(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185601
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理プログラム、および、画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/48 20220101AFI20221208BHJP
【FI】
G01J5/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093322
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】神尾 裕美
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066BB05
2G066BC11
2G066BC12
2G066BC15
2G066CA02
2G066CA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱赤外域の画像に対し、気象データの実測値を取得することなく、大気の影響を考慮して処理できる、画像処理装置を提供する。
【解決手段】熱赤外域の第1データの画像における放射輝度を放射温度に変換する放射温度変換部と、第1データの画像における放射温度が閾値より低い低温領域を検出する低温検出部と、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係から大気熱放射輝度を推定する大気熱放射輝度推定部と、観測条件から得られる地表面温度を取得し、第1データの全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係から大気温度を推定する大気温度推定部と、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係から大気透過率を推定する大気透過率推定部と、全体領域の放射輝度に対し、大気熱放射輝度、大気温度、および大気透過率を用いて大気補正を行う第1大気補正部と、補正後の放射輝度を放射温度に変換して出力する補正後データ出力部と、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第1データを受け付けると、当該第1データの画像における放射輝度を放射温度に変換する放射温度変換部と、
当該第1データの画像における放射温度が閾値より低い低温領域を検出する低温検出部と、
前記低温検出部が検出した領域における放射輝度を用いて、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係を示すデータを参照し、大気熱放射輝度を推定する大気熱放射輝度推定部と、
前記第1データの画像に示される全体領域の放射温度、および、観測条件から得られる地表面温度を取得し、全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係を示すデータを参照し、大気温度を推定する大気温度推定部と、
前記大気熱放射輝度推定部により推定された大気熱放射輝度と前記大気温度推定部により推定された大気温度とを用いて、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係を示すデータを参照し、大気透過率を推定する大気透過率推定部と、
画像における全体領域の放射輝度に対し、前記大気熱放射輝度推定部が推定した大気熱放射輝度、前記大気温度推定部が推定した大気温度、および、前記大気透過率推定部が推定した大気透過率を用いて大気補正を行う第1大気補正部と、
前記第1大気補正部による補正後の放射輝度を放射温度に変換して出力する補正後データ出力部と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記補正後データ出力部は、変換した放射温度に加え、当該放射温度を求めるために用いた大気特性を示す大気特性情報を出力するものであり、
さらに、
前記第1データの画像が撮影された位置において中赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第2データを受け付けると、前記補正後データ出力部が出力した大気特性情報を用いて、熱赤外域の波長を用いて撮影された場合の大気特性と中赤外域の波長を用いて撮影された場合の大気熱放射輝度および大気透過率との関係を示すデータを参照し、当該第2データの画像に係る大気熱放射輝度および大気透過率を推定するMWIR大気情報推定部と、
当該第2データの画像における放射輝度に対し、前記MWIR大気情報推定部が推定した大気熱放射輝度および大気透過率を用いて大気補正を行う第2大気補正部と、
太陽の位置を示す太陽位置情報を取得する太陽位置取得部と、
前記補正後データ出力部が出力した大気特性情報および前記太陽位置取得部が取得した太陽位置情報を用いて、大気特性と太陽位置情報と地表照度との関係を示すデータを参照し、地表照度を算出する地表照度算出部と、
