(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185512
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体及びその飛行制御方法
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20221207BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20221207BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20221207BHJP
B64C 27/04 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H02S50/00
B64D47/08
B64C39/02
B64C27/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093252
(22)【出願日】2021-06-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207894
【氏名又は名称】株式会社ミライト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】新城 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】立道 英俊
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151FA14
5F151KA08
(57)【要約】
【課題】太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、異常がある太陽電池モジュールを簡便且つ正確に検知するとともにその位置を容易に特定することが可能な飛行体及びその飛行制御方法を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール3のバスバー電極線5aを識別可能な撮影倍率M、飛行高度H、水平仰角α及びGPS位置情報を含む画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュール3の識別情報とを対応付ける飛行計画情報を格納した情報記憶部16と、画像取得情報に基づいて、太陽電池モジュール3の可視光による画像を取得する画像取得部17と、画像において飛行計画情報を参照して異常な太陽電池モジュール3の位置を特定可能とする位置特定手段と、を備える飛行体10及びその飛行制御方法。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、異常な太陽電池モジュールを検出する太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体であって、
前記太陽電池モジュールのバスバー電極線を識別可能な撮影倍率、飛行高度、水平仰角及びGPS位置情報を含む画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュールの識別情報とを対応付ける飛行計画情報を格納した情報記憶部と、
前記画像取得情報に基づいて、前記太陽電池モジュールの可視光による画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記画像において前記飛行計画情報を参照して異常な太陽電池モジュールの位置を特定可能とする位置特定手段と、を備えることを特徴とする太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体。
【請求項2】
前記画像取得部が、複数段の前記太陽電池モジュールを含む前記画像を取得する、請求項1に記載の太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体。
【請求項3】
太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、異常な太陽電池モジュールを検出する太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法であって、
前記太陽電池モジュールのバスバー電極線を識別可能な撮影倍率、飛行高度、水平仰角及びGPS位置情報を含む画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュールの識別情報とを対応付ける飛行計画情報に基づいて、画像取得部により前記太陽電池モジュールの可視光による画像を取得するように前記飛行体の飛行を制御し、
前記画像取得部によって取得された前記画像において、前記飛行計画情報を参照して異常な太陽電池モジュールの位置を特定することを特徴とする太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法。
【請求項4】
前記画像取得部により、複数段の前記太陽電池モジュールを含む前記画像を取得するように前記飛行体の飛行を制御する、請求項3に記載の太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池アレイをパワーコンディショナにより電力系統と連系させた太陽光発電システムにおいて、太陽電池モジュールのカバーガラス割れをはじめとする太陽電池モジュールの微小な異常を、無人の飛行体(ドローン)に搭載された画像取得部により取得した画像によって検出する、太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体及びその飛行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールのカバーガラスには、フロートガラスに熱処理を施した後に急激に冷却することで強度を高めた強化ガラスが採用される場合が多い。強化ガラスは、フロートガラスと比較して数倍の耐圧強度を有し、万一割れた場合には、破片がクモの巣状、あるいはモザイク状に粉々になって広がる性質を持つ。
【0003】
太陽電池モジュールのカバーガラス割れが発生する原因として、カラスなどが落下させた物体の衝撃によってカバーガラス上の落下点を起点としてモザイク状にガラス割れの亀裂が広がる場合や、太陽電池モジュールの製造過程でカバーガラスに生じたマイクロクラックと言われる極微小な亀裂が核となって設置後に外部からの力や太陽電池モジュールの撓みなどによって太陽電池モジュール全体に亀裂が広がる場合が知られている。後者については、台風通過時の強風による風圧や積雪などによる太陽電池モジュール表面への圧力がカバーバラスの耐荷重(例えば2000Pa~3000Pa程度)を上回ると、カバーガラスが割れることがある。
【0004】
