素酸またはその塩(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)と、上述した(B)成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、上述した(C)成分:水と、を含有する。
(A2)成分の含有量は、前殺菌液の総質量に対して有効塩素濃度として30~300質量ppmであり、50~250質量ppmが好ましく、100~200質量ppmがより好ましい。(A2)成分の含有量が上記下限値以上であれば、殺菌力が向上する。(A2)成分の含有量が上記上限値以下であれば、野菜や設備へのダメージが軽減できる。
(B)成分の含有量は、前殺菌液の総質量に対して5~500質量ppmであり、10~300質量ppmが好ましく、25~250質量ppmがより好ましい。(B)成分の含有量の含有量が上記下限値以上であれば、殺菌力が向上する。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、泡立ちによる作業効率の低下が軽減できる。本実施形態では、一例として、(A2)成分の含有量が有効塩素濃度として200質量ppm、pH8.9(未調整)、(B)成分の含有量が150質量ppmである。
【0068】
予洗浄部11でホール殺菌工程S1が行われたホール状の野菜Vは、野菜の前カット工程S2で所定の大きさに前カットされる。前カット工程S2で野菜Vは、例えば、半カットまたは1/4の大きさに前カットされる。例えば、野菜Vがキャベツの場合は、表面の汚れた葉を取り除いた後に半カットして芯を取り除く。
図1では図示していないが、前カット工程S2は、前カット部において自動的に切断される手順であってもよいし、作業者により切断される手順であってもよい。前カット工程S2で所定の大きさに前カットされた野菜Vは、異物除去部12に投入される。
【0069】
異物除去部12においては、異物除去工程S3が行われる。
異物除去部12は、一例として、貯留槽に貯留された上記前殺菌液に前カットされた野菜を投入しバブリングにより異物除去および前殺菌が行われる。異物除去工程S3が行われた野菜Vは、検品工程S4で異物の有無、外観等が検品される。なお、検品工程S4は、カット及び本殺菌工程S5を行った後に実施してもよい。
【0070】
異物除去工程S3および検品工程S4が行われた野菜Vは、カット野菜殺菌装置20における搬送面72に載置されて搬送され、上述した喫食サイズへのカットおよび殺菌液Lによる本殺菌が行われる。
【0071】
カット野菜殺菌装置20において、喫食サイズへのカットおよび殺菌液Lによる本殺菌が行われた野菜Vは、濯ぎ部50において搬送および濯ぎ工程S6が行われる。
図1に示すように、濯ぎ部50は、搬送部51と噴霧部52とを有している。搬送部51は、例えば、ベルトコンベアであり、喫食サイズのカット野菜を搬送する。噴霧部52は、搬送部51の上方に設けられている。噴霧部52は、搬送部51により搬送されるカット野菜に対して上方から濯ぎ水を噴霧する。濯ぎに使用する水に、オゾン水、次亜塩素酸またはその塩(好ましくはナトリウム塩)の水溶液を使用してもよい。濯ぎ水が噴霧されたカット野菜は、カット及び本殺菌工程S5で付着した界面活性剤が洗い流されて除去される。なお、噴霧部52による濯ぎ水の噴霧に代えて、濯ぎ水をシャワー状に濯ぐ構成、ため水により濯ぐ構成であってもよい。
【0072】
濯ぎ部50において搬送および濯ぎ工程S6が行われたカット野菜は、脱水部60に搬送されて脱水工程S7が行われる。なお、濯ぎ工程S6が行われる濯ぎ部50と、脱水工程S7が行われる脱水部60とを個別に設けずに、濯ぎ機能を有する脱水機を用い濯ぎ工程S6と脱水工程S7とを連続的に行う手順としてもよい。
【0073】
本実施形態のカット野菜製造装置1およびカット野菜製造方法では、カット野菜へのダメージを低減させつつカット野菜の一般生菌数を低減することが可能になる。また、本実施形態のカット野菜製造装置1およびカット野菜製造方法では、前殺菌工程S10において、次亜塩素酸ナトリウムおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有する前殺菌液で前殺菌しているため、殺菌液Lによる本殺菌前に強い殺菌力で野菜Vを殺菌して一般生菌数を低減することが可能になる。
