(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185563
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20221207BHJP
C08F 212/14 20060101ALI20221207BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20221207BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G03F7/039 601
C08F212/14
C08F220/18
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065851
(22)【出願日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2021093257
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】桐山 和也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 拓弘
(72)【発明者】
【氏名】錦織 克聡
(72)【発明者】
【氏名】木下 奈津子
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF22P
2H225AF23P
2H225AF24P
2H225AF28P
2H225AF29P
2H225AF35P
2H225AF52P
2H225AF53P
2H225AF54P
2H225AF56P
2H225AF66P
2H225AF67P
2H225AF68P
2H225AF71P
2H225AF73P
2H225AF91P
2H225AF92P
2H225AH05
2H225AH11
2H225AH12
2H225AH13
2H225AH14
2H225AH16
2H225AH17
2H225AH19
2H225AH34
2H225AH36
2H225AH38
2H225AH39
2H225AJ02
2H225AJ03
2H225AJ07
2H225AJ13
2H225AJ42
2H225AJ53
2H225AJ54
2H225AJ55
2H225AJ59
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN54P
2H225AN57P
2H225BA01P
2H225BA02P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC03
2H225CC15
4J100AB07P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100BA02P
4J100BA15P
4J100BA28P
4J100BA58P
4J100BB07P
4J100BB18P
4J100BC02Q
4J100BC03Q
4J100BC04P
4J100BC43P
4J100BC53R
4J100BC60P
4J100CA05
4J100CA06
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される第1構造単位を有し、酸の作用により現像液への溶解性が変化する重合体と、感放射線性酸発生剤とを含有する感放射線性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される第1構造単位を有し、酸の作用により現像液への溶解性が変化する重合体と、
感放射線性酸発生剤と
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Lは、単結合、-COO-、-O-又は-CONH-である。Ar
1は、環員数6~30の芳香環から(m+2)個の水素原子を除いた基である。Xは、単結合、-O-、-G-O-、-CH
2-、-S-、-SO
2-、-NR
A-又は-CONH-である。Gは、炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基である。R
Aは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Ar
2は、環員数6~30の芳香環から(n+1)個の水素原子を除いた基である。R
2及びR
3は、それぞれ独立して、炭素数1~20の有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はスルファニル基である。mは、0~10の整数である。mが2以上の場合、複数のR
2は、互いに同一又は異なる。nは、0~10の整数である。nが2以上の場合、複数のR
3は、互いに同一又は異なる。)
【請求項2】
m+nが1以上である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
Ar1及びAr2を与える上記芳香環が芳香族炭化水素環である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
R2及びR3の少なくとも1つがフッ素原子又はヨウ素原子である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
R2及びR3の少なくとも1つがヒドロキシ基又は炭素数1~20の有機基であり、
上記有機基が、酸解離性基を含む基、ラクトン環構造若しくは環状カーボネート構造を含む基、フッ素化アルコール基、ケトン基又はアルコキシ基である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
基板に直接又は間接に請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程と、
上記露光されたレジスト膜を現像する工程と
を備えるレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィーによる微細加工に用いられる感放射線性樹脂組成物は、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)等の遠紫外線、極端紫外線(EUV)(波長13.5nm)等の電磁波、電子線等の荷電粒子線などの放射線の照射により露光部に酸を発生させ、この酸を触媒とする化学反応により露光部と非露光部との現像液に対する溶解速度に差異を生じさせることで基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
感放射線性樹脂組成物には、極端紫外線、電子線等の露光光に対する感度が良好であることに加え、LWR(Line Width Roughness)性能及びCDU(Critical Dimension Uniformity)性能に優れることが要求される。
【0004】
これらの要求に対しては、感放射線性樹脂組成物に用いられる重合体、酸発生剤及びその他の成分の種類、分子構造などが検討され、さらにその組み合わせについても詳細に検討されている(特開2010-134279号公報、特開2014-224984号公報及び特開2016-047815号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-134279号公報
【特許文献2】特開2014-224984号公報
【特許文献3】特開2016-047815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レジストパターンの微細化が線幅40nm以下のレベルまで進展している現在にあっては、上記性能の要求レベルはさらに高まっており、上記従来の感放射線性樹脂組成物では上記要求を満足させることはできていない。
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、下記式(1)で表される第1構造単位を有し、酸の作用により現像液への溶解性が変化する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)と、感放射線性酸発生剤(以下、「[B]酸発生剤」ともいう)とを含有する感放射線性樹脂組成物である。
【化1】
(式(1)中、R
1は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Lは、単結合、-COO-、-O-又は-CONH-である。Ar
1は、環員数6~30の芳香環から(m+2)個の水素原子を除いた基である。Xは、単結合、-O-、-G-O-、-S-、-SO
2-、-NR
A-又は-CONH-である。R
Aは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Gは、炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基である。Ar
2は、環員数6~30の芳香環から(n+1)個の水素原子を除いた基である。R
2及びR
3は、それぞれ独立して、炭素数1~20の有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はスルファニル基である。mは、0~10の整数である。mが2以上の場合、複数のR
2は、互いに同一又は異なる。nは、0~10の整数である。nが2以上の場合、複数のR
3は、互いに同一又は異なる。)
【0009】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基板に直接又は間接に感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程とを備え、上記感放射線性樹脂組成物が、上述の当該感放射線性樹脂組成物であるレジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。従って、当該感放射線性樹脂組成物及び当該レジストパターン形成方法は、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法について詳説する。
【0012】
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と、[B]酸発生剤とを含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、通常、有機溶媒(以下、「[D]有機溶媒」ともいう)を含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として、酸拡散制御体(以下、「[C]酸拡散制御体」ともいう)を含有していてもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として、[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きい重合体(以下、「[E]重合体」ともいう)を含有していてもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。
【0013】
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と[B]酸発生剤とを含有することで、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。当該感放射線性樹脂組成物が上記構成を備えることで上記効果を奏する理由は必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、当該感放射線性樹脂組成物が含有する[A]重合体が上記式(1)で表される構造単位を有することにより、様々な機能をもった置換基を導入することができる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができると考えられる。
