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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185509
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】通信装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20221207BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20221207BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20221207BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20221207BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20221207BHJP
【FI】
H04B7/06 950
H04B7/08 800
H01Q3/26 Z
H01Q1/24 Z
H04W16/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093249
(22)【出願日】2021-06-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発/基地局RUの高性能化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】芝 祥一
【テーマコード(参考)】
5J021
5J047
5K067
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021FA13
5J021GA01
5J021HA02
5J047AA02
5J047AA03
5J047AB03
5J047FD01
5K067AA23
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE41
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】装置の設置状態にかかわらず、ビームIDごとにオンサイト上で適切なカバー面積にできること。
【解決手段】通信装置100は、複数のビームID1~nに対しビームフォーミングを行いオンサイト上の端末と無線通信し、ビームID1~nごとにアンテナが放射するビーム幅のビーム制御情報を記憶する記憶部と、ビーム制御情報に基づいてビームID1~nごとのビーム幅でビーム制御を行うビーム制御部とを有する。例えば、通信装置100の設置の高さや角度θに基づき、通信装置100に近いオンサイトに投影されるビームID1のビーム幅B1を広くし、通信装置100から遠いオンサイトに投影されるビームID3,6になるほどビーム幅B2,B3を狭くし、オンサイトに投影される複数のビームID1,3,6のカバー面積Sを均一にする。これにより、複数のビームID1~nでのスループットが向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のビームIDに対しビームフォーミングを行いオンサイト上の端末と無線通信する通信装置において、
前記ビームIDごとにアンテナが放射するビーム幅のビーム制御情報を記憶する記憶部と、
前記ビーム制御情報に基づいて前記ビームIDごとのビーム幅でビーム制御を行うビーム制御部と、
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記ビーム制御部は、
自通信装置の設置の条件に基づき、自通信装置に近いオンサイトに投影されるビームIDの前記ビーム幅を広くし、自通信装置から遠いオンサイトに投影されるビームIDになるほど前記ビーム幅を狭くし、前記オンサイトに投影される複数のビームIDのカバー面積を均一にする制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記ビーム制御部は、
前記ビーム幅の垂直方向と水平方向のうち前記垂直方向に対し、前記ビーム幅の制御を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記ビーム制御部は、
前記ビーム幅の垂直方向と水平方向のうち前記垂直方向に対し、自通信装置に近いオンサイトに投影されるビームIDの送信電力を低くし、自通信装置から遠いオンサイトに投影されるビームIDになるほど送信電力を高くし、複数のビームIDのカバー面積の電力を均一にする制御を行う、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記ビーム制御部は、
前記ビームIDのビーム幅を前記角度ごとに補正する補正情報を前記制御情報として前記記憶部に記憶保持し、
検出した自通信装置の角度に対応する前記補正情報を選択し、前記ビーム幅を制御する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の通信装置。
【請求項6】
自通信装置の前記角度を検出するセンサを有し、
前記ビーム制御部は、
検出した自通信装置の前記角度に対応する前記補正情報を選択し、前記ビーム幅を制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
自通信装置の前記角度が姿勢制御装置により変更自在に制御され、
前記ビーム制御部は、
前記姿勢制御装置が変更した角度の情報に基づき、自通信装置の前記角度に対応する前記制御情報を選択し、前記ビーム幅を制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項8】
前記ビーム制御部は、
自通信装置の前記角度を所定時期ごとに取得し、前記角度の変更時には、変更後の角度に対応する前記補正情報を選択し、前記ビーム幅を制御する、
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか一つに記載の通信装置。
【請求項9】
複数のビームIDに対しビームフォーミングを行いオンサイト上の端末と無線通信する通信装置の通信方法において、
前記ビームIDごとにアンテナが放射するビーム幅のビーム制御情報を記憶部に記憶しておき、
前記ビーム制御情報に基づいて前記ビームIDごとのビーム幅でビーム制御を行う、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする通信方法。
【請求項10】
自通信装置の設置の条件に基づき、自通信装置に近いオンサイトに投影されるビームIDの前記ビーム幅を広くし、自通信装置から遠いオンサイトに投影されるビームIDになるほど前記ビーム幅を狭くし、前記オンサイトに投影される複数のビームIDのカバー面積を均一にする制御を行う、