【0074】
[一般生菌数の低減効果]
図4は、殺菌試験における殺菌液の有無および種類と、一般生菌数との関係を示す図である。
図4においては、殺菌処理をしていない「原体」、「前殺菌工程」、「オゾンを含まない水道水」、「0.8質量ppmのオゾン水」、「0.8質量ppmのオゾン水+上述した界面活性剤」、「1質量ppmのオゾン水」、「1質量ppmのオゾン水+上述した界面活性剤」を試験対象とし、「原体」および「前殺菌工程」については試験直後(D0)の一般生菌数が示され、他の殺菌液については試験直後の一般生菌数と試験から3日経過後(D3)の一般生菌数の両方が示されている。
【0075】
[試験対象]
野菜、スライス(切断)形状、処理量:キャベツ、千切り、2kg。
[野菜の洗浄方法]
次亜塩素酸ナトリウム製剤(ライオンハイジーン株式会社製、商品名「ニューブリーチ」)およびBASF社製Plurafac LF900を溶解させた殺菌液(次亜塩素酸ナトリウム200質量ppm、pH8.9(未調整)、BASF社製Plurafac LF900、150質量ppm)をあらかじめ調整した原体殺菌装置(ライオンハイジーン株式会社製、商品名「野菜キレイ噴霧洗浄機」)で2分間、ホール状態の野菜の殺菌を行った。次に、表面の汚れた葉を取り除き、2つ切りにして芯を取り除いた。続いて、次亜塩素酸ナトリウム製剤(ライオンハイジーン株式会社製、商品名「ニューブリーチ」)およびBASF社製Plurafac LF900を溶解させた殺菌液(次亜塩素酸ナトリウム200質量ppm、pH8.9(未調整)、BASF社製Plurafac LF900、50質量ppm)をあらかじめ調整したバブリング式異物洗浄機(小嶺機械株式会社製、商品名「KWM-888MS型」)で異物除去殺菌を行い、シャワー状の水で軽くすすいだ。上記処理をカット前殺菌処理とした。
続いて、スライサー(株式会社エムラ販売製、商品名「ECD-702型」)の刃部の上部から(A1)成分、(B)成分、(C)成分を含む殺菌液Lを注ぎながらカット前殺菌処理を行った野菜の喫食サイズへのカットおよび殺菌液Lによる本殺菌を行った。本殺菌を行った野菜をざる籠に入れ、ため水で2回濯ぎを行ったのち、脱水機(細田工業株式会社製、商品名「ざる籠式脱水機 DS-10K-NB」)で800RPM、60秒間で脱水を行った。
[殺菌液条件]
溶存オゾン濃度0.8質量ppmまたは1質量ppm、上述した界面活性剤5質量ppm、流速5L/min。
【0076】
図4に示されるように、試験から3日経過後(D3)の一般生菌数は、1質量ppmのオゾン水を含む殺菌液で大きな殺菌効果が認められた。さらに、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを併用することにより、殺菌効果の増大が認められた。
【実施例0077】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。なお、各例で用いた成分の配合量は、特に断りのない限り純分換算値である。
【0078】
「使用原料」
界面活性剤として、以下に示す化合物を用いた。
<(B)成分>
・B1-1:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(BASF社製、商品名「Plurafac LF900」、上記一般式(1)中、Rが炭素数10の分岐鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第二級炭素原子であり、AOがPOであり、xが7であり、yが4である化合物)。
・B1-2:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(BASF社製、商品名「Plurafac LF901」、上記一般式(1)中、Rが炭素数10の分岐鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第二級炭素原子であり、AOがPOであり、xが11であり、yが5である化合物)。
・B1-3:ポリオキシエチレンポリオキシブチレンアルキルエーテル(BASF社製、商品名「Plurafac LF120」、上記一般式(1)中、Rが炭素数10の分岐鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第二級炭素原子であり、AOがBOであり、xが8であり、yが1である化合物)。