【0014】
以下、当該感放射線性樹脂組成物が含有する各成分について説明する。
【0015】
[[A]重合体]
[A]重合体は、後述する式(1)で表される構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)を有し、酸の作用により現像液への溶解性が変化する重合体である。通常、[A]重合体が酸解離性基を有することにより、酸の作用により現像液への溶解性が変化する性質が発揮される。[A]重合体は、構造単位(I)中に酸解離性基を有していてもよいし、構造単位(I)とは異なる構造単位として酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう)をさらに有していてもよいし、その両方であってもよい。
【0016】
[A]重合体は、フェノール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位(III)」ともいう)をさらに有することが好ましい。[A]重合体は、構造単位(I)~(III)以外のその他の構造単位(以下、単に「その他の構造単位」ともいう)をさらに有していてもよい。[A]重合体は、各構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上の[A]重合体を含有することができる。
【0017】
以下、[A]重合体が含有する各構造単位について説明する。
【0018】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、下記式(1)で表される構造単位である。構造単位(I)を有することにより、露光による酸の発生効率を損なうことなく様々な機能をもった置換基を導入することができる。その結果、当該感放射線性樹脂組成物は、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。
【0019】
【0020】
上記式(1)中、R1は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Lは、単結合、-COO-、-O-又は-CONH-である。Ar1は、環員数6~30の芳香環から(m+2)個の水素原子を除いた基である。Xは、単結合、-O-、-G-O-、-S-、-SO2-、-NRA-又は-CONH-である。Gは、炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基である。RAは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Ar2は、環員数6~30の芳香環から(n+1)個の水素原子を除いた基である。R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1~20の有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はスルファニル基である。mは、0~10の整数である。mが2以上の場合、複数のR2は、互いに同一又は異なる。nは、0~10の整数である。nが2以上の場合、複数のR3は、互いに同一又は異なる。
【0021】
「環員数」とは、環構造を構成する原子数をいい、多環の場合はこの多環を構成する原子数をいう。「芳香環」には、「芳香族炭化水素環」及び「芳香族複素環」が含まれる。「芳香環」には、「単環の芳香環」及び「多環の芳香環」が含まれる。「多環の芳香環」には、2つの環が2つの共有原子を有する縮合多環だけでなく、2つの環が共有原子を持たず、単結合で連結している環集合型の多環も含まれる。
【0022】
「炭素数」とは、基を構成する炭素原子数をいう。「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。「炭化水素基」には、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。「脂肪族炭化水素基」は、鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基をいう。
【0023】
R1としては、構造単位(I)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0024】
Lとしては、単結合又は-COO-が好ましい。
【0025】
Ar1及びAr2を与える環員数6~30の芳香環としては、例えば環員数6~30の芳香族炭化水素環、環員数6~30の芳香族複素環等が挙げられる。
【0026】
環員数6~30の芳香族炭化水素環としては、例えばベンゼン環;ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環等の縮合多環型芳香族炭化水素環;ビフェニル環、テルフェニル環、ビナフタレン環、フェニルナフタレン環等の環集合型芳香族炭化水素環などが挙げられる。
【0027】
環員数6~30の芳香族複素環としては、例えばピラン環、ベンゾフラン環、ベンゾピラン環等の酸素原子含有複素環、ピリジン環、ピリミジン環、インドール環等の窒素原子含有複素環などが挙げられる。
【0028】
Ar1及びAr2を与える環員数6~30の芳香環としては、環員数6~30の芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環がより好ましい。
【0029】
Ar1を与える上記芳香環とAr2を与える上記芳香環とは同一の芳香環であってもよいし、異なる芳香環であってもよいが、同一の芳香環であることが好ましい。
【0030】
Xとしては、-O-、-G-O-、-S-、-SO2-又は-NRA-が好ましく、-O-、-S-又は-SO2-がより好ましく、-O-がさらに好ましい。
【0031】
Gで表される炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基としては、後述の炭素数1~20の1価の炭化水素基として例示する基のうち炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基から1個の水素原子を除いたものが挙げられる。Gとしては、炭素数1~10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数5~20の2価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数1~4の2価の鎖状炭化水素基がより好ましく、メタンジイル基がさらに好ましい。
【0032】
RAで表される炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、後述の炭素数1~20の1価の炭化水素基として例示する基のうち炭素数1~10のものと同様のものが挙げられる。RAとしては、水素原子が好ましい。
【0033】
R2及びR3における炭素数1~20の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間に2価のヘテロ原子含有基を含む基(α)、上記炭化水素基又は上記基(α)が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基(β)、上記炭化水素基、上記基(α)又は上記基(β)と2価のヘテロ原子含有基とを組み合わせた基(γ)等が挙げられる。
【0034】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0035】
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等のアルキル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0036】
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環の脂環式飽和炭化水素基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環の脂環式飽和炭化水素基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環の脂環式不飽和炭化水素基、ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等の多環の脂環式不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0037】
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0038】
1価又は2価のヘテロ原子含有基を構成するヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0039】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば-O-、-CO-、-S-、-CS-、-NR’-、これらのうちの2つ以上を組み合わせた基(例えば、-COO-、-CONR’-など)等が挙げられる。R’は、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。R’で表される炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、例えば上記RAにおいて例示したものと同様のもの等が挙げられる。
【0040】
R2及びR3におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましい。また、R2及びR3の少なくとも1つがフッ素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。この場合、当該感放射線性樹脂組成物の露光光に対する感度、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0041】
R2及びR3が炭素数1~20の1価の有機基である場合、その有機基の種類を適宜選択することにより、[A]重合体に様々な機能をもった置換基を導入することができる。その結果、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。
【0042】
mとしては、0~6が好ましく、1~5がより好ましく、1~4がさらに好ましい。nとしては、0~6が好ましく、1~5がより好ましく、1~4がさらに好ましい。m+nとしては、1以上が好ましい。
【0043】
上記有機基としては、酸解離性基を含む基(以下、「基(I)」ともいう)又は極性基を含む基(以下、「基(II)」ともいう)が好ましい。
【0044】
(基(I))
基(I)は、酸解離性基を含む基である。「酸解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等における水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離してカルボキシ基、ヒドロキシ基等を与える基を意味する。
【0045】
上記有機基が基(I)である場合、この基(I)が有する酸解離性基により[A]重合体は酸の作用により現像液への溶解性が変化する性質を発揮する。その結果、露光により[B]酸発生剤等から発生する酸の作用により酸解離性基が解離し、露光部における[A]重合体の現像液への溶解性が変化することにより、レジストパターンを形成することができる。
【0046】
基(I)としては、下記式(I-1)~(I-3)で表される基(以下、「基(I-1)~基(I-3)」ともいう)が好ましい。例えば、下記式(I-1)において-C(R4)(R5)(R6)が酸解離性基に該当する。
【0047】
【0048】
上記式(I-1)~(I-3)中、*は、上記式(1)におけるAr1又はAr2との結合部位を示す。Y1は、-COO-、-O-又は-OCOO-である。
