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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185532
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】樹脂製シート用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/52 20060101AFI20221207BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B65D25/52 C
B65D83/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093291
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】506348466
【氏名又は名称】株式会社アール
(74)【代理人】
【識別番号】100177806
【弁理士】
【氏名又は名称】門田 康
(72)【発明者】
【氏名】桑原 芳樹
【テーマコード(参考)】
3E014
3E062
【Fターム(参考)】
3E014MC08
3E062AA01
3E062AB13
3E062AC05
3E062BB02
3E062BB10
3E062LA01
(57)【要約】
【課題】ロール状に巻かれた樹脂製のシートを容器から引き出して、所望の長さで容易に切り取ることができる樹脂製シート用容器を提供する。
【解決手段】樹脂製シート用容器10は、開口部Sを有し、ロール状に巻かれた樹脂製のシート60を収容するシート収容部11と、開口部Sの一側縁に折り曲げ自在に連設されて開口部Sを開閉する蓋部12と、開口部Sの他側縁に固定され、シート収容部11から引き出されたシート60を所望の長さで切り取る切取手段13と、を備えた容器であって、蓋部12は、シート収容部11から引き出されたシート60を切取手段13に向けて保持する保持部31、32を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、ロール状に巻かれた樹脂製のシートを収容するシート収容部と、
前記開口部の一側縁に折り曲げ自在に連設されて前記開口部を開閉する蓋部と、
前記開口部の他側縁に固定され、前記シート収容部から引き出された前記シートを所望の長さで切り取る切取手段と、を備えた容器であって、
前記蓋部は、前記シート収容部から引き出された前記シートを前記切取手段に向けて保持する保持部を備えたことを特徴とする樹脂製シート用容器。
【請求項2】
前記蓋部は、前記一側縁につながる第1蓋面と、前記第1蓋面の前記一側縁と反対側に折返し部を介して折り曲げ自在に連設される第2蓋面と、前記折返し部に沿って延在し板厚の方向に貫通して前記シートが引き出されるシート引出部と、を有し、
前記保持部は、前記第1蓋面と、前記折返し部で折り返された前記第2蓋面とが向き合って形成されることを特徴とする請求項1に記載する樹脂製シート用容器。
【請求項3】
前記蓋部が前記開口部を閉じるときに、前記第2蓋面の少なくとも一部と当接して、前記蓋部の位置を定める位置決め手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載する樹脂製シート用容器。
【請求項4】
前記第1蓋面は、前記シート収容部と係合して前記蓋部の浮き上がりを抑制する浮上り抑止部を備えていることを特徴とする請求項3に記載する樹脂製シート用容器。
【請求項5】
前記切取手段は、レール部と、刃を有し前記レール部に沿ってスライドするスライダー部と、を備えており、
前記シートは、前記保持部によって、前記刃と直交する向きで保持されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載する樹脂製シート用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻かれた樹脂製のシートを収容するとともに、シートを引き出して所望の長さで切り取ることができる樹脂製シート用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状に巻かれた樹脂製のシートとして、例えば、まな板シートが日常生活で使用されている。まな板シートは、調理時にまな板の上に拡げて使用されて、食材のにおいや色がまな板に移るのを防止し、包丁等を使って調理するときにまな板に傷をつけるのを防止できる。
まな板シートは、衛生面より調理の都度新しいシートに交換する、いわゆる使い捨てシートである。特許文献1に記載されるように、シートはロール状に巻かれて容器に収容され、使用の都度容器から引き出して、必要な長さだけ切り取って使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3157273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