カバーガラスが割れると、亀裂から雨などの水分が侵入し、太陽電池セル同士を電気的に接続する金属の腐食劣化を生じさせ、その結果、太陽電池モジュールの発電不良を生じることがある。また、カバーガラスが割れることでパネル全体の機械的強度が低下するので、追加的なわずかな荷重が加わることで太陽電池セルの破損、導電線の断線などを誘発する可能性もある。従って、カバーガラスが破損した太陽電池モジュールを早期に発見して正常な太陽電池モジュールに交換する必要がある。
【0005】
太陽光発電システムは、複数の太陽電池モジュールを電気的に直列に接続した太陽電池ストリングを1単位とし、これを電気的に複数並列にパワーコンディショナに接続して構成されるが、例えば1MW規模の太陽光発電システムでは数千枚の太陽電池モジュールが配置されることから、近年、大規模な太陽光発電システムのメインテナンスにおいては、これまでの目視点検に代えて点検効率を高めるために、無人飛行体(ドローン、以下「飛行体」という。)に搭載された可視光/赤外光(IR)カメラによる画像を利用することが行われている。特に、積雪が多い地方に建設された太陽光発電システムでは、残雪によって太陽電池モジュールが埋もれてしまうことを避けるために、全ての太陽電池モジュールを高い架台上に設置することがあるが、この場合の目視点検は一層困難となるため飛行体の活用が有効である。
【0006】
飛行体による可視光画像の場合は、台風通過後の発電設備の被災状況の把握など、比較的大きな構造物の異常検知に適するが、太陽電池モジュールのカバーガラス割れ等の1cm程度の微小な構造異常を検知することは容易ではない。
【0007】
一方、飛行体による赤外線画像の場合は、太陽電池モジュール上に遮蔽物が存在したり、電流経路の結線不良があったりすると、その場所で発電ロスとして発熱があるので、これをホットスポットとして検出することができ、太陽電池モジュールのカバーガラスの割れにより生じるホットスポットも検出できることが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】『太陽光パネルの故障検出技術の開発』、NTT技術ジャーナル、2019年5号、P44~P47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の飛行体による赤外線画像検出では、太陽電池モジュールの発熱の原因が太陽電池モジュール全面に堆積した砂塵等による日射の遮蔽に起因するものか、カバーガラスの割れに起因するものか、あるいは太陽電池モジュールの構成部材の発電性能低下(電気抵抗の増大等)による発電ロス(熱損失)に起因するものかを判別することが困難であり、結局、作業員の目視確認作業や測定機器の使用による原因特定が必要になるという問題があった。特に、カバーガラスの割れの場合は、熱損失が比較的少なく、日射による太陽電池モジュール自体の温度上昇と区別がつき難いという問題もあった。
【0010】
一方、飛行体による可視光画像の撮影の場合には、カバーガラスの割れにより生じるガラス破片が1cm程度の微小なものであるため、目視可能な距離ならば飛行体に搭載したカメラでも撮影は可能であるが、大規模太陽光発電設備に設置される数千から数万枚の太陽電池モジュールの中からカバーガラスの割れを検出するには長時間の飛行が必要であり、しかも、可視光画像で検知できたとしても、当該カバーガラスの割れた太陽電池モジュールがどの位置に存在しているかを特定することは困難であった。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、飛行体に搭載した画像取得部が取得する可視光による画像によって、カバーガラスの破損等の微小な異常がある太陽電池モジュールを簡便且つ正確に検出するとともに、当該異常な太陽電池モジュールの太陽光発電システム全体構成における位置を容易に特定することが可能な、太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体及びその飛行制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体は、太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、異常な太陽電池モジュールを検出する太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体であって、前記太陽電池モジュールのバスバー電極線を識別可能な撮影倍率、飛行高度、水平仰角及びGPS位置情報を含む画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュールの識別情報とを対応付ける飛行計画情報を格納した情報記憶部と、前記画像取得情報に基づいて、前記太陽電池モジュールの可視光による画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された前記画像において前記飛行計画情報を参照して異常な太陽電池モジュールの位置を特定可能とする位置特定手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体は、上記構成において、前記画像取得部が、複数段の前記太陽電池モジュールを含む前記画像を取得するのが好ましい。
【0014】
本発明の太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法は、太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、異常な太陽電池モジュールを検出する太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法であって、前記太陽電池モジュールのバスバー電極線を識別可能な撮影倍率、飛行高度、水平仰角及びGPS位置情報を含む画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュールの識別情報とを対応付ける飛行計画情報に基づいて、画像取得部により前記太陽電池モジュールの可視光による画像を取得するように前記飛行体の飛行を制御し、前記画像取得部によって取得された前記画像において、前記飛行計画情報を参照して異常な太陽電池モジュールの位置を特定することを特徴とする。
【0015】
本発明の太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法は、上記構成において、前記画像取得部により、複数段の前記太陽電池モジュールを含む前記画像を取得するように前記飛行体の飛行を制御するのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、飛行体に搭載した画像取得部が取得する可視光による画像によって、カバーガラスの破損等の微小な異常がある太陽電池モジュールを簡便且つ正確に検出するとともに、当該異常な太陽電池モジュールの太陽光発電システム全体構成における位置を容易に特定することが可能な、太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体及びその飛行制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】太陽光発電システムの一例を示す説明図である。
