(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185523
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】水処理装置および水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20060101AFI20221207BHJP
C02F 1/78 20060101ALI20221207BHJP
C02F 1/72 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C02F1/32
C02F1/78
C02F1/72 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093268
(22)【出願日】2021-06-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「ブロード発光を有する水銀フリー深紫外線光源を用いた循環・再利用水処理システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】高浪 龍平
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
【Fターム(参考)】
4D037AA08
4D037AA09
4D037AB03
4D037AB05
4D037AB16
4D037BA18
4D037CA12
4D050AA08
4D050AB13
4D050AB17
4D050BB02
4D050BC09
4D050BD04
4D050CA07
(57)【要約】
【課題】 水銀を用いることなく水の浄化性能の改善が可能な水処理装置および水処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る水処理装置は、流路2内を流れる水に処理を行う水処理装置100であって、流路2内の水DWに紫外線を照射する発光管アレイ型光源装置1を備え、発光管アレイ型光源装置1は、希ガスのプラズマを利用した発光により紫外線を発生するように構成され、300nmよりも長く400nm以下の第1の波長帯域内に第1のピーク波長を有する紫外線を発生する第1の発光管と、200nmよりも長く300nm以下の第2の波長帯域内に第2のピーク波長を有する紫外線を発生する第2の発光管と、100nmよりも長く200nm以下の第3の波長帯域内に第3のピーク波長を有する紫外線を発生する第3の発光管とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を流れる水に処理を行う水処理装置であって、
前記流路内の水に紫外線を照射する発光管アレイ型光源装置を備え、
前記発光管アレイ型光源装置は、
希ガスのプラズマを利用した発光により紫外線を発生するように構成され、
300nmよりも長く400nm以下の第1の波長帯域内に第1のピーク波長を有する紫外線を発生する第1の発光管と、
200nmよりも長く300nm以下の第2の波長帯域内に第2のピーク波長を有する紫外線を発生する第2の発光管と、
100nmよりも長く200nm以下の第3の波長帯域内に第3のピーク波長を有する紫外線を発生する第3の発光管とを含む、水処理装置。
【請求項2】
前記第3の発光管と空気との反応により発生したオゾンを前記流路の上流位置に供給する供給装置をさらに備えた、請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
紫外線を透過する材料により前記流路を構成する水処理管をさらに備え、
前記発光管アレイ型光源装置は、複数の前記第1の発光管、複数の前記第2の発光管および複数の前記第3の発光管がフレキシブル基板上に配置されるように構成され、
前記フレキシブル基板は、前記水処理管の外周面上に巻きつけられる、請求項1または2記載の水処理装置。
【請求項4】
前記複数の第1の発光管、前記複数の第2の発光管および前記複数の第3の発光管は、前記水処理管の上流から下流へ順に配置される、請求項3記載の水処理装置。
【請求項5】
前記第1の発光管は、300nmから400nmまでの波長帯域にわたって0よりも高い発光強度を有し、
前記第2の発光管は、220nmから300nmまでの波長帯域にわたって0よりも高い発光強度を有し、
前記第3の発光管は、160nmから190nmまでの波長帯域にわたって0よりも高い発光強度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記第1の発光管は、希ガスのプラズマを利用した蛍光体発光により紫外線を発生するように構成され、
前記第2の発光管は、希ガスのプラズマを利用した蛍光体発光により紫外線を発生するように構成され、
前記第3の発光管は、希ガスのプラズマ発光により紫外線を発生するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項7】
流路内を流れる水に処理を行う水処理装置であって、
前記流路内の水に紫外線を照射する発光管アレイ型光源装置を備え、
前記発光管アレイ型光源装置は、
