(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185553
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】撮像装置、シールド、および撮像装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/225 20060101AFI20221207BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20221207BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20221207BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20221207BHJP
【FI】
H04N5/225 430
H04N5/225 700
G03B17/02
G02B7/02 Z
G03B17/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021127776
(22)【出願日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2021093117
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 健
(72)【発明者】
【氏名】竹下 量史
(72)【発明者】
【氏名】臼井 喜紀
(72)【発明者】
【氏名】村上 敏裕
(72)【発明者】
【氏名】吉江 将之
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
2H104
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AJ05
2H100BB11
2H100EE03
2H100EE04
2H104CC00
5C122DA14
5C122EA02
5C122FB03
5C122FC01
5C122FC02
5C122GE05
5C122GE07
5C122GE11
5C122GE18
5C122GE22
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】耐ノイズ性能を向上させることができる撮像装置、シールド、および撮像装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る撮像装置は、レンズユニット、基板と、筐体と、シールドと、を備える。レンズユニットは、レンズが配置される鏡筒を含む。基板は、鏡筒からの光の出射側に配置され、当該光を受光する撮像素子が実装される。筐体は、レンズユニットおよび基板を収納する。シールドは、筐体内において、基板が有する面のうち撮像素子が実装される第1面に対向して設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズが配置される鏡筒を含むレンズユニットと、
前記鏡筒からの光の出射側に配置され、前記光を受光する撮像素子が実装される基板と、
前記レンズユニットおよび前記基板を収納する筐体と、
前記筐体内において、前記基板が有する面のうち前記撮像素子が実装される第1面に対向して設けられるシールドと、
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記シールドは、前記基板の側縁から、前記第1面に対向する位置に向かって斜めに延出して設けられる、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記シールドは、前記基板に直交する第1方向の長さが、前記第1方向における前記基板の側部を覆う前記筐体の内寸より長く、前記レンズユニットおよび前記基板が前記筐体内に挿入される際に、前記レンズユニットに沿って前記筐体の内側に向かって傾斜する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記シールドは、対向して配置される板状の部材である第1シールドペアと、前記第1シールドペアの端部に部分的にオーバーラップされていて対向して配置される板状の部材である第2シールドペアと、を有し、前記レンズユニットおよび前記基板が前記筐体内に挿入される際、前記第1シールドペアが、前記第2シールドペアと時間差をもって前記筐体の内側に向かって傾斜する、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