(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185592
(43)【公開日】2022-12-14
(54)【発明の名称】生体識別及び/又は生体認証のための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
G06V 40/40 20220101AFI20221207BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221207BHJP
【FI】
G06V40/40
G06T7/00 510B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090160
(22)【出願日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】2105798
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】519110386
【氏名又は名称】アイデミア・アイデンティティ・アンド・セキュリティー・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フーレ・ジョエル・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ボーデ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ティエボ・アラン
【テーマコード(参考)】
5B043
【Fターム(参考)】
5B043AA10
5B043CA05
5B043GA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不正の試みに対して堅牢である識別/認証のための方法、プログラム及び記憶媒体をデバイスを提供する。
【解決手段】方法は、身体領域の画像を得ること(S20)と、身体領域についてのトゥルースマップを得ることであって(S22)とを含む。、トゥルースマップは、身体領域の画像の部分のセットのうちのそれぞれの部分が真正の身体領域に属する確率に等しい値を、それぞれの部分に関連付ける。方法はさらに、トゥルースマップを使用して、身体領域の画像を参照生体データのグループと比較すること(S24)と、比較に応答して、身体領域の識別又は認証を有効又は無効にすること(S26)と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体識別又は生体認証のための方法であって、
身体領域の画像を得ること(S20)、
前記身体領域についてのトゥルースマップを得ることであって(S22)、前記トゥルースマップが、身体領域の前記画像の部分のセットのうちのそれぞれの部分が真正の身体領域に属する確率に等しい値を、前記それぞれの部分に関連付ける、得ること(S22)、
前記トゥルースマップを使用して、身体領域の前記画像を参照生体データのグループと比較すること(S24)、
前記比較に応答して、前記身体領域の前記識別又は前記認証を有効又は無効にすること(S26)
を含む方法。
【請求項2】
前記トゥルースマップを使用して、身体領域の前記画像を参照生体データのグループと比較すること(S24)が、
身体領域の前記画像の領域に属するデータであって、身体領域の前記画像の前記領域が前記トゥルースマップにおいて真正であると考えられる、データのみを考慮して、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとの間の第1のマッチングスコアを計算すること(S250)と、
第1の閾値に対する前記第1のマッチングスコアの前記値に基づいて、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとが一致するかどうかを判定すること(S252)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トゥルースマップを使用して、身体領域の前記画像を参照生体データのグループと比較すること(S24)が、
前記トゥルースマップにおいて前記データに関連付けられた前記値で前記データに重みを付けて、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとの間の第2のマッチングスコアを計算すること(S260)、
第2の閾値に対する前記第2のマッチングスコアの前記値に基づいて、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとが一致するかどうかを判定すること(S262)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トゥルースマップを使用して、身体領域の前記画像を参照生体データのグループと比較すること(S24)が、
前記トゥルースマップを使用せずに、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとの間の第3のマッチングスコアを計算すること(S240)と、
第3の閾値に対する前記第3のマッチングスコアの前記値に基づいて、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとが一致するかどうかを判定すること(S242)と、
身体領域の前記画像が参照生体データの前記グループと一致する場合、前記トゥルースマップを使用して前記一致を検証すること(S244)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記トゥルースマップを使用して前記一致を検証すること(S244)が、
身体領域の前記画像の領域に属するデータであって、身体領域の前記画像の前記領域が前記トゥルースマップにおいて真正であると考えられる、データのみを考慮して、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとの間の第4のマッチングスコアを計算することと、
第4の閾値に対する前記第4のマッチングスコアの前記値に基づいて、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとが一致するかどうかを判定することとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記トゥルースマップを使用して前記一致を検証すること(S244)が、
身体領域の前記画像の領域に属するデータであって、身体領域の前記画像の前記領域が前記トゥルースマップにおいて真正であると考えられる、データのみを考慮して、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとの間の第5のマッチングスコアを計算すること、
身体領域の前記画像の領域に属するデータであって、身体領域の前記画像の前記領域が前記トゥルースマップにおいて真正でないと考えられる、データのみを考慮して、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとの間の第6のマッチングスコアを計算すること、
前記第5のスコアと前記第6のスコアとの間の前記差の前記絶対値が第5の閾値よりも小さい場合、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとが一致すると判定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記トゥルースマップを使用して前記一致を検証すること(S244)が、