【0049】
上記式(I-1)中、R4は、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R5及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部である。
【0050】
上記式(I-2)中、R7は、水素原子である。R8及びR9は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R10は、R7、R8及びR9がそれぞれ結合する炭素原子と共に環員数4~20の不飽和脂環構造を構成する炭素数1~20の2価の炭化水素基である。
【0051】
上記式(I-3)中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、R13は、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、R11及びR12が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部であるか、又はR12及びR13が互いに合わせられR12が結合する炭素原子及びR13が結合する酸素原子と共に構成される環員数5~20の脂肪族複素環構造の一部である。
【0052】
Y1としては、-COO-又は-O-が好ましい。
【0053】
R4、R5、R6、R8、R9、R11、R12及びR13で表される炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば上記式(1)においてR2及びR3として例示した炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
【0054】
R5及びR6又はR11及びR12が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造としては、例えばシクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等の単環の飽和脂環構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造等の多環の飽和脂環構造、シクロプロペン構造、シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造等の単環の不飽和脂環構造、ノルボルネン構造等の多環の不飽和脂環構造などが挙げられる。
【0055】
R10で表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、例えば上記式(1)においてR2及びR3として例示した1価の炭化水素基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0056】
R10がR7、R8及びR9がそれぞれ結合する炭素原子と共に構成する環員数4~20の不飽和脂環構造としては、例えば上述のR5及びR6又はR11及びR12が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造のうち不飽和脂環構造として例示した環員数4~20のものと同様の構造が挙げられる。
【0057】
R12及びR13が互いに合わせられR12が結合する炭素原子及びR13が結合する酸素原子と共に構成される環員数5~20の脂肪族複素環構造としては、例えばオキサシクロブタン構造、オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘキサン構造等の飽和酸素含有複素環構造、オキサシクロブテン構造、オキサシクロペンテン構造、オキサシクロヘキセン構造等の不飽和酸素含有複素環構造などが挙げられる。
【0058】
R4としては、鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基が好ましく、アルキル基又はアリールがより好ましく、メチル基、エチル基又はフェニル基がさらに好ましい。
【0059】
R5及びR6としては、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましく、メチル基又はエテニル基がさらに好ましい。また、R5及びR6としては、R5及びR6が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造であることも好ましく、この脂環構造としては、飽和脂環構造が好ましく、単環の飽和脂環構造又は多環の飽和脂環構造がより好ましく、シクロペンタン構造又はアダマンタン構造がさらに好ましい。
【0060】
R8及びR9としては、水素原子又は鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0061】
R10がR7、R8及びR9がそれぞれ結合する炭素原子と共に構成する環員数4~20の不飽和脂環構造としては、シクロヘキセン構造が好ましい。
【0062】
R11としては、水素原子が好ましい。
【0063】
R12及びR13としては、R12及びR13が互いに合わせられR12が結合する炭素原子及びR13が結合する酸素原子と共に構成される環員数5~20の脂肪族複素環構造であることが好ましく、この脂肪族複素環構造としては、飽和酸素含有複素環構造が好ましく、オキサシクロヘキサン構造がより好ましい。
【0064】
基(I-1)としては、例えば下記式(I-1-1)~(I-1-7)で表される基(以下、「基(I-1-1)~基(I-1-7)」ともいう)等が挙げられる。
【0065】
【0066】
上記式(I-1-1)~(I-1-7)中、*は、上記式(I-1)と同義である。
【0067】
基(I-2)としては、例えば下記式(I-2-1)で表される基(以下、「基(I-2-1)」ともいう)等が挙げられる。
【0068】
【0069】
上記式(I-2-1)中、*は、上記式(I-2)と同義である。
【0070】
基(I-3)としては、例えば下記式(I-3-1)で表される基(以下、「基(I-3-1)」ともいう)等が挙げられる。
【0071】
【0072】
上記式(I-3-1)中、*は、上記式(I-3)と同義である。
【0073】
基(I)としては、基(I-1)、基(I-2)が好ましく、基(I-1)がより好ましい。
【0074】
(基(II))
基(II)は、極性基を含む基である。極性基としては、ラクトン環構造又は環状カーボネート構造を含む基、加水分解によりヒドロキシ基を与える基、フッ素化アルコール基、ケトン基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0075】
基(II)としては、例えば下記式(II-1)で表される基(以下、「基(II-1)」ともいう)が挙げられる。
【0076】
【0077】
上記式(II)中、*は、上記式(1)におけるAr1又はAr2との結合部位を示す。Y2は、単結合、-COO-又は-O-である。R14は、上記極性基である。
【0078】
基(II-1)としては、例えば下記式(II-1-1)~(II-1-7)で表される基等が挙げられる。なお、下記式(II-1-1)で表される基は極性基が環状カーボネート構造を含む基である場合の具体例であり、下記式(II-1-2)で表される基は極性基がラクトン環構造を含む基である場合の具体例であり、下記式(II-1-3)で表される基は極性基が加水分解によりヒドロキシ基を与える基である場合の具体例であり、下記式(II-1-4)で表される基は極性基がフッ素化アルコール基である場合の具体例であり、下記式(II-1-5)で表される基は極性基がケトン基である場合の具体例であり、下記式(II-1-6)で表される基は極性基がアルコキシ基である場合の具体例である。
【0079】
【0080】
上記式(II-1-1)~(II-1-7)中、*は、上記式(II-1)と同義である。
【0081】
極性基としては、ラクトン環構造若しくは環状カーボネート構造を含む基、加水分解によりヒドロキシ基を与える基又はフッ素化アルコール基が好ましく、ラクトン環構造若しくは環状カーボネート構造を含む基又は加水分解によりヒドロキシ基を与える基がより好ましい。
【0082】
[A]重合体における構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、60モル%が好ましく、50モル%がより好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の露光光に対する感度、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0083】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、酸解離性基を含む構造単位である。
【0084】
[A]重合体が構造単位(II)を有する場合、この構造単位(II)が有する酸解離性基により[A]重合体は酸の作用により現像液への溶解性が変化する性質を発揮する。その結果、露光により[B]酸発生剤等から発生する酸の作用により酸解離性基が解離し、露光部における[A]重合体の現像液への溶解性が変化することにより、レジストパターンを形成することができる。
【0085】
構造単位(II)としては、例えば下記式(3)で表される構造単位(以下、「構造単位(II-1)」ともいう)等が挙げられる。なお、下記式(3)において、カルボキシ基に由来するオキシ酸素原子に結合する-C(RX)(RY)(RZ)が酸解離性基に該当する。
【0086】
【0087】
上記式(3)中、RTは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RXは、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。RY及びRZは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらの基が結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部である。L1は、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。
【0088】
RX、RY又はRZで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば上記式(1)においてR2及びR3として例示した炭化水素基と同様の基等が挙げられる。
【0089】
RY及びRZが互いに合わせられこれらの基が結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造としては、例えば上記式(2-1)においてR5及びR6が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造として例示したものと同様のもの等が挙げられる。
【0090】
L1で表される炭素数1~20の2価の有機基としては、例えば上記式(1)においてR2及びR3における炭素数1~20の有機基として例示した基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0091】
RTとしては、構造単位(II)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0092】
RXとしては、鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基が好ましく、アルキル基又はアリール基がより好ましい。芳香族炭化水素基はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0093】
RY及びRZとしては、鎖状炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基であるか、又はRY及びRZが互いに合わせられこれらの基が結合する炭素原子と共に飽和脂環構造を構成することが好ましい。