記レンズユニットは、前記シールドとの接触部が樹脂材料で形成される、請求項3または4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記シールドが有する端のうち前記レンズユニットと接触する端は、ヘミング処理されている、請求項3から5のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記シールドは、前記第1方向における前記基板の位置に孔を有する、請求項3から6のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記孔は、前記第1方向における前記基板の位置でありかつ前記第1方向に直交する第2方向において、前記シールドの中央および端に設けられる、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記シールドと前記基板との間に設けられる放熱部材をさらに備え、
前記孔は、さらに、前記第1方向において、前記シールドが有する端のうち前記レンズユニットと接触する第1端とは反対側の第2端に設けられ、
前記放熱部材は、前記レンズユニットおよび前記基板が前記筐体内に挿入される際、前記基板によって、前記孔を介して、前記シールドと前記筐体の間に押し出される、請求項7または8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記レンズユニットは、前記シールドによって前記第1面が覆われた後、前記シールドの前記筐体の内側への傾斜を抑制し、前記第1方向における前記シールドの前記基板の位置を、前記筐体の外側に押し出すストッパーをさらに備える、請求項3から9のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記筐体は、前記第1面側に開口を有する四角形の箱形状の筐体であり、
前記レンズユニットは、前記筐体内に収納されかつ前記開口を塞ぐカバーを有し、
前記筐体の外部に設けられ、前記筐体および前記カバーに当接し、レーザ照射によって、前記筐体および前記カバーと溶着する溶着部材と、
前記筐体内の角部に設けられ、前記カバーを支持して、前記開口から前記筐体内への前記レンズユニットの挿入方向における当該レンズユニットの位置を固定する受け部と、
をさらに備える、請求項3から10のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項12】
レンズが配置される鏡筒を含むレンズユニットと前記鏡筒からの光の出射側に配置されかつ前記光を受光する撮像素子が実装される基板とを収納する筐体内において、前記基板が有する面のうち前記撮像素子が実装される第1面に対向して設けられる、シールド。
【請求項13】
レンズが配置される鏡筒を含むレンズユニットと、前記鏡筒からの光の出射側に配置され、前記光を受光する撮像素子が実装される基板と、前記レンズユニットおよび前記基板を収納する筐体と、前記筐体内において、前記基板の側部および前記基板が有する面のうち前記撮像素子が実装される第1面に対向して設けられかつ前記基板に直交する第1方向における長さが、前記第1方向における前記基板の側部を覆う前記筐体の内寸より長いシールドと、前記シールドと前記基板との間に設けられる放熱部材と、を有する撮像装置の製造方法であって、
前記シールドは、前記第1方向における前記基板の位置の中央および端と、前記レンズユニットと接触する第1端とは反対側の第2端と、に、孔を有し、
前記レンズユニットおよび前記基板が前記筐体内に挿入される際、
前記シールドが、前記レンズユニットに沿って前記筐体の内側に向かって傾斜する工程と、
前記基板が、前記放熱部材を、前記孔を介して、前記シールドと前記筐体の間に押し出す工程と、
を含む撮像装置の製造方法。
【請求項14】
前記シールドによって前記第1面が覆われた後、前記レンズユニットが有するストッパーが、前記シールドの前記筐体の内側への傾斜を抑制し、前記第1方向における前記シールドの前記基板の位置を、前記筐体の外側に押し出す工程、
をさらに含む請求項13に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項15】
前記筐体は、前記第1面側に開口を有する四角形の箱形状の筐体であり、
前記レンズユニットは、前記筐体内に収納されかつ前記開口を塞ぐカバーを有し、
前記筐体内の角部に設けられる受け部が、前記カバーを支持して、前記開口から前記筐体内への前記レンズユニットの挿入方向における当該レンズユニットの位置を固定する工程と、