希ガスのプラズマを利用した発光により紫外線を発生するように構成され、
UVAを発生する第1の発光管と、
UVCを発生する第2の発光管と、
VUVを発生する第3の発光管とを含み、
前記UVAが前記VUVよりも前記流路の上流に照射されるように前記第1の発光管、前記第2の発光管および前記第3の発光管が配置される、水処理装置。
【請求項8】
前記発光管アレイ型光源装置は、前記UVA、前記UVCおよび前記VUVが前記流路の上流から下流へ順に照射されるように前記第1の発光管、前記第2の発光管および前記第3の発光管が配置される、請求項7記載の水処理装置。
【請求項9】
流路内を流れる水に処理を行う水処理方法であって、
第1の発光管を用いて希ガスのプラズマを利用した発光により300nmよりも長く400nm以下の第1の波長帯域内に第1の発光ピークを有する紫外線を前記流路内を流れる水に照射するステップと、
第2の発光管を用いて希ガスのプラズマを利用した発光により200nmよりも長く300nm以下の第2の波長帯域内に第2の発光ピークを有する紫外線を前記流路内を流れる水に照射するステップと、
第3の発光管を用いて希ガスのプラズマを利用した発光により100nmよりも長く200nm以下の第3の波長帯域内に第3の発光ピークを有する紫外線を前記流路内を流れる水に照射するステップとを含む、水処理方法。
【請求項10】
前記第1の発光ピークを有する紫外線を前記流路内を流れる水に照射するステップは、希ガスのプラズマを利用した蛍光体発光により紫外線を発生することを含み、
前記第2の発光ピークを有する紫外線を前記流路内を流れる水に照射するステップは、希ガスのプラズマを利用した蛍光体発光により紫外線を発生することを含み、
前記第3の発光ピークを有する紫外線を前記流路内を流れる水に照射するステップは、希ガスのプラズマ発光により紫外線を発生することを含む、請求項9記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国内外における豊富な水源を有しない陸上養殖では、輸送コストの削減等のために、水の循環率を向上させることが望ましい。また、食品工場では、残渣由来の有機性水質汚染物質および殺菌用の次亜塩素酸ナトリウムの排出基準を満たすために、洗浄水の再利用を進める必要がある。そのため、陸上養殖場および食品工場では、水の循環および再利用の要求が高くなっている。水の循環および再利用の際の殺菌等のために紫外線を用いた水処理装置が用いられる。紫外線を発生するためには、低圧水銀ランプが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、条約等により水銀の使用が制限されている。そこで、水銀を用いずに水銀ランプを用いた水処理装置と同等以上の水の浄化性能を有する水処理装置および水処理方法の開発が要求されている。
【0005】
本発明の目的は、水銀を用いることなく水の浄化性能の改善が可能な水処理装置および水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一局面に従う水処理装置は、流路内を流れる水に処理を行う水処理装置であって、流路内の水に紫外線を照射する発光管アレイ型光源装置を備え、発光管アレイ型光源装置は、希ガスのプラズマを利用した発光により紫外線を発生するように構成され、300nmよりも長く400nm以下の第1の波長帯域内に第1のピーク波長を有する紫外線を発生する第1の発光管と、200nmよりも長く300nm以下の第2の波長帯域内に第2のピーク波長を有する紫外線を発生する第2の発光管と、100nmよりも長く200nm以下の第3の波長帯域内に第3のピーク波長を有する紫外線を発生する第3の発光管とを含む。
【0007】
その水処理装置においては、第1のピーク波長、第2のピーク波長および第3のピーク波長を有する紫外線が流路内の水に照射される。この場合、第1の発光管、第2の発光管および第3の発光管は、希ガスのプラズマを利用した発光により紫外線を発生する。それにより、第1の波長帯域、第2の波長領域および第3の波長領域における紫外線は、それぞれブロードな発光特性を有する。第1のピーク波長を有する紫外線は、比較的長波長を有する。それにより、第1の波長帯域の紫外線により、紫外線波長に吸収を持つ抗生物質等の有機化合物を効率的に低分子化すること、色素成分を分解すること、藻類の増殖を抑制すること、および光回復現象による細菌の再増殖を抑制することが可能になる。また、第2のピーク波長を有する紫外線および第3のピーク波長を有する紫外線は短波長を有するので、促進酸化の作用を有する。それにより、第2の波長帯域の紫外線により、有機化合物の副生成物質を低分子化および無機化すること、並びにDNAおよびRNAの損傷による細菌類を不活化することが可能となる。さらに、第3の波長帯域の紫外線により、有機化合物の副生成物質をさらに低分子化および無機化することが可能となる。これらの結果、水銀を用いることなく水の浄化性能の改善が可能となる。
【0008】
(2)水処理装置は、第3の発光管と空気との反応により発生したオゾンを流路の上流位置に供給する供給装置をさらに備えてもよい。
【0009】