・B1-4:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(BASF社製、商品名「Lutensol XP70」、上記一般式(1)中、Rが炭素数10の分岐鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第二級炭素原子であり、xが7であり、yが0である化合物)。
・B1-5:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(新日本理化株式会社製、商品名「コニオンEP200」、上記一般式(1)中、Rが炭素数10の直鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第一級炭素原子であり、AOがPOであり、xが6であり、yが1である化合物)。
・B1-6:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(株式会社日本触媒製、商品名「ソフタノールEP7025」、上記一般式(1)中、Rが炭素数12の分岐鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第二級炭素原子であり、AOがPOであり、xが7であり、yが2.5である化合物)。
・B1-7:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(株式会社日本触媒製、商品名「ソフタノールEP9050」、上記一般式(1)中、Rが炭素数12の分岐鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第二級炭素原子であり、AOがPOであり、xが9であり、yが5である化合物)。
・B1-8:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(新日本理化株式会社製、商品名「コニオンAEP1220」、上記一般式(1)中、Rが炭素数12の直鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第一級炭素原子であり、AOがPOであり、xが12であり、yが20である化合物)。
・B1-9:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(日本エマルジョン株式会社製、商品名「EMALEX 707」、上記一般式(1)中、Rが炭素数12の直鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第一級炭素原子であり、xが7であり、yが0である化合物)。
・B1-10:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(日本エマルジョン株式会社製、商品名「EMALEX BHA-30」、上記一般式(1)中、Rが炭素数22の直鎖状のアルキル基であり、-O-に結合するRの炭素原子が第一級炭素原子であり、xが30であり、yが0である化合物)。
【0079】
<他の界面活性剤>
((B)成分以外のノニオン界面活性剤)
・B2-1:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート」)。
・B2-2:ラウリン酸ポリグリセリル-10(太陽化学株式会社製、商品名「サンソフト Q-12Y-C」)。
・B2-3:モノカプリル酸グリセリル(太陽化学株式会社製、商品名「サンソフト No.707-C」)。
・B2-4:モノラウリン酸グリセリル(太陽化学株式会社製、商品名「サンソフト No.750-C」)。
・B2-5:カプリル酸ポリグリセリル-6(太陽化学株式会社製、商品名「サンソフト Q-8H-C」)。
・B2-6:ソルビタンモノカプリレート(日油株式会社製、商品名「食添ノニオン CP-08R」)。
・B2-7:ショ糖ラウリン酸エステル(三菱ケミカル株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステル L-1695」)。
(アニオン界面活性剤)