ことを特徴とする請求項9に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5Gの通信方式では、Radio Unit(RU)の装置は、ビームIDによるビーム選択(ビームフォーミング)を行い端末との間で無線通信する。ビームIDは、RUから見た水平方向(Azimuth)と、垂直方向(Elevation)の組み合わせで配置されている。
【0003】
無線電波のビーム技術としては、例えば、アンテナの垂直ビーム幅を、設置高、エリア半径、垂直ビーム幅、チルト角に基づき設定することで、エリア内のいずれの場所でも所定の電界強度とする技術がある。また、チルト角が異なる複数のビームを出力し、垂直方向にセクタ化される複数のセルについて、ユーザ端末の分布に応じて垂直面ビーム幅または送信電力を制御してセルのカバレッジエリアを可変する技術がある。また、アクセスポイント等の通信機器にセンサを設け、設置状態の変動に対応して送信電力やアンテナの指向性を変化させる技術がある。また、基地局に可変移相器と合成器を備え、ホットスポットへビームを向ける技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-154278号公報
【特許文献2】特開2013-211716号公報
【特許文献3】特開2009-077117号公報
【特許文献4】特開2018-110380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナの設置環境ごとに設置高やチルト角が異なることで、各エリアのカバー面積が変動する。RUを実際の現場に設置した場合、各ビームIDのビームを一定のビーム幅で放射しても、オンサイト(地表面に相当)に投影されるカバー面積は、ビームIDごとに異なってしまう。
【0006】
このため、カバー面積が小さいビームIDでは、端末(UE:User Equipment)の移動によるビームIDの切り替えが頻繁に発生し、スループットが低下する。一方、カバー面積が大きいビームIDには、多数の端末が位置し同時に接続するため、干渉が生じ、スループットが低下する。
【0007】
一つの側面では、本発明は、ビームIDごとにオンサイト上で適切なカバー面積にできることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、複数のビームIDに対しビームフォーミングを行いオンサイト上の端末と無線通信する通信装置において、前記ビームIDごとにアンテナが放射するビーム幅を異ならせる制御を行うビーム制御部、を備えたことを要件とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ビームIDごとにオンサイト上で適切なカバー面積にできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明による通信装置のカバー面積を説明する図である。
図2図2は、通信装置を含む通信システムの全体構成例を示す図である。
図3図3は、実施の形態1にかかる通信装置を含む通信システムの全体構成例を示す図である。
図4図4は、通信装置のビーム制御にかかるハードウェア構成例を示す図である。
図5図5は、通信装置の設置例を示す側面図である。
図6A図6Aは、通信装置のアンテナアレイを示す平面図である。
図6B図6Bは、通信装置のビーム幅の制御例を示す図である。
図7A図7Aは、通信装置のビーム制御の情報を説明する図である。(その1)
図7B図7Bは、通信装置のビーム制御の情報を説明する図である。(その2)
図8図8は、実施の形態1にかかる通信装置のビーム制御例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施の形態2にかかる通信装置を含む通信システムの全体構成例を示す図である。
図10図10は、実施の形態2にかかる通信装置のビーム制御例を示すシーケンス図である。
図11図11は、対比用の従来の通信装置のカバー面積を説明する図である。
図12図12は、実際のビーム投影形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、開示の通信装置および通信方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は、本発明による通信装置のカバー面積を説明する図である。例えば、通信装置100は、5Gの通信方式でビームフォーミングを行い端末と通信を行う基地局側のRU装置である。
【0013】
以下の説明において、通信装置100は、設置の条件、例えば、オンサイトから所定高さの構造体Kに所定の角度(チルト角)θを有して設置され、ビームを水平なオンサイトに対し斜め方向に投影するものとして説明する。通信装置100は、設置位置ごとに設置の条件が異なる。例えば、通信装置100は、設置環境に応じて、オンサイト(地表面)からの設置高さ、およびビーム放射の角度θが異なって設置される。
【0014】
図1(a)は通信装置の設置状態を示す側面図であり、通信装置100は、異なる設置の条件に対応して、複数のビームIDごとにオンサイト(地表面)上で適切なカバー面積となるようにビームIDごとのビーム幅を可変制御する。図1には、便宜的に各ビームIDの番号を付してある。
【0015】
図1(b)は通信装置100のビーム幅を示す図、図1(c)は通信装置100のカバー面積を示す図である。図1(b)は通信装置100のアンテナの放射面100a相当を示し、横軸はアンテナの水平方向、縦軸は垂直方向である。図1(c)はオンサイトを上から見た上面図に相当する。
【0016】
図1(b)に示すように、通信装置100は、複数nのビームID(ID:1,2,…n)を走査して放射する。通信装置100は、アンテナの放射面100aから放射するビーム幅Bについて、通信装置100の角度θに対応して通信装置100に近いオンサイトに向けたビームIDのビーム幅Bを太くする。一方、通信装置100から遠いオンサイトとなる程ビームIDのビーム幅を狭く(細く)する。
【0017】
例えば、通信装置100に最も近いオンサイトに向けたビームID1,2のビーム幅を最も太くし、通信装置100から最も遠いオンサイトに向けたビームID10~14のビーム幅を最も狭くする。通信装置100は、ビーム幅の垂直方向について、通信装置100に近いほどビーム幅を拡げ、遠くなるほどビーム幅を狭めて放射する制御を行う。
【0018】