前記トゥルースマップにおいて前記データに関連付けられた前記値で前記データに重みを付けて、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとの間の第7のマッチングスコアを計算すること、
第6の閾値に対する前記第7のマッチングスコアの前記値に基づいて、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとが一致するかどうかを判定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記トゥルースマップを使用して、身体領域の前記画像を参照生体データのグループと比較すること(S24)が、局所的要素をマッチングすることを含み、前記トゥルースマップを使用して前記一致を検証すること(S244)が、
前記トゥルースマップにおいて真正であると考えられる一致するいくつかの局所的要素を判定することと、
前記数が第8の閾値よりも大きい場合、身体領域の前記画像と参照生体データの前記グループとが一致すると判定することとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
生体識別又は生体認証のためのデバイスであって、前記デバイスが、少なくとも1つのプロセッサを備え、前記少なくとも1つのプロセッサが、
身体領域の画像を得る(S20)、
前記身体領域についてのトゥルースマップであって、前記トゥルースマップが、身体領域の前記画像の部分のセットのうちのそれぞれの部分が真正の身体領域に属する確率に等しい値を、前記それぞれの部分に関連付ける、トゥルースマップを得る(S22)、
前記トゥルースマップを使用して、身体領域の前記画像を参照生体データのグループと比較する(S24)、
前記比較に応答して、前記身体領域の前記識別又は前記認証を有効又は無効にする(S26)
ように構成されている、デバイス。
【請求項10】
前記プログラムがプロセッサによって実行されたときに、前記プロセッサによって、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実装するための命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムが、前記プログラムがプロセッサによって実行されたときに、前記プロセッサによって、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実装するための命令を含むことを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体識別/生体認証の分野における不正の検出の分野に関する。少なくとも1つの実施形態は、生体識別及び/又は生体認証のための方法、並びにこのような方法を実装するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
顔、指紋又は掌紋、眼の虹彩の生体認識によって人を識別することは、建物又は機械へのアクセスを安全にすることを可能にする。このような技術は、借りられ得る、盗まれ得る、又は偽造され得るアクセスコード又はアクセスカードを不要にすることを可能にする。この技術の使用は、例えば2人の人が同一の指紋を有する確率が実質的にゼロである限り、セキュリティを強化することを可能にする。
【0003】
識別の場合、身体部位(例えば、指紋の場合、マニューシャなどの局所的要素)の画像から抽出された生体データは、いくつかの他の人のうちから人の身元を見出すために、データベースに含まれている参照生体データのセットと比較される。認証の場合、この抽出された生体データは、自身を提示する人が実際に、自身であると主張する人であることを検証するために、全く同じ人からの生体データと比較される。比較は、キャプチャされた画像がデータベースにおいて参照される人に属するか否か、又は人が実際に、自身であると主張する人であるかどうかを判定することを可能にする。
【0004】
一部の悪意のある個人は、識別(又は認証)デバイスを誤らせるために、スプーフィングを使用して、自身を不正に識別(又は認証)させようと試みる。実際に、3Dプリンタの出現で、種々の材料、例えば、プラスチック、樹脂などで偽の指又はマスクを作成することが可能である。塗料の適用及び/又はメイクアップときは、実際の顔と実質的に同一であるマスクを生成することを可能にする。したがって、キャプチャデバイスの前に存在する身体部位が真正であることを有効にすることが知られている。身体部位が実際に、自身であると主張する身体部位であり、スプーフィングでない場合、身体部位は、真正であると考えられる。したがって、ここでは、これは、キャプチャされた身体部位の真実性を有効にすることを含み、キャプチャされた身体部位の画像は、生体識別に役立つ。
【0005】
いくつかの知られている有効化方法は、特に、アーチファクトを不正の実施から識別することによって、画像を分析することに全体的に基づく。しかしながら、これらの方法は、注意深い不正に直面したときに、堅牢でない。
【0006】
身体部位の一連の画像をキャプチャし、物理的パラメータ、例えば、発汗、脈拍、酸素測定、又は指がキャプチャ面上に押し付けられたときに起こる白化を測定するための他の有効化方法が知られている。したがって、これらの方法は、識別/認証の不正な性質に関する決定を行うために、身体部位において測定された物理的パラメータを閾値と比較する。このような決定閾値は、調整するのが難しい。これは、劣化(例えば、表皮の表面劣化)が、当方法の性能を低減し得るためである。したがって、閾値は、真正の身体部位が劣化している(例えば、汚れている、傷ついている、など)場合、識別/認証を有効にするように調整されなければならない。しかしながら、このような状況で識別を有効にするために設定される閾値はまた、真正の身体部位と不正な身体部位とを組み合わせる取得を有効にする傾向があり、これは、システムの総体的なセキュリティを低減する。一方、閾値が、真正の身体部位と不正な身体部位とを組み合わせる取得を無効にするように調整されている場合、閾値はまた、真正の身体部位が劣化している場合、識別/認証を無効にすることを危険にさらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術のこれらの欠点を克服することが望ましい。真正であると考えられる身体部位上に存在する劣化が存在する場合、識別/認証を可能にしつつ、不正の試みに対して堅牢である識別/認証のための方法を提案することが特に望ましい。
【0008】
少なくとも1つの実施形態は、生体識別又は生体認証のための方法であって、
身体領域の画像を得ること、
当該身体領域についてのトゥルースマップを得ることであって、当該トゥルースマップが、身体領域の当該画像の部分のセットのうちのそれぞれの部分が真正の身体領域に属する確率に等しい値を、当該それぞれの部分に関連付ける、得ること、
当該トゥルースマップを使用して、身体領域の当該画像を参照生体データのグループと比較すること、
当該比較に応答して、当該身体領域の識別又は認証を有効又は無効にすること
を含む方法に関する。
【0009】
記載の方法は、有利には、個人が劣化を有する身体部位を有する場合でも、当該個人の識別/認証を可能にし、また、この識別/認証は、不正の試み、特に、真正の身体部位とスプーフィングとを組み合わせる不正の試みに対して堅牢である。