前記筐体の外部に設けられる溶着部材が、前記筐体および前記カバーに当接し、レーザ照射によって、前記筐体および前記カバーと溶着する工程と、
をさらに含む、請求項13または14に記載の撮像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置、シールド、および撮像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
センサの高性能化に伴い、車載カメラ等の撮像装置には、耐ノイズ特性と放熱性の両方が求められるようになってきている。撮像装置の耐ノイズ特性の観点から、撮像装置には、樹脂製の筐体の一例であるカメラケースの内側にシールドが配置されている。例えば、特許文献1には、撮像装置の基板の側部と底面をシールドで覆う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、センサの直上にレンズが配置されているため、撮像装置内の基板の側部と底面をシールドで覆うことができるが、基板の上面がシールドで覆われていない構造となっており、基板の上面側からのノイズを抑制することが難しい。
【0005】
本開示は、耐ノイズ性能を向上させることができる撮像装置、シールド、および撮像装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る撮像装置は、レンズユニットと、基板と、筐体と、シールドと、を備える。レンズユニットは、レンズが配置される鏡筒を含む。基板は、鏡筒からの光の出射側に配置され、当該光を受光する撮像素子が実装される。筐体は、レンズユニットおよび基板を収納する。シールドは、筐体内において、基板が有する面のうち撮像素子が実装される第1面に対向して設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る撮像装置、シールド、および撮像装置の製造方法によれば、撮像装置の耐ノイズ性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる撮像装置の一例である車載カメラの分解図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかる車載カメラの縦断面の概略図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかる車載カメラの縦断面の概略図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態にかかる車載カメラの斜視断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態にかかる車載カメラの製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態にかかる車載カメラの製造方法の一例を説明するための縦断面概略図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態にかかる車載カメラの斜視断面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態にかかる車載カメラの斜視断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態にかかる車載カメラが備えるカメラケースの斜視図である。
【
図10】
図10は、従来の車載カメラにおけるレンズ基板ASSYとカメラケースと溶着リングとの溶着構造の一例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態にかかる車載カメラにおけるレンズ基板ASSYとカメラケースと溶着リングとの溶着構造の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る撮像装置、シールド、および撮像装置の製造方法の実施形態について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、
図1~4を用いて、本実施形態にかかる撮像装置の構成の一例について説明する。
図1は、第1実施形態にかかる撮像装置の一例である車載カメラの分解図である。
図2は、第1実施形態にかかる車載カメラの縦断面の概略図である。
図3は、第1実施形態にかかる車載カメラの縦断面の概略図である。
図4は、第1実施形態にかかる車載カメラの斜視断面図である。
【0011】
本実施形態にかかる撮像装置の一例である車載カメラ10は、
図1および