詳細は後述するが、通信装置100は、前記ビームIDごとにアンテナが放射するビーム幅のビーム制御情報と、自装置の角度θ別の補正情報(ビームIDセット)を記憶部に保持する。通信装置100は、前記ビームIDのビーム幅を前記角度ごとに補正する補正情報(ビームIDセット)を前記制御情報として用いる。通信装置100は、自装置の角度に対応するビームIDセットを用いて、各ビームIDのビーム幅を決定する。なお、ビームの最小幅は、RF周波数と通信装置100のアンテナ開口で決まる。
【0019】
これにより、図1(c)に示すように、通信装置100が角度を有して設置されても、オンサイト上でのビームID1~14のカバー面積をいずれも同じ面積にすることができる。
【0020】
図1(a),(c)に示すように、通信装置100は、通信装置100に最も近いオンサイトに向けたビームID1のビーム幅Bを太くすることで(ビーム幅B1)、オンサイト上に投影されるビームID1を所定のカバー面積Sにする。また、通信装置100から遠いオンサイトとなるほどビームID3,6のビーム幅Bを狭くすることで(ビーム幅B2,B3)、オンサイト上に投影されるビームID3,6についても所定のカバー面積Sにする。
【0021】
ビームIDごとのビーム幅は、通信装置100から距離が遠くなるオンサイトほど、オンサイト(地表面)に投影されるビームの投影角度θxが緩やかになる。図1(a)の例では、通信装置100に最も近いオンサイトに投影されるビームID1のビームの投影角度θx1が最も大きい。通信装置100から最も遠いオンサイトに投影されるビームID3ビームの投影角度θx3が最も小さい。中間のビームID2のビームの投影角度θx2は、θx1とθx3の中間の角度となる。通信装置100は、通信装置100からの距離別のビームの投影角度θxを考慮し、図1(c)に示すようにオンサイト上に投影される全てのビームID1~14のカバー面積Sが同じとなるビーム幅にする。
【0022】
また、通信装置100は、垂直方向で通信装置100に近いビームIDほど送信電力(実行輻射電力、EIRP:Equivalent Isotropic Radiated Power)を低く設定してもよい。上記のビーム幅の制御に加えて送信電力を制御することで、複数nのビームID1~nそれぞれのカバー面積内の電力を均一にすることができる。
【0023】
ところで、通信装置100は、オンサイト上での複数のビームID1~nのカバー面積を動的に可変してもよい。例えば、日時別の人出の変動等に応じて通信装置100の設置角度θを手動操作、あるいは姿勢制御装置により自動的に異なる角度に変更する。これにより、日時等で変動するトラフィックに対応し、ビームID1~nのカバー面積に収容する端末数を一定に近づけることができるようになる。
【0024】
このように、実施の形態の通信装置100によれば、複数nのビームIDごとのオンサイト上でのカバー面積をいずれも均一にする等、カバー面積を適切にすることができ、スループット低下等の問題を抑えることができるようになる。
【0025】
図2は、通信装置を含む通信システムの全体構成例を示す図である。実施の形態の通信装置(RU)100は、端末(UE)210との間で無線通信を行う。端末210は、上記のオンサイト上で移動自在である。
【0026】
通信装置100は、DU/CU201およびコアネットワーク(NW)に接続される。DUはDistributed Unit、CUはCentral Unitの略である。DU/CU201は、例えば、通信サービス提供者の局舎等に設置され、通信装置100とコアNW間の通信制御を行う。
【0027】
通信装置100は、設置高さや、ビーム放射の角度等の姿勢について、下記構成例1、2とすることができる。
構成例1.通信装置100の姿勢を装置が検出し、ビーム幅を可変制御する(実施の形態1)。
構成例2.通信装置100の外部に姿勢制御装置202を配置し、姿勢制御装置202により通信装置100の姿勢を可変制御する(後述の実施の形態2)。姿勢制御装置はRemote Tilting & Steeringとも言う。
【0028】
例えば、構成例1では、通信装置100内部に姿勢検知センサ211を設け、通信装置100が自律的に姿勢を検出する。通信装置100は、検出した姿勢に応じたビーム制御を行う。このビーム制御では、通信装置100は、複数nのビームIDを通信装置100からの角度別(距離別に相当)のビームIDセットを保持し、角度に対応したビームIDセットを用いたビーム幅制御を行う。
【0029】
また、構成例2では、姿勢制御装置202により通信装置100の姿勢(例えば角度)を可変自在に駆動し、駆動状態に応じた通信装置100の姿勢(例えば角度)を検出する。そして、姿勢制御装置202は、検出した姿勢(角度)の情報をDU/CU201に出力する。DU/CU201は、姿勢に応じたビームIDセットを選択するビームIDセット選択部221を有し、ビームIDセット選択部221は、通信装置100の姿勢に対応したビームIDセットの情報を通信装置100に指示する。これにより、通信装置100は姿勢に応じたビームIDセットを単位としたビーム幅制御を行う。
【0030】
また、構成例2において、構成例1で説明した姿勢検知センサ211を用いてもよい。この場合、DU/CU201は、姿勢検知センサ211が検出した通信装置100の姿勢の情報に基づき、ビームIDセットを選択する。
【0031】
図3は、実施の形態1にかかる通信装置を含む通信システムの全体構成例を示す図である。図3には、図2に示した構成例1の主に通信装置100の内部機能を示している。
【0032】
通信装置100は、RFフロントエンド301、無線通信回路302、ベースバンド(BB)処理部303、ビームID制御部304、姿勢検知センサ211、判定部305、メモリ306、FHインターフェース307、を含む。
【0033】
RFフロントエンド301は、無線通信回路302に接続され、通信装置100のアンテナ(不図示)を介して端末210と無線通信を行うための高周波(無線)信号処理を行う。RFフロントエンド301は、ビームID制御部304から入力されるビームIDセットに対応する所定のビーム幅を用いた無線通信(無線電波の送受信)を行うビームフォーマー集積回路(BFIC、不図示)を備える。BFICは、Beam Forming ICの略である。ここで、アンテナは、複数nのアンテナアレイからなり、BFICは複数nのアンテナアレイ間のビーム方向の合成処理により、ビームIDごとの水平方向(Azimuth)に対するビーム幅を制御する。
【0034】
無線通信回路302は、RFフロントエンド301とBB処理部303に接続され、送受信するデータと無線信号とを変換処理する。無線通信回路302は、RFフロントエンド301から出力された受信の無線信号をBB処理部303に出力し、BB処理部303から出力された送信のベースバンド信号(データ)をRFフロントエンド301に出力する。
【0035】
