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特開2022-185501閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185501
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/37 20060101AFI20221207BHJP
   A61P 21/06 20060101ALI20221207BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20221207BHJP
【FI】
A61K31/37
A61P21/06
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093239
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 賢則
(72)【発明者】
【氏名】古旗 賢二
(72)【発明者】
【氏名】中谷 祥恵
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD08
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA94
(57)【要約】
【課題】本開示の課題は、少なくとも、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させる技術の提供である。
【解決手段】ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための組成物。
【請求項2】
前記閉経後の女性が、高カロリー食を摂取する女性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記筋肉の重量が下腿三頭筋の重量及び足底筋の重量の合計重量である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の寝たきりを予防するための組成物。
【請求項5】
前記寝たきりが、前記閉経後の女性の筋肉の重量の増加によって予防される寝たきりである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ウロリチン類が、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンC、又はウロリチンHである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
飲食品である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
医薬品である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢や疾患等により筋肉量が減少し、筋力低下や身体機能低下を来したサルコペニアという状態が注目されている。サルコペニアの状態では、歩くのが遅くなる、握力が弱くなるなどの症状が現れ、要介護又は要支援のリスクが増加する。サルコペニアは、高齢者のQOL(Quality of Life)や健康寿命を低下させる大きな要因であり、サルコペニアを
予防することは超高齢社会を迎えた日本の大きな課題である。サルコペニア以外にも、筋肉量の減少が一要因であるフレイルやロコモティブシンドロームを予防することも大きな課題である。
【0003】
また、更年期の女性では筋肉量が減少することが知られている。更年期の女性の動物モデルである卵巣切除マウスにおいても下腿三頭筋の筋肉量の減少が報告されている(非特許文献1)。
【0004】
これに対し、様々な筋肉量増加剤などが開発されている。例えば、レモン果汁、オリゴ糖酸、及びカルシウムを有効成分とする筋肉量増加用組成物が開発されている(特許文献1)。該文献では、レモン果汁、オリゴ糖酸カルシウム、果糖ブドウ糖液、甘味料、及び香料を含有する試験飲料を継続的に摂取した閉経後の中高年女性群において、5か月後の四肢の筋肉量が、該試験飲料を摂取しなかった閉経後の中高年女性群と比較して有意に増加したことが報告されている。
【0005】
一方、ウロリチン類という化合物が知られている。ウロリチンAやウロリチンCに代表されるウロリチン類は、ザクロ、ラズベリー、ブラックベリー、クラウドベリー、イチゴ、クルミなどに含まれるエラジタンニン等に由来するエラグ酸の代謝物として知られている。エラジタンニンは加水分解性タンニンに分類され、対象に摂取されると生体内で加水分解され、エラグ酸に変換されることが知られている。
これまでに、例えば、生体内におけるウロリチン類の生成については、ラットにおいて、ゲラニインなどのエラジタンニンからウロリチン類が生じることが、尿中のウロリチン類を分析することによって明らかにされている(非特許文献2)。
また、ヒトにおいて、プニカラジンを主としたエラジタンニンを含むザクロ抽出物を摂取後、尿中においてウロリチン類が検出され、特にウロリチンA及びウロリチンCが主要なエラグ酸代謝物であることが報告されている(非特許文献3)。