前記第1データの画像を撮影した位置において可視域および近赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第3データを受け付けると、スペクトル特性と放射温度と被写体の種類との関係を示すデータを参照し、当該第3データの画像のスペクトル特性および前記補正後データ出力部が出力した放射温度を用いて、被写体の種類を推定する被写体推定部と、
被写体の種類と反射率と放射率との関係を示すデータを参照し、前記被写体推定部で推定された被写体の種類に応じた反射率または放射率を抽出する反射率・放射率推定部と、
前記第2大気補正部による補正後の放射輝度、前記地表照度算出部が算出した地表照度、および、前記反射率・放射率推定部が抽出した反射率または放射率、を用いて被写体の温度を算出する温度算出部と、
前記温度算出部が算出した温度を出力する推定温度出力部と、
を備え、
前記反射率・放射率推定部は、
熱赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率を抽出するとともに、中赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率を抽出し、
前記温度算出部は、
熱赤外域の波長の反射率または放射率を用いて被写体の第1温度を算出し、中赤外域の波長の反射率または放射率を用いて被写体の第2温度を算出し、第1温度と第2温度が一致するように、前記反射率・放射率推定部が抽出する反射率または放射率を変更させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
コンピュータを、
熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第1データを受け付けると、当該第1データの画像における放射輝度を放射温度に変換する放射温度変換部と、
当該第1データの画像における放射温度が閾値より低い低温領域を検出する低温検出部と、
前記低温検出部が検出した領域における放射輝度を用いて、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係を示すデータを参照し、大気熱放射輝度を推定する大気熱放射輝度推定部と、
前記第1データの画像に示される全体領域の放射温度、および、観測条件から得られる地表面温度を取得し、全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係を示すデータを参照し、大気温度を推定する大気温度推定部と、
前記大気熱放射輝度推定部により推定された大気熱放射輝度と前記大気温度推定部により推定された大気温度とを用いて、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係を示すデータを参照し、大気透過率を推定する大気透過率推定部と、
前記画像における全体領域の放射輝度に対し、前記大気熱放射輝度推定部が推定した大気熱放射輝度、前記大気温度推定部が推定した大気温度、および、前記大気透過率推定部が推定した大気透過率を用いて大気補正を行う第1大気補正部と、
前記第1大気補正部による補正後の放射輝度を放射温度に変換して出力する補正後データ出力部と、
して動作させる画像処理プログラム。
【請求項4】
熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第1データを受け付けると、当該第1データの画像における放射輝度を放射温度に変換する放射温度変換ステップと、
当該第1データの画像における放射温度が閾値より低い低温領域を検出する低温検出ステップと、
前記低温検出ステップにより検出した領域における放射輝度を用いて、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係を示すデータを参照し、大気熱放射輝度を推定する大気熱放射輝度推定ステップと、
前記第1データの画像に示される全体領域の放射温度、および、観測条件から得られる地表面温度を取得し、全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係を示すデータを参照し、大気温度を推定する大気温度推定ステップと、
前記大気熱放射輝度推定ステップにより推定された大気熱放射輝度と前記大気温度推定ステップにより推定された大気温度とを用いて、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係を示すデータを参照し、大気透過率を推定する大気透過率推定ステップと、
画像における全体領域の放射輝度に対し、前記大気熱放射輝度推定ステップにより推定した大気熱放射輝度、前記大気温度推定ステップにより推定した大気温度、および、前記大気透過率推定ステップにより推定した大気透過率を用いて大気補正を行う第1大気補正ステップと、
前記第1大気補正ステップによる補正後の放射輝度を放射温度に変換して出力する補正後データ出力ステップと、