【0094】
L1としては、単結合又は2価の炭化水素基と2価のヘテロ原子含有基とを組み合わせた基が好ましい。
【0095】
構造単位(II)としては、下記式(3-1)~(3-8)で表される構造単位(以下、「構造単位(II-1)~(II-8)」ともいう)が好ましい。
【0096】
【0097】
上記式(3-1)~(3-8)中、RTは、上記式(3)と同義である。
【0098】
[A]重合体における構造単位(II)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の露光光に対する感度、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0099】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、フェノール性水酸基を含む構造単位である。「フェノール性水酸基」とは、ベンゼン環に直結するヒドロキシ基に限らず、芳香環に直結するヒドロキシ基全般を意味する。
【0100】
[A]重合体が構造単位(III)をさらに有することで、レジスト膜の親水性を高めることができ、現像液に対する溶解性を適度に調整することができ、加えて、レジストパターンの基板への密着性を向上させることができる。また、後述するレジストパターン形成方法における露光工程で照射する放射線として極端紫外線(EUV)又は電子線を用いる場合には、露光光に対する感度をより向上させることができる。したがって、当該感放射線性樹脂組成物は、極端紫外線露光用又は電子線露光用の感放射線性樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0101】
構造単位(III)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0102】
【0103】
上記式中、RL3は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0104】
[A]重合体が構造単位(III)を有する場合、構造単位(III)の含有割合の下限としては、[A]重合体における全構造単位に対して、20モル%が好ましく、30モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましい。
【0105】
[その他の構造単位]
その他の構造単位としては、例えばアルコール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位(IV)」ともいう)、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位(以下、「構造単位(V)」ともいう)等が挙げられる。
【0106】
(構造単位(IV))
構造単位(IV)は、アルコール性水酸基を含む構造単位である。構造単位(IV)をさらに有することで、現像液への溶解性をより一層適度に調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物の露光光に対する感度をより向上させることができる。
【0107】
構造単位(IV)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0108】
【0109】
上記式中、RL2は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0110】
(構造単位(V))
構造単位(V)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位である。構造単位(V)をさらに有することで、現像液への溶解性をより一層適度に調整することができる。
【0111】
構造単位(V)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0117】
[A]重合体がその他の構造単位を有する場合、その他の構造単位の含有割合の下限としては、[A]重合体における全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、70モル%が好ましく、60モル%がより好ましい。
【0118】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、2,000が好ましく、3,000がより好ましく、4,000がさらに好ましい。上記Mwの上限としては、10,000が好ましく、9,000がより好ましく、8,000がさらに好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、現像液に対する溶解性を適度に調整することができる。
【0119】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn、以下「分散度」ともいう)の上限としては、2.50が好ましく、2.00がより好ましく、1.75がさらに好ましい。上記比の下限としては、通常1.00であり、1.10が好ましく、1.20がより好ましい。[A]重合体のMw/Mnを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗工性をより向上させることができる。
【0120】
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
GPCカラム:東ソー(株)の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量 :100μL
カラム温度 :40℃
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0121】
当該感放射線性樹脂組成物における[A]重合体の含有割合の下限としては、[D]有機溶媒以外の全成分に対して、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、80質量%が特に好ましい。
【0122】
[A]重合体は、例えば各構造単位を与える単量体を公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0123】
[[B]酸発生剤]
[B]酸発生剤は、露光により酸を発生する物質である。露光光としては、例えば後述する当該レジストパターン形成方法の露光工程における露光光として例示するものと同様のもの等が挙げられる。露光により発生した酸により[A]重合体等が有する酸解離性基が解離してカルボキシ基、ヒドロキシ基等が生じ、露光部と非露光部との間でレジスト膜の現像液への溶解性に差異が生じることにより、レジストパターンを形成することができる。
【0124】
[B]酸発生剤から発生する酸としては、例えばスルホン酸、イミド酸などが挙げられる。
【0125】
[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0126】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0127】
[B]酸発生剤の具体例としては、例えば特開2009-134088号公報の段落[0080]~[0113]に記載されている化合物等が挙げられる。
【0128】
露光によりスルホン酸を発生する[B]酸発生剤としては、例えば下記式(4)で表される化合物(以下、「[B]化合物」ともいう)等が挙げられる。なお、以下において、下記式(4)におけるT+で表される1価の感放射線性オニウムカチオンを「オニウムカチオン」といい、このオニウムカチオン以外の部分を「アニオン」という。
【0129】
【0130】
上記式(4)中、Rp1は、環員数5以上の環構造を含む1価の基である。Rp2は、2価の連結基である。Rp3及びRp4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。Rp5及びRp6は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。np1は、0~10の整数である。np2は、0~10の整数である。np3は、0~10の整数である。但し、np1+np2+np3は、1以上30以下である。np1が2以上の場合、複数のRp2は互いに同一又は異なる。np2が2以上の場合、複数のRp3は互いに同一又は異なり、複数のRp4は互いに同一又は異なる。np3が2以上の場合、複数のRp5は互いに同一又は異なり、複数のRp6は互いに同一又は異なる。T+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
【0131】
Rp1で表される環員数5以上の環構造を含む1価の基としては、例えば環員数5以上の脂環構造を含む1価の基、環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香族炭素環構造を含む1価の基、環員数5以上の芳香族複素環構造を含む1価の基等が挙げられる。
【0132】
環員数5以上の脂環構造としては、例えばシクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロノナン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造等の単環の飽和脂環構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造等の単環の不飽和脂環構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環の飽和脂環構造、ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造等の多環の不飽和脂環構造などが挙げられる。
【0133】
環員数5以上の脂肪族複素環構造としては、例えばヘキサノラクトン構造、ノルボルナンラクトン構造等のラクトン構造、ヘキサノスルトン構造、ノルボルナンスルトン構造等のスルトン構造、オキサシクロヘプタン構造、オキサノルボルナン構造等の酸素原子含有複素環構造、アザシクロヘキサン構造、ジアザビシクロオクタン構造等の窒素原子含有複素環構造、チアシクロヘキサン構造、チアノルボルナン構造等の硫黄原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0134】
環員数6以上の芳香族炭素環構造としては、例えばベンゼン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、アントラセン構造などが挙げられる。
【0135】
環員数5以上の芳香族複素環構造としては、例えばフラン構造、ピラン構造、ベンゾフラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造等の窒素原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0136】
Rp1の環構造の環員数の下限としては、6が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。上記環員数の上限としては、15が好ましく、14がより好ましく、13がさらに好ましく、12が特に好ましい。上記環員数を上記範囲とすることで上述の酸の拡散長をさらに適度に短くすることができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより向上させることができ、プロセスウィンドウをより拡張させることができる。
【0137】
Rp1の環構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換基で置換されていてもよい。上記置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。これらの中でヒドロキシ基、フッ素原子、又はヨウ素原子が好ましい。