【0010】
一実施形態では、当該トゥルースマップを使用して、身体領域の当該画像を参照生体データのグループと比較することは、
身体領域の画像の領域に属するデータであって、身体領域の画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正であると考えられる、データのみを考慮して、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとの間の第1のマッチングスコアを計算することと、
第1の閾値に対する当該第1のマッチングスコアの値に基づいて、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとが一致するかどうかを判定することとを含む。
【0011】
一実施形態では、当該トゥルースマップを使用して、身体領域の当該画像を参照生体データのグループと比較することは、
トゥルースマップにおいてデータに関連付けられた値でデータに重みを付けて、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとの間の第2のマッチングスコアを計算すること、
第2の閾値に対する当該第2のマッチングスコアの値に基づいて、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとが一致するかどうかを判定することを含む。
【0012】
一実施形態では、当該トゥルースマップを使用して、身体領域の当該画像を参照生体データのグループと比較することは、
トゥルースマップを使用せずに、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとの間の第3のマッチングスコアを計算することと、
第3の閾値に対する当該第3のマッチングスコアの値に基づいて、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとが一致するかどうかを判定することと、
身体領域の当該画像が参照生体データの当該グループと一致する場合、当該トゥルースマップを使用して当該一致を検証することとを含む。
【0013】
一実施形態では、当該トゥルースマップを使用して当該一致を検証することは、
身体領域の画像の領域に属するデータであって、身体領域の画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正であると考えられる、データのみを考慮して、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとの間の第4のマッチングスコアを計算することと、
第4の閾値に対する当該第4のマッチングスコアの値に基づいて、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとが一致するかどうかを判定することとを含む。
【0014】
一実施形態では、当該トゥルースマップを使用して当該一致を検証することは、
身体領域の画像の領域に属するデータであって、身体領域の画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正であると考えられる、データのみを考慮して、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとの間の第5のマッチングスコアを計算すること、
身体領域の画像の領域に属するデータであって、身体領域の画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正でないと考えられる、データのみを考慮して、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとの間の第6のマッチングスコアを計算すること、
当該第5のスコアと当該第6のスコアとの間の差の絶対値が第5の閾値よりも小さい場合、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとが一致すると判定することを含む。
【0015】
一実施形態では、当該トゥルースマップを使用して当該一致を検証することは、
トゥルースマップにおいてデータに関連付けられた値でデータに重みを付けて、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとの間の第7のマッチングスコアを計算すること、
第6の閾値に対する当該第7のマッチングスコアの値に基づいて、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとが一致するかどうかを判定することを含む。
【0016】
一実施形態では、当該トゥルースマップを使用して、身体領域の当該画像を参照生体データのグループと比較することは、局所的要素をマッチングすることを含み、当該トゥルースマップを使用して当該一致を検証することは、
トゥルースマップにおいて真正であると考えられる一致するいくつかの局所的要素を判定することと、
当該数が第8の閾値よりも大きい場合、身体領域の当該画像と参照生体データの当該グループとが一致すると判定することとを含む。
【0017】
少なくとも1つの実施形態は、生体識別又は生体認証のためのデバイスであって、デバイスが、少なくとも1つのプロセッサを備え、少なくとも1つのプロセッサが、
身体領域の画像を得る、
当該身体領域についてのトゥルースマップであって、当該トゥルースマップが、身体領域の当該画像の部分のセットのうちのそれぞれの部分が真正の身体領域に属する確率に等しい値を、当該それぞれの部分に関連付ける、トゥルースマップを得る、
当該トゥルースマップを使用して、身体領域の当該画像を参照生体データのグループと比較する、
当該比較に応答して、当該身体領域の識別又は認証を有効又は無効にする
ように構成されている、デバイスに関する。
【0018】
少なくとも1つの実施形態は、当該プログラムがプロセッサによって実行されたときに、当該プロセッサによって、上記の実施形態のうちの1つに記載の方法を実装するための命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品に関する。
【0019】
少なくとも1つの実施形態は、コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、コンピュータプログラムが、当該プログラムがプロセッサによって実行されたときに、当該プロセッサによって、上記の実施形態のうちの1つに方法を実装するための命令を含むことを特徴とする記憶媒体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の上記の特徴、及び他の特徴は、例示的な実施形態の以下の説明を読むことにより、より明確に明らかになり、当該説明は、添付の図面を参照して提供されている。
【
図1】
図1は、スプーフィングで部分的に覆われた指紋を示す図である。
【
図2】
図2は、特定の実施形態による、識別又は認証を有効にするための方法を示す図である。
【
図3】
図3は、身体部位が指紋である場合の、特定の実施形態による、トゥルースマップを得るステップを詳細に示す図である。
【
図4】
図4は、第1の特定の実施形態による、身体領域の画像を参照生体データの少なくとも1つのグループと比較するステップを詳細に示す図である。