を備えた画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被写体を識別するために熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を、処理する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置の中には、熱赤外域の波長を用いて大気を介して地表などの被写体が撮影された画像を、処理するものがある。
この画像には大気の影響が含まれるため、被写体を識別する際には、大気の影響を考慮する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、実際に観測した気象データを用いて大気の影響を考慮することが開示されている。
具体的には、放射伝達計算を行う放射伝達プログラムに対し、観測時の観測対象領域の状態を反映する地上気象データと高層気象データとを入力し、放射伝達プログラムの放射伝達計算結果から、観測対象領域の地表面輝度温度を導出するための放射伝達方程式に使用される大気パラメータを得ることで、大気の影響を考慮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される技術は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像に対し、大気の影響を考慮する場合、観測時の観測対象領域の状態を反映する気象データの実測値が必要である、という課題があった。あらゆる観測時のあらゆる観測対象領域について、その状態を反映する気象データの実測値を全て得るようにすることは難しい傾向がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するもので、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像に対し、観測時の観測対象領域の状態を反映する気象データの実測値を取得することなく、大気の影響を考慮して処理できる、画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の画像処理装置は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第1データを受け付けると、当該第1データの画像における放射輝度を放射温度に変換する放射温度変換部と、当該第1データの画像における放射温度が閾値より低い低温領域を検出する低温検出部と、低温検出部が検出した領域における放射輝度を用いて、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係を示すデータを参照し、大気熱放射輝度を推定する大気熱放射輝度推定部と、第1データの画像に示される全体領域の放射温度、および、観測条件から得られる地表面温度を取得し、全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係を示すデータを参照し、大気温度を推定する大気温度推定部と、大気熱放射輝度推定部により推定された大気熱放射輝度と大気温度推定部により推定された大気温度とを用いて、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係を示すデータを参照し、大気透過率を推定する大気透過率推定部と、画像における全体領域の放射輝度に対し、大気熱放射輝度推定部が推定した大気熱放射輝度、大気温度推定部が推定した大気温度、および、大気透過率推定部が推定した大気透過率を用いて大気補正を行う第1大気補正部と、第1大気補正部による補正後の放射輝度を放射温度に変換して出力する補正後データ出力部と、を備えた。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像に対し、観測時の観測対象領域の状態を反映する気象データの実測値を取得することなく、大気の影響を考慮して処理を行う、画像処理装置を提供できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【
図2】画像処理装置における大気補正を説明する図である。
【
図3】大気熱放射と大気熱放射の地表反射光との関係を説明する図である。
【
図4】大気熱放射と大気透過率との関係を説明する図である。
【
図5】放射温度と放射輝度との関係を説明する図である。
【
図6】実施の形態1に係る画像処理装置の処理を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【
図8】実施の形態2に係る画像処理装置の処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図8における被写体推定処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図8における地表照度算出処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図8におけるMWIRデータ大気補正処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図8における温度算出処理を示すフローチャートである。
【