この場合、第3の発光管から発生される紫外線は短い波長帯域を有するので、空気と反応することによりオゾンが発生する。上記の構成によれば、オゾンが流路の上流位置に供給されることにより、オゾンが水に混合される。その結果、オゾンに紫外線が照射されることにより、水内に活性酸素が生じる。この活性酸素により非選択的な分解が行われる促進酸化の作用が生じる。したがって、有機化合物の分解効率が向上する。また、オゾン発生器を別途設ける必要がないので、省スペースかつ安価な水処理装置を製造することが可能になる。
【0010】
(3)水処理装置は、紫外線を透過する材料により流路を構成する水処理管をさらに備え、発光管アレイ型光源装置は、複数の第1の発光管、複数の第2の発光管および複数の第3の発光管がフレキシブル基板上に配置されるように構成され、フレキシブル基板は、水処理管の外周面上に巻きつけられてもよい。
【0011】
この場合、フレキシブル基板を水処理管の外周面に巻き付けることにより、水処理管内の水に複数の第1の発光管、複数の第2の発光管および複数の第3の発光管により発生された紫外線が照射される。また、第1、第2および第3の発光管の発光原理は同じであり、発光管に封入するガスまたは蛍光体の種類を変更することにより異なる波長帯域の紫外線を照射することができる。したがって、容易かつ安価に製造できかつ簡単な構成を有する水処理装置により水の浄化性能を改善することが可能である。
【0012】
(4)複数の第1の発光管、複数の第2の発光管および複数の第3の発光管は、水処理管の上流から下流へ順に配置されてもよい。
【0013】
この場合、水処理管内を流れる水に対して、まず、上流位置で紫外線波長に吸収を持つ抗生物質等の有機化合物の低分子化、色素成分の分解、藻類の増殖の抑制、および光回復現象の抑制が行われる。次に、中流位置で第2の波長帯域の紫外線による有機化合物の副生成物質の低分子化および無機化、並びにDNAおよびRNAの損傷による細菌類の不活化が行われる。その後、下流位置で第3の波長帯域の紫外線による有機化合物の副生成物質のさらなる低分子化および無機化が行われる。それにより、流路内を流れる水の透明度を改善した後に、有機化合物の低分子化(分解)を進めることができるので、水の浄化作用が効率的に行われる。
【0014】
(5)第1の発光管は、300nmから400nmまでの波長帯域にわたって0よりも高い発光強度を有し、第2の発光管は、220nmから300nmまでの波長帯域にわたって0よりも高い発光強度を有し、第3の発光管は、160nmから190nmまでの波長帯域にわたって0よりも高い発光強度を有してもよい。
【0015】
この場合、流路を流れる水に160nm~400nmの広い範囲の紫外線が照射されるので、分解効率が向上する。
【0016】
(6)第1の発光管は、希ガスのプラズマを利用した蛍光体発光により紫外線を発生するように構成され、第2の発光管は、希ガスのプラズマを利用した蛍光体発光により紫外線を発生するように構成され、第3の発光管は、希ガスのプラズマ発光により紫外線を発生するように構成されてもよい。
【0017】
この場合、第1の波長帯域内の第1のピーク、第2の波長帯域内の第2のピークおよび第3の波長帯域内の第3のピークをそれぞれ有する紫外線を容易に発生することができる。
【0018】
(7)本発明の他の局面に従う水処理装置は、流路内を流れる水に処理を行う水処理装置であって、流路内の水に紫外線を照射する発光管アレイ型光源装置を備え、発光管アレイ型光源装置は、希ガスのプラズマを利用した発光により紫外線を発生するように構成され、UVAを発生する第1の発光管と、UVCを発生する第2の発光管と、VUVを発生する第3の発光管とを含み、UVAがVUVよりも流路の上流に照射されるように第1の発光管、第2の発光管および第3の発光管が配置されてもよい。
【0019】
その水処理装置においては、UVAが照射された後にVUVが照射されることにより、少なくとも特定の抗生物質の分解率が向上する。
【0020】
(8)発光管アレイ型光源装置は、UVA、UVCおよびVUVが流路の上流から下流へ順に照射されるように第1の発光管、第2の発光管および第3の発光管が配置されてもよい。
【0021】
上流位置でUVAに吸収を持つ抗生物質等の有機化合物の低分子化、色素成分の分解、藻類の増殖の抑制、および光回復現象の抑制が行われる。次に、中流位置でUVCによる有機化合物の副生成物質の低分子化および無機化、並びにDNAおよびRNAの損傷による細菌類の不活化が行われる。その後、下流位置でVUVによる有機化合物の副生成物質のさらなる低分子化および無機化が行われる。それにより、流路内を流れる水の透明度を改善した後に、有機化合物の低分子化(分解)を進めることができるので、水の浄化作用が効率的に行われる。
【0022】
(9)本発明のさらに他の局面に従う水処理方法においては、流路内を流れる水に処理を行う水処理方法であって、第1の発光管を用いて希ガスのプラズマを利用した発光により300nmよりも長く400nm以下の第1の波長帯域内に第1の発光ピークを有する紫外線を流路内を流れる水に照射するステップと、第2の発光管を用いて希ガスのプラズマを利用した発光により200nmよりも長く300nm以下の第2の波長帯域内に第2の発光ピークを有する紫外線を流路内を流れる水に照射するステップと、第3の発光管を用いて希ガスのプラズマを利用した発光により100nmよりも長く200nm以下の第3の波長帯域内に第3の発光ピークを有する紫外線を流路内を流れる水に照射するステップとを含んでもよい。