まな板シートは、厚さが、概ね0.1mmから0.2mm程度の樹脂製のシートであり、ラップフィルムなどの樹脂製シートに比べて厚いので、ラップフィルムケース等に設けられる鋸歯状の金属製の切取装置では容易に切断できない。このため、あらかじめ、金属製の刃を有しレールに沿ってスライドするスライダー部を備えて、このスライダー部をスライドさせて、まな板シートを切り取る方法が検討されている。
【0005】
しかしながら、スライダー部を使ってまな板シートを切り取るときには、通常、一方の手で容器をつかんだ状態で他方の手でまな板シートを引き出し、その後、他方の手をスライダー部に移してレールに沿ってスライドさせなければならない。
このように、スライダー部を操作するときは、他方の手をまな板シートから離さざるをえず、まな板シートの張りを維持することが難しい。このため、スライダー部を動かしても刃に押されてまな板シートが撓んでしまい、刃がまな板シートに切り込まないため、まな板シートの切り取りに手間がかかる場合があった。
【0006】
そこで本発明は、ロール状に巻かれた樹脂製のシートを容器から引き出して所望の長さで切り取るときに、一方の手で容器をつかんだ状態で、他方の手で切取手段を操作することにより容易にシートを切り取ることができる樹脂製シート用容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、開口部を有し、ロール状に巻かれた樹脂製のシートを収容するシート収容部と、前記開口部の一側縁に折り曲げ自在に連設されて前記開口部を開閉する蓋部と、前記開口部の他側縁に固定され、前記シート収容部から引き出された前記シートを所望の長さで切り取る切取手段と、を備えた容器であって、前記蓋部は、前記シート収容部から引き出された前記シートを前記切取手段に向けて保持する保持部を備えたことを特徴とする樹脂製シート用容器である。
【0008】
樹脂製シート用容器の第2の形態は、第1の形態の樹脂製シート用容器において、前記蓋部は、前記一側縁につながる第1蓋面と、前記第1蓋面の前記一側縁と反対側に折返し部を介して折り曲げ自在に連設される第2蓋面と、前記折返し部に沿って延在し板厚の方向に貫通して前記シートが引き出されるシート引出部と、を有し、前記保持部は、前記第1蓋面と、前記折返し部で折り返された前記第2蓋面とが向き合って形成されることを特徴としている。
【0009】
樹脂製シート用容器の第3の形態は、第2の形態の樹脂製シート用容器であって、前記蓋部が前記開口部を閉じるときに、前記第2蓋面の少なくとも一部と当接して、前記蓋部の位置を定める位置決め手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
樹脂製シート用容器の第4の形態は、第3の形態の樹脂製シート用容器において、前記第1蓋面は、前記シート収容部と係合して前記蓋部の浮き上がりを抑制する浮上り抑止部を備えていることを特徴としている。
【0011】
樹脂製シート用容器の第5の形態は、第1から第4のいずれかの形態の樹脂製シート用容器において、前記切取手段は、レール部と、刃を有し前記レール部に沿ってスライドするスライダー部と、を備えており、前記シートは、前記保持部によって、前記刃と直交する向きで保持されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ロール状に巻かれた樹脂製のシートを容器から引き出して、所望の長さで切り取るときに、一方の手で容器をつかむことによって切取手段の近傍でシートをしっかりと保持することができるので、他方の手で容易にシートを切り取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の樹脂製シート用容器の使用状態を示す斜視図である。
図2】打ち抜き加工された板紙素材の形態を示す展開図である。
図3】蓋部が開いた状態を示す斜視図である。
図4】蓋部が図3より更に大きく開いた状態を示す斜視図である。
図5図4のB-Bの位置で矢印の向きに見た断面図である。
図6図1のA-Aの位置で矢印の向きに見た断面図である。
図7】切取手段を拡大した要部拡大図である。
図8】まな板シートの保持が適正でない場合の不具合を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる樹脂製シート用容器の一実施形態(以下、本実施形態という)について、図を用いて詳細に説明する。本実施形態の樹脂製シート用容器10は、ロール状に巻かれた樹脂製のまな板シート60を収容する容器であって、まな板シート60を使用するときには引き出して所望の長さで切り取ることができる。
【0015】