これらのウロリチン類は様々な生理活性を有することが知られており、医薬品、化粧品、飲食品の素材としての利用が期待されている。例えば、ウロリチンAには抗酸化作用、抗炎症作用、抗糖化作用、マイトファジー促進作用等を有することが報告されている(非特許文献4~7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-153166号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Home Econ. Jpn., Vol.47, No.12, 1173-1180 (1996)
【非特許文献2】J. Agric. Food Chem., 56, 393-400 (2008)
【非特許文献3】Mol. Nutr. Food Res., 58, 1199-1211 (2014)
【非特許文献4】Biosci. Biotechnol. Biochem., 76, 395-399 (2012)
【非特許文献5】J. Agric. Food Chem., 60, 8866-8876 (2012)
【非特許文献6】Mol. Nutr. Food Res., 55, S35-S43 (2011)
【非特許文献7】Nature Medicine, 22, 879-888 (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の課題は、少なくとも、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させる技術の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1>ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための組成物。
<2>前記閉経後の女性が、高カロリー食を摂取する女性である、<1>に記載の組成物。
<3>前記筋肉の重量が下腿三頭筋の重量及び足底筋の重量の合計重量である、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4>ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の寝たきりを予防するための組成物。
<5>前記寝たきりが、前記閉経後の女性の筋肉の重量の増加によって予防される寝たきりである、<4>に記載の組成物。
<6>前記ウロリチン類が、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンC、又はウロリチンHである、<1>~<5>のいずれかに記載の組成物。
<7>飲食品である、<1>~<6>のいずれかに記載の組成物。
<8>医薬品である、<1>~<6>のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、少なくとも、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させる技術の提供という効果を奏し得る。また、そのための有効成分を提供するという効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0012】
本開示の一態様は、ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための組成物である。
【0013】
本態様で用いられるウロリチン類は、下記一般式(1)で表される。
【化1】
(式中、R1~R6は、それぞれ独立に、水酸基、水素原子又はメトキシ基を表す。)尚、通常、ウロリチン類とはR1~R6のうち1つ以上が水酸基である化合物を指すが、本明細書では、R1~R6のすべてが水素原子であるウロリチンHもウロリチン類に含まれるものとする。
【0014】
本態様で用いられるウロリチン類としては、例えば、表1に示すように、化学式におけるR1~R6によって、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンC、ウロリチンD、ウロリチンE、ウロリチンH、ウロリチンM3、ウロリチンM4、ウロリチンM5、ウロリチンM6、ウロリチンM7、及びイソウロリチンAなどが挙げられる。
【0015】
【表1】
【0016】
本態様で用いられるウロリチン類としては、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させることができれば特に限定されず、一を用いてもよいし複数を用いてもよい。好ましくは、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンC、又はウロリチンHである。
【0017】
本態様で用いられるウロリチン類は、市販されているものを用いてもよく、化学合成により合成したものを用いてもよい。
市販のウロリチン類としては、例えば、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンC、ウロリチンD、ウロリチンE(Dalton Pharma社製)、ウロリチンH(Sigma Aldrich社製、尚、「6H-BENZO[C]CHROMEN-6-ONE」と称されることがある。)などを挙げることができる。
また、化学合成による合成方法としては常法に従うことができ、ウロリチンAであれば、例えば、後述する実施例で説明するように、2-ブロモ-5-メトキシ安息香酸と塩化アルミニウムとを原料に用いてウロリチンAを合成する方法が挙げられる。