【0138】
Rp1としては、環員数5以上の脂環構造を含む1価の基、環員数6以上の芳香族炭素環構造を含む1価の基又は環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、多環の飽和脂環構造を含む1価の基、ヨウ素原子を含む環員数6以上の芳香族炭素環構造を含む1価の基、酸素原子含有複素環構造を含む1価の基又は硫黄原子含有複素環構造含む1価の基がより好ましい。
【0139】
Rp2で表される2価の連結基としては、例えばカルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、カルボニルオキシ基、スルホニル基、アルカンジイル基又は2価の脂環式飽和炭化水素基が好ましく、カルボニルオキシ基がより好ましい。
【0140】
Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のアルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4としては、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0141】
Rp5及びRp6で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp5及びRp6としては、フッ素原子又はフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0142】
np1としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
【0143】
np2としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
【0144】
np3の下限としては、1が好ましく、2がより好ましい。np3を1以上とすることで、酸の強さを高めることができる。np3の上限としては、4が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0145】
np1+np2+np3の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。np1+np2+np3の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。
【0146】
アニオンとしては、例えば下記式(4-1)~(4-13)で表されるアニオン等が挙げられる。
【0147】
【0148】
T+で表される1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、例えば下記式(r-a)~(r-c)で表される1価のカチオン(以下、「カチオン(r-a)~(r-c)」ともいう)等が挙げられる。
【0149】
【0150】
上記式(r-a)中、b1は、0~4の整数である。b1が1の場合、RB1は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b1が2以上の場合、複数のRB1は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。b2は、0~4の整数である。b2が1の場合、RB2は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b2が2以上の場合、複数のRB2は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。RB3及びRB4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらが互いに合わせられ単結合を表す。b3は、0~11の整数である。b3が1の場合、RB5は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b3が2以上の場合、複数のRB5は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。nb1は、0~3の整数である。
【0151】
上記式(r-b)中、b4は、0~9の整数である。b4が1の場合、RB6は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b4が2以上の場合、複数のRB6は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。b5は、0~10の整数である。b5が1の場合、RB7は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b5が2以上の場合、複数のRB7は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子若しくは炭素鎖と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。nb3は、0~3の整数である。RB8は、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。nb2は、0~2の整数である。
【0152】
上記式(r-c)中、b6は、0~5の整数である。b6が1の場合、RB9は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b6が2以上の場合、複数のRB9は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。b7は、0~5の整数である。b7が1の場合、RB10は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b7が2以上の場合、複数のRB10は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。
【0153】
RB1、RB2、RB3、RB4、RB5、RB6、RB7、RB9及びRB10で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記式(2)のR2又はR3として例示した1価の有機基として例示した基と同様の基などが挙げられる。
【0154】
RB8で表される2価の有機基としては、例えば上記式(2)のR2又はR3として例示した1価の有機基として例示した基から1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0155】
RB3及びRB4としては、水素原子又はこれらが互いに合わせられた単結合であることが好ましい。
【0156】
b1及びb2としては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。b3としては、0~4が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。nb1としては、0又は1が好ましい。
【0157】
b3が1以上である場合、RB5としては、シクロヘキシル基又はシクロヘキシルスルホニル基が好ましい。
【0158】
オニウムカチオンとしては、例えば下記式(r-a-1)~(r-a-9)、(r-b-1)及び(r-c-1)で表されるカチオン等が挙げられる。
【0159】
【0160】
[B]酸発生剤としては、上記例示したオニウムカチオンと、上記例示したアニオンとを適宜組み合わせた化合物を用いることができる。
【0161】
当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、80質量部が好ましく、70質量部がより好ましく、60質量部がさらに好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0162】
[[C]酸拡散制御剤]
[C]酸拡散制御剤は、露光により[B]酸発生剤等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を制御する効果を奏する。当該感放射線性樹脂組成物は[C]酸拡散制御剤を含有することにより、当該感放射線性樹脂組成物の露光光に対する感度、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上の[C]酸拡散制御剤を含有することができる。
【0163】
[C]酸拡散制御剤としては、例えば窒素原子含有化合物、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基等が挙げられる。
【0164】
窒素原子含有化合物としては、例えばトリペンチルアミン、トリオクチルアミン等のアミン化合物、ホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド基含有化合物、尿素、1,1-ジメチルウレア等のウレア化合物、ピリジン、N-(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン、N-t-ペンチルオキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン等の含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0165】
光崩壊性塩基としては、例えば露光により分解するオニウムカチオンと弱酸のアニオンとを含む化合物等が挙げられる。光崩壊性塩基は、露光部において、オニウムカチオンが分解して生じるプロトンと、弱酸のアニオンとから弱酸が発生するので、酸拡散制御性が低下する。
【0166】
上記露光により分解するオニウムカチオンとしては、例えば上記式(r-a)~(r-c)で表されるカチオンが挙げられる。中でも、トリフェニルスルホニウムカチオン(カチオン(r-a-1))、フェニルジベンゾチオフェニウムカチオン(カチオン(r-a-4))、ジフェニル(4-(シクロヘキシルスルホニル)フェニル)スルホニウムカチオン、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムカチオン(カチオン(r-a-2))、又はジフェニル(4-トリフルオロメチルフェニル)スルホニウムカチオン(カチオン(r-a-3))が好ましい。
【0167】
上記弱酸のアニオンとしては、例えば下記式で表されるアニオン等が挙げられる。
【0168】
【0169】
光崩壊性塩基としては、上記露光により分解するオニウムカチオンと、上記弱酸のアニオンとを適宜組み合わせた化合物を用いることができる。
【0170】
当該感放射線性樹脂組成物が[C]酸拡散制御剤を含有する場合、[C]酸拡散制御剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.5質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましく、10質量部がより一層好ましい。上記含有量の上限としては、45質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、35質量部がさらに好ましく、30質量部がより一層好ましい。[C]酸拡散制御剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0171】
[[D]有機溶媒]
当該感放射線性樹脂組成物は、通常、[D]有機溶媒を含有する。[D]有機溶媒は、少なくとも[A]重合体及び[B]酸発生剤、並びに必要に応じて含有される[C]酸拡散制御剤、[E]重合体及びその他の任意成分などを溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0172】
[D]有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上の[D]有機溶媒を含有することができる。