図1は、本実施形態の樹脂製シート用容器10(以下、単に「容器」という)の形態を示すとともに、まな板シート60が容器10から引き出された状態を示す斜視図である。容器10は、ロール状のまな板シート60を収容するシート収容部11と、蓋部12と、引き出したまな板シート60を所望の長さで切り取る切取手段13と、を備えている。
蓋部12を閉じた状態では、容器10の形状は略直方体の形状である。
以下の説明では、蓋部12と直交する方向を上下方向、左側壁部19及び右側壁部20と直交する方向を左右方向、前壁面部16及び後壁面部17と直交する方向を前後方向という。
【0016】
図2は、容器10を組み立てるための板紙素材の形態を示す展開図である。板紙素材は、段ボールなどの板紙を打ち抜いて作製される。シート収容部11と蓋部12は、一つの板紙素材で一体物として形成されており、容器10は、打ち抜いた紙板素材を適宜折り曲げて製作される。図2における極細の実線は、折り目を示している。図2では、図1等と対応する部分に、同一の符号を付している。
【0017】
まな板シート60は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン酢酸ビニル(PEVA)等の材質で作られた樹脂製のシートで、厚さは概ね0.1mmから0.2mmである。まな板シート60は円柱状の芯材にロール状に巻き付けられており、全体として円柱形状になっている。まな板シート60は、種々の大きさのものが市販されている。一般的な大きさとしては、幅が25~30cm程度、全長が3~5m程度、使用初期のロール状まな板シート60の外径は5~7cm程度であるが、これらに限定されるものではなく、本発明に係る樹脂製シート用容器10は、その他の寸法の樹脂製シートを収容するように種々の大きさで製作することができる。
【0018】
図3図4図5によって、シート収容部11の形態について説明する。図3は、蓋部12を開いたときの容器10の形態を示す斜視図であり、図4図3の状態から更に大きく蓋部12を開いたときの形態を示す斜視図である。図5は、図4の容器10について、B-Bの位置(前後方向でガイド部25と切取手段13との間の位置である)における前壁面部16と平行な断面を矢印Bの向きに見た断面図である。
【0019】
シート収容部11は、前壁面部16、後壁面部17、底部18、左側壁部19、右側壁部20、を備えており、内側の空間Kに、ロール状のまな板シート60(図示を省略する)が収容される。前壁面部16は、後壁面部17と平行で空間Kを挟んで互いに対向しており、左側壁部19は、右側壁部20と平行で空間Kを挟んで互いに対向している。底部18と対向する上方が開口しており、まな板シート60を挿入するための開口部Sが設けられている。
【0020】
図5に示すように、左側壁部19及び右側壁部20の内側にそれぞれガイド部25が形成されている。左右のガイド部25、25は、それぞれ上面部26と脚部27と座部28とを備えている。上面部26は、左側壁部19又は右側壁部20の上方の端部とつながって空間Kに向けて底部18と平行に延在している。脚部27は、上面部26の内側(空間Kの側)の端部とつながって底部18と当接する位置まで下方に延在している。座部28は、脚部27の下端とつながって左側壁部19又は右側壁部20と当接する位置まで底部18に沿って空間Kと反対の側に延在している。
【0021】
こうして、左右のガイド部25、25は、それぞれ、矢印Bの向きに見たときに略長方形の形状となっており、底部18から上面部26までの上下方向の寸法が互いに等しい。蓋部12は、開口部Sを閉じたときには、左右のガイド部25、25の各上面部26と当接して底部18と平行に配置される。図5では、開口部Sを閉じたときの蓋部12の位置を二点鎖線で示している。
【0022】
容器10は、前壁面部16と後壁面部17との内幅、及び、閉じた状態の蓋部12と底部18との内幅が、ロール状のまな板シート60の外径より大きく、左右のガイド部25、25の内幅が、ロール状のまな板シート60の全長よりわずかに大きい。これにより、円柱状に巻かれたまな板シート60は、シート収容部11の内側で中心軸の周りで自在に回転できる。
【0023】
図1図3図4を参照して、蓋部12について説明する。
図3図4に示すように、蓋部12は、第1蓋面31と第2蓋面32を備えていて、第2蓋面32は第1蓋面31に対して折り曲げ自在に連設されている。容器10の使用時には、図1に示すように、第1蓋面31に対して第2蓋面32が折り返されて、第1蓋面31と第2蓋面32とが面で接した状態となっており、第1蓋面31と第2蓋面32とが一体となって、シート収容部11の開口部Sを開閉している。
図1に示すように、まな板シート60は、第1蓋面31と第2蓋面32とで挟まれた領域を通って引き出される。
【0024】