【
図2】
図1に示す太陽光発電システムを構成する太陽電池モジュールを示す図である。
【
図3】
図2に示す太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルを示す図である。
【
図4】カバーガラスに割れが生じた状態の太陽電池モジュールの一部の太陽電池セルを示す図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る飛行体とその操縦端末の構成を示すブロック図である。
【
図6】変形例に係る飛行体とその操縦端末の構成を示すブロック図である。
【
図7】飛行体の広範囲検知飛行条件を示す図である。
【
図8】画像取得部の撮影領域とガラス破片検知限界との関係を示す図である。
【
図9】飛行体が取得したホバリング画像によるカバーガラスの割れ検出例を示す図である。
【
図10】飛行体が取得したホバリング画像における分割領域と各太陽電池モジュールとの対応を示す図である。
【
図11】分割領域と飛行計画情報との対応表(飛行計画)の一例を示す図である。
【
図12】自立飛行を行う場合の飛行体の飛行制御手順を示すフローチャート図である。
【
図13】非自立飛行を行う場合の飛行体の飛行制御手順を示すフローチャート図である。
【
図14】
図13に示すフローチャートの続きのフローチャート図である。
【
図15】カバーガラスに割れが生じた太陽電池モジュールの位置を特定する手順を示すフローチャート図である。
【
図16】カバーガラスの割れを自動的に検出する手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明をより具体的に例示説明する。
【0019】
図1に示す太陽光発電システム1は、本発明の一実施の形態に係る飛行体による異常な太陽電池モジュールの検出の対象となる太陽光発電システム1の一例を示すものである。この太陽光発電システム1は、複数(
図1では3つ)の太陽電池アレイ2をインバータからなるパワーコンディショナ(不図示)により電力系統に連携させた構成を有している。複数の太陽電池アレイ2は、それぞれ複数枚の太陽電池モジュール3が直列に接続された太陽電池ストリング4を含んで構成される。太陽電池ストリング4は太陽電池モジュール3を電気的に直列接続して構成されるが、
図1においては、太陽電池ストリング4が太陽電池モジュール3を紙面上横一列に配置し、かつ太陽電池ストリング4の紙面上横方向の長さが太陽電池アレイ2の紙面上横方向の長さに等しいように描いている。従って、
図1の太陽電池アレイ2は太陽電池ストリングを4段並列配置して構成している。ここで、太陽電池ストリング4を構成する太陽電池モジュール3の配置形態は任意であり、かつ太陽光発電システム1の設計条件に対応して太陽電池モジュール3の直列数が決定されるから、太陽電池アレイ2における太陽電池ストリング4の配置構成は
図1に限られるものではない。そこで、本発明においては、太陽電池アレイ2における太陽電池モジュール3の位置が太陽電池ストリング4とは関係なく一意に定まっているものとする。従って、
図1においては、太陽電池アレイ2が紙面上横方向に配置された太陽電池モジュール列(以下、「PVパネル列」。)が4段で構成されているとする。なお、
図1においては、便宜上、それぞれの太陽電池アレイ2において、1つの太陽電池モジュール3にのみ符号を付してある。
【0020】
図2に示すように、太陽光発電システム1を構成する太陽電池モジュール3は、電気的に直列に接続された複数の太陽電池セル5を備えている。
図2に示す場合では、太陽電池モジュール3は、横に10列、縦に6段の合計60枚の太陽電池セル5を備えている。
【0021】
図3に示すように、それぞれの太陽電池セル5の表面には、互いに平行な複数本(
図3に示す場合では3本)のバスバー電極線5aと、それぞれバスバー電極線5aに直角に交わるとともにバスバー電極線5aに電気的に接続された複数本のフィンガー電極(グリッド線)5bとが配線されている。
図3においては、便宜上、1つのフィンガー電極5bにのみ符号を付してある。
【0022】
太陽電池モジュール3は、スーパーストレート構造となっており、
図2に示すように、その表面が透明な単一のカバーガラス6により覆われた構成となっている。カバーガラス6としては、例えば白板熱処理強化ガラスなどの強化ガラスが使用される。太陽電池セル5に設けられたバスバー電極線5a及びフィンガー電極5bは、カバーガラス6に覆われるとともにカバーガラス6を通して外部から視認可能となっている。
【0023】
カバーガラス6は、割れを生じると、モザイク状に亀裂が広がる。そのため、割れを生じたカバーガラス6は、1cm程度のサイズのガラス破片が太陽電池モジュール3の全面に渡ってモザイク状に敷き詰められた状態となる。近接目視では、太陽電池モジュール3の全面に渡ってカバーガラス6が割れている状態を直接視認できるが、カバーガラス6が割れた太陽電池モジュール3から遠ざかって目視すると、
図4に示すように、バスバー電極線5aが途切れ途切れの破線状に視認されるのみで、バスバー電極線5a上以外の太陽電池セル5上のカバーガラス6が割れた状態は視認困難となる。これは、カバーガラス6が割れた太陽電池モジュール3に入射した太陽光が、割れたカバーガラス6を透過後、バスバー電極線5aによって反射され、その反射光が前面のガラス破片によって散乱され、その散乱光によってカバーガラス6が割れた状態を検知するためである。この結果、バスバー電極線5aが破線状に視認されることで、太陽電池モジュール3に、カバーガラス6の割れという異常が生じていると判断することができる。
【0024】
図5は、本発明の一実施の形態である飛行体10とその操縦端末20の構成を示すブロック図である。飛行体10と操縦端末20とで異常検出システムが構成される。
【0025】
飛行体10は、太陽光発電システム1を構成する多数の太陽電池モジュール3の中から、異常な太陽電池モジュール3を検出するためのものである。飛行体10は、例えばドローンなどの、無人で自律飛行可能であるとともに位置及び飛行高度を一定としてホバリングが可能な構成のものとされる。飛行体10は、制御部11、飛行駆動部12、飛行高度検出部13、GPS-IF(GPSインターフェース)14、無線通信IF(無線通信インターフェース)15、情報記憶部16及び画像取得部17を備えている。
【0026】
制御部11は、例えばCPUを備えたマイクロコンピュータで構成される。飛行駆動部12は、飛行体10を飛行させるためのものであり、例えばプロペラを駆動する電動モータ、当該電動モータに電力を供給するバッテリなどを含んで構成される。飛行駆動部12は制御部11に接続され、制御部11により作動が制御される。飛行高度検出部13は、飛行体10の飛行高度を検出することができる。GPS-IF14は、GPSシステムからの信号を受信して飛行体10の位置を検出することができる。飛行高度検出部13及びGPS-IF14は、それぞれ制御部11に接続され、検知した飛行体10の飛行高度及び位置は制御部11に入力される。