【0173】
アルコール系溶媒としては、例えば4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶媒、シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶媒、1,2-プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0174】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒、ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0175】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、2-ヘプタノン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノンなどが挙げられる。
【0176】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
【0177】
エステル系溶媒としては、例えば酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒、γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒、酢酸プロピレングリコール等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒、酢酸プロピレングリコール1-モノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0178】
炭化水素系溶媒としては、例えばn-ペンタン、n-ヘキサン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0179】
[D]有機溶媒としては、アルコール系溶媒、エステル系溶媒又はこれらの組合せが好ましく、炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒、モノカルボン酸エステル系溶媒、ラクトン系溶媒、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒又はこれらの組合せがより好ましく、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、酢酸プロピレングリコール1-モノメチルエーテル又はこれらの組合せがさらに好ましい。
【0180】
当該感放射線性樹脂組成物が[D]有機溶媒を含有する場合、[D]有機溶媒の含有割合の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物に含有される全成分に対して、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、80質量%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、99.9質量%が好ましく、99.5質量%が好ましく、99.0質量%がさらに好ましい。
【0181】
[[E]重合体]
[E]重合体は、[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きい重合体である。通常、ベース重合体となる重合体より疎水性が高い重合体は、レジスト膜表層に偏在化する傾向がある。[E]重合体は[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きいため、この疎水性に起因する特性により、レジスト膜表層に偏在化する傾向がある。その結果、当該感放射線性樹脂組成物が[E]重合体を含有する場合には、液浸露光時における酸発生剤、酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、当該感放射線性樹脂組成物が[E]重合体を含有する場合には、[E]重合体の疎水性に起因する特性により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角を所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、当該感放射線性樹脂組成物によれば、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が大きくなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。当該感放射線性樹脂組成物は、このように[E]重合体をさらに含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト膜を形成することができる。また、当該感放射線性樹脂組成物は、[E]重合体を含有することにより、欠陥の発生が抑制されたレジストパターンを形成することができる。
【0182】
[E]重合体のフッ素原子の質量含有率の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。上記質量含有率の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。フッ素原子の質量含有率を上記範囲とすることで、[E]重合体のレジスト膜における偏在化をより適度に調整することができる。なお、重合体のフッ素原子の質量含有率は、13C-NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0183】
[E]重合体におけるフッ素原子の含有形態は特に限定されず、[E]重合体の主鎖及び側鎖のいずれに結合していてもよい。[E]重合体におけるフッ素原子の含有形態としては、[E]重合体がフッ素原子を含む構造単位(以下、「構造単位(I’)」ともいう)を有することが好ましい。[E]重合体は、上記構造単位(I’)以外の構造単位をさらに有していてもよい。[E]重合体は、各構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上の[E]重合体を含有することができる。
【0184】
以下、[E]重合体が有する各構造単位について説明する。
【0185】
(構造単位(I’))
構造単位(I’)は、フッ素原子を含む構造単位である。構造単位(I’)としては、例えば下記式(f)で表される構造単位(以下、「構造単位(I’-1)」ともいう)等が挙げられる。
【0186】
【0187】
上記式(f)中、Rf1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。L2は、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SO2NH-、-CONH-又は-OCONH-である。Rf2は、フッ素原子を有する炭素数1~10の1価の有機基である。
【0188】
Rf1としては、構造単位(I’-1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0189】
L2としては、-COO-が好ましい。
【0190】
Rf2で表されるフッ素原子を有する炭素数1~10の1価の有機基としては、例えば上記式(1)におけるR1、R2又はR3で表される炭素数1~20の1価の有機基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0191】
Rf2としては、フッ素化鎖状炭化水素基又はこのフッ素化鎖状炭化水素基の一部又は全部の水素原子がヒドロキシ基で置換された基が好ましい。
【0192】
構造単位(I’-1)としては、下記式で表される構造単位が好ましい。
【0193】
【0194】
上記式中、Rf1は、上記式(f)と同義である。
【0195】
[E]重合体が構造単位(I’)を有する場合、構造単位(I’)の含有割合の下限としては、[E]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。構造単位(F)の含有割合を上記範囲とすることで、[E]重合体のフッ素原子の質量含有率をさらに適度に調整することができる。
【0196】
(その他の構造単位)
その他の構造単位としては、例えば酸解離性基を有する構造単位(以下、「構造単位(II’)」ともいう)等が挙げられる。構造単位(II’)としては、例えば上述の[A]重合体の構造単位(II)として例示したものと同様の構造単位等が挙げられる。
【0197】
[E]重合体が構造単位(II’)を有する場合、構造単位(II’)の含有割合の下限としては、[E]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。
【0198】
[E]重合体のGPCによるMwの下限としては、1,000が好ましく、2,000がより好ましく、3,000がさらに好ましく、4,000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、20,000がより好ましく、10,000がさらに好ましく、8,000が特に好ましい。
【0199】
[E]重合体のGPCによるMnに対するMwの比(Mw/Mn)の比の上限としては、5.00が好ましく、3.00がより好ましく、2.50がさらに好ましく、2.00が特に好ましい。上記比の下限としては、通常1.00であり、1.20が好ましい。
【0200】
[E]重合体は、[A]重合体と同様に、例えば各構造単位を与える単量体を公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0201】
当該感放射線性樹脂組成物が[E]重合体を含有する場合、[E]重合体の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.5質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、2質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。
【0202】
[その他の任意成分]
その他の任意成分としては、例えば界面活性剤等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物は、1種又は2種以上のその他の任意成分を含有していてもよい。
【0203】
[感放射線性樹脂組成物の調製方法]
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば[A]重合体及び[B]酸発生剤、並びに必要に応じて[C]酸拡散制御剤、[D]有機溶媒、[E]重合体及びその他の任意成分などを所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を孔径0.2μm以下のメンブランフィルターでろ過することにより調製することができる。
【0204】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、基板に直接又は間接に感放射線性樹脂組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。当該レジストパターン形成方法では、感放射線性樹脂組成物として上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いる。
【0205】
当該レジストパターン形成方法によれば、上記塗工工程において感放射線性樹脂組成物として上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いることにより、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。
【0206】
以下、当該レジストパターン形成方法が備える各工程について説明する。