図4を参照して、第1蓋面31と第2蓋面32の形態を説明する。第1蓋面31と第2蓋面32はそれぞれ略矩形形状である。第1蓋面31は、後壁面部17の背面上端部23に折り曲げ自在に連設されている。第2蓋面32は、第1蓋面31の背面上端部23と反対側の端部(以下、「折返し部33」)に、折り曲げ自在に連設されている。折返し部33は、第2蓋面32を折り返すときの折り目に相当する部分であり、背面上端部23と平行に設けられている。
【0025】
蓋部12には、折返し部33に沿って延在し、板厚の方向に貫通する長孔34が形成されている。長孔34の左右方向の両外側では、折返し部33が残存して第1蓋面31と第2蓋面32とがつながっており、第1蓋面31に対して第2蓋面32を折り返すことができる。折返し部33が延在する方向の長孔34の寸法は、まな板シート60の幅寸法より大きい。また、折返し部33と直交する方向での長孔34の幅寸法は、紙板素材の板厚の2倍程度の大きさが好適であり、本実施形態では2mmとしているが、当該寸法に限定されない。
第1蓋面31に対して第2蓋面32を折り返したときに、第1蓋面31と第2蓋面32との間に稜部36が形成される(図3参照)。折返し部33に長孔34を設けることによって、稜部36には、板厚方向に貫通してまな板シート60を引き出すためのシート引出部が形成される。
【0026】
図6は、図1におけるA-Aの位置(容器10の長手方向中央の位置)で、左右の各側壁部19、20と平行な断面を矢印Aの向きに見た断面図であり、シート収容部11に収容されたまな板シート60が、切取手段13に向けて引き出される経路を示している。図6では、まな板シート60を一点鎖線で示している。
【0027】
容器10の蓋部12は、第2蓋面32が折り返されて、第1蓋面31と第2蓋面32とが面で接触した形態となっている。上述したように、折返し部33には板厚方向に貫通する長孔34が設けられているので、シート収容部11のまな板シート60は、第1蓋面31と第2蓋面32とで挟まれた領域(以下、「保持領域T」)に進入した後、シート引出部である長孔34から引き出すことができる。
こうして、まな板シート60は、蓋部12の背面上端部23(開口部Sの一側縁)と反対側の端部(蓋部12の先端部)から引き出される。後述するように、切取手段13は、まな板シート60が引き出される蓋部12の先端部と近接するように、開口部Sを挟んで、開口部Sの一側縁と前後方向で対向する開口部Sの他側縁に配置される。
【0028】
なお、まな板シート60を第1蓋面31と第2蓋面32とで挟むように配置するときは、図3に示すように蓋部12を少し開いた状態とし、まな板シート60を蓋部12の裏側から長孔34を通して引き出して、その後、第2蓋面32を第1蓋面31と向き合うように折りたたむことによって、簡単に組込むことができる。
【0029】
図5に二点鎖線で示すように、蓋部12が開口部Sを閉じるときには、蓋部12の第2蓋面32がガイド部25の上面部26と当接して、蓋部12が上下方向に位置決めされる。したがって、上面部26の底部18からの上下方向の高さを適宜選定することによって、切取手段13に対する蓋部12の向きを調整することができる。こうして、ガイド部25は、蓋部12の上下方向の位置を定める位置決め手段として機能している。
【0030】
上記で説明したように、蓋部12は、第2蓋部12が折り返された状態で組付けられる。このため、蓋部12が開口部Sを閉じた後、蓋部12に対して何ら力を加えずに放置すると、紙板の弾性によって蓋部12が浮き上がって、まな板シート60が抜け出す等の不都合が生じるおそれがある。
そこで、本実施形態の容器10では、図3図4に示したように、ガイド部25の上面部26には、それぞれ板厚方向に貫通する係止孔29が形成されるとともに、第1蓋面31の左右の端部に略矩形形状の係止部39が設けられている。係止部39は、第1蓋面31に対して直角に折り曲げられており、蓋部12を閉じるときに係止孔29に挿入される(図1参照)。
係止部39には、背面上端部23から離れた側の側面に切欠き40が設けられており、係止部39を係止孔29に挿入したときには、切欠き40が係止孔29と係合して、蓋部12の浮き上がりを防止するようになっている。こうして、係止部39及び係止孔29は、蓋部12の浮き上がりを抑制する抑止部を構成している。
【0031】
なお、図2の展開図に示すように、本実施形態の容器10では、係止部39を設けるために、右側壁部20とつながる脚部27及び座部28の幅寸法w1は、左側壁部19とつながる脚部27及び座部28の幅寸法w2に比べて小さくなっているが、左右対称な形状としてもよい。
また、シート収容部11の底部18は、図2の18(a)から(d)で示す部分が互いに組み合わされて、接着等をすることなく組み立てることができる。かかる構成は、紙製の箱の底部の形態として周知であり、説明を省略する。
【0032】
図6及び図7によって、切取手段13について説明する。図7(a)は、前壁面部16を前後方向に見た正面図で、切取手段13のスライダー部46の部分を拡大した要部拡大図である。図7(b)は、図7(a)の切取手段13を、Y-Yの位置で矢印の向きに見た断面図である。図7では、まな板シート60を一点鎖線で示している。