図2に示すように、レンズ基板ASSY1と、カメラケース3と、放熱部材4、シールド5と、基板6と、を有する。
【0012】
レンズ基板ASSY1は、鏡筒11と、レンズ12と、を有するレンズユニットの一例である。鏡筒11は、その内側にレンズ12を配置する。鏡筒11は、例えば、樹脂材料を用いて形成されていても良い。
【0013】
本実施形態では、レンズ基板ASSY1は、鏡筒11の周囲を覆うカバー13を有する。カバー13は、樹脂材料を用いて形成されていても良い。本実施形態では、カバー13は、その全体が樹脂材料を用いて形成されているが、少なくとも、基板6をカメラケース3内に挿入した際に後述するシールド5の上端5iとの接触部が樹脂材料で形成されていれば良い。
【0014】
レンズ基板ASSY1には、接着剤2によって基板6が取り付けられている。本実施形態では、接着剤2は、少なくとも熱処理により硬化する性質を有する接着剤を用いることが可能である。接着剤2は、レンズ基板ASSY1に対して基板6をより高精度に取り付けるために、言い換えると、鏡筒11(レンズ12)と撮像素子7との光学調整のために、熱処理による本硬化に先立って、例えば、紫外線(UV)照射により仮硬化する性質を有していることが好ましい。
【0015】
したがって、本実施形態では、接着剤2は、UV照射による仮硬化と、熱処理による本硬化の2段階の工程を経て硬化されるものであることが好ましい。例えば、接着剤2は、エポキシ樹脂を含む接着剤であっても良い。これにより、仮硬化の後、本硬化までの間に、鏡筒11と撮像素子7との位置関係がずれることを防止できる。
【0016】
基板6は、鏡筒11からの光の出射側に配置され、撮像素子7を実装する基板の一例である。撮像素子7は、例えば、CMOS(Complementary MOS)やCCD(Charge Coupled Device)であり、レンズ12を通過した光を受光する撮像素子の一例である。また、撮像素子7は、受光した光を映像信号に変換する。本実施形態では、基板6は、その角部が、接着剤2を介して、レンズ基板ASSY1に固定されている。
【0017】
カメラケース3は、レンズ基板ASSY1および基板6を内部に収納する筐体の一例である。本実施形態では、カメラケース3は、開口34を有する。ここで、開口34は、カメラケース3の内部に基板6を挿入可能とし、かつレンズ基板ASSY1によって閉塞される開口の一例である。
【0018】
本実施形態では、カメラケース3は、上面開口の箱形状の筐体である。具体的には、カメラケース3は、端壁31と、周壁32と、を有する。端壁31は、レンズ12の光軸と略直交する略四角形の板状に形成される。周壁32は、レンズ12の光軸に略平行に四角形の箱形状に形成される。また、カメラケース3は、基板6が当該カメラケース3内に収納された際にレンズ基板ASSY1と当接する当接面33を有する。
【0019】
シールド5は、カメラケース3内に設けられる。シールド5は、基板6が、その内部に収められる。シールド5は、基板6を覆うシールドの一例である。言い換えると、シールド5は、基板6の上面6a、側部6c、および下面6bに対向して設けられる。具体的には、シールド5は、複数のシールド部5a~5eを有する。シールド部5eは、基板6が有する面のうち撮像素子7が実装される第1面の一例である上面6aとは反対側の第2面の一例である下面6bに対向して設けられる。シールド部5a~5dは、シールド部5eから立設され、基板6の側部6cおよび上面6aに対向して設けられる。
【0020】
本実施形態では、シールド部5a~5dは、基板6の上面6aに直交する方向、言い換えると、基板6が有する面に直交する第1方向の一例であるx方向に延在する。また、シールド部5a~5dは、基板6の側縁である側部6cから、上面6aに対向する位置に向かって斜めに延出して設けられる。すなわち、シールド部5a~5dは、レンズ基板ASSY1および基板6がカメラケース3内に挿入された状態で、側部6cから、レンズ基板ASSY1(レンズ12)の光軸に向かって斜めに延出して設けられる。さらに、シールド部5a~5dは、x方向における長さが、x方向における基板6の側部6cを覆うカメラケース3の内寸Lより長い。
【0021】
また、本実施形態では、シールド部5cとシールド部5dは、対向して配置される板状の部材である第1シールドペアの一例である。また、シールド部5aとシールド部5bは、対向して配置される板状の部材である第2シールドペアの一例である。シールド部5a,5bは、シールド部5c,5dよりも、カメラケース3の内側に傾斜していることが好ましい。また、シールド部5a,5bの端部は、シールド部5c,5dに部分的にオーバーラップされている。