【
図5】
図5は、第2の特定の実施形態による、身体領域の画像を参照生体データの少なくとも1つのグループと比較するステップを詳細に示す図である。
【
図6】
図6は、第3の特定の実施形態による、身体領域の画像を参照生体データの少なくとも1つのグループと比較するステップを詳細に示す図である。
【
図7】
図7は、特定の実施形態による、識別又は認証のためのデバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
記載の実施形態では、「識別(identification)」という用語のみが使用される。しかしながら、記載の実施形態は、認証(authentication)に同一にあてはまる。したがって、参照生体データは、識別の場合、データベースに記憶されてもよく、又は代わりに、認証の場合、公文書(例えば、パスポート)において複製されてもよい。従来、データベースに記憶された参照生体データは、それらのそれぞれが特定の個人に属する身体部位の参照画像から事前に抽出されている。これらは、一般に、指紋におけるマニューシャなどの局所的要素である。参照生体データは1回のみ抽出されるため、参照画像の代わりに参照生体データを記憶することは、より少ない費用がかかる。更に、この参照生体データは、参照生体データがそれから抽出された参照画像よりも、参照生体データの記憶のためのメモリ空間を少なく必要とする。以下、参照生体データのグループは、所与の個人に属する身体部位の画像から抽出された生体データの全部として定義される。したがって、データベースは、生体データの(例えば、マニューシャの)複数のグループを含み、データのグループのそれぞれは、特定の個人に関連付けられている。生体データのグループは、生体データの少なくとも1つの項目を含む。
【0022】
図1は、スプーフィング12で部分的に覆われた指紋10を示す。スプーフィング12の目的は、識別デバイスを誤らせることである。スプーフィング12は、例えば、データベースに記憶された指紋又は公文書における指紋を複製する薄膜である。真正の指10に対応する指紋部分が、データベースから知られている指紋を複製しない場合、当該指紋部分の目的は、身体部位の真実性を有効にするためのデバイスを誤らせることである。
【0023】
識別及び識別の有効化は、従来は逐次適用される2つのステップであるため、
図1の指紋は、スプーフィングによる識別を可能にし、当該識別は、真正の指と一致する部分によって有効にされる。同じ方法が、真正の顔などの他の身体部位に適用されてもよく、真正の顔は、別の顔を複製するマスクによって部分的に覆われており、参照生体データのグループは、マスクから抽出されており、識別のためにデータベースに記憶されている。したがって、識別は、マスクによって可能であり、当該識別は、真正の顔に対応する部位によって有効にされる。
【0024】
図2は、特定の実施形態による、生体識別又は生体認証のための方法を示す。
【0025】
ステップS20中に、身体領域の画像が得られる。この画像は、カメラによって直接取得されてもよく、又は代わりに、接触式若しくは非接触式指紋センサなどの生体測定専用のセンサによって取得されてもよい。身体領域の画像はまた、例えば、「光干渉断層撮影」(Optical Coherence Tomography、OCT)又は超音波センサによって取得されたデータから間接的に得られてもよい。OCTは、干渉技術を使用する非接触式光学センサであり、これは、光散乱要素を3次元で撮像することを可能にする。本書の残りの部分において、様々な実施形態が、身体領域の2D画像について記載されている。しかしながら、異なる実施形態がまた、3次元画像、又はテクスチャ画像と3次元画像との組み合わせにあてはまる。例えば、距離マップ(zマップ)が、身体領域の画像ではなく、使用されてもよい。距離マップは、ピクセルのそれぞれの値がカメラに対するピクセルの距離を表す画像である。
【0026】
ステップS22中に、身体領域に関連付けられたトゥルースマップが得られる。したがって、トゥルースマップは、身体領域の画像の複数の部分のうちのそれぞれの部分の真正性(true nature)を表す値を、当該それぞれの部分に関連付ける。部分は、ピクセル又はピクセルのグループであり得る。特定の実施形態では、トゥルースマップは、身体領域の画像のそれぞれのピクセルの真正性を表す値を、当該それぞれのピクセルに関連付ける。
【0027】
トゥルースマップは、バイナリであり得、この場合、部分が真正の身体部位に属すると考えられる場合、関連付けられた値は、第1の値(例えば、0)に等しく、部分がスプーフィング又は模倣物に属すると考えられる場合、関連付けられた値は、第2の値(例えば、1)に等しい。別の変形例では、トゥルースマップは、ターナリであり得、すなわち、部分が真正の身体部位に属すると考えられる場合、関連付けられた値は、第1の値(例えば、0)に等しく、部分がスプーフィング又は模倣物に属すると考えられる場合、関連付けられた値は、第2の値(例えば、1)に等しく、不確実性が当該部分の性質に関して存在する場合、関連付けられた値は、第3の値(例えば、2)に等しい。別の変形例では、トゥルースマップは、それぞれの部分が真正の身体部位に属しスプーフィングでない確率を表す値を、当該それぞれの部分に関連付ける。
【0028】
図3は、身体部位が指紋である場合の、特定の実施形態による有効化方法のステップS22を詳細に示す。トゥルースマップは、例えば、IEEE Transaction on information Forensics and securityにおいて2018年に発行された「Fingerprint spoof buster: Use of minutiae-centered patches」と題するChughらによる文献に記載の方法を適用することによって得られる。提案された方法は、MobileNetとの名称で知られている「畳み込みニューラルネットワーク」(Convolutional Neural Network、CNN)タイプのニューラルネットワークを使用する。指紋は、1つのマニューシャの周囲の1パッチごとのスコアを得るために、予め訓練されたニューラルネットワークの入力、すなわち、それについて重みが知られているニューラルネットワークの入力において導入され、当該スコアは、当該パッチが真正の指に属する確率を表す。マニューシャは、指紋隆線における連続性変化(continuity change)(例えば、分岐点又は線の端点)において位置する特定の点である。
【0029】
ステップS220中に、k個のマニューシャが、指紋から抽出され、マニューシャのそれぞれは、パラメータ(例えば、空間座標、配向など)のセットによって表され、kは正の整数である。マニューシャの抽出は、概して、可能な限り多くの有用な情報を際立たせるために画像をフィルタリングすること(例えば、コントラストを増加させること、ノイズを低減すること)、マニューシャがそこから抽出される白黒画像を得るための、フィルタリングされた画像の骨格化(skeletonization)を含む。
【0030】
ステップS222中に、k個の局所的パッチが、抽出され、パッチのそれぞれは、k個のマニューシャのうちの1つを中心とするピクセルのブロック(例えば、136×136個のピクセル)である。
【0031】
ステップS224中に、パッチのそれぞれは、パッチがそれを中心とするマニューシャに関連付けられた配向に基づいて、回転によって位置合わせされる。位置合わせ後、サブパッチと称されるより小さいパッチ(例えば、サイズが96×96個のピクセル)は、位置合わせされたパッチから抽出される。