【0033】
切取手段13は、レール部45と、金属製の刃49を備えてレール部45に沿ってスライドするスライダー部46と、で構成される。
レール部45は樹脂製であり、一様な断面をもって容器10の左右方向に延在している。レール部45は、スライダー部46を案内する案内溝47と、案内溝47の下方に設けられて所定の間隔で互いに向き合う一対のリブ48、48と、を備えている。
スライダー部46は樹脂製で、手で動かすことができて、レール部45に沿って往復してスライドすることができる。刃49は、スライダー部46の進行方向の両側に向けて突出しており、いずれの方向にスライドさせる場合でも、まな板シート60を切り取ることができる。図7(a)では、スライダー部46の右側にまな板シート60が配置された状態を示しており、スライダー部46を右方向にスライドさせるとまな板シート60を切り取ることができる。
切取手段13は、リブ48が前壁面部16の上端部に跨るように嵌め合わされており、開口部Sを挟んで、開口部Sの一側縁と前後方向で対向する開口部Sの他側縁に配置される。レール部45が前壁面部16に組付けられると、刃49は前壁面部16と平行となる向きに組込まれる。
【0034】
本実施形態の容器10は、片手で容器10をつかんだだけで、まな板シート60を切取手段13に向けて保持できる点に特徴がある。
図5図6を参照しつつ、第1蓋面31と第2蓋面32によってまな板シート60を保持する機能について説明する。
【0035】
通常、容器10からまな板シート60を引き出した後、所望の長さで切り取るときには、片方の手で容器10の蓋部12と底部18を挟むように保持して、他方の手でスライダー部46を操作する。具体的には、後壁面部17を片方の手のひらの側に向けて、拇指を蓋部12に当て、その他の指を底部18に当てて容器10を保持する。こうして、容器10を保持しているときには、拇指は、蓋部12の第1蓋面31を押圧している。
【0036】
蓋部12の第2蓋面32は、ガイド部25の上面部26と当接しているので、拇指で蓋部12の第1蓋面31を押圧すると、第1蓋面31と第2蓋面32とが互いに強く圧接される。まな板シート60は、第1蓋面31と第2蓋面32との間に挿入されているので、まな板シート60は、第1蓋面31と第2蓋面32とで挟持されて、しっかりと保持される。このとき、ガイド部25によって、蓋部12の上下方向の位置が、レール部45の案内溝47の上面の位置とほぼ一致するように配置される。
こうして、本実施形態では、片手で容器10をつかむだけで、長孔34から引き出したまな板シート60を、切取手段13に向けて保持することができる。第1蓋面31と第2蓋面32は、まな板シート60を保持する保持部として機能している。
【0037】
図6によって、第1蓋面31と第2蓋面32の大きさについて説明する。
第2蓋面32の前後方向の寸法L2は、好ましくは第1蓋面31の前後方向の寸法L1の1/3より大きく設定される。
まな板シート60は、第1蓋面31と第2蓋面32とで挟まれて保持されるので、面積が小さい第2蓋面32の大きさによって保持する力が決定される。したがって、まな板シート60を確実に保持するためには、第2蓋面32の前後方向の寸法L2を大きくする必要がある。本実施形態では、第2蓋面32の前後方向の寸法L2を、第1蓋面31の前後方向の寸法L1の少なくとも1/3として、まな板シート60を保持している。
【0038】
一方、まな板シート60を第1蓋面31と第2蓋面32との間の保持領域Tに導入するために、第2蓋面32は、後壁面部17との間に前後方向に間隔Vをあけて配置される。
仮に、第1蓋面31の寸法L1と第2蓋面32の寸法L2とがほぼ等しく、第2蓋面32と後壁面部17とが近接していると仮定した場合には、第2蓋面32と後壁面部17との間隔Vが小さくなり、まな板シート60が保持領域Tに進入するときに強く折り曲げられて折り癖がついてしまうおそれがある。
折り癖がつくと、長孔34から引き出されたまな板シート60が所定の位置で保持されず、切取りが困難になるので、本実施形態では第2蓋面32の寸法L2は、第1蓋面31の寸法L1の2/3より小さく設定している。ただし、間隔Vの大きさをこの値に限定するものではなく、まな板シート60の材質や大きさなどによって種々変更してもよい。
【0039】
また、まな板シート60は、第1蓋面31と第2蓋面32とで挟まれて所定の向きに保持されるので、シート収容部11のまな板シート60の残量が少なくなってロール部の外径が小さくなったときでも、長孔34から引き出されるまな板シート60の向きが変化しない。このため、常に、まな板シート60を切取手段13に向けて保持できるので、ロール状のまな板シート60を最後まで所望の長さで切り取って使用することができる。
【0040】