【0027】
画像取得部17は、例えば可視光カメラであり、可視光による画像を取得することができる。画像取得部17は、ジンバル機構を用いて飛行体10に取り付けられており、所定の水平仰角(水平から測った角度)で画像(動画、静止画)を取得することができる。画像取得部17は制御部11に接続され、制御部11により作動が制御される。
【0028】
画像取得部17としては、例えば、画像センサーとして、有効画素数が12メガピクセル、画素ピッチが1.55μmの、1/2.3インチCMOS(6.2mm×4.7nm)が用いられたデジタルカメラであって、カメラレンズとして、画角が82.6度(24mm)、47.8度(48mm)/35mm換算で24-48mmのものが用いられ、静止画サイズが4000×3000(12メガピクセル)のものを用いることができる。またジンバル機構としては、チルトが-90度から+30度(水平面から上方に正)、パンが-75度から+75度のものを用いることができる。上記構成の飛行体10は市販のものが入手可能である。
【0029】
情報記憶部16は飛行計画情報を格納している。飛行計画情報は、画像取得部17における太陽電池モジュール3のバスバー電極線5aを識別可能な撮影倍率、画像取得部17が撮影を行う際の飛行体10の飛行高度、画像取得部17の水平仰角及び画像取得部17が撮影を行う際のGPS位置情報を含むホバリング画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュールの識別情報とを含むとともに、これらを対応付けたものである。
【0030】
飛行体10は、制御部11が、当該飛行計画情報に基づき、飛行高度検出部13から入力される飛行高度及びGPS-IF14から入力される位置情報を参照しつつ飛行駆動部12を制御することで、所定の飛行経路に沿って自律的に飛行することができる。また、画像取得部17は、飛行体10が、飛行計画情報に基づき所定位置且つ所定高度でホバリング中に、ホバリング画像取得情報に基づいて、太陽電池モジュール3の可視光による所要の複数枚のホバリング画像を取得することができる。
【0031】
より具体的には、
図1に示すように、飛行体10は、当該飛行計画情報に基づき、最上段または最下段の太陽電池アレイ2の上空を、その一端から他端に向けて飛行し、次いで次の段の太陽電池アレイ2の上空を、他端から一端に向けて飛行し、次いで次の段の太陽電池アレイ2の上空を、その一端から他端に向けて飛行するように、1段目からk段目(kは整数)までの全ての段の太陽電池アレイ2の上空を、一筆書き状に移動することができる。このとき、飛行体10は、所定の距離を移動する毎にホバリングをする。そして、画像取得部17は、ホバリング画像取得情報に基づいて、当該ホバリングの度に、当該太陽電池アレイ2を構成する複数枚の太陽電池モジュール3を含む領域を撮影して、各段の太陽電池アレイ2毎にm枚の可視光によるホバリング画像を取得する。このとき、画像取得部17の撮影倍率、飛行高度、水平仰角は、太陽電池モジュール3のバスバー電極線5aを識別可能な程度に設定される。また、飛行体10の飛行高度、位置、画像取得部17の撮影倍率、飛行高度、水平仰角は、隣り合う領域におけるホバリング画像において、同一の太陽電池モジュール3が両方のホバリング画像に重複するように全て含まれることがなく、且つ、全ての太陽電池モジュール3が何れかのホバリング画像に全て含まれるように設定される。各ホバリング画像を取得する際の飛行体10の位置はGPS-IF14により取得され、画像領域識別情報として各ホバリング画像と対応付けられて情報記憶部16に記憶される。また、各ホバリング画像に写った複数の太陽電池モジュール3は、太陽光発電システム1を構成する多数枚の太陽電池モジュール3のそれぞれに個別に付けられた識別情報と対応付けられる。当該識別情報は、太陽電池アレイ2の番号と、それぞれの太陽電池アレイ2における太陽電池モジュール3の番号とを有することができる。
【0032】
操縦端末20は、飛行体10の無線通信IF15と無線通信可能な無線通信IF(無線通信インターフェース)21を備えており、飛行体10は操縦端末20と無線通信可能となっている。無線通信としては、例えば無線LANなどを用いることができる。また、操縦端末20は、情報処理部22、情報記憶部23、情報入力部24及び表示部25を備えている。
【0033】
飛行体10の画像取得部17が取得したホバリング画像の画像データ及び画像領域識別情報は、情報記憶部16に記憶されるとともに、無線通信IF15及び無線通信IF21を介して無線で操縦端末20に転送され、情報処理部22で処理されて情報記憶部23に格納される。モニター等で構成される表示部25は、情報記憶部23に格納されたホバリング画像及び画像領域識別情報を表示することができる。
【0034】
飛行体10は、予め情報記憶部16に飛行計画情報を記憶させておき、当該飛行計画情報に基づいて自立して飛行するとともに画像取得部17により所要の複数枚のホバリング画像を取得し、当該画像データを無線通信IF15及び無線通信IF21を介して操縦端末20に転送して操縦端末20の表示部25に映し出す構成としてもよい。
【0035】
または、飛行体10は、操縦者が操縦端末20の情報入力部24により入力した飛行計画情報を無線通信IF21及び無線通信IF15を介して飛行体10に転送し、当該転送されてきた飛行計画情報に基づいて自立して飛行するとともに画像取得部17により所要の複数枚のホバリング画像を取得し、当該画像データを無線通信IF15及び無線通信IF21を介して操縦端末20に転送して操縦端末20の表示部25に映し出す構成としてもよい。
【0036】
図6に変形例として示すように、飛行体10の無線通信IF15と操縦端末20の無線通信IF21との間の無線通信は、無線LANに限らず、例えば、LTE、5Gなどの広域無線通信IFを介してインターネット等のネットワーク30を経由して飛行体10と遠隔地に設置された操縦端末20との間で無線通信する構成とすることもできる。
【0037】
図7に示すように、画像取得部17において、撮影領域面とは、画像取得部17に内蔵された画像センサーの受光面上にフォーカス(結像)される被撮影面であり、
図7の紙面上では撮影領域面を垂直方向から見た直線を示している。すなわち撮影領域面上の点群が、画像取得部17に内蔵された画像センサー上の結像面に結像する。飛行体10が、ホバリングをして画像取得部17により太陽電池アレイ2の所定の領域におけるホバリング画像を取得する際、1つの太陽電池モジュール(PVパネル)3の縦方向の長さをa(m)、太陽電池モジュール3の横方向の長さをb(m)、太陽電池モジュール3の地平面に対する設置傾斜角(PVパネル傾斜角)をα(単位は度)、太陽電池アレイ2における太陽電池モジュール3の段数(PVパネル段数)をN(図示する場合は4段)、画像取得部17の画角を2φ(単位は度)、画像取得部17の水平仰角をθ(水平面から下方に正。単位は度。)、飛行体10の飛行高度をH(m)とした場合、