【0018】
また、植物からエラジタンニンの一種であるプニカラジンを抽出し、これをエラグ酸に加水分解した後、もしくはエラグ酸を抽出し、微生物を用いてウロリチン類に変換してもよい。
植物の種類は特段限定されず、ザクロ、ラズベリー、ブラックベリー、クラウドベリー、ボイセンベリー、イチゴ、クルミ、ゲンノショウコ等が挙げられる。このうち、エラジタンニン及び/又はエラグ酸を高含有していることから、ザクロ、ボイセンベリー、ゲン
ノショウコが好ましく、ザクロがより好ましい。
これらの植物は、いずれか1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、該植物からの抽出方法及び抽出条件は特段限定されず、常法に従えばよい。例えば、水抽出、熱水抽出、温水抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の公知の抽出方法を用いることができる。
【0019】
溶媒抽出を行う場合、溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等の低級アルコールや、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない);アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類、キシレン等が挙げられ、好ましくは水、エタノール等である。これらの溶媒は、いずれか1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
抽出したプニカラジンなどのエラジタンニンをエラグ酸に加水分解する方法としては特段限定されないが、酸、酵素、微生物によって加水分解する方法が挙げられる。
微生物を用いてエラグ酸をウロリチン類に変換する方法としては特段限定されないが、例えば、Food Funct., 5, 8, 1779-1784 (2014)に記載にされている公知の方法を用いる
ことができる。
【0020】
得られたウロリチン類をそのままの状態で使用することもできるが、乾燥させて粉末状のものを用いてもよい。また、必要に応じて、得られたウロリチン類に精製、濃縮処理等を施してもよい。精製処理としては、濾過又はイオン交換樹脂や活性炭カラム等を用いた吸着、脱色といった処理を行うことができる。また、濃縮処理としては、エバポレーター等の常法を利用できる。
【0021】
また、得られたウロリチン類(又は精製処理物若しくは濃縮物)を凍結乾燥処理に供して粉末化する方法、デキストリン、コーンスターチ、アラビアゴム等の賦形剤を添加してスプレードライ処理により粉末化する方法等、公知の方法に従って粉末化してもよい。さらにその後に、必要に応じて純水、エタノール等に溶解して用いてもよい。
【0022】
本態様に係る組成物が含むウロリチン類は、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させる作用を有する。すなわち、例えば、閉経後の女性がウロリチン類を摂取したときに、摂取しないとき(又はプラセボを摂取したとき、又はウロリチン類を摂取する前)よりも、筋肉の重量が増加する。したがって、ウロリチン類は、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための組成物の有効成分として使用することができる。
尚、本態様に係る組成物は、混合物であってよく、その成分が均一でも不均一でもよい。また、本開示では、「摂取」、「摂取する」、「摂取した」などの語は、医薬品に用いられる場合には、それぞれ、「投与」、「投与される」、「投与された」などの語に置き換えることができる。
【0023】
本態様に係る組成物を摂取する対象は、閉経後の女性(閉経後のヒトの女性)である。閉経とは、加齢とともに卵巣の活動性が低下し、月経が永久に停止することをいう。女性が閉経を迎える年齢は個人によって異なるが、本態様における閉経後の女性は、好ましくは40歳以上の閉経後の女性であり、より好ましくは45歳以上の閉経後の女性であり、さらに好ましくは50歳以上の閉経後の女性であり、よりさらに好ましくは65歳以上の閉経後の女性である。尚、本明細書において「高齢者」とは、65歳以上のヒトを指すものとする。一方で、本態様における閉経後の女性の年齢に上限はないが、例えば、死亡時までであってよいし、100歳以下であってもよい。
【0024】
前記閉経後の女性は、好ましくは、高カロリー食を摂取する女性である。「高カロリー食を摂取する」とは、活動に必要なエネルギー量を超えたカロリー量の食事を摂取するこ
とをいう。そのため、「高カロリー食」とは、それを継続して摂取した場合に、標準食を継続して摂取した場合と比較して対象に増体を招く食事のことをいう。通常、高カロリー食を摂取すると体重が増加する。高カロリー食としては、例えば、高脂肪食(高スクロース食ではない。)や、高スクロース食(高脂肪食ではない。)、「高脂肪かつ高スクロース食(高脂肪高スクロース食とも言う。)」等が挙げられる。
【0025】
本態様における筋肉としては、本態様に係る組成物を摂取した閉経後の女性において重量が増加する筋肉であれば特に制限されないが、例えば、抗重力筋、下肢の筋肉等が挙げられる。