BB処理部303は、無線通信回路302とFHインターフェース307に接続され、送受信するデータのベースバンド処理を行う。BB処理部303は、FHインターフェース307を介してコアNW側から入力される送信のデータを無線通信回路302に出力し、無線通信回路302から入力される受信信号をデータ化しFHインターフェース307に出力する。
【0036】
FHインターフェース307は、通信装置100とコアNW側の通信インターフェースの例として用いられる。FHはFront Haulの略である。
【0037】
姿勢検知センサ211は、通信装置100の姿勢(例えば角度)を検知する。通信装置100は、ビル等の建物やタワー等に設置したポールや支柱等の固定物に取り付けられ、アンテナ面がオンサイト(地表面)に向けて所定の角度を有して設置される。姿勢検知センサ211は、例えば、ジャイロやエンコーダ等からなり、垂直なポールや支柱等に対する傾斜の角度を検出する。
【0038】
判定部305は、姿勢検知センサ211が検知した通信装置100の姿勢(例えば角度)を検出し、検出した角度をビームID制御部304に出力する。
【0039】
メモリ306には、前記ビームIDごとにアンテナが放射するビーム幅のビーム制御情報と、ビームIDセット(補正情報)が格納されている。例えば、ビームIDセットは、通信装置100の姿勢(例えば角度)に対応した利得/位相の補正値である。詳細は後述するが、メモリ306には、複数のアンテナアレイの利得/位相をキャリブレーションするための校正値と、通信装置100の角度に応じたビームIDセットが格納される。例えば、ビームIDセットは、角度別の利得/位相の補正値からなる。メモリ306に格納されている校正値を角度対応の補正値で補正することで、オンサイト上での各ビームIDのカバー面積を一定にできる。
【0040】
ビームID制御部304は、判定部305、FHインターフェース307、メモリ306、RFフロントエンド301に接続されている。ビームID制御部304は、判定部305が判定した通信装置100の姿勢(角度)に対応するビームIDセットをメモリ306を参照して選択する。そして、ビームID制御部304は、選択したビームIDセットの情報をRFフロントエンド301に出力する。
【0041】
そして、RFフロントエンド301には、ビームID制御部304から通信装置100の姿勢(例えば角度)に対応するビームIDセットが入力される。これにより、RFフロントエンド301は、端末210との間の無線通信(およびFHインターフェース307で入出力されるデータに基づく無線通信)を行う。RFフロントエンド301は、この無線通信の際、通信装置100の角度に対応するビームIDセットを用いて各ビームIDのカバー面積が一定となるビーム幅の制御を行う。
【0042】
図4は、通信装置のビーム制御にかかるハードウェア構成例を示す図である。図3に示した通信装置100のうち、主にビーム制御のデータ処理にかかる構成(判定部305、ビームID制御部304等)は、図3に示す汎用のハードウェアで構成することができる。
【0043】
通信装置100は、CPU(Central Processing Unit)401、メモリ402、ネットワークインターフェース(IF)403、記録媒体IF404、記録媒体405、を含む。400は各部を接続するバスである。
【0044】
CPU401は、通信装置100全体の制御、およびビーム制御の制御部として機能する演算処理装置である。メモリ402は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、CPU401のプログラムを格納するROM(Read Only Memory)である。揮発性メモリは、例えば、CPU401のワークエリアとして使用されるDRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)等である。
【0045】
ネットワークIF403は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどのネットワークNWに対する通信インターフェースである。通信装置100は、ネットワークIF403を介してネットワーク(NW)に通信接続する。例えば、通信装置100は、ネットワークIFとしてFHインターフェース307を介して、外部のDU/CU201やコアNWに通信接続する。
【0046】
記録媒体IF404は、CPU401が処理した情報を記録媒体405との間で読み書きするためのインターフェースである。記録媒体405は、メモリ402を補助する記録装置であり、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)フラッシュドライブ等を用いることができる。
【0047】
メモリ402または記録媒体405に記録されたプログラムをCPU401が実行することにより、通信装置100の各機能を実現する。また、メモリ402や記録媒体405は、ビーム制御にかかる情報、例えば、メモリ306が格納するビームIDごとにアンテナが放射するビーム幅のビーム制御情報と、ビームIDのビーム幅を角度ごとに補正する補正情報(ビームIDセット)を記憶保持する。
【0048】
なお、図4に示したハードウェア構成は、通信装置100に限らず、端末210、DU/CU201、姿勢制御装置202における制御部の構成例としても同様に適用できる。
【0049】
図5は、通信装置の設置例を示す側面図である。図5には、ポール、支柱等の構造体Kに対する通信装置100の設置例を示す。符号100aは通信装置100のアンテナの放射面である。
【0050】
図5(a)の設置例では、通信装置100は、背面の取付具501を介して構造体Kに取り付けられる。垂直な構造体Kに対し、取付具501は軸501aを介して基準となる垂直方向(Elevation)に対し角度を変更(回動)自在である。例えば、オンサイト上に投影するビームIDに対応して、構造体Kに対する取付具501の設置高さおよび角度Aを設定する。角度Aは、高所の構造体Kに設置される通信装置100から下方のオンサイト(接地面)に向く方向である。ここで、通信装置100の設置高さおよび角度ごとにビームIDごとのビーム幅が異なる。
【0051】
このため、通信装置100は、設置された高さおよび角度Aの設定に基づき、角度Aに対応したビーム幅を有するビームIDセットを選択する。図5(a)の設置例では、通信装置100は、角度Aに対応したビームIDセットA(IDA1,IDA2,IDA3)を選択する。通信装置100は、放射面100aに対し直角な方向を基準としてビーム放射するが、ビームIDセットAの各ビームIDA1~IDA3は、ビーム走査時に垂直方向(Elevation)に異なる方向に放射する。
【0052】
そして、通信装置100は、通信装置100の設置状態(角度A)に対応したビームIDセットAを選択する。これにより、通信装置100に最も近いオンサイトに向けた太いビームIDA1~最も遠いオンサイトに向けた狭いビームIDA3のビームは、いずれもオンサイト上で同じカバー面積Sとなる。