【0023】
その水処理方法においては、第1の波長帯域の紫外線により、紫外線波長に吸収を持つ抗生物質等の有機化合物を効率的に低分子化すること、色素成分を分解すること、藻類の増殖を抑制すること、および光回復現象による菌の再増殖を抑制することが可能になる。また、第2の波長帯域の紫外線により、有機化合物の副生成物質を低分子化および無機化すること、並びにDNAおよびRNAの損傷による細菌類を不活化することが可能となる。さらに、第3の波長帯域の紫外線により、有機化合物の副生成物質をさらに低分子化および無機化することが可能となる。これらの結果、水銀を用いることなく水の浄化性能の改善が可能となる。
【0024】
(10)第1の発光ピークを有する紫外線を流路内を流れる水に照射するステップは、希ガスのプラズマを利用した蛍光体発光により紫外線を発生することを含み、第2の発光ピークを有する紫外線を流路内を流れる水に照射するステップは、希ガスのプラズマを利用した蛍光体発光により紫外線を発生することを含み、第3の発光ピークを有する紫外線を流路内を流れる水に照射するステップは、希ガスのプラズマ発光により紫外線を発生することを含んでもよい。
【0025】
この場合、第1の波長帯域内の第1のピーク、第2の波長帯域内の第2のピークおよび第3の波長帯域内の第3のピークをそれぞれ有する紫外線を容易に発生することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、水銀を用いることなく水の浄化性能の改善が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施の形態に係る水処理装置の模式的斜視図である。
【
図5】
図1の発光管アレイ型光源装置の分光放射特性を示す図である。
【
図6】実施例1および比較例における10種類の抗生物質の分解率の測定結果を示す図である。
【
図7】実施例1および比較例における10種類の抗生物質の分解率の測定結果を示す図である。
【
図8】光源により発生される紫外線のスペクトルを示す図である。
【
図9】光源により発生される紫外線のスペクトルを示す図である。
【
図10】光源により発生される紫外線のスペクトルを示す図である。
【
図11】光源により発生される紫外線のスペクトルを示す図である。
【
図12】4種類の光源を用いた場合の実施例2における10種類の抗生物質の分解率の測定結果を示す図である。
【
図13】4種類の光源を用いた場合の実施例2における10種類の抗生物質の分解率の測定結果を示す図である。
【
図14】4種類の光源を用いた場合の実施例2における10種類の抗生物質の分解率の測定結果を示す図である。
【
図15】4種類の光源を用いた場合の実施例2における10種類の抗生物質の分解率の測定結果を示す図である。
【
図16】光源により発生される紫外線のスペクトルを示す図である。
【
図17】実施例3における4種類のテトラサイクリン類の分解率の測定結果を示す図である。
【
図18】実施例4における4種類のテトラサイクリン類の分解率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態に係る水処理装置および水処理方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(1)水処理装置の構成
図1は、一実施の形態に係る水処理装置の模式的斜視図である。
図2は、
図1の第1の光源の模式的展開図である。
図3は、
図1の第1の光源のA-A線断面図である。
図4は、
図3の第1の光源のB-B線断面図である。
【0030】
図1に示すように、水処理装置100は、発光管アレイ型光源装置1、水処理管2、空冷兼遮蔽管3およびオゾン注入装置4を備える。発光管アレイ型光源装置1は、シート状の第1の光源10A、シート状の第2の光源10Bおよびシート状の第3の光源10Cを含む。第1の光源10A、第2の光源10Bおよび第3の光源10Cは、水処理管2の上流位置UPから下流位置DPに向かってこの順に配置され、水処理管2の外周面に巻き付けられる。水処理管2は、例えば、紫外線を透過可能な合成樹脂により円筒形状に形成される。水処理管2の上流位置UP側には、散気孔2aが設けられる。本実施の形態において、水処理管2の内部の流路には、上流位置UPから下流位置DPに向かう方向に被処理水DWが流れる。被処理水DWは、高分子の抗生物質、有機性の水質汚濁物質、藻類、および細菌類等を含む。
【0031】
空冷兼遮蔽管3は、第1~第3の光源10A~10Cの発光により発生する熱を空冷し、第1~第3の光源10A~10Cにより発生される紫外線の漏洩を防止するとともに、第3の光源10Cにより発生される紫外線により生成されるオゾンを効率的に回収するために設けられる。本実施の形態では、空冷兼遮蔽管3は、第1~第3の光源10A~10Cの外周面を被覆するように設けられるが、空冷兼遮蔽管3がオゾンを発生する第3の光源10Cの外周面のみを被覆するように設けられてもよい。水処理管2と空冷兼遮蔽管3との間の空間のうち少なくとも第3の光源10Cの下流側は封止される。