図7に示すように、太陽電池アレイ2と撮影領域面とのなす角が90°-(θ+α)=0を満たすとき、太陽電池アレイ2の表面が撮影領域面に一致し、太陽電池アレイ2を構成する複数段の太陽電池モジュール3の列(PVパネル列)の最下段から最上段までの全てが画像取得部17の画像センサーの受光面に結像することになる。一方で、90°-(θ+α)=0を満たさない場合には、太陽電池アレイ2を構成する複数断のPVパネル列の少なくとも一部がデフォーカスの状態となる。なお、
図7に示すように、X(m)は画像取得部17に実装されたカメラレンズの中心から撮影領域面の端までの距離であり、Y(m)は撮影領域面の上端から光軸までの距離である。
【0038】
ホバリング画像取得情報は、飛行体10が、太陽電池モジュール3に生じたカバーガラス6の割れなどの微小な異常をホバリング画像上で取得することができる条件に設定される。
【0039】
図8に示すように、画像取得部17の内部において、画像センサーの受光面と可変焦点カメラレンズとが焦点距離f(可変)となるように画像センサーと可変焦点カメラレンズが実装されている。撮影領域面は、
図7に示した撮影領域面と同じものである。可変焦点カメラレンズの画角2φ(可変)に収まる撮影領域面内の領域が画像センサーの受光面上にフォーカス(結像)される。カバーガラス6の割れ(ガラス破片)の存在は、バスバー電極による太陽光の反射光がガラス破片によって散乱される結果、該散乱光による破線状のバスバー電極線5aの像が、画像取得部17の画像センサーの受光面上で分解できることで検知される。従って、画像センサーがバスバー電極線5aの線幅(Δ)と同程度の微小な画像の差異を検出できるためのピクセル数の画素領域を有することが、カバーガラス6の割れが検出できる条件となる。ここで、太陽電池アレイ2の表面と画像センサーの受光面とが正確に結像関係を満たす場合に最もコントラストが高くカバーガラス6の割れた像が画像センサーの受光面に結像されるが、正確な結像関係を満たさなくても、言い換えれば、太陽電池アレイ2の表面の像が画像センサーの受光面上でデフォーカス状態となっていてもバスバー電極線5aの線幅(Δ)と同程度の微小な画像の差異を分解可能な場合がある。従って、本発明では、太陽電池アレイ2の表面と画像センサーの受光面とが正確に結像関係を満たす場合にバスバー電極線5aの線幅(Δ)と同程度の微小な画像の差異を分解可能な画素領域を最小画素領域として含み、かつ太陽電池アレイ2の表面の像が画像センサーの受光面上でデフォーカス状態であってもバスバー電極線5aの線幅(Δ)と同程度の微小な画像の差異を分解できる最小画素領域を検知限界画素領域Dと定義する。従って、画像センサー上でバスバー電極線5aの線幅(Δ)と同程度の微小な画像の差異の像が検知限界画素領域Dで分解できることがカバーガラス6の割れを検出するための条件となる。
【0040】
太陽電池モジュール3上の微小な異変(カバーガラス6のガラス破片の存在)は、上記のとおり、太陽電池モジュール3への入射光が、カバーガラス6を透過後、バスバー電極線5aによって反射され、この反射光がバスバー電極線5aの前面のカバーガラス6のガラス破片によって散乱されることで認識される。散乱光は、太陽電池モジュール3の表面から放射状に広がり、この散乱光によって太陽電池モジュール3の微小な異変(カバーガラス6のガラス破片の存在)が画像取得部17の画像センサー上で分解でき、かつ太陽電池モジュール3のバスバー電極線5aの全長に渡って破線状につながる像が画像センサー面に結像することで検出可能となる。
図8に示すように、画像取得部17の画像センサーの焦点面の紙面上縦方向の長さの1/2をA(m)とし、撮影領域面の紙面上縦方向の長さの1/2をY(m)とし、画像取得部17の焦点距離をf(m)としたとき、この条件を満たす撮影倍率Mは、以下の(式1)で算出することができる。
【0041】
[数1]
M=Y/A=(N×a×sin(θ+α))/(2f×tanφ) (式1)
【0042】
ここで、画像取得部17の画角2φが大きいとき(広角)、撮影範囲は広くなるので、多くの太陽電池モジュール3を同一のホバリング画像上に撮影することができる。従って、広域に設置された複数の太陽電池アレイ2を同一撮影画像上に撮影するためには画角2φを大きくする(焦点距離fは小さい)ことが望ましい。一方、画角2φが小さいとき(狭角)は、いわゆる望遠レンズに相当し、狭い撮影範囲が拡大されて画像センサーの受光面上に結像されるので、太陽電池モジュール3上の微小異変の検出にはより狭い画角(焦点距離fは大きい方)が望ましい。こうしたことから、本発明では、
図8に示すように、まず、太陽電池モジュール3のバスバー電極線5aの線幅が分解可能な画像センサー上の画素領域を検知限界画素領域Dとし、使用する飛行体10の画像取得部17の仕様に応じて、この検知限界画素領域Dに対応する画角2φ(焦点距離f)、及びN、a、αとから、上記の撮影倍率Mを求める(式1)によって、予め撮影倍率Mを設定するようにしている。
【0043】
上述したように、太陽電池モジュール3上のバスバー電極線5aの線幅程度の微小異変を検出可能な画角と、なるべく多くの太陽電池モジュール3の微小異変を同一撮影画像に映すこと、すなわち当該微小変異がどの程度広範囲に分布しているかを検出可能な画角とはトレードオフの関係になる。そこで、本発明では、
図7に示す太陽電池アレイ2の表面と撮影領域面とのなす角90°-(θ+α)が0でない場合に、太陽電池アレイ2の上段に行くほど撮影領域面上でデフォーカスになることを考慮して、検知限界画素領域Dを設定するようにしている。
【0044】
図9は、太陽電池アレイ2の最上段の最も左側の太陽電池モジュール3の位置にカバーガラス6の割れを生じているものを設置して、飛行体10に搭載された可視光カメラによってホバリング状態で撮影した太陽電池アレイ2のホバリング画像像(実写画)において、撮影領域内に撮影されている全ての太陽電池モジュール3の輪郭をトレースして示した図である。実際に、実写画像上で、太陽電池アレイ2の最上段の最も左側の太陽電池モジュール3がカバーガラス6の割れを生じていることが確認できた。このホバリング画像は、画像取得部17の画角2φ=47.8°(画像取得部17として使用したカメラ仕様での最小画角、最大倍率)、H=6.7m、水平仰角θ=42°で撮影したものである。このように、ホバリング画像取得情報は、デフォーカス状態となる領域においても、カバーガラス6の割れを検出することができるように設定することが可能である。このことは、
図9のホバリング画像が、カメラ内の画像センサー上で、
図6について説明した検知限界画素領域Dを満たして撮影されていることを示す。なお、
図9のホバリング画像においては、ホバリング画像の撮影画像領域の中心点(撮影画像領域の対角線の交点)は、画像取得部17の光軸上にあり、水平面から測った画像取得部17の光軸の角は水平仰角θである。
【0045】
ホバリング画像取得情報は、太陽電池アレイ2を構成する最下段の太陽電池モジュール3の列(PVパネル列)から最上段の太陽電池モジュール3の列(PVパネル列)までが同一のホバリング画像に収まるようにするために、以下の(数式2)を満たすように設定される。
【0046】
[数2]