【0207】
[塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に感放射線性樹脂組成物を塗工する。これにより基板に直接又は間接にレジスト膜が形成される。
【0208】
本工程では、感放射線性樹脂組成物として上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いる。
【0209】
基板としては、例えばシリコンウエハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウエハ等の従来公知のもの等が挙げられる。また、基板に間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する場合としては、例えば基板上に形成された反射防止膜上に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する場合などが挙げられる。このような反射防止膜としては、例えば特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜などが挙げられる。
【0210】
塗工方法としては、例えば回転塗工(スピンコーティング)、流延塗工、ロール塗工等が挙げられる。塗工した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるため、プリベーク(以下、「PB」ともいう。)を行ってもよい。PBの温度の下限としては、60℃が好ましく、80℃がより好ましい。上記温度の上限としては、150℃が好ましく、140℃がより好ましい。PBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましい。上記時間の下限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。形成されるレジスト膜の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmがより好ましい。上記平均厚みの上限としては、1,000nmが好ましく、500nmがより好ましい。
【0211】
[露光工程]
本工程では、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)露光光を照射することにより行う。露光光としては、目的とするパターンの線幅等に応じて、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV(波長13.5nm)又は電子線がより好ましく、ArFエキシマレーザー光、EUV又は電子線がさらに好ましい。
【0212】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(以下、「PEB」ともいう)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[B]化合物等から発生した酸による[A]重合体等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と非露光部とで現像液に対する溶解性の差異を増大させることができる。PEBの温度の下限としては、50℃が好ましく、80℃がより好ましく、100℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、180℃が好ましく、130℃がより好ましい。PEBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましく、30秒がさらに好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましく、100秒がさらに好ましい。
【0213】
[現像工程]
本工程では、上記露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像工程における現像方法は、アルカリ現像であっても、有機溶媒現像であってもよい。
【0214】
アルカリ現像の場合、現像に用いる現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、「TMAH」ともいう)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中で、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0215】
有機溶媒現像の場合、現像液としては、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、上記有機溶媒を含有する溶液等が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば上述の感放射線性樹脂組成物の[D]有機溶媒として例示した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒又はケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば水、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0216】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0217】
当該レジストパターン形成方法により形成されるパターンとしては、例えばラインアンドスペースパターン、ホールパターン等が挙げられる。
【実施例0218】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を下記に示す。
【0219】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により東ソー(株)のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本)を使用し、以下の条件により測定した。
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0220】
[構造単位の含有割合]
重合体における各構造単位の含有割合は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)の「JNM-Delta400」)を用いた13C-NMR分析により測定した。
【0221】
<[M]単量体の合成>
[M]単量体として下記式(M-1)~(M-28)で表される化合物(以下、「単量体(M-1)~(M-え)」ともいう)を下記の方法により合成した。
【0222】
【0223】
[合成例1]単量体(M-1)の合成
2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸50.00g、4-ジメチルアミノピリジン5.76g及び2-メチル-3-ブテン-3-オール42.2gを1Lのナスフラスコに量りとり、テトラヒドロフラン200mLに溶解させた。溶液を0℃に冷却し、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド55.6gのテトラヒドロフラン溶液100mLを滴下した後、室温で8時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出を行い、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記式(A)で表される化合物(以下、「中間体(A)」ともいう)を59.4g得た。中間体(A)の合成スキームを以下に示す。
【0224】
【0225】
p-ヒドロキシベンズアルデヒド12.29g及び中間体(A)28.2gを1Lナスフラスコに量りとり、N,N’-ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。溶液を0℃に冷却したのち、炭酸カリウム20.87gを30分かけて加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、塩化アンモニウム飽和水溶液を加え、酢酸エチルで抽出を行い、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記式(B)で表される化合物(以下、「中間体(B)」ともいう)を36.3g得た。中間体(B)の合成スキームを以下に示す。
【0226】
【0227】
亜鉛22.9gを500mLナスフラスコに量りとり、N,N’-ジメチルホルムアミド95mLに溶解させた。溶液を50℃に加温したのち、塩化アセチル0.74gを滴下し1時間撹拌した。その後、中間体(B)36.1gのジブロモメタン(24.6g)溶液を、70℃を超えないように滴下し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、塩化アンモニウム飽和水溶液を加え、酢酸エチルで抽出を行い、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、単量体(M-1)を23.7gで得た。単量体(M-1)の合成スキームを以下に示す。
【0228】
【0229】
[合成例2~22、26~27]単量体(M-2)~(M-22)、(M-26)~(M-27)の合成
前駆体を適宜変更したこと以外は合成例1と同様にして、単量体(M-2)~(M-22)、(M-26)~(M-27)を合成した。
【0230】
[合成例23]単量体(M-23)の合成
1,1’-チオビス(2-ナフトール)10.0g及びトリエチルアミン6.35gを500mLナスフラスコに量りとり、ジクロロメタン200mLと混合した。室温で攪拌した混合溶液に無水メタクリル酸6.35gを滴下し、室温でさらに3時間撹拌した。反応終了後、塩化アンモニウム飽和水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出を行い、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記式(C)で表される化合物(以下、「中間体(C)」ともいう)を11.5g得た。中間体(C)の合成スキームを以下に示す。
【0231】
【0232】
中間体(C)11.5gを500mLナスフラスコに量りとり、テトラヒドロフラン200mLに溶解させた。室温で攪拌した溶液に、ピリジン2.83g及び塩化アセチル2.81gをそれぞれ滴下し、室温でさらに6時間撹拌した。反応終了後、塩化アンモニウム飽和水溶液を加え、酢酸エチルで抽出を行い、減圧濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、単量体(M-23)を12.5g得た。単量体(M-23)の合成スキームを以下に示す。
【0233】
【0234】
[合成例24~25、28]単量体(M-24)~(M-25)、(M-28)の合成
前駆体を適宜変更したこと以外は合成例23と同様にして、単量体(M-24)~(M-25)、(M-28)を合成した。
【0235】
<[A]重合体及び[E]重合体の合成>
[A]重合体及び[E]重合体の合成において[M]単量体以外の単量体として下記式(M-29)~(M-55)で表される化合物(以下、「単量体(M-29)~(M-55)」ともいう)を用いた。なお、以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。
【0236】
【0237】
[合成例29]重合体(A-1)の合成