【0032】
ステップS226中に、抽出されたk個のパッチは、パッチのそれぞれについてのトゥルーススコアを得るために、訓練されたニューラルネットワークの入力において提供される。トゥルースマップは、例えば、パッチのスコアの値を、パッチのピクセルのそれぞれに関連付ける。
【0033】
身体部位が顔である場合、トゥルースマップは、例えば、国際公開第2014/198847号に記載の方法を適用することによって得られる。
【0034】
顔の表面は、スティップリングを当該表面上に生成するように照明される。このために、表面は、偏光方向に偏光し1cm以上のコヒーレンスを有する入射コヒーレントストリームによって照明される。次いで、スティップリングの画像は、表面上で反射され表面によって散乱するストリームをキャプチャすることによって得られる。スティップリングを表す少なくとも1つの基準(例えば、強度の標準偏差)の値は、得られた画像から計算される。このようにして計算された値は、真正の顔についての許容参照値の範囲と比較される。計算された値が当該範囲に属する場合、顔は真正の顔であると考えられ、そうでない場合、顔は、スプーフィングであると考えられる。例えば、画像の強度の標準偏差が予想範囲外である場合、顔は真正の顔であると考えられない。
【0035】
トゥルースマップについての局所値を得るために、画像は、ピクセルのブロックへと分割され、少なくとも1つの代表的な基準の値が、ピクセルの1ブロックごとに計算される。したがって、それぞれのブロックが真正の顔に属するかどうか否かを示す決定は、当該それぞれのブロックについて行われ得る。この場合、トゥルースマップはバイナリである。
【0036】
代替的に、画像のそれぞれのピクセルについて、このピクセルの近傍が、このピクセルに関連付けられた基準の値を計算するために考えられる。
【0037】
変形実施形態では、トゥルースマップは、例えば、IEEE Transactions on Information Forensics and Security,16,1143~1157において2020年に発行された「Look Locally Infer Globally: A Generalizable Face Anti-Spoofing Approach」と題するDebらによる文献に記載の方法を適用することによって得られる。この方法は、畳み込みニューラルネットワークによって顔の画像から構築されたトゥルースマップを得ることを可能にする。
【0038】
身体部位が虹彩である場合、トゥルースマップは、例えば、仏国特許出願公開第3053500号に記載の方法を適用することによって、可視スペクトルにおいてキャプチャされた虹彩の画像及び赤外スペクトルにおいてキャプチャされた虹彩の画像から得られる。トゥルースマップについての局所値を得るために、画像は、ピクセルのブロックへと分割され、値は、1ブロックごとに計算される。したがって、それぞれのブロックが真正の虹彩に属するか否かを示す決定は、当該それぞれのブロックについて行われ得る。代替的に、画像のそれぞれのピクセルについて、このピクセルの近傍が、このピクセルに関連付けられた基準の値を計算するために考えられる。この場合、トゥルースマップはバイナリである。
【0039】
再び
図2を参照すると、ステップS24中に、ステップS20において得られた身体領域の画像は、ステップS22において得られたトゥルースマップを考慮して、参照生体データの少なくとも1つの現在のグループと比較される。参照生体データは、例えば、データベースに記憶されている、又は公文書(例えば、パスポート)において複製されている。比較は、ステップS20において得られた画像が、データベースにおいて参照される人に属するか否か(識別)、又は、人が実際に、自身であると主張する人であるかどうか(認証)を判定することを可能にする。比較は、概して、ステップS20において得られた身体領域の画像から抽出された生体データと参照生体データとの間の一致を表すスコアの計算、及びこのスコアと閾値との比較を含む。一致を表すスコアの計算は、例えば、画像内の局所的要素(例えば、指紋画像の場合、マニューシャなど)のマッチングを含む。ステップS20において得られた身体領域の画像が、参照生体データの現在のグループと一致する(例えば、計算されたスコアが閾値よりも大きい)場合、ステップS26中に、識別は有効にされ、そうでない場合、識別は無効にされる。識別が無効にされる場合、アラームが、不正の試みを示すためにトリガされてもよい(例えば、可視アラーム又は可聴アラームの放出)。
【0040】
生体データの複数のグループを有するデータベースの場合、特定の個人に対応するグループのそれぞれで、ステップS20において得られた身体領域の画像が参照生体データの現在のグループと一致しない場合、ステップS24は、参照生体データの全てのグループが、ステップS20において得られた領域の画像と比較されるまで、又はステップS20において得られた身体領域の画像と一致する参照生体データのグループ、したがって個人が見出されるまで、別の個人に属する参照生体データの新しいグループで繰り返される。
【0041】
図4は、特定の実施形態による有効化方法のステップS24を詳細に示す。
【0042】
ステップS240中に、ステップS20において得られた身体領域の画像と参照生体データの少なくとも1つの現在のグループとの間のマッチングスコアS1は、トゥルース画像を使用せずに計算される。スコアのこの計算は、例えば、画像内の局所的要素(例えば、指紋画像の場合、マニューシャなど)のマッチングと、これらの局所的要素間の一致、例えば、類似性を表すスコアの計算とを含む。以下、このスコアは、マッチングスコアと称される。このマッチングスコアから、ステップS20において得られた身体領域の画像が参照生体データの現在のグループと一致するか否かが推測される。
【0043】
したがって、ステップS242中に、方法は、身体領域の当該画像と参照生体データの現在のグループとが一致するかどうかを、閾値に対する当該マッチングスコアの値に基づいて判定する。
【0044】
ステップS240及びステップS242は、当身体部位に依存する。
【0045】
実装のこのモードは、トゥルースマップを考慮しない従来技術からの生体比較アルゴリズムを使用して、マッチングスコアS1を計算することを可能にし、したがって、ステップS240及びステップS242を実施するために既存のシステムを使用することを可能にする。これは、参照生体データの多くのグループを含むシステムについて特に有利であり、このようなシステムは、好適な生体比較アルゴリズムを使用する。
【0046】
指紋の特定の場合、マッチングスコアの計算は、特定の点、例えば、マニューシャをマッチングすることを含む。マニューシャのそれぞれは、パラメータ(例えば、座標、配向など)のセットによって表される。例えば、正しく位置する15~20個のマニューシャでは、数百万個の例のうちから指紋を識別することが可能である。変形実施形態では、マニューシャに加えて又はマニューシャの代わりに、例えば紋の全般的なパターンなどの他の情報、又は指紋隆線の形状などより複雑な情報が使用される。マニューシャのパラメータを有するマニューシャの抽出は、概して、可能な限り多くの有用な情報を際立たせるために画像をフィルタリングすること(例えば、コントラストを増加させること、ノイズを低減すること)、マニューシャがそこから抽出される白黒画像を得るためにフィルタリングされた画像の骨格化を含む。ステップS20において得られた指紋が、人Pについての参照マニューシャのグループがデータベースに記憶されている人Pに属するかどうかを判定するために、ステップS20において得られた指紋に関連付けられたマニューシャは、データベースに記憶された参照マニューシャのグループと比較される。指紋に関連付けられたマニューシャは、散乱図を定義する。したがって、2つの指紋間の比較は、実質的に、2つの散乱図間の比較である。マッチングスコアは、これらの2つの散乱図が重ね合わされている程度を推定するスコアである。2つの散乱図が類似する場合、スコアは高く、すなわち閾値TH1よりも大きく、そうでない場合、スコアは低い。スコアが高い場合、指紋は類似する、すなわち、指紋は一致し、これから、指紋が同じ個人Pに属すると結論され得る。