【0022】
そして、レンズ基板ASSY1および基板6がカメラケース3内に挿入される際、シールド部5c,5dが、レンズ基板ASSY1のカバー13に押されてシールド部5a,5bよりも先にカメラケース3の内側に向かって傾斜する。そして、シールド部5a,5bは、シールド部5c,5dの傾斜動作に伴ってオーバーラップ部分が押されることにより、カメラケース3の内側に向かって傾斜する。言い換えると、シールド部5c,5dは、シールド部5a,5bと時間差をもって、カメラケース3の内側に向かって傾斜する。これにより、シールド部5a~5dをレンズ基板ASSY1に沿ってカメラケース3の内側に向かって傾斜させる際に、隣り合うシールド部同士を接触させずに、シールド部5a~5dをカメラケース3の内側に曲がり易くすることができる。
【0023】
本実施形態では、
図3に示すように、シールド5のx方向の上端5iは、U字状に折り曲げる等のヘミング処理が施されている。これにより、レンズ基板ASSY1および基板6をカメラケース3内に収納する際に、シールド5の上端5iと、レンズ基板ASSY1のカバー13との摩擦を軽減することができる。その結果、シールド5の上端5iがカバー13に引っかかって、カメラケース3の内側に移動できなくなり、シールド5によって基板6の上面6aを覆えなくなることを防止できる。また、これにより、基板6をカメラケース3内に収納する際に、シールド5の上端5iが基板6に引っ掛かることを回避できるので、シールド5が基板6に引っ掛かって当該基板6が損傷することを防止できる。
【0024】
また、レンズ基板ASSY1は、シールド5の上端5iと接触する接触部が、樹脂材料であることが好ましい。本実施形態では、レンズ基板ASSY1のカバー13が、樹脂材料で構成されている。これにより、基板6をカメラケース3内に収納する際に、シールド5の上端5iと、レンズ基板ASSY1のカバー13との摩擦をさらに軽減することができる。本実施形態では、カバー13全体が樹脂材料で形成されているが、カバー13のうち、少なくとも、シールド5の上端5iとの接触部が樹脂材料で形成されていれば良い。
【0025】
また、シールド5は、x方向における基板6の位置に切り欠きまたは孔5f,5gを有する。これにより、シールド部5a~5dをレンズ基板ASSY1に沿ってカメラケース3の内側に向かって傾斜させる際に、当該孔5f,5gに応力集中させ、シールド5の基板6の位置を当該シールド5が曲がる起点とすることができる。その結果、シールド部5a~5dをレンズ基板ASSY1に沿ってカメラケース3の内側に向かって傾斜させる際に、シールド5の上部のみが折れ曲がり、シールド5によって基板6の上面6aを覆えなくなることを防止できる。
【0026】
図3に示すように、車載カメラ10の製造時または組立時、具体的には、レンズ基板ASSY1および基板6がカメラケース3内に挿入される際に、シールド部5a~5dは、レンズ基板ASSY1に沿って、カメラケース3の内側に向かって傾斜する。具体的には、シールド部5c,5dは、基板6の上面6a側の第1端の一例である上端5iをレンズ基板ASSY1のカバー13と接触させて、カバー13に沿ってカメラケース3の内側に向かって傾斜する。シールド部5a,5bは、シールド部5c,5dの傾斜動作に伴ってオーバーラップ部分が押されることにより、カメラケース3の内側に向かって傾斜する。本実施形態では、車載カメラ10の製造時または組立時に、レンズ基板ASSY1のカバー13がカメラケース3の当接面33に当接するまで、シールド部5a~5dをカメラケース3の内側に向かって傾斜させる。
【0027】
これにより、シールド部5a~5dの上端5iがカメラケース3の内側に移動して、基板6の上面6aに対向した位置にシールド5を設けることで、基板6の上面6aをシールド5によって覆うことができる。その結果、基板6の上面6a側からの当該基板6に対するノイズが軽減され、車載カメラ10の耐ノイズ性能を向上させることができる。また、シールド部5a~5dは、予め、カメラケース3の内側に向かって傾斜しているので、レンズ基板ASSY1をシールド部5a~5dの上端5iをレンズ基板ASSY1に沿って傾斜させる際に、低い荷重で、シールド部5a~5dをカメラケース3の内側に曲げることができる。
【0028】
ところで、カメラケース3の蓋側(すなわち、レンズ基板ASSY1)を含むカメラケース3の内側に金属を蒸着させる等して、カメラケース3内にシールド5をインサート成型することも可能である。しかしながら、薄いシールド5をカメラケース3内にインサート成型する技術は困難であり、コストも高くなるという懸念がある。