図13】画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図14】画像処理装置のハードウェア構成の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る画像処理装置10の構成を示す図である。
図1においては、画像処理装置10に加え、外部構成としてのLWIRセンサ20、データベース31、データベース32、データベース33を示している。
【0011】
画像処理装置10は、LWIRセンサ20により撮影された画像を用いて得られたデータにより、当該画像に対し、大気補正を行い、大気補正後の画像を用いて画像に撮影された対象物の放射温度を出力するものである。画像処理装置の詳細は、後述する。
【0012】
LWIRセンサ20は、熱赤外域の波長(LWIR:Long wavelength infrared)を用いたセンサである。
LWIRセンサ20は、例えば、人工衛星、航空機などの飛翔体に搭載され、大気を介して地表などの対象物を撮影する。
LWIRセンサ20は、LWIRデータを出力する。
LWIRデータは、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含み、画像データに加え、例えば撮影日時、撮影位置、撮影した領域を識別できる情報などが付されているデータである。
LWIRデータは、説明において「第1データ」とも記載する。
【0013】
データベース31、データベース32、および、データベース33は、それぞれ、画像処理装置10の処理に用いられるデータを格納するデータベースであり、それぞれのデータベースの詳細は、画像処理装置10の説明において後述する。
データベース31、データベース32、および、データベース33は、
図1には示していない記憶装置に記憶される。
データベース31、データベース32、および、データベース33は、1台の記憶装置に記憶されていてもよく、または、複数台の記憶装置に分けて記憶されていてもよい。
【0014】
本開示に係る画像処理装置のおける大気補正の概念を説明する。
図2は、画像処理装置における大気補正を説明する図である。
LWIRセンサ20により地球の表面(地表200)を上空から撮影すると、地表200の熱放射(地表熱放射220)が大気210の透過率で減衰され、かつ、大気210からの熱放射(大気熱放射221)と大気210から地表200への熱放射の反射光(大気熱放射の地表反射光222)とが加わってLWIRセンサ20に入射する。そのため、地表熱放射220を検出する際に、LWIRセンサ20により得られる画像に対し、上記を考慮する。
ここで、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像には、例えば市街地などを撮影した際に非常に低温の被写体が含まれることがある。この被写体は、例えば金属といった放射率が非常に小さい被写体である。
この被写体からの熱放射は、非常に小さいため、全大気放射(=地表とLWIRセンサ20と間の大気熱放射+当該大気熱放射が地表により反射した反射光)とみなすことができる。
本開示は、この点に着目し、例えば、以下の式(1)および式(2)に示すように、全大気放射を考慮して地表本来の熱放射(放射温度)を得るようにしたものである。
↓
L
sensor:センサに入射する放射輝度
L
tgt:地表からの熱放射輝度
L
reflt:大気熱放射の地表反射輝度
L
atm:大気熱放射輝度
τ:大気透過率
T:温度
【0015】
画像処理装置10の構成を説明する。
図1に示す画像処理装置10は、LWIRデータ取得部11、放射温度変換部12、低温検出部13、大気熱放射輝度推定部14、大気温度推定部15、大気透過率推定部16、大気補正部17(説明においては「第1大気補正部」とも記載する。)、および、補正後データ出力部18、を備えている。
【0016】
LWIRデータ取得部11は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含むLWIRデータ(第1データ)を取得する。LWIRデータ取得部11は、例えば、LWIRセンサ20から直接または間接的にLWIRデータを取得する。
【0017】
放射温度変換部12は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含むLWIRデータを受け付けると、当該第1データの画像における放射輝度を放射温度に変換する。
放射輝度と放射温度とは、例えば、
図5に示すように1対1で対応するものであり、対応関係を示す情報に基づいて変換される。
【0018】
低温検出部13は、LWIRデータの画像における放射温度が閾値より低い低温領域を検出する。具体的には、低温検出部13は、放射温度と予め定められた閾値とを比較して、閾値より小さい放射温度を示す領域を低温領域として検出する。
【0019】
大気熱放射輝度推定部14は、低温検出部13が検出した領域における放射輝度を用いて、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係を示すデータ(データベース31)を参照し、大気熱放射輝度を推定する。