抗重力筋としては、脊柱起立筋、腹直筋、大臀筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋等が挙げられる。
下肢の筋肉としては、下肢帯筋、大腿筋、下腿筋、足筋等が挙げられる。これらの中では下腿筋が好ましい。
下腿筋としては、下腿伸筋群の筋肉、腓骨筋、下腿屈筋群の筋肉等が挙げられる。これらの中では、下腿伸筋群の筋肉、下腿屈筋群の筋肉が好ましい。
下腿伸筋群の筋肉としては、前頸骨筋、長趾伸筋(長指伸筋)、第三腓骨筋、長母趾伸筋等が挙げられる。
下腿屈筋群の筋肉としては、足底筋(足底屈筋)、膝窩筋、下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋等)、長趾屈筋、後頸屈筋、長母趾屈筋等が挙げられる。これらの中では、足底筋(足底屈筋)、下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋等)が好ましい。
本態様における筋肉は、一の筋肉であってもよいし、複数の筋肉であってもよい。
【0026】
本態様における筋肉の重量は、例えば、(コンピューター画像診断法、核磁気共鳴画像法、二重エネルギーX線吸収法、生体バイオインピーダンス法、超音波(エコー検査)法、筋肉面積計測、筋肉周囲長計測など)のようにして確認することができる。
また、前記筋肉が下腿三頭筋である場合、下腿三頭筋の重量は、例えば、下腿の最も太い部分である下腿周囲長を測定し、下腿周囲長から下腿筋量を確認することもできる。
尚、下腿三頭筋の重量及び足底筋の重量の合計重量は、下腿三頭筋の重量と足底筋の重量とを足し合わせればよい。
【0027】
本態様に係る組成物を摂取したときの閉経後の女性の筋肉の重量は、閉経後の女性が本態様に係る組成物を摂取しないとき(又はプラセボを摂取したとき、又は本態様に係る組成物を摂取する前)の筋肉の重量を基準として、1.05倍以上増加することが好ましく、1.10倍以上増加することがより好ましく、1.15倍以上増加することがさらに好ましい。一方で、例えば、2.0倍以下増加することが好ましい。
【0028】
このとき、閉経後の女性が本態様に係る組成物を摂取しないとき(又はプラセボを摂取したとき、又は本態様に係る組成物を摂取する前)の筋肉の重量は、特に制限されないが、好ましくは20kg以上、より好ましくは25kg以上、さらに好ましくは30kg以上であり、一方で、好ましくは50kg以下、より好ましくは45kg以下、さらに好ましくは40kg以下である。
【0029】
本態様に係る組成物を摂取したときの閉経後の女性の、下腿三頭筋の重量及び足底筋の重量の合計重量は、閉経後の女性が本態様に係る組成物を摂取しないとき(又はプラセボを摂取したとき、又は本態様に係る組成物を摂取する前)の、下腿三頭筋の重量及び足底筋の重量の合計重量を基準として、1.05倍以上増加することが好ましく、1.10倍以上増加することがより好ましく、1.15倍以上増加することがさらに好ましい。一方で、例えば、2.0倍以下増加することが好ましい。
【0030】
このとき、閉経後の女性が本態様に係る組成物を摂取しないとき(又はプラセボを摂取
したとき、又は本態様に係る組成物を摂取する前)の、下腿三頭筋の重量及び足底筋の重量の合計重量は、特に制限されないが、好ましくは150g以上、より好ましくは200g以上、さらに好ましくは250g以上であり、一方で、好ましくは500g以下、より好ましくは450g以下、さらに好ましくは400g以下である。
【0031】
本態様に係る組成物は、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させる作用を有している。そのため、閉経後の女性において筋肉の重量の増加によって予防又は治療され得る疾患、症候、症状又は障害(本開示では、「疾患、症候、症状又は障害」を「疾患等」と記載することがある。)等の予防又は治療に使用することができる。尚、「治療」には、改善も含まれる。また、対象である閉経後の女性は、一又は複数の疾患等を有していてよい。このような疾患等としては、例えば、寝たきり、サルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドローム等が挙げられる。
したがって、本開示の他の一態様は、例えば、ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の寝たきりを予防するための組成物である。前記寝たきりは、前記閉経後の女性の筋肉の重量の増加によって予防される寝たきりであることが好ましい。
【0032】
本態様に係る組成物におけるウロリチン類の含量は、組成物の態様によって適宜設定されるが、ウロリチン類の総量として、通常0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、また、通常50重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0033】
本態様に係る組成物の有効摂取量は、組成物の形態、用法、対象、対象の齢、性別、及びその他の条件等により適宜設定されるが、それを摂取した対象である閉経後の女性において、筋肉の重量を増加させる作用が発揮される限り特に制限されない。本態様に係る組成物の有効摂取量は、ウロリチン類の総量として、1日当たり、通常0.01mg/50kg体重以上、好ましくは0.1mg/50kg体重以上、より好ましくは1mg/50kg体重以上であり、また、通常5000mg/50kg体重以下、好ましくは500mg/50kg体重以下、より好ましくは50mg/50kg体重以下である。