【0029】
これに対して、本実施形態にかかるシールド5によれば、従来の車載カメラを構成する部材を変えず、かつインサート成型等の特殊な方法を用いずに、基板6の上面6aとレンズ基板ASSY1との間を含む基板6の周囲をシールド5で覆うことができる。その結果、容易かつ低コストで基板6の放熱性能および耐ノイズ性能を向上させることができる。
【0030】
本実施形態では、
図4に示すように、シールド5が有する孔は、前述の孔5f,5gに加え、シールド5と基板6の間の空間から、シールド5とカメラケース3の間の空間へと突き抜けた孔(開口)5hを含む。
【0031】
ここで、孔5fは、シールド部5a~5dのそれぞれの、x方向に直交するy,z方向の中央に設けられる円形の孔である。孔5gは、シールド部5a~5dのそれぞれの、y,z方向の端に設けられる楕円形の孔である。孔5hは、x方向において、シールド部5a~5dの上端5iとは反対側の端に設けられる。本実施形態では、孔5hは、シールド部5a~5dのそれぞれの、y,z方向の端に設けられる。また、本実施形態では、孔5f,5g,5hは、円形の孔であるが、シールド5と基板6の間の隙間から、シールド5とカメラケース3の間の隙間へと突き抜けた孔であれば良く、例えば、四角形の孔であっても良い。
【0032】
放熱部材4は、シールド5と、基板6と、の間の空間に設けられる。また、放熱部材4は、
図4に示すように、レンズ基板ASSY1および基板6がカメラケース3内に挿入される際、基板6によって、孔5f,5g,5hを介して、シールド5とカメラケース3の間に押し出される。これにより、基板6において発生する熱をカメラケース3へと効率的に放熱することができるので、車載カメラ10の放熱性能を向上させることができる。
【0033】
ここで、放熱部材4は、時間経過に伴い硬化する樹脂材料である。例えば、放熱部材4は、シリコーンであっても良い。または、放熱部材4は、例えば、ベース材料:シリコーン、フィラー:水酸化アルミニウム,酸化アルミニウム、熱伝導率:3W/m・Kの放熱部材であっても良い。または、放熱部材4は、ベース材料:シリコーン、フィラー:酸化アルミニウム、熱伝導率:5W/m・Kの放熱部材であっても良い。
【0034】
放熱部材4は、シールド5と基板6の間の隙間に流し込まれる。そして、レンズ基板ASSY1および基板6をカメラケース3内に挿入する際、基板6によって、孔5f,5g,5hを介して、シールド5とカメラケース3の間の隙間に流し込まれる。これにより、基板6とシールド5とカメラケース3とを放熱部材4によって接続して、基板6において発生する熱をカメラケース3へと効率的に放熱することができるので、車載カメラ10の放熱性能を向上させることができる。
【0035】
さらに、放熱部材4は、レンズ基板ASSY1および基板6をカメラケース3内に収納する際に、完全に硬化していない状態とすることで、カメラケース3内に収納される基板6によって、孔5f,5g,6hを介して、シールド5とカメラケース3との間の隙間に押し出される。これにより、基板6とシールド5とカメラケース3との間の隙間を放熱部材4によって確実に埋めることができる。その結果、基板6において発生する熱をカメラケース3へと効率的に放熱することができる。
【0036】
次に、
図5を用いて、本実施形態にかかる車載カメラ10の製造方法の流れの一例について説明する。
図5は、第1実施形態にかかる車載カメラの製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0037】
本実施形態では、まず、カメラケース3内に、レンズ基板ASSY1および基板6が挿入される。その際、シールド部5a~5dの上端5iがレンズ基板ASSY1と接触して、シールド部5a~5dがレンズ基板ASSY1に沿ってカメラケース3の内側に向かって傾斜する(ステップS601)。これにより、シールド部5a~5dを、基板6の上面6aに対向して設けることが可能となる。
【0038】
シールド部5a~5eと当該基板6との間の隙間に放熱部材4が流し込まれている場合、基板6は、孔5f,5g,5hを介して、シールド部5a~5eと基板6の間の隙間の放熱部材4を、シールド部5a~5eとカメラケース3の間の隙間空間に流し込む(ステップS602)。これにより、基板6とシールド5とカメラケース3とを放熱部材4によって接続して、基板6において発生する熱をカメラケース3へと効率的に放熱することができるので、車載カメラ10の放熱性能を向上させる。
【0039】