図3は、大気熱放射と大気熱放射の地表反射光との関係を説明する図である。
データベース31は、例えば、一般的な大気条件において、大気透過率(水蒸気量)と大気温度を変化させた時の、大気透過率(水蒸気量)と大気温度との組み合わせごとの大気熱放射-大気熱放射の地表面反射光の特性(
図3)を、データベース化したものである。
【0020】
大気温度推定部15は、LWIRデータの画像に示される全体領域の放射温度、および、観測条件から得られる地表面温度を取得し、全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係を示すデータを含むデータベース32を参照し、大気温度を推定する。
観測条件は、例えば、撮影位置(撮影領域)、日時(太陽位置)、観測シーン(対象物の種類)である。
撮影位置は、撮影領域を示す情報であってもよい。また、日時は、太陽位置を示す情報であってもよい。観測条件は、LWIRデータに付された情報を用いてもよい。
具体的には、大気温度推定部15は、画像全体の平均温度に対し、観測条件(時刻、観測シーン(対象物の種類))に応じてオフセットを考慮し、例えば以下の式(3)を用いて地表面温度を算出する。
T
grnd:地表温度
大気温度推定部15は、地表温度を推定後、大気温度はMODTRANなどで求められる大気温度計測データを参照し、大気層毎の温度特性を推定する。
【0021】
大気透過率推定部16は、大気熱放射輝度推定部14により推定された大気熱放射輝度と大気温度推定部15により推定された大気温度とを用いて、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係を示すデータを含むデータベース33を参照し、大気透過率を推定する。
図4は、大気熱放射と大気透過率との関係を説明する図である。
データベース33は、予め、大気温度Tatmごとに、
図4に示すような大気熱放射と大気透過率との関係を求めておきデータベース化したものである。
【0022】
大気補正部17は、画像における全体領域の放射輝度に対し、大気熱放射輝度推定部14が推定した大気熱放射輝度、大気温度推定部15が推定した大気温度、および、大気透過率推定部16が推定した大気透過率を用いて大気補正を行う。
図5は、放射温度と放射輝度との関係を説明する図である。
図5に示すように、放射温度Tと放射輝度Lとは1対1の関係で示される。この場合の放射温度とは放射率を1としたときの等価黒体温度を示す。
例えば、地表本来の熱放射(放射温度)は、以下の式(4)で表すことができる。
Lbb:黒体放射輝度
ε:放射率
【0023】
補正後データ出力部18は、第1大気補正部17による補正後の放射輝度を放射温度に変換して出力する。
【0024】
画像処理装置10の処理を説明する。
図6は、実施の形態1に係る画像処理装置10の処理を示すフローチャートである。
画像処理装置10は、例えば、図示しない制御部からの指令信号を受けると処理を開始する(開始)。
【0025】
LWIRデータ取得部11は、LWIRデータを取得する(ステップST110)。
LWIRデータ取得部11は、LWIRデータを放射温度変換部12へ出力する。
【0026】
放射温度変換部12は、画像内の放射輝度をそれぞれ放射温度に変換する(ステップST120)。
放射温度変換部12は、画像内の放射温度を低温検出部13へ出力する。
【0027】
低温検出部13は、放射温度を用いて、画像における低温領域を検出する(ステップST130)。
低温検出部13は、画像における低温領域を示す情報を大気熱放射輝度推定部14へ出力する。
【0028】
大気熱放射輝度推定部14は、低温領域の放射輝度を用いて、大気熱放射輝度を推定する(ステップST140)。
具体的には、大気熱放射輝度推定部14は、低温検出部13が検出した領域における放射輝度を用いて、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係を示すデータ(データベース31)を参照し、大気熱放射輝度を推定する。
大気熱放射輝度推定部14は、大気熱放射輝度を大気温度推定部15および大気透過率推定部16へ出力する。
【0029】
大気温度推定部15は、全体領域の放射温度を用いて、大気温度を推定する(ステップST150)。
具体的には、大気温度推定部15は、LWIRデータの画像に示される全体領域の放射温度、および、観測条件から得られる地表面温度を取得し、全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係を示すデータを含むデータベース32を参照し、大気温度を推定する。
【0030】
大気透過率推定部16は、大気熱放射輝度および大気温度を用いて、大気透過率を推定する(ステップST160)。具体的には、大気透過率推定部16は、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係を示すデータを含むデータベース33を参照し、大気透過率を推定する。
【0031】
大気補正部17は、推定された大気熱放射輝度、大気温度、および、大気透過率を用いて、画像に対して大気補正を行う(ステップST170)。