・アニオン界面活性剤:ラウリル硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「ドデシル硫酸ナトリウム」)。
【0080】
「測定・評価方法」
<殺菌力の評価(1):保存前>
カット殺菌処理した野菜25gを滅菌されたホモジナイズ用の袋に計り取り、滅菌済みの生理食塩水225gを入れてホモジナイザー(ELMEX社製、商品名「SH-IIM」)で処理し、菌液とした。
滅菌済みの生理食塩水で適宜希釈した菌液1mLを滅菌済みのディスポシャーレに分注し、121℃、1.4気圧で25分間滅菌処理した標準寒天培地と混釈法によって混合し、37℃で48時間培養した。
シャーレに培養されたコロニーを30~300個の範囲で計測し、希釈倍率を乗算して生菌数を算出した。生菌数は常用対数(log)に変換し、これを「カット殺菌処理した野菜の菌数」とした。
カット前殺菌処理を行った野菜についても同様にして一般生菌数を算出し、常用対数(log)に変換し、これを「未処理の菌数」とした。
カット殺菌処理した野菜の菌数から未処理の菌数を差し引き、これを「殺菌活性値」とし、以下の評価基準にて殺菌力を評価した。
≪評価基準≫
○:殺菌活性値が0.5未満。
△:殺菌活性値が0.5以上、1.5未満。
×:殺菌活性値が1.5以上。
【0081】
<殺菌力の評価(2):保存後>
カット殺菌処理した後の野菜をOPP袋(伊藤忠リーテイルリンク株式会社製)に入れ密封し、バイオマルチクーラー(日本フリーザー株式会社製、商品名「UKS-3600HC」)で、10℃にて3日間保存した。
保存後の野菜について、殺菌力の評価(1)と同様にして殺菌活性値を求め、以下の評価基準にて殺菌力を評価した。
≪評価基準≫
○:殺菌活性値が1.5未満。
△:殺菌活性値が1.5以上、2.5未満。
×:殺菌活性値が2.5以上。
【0082】
<野菜の外観の評価>
カット殺菌処理した後の野菜をOPP袋(伊藤忠リーテイルリンク株式会社製)に入れ密封し、バイオマルチクーラー(日本フリーザー株式会社製、商品名「UKS-3600HC」)で、10℃にて3日間保存した。
保存後の野菜の外観を目視にて観察し、以下の評価基準にて野菜の外観を評価した。
≪評価基準≫
◎:変色していない。
○:黄色に変色している。
×:褐色に変色している。
【0083】
<野菜の味、香りの評価>
カット殺菌処理した後の野菜をOPP袋(伊藤忠リーテイルリンク株式会社製)に入れ密封し、バイオマルチクーラー(日本フリーザー株式会社製、商品名「UKS-3600HC」)で、10℃にて3日間保存した。
保存後の野菜をパネラが試食し、以下の評価基準にて野菜の味、香りを評価した。
≪評価基準≫
○:甘味があり、野菜特有の香りが感じられる。
×:苦味や薬品様の味があり、アルコールや薬品様の香りが感じられる。
【0084】
「実施例1~16、比較例2~17」
<殺菌液の調製>
オゾン水生成装置(株式会社ハマネツ製、商品名「HOW-2005」)に7℃に冷却した水道水を通水し、オゾン水を調製した。なお、殺菌液の総質量に対するオゾン((A1)成分)の含有量(質量ppm)が表1~7に示す値となるように、オゾン水中の(A1)成分の濃度を調整した。
殺菌液の総質量に対する界面活性剤の含有量(質量ppm)が表1~7に示す値となるように、得られたオゾン水に表1~7に示す種類の界面活性剤を添加し、殺菌液を調製した。なお、(C)成分の含有量は、殺菌液の総質量から(C)成分以外の成分の含有量の合計を除いた「残部」として、表1~7に記載した。
得られた殺菌液を用い、表1~7に示す種類の野菜を以下のようにして殺菌処理し、殺菌力、野菜の外観、及び野菜の味、香りを評価した。結果を表1~7に示す。
【0085】
<野菜の殺菌処理>
次亜塩素酸ナトリウム製剤(ライオンハイジーン株式会社製、商品名「ニューブリーチ」)およびBASF社製Plurafac LF900を溶解させた殺菌液(次亜塩素酸ナトリウム200質量ppm、pH8.9(未調整)、BASF社製Plurafac LF900、150質量ppm)をあらかじめ調整した原体殺菌装置(ライオンハイジーン株式会社製、商品名「野菜キレイ噴霧洗浄機」)で2分間、ホール状態の野菜の殺菌を行った。次に、キャベツについては、表面の汚れた葉を取り除き、2つ切りにして芯を取り除いた。レタスについては、表面の汚れた葉を取り除き、芯を取り除いて2つ切りにした。大根については、皮をむき、5cmの長さにカットした。続いて、次亜塩素酸ナトリウム製剤(ライオンハイジーン株式会社製、商品名「ニューブリーチ」)およびBASF社製Plurafac LF900を溶解させた殺菌液(次亜塩素酸ナトリウム200質量ppm、pH8.9(未調整)、BASF社製Plurafac LF900、50質量ppm)をあらかじめ調整したバブリング式異物洗浄機(小嶺機械株式会社製、商品名「KWM-888MS型」)で異物除去殺菌を行い、シャワー状の水で軽くすすいだ。上記処理をカット前殺菌処理とした。