【0047】
マニューシャの代替として、他の特徴点が使用されてもよい。文献仏国特許出願公開第3037422号は、局所的記述子に関連付けられた対象の点を使用することを提案する。対象の点は、画像の極限値であり得、記述子は、SIFT、SURF、Orb、Kaze、Aka-ze、Bliskなどから選択され得る。2つの画像の比較は、記述子が対で一致し点の位置への幾何学的制約が従われているように、ステップS20において得られた画像から抽出された対象の点のグループと、対象の参照点のグループとを一緒にすることから成る。マニューシャと同様に、比較は、散乱図をマッチングすることから成る。したがって、本発明は、同一に適用される。
【0048】
顔の特定の場合、マッチングスコアの計算は、記述子ベクトルを判定することを含む。したがって、記述子は、ステップS20において得られた顔の画像から、ベクトルの形態で抽出される。顔認識は、顔認識が顔の要素(目、鼻など)の形状及び測定値を使用するときに、2次元で実施されてもよく、又は、顔のいくつかの角度(正面、横顔、4分の3など)が写真若しくはビデオ録画からモデルを構成するために使用されるときに、顔認識は、3次元で実施されてもよい。他の実施形態では、主成分分析は、このような記述子ベクトルを顔の画像から抽出することを可能にする。変形実施形態では、ステップS20において得られた画像内の顔は、例えば、2つの眼の位置を使用して、中心転換及び正規化される。中心転換及び正規化された顔を有する画像は、その後、当該記述子ベクトルを出力として提供する事前訓練されたニューラルネットワークに、入力として導入される。
【0049】
ステップS20において得られた顔の画像が、その人についての生体データのグループがデータベースに記憶されている人に属するかどうかを判定するために、ステップS20において得られた顔の画像に関連付けられた記述子のベクトルVは、データベースに記憶された記述子の参照ベクトルと比較される。マッチングスコアは、これらの2つのベクトルが類似する程度を推定するスコアである。マッチングスコアは、例えば、2つのベクトルのスカラー積である(スカラー積は、必要な場合、事前に正規化され得る)。2つのベクトルが類似する場合、スコアは高く/1に近く、すなわち閾値TH2よりも大きく、そうでない場合、スコアは低い。スコアが1に近い場合、顔は類似する、すなわち、顔は一致し、これから、顔が同じ個人に属すると結論され得る。
【0050】
虹彩の特定の場合では、比較は、局所的要素、この例では、虹彩の円環又は円環の部分をマッチングすることを含む。仏国特許出願公開第3037422号には、このようなマッチング方法が記載されている。方法は、
虹彩のテクスチャを含む領域を分離し、関連付けられたマスクを判定するために、眼の画像をセグメント化するステップ、
虹彩テクスチャを含む当該領域及び当該マスクを、N2個の同心円環へと分割するステップ、
直交座標の、虹彩のテクスチャを含む当該領域及び当該マスクを、極座標へと正規化するステップ、
虹彩のテクスチャを含む当該領域をコード化するN2*P*Fに等しいサイズのバイナリ虹彩コードICと、関連付けられたマスクをコード化するN2*P*Fに等しいサイズのバイナリマスクコードIMとを判定するステップであって、当該コードが、円環のそれぞれについて、F個のガボールフィルタをP個の位置からのそれぞれの位置において適用することによって判定される、判定するステップ、
取得された画像と参照生体データとの間のマッチング距離DMを最小にするように、取得された画像の虹彩の少なくとも1つの円環を、参照虹彩の円環と、例えば、Viterbiアルゴリズムでマッチングするステップであって、当該マッチング距離が、マッチング及び取得された画像からの虹彩の当該円環のそれぞれと、マッチング及び取得された画像からの虹彩の当該円環のそれぞれと一致する参照虹彩の円環との間の距離の合計を計算することによって、判定された虹彩コード、記憶された参照虹彩コード、及び関連付けられたマスクコードから得られる、マッチングするステップを含む。次いで、マッチングスコアS1は、計算されたマッチング距離の逆数に等しい、又は、マッチングスコアは(1-DM)に等しい。
【0051】
虹彩が類似する場合、マッチングスコアは高く、すなわち閾値TH3よりも大きく、そうでない場合、スコアは低い。スコアが高い場合、虹彩は類似する、すなわち、虹彩は一致し、これから、虹彩が同じ個人に属すると結論され得る。
【0052】
再び
図4を参照すると、参照生体データの少なくとも1つのグループが身体領域の画像と一致する場合(ステップS242)、方法は、ステップS244に続き、そうでない場合、得られた身体領域は、参照生体データのいずれのグループにも一致しないため、識別は有効にされない(26-2)。識別が有効にされない場合、アラームが、不正の試みを示すためにトリガされてもよい(例えば、可視アラーム又は可聴アラームの放出)。
【0053】
ステップS244において、ステップS242において実施された識別は、検証される。このために、トゥルースマップによって提供された情報は、識別を有効又は無効にするために使用される。
【0054】
第1の実施形態では、新しいマッチングスコアS2は、ステップS240と同じ方法であるが、画像の領域に属するデータであって、画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正であると考えられる、データのみを考慮して、計算される。参照生体データのグループは既に識別されているので、この追加のステップは、計算能力の点で比較的安価である。トゥルースマップが、それぞれの画像部分が真正の身体部位に属しスプーフィングに属さない確率を表す値を、当該それぞれの部分に関連付ける場合、真正であると考えられる、画像の領域を示すために、これは、閾値処理され得る。使用される閾値は、新しいマッチングスコアの計算において、それについてある不確実性(0.5に近い確率)がある画像の領域を考慮するために選択される。例えば、閾値は0.6に等しい。
【0055】
この新しいマッチングスコアS2は、例えば、ステップS240において使用される閾値と同じ閾値と等しい閾値、又は異なる閾値、例えば、わずかにより低い閾値と比較される。例えば、指紋の場合、真正であると考えられるパッチに属するマニューシャのみが、この新しいマッチングスコアS2の計算において考慮される。この新しいマッチングスコアS2が閾値TH1’よりも大きい場合、識別は有効にされ(S26-1)、そうでない場合、識別は無効にされる(S26-2)。識別が無効にされる場合、アラーム(例えば、可視信号又は可聴信号)が、不正の試みを示すためにトリガされてもよい(例えば、可視アラーム又は可聴アラームの放出)。実際に、不正の場合、