また、本態様に係る組成物は、1日1回又は複数回に分けて摂取することができる。また、数日又は数週間に1回の摂取としてもよいが、毎日摂取することが好ましい。また、摂取期間は11週間以上が好ましい。
【0034】
本態様に係る組成物は、経口的に摂取することができる。ただし、体内に吸収される経路であれば特に制限されない。
【0035】
本態様に係る組成物の好ましい態様としては、飲食品(サプリメントを含む。)、医薬品等が例示できる。すなわち、本開示により提供することができる好ましい態様として、ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための飲食品、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための医薬品、ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の寝たきりを予防するための飲食品、ウロリチン類を有効成分として含む、閉経後の女性の寝たきりを予防するための医薬品等が例示できる。
【0036】
ウロリチン類を飲食品の素材として用いる場合、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品、食品添加物等(これらには飲料も含まれる。)として使用できる。飲食品の形態としては、ウロリチン類を含有する植物自体や動物自体ではない形態でもよく、例えば、適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
【0037】
前記飲食品は、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を主成分とすることができる。タンパク質としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、及びこれらの加水分解物、バターなどが挙げられる。糖質としては、糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよく、合成品及び/又はこれらを多く含む飲食品を用いてもよい。
【0038】
前記飲食品は、常法に従って製造することができる。また、ウロリチン類への配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、必要に応じて、瓶、袋、缶、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
【0039】
前記飲食品全量に対するウロリチン類の含有量は、製剤形態などにより適宜設定されるが、ウロリチン類の総量として、好ましくは0.00001重量%以上、より好ましくは0.0001重量%以上、さらに好ましくは0.001重量%以上である。一方で、好ましくは10重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
【0040】
前記飲食品の有効摂取量は、対象の齢、体重、疾患等、その程度、摂取経路、摂取スケジュール、製剤形態などにより適宜設定されるが、それを閉経後の女性が摂取することにより、該閉経後の女性において筋肉の重量が増加する限り特に制限されず、ウロリチン類の総量として、1日当たり、通常0.01mg/50kg体重以上、好ましくは0.1mg/50kg体重以上、より好ましくは1mg/50kg体重以上であり、また、通常5000mg/50kg体重以下、好ましくは500mg/50kg体重以下、より好ましくは50mg/50kg体重以下である。
また、前記飲食品は、1日1回又は複数回に分けて摂取することができる。また、数日又は数週間に1回の摂取としてもよいが、毎日摂取することが好ましい。また、摂取期間は11週間以上が好ましい。
【0041】
ウロリチン類を医薬品の素材として用いる場合、医薬品としての適用方法は、経口投与又は非経口投与のいずれも採用することができる。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などが挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。前記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングルコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0042】
前記医薬品全量に対するウロリチン類の含有量は、製剤形態などにより適宜設定されるが、ウロリチン類の総量として、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上である。一方で、好ましくは50重量%以下、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0043】