H={(N×a×sin(θ+φ)×sin(θ+α))/2sinφ}+L (式2)
【0047】
ここで、L(m)は、
図7で示すように最下段の太陽電池モジュール3の列の下端の地面からの高さである。特に、太陽電池アレイ2を構成する最下段の太陽電池モジュール3の列から最上段の太陽電池モジュール3の列までが同一のホバリング画像に丁度収まる場合は、90°-(θ+α)=0であるから、以下の(式3)となる。
【0048】
[数3]
H={(N×a×sin(90°+φ-α)/2sinφ} (式3)
【0049】
当該(式3)を満たす撮影条件は、カバーガラス6の割れが検出可能であり、かつ太陽電池アレイ2の最下段の太陽電池モジュール3の列から最上段の太陽電池モジュール3の列までが丁度ホバリング画像に収まるため最適撮影条件となる。
【0050】
例えば、本実施の形態では、画像取得部17の画角2φ=47.8°(画像取得部17として使用したカメラ仕様での最小画角、最大倍率)、N=4、α=15°、a=0.99m、L=0.5mであり、このとき、(式2)からH=5.3m、(式1)から撮影倍率はM=46.5と算出される。ここで、
図9に示したホバリング画像の撮影条件と対比すると、
図9のホバリング画像は上記の最適条件と同じ仕様の画像取得部17の最大倍率で撮影されているが、最上段で左端に配置されている太陽電池モジュール3のカバーガラス6の割れがデフォーカス状態で撮影されていることになる。すなわち、
図9のホバリング画像は、最適撮影条件を厳密に満たしていないデフォーカス状態であっても、撮影画像上でカバーガラス6の割れを視認可能な範囲がある実例を示している。すなわち、(式2)を満たすように飛行体10の飛行を制御し、かつ検知限界画素領域Dとなるように撮影条件を満たして撮影されたホバリング画像は、太陽電池アレイ2の最上段の太陽電池モジュール3の列から最下段の太陽電池モジュール3の列までが同一の撮影画像領域に撮影され、かつ必ずカバーガラス6の割れが検出可能な(検知限界画素領域Dを含む)状態で撮影されていることになる。
【0051】
図10は、
図9のホバリング画像(実写画像)上で、撮影されている太陽電池モジュール3の各々に対応して分割画像領域を割り当てた状態を示す図である。
図10の撮影画像領域PICmは
図9の撮影画像領域に重なる。従って、
図10の各分割画像領域SEGn(n=1、2・・・12)は
図9の各太陽電池モジュール3と1対1に重なる位置になり、分割画像領域SEG10が
図9のホバリング画像上のカバーガラス6に割れを生じた太陽電池モジュール3であることが特定される。
図11は、所定のホバリング画像を取得するための画像取得情報と、撮影画像領域と分割画像領域とを対応付ける画像領域識別情報と、太陽電池アレイ2における太陽電池モジュール3の位置を特定(識別)するPVモジュール識別情報との対応関係を示す表(飛行計画)の一例を示す図である。
【0052】
位置特定手段としての機能を有する飛行体10の制御部11は、画像取得部17によって取得されたホバリング画像から、
図11の飛行計画を参照して、カバーガラス6の割れを含む異常な太陽電池モジュール3の全太陽電池アレイ2における位置を特定する。
【0053】
より具体的には、制御部11は、まず、
図11に示す飛行計画の画像取得情報に基づいて第m(m=1、2・・)番目のホバリング画像(撮影画像領域PICm)を取得するように飛行体10の飛行駆動部12と画像取得部17を制御する。撮影画像領域PICmを取得するためのカメラ水平仰角θm、飛行体高度Hm、画像撮影倍率Mmは、上記に説明したように、撮影画像領域PICmが、太陽電池アレイ2の最上段の太陽電池モジュール3の列から最下段の太陽電池モジュール3の列までが同一の撮影画像領域に収まるように撮影され、かつ必ずカバーガラス6の割れが検出可能な(検知限界画素領域Dを含む)状態で撮影されるように予め設定された情報である。また、飛行体10の位置情報(GPS情報)Gmは、撮影画像領域PICmが撮影される位置情報であって、撮影画像領域PICmが互いに重ならないように予め設定されている。従って、撮影画像領域PICmは、当該撮影画像領域PICm上に撮影されている各太陽電池モジュール3の中にカバーガラス6が割れた状態のものがあれば必ずこれを検出可能な状態で撮影されている。制御部11は、位置情報(GPS情報)Gmで指定された位置で画像取得部17によって取得された撮影画像領域PICmを情報記憶部16に格納するとともに、操縦端末20に転送する。操縦端末20に転送された撮影画像領域PICmは、情報処理部22によって情報記憶部に格納されるとともに、表示部25に表示される。次に、制御部11は、画像取得部17によって取得された第m番目の撮影画像領域PICmにおいて、撮影画像領域PICmの識別情報PICmと、撮影画像領域PICmに含まれる各太陽電池モジュール3に対応する分割画像領域の識別情報SEGn(n=1、2・・)とから、撮影画像領域PICm上の各太陽電池モジュール3の位置と分割画像領域SEGnとを1対1に対応付けるとともに、各分割画像領域SEGnについて、カバーガラス6の割れを検出する。この検出方法については後述する。このことから、制御部11によって、どの分割画像領域SEGnがカバーガラス6の割れを有するかが特定される。
図11のPVモジュール識別情報であるアレイ番号ARYmとPVモジュール番号PVPn(n=1、2・・)とは、太陽光発電システム1において、全太陽電池アレイ2と全太陽電池モジュール3との位置を特定する情報である。制御部11は、飛行体10の位置情報(GPS情報)GmとPVモジュール識別情報とから、位置情報(GPS情報)Gmで取得された撮影画像領域PICmが太陽光発電システム1のどの位置で取得されたものであるかを特定する。即ち、撮影画像領域PICm上の各太陽電池モジュール3とアレイ番号ARYmとPVモジュール番号PVPnとが1対1に対応付けられる。上述のとおり、撮影画像領域PICm上の各太陽電池モジュール3の位置と分割画像領域SEGnとが1対1に対応付けられており、各分割画像領域SEGnについてカバーガラス6の割れを有するか否かが検出されている。また、撮影画像領域PICm上の各太陽電池モジュール3とアレイ番号ARYmとPVモジュール番号PVPnとが1対1に対応付けられている。この状態で、制御部11は、太陽光発電システム1に全太陽電池モジュール3の位置と全ての撮影画像領域PICmにおける各太陽電池モジュール3とを1対1に対応付ける。このようにして、カバーガラス6の割れを含む異常な太陽電池モジュール3の全太陽電池アレイ2における位置を特定することが可能となる。ここで、
図11の飛行計画を構成する情報の形式は、例えばCSVを用いることができる。即ち、各情報をカンマ(、)で区切ったデータ列とし、その順序によって各々の情報の意味を付与する。
【0054】
図12は、自立飛行を行う場合の飛行体の飛行制御手順を示すフローチャート図である。また、
図13は、非自立飛行を行う場合の飛行体の飛行制御手順を示すフローチャート図であり、
図14は、
図13に示すフローチャートの続きのフローチャート図である。
【0055】
次に、