【0053】
図5(b)の設置例では、取付具502が角度方向にオフセット角αを有するものであり、通信装置100は、取付具のオフセット角αを基準としてさらに角度、例えば角度Bに変更(回動)自在である。
【0054】
例えば、図5(b)の設置例では、通信装置100は、角度Bに対応したビームIDセットB(IDB1,IDB2,IDB3)を選択する。通信装置100に最も近いオンサイトに向けた太いビームIDB1は、図示のようにオフセット角度α+角度Bにより、ほぼ直下方向に向けることができる。
【0055】
そして、通信装置100は、通信装置100の設置状態(角度B)に対応したビームIDセットBを選択する。これにより、通信装置100に最も近いオンサイトに向けた太いビームIDB1~最も遠いオンサイトに向けた狭いビームIDB3のビームは、いずれもオンサイト上で同じカバー面積Sとなる。
【0056】
構成例1では、通信装置100内の姿勢検知センサ211が角度A,Bを検知し、ビームID制御部304が角度A,Bに応じたビームIDセットをメモリ306から読み出し、RFフロントエンド301(BFIC)にセットする。
【0057】
構成例2では、通信装置100外部の姿勢制御装置202が通信装置100の角度A,Bを制御する。詳細は後述するが、姿勢制御装置202は、制御した角度A,Bの情報をDU/CU201に出力し、DU/CU201が角度A,Bに対応したビームIDセットを選択して通信装置100に出力する。通信装置100は、DU/CU201から入力されたビームIDセットをメモリ306から読み出し、RFフロントエンド301(BFIC)にセットする。
【0058】
図6Aは、通信装置のアンテナアレイを示す平面図である。通信装置100のアンテナ600は、放射面100a上で複数の素子がマトリクス状に配置されている。図6の例では、8×8=64素子を示し、8個の素子ごとにサブアレイ1(601)とサブアレイ2(602)に分割したものを水平方向で交互に配置する。
【0059】
図6Bは、通信装置のビーム幅の制御例を示す図である。横軸は角度、縦軸は利得である。図6Aに示したアンテナ600は、角度方向に対し異なるビームパターンを有する。点線で示すサブアレイ1(601)の全体のビームパターンに対し、実線で示すサブアレイ2(602)の全体のビームパターンは角度方向で角度Δだけ異なるようにずらす。
【0060】
サブアレイ1(601)は、所定のビーム幅B1を有し、サブアレイ2(602)は所定のビーム幅B2を有し、これらビーム幅B1,B2は、角度方向で異なる位置にある。このため、通信装置100は、サブアレイ1,2のビームの合成により、全体のビームパターンのビーム幅を可変できる。図示の例では、サブアレイ1,2のビームの合成により図中太線で示すようにビーム幅がB1+B2となり、ビーム幅を拡げることができる。通信装置100は、サブアレイ1,2のビーム方向を調整することで、合成後のビーム幅を変更する。
【0061】
ビーム幅の変更制御の概要として、通信装置100は、水平方向だけ2つに分解して計算する例で説明すると、ビーム幅の調整と、ビーム方向の調整に分解して処理する。ビーム幅の調整は、水平方向の全素子を図6Aに示したように、半分の素子からなる2つのサブアレイ1,2に分割し、サブアレイ1,2がそれぞれ少しずつΔ分だけビーム方向をずらす位相を設定する。なお、Δ=0のときはアレイの全素子を同じ方向に制御したことと同等となる。また、ビーム方向の調整は、オンサイト上の所望方向にビームが向くように位相をオフセットする。
【0062】
図7A図7Bは、通信装置のビーム制御の情報を説明する図である。図7Aに示すように、通信装置100内のメモリ、例えば、図3参照のメモリ306(不揮発性メモリ等)には、アンテナ600の各素子の校正値(キャリブレーション値)が格納されている。校正値は、N個の素子(アンテナ#1~アンテナ#N)ごとの利得と位相の値からなる。素子数は、例えば上記64~128素子である。
【0063】
通信装置100(CPU401)は、装置起動時にメモリ306からアンテナ校正値を読み込み、アンテナ#1~#Nを用いて複数のビームID(#1、#2、…、#M)を形成するための校正値(利得と位相)を算出する。ビームID数は、例えば45である。通信装置100は、N個のアンテナ別のM個のビームIDの校正値をRFフロントエンド301のBFIC内のRAM301aに書き込む。通信装置100は、運用中、RAM301aを参照してビームID単位でビーム切替(ビーム走査)を行う。
【0064】
ここで、実施の形態の通信装置100は、図7Aで説明した校正に加えて、図7Bに示す角度補正の処理を行う。通信装置100のメモリ306には、図7Aと同様のアンテナ600の各素子の校正値に加えて、ビームIDセットごとの補正値を予め格納しておく。ビームIDセットごとの補正値は、通信装置100の角度ごとのビームIDセット(#A、#B、…、#x)であり、それぞれの角度に対応した補正値(利得と位相)からなる。
【0065】
通信装置100(CPU401)は、装置起動時、メモリ306からアンテナ校正値と補正値とを読み込む。この際、通信装置100は、通信装置100の設置状態の角度に対応するビームIDセット#xの補正値(利得と位相)を使用してアンテナ#1~#NごとのビームID(#1、#2、…)の校正値(利得と位相)に反映させる算出処理を行う。
【0066】
そして、通信装置100は、算出した設定値をRFフロントエンド301のBFIC内のRAM301aに書き込む。また、通信装置100は、通信装置100の設置状態の変更時(角度変更の検出時)、該当する補正値を用いてBFIC内のRAM301aの情報を更新する。
【0067】
図8は、実施の形態1にかかる通信装置のビーム制御例を示すフローチャートである。図8を用いて通信装置100の姿勢に対応したビームIDセットを用いたビーム制御例について説明する。以下、通信装置100のビーム制御部(図3の判定部305、ビームID制御部304に相当)、図4のCPU401が行う処理例を説明する。
【0068】
はじめに、ビーム制御部は、通信装置(RU)100の姿勢情報を定期的に取得する(ステップS801)。例えば、ビーム制御部は、姿勢検知センサ211が検出した角度を10分おきに取得する。ここで、通信装置100は、上述した日時別ごとのオンサイト上のビームID1~nでの端末数(トラフィック)の変動に対応してビーム放射の角度(ビームIDセット)を変更する。
【0069】
端末数(トラフィック)の変動の情報は、DU/CU201等の上位装置から取得可能である。ビーム制御部は、端末数(トラフィック)の変動時、通信装置100の角度の変更に限らず、さらに細かくビームID単位でビーム幅を変更することができる。