【0032】
オゾン注入装置4は、回収管4aおよびポンプ4bを含む。回収管4aの一端は、空冷兼遮蔽管3の下流側の端面に接続され、回収管4aの他端は、水処理管2の散気孔2aに接続される。回収管4aには、ポンプ4bが介挿される。ポンプ4bは、フレキシブル基板11と水処理管2との間の気体を回収管4aを通して水処理管2の散気孔2aに導く。
【0033】
第1の光源10A、第2の光源10Bおよび第3の光源10Cには、それぞれ交流電源14A,14B,14Cにより交流電圧が印加される。それにより、第1の光源10A、第2の光源10Bおよび第3の光源10Cは、それぞれ異なる波長帯域を有する紫外線を発生する。
【0034】
図2に示すように、第1の光源10は、フレキシブル基板11、複数の発光管12および一対の電極13a,13bを含む。フレキシブル基板11は、可撓性を有する樹脂により形成される。一対の電極13a,13bは、フレキシブル基板11の一面に形成される。一対の電極13a,13bがフレキシブル基板11のスリット状の面に形成されてもよい。
【0035】
複数の発光管12の各々は、楕円形状、長円形状または円形状の断面を有するガラス管により構成される。各発光管12の内部には、放電ガスが封入される。放電ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、もしくはキセノン等の希ガスである。放電ガスが2種類の希ガスの混合ガスであってもよい。本実施の形態では、キセノンが用いられる。発光管12の内面には、蛍光体層(図示せず。)が形成されてもよい。放電ガスまたは蛍光体層に含まれる蛍光体の種類により発光管12から発生される紫外線の波長が異なる。フレキシブル基板11に形成された一対の電極13a,13b上に複数の発光管12が複数列に並ぶように配置される。各発光管12は、例えば2mm程度の直径を有する。複数の発光管12を小さい間隔でかつ任意の長さでフレキシブル基板11上に配列することができるので、均一かつ連続的に紫外線を照射することが可能な面光源が実現される。
【0036】
複数の発光管12の各々は、一対の電極13a,13bに接続される。一対の電極13a,13bに
図1の交流電源14Aにより交流電圧が印加されることにより各発光管12内に放電ガスのプラズマが生成される。プラズマにより蛍光体層が励起されることにより蛍光体の種類に応じた波長帯域の紫外線が発生する。
【0037】
図3および
図4に示すように、第1の光源10Aのフレキシブル基板11は、水処理管2の外周面に巻き付けられる。複数の発光管12は、水処理管2の外周面とフレキシブル基板11との間に位置する。本実施の形態では、複数の発光管12が水処理管2の軸方向に平行に延びるように第1の光源10Aが配置される。発光管12から発生された紫外線UVは、水処理管2を透過して流路を流れる被処理水DWに照射される。
【0038】
図1の第2の光源10Bの構成は、各発光管12内の放電ガスまたは蛍光体層に含まれる蛍光体の種類が異なる点を除いて、第1の光源10Aの構成と同様である。本実施の形態では、
図1の第3の光源10Cには、蛍光体層が形成されない。そのため、第3の光源10Cは、ガス放電のプラズマ発光により紫外線を発生する。
図1の第3の光源10Cの構成は、各発光管12内に蛍光体層が形成されない点および各発光管12内の放電ガスに含まれる蛍光体の種類が異なる点を除いて、第1の光源10Aの構成と同様である。なお、第1~第3の光源10A~10Cにおいては、共通の1つのフレキシブル基板11が設けられてもよい。
【0039】
図5は、
図1の発光管アレイ型光源装置1の分光放射特性を示す図である。なお、
図5においては、3つのスペクトルがそれぞれのピーク値(ピーク強度)を1.0として正規化されている。
図5の縦軸は、相対発光強度であり、横軸は波長である。
【0040】
第1の光源10Aは、300nmよりも長く400nm以下の第1の波長帯域内に第1のピーク波長P1を有する紫外線を発生する。第1のピーク波長P1は、例えば320~370nmであり、本実施の形態では350nmである。第1の波長帯域のスペクトルは、ブロードに広がっている。それにより、少なくとも300nmから400nmまでの波長帯域にわたって0よりも高い発光強度を有する。また、第1の波長帯域のスペクトルは、例えば50nm以上の半値幅を有する。
【0041】
第2の光源10Bは、200nmよりも長く300nm以下の第2の波長帯域内に第2のピーク波長P2を有する紫外線を発生する。第2のピーク波長P2は、例えば240~280nmであり、本実施の形態では260nmである。第2の波長帯域のスペクトルも第1の波長帯域のスペクトルと同様に、ブロードに広がっている。それにより、少なくとも220nmから300nmまでの波長帯域にわたって0よりも高い発光強度を有する。また、第2の波長帯域のスペクトルは、例えば50nm以上の半値幅を有する。
【0042】