続いて、スライサー(株式会社エムラ販売製、商品名「ECD-702型」)の刃部の上部から(A1)成分と(A2)成分から選択される少なくとも1種、(B)成分及び(C)成分を含有する殺菌液Lを注ぎながらカット前殺菌処理を行った野菜の喫食サイズへのカットおよび殺菌液Lによる本殺菌を行った。本殺菌を行った野菜をざる籠に入れ、ため水で2回濯ぎを行ったのち、脱水機(細田工業株式会社製、商品名「ざる籠式脱水機 DS-10K-NB」)で800RPM、60秒間で脱水を行った。
【0086】
「比較例1」
殺菌液の総質量に対する界面活性剤の含有量(質量ppm)が表4に示す値となるように、(C)成分として水道水に、表4に示す種類の界面活性剤を添加し、殺菌液を調製した。
得られた殺菌液を用い、表4に示す種類の野菜を実施例1~16、比較例2~17と同様にして殺菌処理し、殺菌力、野菜の外観、及び野菜の味、香りを評価した。結果を表4に示す。
【0087】
「実施例17~20、比較例18~21」
(C)成分として水道水に、0.2MPaの圧力で炭酸ガスを溶解させた後、有効塩素濃度が表1~7に示す値となるように、(A2)成分として次亜塩素酸ナトリウムを添加し、殺菌液を調製した。得られた殺菌液(すなわち、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液)の25℃におけるpHは5.8であった。なお、表1~7には、殺菌液中の有効塩素濃度(質量ppm)を次亜塩素酸ナトリウムの含有量として記載した。
得られた殺菌液を用い、表1~7に示す種類の野菜を実施例1~16、比較例2~17と同様にして殺菌処理し、殺菌力及び野菜の外観を評価した。結果を表1~7に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
表1~3から明らかなように、実施例1~20で調製した殺菌液を用いて野菜を殺菌処理した場合は、優れた殺菌力を発揮できた。また、これらの殺菌液は、実施例19を除き野菜の外観、味、香りへの影響が低かった。
一方、表4~6から明らかなように、(A1)成分の含有量が1質量ppm未満である比較例1、2で調製した殺菌液は、殺菌力に劣っていた。
界面活性剤を含まない比較例3、4で調製した殺菌液は、殺菌力に劣っていた。特に、(A1)成分の含有量が1質量ppm未満である比較例3で調製した殺菌液は、殺菌力により劣っていた。
(B)成分の含有量が1000質量ppmである比較例5で調製した殺菌液は、殺菌力に劣っていた。
(B)成分を含まず、(B)成分以外のノニオン界面活性剤を含む比較例6~16で調製した殺菌液は、殺菌力に劣っていた。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含まず、アニオン界面活性剤を含む比較例17で調製した殺菌液は、殺菌力に劣っていた。
また、表7から明らかなように、(A2)成分の含有量が30質量ppm未満である比較例18で調製した殺菌液は、殺菌力に劣っていた。
(A2)成分の含有量が150質量ppmである比較例19で調製した殺菌液は、野菜の外観への影響が高かった。
界面活性剤を含まない比較例20、21で調製した殺菌液は、殺菌力に劣っていた。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0097】
例えば、上記実施例では、殺菌液Lとして、(A1)成分または(A2)成分のいずれかを用いる構成を例示したが、(A1)成分と(A2)成分の両方を用いる構成であってもよい。
1…カット野菜製造装置、 10…前殺菌部、 11…予洗浄部、 12…異物除去部、 20…カット野菜殺菌装置、 30…野菜カット部、 33…切断刃体、 35…刃部、 40…殺菌液供給部、 50…濯ぎ部、 60…脱水部、 L…殺菌液、 V…野菜