図12に示すフローチャート図に基づいて、本発明の一実施の形態に係る飛行制御方法により、飛行体10が自立飛行を行う場合における、太陽光発電システム1の中から微小異変(カバーガラス6の割れを含む)を有する太陽電池モジュール3の位置を特定する手順の一例について説明する。
【0056】
まず、ステップS1として、操縦者の操作を受けて、操縦端末20が飛行体10へ飛行開始指令を送信する。ステップS2において、飛行体10が操縦端末20からの飛行開始指令を受信すると、ステップS3において、制御部11が情報記憶部16から飛行計画情報を読み出し、ステップS4において、飛行駆動部12を制御して、飛行体10を飛行計画情報の飛行計画における第1撮影地点にまで飛行させるとともに、ステップS5において、飛行体10を第1撮影地点でホバリングさせる。
【0057】
次に、ステップS6において、制御部11は、ホバリング画像取得情報として、第1撮影地点に対応した第1画像取得情報を画像取得部17に設定し、ステップS7において、画像取得部17が、ホバリング画像取得情報としての第1画像取得情報に基づいてホバリング画像としての第1画像(PIC1)を取得し、情報記憶部16に格納する。そして、ステップS8において、情報記憶部16に格納された第1画像(PIC1)を操縦端末20へ転送する。
【0058】
次に、ステップS9において、飛行体10を飛行計画情報の飛行計画における第2撮影地点にまで飛行させ、以降、上記と同様の手順で、複数枚のホバリング画像としての第m画像(PICm)(m=1,2,・・)を順次取得する。ステップS10において、最終撮影地点(第m撮影地点)の第m画像(PICm)を操縦端末20へ転送すると、ステップS11において飛行体10を着地点へ帰還させる。
【0059】
操縦端末20は、ステップS12において、飛行体10から複数枚の第n画像(PICn)(n=1,2,・・)を受信し、順次表示部25へ表示するとともに情報記憶部23へ格納する。
【0060】
一方、飛行体10が非自立飛行を行う構成とした場合には、太陽光発電システム1の中から微小異変(カバーガラス6の割れを含む)を有する太陽電池モジュール3の位置を特定する手順は、
図13、
図14に示す手順によって行うことができる。
【0061】
まず、ステップS1として、操縦者の操作を受けて、操縦端末20が飛行体10へ飛行開始指令を送信すると、ステップS2において、飛行体10が操縦端末20からの飛行開始指令を受信してスタンバイ状態となる。次に、ステップS3において、操縦端末20の情報処理部22が情報記憶部23から飛行計画情報を読み出し、ステップS4において、飛行体10に向けて飛行計画情報の飛行計画における第1撮影地点への飛行を指令する。当該指令を受信した飛行体10は、ステップS5において、制御部11が飛行駆動部12を制御することで、飛行体10を第1撮影地点にまで飛行させるとともに、ステップS6において、飛行体10を第1撮影地点でホバリングして待機させる。
【0062】
次に、ステップS7において、操縦端末20が、飛行計画情報における第1撮影地点に対応した第1画像取得情報を飛行体10に転送し、ステップS8において、飛行体10は、制御部11が、操縦端末20から転送された第1撮影地点に対応した第1画像取得情報を、ホバリング画像取得情報として画像取得部17に設定し、ステップS9において、画像取得部17が、第1画像取得情報に基づいて第1画像(PIC1)を取得し、第1画像(PIC1)を情報記憶部16に格納するとともに操縦端末20に転送する。
【0063】
操縦端末20は、ステップS10において、飛行体10からの第1画像(PIC1)を受信し、表示部25へ表示するとともに情報記憶部23へ格納する。
【0064】
次に、ステップS11において、操縦端末20が、飛行体10に向けて飛行計画情報の飛行計画における第2撮影地点への飛行を指令する。当該指令を受信した飛行体10は、ステップS12において、制御部11が飛行駆動部12を制御することで、飛行体10を第2撮影地点にまで飛行させる。
【0065】
以降、第m撮影地点まで、上記と同様の手順で飛行体10を移動させつつ、複数枚の第m画像(PICm)(m=1,2,・・)を順次取得し、情報記憶部16に格納するとともに操縦端末20に転送し、第2画像(PIC2)から第m画像(PICm)を順次表示部25へ表示するとともに情報記憶部23へ格納する。
【0066】
上記手順において、各ホバリング画像には、GPS-IF14により取得されたGPS情報(位置情報)に基づいた、太陽電池アレイ2における撮影位置すなわち画像領域識別情報が特定されており、当該画像領域識別情報がホバリング画像と対応付けられた状態で情報記憶部16に記憶されている。すなわち、各ホバリング画像は、上記のホバリング画像取得情報に従った撮影条件で撮影されることで、カバーガラス6の破損を検出可能な条件を満たした上で、太陽電池モジュール3の位置がホバリング画像上の太陽電池モジュール3の位置と1対1に対応するように画像領域識別情報と関連付けられている。
【0067】
図15は、カバーガラス6に割れが生じた太陽電池モジュール3の位置を特定する手順を示すフローチャート図である。上記の手順において、飛行体10の制御部11は、ステップS1として、情報記憶部16から第1画像(PIC1)を読み出すとともに、ステップS2として、情報記憶部16から第1画像(PIC1)に対応する画像領域識別情報を読み出す。そして、ステップS3において、制御部11は、画像領域識別情報の第1分割画像領域SEGn(n=1,2,・・)を特定する4つの検知限界画素領域Dで囲まれた画像領域を第1画像(PIC1)上における分割画像領域SEGn(n=1,2,・・)に設定する。これにより、画像取得部17によって取得された複数枚のホバリング画像における、各太陽電池モジュール3の位置が特定される。
【0068】
図16は、カバーガラス6の割れを自動的に検出する手順を示すフローチャート図である。上記の手順において、飛行体10の制御部11は、ステップS1として、情報記憶部16から第1画像(PIC1)を読み出すとともに、ステップS2として、情報記憶部16に格納されている画像領域識別情報を参照して、第1画像(PIC1)から分割画像領域SEGn(n=1,2,・・)を抽出する。次いで、制御部11は、ステップS3として、各分割画像領域SEGnにおいて、バスバー電極線5aに対応する検知限界画素領域Dの一群を抽出する。次に、ステップS4において、制御部11は、分割画像領域SEGnにおいて、バスバー電極線5aの連続する検知限界画素領域DのRGB情報を読み取り、ステップS5において、連続する検知限界画素領域DのRGB情報が同じか否かを判断する。そして、ステップS5において、連続する検知限界画素領域DのRGB情報が同じと判断された場合には、バスバー電極線5aが連続する線状に検知されていることから、ステップS6において、分割画像領域SEGnに対応する太陽電池モジュール3にカバーガラス6の割れはないと判定する。一方、ステップS5において、連続する検知限界画素領域DのRGB情報が同じではない判断された場合には、バスバー電極線5aが途切れ途切れの破線状に検知されていることから、ステップS7において、分割画像領域SEGnに対応する太陽電池モジュール3にカバーガラス6の割れが生じていると判定する。