第3の光源10Cは、100nmよりも長く200nm以下の第2の波長帯域内に第3のピーク波長P3を有する紫外線を発生する。第3のピーク波長P3は、例えば160nm~190nmであり、本実施の形態では172nmである。第3の波長帯域のスペクトルも第1および第2の波長帯域のスペクトルと同様に、ブロードに広がっている。それにより、少なくとも160nmから190nmまでの波長帯域にわたって0よりも高い発光強度を有する。また、第3の波長帯域のスペクトルは、例えば10nm以上の半値幅を有する。
【0043】
例えば、第1の光源10Aとして、UVA(紫外線A波)を発生する光源を用いてもよい。UVAは、例えば、315nm~400nmのピーク波長を有する。第2の光源10Bとして、UVC(紫外線C波)を発生する光源を用いてもよい。UVCは、例えば、200nm~280nmのピーク波長を有する。第3の光源10Cとして、VUV(真空紫外線)を発生する光源を用いてもよい。VUVは、例えば、10~200nmのピーク波長を有する。
【0044】
(2)水処理装置100の動作および効果
次に、
図1~
図4の水処理装置100の動作を説明する。水処理管2内の流路を被処理水DWが流れる状態で、交流電源14A,14B,14Cにより第1の光源10A、第2の光源10Bおよび第3の光源10Cにそれぞれ交流電圧が印加される。それにより、第1の光源10Aから第1のピーク波長P1を有する紫外線が発生され、第2の光源10Bから第2のピーク波長P2を有する紫外線が発生され、第3の光源10Cから第3のピーク波長P3を有する紫外線が発生される。第1のピーク波長P1を有する紫外線、第2のピーク波長P2を有する紫外線および第3のピーク波長P3を有する紫外線は、水処理管2を透過して流路を流れる被処理水DWに順次照射される。
【0045】
この場合、第1の光源10A、第2の光源10Bおよび第3の光源10Cの発光管12は、希ガスのプラズマを利用した発光により紫外線を発生する。それにより、第1の波長帯域における第1のピーク波長P1を有する紫外線のスペクトル、第2の波長領域における第2のピーク波長P2を有する紫外線および第3の波長領域における第3のピーク波長P3を有する紫外線のスペクトルは、それぞれブロードな発光特性を有する。
【0046】
第1のピーク波長P1を有する紫外線は、比較的長波長を有する。それにより、第1の波長帯域の紫外線により、紫外線波長に吸収を持つ抗生物質等の有機化合物を低分子化すること、色素成分を分解すること、藻類の増殖を抑制すること、および光回復現象による細菌の再増殖を抑制することが可能になる。また、第2のピーク波長P2を有する紫外線および第3のピーク波長P3を有する紫外線は短波長を有するので、被処理水DWに対して促進酸化の作用を有する。それにより、第2の波長帯域の紫外線により、有機化合物の副生成物質を低分子化および無機化すること、並びにDNAおよびRNAの損傷による細菌類を不活化することが可能となる。さらに、第3の波長帯域の紫外線により、有機化合物の副生成物質をさらに低分子化および無機化することが可能となる。これらの結果、水銀を用いることなく水の浄化性能の改善が可能となる。
【0047】
後述するように、本実施の形態に係る水処理装置100によれば、テトラサイクリン類の抗生物質の分解率が高い。したがって、本実施の形態に係る水処理装置100によれば、低圧水銀ランプを用いた水処理装置と同等以上の抗生物質の分解率が得られる。それにより、水銀を用いることなく、殺菌効率および抗生物質等の分解効率を改善することが可能となる。
【0048】
これらの結果、水の浄化性能の改善が可能となるので、例えば陸上養殖場および食品工場での被処理水の循環および再利用が促進される。
【0049】
また、第3の光源10Cの発光管12から発生される短波長の紫外線により冷却用空気からオゾンが生成される。第3の光源10Cにおいて生成されたオゾンは、空冷兼遮蔽管3およびオゾン注入装置4により水処理管2の上流位置UPの散気孔2aから水処理管2の流路内に供給され、被処理水DWに混合される。それにより、紫外線およびオゾンの併用で発生する活性酸素により被処理水DWの非選択的な分解が行われる。その結果、被処理水DWの分解効率がさらに向上する。
【0050】
(3)実施例1
実施例1では、
図2~
図4に示された第1の光源10Aと同様の構造を有する光源10-3を用いて10種類の抗生物質の分解率を測定した。なお、光源10-3は、後述する
図10に示されるように、ピーク波長(中心波長260nm)を有する紫外線を発生する。以下の表1に示す10種類の抗生物質をそれぞれ1mg/L含有する混合水溶液をそれぞれ別個の石英セルに充填し、光源10-3により石英セル内の混合溶液に紫外線を照射するバッチ試験を行った。
【0051】
比較例では、光源LMIを用いて10種類の抗生物質の分解率を測定した。光源LMIは、有効波長254nmの紫外線を発生する低圧水銀ランプである。実施例1と同様に、表1に示す10種類の抗生物質をそれぞれ1mg/L含有する混合水溶液をそれぞれ別個の石英セルに充填し、光源LMIにより石英セル内の混合溶液に紫外線を照射するバッチ試験を行った。
【0052】
実施例1で用いた光源10-3と比較例で用いた光源LMIとは、異なる出力を有するため、波長254nmの積算照度が200mJ/cm2になるように各セルに紫外線を照射した。
