(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185543
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】脊椎経皮的全内視鏡用組織接着用シート挿入器具(割線タイプ)
(51)【国際特許分類】
A61B 17/92 20060101AFI20221207BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A61B17/92
A61B17/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093311
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】505273648
【氏名又は名称】中村 周
(72)【発明者】
【氏名】中村 周
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL24
4C160MM18
4C160NN04
(57)【要約】
【課題】脊椎経皮的全内視鏡下手術において硬膜損傷時に組織接着用シートを棒で押し込んで挿入すると棒に組織接着シートが粘着してしまい,剥がすのに苦労していた.
【解決手段】当発明の器具は組織接着用シートを挿入する円筒形状のもので,内腔内先端にセットしてから内視鏡内に挿入するので押し棒で押し出せば,本体から容易に剥がれて硬膜に押し付けることができる.内視鏡内腔に挿入できるそれよりさらに小さな器具の内腔内という限られた空間にそれよりも大きな組織接着シートを挿入することができる.
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎経皮的全内視鏡下手術で組織接着用シートの挿入を補助する器具であって,脊椎経皮的全内視鏡の作業用内腔内に挿入可能な外径の細長い円筒形状の本体部があり,
本体部先端から2本もしくは4本の割線が手元側へ向かって入っており,割線は途中から割線の間隙が広がったスリットとなり,スリットは本体部手元端までは続いておらず,
本体部内腔内に押し棒があり,押し棒を本体部内腔内で摺動させて本体部先端に挿入したものを押し出すことができ,
リングはその内径が本体部の外径よりわずかに大きく,本体部外面に被せてあり,
開大具をスリットに挿入することで割線を開大させることができることを特徴とする脊椎経皮的全内視鏡用器具.
【請求項2】
前記開大具はその厚さが前記スリットの間隙より小さく,その幅はスリットの間隙より大きく,開大具をスリットに入れて捻ることで割線を開大させることができることを特徴とする請求項1に記載の脊椎経皮的全内視鏡用器具.
【請求項3】
前記開大具はその厚さが先端部では前記スリットの間隙より小さく,手元側ではスリットの間隙より大きく,開大具をスリットに挿入して押し込むことで割線を開大させることができることを特徴とする請求項1に記載の脊椎経皮的全内視鏡用器具.
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脊椎経皮的全内視鏡下手術にて組織接着用シートの挿入を補助するための器具に関するものである.
【背景技術】
【0002】
脊椎手術において侵襲を極力少なくするために,小径ながら必要な機能が集約された内視鏡である脊椎経皮的全内視鏡を用いる方式がある.脊椎経皮的全内視鏡900とは
図1,
図2のように体内に挿入する部分である本体部分901は外径約6mm弱から7mm弱程の細長い円柱で,そのなかで鏡筒902と光源路903と潅流水路904と作業用内腔905が一体となったものである.皮膚切開部Sから体内に外筒906を挿入し,その中に本体部分901を挿入して,潅流水路904から水を流して対象周囲を洗い流しながら,鏡筒902に接続されたカメラからの画像をモニターに拡大して写して,作業用内腔905に挿入した鉗子200等の器具にて椎弓4や椎間板5等に対して操作する.作業用内腔905に挿入できる器具は外径2.5mmから4mmほどで長さ200mmから400mm程の細長い円柱形を基本外形とするものにハンドル等が付属している器具である.
【0003】
脊柱管狭窄症に対する脊柱管拡大手術では,
図3のように,硬膜管2(:硬膜1で囲まれた管腔で,内部に脊髄液と脊髄と神経根が通っている.)を圧迫している椎間板ヘルニア3や椎弓4や椎間板5や黄色靭帯等の周囲の組織を切除して硬膜管を拡大させている.その際に,硬膜1は薄い膜であるため,損傷する場合がある.損傷するとその孔から脳脊髄液が漏れて,低髄圧症状をきたしたり,神経が孔に陥頓して神経症状を引き起こしたりするため,脳脊髄液が漏れださないように閉鎖する必要がある.閉鎖には縫合する方法が従来より一般的だが,組織接着性のシートで被う方法もある.
タコシール(CSLベーリング株式会社製)などの組織接着用シート10は、
図4のように,スポンジ状のコラーゲン・シートの支持体11に、有効成分であるヒトフィブリノゲン及びヒト由来のトロンビン画分を固着させた接着面12が合わさったシート状生物学的組織接着・閉鎖剤である.これは液体中でも接着力があるという特徴がある.特に経皮的全内視鏡手術では術野が潅流液につかっているため,潅流液を抜かずに使えるのは有用である.