まな板シート60を確実に切り取るためには、好ましくは、図7(b)に示すように、蓋部12の向きを底部18と平行に配置して、まな板シート60を、スライダー部46の刃49と直交する向きで保持するのがよい。更に、長孔34の上下方向の位置が、レール部45の上面の位置と一致するように配置するのがよい。レール部45の上面とは、案内溝47の上端の面50であり、長孔34から引き出されたまな板シート60が載置される面である。
このようにまな板シート60が引き出される位置及び方向を設定することにより、スライダー部46を動かしてまな板シート60を切り始めるときに、刃49がまな板シート60と確実に接触して、容易に切り込むことができる。このため、切り初めにまな板シート60が刃49に押されて撓むのを防止できるので、容易に切り取ることができる。
これらの蓋部12の向きや上下方向の位置の設定は、ガイド部25の高さと後壁面部17の背面上端部23の高さを適宜選定することによって容易に設定できる。
【0041】
図8は、まな板シート60を保持する向きが適正でない場合の例を示す説明図である。
図8(a)は、蓋部12の向きが、底部18に対して傾いた状態を示している。図8(b)は、蓋部12の上下方向の位置が高くなり、レール部45に対して長孔34が上方に位置ずれした状態を示している。図8(a)(b)では、まな板シート60を一点鎖線で示している。
いずれの場合においても、刃49の手前でまな板シート60の進行方向が曲げられるため、刃49が切り込むときにまな板シート60が撓みやすいので、刃49の切り込みが困難になる。まな板シート60を確実に切り取るためには、蓋部12の向きを底部18と平行に配置して、まな板シート60を刃49と直交する向きで保持するのがよい。
【0042】
更に、まな板シート60を確実に切り取るためには、まな板シート60を切取手段13の近傍で保持するのが好ましい。図6によって説明する。
本実施形態では、第1蓋面31の前後方向の寸法L1は、背面上端部23と切取手段13との前後方向の内幅寸法L0よりわずかに小さい寸法となっている。このため、蓋部12の稜部36が、切取手段13に対して互いに接触しない範囲でできる限り近傍に配置される。これにより、まな板シート60を切取手段13の近傍で保持することができて、第1蓋面31と第2蓋面32による保持部と刃49との距離が近くなるので、スライダー部46を動かしてまな板シート60を切り取るときに、まな板シート60の撓みが生じにくくなるからである。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の容器10では、ロール状に巻かれた樹脂製のまな板シート60を引き出して所望の長さで切り取るときに、片方の手で容器10を挟むように保持するだけで、まな板シート60の位置ずれを抑えてしっかり保持することができるので、他方の手でスライダー部46を動かすだけで、容易にまな板シート60を切り取ることができる。
更に、第1蓋面31と第2蓋面32とで構成される保持部を切取手段13の近傍に配置し、まな板シート60をスライダーの刃49の近傍でかつ刃49と直交する向きに引き出すことにより、まな板シート60を更に容易に切り取ることができる。
【0044】
また、図4に示すように、長孔34の長手方向中央には、円形で板厚方向に貫通する孔35が設けられている。孔35を設けることによって、第2蓋面32を折り返したときに第1蓋面31と第2蓋面32とがつながる稜部36に半月状の切欠き部38(図3参照)が形成される。
このため、まな板シート60を切り取った後、続けてもう一枚のまな板シート60を引き出すときには、切欠き部38に覗いているまな板シート60の端部をつまんで、容易に引き出すことができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
例えば、本実施形態では、樹脂製シートがまな板シートである容器について説明したが、まな板シート以外の樹脂製シートを収容する容器としても使用できる。また、本実施形態では、シート収容部11と蓋部12が、段ボールなどの板紙で形成されている場合を例に説明したが、樹脂製の板材で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10:樹脂製シート用容器、11:シート収容部、12:蓋部、13:切取手段、16:前壁面部、17:後壁面部、18:底部、19:左側壁部、20:右側壁部、23:背面上端部、25:ガイド部、26:上面部、27:脚部、28:座部、29:係止孔、31:第1蓋面、32:第2蓋面、33:折返し部、34:長孔、35:孔、36:稜部、38:切欠き部、39:係止部、40:切欠き、45:レール部、46:スライダー部、47:案内溝、48:リブ、49:刃、60:まな板シート
図1
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図8