このように、第1実施形態にかかる車載カメラ10によれば、カメラケース3内にレンズ基板ASSY1および基板6を挿入する際、シールド部5a~5dをレンズ基板ASSY1に沿ってカメラケース3の内側に向かって傾斜させて、基板6の上面6aに対向してシールド5を設けることができる。その結果、基板6の上面6a側からの当該基板6に対するノイズが軽減され、車載カメラ10の耐ノイズ性能を向上させることができる。
【0040】
(第2実施形態)
本実施形態は、レンズ基板ASSYが、シールドによって基板の上面が覆われた後、シールドのカメラケースの内側への傾斜を抑制し、x方向におけるシールドの基板の位置、カメラケースの外側に押し出すストッパーを有する例である。以下の説明では、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0041】
図6を用いて、本実施形態にかかる車載カメラ10の製造方法の一例について説明する。
図6は、第2実施形態にかかる車載カメラの製造方法の一例を説明するための縦断面の概略図である。
【0042】
本実施形態では、基板6をカメラケース3に挿入前、シールド5は、y,z方向において、基板6よりも外側に開いた状態となっている。
【0043】
その後、レンズ基板ASSY1および基板6がカメラケース3内に挿入されると、レンズ基板ASSY1のカバー13とシールド5の上端5iとが接触して、シールド5の上端5iがカメラケース3内に押し込まれる。これにより、シールド部5a~5dが、カメラケース3の内側に倒れこみ、基板6の上面6aに対向して配設される。
【0044】
また、レンズ基板ASSY1のカバー13は、ストッパー14を有する。ストッパー14は、シールド5が基板6の上面6aに対向して配設された後、言い換えると、シールド部5a~5dによって上面6aを覆った後、シールド5のカメラケース3の内側への傾斜を抑制し、x方向におけるシールド5の基板6の位置を、カメラケース3の外側に押し出すストッパーの一例である。
【0045】
これにより、第2実施形態にかかる車載カメラ10によれば、シールド部5a~5dによって上面6aを覆った後、シールド5の上端5iの移動がストッパー14により止められるので、シールド5のx方向における基板6の位置がカメラケース3の外側に押し込まれる。その結果、シールド5とカメラケース3の間の隙間が小さくなり、基板6において発生する熱をカメラケース3へと効率的に放熱することができるので、車載カメラ10の放熱性能を向上させることができる。
【0046】
(第3実施形態)
本実施形態は、レンズ基板ASSYのカバーおよびカメラケースに対して溶着する溶着リングが、レンズ基板ASSYと分かれている状態で、レンズ基板ASSYがカメラケース内に収納される例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0047】
図7~9を用いて、本実施形態にかかる車載カメラ10の構成の一例について説明する。
図7および
図8は、第3実施形態にかかる車載カメラの斜視断面図である。
図9は、第3実施形態にかかる車載カメラが備えるカメラケースの斜視図である。
【0048】
第1,2実施形態においては、レンズ基板ASSY1および基板6のカメラケース3への収納に先立って、レンズ基板ASSY1と、溶着リング701と、が予め溶着されている例について説明した。すなわち、第1,2実施形態においては、溶着リング701は、予め、レンズ基板ASSY1の鏡筒11の周囲に設けられるカバー702に対して、溶着されている。これに対して、本実施形態は、レンズ基板ASSY1のカバー702と、溶着リング701と、が分かれており、レンズ基板ASSY1および基板6をカメラケース3内に収納した後、カメラケース3とレンズ基板ASSY1とを溶着リング701によって溶着する例である。
【0049】
本実施形態では、カメラケース3は、第1,2実施形態と同様に、基板6の上面6a側に開口を有する四角形の箱形状の筐体である。レンズ基板ASSY1は、カメラケース3内に少なくとも一部が収納されかつ開口34を塞ぐカバー702を有する。溶着リング701は、カメラケース3の外部に設けられ、カメラケース3およびカバー702に当接し、レーザ照射によって、カメラケース3およびカバー702と溶着する溶着部材の一例である。
【0050】
また、本実施形態では、カメラケース3は、
図9に示すように、当該カメラケース3内の角部に設けられ、当該カメラケース3内に収納されるカバー702を支持する4つの受け部703を有する。受け部703は、樹脂等により構成され、開口34からカメラケース3内へのレンズ基板ASSY1の挿入方向におけるレンズ基板ASSY1の位置を固定する受け部の一例である。さらに、本実施形態では、レンズ基板ASSY1および基板6をカメラケース3内に収納する際に、シールド5の上端5iをカバー702に当接させ、当該カバー702の中央部(内側)を、シールド5の反力によって支持する。