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脊椎経皮的全内視鏡手術において,組織接着用シートを用いる場合には,経皮的全内視鏡の作業用内腔に適度な大きさに切ったものを挿入して内視鏡先端まで棒で押し出すが,この操作により棒の先に組織接着用シートが粘着してしまう.しかし,挿入できる器具は一本に限られているため,それを剥がすための別の器具を挿入することはできない.そのため,棒の先を周辺の骨の角にこすりつけてなんとか棒から剥がしていたが都合の良い形の角が近くにない場合が多く容易ではなく,また視野もずらす必要もあった.
【0006】
脊椎経皮的全内視鏡手術においても,他の手術手技と同様に硬膜損傷はある程度の頻度で起きてしまうのでそれに対する処置として組織接着シートをより使い易くする必要がある.
【課題を解決するための手段】
【0007】
当発明の脊椎経皮的全内視鏡用組織接着用シート挿入器具を以下に当器具と表記する.
図5から11のように,当器具100は経皮的全内視鏡の作業用内腔内に挿入可能な外径の細長い円筒形状の本体部110があり,本体部先端111から2本もしくは4本の割線112が手元側へ向かって入っており,割線は途中から割線の間隙が広がったスリット113となり,手元側に続いているが本体部手元端114までは続いていない.
本体部内腔内に押し棒120があり,押し棒120の手元端に膨大部121がある.本体部手元端114と膨大部121の間にバネ130がある.押し棒120は本体部内腔内で摺動させることができる.
リング140はその内径が本体部の外径よりわずかに大きく,本体部外面に被せてある.
開大具150はその厚さがスリット113の間隙より小さく,その幅はスリットの間隙より大きい.
【発明の効果】
【0008】
当器具を使用する際には,
図12のように,まず開大具150をスリットに差し込んで開大具をひねって割線112を開大させると,本体部110の先端が拡大し,そして組織接着用シートを適当な大きさに切ったものを接着面12が下になるようにして本体部先端111を被せる(
図12a).それから開大具をはずすと組織接着用シートが圧縮され,さらにリング140を先端側に移すと,割線が確実に閉じる(
図12b).本体部を脊椎経皮的全内視鏡の作業用内腔内に挿入し,進める.この時先端側にあったリングは手元側に移動させる.本体部先端が対象の硬膜上に達してから押し棒120を押すと,本体部先端の内腔にあった組織接着用シートが押し出されて(
図12c),少し伸びて硬膜に接着する.
【0009】
組織接着用シートの接着面は本体部先端内腔内に入ったまま移動することになるため粘着するのは本体部内腔内だけとなるため,押し棒で押し出せば当器具から確実に剥がれて硬膜への押し出すことができる.
【0010】
脊椎経皮的全内視鏡内腔に挿入できるのは,その内腔よりさらに小さな外径の器具ということになり,さらにその器具の内腔内に組織接着シートを入れるとなると,非常に小さなサイズのものしか入らなくなるが,割線により,それを広げることができて,器具内腔よりも大きな組織接着シートを挿入することができる.
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】脊椎経皮的全内視鏡下手術時の腰部断面と器具の模式図.
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態1を
図5から11を用いて説明する.当器具100の主要構成は,本体部110と押し棒120である.本体部110は脊椎経皮的全内視鏡の作業用内腔内に挿入可能である外径3から4mmで長さが350mm程の細長い円筒形状で,本体部先端111から2本の割線112が手元側へ向かって入っており,割線112は途中からその間隙が広がったスリット113となり,スリット113は本体部手元端114までは続いていない.
本体部内腔内に押し棒120があり,押し棒120の手元端に膨大部121がある.本体部手元端141と膨大部121の間にバネ130がある.押し棒120は本体部内腔内で摺動させることができる.
リング140はその内径が本体部110の外径よりわずかに大きく,本体部外面に被せてある.
【0013】
図10のように割線112およびスリットは2本対面に入っているもの(a,実施形態1)や,それらと90°ずらした位置に2本追加した合計4本のもの(b,実施形態2)も考えられる.
【0014】
開大具150はその厚さがスリット113の間隙より小さく,その幅はスリット113の間隙より大きい(
図11a).開大具をスリットに入れて捻ることで割線を開大させることができる.
また,開大具の別の形態として開大具160はその厚さが先端部ではスリット113の間隙より小さく,手元側ではスリット113の間隙より大きいものも考えられる(
図11b).この開大具160をスリット113に挿入し押し込むことで割線を開大させることができる.