前記医薬品の有効投与量は、対象の齢、体重、疾患等、その程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態などにより適宜設定されるが、それを閉経後の女性に投与されることにより、該閉経後の女性において筋肉の重量が増加する限り特に制限されず、ウロリチン類の総量として、1日当たり、通常0.01mg/50kg体重以上、好ましくは0.1mg/50kg体重以上、より好ましくは1mg/50kg体重以上であり、また、通常5000mg/50kg体重以下、好ましくは500mg/50kg体重以下、より好ましくは50mg/50kg体重以下である。
また、前記医薬品は、1日1回又は複数回の投与であってよい。また、数日又は数週間に1回の投与としてもよいが、毎日の投与が好ましい。また、投与期間は11週間以上が好ましい。
【0044】
本開示は、下記の態様を提供することもできる。
例えば、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための組成物を製造するための、前記ウロリチン類の使用、を提供することができる。
また、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させることによって予防又は治療され得る疾患等の予防又は治療における使用のための、前記ウロリチン類、を提供することができる。
また、前記ウロリチン類の予防的又は治療的有効量を、予防又は治療を必要とするヒト又は患者に投与することを含む、筋肉の重量を増加させることによって予防又は治療され得る疾患等の予防方法又は治療方法であって、前記ヒト又は患者が閉経後の女性である、予防方法又は治療方法、を提供することができる。
また、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させるための、前記ウロリチン類の使用、を提供することができる。
また、閉経後の女性の筋肉の重量の増加に用いられる、前記ウロリチン類、を提供することができる。
また、前記ウロリチン類を閉経後の女性に投与する段階を含む、閉経後の女性の筋肉の重量を増加させる方法、を提供することができる。
【0045】
また、閉経後の女性の寝たきりを予防するための組成物を製造するための、前記ウロリチン類の使用、を提供することができる。
また、閉経後の女性の寝たきりの予防における使用のための、前記ウロリチン類、を提供することができる。
また、前記ウロリチン類の予防的有効量を、予防を必要とするヒト又は患者に投与することを含む、寝たきりの予防方法であって、前記ヒト又は患者が閉経後の女性である、予防方法、を提供することができる。
また、閉経後の女性の寝たきりの予防のための、前記ウロリチン類の使用、を提供することができる。
また、閉経後の女性の寝たきりの予防に用いられる、前記ウロリチン類、を提供することができる。
また、前記ウロリチン類を閉経後の女性に投与する段階を含む、閉経後の女性の寝たきりを予防する方法、を提供することができる。
【実施例0046】
以下に実施例を記載するが、いずれの実施例も、限定的な意味として解釈される実施例ではない。
【0047】
(ウロリチン類の調製)
2-ブロモ-5-メトキシ安息香酸5 g(和光純薬工業株式会社製)と塩化アルミニウ
ム15 gを150 mLのクロロベンゼン中で2.5時間還流した。冷却後、反応液を氷水に移し、250 mLのジエチルエーテルを用いて3回抽出を行った。得られた抽出液を減圧濃縮してジエチルエーテルを留去し、2-ブロモ-5-ヒドロキシ安息香酸4.2 gを得た。得られた2
-ブロモ-5-ヒドロキシ安息香酸3.9 gとレゾルシノール3.9 g(東京化成工業株式会社製)を9 mLの4M NaOH水溶液中で60℃、30分間加熱した。この反応液に10 %硫酸銅水溶液1.8 mLを加えた後、更に80℃、10分間の加熱を行った。生成した沈殿物をろ過によって回
収し、ウロリチンAの白色粉末を得た。
【0048】
(実施例1)
被検動物として、卵巣および卵管を摘出した7週齢の雌性ddyマウス(東京実験動物株式会社)を使用した。当該技術分野では閉経後モデル動物として用いられるマウスである。
試験群として6匹のマウスに、0.05 重量%のウロリチンAを含む高脂肪高スクロース食
(HFS+UA)を飼料として11週間摂取させた。飼料である高脂肪高スクロース食(HFS)に
は、28 重量%脂肪と30 重量%スクロースが含まれていた。
マウスはそれぞれ個別ケージで飼育し、前記飼料および水道水を自由摂取させ、11週間飼育した。飼育環境は、温度21±1℃、湿度45-50 %、12時間ごとの明暗サイクル(明期:7:00-19:00)で行った。11週間後、三種混合麻酔(7.5 %ドミトール(日本全薬工業、福
島、日本)、8 %ミタゾラム(サンド株式会社、山形、日本)、10 %ベントフェノール(Meiji seika ファルマ株式会社)を含む。)およびイソフルランの共麻酔下での下大静脈の採血によりマウスを屠殺した後、下腿三頭筋及び足底筋をマウスから摘出し、摘出した下腿三頭筋の重量及び足底筋の重量を天秤により秤量した。
【0049】
(比較例1)
飼料として、ウロリチンAを含まない高脂肪高スクロース食(HFS)を使用したこと以
外は実施例1と同様に実施した。
【0050】
(結果)
比較例1で秤量された下腿三頭筋の重量及び足底筋の重量の合計重量を100としたとき
の、実施例1で秤量された下腿三頭筋の重量及び足底筋の重量の合計重量(相対値)は118であった。すなわち、ウロリチンAを摂取することで、閉経後モデル動物の下腿三頭筋
の重量及び足底筋の重量の合計重量が増加することが示された。