【0070】
次に、ビーム制御部は、現在の通信装置100の姿勢(角度)が前回の角度検出時と同じであるか否かを判断する(ステップS802)。判断結果、角度が同じであれば(ステップS802:Yes)、ビーム制御部は、前回用いたビームIDセットは変更せずに使用し(ステップS803)、以上の処理を終了する。この場合、通信装置100(ビーム制御部)は、前回と同じ角度であり同じビームIDセットを用いたビーム幅で端末210と通信を行う。
【0071】
一方、ステップS802の判断結果、角度が異なれば(ステップS802:No)、ビーム制御部は、変更後の角度に応じたビームIDセットをメモリ306から読み出す(ステップS804)。ビーム制御部は、読み出したビームIDセットをRFフロントエンド301(BFIC)にセットすることで、ビームIDセットを変更し(ステップS805)、以上の処理を終了する。この場合、通信装置100は、変更された角度に対応したビームIDセットを用いたビーム幅で端末210と通信を行う。
【0072】
上記ビーム制御によれば、通信装置100は、角度変更ごとに角度に対応したビームIDセットを用いることで、角度変更されても各ビームID1~nのカバー面積を同じ状態で運用継続できる。また、日時別のオンサイト上のビームID1~nそれぞれに収容される端末数の変動等に対応し、ビーム放射の角度を変更することで、複数のビームID1~nのカバー面積を変更する。これにより、各ビームID1~nに収容する端末210の数を均一にしてスループット低下を抑制できる。
【0073】
図9は、実施の形態2にかかる通信装置を含む通信システムの全体構成例を示す図である。図9には、図2に示した構成例2の通信装置100、DU/CU201、姿勢制御装置202の各内部機能を示している。図9において、構成例1(図3)と同様の機能部には同じ符号を付している。
【0074】
通信装置100は、無線通信回路302、ベースバンド(BB)処理部303、ビームID制御部304、メモリ306、FHインターフェース307、を含む。
【0075】
無線通信回路302は、RFフロントエンド301の機能を含む。無線通信回路302は、通信装置100のアンテナ(不図示)を介して端末210と無線通信を行うための高周波(無線)信号処理を行う。無線通信回路302は、ビームID制御部304から入力されるビームIDセットに対応する所定のビーム幅を用いた無線通信を行うBFICを備える。
【0076】
姿勢制御装置202は、モータ駆動部901、角度情報保持部902、処理部903、インターフェース904の機能を含む。モータ駆動部901は、通信装置100をモータ駆動により角度変更する。例えば、モータ駆動部901は、図5に示した取付具501,502に設けられ、モータ駆動により通信装置100を角度変更する。
【0077】
角度情報保持部902は、メモリ等で構成され、モータ制御量に対応した通信装置100の角度情報を保持する。処理部903は、姿勢変更の指令に対応したモータ制御量の情報をモータ駆動部901に出力し、通信装置100の角度を変更する。この際、処理部903は、角度情報保持部902からモータ制御量に対応した角度情報を読み出し、インターフェース904を介してDU/CU201に角度情報を出力する。
【0078】
DU/CU201は、セット選択部221、ビームID付加部912、無線信号生成部913の機能を含む。セット選択部221は、通信装置100の角度別のビームIDセットを保持するメモリ等を含む。セット選択部221は、姿勢制御装置202から出力された角度情報に対応するビームIDセットをメモリから読み出し、ビームID付加部912に出力する。
【0079】
無線信号生成部913は、無線信号を生成し、コアNWおよび通信装置100と通信接続する。ビームID付加部912は、セット選択部221が選択したビームIDセットの情報を無線信号に付加する。これにより、通信装置100の角度に対応したビームIDセットの情報を通信装置100に伝送する。
【0080】
上記構成により、通信装置100には、姿勢制御装置202がモータ駆動により変更した通信装置100の角度に対応するビームIDセットの情報がDU/CU201から入力される。そして、通信装置100の無線通信回路302は、端末210との間の無線通信(およびFHインターフェース307で入出力されるデータに基づく無線通信)を行う。無線通信回路302は、この無線通信の際、通信装置100の角度に対応するビームIDセットを用いて各ビームIDのカバー面積が一定となるビーム幅の制御を行う。
【0081】
図10は、実施の形態2にかかる通信装置のビーム制御例を示すシーケンス図である。図9に示した通信装置100、DU/CU201、姿勢制御装置202に対応したビーム制御例を説明する。
【0082】
はじめに、DU/CU201は、通信装置(RU)100の姿勢情報を姿勢制御装置202から取得する(ステップS1001)。例えば、DU/CU201は、定期的(例えば10分ごと)に姿勢制御装置202に対し姿勢情報を要求する。姿勢制御装置202は、要求の都度、モータ駆動による通信装置100の角度の情報をDU/CU201に送付する(ステップS1002)。
【0083】
次に、DU/CU201は、姿勢制御装置202から送付された現在の通信装置100の角度に対応するビームIDセットを判定する(ステップS1003)。そして、DU/CU201は、判定したビームIDセットを示す指示情報を通信装置100に送信する(ステップS1004)。
【0084】
通信装置100は、DU/CU201から受信した指示情報のビームIDセットを無線通信回路302(BFIC)にセットし、ビームIDセット設定を更新する(ステップS1005)。これにより、通信装置100は、現在の通信装置100の角度に対応したビームIDセットを用いたビーム幅で端末210と通信を行う。
【0085】
上記ビーム制御例では、通信装置100の姿勢を外部装置の姿勢制御装置202で角度変更制御し、DU/CU201が角度に対応するビームIDセットの情報を通信装置100に指示出力している。この制御例においても、通信装置100は、角度変更ごとに角度に対応したビームIDセットを用いることで、角度変更されても各ビームID1~nのカバー面積を同じ状態で運用継続できる。また、日時別のオンサイト上のビームID1~nそれぞれに収容される端末数の変動等に対応し、ビーム放射の角度を変更することで、複数のビームID1~nのカバー面積を変更する。これにより、各ビームID1~nに収容する端末210の数を均一にしてスループット低下を抑制できる。
【0086】
図11は、対比用の従来の通信装置のカバー面積を説明する図である。図11(a)は従来の通信装置1100のアンテナの放射面1100aから放射するビームIDごとのビームを示す図である。図11(b)はオンサイト上でのビームIDごとのカバー面積を示す図である。図11(c)は、通信装置1100の設置状態を示す側面図である。