具体的には、大気補正部17は、画像における全体領域の放射輝度に対し、大気熱放射輝度推定部14が推定した大気熱放射輝度、大気温度推定部15が推定した大気温度、および、大気透過率推定部16が推定した大気透過率を用いて大気補正を行う。
【0032】
補正後データ出力部18は、大気補正後の画像における放射輝度を放射温度に変換して出力する(ステップST180)。
ステップST180の処理が終わると処理を終了する(終了)。
【0033】
上記画像処理装置は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像に対し、観測時の観測対象領域の状態を反映する気象データの実測値を取得することなく、大気の影響を考慮して処理を行うことができる。
上記画像処理装置は、センサが搭載された衛星のリソースを使いすぎることがない。また、上記画像処理装置は、計算機負荷を大きくすることなく大気の影響を考慮して処理を行うことができる。そして、上記画像処理装置は、計算の効率と精度を両立することができる。
【0034】
上述した通り、本開示の画像処理装置は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第1データを受け付けると、当該第1データの画像における放射輝度を放射温度に変換する放射温度変換部と、当該第1データの画像における放射温度が閾値より低い低温領域を検出する低温検出部と、低温検出部が検出した領域における放射輝度を用いて、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係を示すデータを参照し、大気熱放射輝度を推定する大気熱放射輝度推定部と、第1データの画像に示される全体領域の放射温度、および、観測条件から得られる地表面温度を取得し、全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係を示すデータを参照し、大気温度を推定する大気温度推定部と、大気熱放射輝度推定部により推定された大気熱放射輝度と大気温度推定部により推定された大気温度とを用いて、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係を示すデータを参照し、大気透過率を推定する大気透過率推定部と、画像における全体領域の放射輝度に対し、大気熱放射輝度推定部が推定した大気熱放射輝度、大気温度推定部が推定した大気温度、および、大気透過率推定部が推定した大気透過率を用いて大気補正を行う第1大気補正部と、第1大気補正部による補正後の放射輝度を放射温度に変換して出力する補正後データ出力部と、を備えるように、構成した。
これにより、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像に対し、観測時の観測対象領域の状態を反映する気象データの実測値を取得することなく、大気の影響を考慮して処理を行う、画像処理装置を提供できる、という効果を奏する。
【0035】
上述した通り、本開示に係る画像処理プログラムは、コンピュータを、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第1データを受け付けると、当該第1データの画像における放射輝度を放射温度に変換する放射温度変換部と、当該第1データの画像における放射温度が閾値より低い低温領域を検出する低温検出部と、低温検出部が検出した領域における放射輝度を用いて、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係を示すデータを参照し、大気熱放射輝度を推定する大気熱放射輝度推定部と、第1データの画像に示される全体領域の放射温度、および、観測条件から得られる地表面温度を取得し、全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係を示すデータを参照し、大気温度を推定する大気温度推定部と、大気熱放射輝度推定部により推定された大気熱放射輝度と大気温度推定部により推定された大気温度とを用いて、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係を示すデータを参照し、大気透過率を推定する大気透過率推定部と、画像における全体領域の放射輝度に対し、大気熱放射輝度推定部が推定した大気熱放射輝度、大気温度推定部が推定した大気温度、および、大気透過率推定部が推定した大気透過率を用いて大気補正を行う第1大気補正部と、第1大気補正部による補正後の放射輝度を放射温度に変換して出力する補正後データ出力部と、して動作させるように構成した。
これにより、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像に対し、観測時の観測対象領域の状態を反映する気象データの実測値を取得することなく、大気の影響を考慮して処理を行う、画像処理装置を実現する画像処理プログラムを提供できる、という効果を奏する。
【0036】