【0053】
各抗生物質の分解率の測定には、液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC/MS/MS)を用いた。LC/MS/MSは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)と三連四重極型質量分析計(MS/MS)とが組合わせられた装置であり、1段目の四重極マスフィルタQ1および2段目の四重極マスフィルタQ3を有する。
【0054】
表1に10種類の抗生物質とそれぞれの測定条件とが示される。
【0055】
【0056】
表1に示されるように、10種類の抗生物質として、スルファジメトキシン(SDMX)、アンピシリン(APM)、チアンフェニコール(TP)、フロルフェニコール(FF)、リンコマイシン(LCM)、テトラサイクリン(TC)、ドキシサイクリン(DOXY)、オキシテトラサイクリン(OTC)、クロロテトラサイクリン(CTC)、およびエリスロマイシン(EM)を用いた。かっこ内に各抗生物質の略語を記す。以下、各抗生物質を略語を用いて特定する。表1には、液体クロマトグラフにおける各抗生物質の保持時間、質量分析計におけるイオン化法、1段目の四重極マスフィルタQ1で選択される分子のm/z(質量電荷比)、および2段目の四重極マスフィルタQ3で選択される分子のm/zが示される。イオン化法としては、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)が用いられる。
【0057】
10種類の抗生物質のうちTC、DOXY、OTCおよびCTCは、テトラサイクリン類である。
【0058】
図6および
図7は、実施例1および比較例における10種類の抗生物質の分解率の測定結果を示す図である。
図6に示されるように、APM、TP、FF、LCMおよびEMの分解率は、光源10-3を用いた実施例1と光源LMIを用いた比較例とで、ほぼ同等の値が得られた。
図6の結果から、光源LMI(低圧水銀ランプ)から光源10-3への代替が可能であることがわかる。
【0059】
図7に示されるように、SDMXの分解率については、光源LMIを用いた比較例が光源10-3を用いた実施例1よりも高い値を示したが、テトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)については、光源10-3を用いた実施例1が光源LMIを用いた比較例よりも高い値が得られた。
図7の結果から、光源10-3を用いることにより光源LMI(低圧水銀ランプ)を用いるよりもテトラサイクリン類の分解率が大幅に向上することがわかる。
【0060】
(4)実施例2
実施例2では、
図2~
図4に示された第1の光源10Aと同様の構造を有する4種類の光源を用いて表1に示される10種類の抗生物質の分解率を測定した。4種類の光源は、それぞれ異なるスペクトルを有する紫外線を発生するように構成される。ここで、4種類の光源を10-1,10-2,10-3,10-4と呼ぶ。
【0061】
図8~
図11は、4種類の光源により発生される紫外線のスペクトルを示す図である。
図8に示すように、光源10-1は、350nmおよび260nmのピーク波長を有する紫外線を発生する。光源10-1においては、350nmのピーク波長を有する紫外線を発生する発光管(
図2および3の発光管12参照。)と260nmのピーク波長を有する紫外線を発生する発光管とが交互に配列されている。
【0062】
図9に示すように、光源10-2においては、275nmのピーク波長を有する紫外線を発生する複数の発光管が配列されている。
図10に示すように、光源10-3は、260nmのピーク波長を有する紫外線を発生する複数の発光管が配列されている。
図11に示すように、光源10-4においては、260nmのピーク波長を有する紫外線を発生する発光管と172nmのピーク波長を有する紫外線を発生する発光管とが交互に配列されている。
【0063】
図12および
図13は、4種類の光源を用いた場合の実施例2における10種類の抗生物質の分解率の測定結果を示す図である。
図12および
図13の例では、各抗生物質への紫外線の照射時間は、全て130秒で固定した。
【0064】
図12に示されるように、EM以外の4種類の抗生物質(AM、SDMX、TPおよびFF)の分解率は、短波長の紫外線を照射した場合に高くなる傾向にある。
【0065】
図13に示されるように、LCMを除いて、テトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)の分解率は、短波長の紫外線を照射した場合に高くなるとともに、長波長の紫外線を照射した場合も比較的高くなる。
【0066】
図14および
図15は、4種類の光源を用いた場合の実施例2における10種類の抗生物質の分解率の測定結果を示す図である。
図14および
図15の例では、254nmを基準として各抗生物質への紫外線の積算照度を固定した。
【0067】
表2に、4種類の光源10-1~10-4および光源LMI(低圧水銀ランプ)の積算照度の条件を示す。
【0068】
【0069】
表2には、参考として低圧水銀ランプの積算照度の条件が示される。