【0051】
従来、レンズ基板ASSY1と溶着リング701とが2部品に分かれている構造においては、カメラケース3と溶着リング701の溶着、およびレンズ基板ASSY1と溶着リング701の溶着における2回のレーザ照射が必要である。すなわち、従来は、レンズ基板ASSY1のカメラケース3内への収納に先立って、完全固定されている治具に、レンズ基板ASSY1および溶着リング701を置き、外部設備によって、レンズ基板ASSY1と溶着リング701とを押さえ付けた状態でレーザ照射を行っている。また、従来は、カメラケース3内の受け部703が設けられていないため、カメラケース3と溶着リング701の溶着、およびレンズ基板ASSY1と溶着リング701の溶着のそれぞれのレーザ照射を2回に分けざるを得なかった。
【0052】
これに対して、本実施形態では、カメラケース3は、開口34からカメラケース3内へのレンズ基板ASSY1の挿入方向へのレンズ基板ASSY1の位置を固定する4つの受け部703を有する。これにより、治具を用いる場合と同様に、カメラケース3内において、受け部703およびシールド5によって、レンズ基板ASSY1と溶着リング701との位置関係の固定状況を作ることができる。その結果、レンズ基板ASSY1をカメラケース3内へ収納した後、レンズ基板ASSY1と溶着リング701の溶着、およびカメラケース3と溶着リング701の溶着を同時に行うことを実現できる。
【0053】
図10は、従来の車載カメラにおけるレンズ基板ASSYとカメラケースと溶着リングとの溶着構造の一例を説明するための図である。
図11は、第3実施形態にかかる車載カメラにおけるレンズ基板ASSYとカメラケースと溶着リングとの溶着構造の一例を説明するための図である。次に、
図10および
図11を用いて、本実施形態にかかる車載カメラ10における、レンズ基板ASSY1とカメラケース3と溶着リング701との溶着構造の一例について説明する。
【0054】
図10に示すように、従来の車載カメラの製造方法では、レンズ基板ASSY1のカメラケース3内の収納に先立って、完全固定されている治具に、レンズ基板ASSY1および溶着リング701を置き、外部設備によって、レンズ基板ASSY1と溶着リング701とを押さえ付けた状態(RIGID固定した状態)でレーザ照射を行う。次に、従来の車載カメラの製造方法では、レンズ基板ASSY1に溶着リング701が溶着された状態において、6軸調整を行った後、レンズ基板ASSY1および基板6をカメラケース3内に収納する。その後、従来の車載カメラの製造方法では、溶着リング701をカメラケース3の外力(例えば、200~300Nの外力)により押さえ付けた状態で、再度、溶着リング701に対してレーザ照射を行って、カメラケース3と溶着リング701とを溶着させる。
【0055】
これに対して、本実施形態にかかる車載カメラ10の製造方法では、レンズ基板ASSY1のみで6軸調整を行った後、レンズ基板ASSY1および基板6をカメラケース3内に収納する。その際、受け部703は、開口34からカメラケース3内へのレンズ基板ASSY1の挿入方向における当該レンズ基板ASSY1の位置を固定する。その後、本実施形態にかかる車載カメラ10の製造方法では、溶着リング701を外力(例えば、200~300Nの外力)により押さえ付けた状態で、溶着リング701に対してレーザ照射を行って、レンズ基板ASSY1のカバー702と溶着リング701の溶着、およびカメラケース3と溶着リング701の溶着を一度に実現する。
【0056】
このように、第3実施形態にかかる車載カメラ10によれば、治具を用いる場合と同様に、カメラケース3内において、受け部703およびシールド5によって、レンズ基板ASSY1と溶着リング701との位置関係の固定状況を作ることができる。その結果、レンズ基板ASSY1をカメラケース3内へ収納した後、レンズ基板ASSY1と溶着リング701の溶着、およびカメラケース3と溶着リング701の溶着を同時に行うことを実現できる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 レンズ基板ASSY
2 接着剤
3 カメラケース
4 放熱部材
5 シールド
5f,5g,5h 孔
5a,5b シールド部
6 基板
7 撮像素子
10 車載カメラ
11 鏡筒
12 レンズ
13,702 カバー
33 当接面
34 開口
701 溶着リング
703 受け部