図1に示すように、紋の真正の部位は、参照生体データと一致しない。一実施形態では、TH1’は、TH1に等しい。変形例では、TH1’はTH1よりもわずかに小さい。例えば、TH1’=α*TH1であり、α=0.95である。
【0056】
変形実施形態では、新しいマッチングスコアS3は、スコアS2と同じ方法であるが、画像の領域に属するピクセルであって、画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正でないと考えられる、ピクセルのみを考慮して、得られる。S1がTH1よりも大きく、S2がTH1’よりも小さく、S3が閾値TH1’’よりも大きい場合、識別は無効にされ、アラームがトリガされてもよい。
【0057】
S1がTH1よりも大きく、S2がTH1’よりも小さく、S3がTH1’’よりも小さい場合、識別は、システムに必要とされるセキュリティのレベルに依存して、有効又は無効にされる。例えば、識別は、標準的なセキュリティアクセスチェックの事象において有効にされ、高セキュリティゾーンにおけるチェックの事象、又は大きな合計の支払いのためのチェックの事象において無効にされる。一実施形態では、TH1’’は、TH1に等しい。変形例では、TH1’’はTH1よりもわずかに小さい。例えば、TH1’’=β*TH1であり、β=0.98である。
【0058】
顔の場合、新しい記述子ベクトルは、画像の領域に属するピクセルであって、画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正であると考えられる、ピクセルのみを考慮して、ステップS20において得られた画像について計算される。この新しいベクトルは、ステップS240と同じ方法で、参照生体データのグループのベクトルと比較される。したがって、新しいマッチングスコアS2が得られる。この新しいマッチングスコアS2が閾値TH2’よりも大きい場合、識別は有効にされ(S26-1)、そうでない場合、識別は無効にされる(S26-2)。識別が無効にされる場合、アラーム(例えば、可視信号又は可聴信号)が、不正の試みを示すためにトリガされてもよい(例えば、可視アラーム又は可聴アラームの放出)。一実施形態では、TH2’は、TH2に等しい。変形例では、TH2’は、TH2よりもわずかに小さい。例えば、TH2’=α*TH2であり、α=0.95である。
【0059】
変形実施形態では、新しいマッチングスコアS3は、スコアS2と同じ方法であるが、画像の領域に属するピクセルであって、画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正でないと考えられる、ピクセルのみを考慮して、得られる。S1がTH2よりも大きく、S2がTH2’よりも小さく、S3が閾値TH2’’よりも大きい場合、識別は無効にされ、アラームがトリガされてもよい。
【0060】
S1がTH2よりも大きく、S2がTH2’よりも小さく、S3がTH2’’よりも小さい場合、識別は、システムに必要とされるセキュリティのレベルに依存して、有効又は無効にされる。例えば、識別は、標準的なセキュリティアクセスチェックの事象において有効にされ、高セキュリティゾーンにおけるチェックの事象、又は大きな合計の支払いのためのチェックの事象において無効にされる。一実施形態では、TH2’’は、TH2に等しい。変形例では、TH2’’はTH2よりもわずかに小さい。例えば、TH2’’=β*TH2であり、β=0.98である。
【0061】
虹彩の場合、バイナリコードを得るために適用される同じ幾何学的変換は、バイナリコードのそれぞれについての真理値を得るためにトゥルースマップに適用される。閾値、例えば0.5よりも大きい真理値を有するこれらのバイナリコードのみが、新しいマッチングスコアS2の計算において考慮される。この新しいスコアS2が閾値TH3’よりも大きい場合、識別は有効にされ(S26-1)、そうでない場合、識別は無効にされる(S26-2)。識別が無効にされる場合、アラーム(例えば、可視信号又は可聴信号)が、不正の試みを示すためにトリガされてもよい(例えば、可視アラーム又は可聴アラームの放出)。一実施形態では、TH3’は、TH3に等しい。変形例では、TH3’はTH3よりもわずかに小さい。例えば、TH3’=α*TH3であり、α=0.95である。
【0062】
変形実施形態では、新しいマッチングスコアS3は、スコアS2と同じ方法であるが、画像の領域に属するピクセルであって、画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正でないと考えられる、ピクセルのみを考慮して、得られる。S1がTH3よりも大きく、S2がTH3’よりも小さく、S3が閾値TH3’’よりも大きい場合、識別は無効にされ、アラームがトリガされてもよい。
【0063】
S1がTH3よりも大きく、S2がTH3’よりも小さく、S3がTH3’’よりも小さい場合、識別は、システムに必要とされるセキュリティのレベルに依存して、有効又は無効にされる。例えば、識別は、標準的なセキュリティアクセスチェックの事象において有効にされ、高セキュリティゾーンにおけるチェックの事象、又は大きな合計の支払いのためのチェックの事象において無効にされる。一実施形態では、TH3’’は、TH3に等しい。変形例では、TH3’’はTH3よりわずかに小さい。例えば、TH3’’=β*TH3であり、β=0.98である。
【0064】
第2の実施形態では、新しいマッチングスコアS4は、ステップS242と同じ方法で、全てのデータを考慮するが、トゥルースマップにおいてデータに関連付けられた値でデータに重みを付けて、計算される。例えば、指紋の場合、スコアは、より大きい重要度を真正の身体領域に属する点(例えば、マニューシャ)に与えることによって計算される。マニューシャのそれぞれに関連付けられたスコアには、例えば、真正である確率に基づいて、増加関数、例えばシグモイドで重みが付けられる。
【0065】
例えば、
【数1】
であり、式中、NbMinは、マニューシャの数であり、ScCoor(n)は、指数nの所与のマニューシャについて計算された局所的マッチングスコアであり、ProbaVrai(n)は、指数nのマニューシャが真正の領域に属する確率であり、ProbaNeutreは、例えば、0.6に等しい。
【0066】
この新しいスコアが閾値(例えば、TH1)よりも大きい場合、識別は有効にされ(S26-1)、そうでない場合、識別は無効にされ(S26-2)、適切な場合、アラーム(例えば、可視信号又は可聴信号)が、不正の試みを示すためにトリガされてもよい(例えば、可視アラーム又は可聴アラームの放出)。
【0067】
第3の実施形態では、2つの新しいスコアが計算され、1つは、真正であると考えられるデータのみを考慮し、1つは、真正でないと考えられるデータのみを考慮する。これらの2つのスコアが非常に異なる場合、例えば、2つのスコアの差の絶対値が閾値よりも大きい場合、識別は無効にされる。トゥルースマップがターナリである場合、不確実なピクセルは考慮されない、又は両方の比較について考慮される。この実施形態は、真正であるとラベル付けされた表面、及び真正でないとラベル付けされた表面が、最小のサイズを有するときに、例えば、全表面積の少なくとも20%が、真正であると考えられ、全表面積の少なくとも20%が真正でないと考えられるときに、優先的に使用される。
【0068】