【0087】
図11(a)に示すように、従来の通信装置1100は、放射面1100aから放射する複数nのビームID1~nのビーム幅が水平方向(Azimuth)および垂直方向(Elevation)に対し等間隔で同じビーム幅である。
【0088】
この場合、図11(b),(c)に示すように、オンサイト上に投影したビームIDごとのカバー面積が異なる。例えば、通信装置1100に最も近いビームID1はカバー面積S1が狭くなり、通信装置1100から最も遠いビームID11はカバー面積S3が広くなる。このように、既存の通信装置1100では、複数nのビームIDのカバー面積が異なり均一ではなくなり、上述したようなスループット低下の問題を有する。
【0089】
これに対し、実施の形態の通信装置100は、図1に示したように、通信装置100から放射するビーム幅Bを可変制御することで、オンサイト上に投影される複数のビームID1~nのカバー面積Sを均一にしている。通信装置100は、複数nのビームIDを通信装置100からの角度別(距離別に相当)のビームIDセットを保持し、通信装置100の角度に対応したビームIDセットを用いてビーム幅Bの制御を行う。
【0090】
オンサイト上の複数のビームID1~nそれぞれのカバー面積Sを均一にすることで、各ビームID1~nが収容する端末数を均一にでき、スループットの低下を抑制できる。
【0091】
図12は、実際のビーム投影形状の例を示す図である。以上の説明では、便宜上、図1図11等でオンサイト上でのカバー面積を楕円で表現した。実際のオンサイト上でのカバー面積は、図12に示すように、通信装置(RU)100を中心として各ビームID1~nが放射状に拡がる略扇形の形状であり、各ビームIDの両側が直線に近い形状である。
【0092】
以上説明した実施の形態によれば、通信装置100は、複数のビームIDに対しビームフォーミングを行いオンサイト上の端末と無線通信し、ビームIDごとにアンテナが放射するビーム幅のビーム制御情報を記憶する記憶部と、ビーム制御情報に基づいてビームIDごとのビーム幅でビーム制御を行うビーム制御部(ビームID制御部304等)を備える。これにより、複数のビームIDのオンサイト上に投影されるカバー面積を動的に変更できるようになる。例えば、ビームIDに位置する端末数が日時別に変動した際のトラフィック変動に対応して、ビームIDの幅を変更することで、各ビームIDの収容端末数を均一にでき、スループットを向上できるようになる。
【0093】
また、通信装置100は、ビーム制御部が自通信装置の設置の条件(高さや角度等)に基づき、自通信装置に近いオンサイトに投影されるビームIDのビーム幅を広くし、自通信装置から遠いオンサイトに投影されるビームIDになるほどビーム幅を狭くし、オンサイトに投影される複数のビームIDのカバー面積を均一にする制御を行う。このように、通信装置が高所からオンサイトに向けて斜めに角度を有してビームを放射する構成において、通信装置からの距離が遠いビームIDほど投影されるカバー面積が大きくなることに対応し、距離別の複数のビームIDのカバー面積を均一にできる。
【0094】
また、通信装置100は、ビーム制御部がビーム幅の垂直方向と水平方向のうち垂直方向に対し、ビーム幅の制御を行う。このように、通信装置が高所からオンサイトに向けて斜めに角度を有してビームを放射する構成において、通信装置からの距離が遠いビームIDほど投影されるカバー面積が大きくなることに対応し、垂直方向のビーム幅を制御することで、オンサイト上に投影される複数のビームIDのカバー面積を均一にできる。
【0095】
また、通信装置100は、ビーム制御部がビーム幅の垂直方向と水平方向のうち垂直方向に対し、自通信装置に近いオンサイトに投影されるビームIDの送信電力を低くし、自通信装置から遠いオンサイトに投影されるビームIDになるほど送信電力を高くし、複数のビームIDのカバー面積の電力を均一にする制御を行ってもよい。これにより、複数のビームID内での電力をいずれも均一にでき、よりスループット向上が図れるようになる。
【0096】
また、通信装置100は、ビーム制御部がビームIDのビーム幅を角度ごとに補正する補正情報(ビームIDセット)を制御情報として記憶部に記憶保持し、検出した自通信装置の角度に対応するビームIDセットを選択し、ビーム幅を制御する。これにより、あらかじめメモリに記憶保持したビームIDのうち角度に対応するものを読み出すことで、複数のビームIDのビーム幅を制御しカバー面積を均一にできる。
【0097】
また、通信装置100は、自通信装置の角度を検出するセンサを有してもよい。この場合、ビーム制御部は、検出した自通信装置の角度に対応する補正情報(ビームIDセット)を選択し、ビーム幅を制御する。これにより、通信装置が自律的に角度を検出してビーム幅を制御できるようになる。
【0098】
また、通信装置100は、自通信装置の角度が姿勢制御装置により変更自在に制御される構成としてもよい。この場合、ビーム制御部は、姿勢制御装置が変更した角度の情報に基づき、自通信装置の角度に対応する制御情報を選択し、ビーム幅を制御する。これにより、通信装置は、姿勢制御装置のモータ駆動等により変更された角度に対応してビーム幅を制御できるようになる。なお、姿勢制御装置が通信装置の角度を変更制御し、通信装置がセンサで角度を検出する構成を組み合わせることもできる。
【0099】
また、上記の姿勢制御装置が角度の情報をDUまたはCUに送出し、通信装置100のビーム制御部がDUまたはCUが選択した自通信装置の角度に対応する補正情報(ビームIDセット)に基づきビーム幅を制御する構成としてもよい。これにより、通信システム内で通信装置が接続されるDUやCU等の上位装置を介して通信装置が角度の情報を受け取り、角度対応のビーム制御を行えるようになる。
【0100】
また、通信装置100は、ビーム制御部が自通信装置の角度を所定時期ごとに取得し、角度の変更時には、変更後の角度に対応する補正情報(ビームIDセット)を選択し、ビーム幅を制御することとしてもよい。これにより、例えば、日時等の時間経過でビームIDごとに収容する端末数の変動に対応した角度変更により、各ビームIDのカバー面積を変化させて収容する端末数を均一にすることができるようになる。
【0101】
また、通信装置100は、ビーム制御部がオンサイト上の複数のビームIDのトラフィック変動に応じて角度を変更する制御を行うこととしてもよい。例えば、通信装置は上位装置からの指示により、角度に対応して各ビームIDのビーム幅を変更することで、複数のビームIDに位置する端末数を均一にすることができるようになる。
【0102】