【0070】
図14に示されるように、5種類の抗生物質(EM、AM、SDMX、TPおよびFF)の分解率の波長別の差は比較的小さい。
図15に示されるように、LCMを除いて、テトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)の分解率は、短波長の紫外線を照射した場合および長波長の紫外線を照射した場合に比較的高い。
【0071】
これらの結果から、テトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)の分解率は、短波長だけでなく長波長の紫外線を用いた場合にも高くなることがわかる。
【0072】
(5)実施例3および実施例4
実施例3および実施例4では、
図2~
図4に示された第1の光源10Aと同様の構造を有する2種類の光源を用いてテトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)の分解率を測定した。2種類の光源のうち一方の光源としては、実施例2における光源10-4を用いた。光源10-4は、
図11に示すように、172nmのピーク波長および260nmのピーク波長を有する紫外線を発生する。2種類の光源のうち他方の光源としては、光源10-5を用いた。
図16は、光源10-5により発生される紫外線のスペクトルを示す図である。光源10-5は、
図16に示すように、350nmのピーク波長を有する紫外線を発生する。光源10-4,10-5による紫外線の照射時間は、いずれも110秒である。
【0073】
実施例3では、光源10-5および光源10-4をこの順に用いて4種類の抗生物質の分解率を測定した。実施例4では、光源10-4および光源10-5をこの順に用いて4種類の抗生物質の分解率を測定した。
【0074】
図17は、実施例3における4種類のテトラサイクリン類の分解率の測定結果を示す図である。
図18は、実施例4における4種類のテトラサイクリン類の分解率の測定結果を示す図である。
【0075】
実施例3によると、
図17に示すように、光源10-5による紫外線の照射後のテトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)分解率は、それぞれ9.4%、0.2%、22.4%、および28.0%となった。その後、光源10-4による紫外線の照射後のテトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)の分解率は、それぞれ93.1%、95.3%、93.6%、および96.2%となった。実施例3における最終的な分解率の平均値は、94.5%であった。
【0076】
一方、実施例4によると、
図17に示すように、光源10-4による紫外線の照射後のテトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)分解率は、それぞれ87.4%、87.1%、86.1%、および87.6%となった。その後、光源10-5による紫外線の照射後のテトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)の分解率は、それぞれ91.5%、87.1%、91.4%、および87.8%となった。実施例4における最終的な分解率の平均値は、89.8%であった。
【0077】
このように、4種類のテトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)のすべてについて、実施例3における最終的な分解率は、実施例4における最終的な分解率よりも向上した。実施例3の最終的な分解率の平均値は、実施例4の最終的な分解率の平均値に比べて4.7%向上した。
【0078】
これらの結果から、テトラサイクリン類(TC、DOXY、OTCおよびCTC)は、長波長の紫外線を照射した後に短波長の紫外線を照射することにより、効率的に分解されることがわかる。
【0079】
(6)他の実施の形態
上記実施の形態では、第1の光源10A、第2の光源10Bおよび第3の光源10Cが上流から下流へ順に水処理管2の外周面に巻き付けられているが、1つの光源に第1の光源10A、第2の光源10Bおよび第3の光源10Cの複数の発光管12が順に配列されてもよい。この場合、3種類の発光管12がフレキシブル基板11上に配列される。
【0080】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、第1の光源10Aの複数の発光管12が第1の発光管の例であり、第2の光源10Bの複数の発光管が第2の発光管の例であり、第3の光源10Cの複数の発光管が第3の発光管の例であり、空冷兼遮蔽管3およびオゾン注入装置4が供給装置の例である。
【符号の説明】
【0081】
1…発光管アレイ型光源装置,2…水処理管,2a…散気孔,3…空冷兼遮蔽管,4…オゾン注入装置,4a…回収管,4b…ポンプ,10A…第1の光源,10B…第2の光源,10C…第3の光源,10-1,10-2,10-3,10-4,10-5…光源,11…フレキシブル基板,12…発光管,13a,13b…電極,14A,14B,14C…交流電源,100…水処理装置