単量体(M-1)、単量体(M-44)及び単量体(M-46)をモル比率が20/35/45となるよう1-メトキシ-2-プロパノール200質量部に溶解した。次に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」ともいう)を4モル%添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器に1-メトキシ-2-プロパノール100質量部を加え、攪拌しながら85℃に加熱した。次に、上記で調製した単量体溶液を3時間かけて滴下し、その後さらに3時間85℃で加熱し、重合反応を合計6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を室温に冷却した。
【0238】
ヘキサン(重合溶液に対して500質量部)中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を重合溶液に対して100質量部のヘキサンで2回洗浄した後、ろ別し、1-メトキシ-2-プロパノール(300質量部)に溶解した。次に、メタノール(500質量部)、トリエチルアミン(50質量部)及び超純水(10質量部)を加え、撹拌しながら70℃で6時間加水分解反応を実施した。加水分解反応終了後、残溶媒を留去し、得られた固体をアセトン(100質量部)に溶解させた。500質量部の水中に滴下して樹脂を凝固させ、得られた固体をろ別した。50℃、12時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-1)を得た。
【0239】
重合体(A-1)のMwは5,500であり、Mw/Mnは1.44であった。また、13C-NMR分析の結果、重合体(A-1)における単量体(M-1)、(M-44)及び(M-46)に由来する各構造単位の含有割合はそれぞれ21モル%、33モル%及び46モル%であった。
【0240】
[合成例30~54、60~66]重合体(A-2)~(A-26)、(A-32)~(A-36)、(a-1)及び(a-2)の合成
下記表1に示す種類及び使用割合の単量体を用いたこと以外は合成例29と同様にして重合体(A-2)~(A-26)、(A-32)~(A-36)、(a-1)及び(a-2)を合成した。得られた各重合体のMw及びMw/Mn、並びに各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有割合を下記表1に併せて示す。
【0241】
[合成例55]重合体(A-27)の合成
単量体(M-1)、(M-29)及び(M-35)を、モル比率が35/20/45となるよう2-ブタノン200質量部に溶解した。次に開始剤としてAIBNを2モル%添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器に2-ブタノン100質量部を加え、30分窒素パージした。反応容器内を80℃とし、攪拌しながら、上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液をメタノール2,000質量部中に投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をメタノール400質量部で2回洗浄した後、ろ別し、60℃で15時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-27)を良好な収率で得た。
【0242】
重合体(A-27)のMwは6,000であり、Mw/Mnは1.44であった。また、13C-NMR分析の結果、重合体(A-27)における単量体(M-1)、(M-29)及び(M-35)に由来する各構造単位の含有割合はそれぞれ38モル%、16モル%及び46モル%であった。
【0243】
[合成例56~59]重合体(A-28)~(A-31)の合成
下記表1に示す種類及び使用割合の単量体を用いたこと以外は合成例55と同様にして重合体(A-28)~(A-31)を合成した。得られた各重合体のMw及びMw/Mn、並びに各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有割合を下記表1に併せて示す。
【0244】
下記表1中、「-」は該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0245】
【0246】
[合成例67]重合体(E-1)の合成
単量体(M-30)及び(M-54)をモル比率が45/55となるよう、2-ブタノン200質量部に溶解した。次に、開始剤としてAIBNを5モル%添加し、単量体溶液を調製した。一方、空の反応容器に2-ブタノン100質量部を加え、30分窒素パージした。反応容器内を80℃とし、攪拌しながら上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。溶媒をアセトニトリル400質量部に置換した後、ヘキサン100質量部を加えて撹拌しアセトニトリル層を回収する作業を3回繰り返した。溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換することで、重合体(E-1)の溶液を良好な収率で得た。
【0247】
重合体(E-1)のMwは5,600であり、Mw/Mnは1.69であった。また、13C-NMR分析の結果、重合体(E-1)における単量体(M-30)及び(M-54)に由来する各構造単位の含有割合はそれぞれ44モル%及び56モル%であった。
【0248】
[合成例68]重合体(E-2)の合成
下記表2に示す種類及び使用割合の単量体を用いたこと以外は合成例67と同様にして重合体(E-2)を合成した。得られた重合体(E-2)のMw及びMw/Mn、並びに重合体(E-2)における各単量体に由来する構造単位の含有割合を下記表2に併せて示す。
【0249】
【0250】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[B]酸発生剤、[C]酸拡散制御剤及び[D]有機溶媒を以下に示す。なお、以下の実施例及び比較例においては特に断りのない限り、質量部は使用した[A]重合体の質量を100質量部とした場合の値を意味する。
【0251】
[[B]酸発生剤]
[B]酸発生剤として下記式(B-1)~(B-13)で表される化合物(以下、「酸発生剤(B-1)~(B-13)」ともいう)を用いた。
【0252】
【0253】
[[C]酸拡散制御剤]
[C]酸拡散制御剤として下記式(C-1)~(C-8)で表される化合物(以下、「酸拡散制御剤(C-1)~(C-8)」ともいう)を用いた。
【0254】
【0255】
[[D]有機溶媒]
[D]有機溶媒として、以下の(D-1)~(D-4)を用いた。
(D-1):酢酸プロピレングリコール1-モノメチルエーテル
(D-2):乳酸エチル
(D-3):γ-ブチロラクトン
(D-4):プロピレングリコール1-モノメチルエーテル
【0256】
[実施例1]感放射線性樹脂組成物(J-1)の調製
[A]重合体としての(A-1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-4)45質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C-1)15質量部、[D]有機溶媒としての(D-1)4,280質量部及び(D-4)1,830質量部、並びに[E]重合体としての(E-1)3質量部を混合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより、感放射線性樹脂組成物(J-1)を調製した。
【0257】
[実施例2~36及び比較例1~2]感放射線性樹脂組成物(J-2)~(J-36)及び(CJ-1)~(CJ-2)の調製
下記表3に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物(J-2)~(J-36)及び(CJ-1)~(CJ-2)を調製した。
【0258】
【0259】
<レジストパターンの形成>
12インチのシリコンウエハ上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより平均厚さ105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に上記スピンコーターを使用して上記調製した感放射線性樹脂組成物を塗布し、130℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚さ55nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に対し、EUV露光装置(ASML社の「NXE3300」)を用い、NA=0.33、照明条件:Conventional s=0.89、マスク:imecDEFECT32FFR02にて露光した。露光後、120℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%TMAH水溶液を用いて上記レジスト膜をアルカリ現像し、現像後に水で洗浄し、さらに乾燥させることでポジ型のレジストパターン(32nmラインアンドスペースパターン)を形成した。
【0260】
<評価>
上記感放射線性樹脂組成物を用いて形成したレジストパターンについて、感度、LWR性能及びCDU性能を下記方法に従って評価した。その結果を下記表4に示す。なお、レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)の「CG-5000」)を用いた。
【0261】
[感度]
上記感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成において、32nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量をEop(単位:mJ/cm2)とした。感度は、Eopが35.0mJ/cm2以下の場合は「良好」と、35.0mJ/cm2を超える場合は「不良」と評価した。
【0262】
[LWR性能]
上記感度の評価で求めたEopの露光量を照射して32nmラインアンドスペースのパターンを形成するようにマスクサイズを調整して、レジストパターンを形成した。形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅のばらつきを計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、この3シグマ値をLWR(単位:nm)とした。LWRは、その値が小さいほど、ラインのがたつきが小さく良好であることを示す。LWR性能は、LWRが2.50nm以下の場合は「良好」と、2.50nmを超える場合は「不良」と評価した。
【0263】
[CDU性能]
上記感度の評価で求めたEopの露光量を照射して直径35nmホール、90nmピッチのパターンを形成するようにマスクサイズを調整して、レジストパターンを形成した。形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。500nm×500nmの範囲で測定した16点のホール径の平均値を上記範囲でのホール径平均値とした。ホール径平均値を任意の500nm×500nmの範囲で計500点測定し、その測定値の分布から1シグマ値を求め、これをCDU(単位:nm)とした。CDUは、その値が小さいほど、長周期でのホール径のばらつきが小さく良好であることを示す。CDU性能は、CDUが2.00nm以下の場合は「良好」と、2.00nmを超える場合は「不良」と評価した。
【0264】
【0265】
表4の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物ではいずれも、感度、LWR性能及びCDU性能が比較例の感放射線性樹脂組成物と比較して良好であった。
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能及びCDU性能に優れるレジストパターンを形成することができる。従って、当該感放射線性樹脂組成物及び当該レジストパターン形成方法は、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。