上述した通り、本開示に係る画像処理方法は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第1データを受け付けると、当該第1データの画像における放射輝度を放射温度に変換する放射温度変換ステップと、当該第1データの画像における放射温度が閾値より低い低温領域を検出する低温検出ステップと、低温検出ステップにより検出した領域における放射輝度を用いて、低温領域の放射輝度と大気熱放射輝度との関係を示すデータを参照し、大気熱放射輝度を推定する大気熱放射輝度推定ステップと、第1データの画像に示される全体領域の放射温度、および、観測条件から得られる地表面温度を取得し、全体領域の放射温度と地表面温度と大気温度との関係を示すデータを参照し、大気温度を推定する大気温度推定ステップと、大気熱放射輝度推定ステップにより推定された大気熱放射輝度と大気温度推定ステップにより推定された大気温度とを用いて、大気熱放射輝度と大気温度と大気透過率との関係を示すデータを参照し、大気透過率を推定する大気透過率推定ステップと、画像における全体領域の放射輝度に対し、大気熱放射輝度推定ステップにより推定した大気熱放射輝度、大気温度推定ステップにより推定した大気温度、および、大気透過率推定ステップにより推定した大気透過率を用いて大気補正を行う第1大気補正ステップと、第1大気補正ステップによる補正後の放射輝度を放射温度に変換して出力する補正後データ出力ステップと、を備えるように構成した。
これにより、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像に対し、観測時の観測対象領域の状態を反映する気象データの実測値を取得することなく、大気の影響を考慮して処理を行う、画像処理装置を実現する画像処理方法を提供できる、という効果を奏する。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像を用いて大気補正を行い、大気補正後のデータを用いて放射温度を算出する形態を説明した。
実施の形態2は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像に加えて、中波赤外域の波長を用いて撮影された画像、および、可視域および近赤外域の波長を用いて撮影された画像を用いて放射温度を算出する形態を説明する。実施の形態2に係る画像処理装置100においては、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像により解析された大気特性データを用いることで、中波赤外域の波長を用いて撮影された画像における大気熱放射輝度、大気透過率を算出する。
【0038】
実施の形態2に係る画像処理装置100の構成を説明する。
図7は、実施の形態2に係る画像処理装置100の構成を示す図である。
図7においては、画像処理装置100に加え、外部構成としてのLWIRセンサ21、MWIRセンサ22、VNIRセンサ23、データベース31、データベース32、データベース33、データベース34、データベース35、データベース36、および、データベース37、を示している。
【0039】
LWIRセンサ21は、
図1のLWIRセンサ20と同様であるため、その説明を省略する。
MWIRセンサ22は、中波赤外域の波長(MWIR:Mid wavelength infrared)を用いたセンサである。
MWIRセンサ22は、例えば、人工衛星、航空機などの飛翔体に搭載され、大気を介して地表などの対象物を撮影する。
MWIRセンサ22は、MWIRデータを出力する。
MWIRデータは、第1データの画像を撮影した位置において中波赤外域の波長を用いて撮影された画像を含み、画像データに加え、例えば撮影日時、撮影位置、撮影した領域を識別できる情報などが付されているデータである。
MWIRデータは、説明において「第2データ」とも記載する。
【0040】
VNIRセンサ23は、可視域および近赤外域(以下「可視近赤外域」とも記載する。)の波長(VNIR:Visible and Near Infrared)を用いたセンサである。
VNIRセンサ23は、例えば、人工衛星、航空機などの飛翔体に搭載され、大気を介して地表などの対象物を撮影する。
VNIRセンサ23は、VNIRデータを出力する。
VNIRデータは、第1データの画像を撮影した位置において可視近赤外域の波長を用いて撮影された画像を含み、画像データに加え、例えば撮影日時、撮影位置、撮影した領域を識別できる情報などが付されているデータである。
VNIRデータは、説明において「第3データ」とも記載する。
【0041】
LWIRセンサ21、MWIRセンサ22、VNIRセンサ23はそれぞれ、例えば、同じ飛翔体に搭載され、同じ領域を撮影するものでもよく、これにより、それぞれのデータが対応する領域において撮影された画像を含むかを判定する処理の一部を省略できる。
【0042】
データベース31、データベース32、データベース33、データベース34(説明においては、「第4データベース」とも記載する。)、データベース35(説明においては、「第5データベース」とも記載する。)、データベース36(説明においては、「第6データベース」とも記載する。)、および、データベース37(説明においては、「第7データベース」とも記載する。)はそれぞれ、画像処理装置の処理に用いられるデータを格納するデータベースであり、それぞれのデータベースの詳細は、画像処理装置の説明において後述する。