例えば、顔の場合、第1の記述子ベクトルは、画像の領域に属するピクセルであって、画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正であると考えられる、ピクセルのみを考慮して、計算される。第2の記述子ベクトルは、画像の領域に属するピクセルであって、画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正でないと考えられる、ピクセルのみを考慮して、計算される。次いで、2つの記述子ベクトルは、互いに比較される。2つの記述子ベクトルが非常に異なる場合、例えば、2つのベクトル間のスカラー積が閾値よりも大きい場合、識別は無効にされ(S26-2)、そうでない場合、識別は有効にされる(S26-1)。識別が無効にされる場合、アラーム(例えば、可視信号又は可聴信号)が、不正の試みを示すためにトリガされてもよい(例えば、可視アラーム又は可聴アラームの放出)。
【0069】
第4の実施形態では、局所的要素からのマッチングの場合、例えば、マニューシャタイプの点のマッチングの場合、真正であると考えられる一致する点の数、例えば真正のパッチに属すると考えられる一致する点の数が判定される。この数が閾値よりも大きい場合、識別は有効にされ、そうでない場合、識別は無効にされる。識別が無効にされる場合、アラーム(例えば、可視信号又は可聴信号)が、不正の試みを示すためにトリガされてもよい(例えば、可視アラーム又は可聴アラームの放出)。
【0070】
変形実施形態では、参照生体データの新しいグループがデータベースに記憶されるたびに、関連付けられたトゥルースマップがまた、記憶される。マッチングスコアには、一致する要素に関連付けられた真理値の積によって重みが付けられる。したがって、データの2つの真正の項目間の関連付けは、真正であると考えられ、データの2つの項目のうちの少なくとも1つが真正でないと考えられる関連付けは、真正でないと考えられる。
【0071】
別の実施形態では、ステップS240及びステップS244は、1つの同じステップで実施される。したがって、トゥルースマップは、ステップS240中に、マッチングスコアの計算に重みを付けるために使用される。
【0072】
記載の方法は、不正の試みに対して堅牢である。実際に、トゥルースに関する情報は、初回又は2回目のいずれかからのマッチングスコアの計算において考慮されるため、不正の試みが検出される。方法は、有利には、使用されている身体部位が劣化している場合でも、個人を識別することを可能にする。実際に、不正に対して堅牢である従来の方法は、身体部位が劣化している場合、識別を無効にする傾向があるが、本方法は、不正に対して堅牢でありつつ、身体部位が劣化している場合、身体部位がトゥルースマップにおいて真正であると識別されることによって、識別を有効にする。
【0073】
図5は、別の特定の実施形態による有効化方法のステップS24を詳細に示す。
【0074】
ステップS250中に、ステップS20において得られた身体領域の画像と現在の参照生体データの少なくとも1つのグループとの間のマッチングスコアは、身体領域の画像の領域に属するデータであって、身体領域の画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正であると考えられる、データのみを考慮して、計算される。このマッチングスコアから、ステップS20において得られた身体領域の画像が参照生体データの現在のグループと一致するか否かが推測される。
【0075】
したがって、ステップS252中に、方法は、閾値に対する当該マッチングスコアの値に基づいて、身体領域の当該画像と参照生体データのグループとが一致するかどうかを判定する。
【0076】
ステップS250及びステップS252は、当身体部位に依存する。ステップS240及びステップS244について
図4に関連して記載の異なる実施形態があてはまり、違いは、ステップS250中に、身体領域の画像の領域に属するデータであって、身体領域の画像の当該領域がトゥルースマップにおいて真正であると考えられる、データのみが考慮されることのみである。
【0077】
図6は、別の特定の実施形態による有効化方法のステップS24を詳細に示す。
【0078】
ステップS260中に、ステップS20において得られた身体領域の画像と参照生体データの少なくとも1つの現在のグループとの間のマッチングスコアは、トゥルースマップにおいてデータに関連付けられた値でデータに重みを付けることによって計算される。このマッチングスコアから、ステップS20において得られた身体領域の画像が参照生体データの現在のグループと一致するか否かが推測される。
【0079】
したがって、ステップS262中に、方法は、閾値に対する当該マッチングスコアの値に基づいて、身体領域の当該画像と参照生体データのグループとが一致するかどうかを判定する。
【0080】
ステップS260及びステップS262は、当身体部位に依存する。ステップS240及びステップS244について
図4に関連して記載の異なる実施形態があてはまり、違いは、ステップS260中に、データに重みが付けられることのみである。
【0081】
図7は、特定の実施形態による、識別又は認証のためのデバイス140のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す。
図7に示すハードウェアアーキテクチャの例によれば、デバイス140は、したがって、通信バス1400によって接続されて、プロセッサ又は中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)1401、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)1402、読み取り専用メモリ(Read Only Memory、ROM)1403、ハードドライブ又は記憶媒体リーダ、例えば、セキュアデジタル(Secure Digital、SD)カードリーダなどの記憶装置1404、デバイス140が情報を送信又は受信することを可能にする少なくとも1つの通信インターフェース1405を備える備える。
【0082】
プロセッサ1401は、ROM 1403から、外部メモリ(図示せず)から、(SDカードなどの)記憶媒体から、又は通信ネットワークからRAM 1402にロードされた命令を実行することが可能である。デバイス140がオンにされたときに、プロセッサ1401は、RAM 1402から命令を読み取り、命令を実行することが可能である。これらの命令は、プロセッサ1401による
図2~
図6を参照して記載の方法のうちの全て又はいくつかの実装をもたらすコンピュータプログラムを形成する。
【0083】
図2~
図6に関連して記載の方法は、プログラマブル機械、例えば、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor、DSP)又はマイクロコントローラを使用して、命令のセットを実行することによってソフトウェア形態で実装されてもよく、又は機械若しくは専用の構成要素、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field-Programmable Gate Array、FPGA)若しくは特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit、ASIC)によってハードウェア形態で実装されてもよい。概して、デバイス140は、
図2~
図6に関連して記載の方法を実装するように構成された電子回路を備える。