【0069】
このような手順によるカバーガラス6の割れが有ると判定された結果は、対応する分割画像領域SEGnとともに操縦端末20に転送され、対応するホバリング画像とともに表示部25に表示される。これにより、操縦者は、表示部25の表示から、カバーガラス6に割れた生じた太陽電池モジュール3を簡便且つ正確に検知するとともに、当該異常な太陽電池モジュール3の太陽光発電システム1の全体構成における位置を容易に特定することができる。
【0070】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0071】
例えば、上記飛行体10ないし飛行体の飛行制御方法によれば、バスバー電極線5aを途切れ途切れの破線のように視認させる微小な異変であれば、カバーガラス6の割れに限らず、他の異変を検知することも可能である。
【0072】
また、
図15、
図16に示す手順は、操縦端末20の情報処理部22が行うようにしてもよい。
【0073】
また、前記実施の形態において、画像取得部17が取得する画像はホバリング画像であるとしたが、飛行体10を予め設定された航路と一定速度で連続飛行させ、飛行体位置情報(GPS情報)Gmに到達した時点でスナップショット画像を取得し、これを撮影画像領域PICmとして採用することもできる。この場合、撮影画像領域PICm上でカバーガラス6の割れを検出できるようにするには飛行速度はなるべく低速であることが望ましいが、歩行速度(時速4km/h程度)であれば可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 太陽光発電システム
2 太陽電池アレイ
3 太陽電池モジュール
4 太陽電池ストリング
5 太陽電池セル
5a バスバー電極
5b フィンガー電極(グリッド線)
6 カバーガラス
10 飛行体
11 制御部
12 飛行駆動部
13 飛行高度検出部
14 GPS-IF
15 無線通信IF
16 情報記憶部
17 画像取得部
20 操縦端末
21 無線通信IF
22 情報処理部
23 情報記憶部
24 情報入力部
25 表示部
30 ネットワーク
【手続補正書】
【提出日】2021-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、異常な太陽電池モジュールを検出する太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体であって、
前記太陽電池モジュールのバスバー電極線幅を識別可能な撮影倍率、飛行高度、水平仰角及びGPS位置情報を含む画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュールの識別情報とを対応付ける飛行計画情報を格納した情報記憶部と、
前記画像取得情報に基づいて、複数の前記太陽電池モジュールを直列配置した複数の太陽電池モジュール列の可視光による単一画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記単一画像において前記飛行計画情報を参照して複数の前記太陽電池モジュールに1対1で対応した分割画像領域を特定し、前記分割画像領域において前記バスバー電極が破線状構造を有する異常な太陽電池モジュールの位置を特定可能とする位置特定手段と、を備えることを特徴とする太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体。
【請求項2】
太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、異常な太陽電池モジュールを検出する太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法であって、
前記太陽電池モジュールのバスバー電極線幅を識別可能な撮影倍率、飛行高度、水平仰角及びGPS位置情報を含む画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュールの識別情報とを対応付ける飛行計画情報に基づいて、画像取得部により複数の前記太陽電池モジュールを直列配置した複数の太陽電池モジュール列の可視光による単一画像を取得するように前記飛行体の飛行を制御し、
前記画像取得部によって取得された前記単一画像において、前記飛行計画情報を参照して複数の前記太陽電池モジュールに1対1で対応した分割画像領域を特定し、前記分割画像領域において前記バスバー電極が破線状構造を有する異常な太陽電池モジュールの位置を特定することを特徴とする太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体は、太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、異常な太陽電池モジュールを検出する太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体であって、前記太陽電池モジュールのバスバー電極線幅を識別可能な撮影倍率、飛行高度、水平仰角及びGPS位置情報を含む画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュールの識別情報とを対応付ける飛行計画情報を格納した情報記憶部と、前記画像取得情報に基づいて、複数の前記太陽電池モジュールを直列配置した複数の太陽電池モジュール列の可視光による単一画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された前記単一画像において前記飛行計画情報を参照して複数の前記太陽電池モジュールに1対1で対応した分割画像領域を特定し、前記分割画像領域において前記バスバー電極が破線状構造を有する異常な太陽電池モジュールの位置を特定可能とする位置特定手段と、を備えることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法は、太陽光発電システムを構成する多数の太陽電池モジュールの中から、異常な太陽電池モジュールを検出する太陽電池モジュールの異常検出用の飛行体の飛行制御方法であって、前記太陽電池モジュールのバスバー電極線を識別可能な撮影倍率、飛行高度、水平仰角及びGPS位置情報を含む画像取得情報と、画像領域識別情報と、太陽電池モジュールの識別情報とを対応付ける飛行計画情報に基づいて、画像取得部により複数の前記太陽電池モジュールを直列配置した複数の太陽電池モジュール列の可視光による単一画像を取得するように前記飛行体の飛行を制御し、前記画像取得部によって取得された前記単一画像において、前記飛行計画情報を参照して複数の前記太陽電池モジュールに1対1で対応した分割画像領域を特定し、前記分割画像領域において前記バスバー電極が破線状構造を有する異常な太陽電池モジュールの位置を特定することを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】