さらに、通信装置100は、ビーム制御部がオンサイト上の複数のビームIDのトラフィック変動に応じてビームIDごとにビーム幅を変更する制御を行うこととしてもよい。例えば、通信装置は上位装置からの指示により、複数のビームIDのビーム幅をそれぞれ変更することで、複数のビームIDに位置する端末数を均一にすることができるようになる。
【0103】
これらのことから、実施の形態によれば、通信装置が複数のビームIDをオンサイト上に投影しオンサイト上の端末と通信する構成において、ビームIDごとのビーム幅を制御することで、オンサイト上に投影された後の複数のビームIDごとのカバー面積を適切なカバー面積にできるようになる。例えば、通信装置は、カバー面積を積極的に変更することで、複数のビームIDのカバー面積を均一にしたり、一部のビームIDのカバー面積のみを変更したりすることができる。カバー面積の変更により特定のビームIDへの端末集中に対応でき、端末の移動によりビームIDの頻繁な切替を抑え、特定のビームIDでの多数の端末の同時接続を抑え、スループット向上を図ることができるようになる。
【0104】
なお、本発明の実施の形態で説明した通信方法は、予め用意されたプログラムをサーバー等のプロセッサに実行させることにより実現することができる。本方法は、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また本方法は、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
【0105】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0106】
(付記1)複数のビームIDに対しビームフォーミングを行いオンサイト上の端末と無線通信する通信装置において、
前記ビームIDごとにアンテナが放射するビーム幅のビーム制御情報を記憶する記憶部と、
前記ビーム制御情報に基づいて前記ビームIDごとのビーム幅でビーム制御を行うビーム制御部と、
を備えたことを特徴とする通信装置。
【0107】
(付記2)前記ビーム制御部は、
自通信装置の設置の条件に基づき、自通信装置に近いオンサイトに投影されるビームIDの前記ビーム幅を広くし、自通信装置から遠いオンサイトに投影されるビームIDになるほど前記ビーム幅を狭くし、前記オンサイトに投影される複数のビームIDのカバー面積を均一にする制御を行う、
ことを特徴とする付記1に記載の通信装置。
【0108】
(付記3)前記ビーム制御部は、
前記ビーム幅の垂直方向と水平方向のうち前記垂直方向に対し、前記ビーム幅の制御を行う、
ことを特徴とする付記2に記載の通信装置。
【0109】
(付記4)前記ビーム制御部は、
前記ビーム幅の垂直方向と水平方向のうち前記垂直方向に対し、自通信装置に近いオンサイトに投影されるビームIDの送信電力を低くし、自通信装置から遠いオンサイトに投影されるビームIDになるほど送信電力を高くし、複数のビームIDのカバー面積の電力を均一にする制御を行う、
ことを特徴とする付記2または3に記載の通信装置。
【0110】
(付記5)前記ビーム制御部は、
前記ビームIDのビーム幅を前記角度ごとに補正する補正情報を前記制御情報として前記記憶部に記憶保持し、
検出した自通信装置の角度に対応する前記補正情報を選択し、前記ビーム幅を制御する、
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の通信装置。
【0111】
(付記6)自通信装置の前記角度を検出するセンサを有し、
前記ビーム制御部は、
検出した自通信装置の前記角度に対応する前記補正情報を選択し、前記ビーム幅を制御する、
ことを特徴とする付記5に記載の通信装置。
【0112】
(付記7)自通信装置の前記角度が姿勢制御装置により変更自在に制御され、
前記ビーム制御部は、
前記姿勢制御装置が変更した角度の情報に基づき、自通信装置の前記角度に対応する前記制御情報を選択し、前記ビーム幅を制御する、
ことを特徴とする付記5に記載の通信装置。
【0113】
(付記8)前記姿勢制御装置は、前記角度の情報をDU(Distributed Unit)またはCU(Central Unit)に送出し、
自通信装置の前記ビーム制御部は、
前記DUまたは前記CUが選択した自通信装置の角度に対応する前記補正情報に基づき前記ビーム幅を制御する、
ことを特徴とする付記7に記載の通信装置。
【0114】
(付記9)前記ビーム制御部は、
自通信装置の前記角度を所定時期ごとに取得し、前記角度の変更時には、変更後の角度に対応する前記補正情報を選択し、前記ビーム幅を制御する、
ことを特徴とする付記5~8のいずれか一つに記載の通信装置。
【0115】
(付記10)前記ビーム制御部は、
前記オンサイト上の複数の前記ビームIDのトラフィック変動に応じて前記角度を変更する制御を行う、
ことを特徴とする付記2~9のいずれか一つに記載の通信装置。
【0116】
(付記11)前記ビーム制御部は、
前記オンサイト上の複数の前記ビームIDのトラフィック変動に応じて前記ビームIDごとに前記ビーム幅を変更する制御を行う、
ことを特徴とする付記1~9のいずれか一つに記載の通信装置。
【0117】
(付記12)複数のビームIDに対しビームフォーミングを行いオンサイト上の端末と無線通信する通信装置の通信方法において、
前記ビームIDごとにアンテナが放射するビーム幅のビーム制御情報を記憶部に記憶しておき、
前記ビーム制御情報に基づいて前記ビームIDごとのビーム幅でビーム制御を行う、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする通信方法。
【0118】
(付記13)自通信装置の設置の条件に基づき、自通信装置に近いオンサイトに投影されるビームIDの前記ビーム幅を広くし、自通信装置から遠いオンサイトに投影されるビームIDになるほど前記ビーム幅を狭くし、前記オンサイトに投影される複数のビームIDのカバー面積を均一にする制御を行う、
ことを特徴とする付記12に記載の通信方法。
【符号の説明】
【0119】
100 通信装置
100a 放射面
201 DU/CU
202 姿勢制御装置
210 端末
211 姿勢検知センサ
221 ビームIDセット選択部
301 RFフロントエンド
302 無線通信回路
303 BB処理部
304 ビームID制御部
305 判定部
306 メモリ
307 FHインターフェース
401 CPU(制御部)
402 メモリ
403 ネットワークインターフェース(IF)
405 記録媒体
501,502 取付具
600 アンテナ
901 モータ駆動部
902 角度情報保持部
903 処理部
904 インターフェース
912 ビームID付加部
913 無線信号生成部
B ビーム幅
S カバー面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12