データベース31、データベース32、データベース33、データベース34、データベース35、データベース36、および、データベース37は、
図1には示していない記憶装置に記憶される。
データベース31、データベース32、データベース33、データベース34、データベース35、データベース36、および、データベース37は、1台の記憶装置に記憶されていてもよく、または、それぞれが複数台の記憶装置に分けて記憶されていてもよい。
【0043】
画像処理装置100は、LWIRデータ取得部11、放射温度変換部12、低温検出部13、大気熱放射輝度推定部14、大気温度推定部15、大気透過率推定部16、大気補正部17(第1大気補正部)、補正後データ出力部18、VNIRデータ取得部121、被写体推定部122、太陽位置取得部131、地表照度算出部132、MWIRデータ取得部141、MWIR大気情報推定部142、第2大気補正部143、反射率・放射率推定部151、温度算出部152、および、推定温度出力部153、を備えている。
【0044】
図7に示したLWIRデータ取得部11、放射温度変換部12、低温検出部13、大気熱放射輝度推定部14、大気温度推定部15、大気透過率推定部16、および、第1大気補正部117、はそれぞれ、
図1におけるLWIRデータ取得部11、放射温度変換部12、低温検出部13、大気熱放射輝度推定部14、大気温度推定部15、大気透過率推定部16、および、大気補正部17(第1大気補正部)、と同様であるため、その説明を省略する。
【0045】
補正後データ出力部18は、第1大気補正部17による補正後の放射輝度を放射温度に変換し、変換した放射温度に加え、当該放射温度を求めるために用いた大気特性を示す大気特性情報を出力するものである。
補正後データ出力部18が出力する大気特性情報は、例えば大気熱放射輝度、大気温度、大気透過率を含む情報である。大気透過率は、大気水蒸気量を示す情報であってもよい。大気透過率と大気水蒸気量とは、一方を用いて相互に算出可能である。
【0046】
VNIRデータ取得部121は、LWIRデータ(第1データ)の画像を撮影した位置において可視域および近赤外域の波長を用いて撮影された画像、を含むVNIRデータ(第3データ)を取得する。
【0047】
被写体推定部122は、LWIRデータ(第1データ)の画像を撮影した位置において可視域および近赤外域の波長を用いて撮影された画像を含むVNIRデータ(第3データ)を受け付けると、スペクトル特性と放射温度と被写体の種類との関係を示すデータを含むデータベース34(第4データベース)を参照し、VNIRデータの画像のスペクトル特性および補正後データ出力部18が出力した放射温度を用いて、被写体の種類を推定する。
被写体推定部122は、被写体が可視域~近赤外域の分光特性により分類可能であることを利用している。被写体推定部122においては、例えば、植生を抽出可能なNDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指標)や、水を抽出可能なNDWI(Normalized Difference Water Index:正規化水指標)など、可視のスペクトル特性を用いて被写体の推定を行う。また、被写体推定部122においては、金属と人工物(コンクリートなど)との識別を、LWIRの放射温度の差異を用いて推定する。
【0048】
太陽位置取得部131は、太陽の位置を示す太陽位置情報を取得する。
具体的には、太陽位置取得部131は、画像に付された撮影日時、撮影位置、撮影した領域を識別できる情報から算出する。
また、太陽位置取得部131は、太陽位置を測定する機器から太陽位置情報を取得するものであってもよい。
【0049】
地表照度算出部132は、補正後データ出力部18が出力した大気特性情報および太陽位置取得部131が取得した太陽位置情報を用いて、大気特性と、太陽位置情報と、地表照度との関係を示すデータを含むデータベース35(第5データベース)を参照し、地表照度を算出する。
データベース35は、大気特性または太陽高度と地表照度の特性を、MODTRANなどの大気伝搬特性計算ソフトなどで計算した結果をデータベースとして保有するものである。
または、太陽直達成分のみを計算する場合は、Top of Atmosphereの太陽照度に対して大気透過率をかけるようにすれば良い。ただし、大気から地表への散乱・熱放射を見込む場合はデータベース化する。
【0050】
MWIRデータ取得部141は、LWIRデータ(第1データ)の画像を撮影した位置において中赤外域の波長を用いて撮影された画像、を含むMWIRデータ(第2データ)を取得する。
【0051】
MWIR大気情報推定部142は、熱赤外域の波長を用いて撮影された画像から得られた大気特性(大気温度、水蒸気量)のパラメータを用いて、MWIR帯の大気熱放射、大気透過率を推定する。
MWIR大気情報推定部142は、LWIRデータ(第1データ)の画像が撮影された位置において中赤外域の波長を用いて撮影された画像を含むMWIRデータ(第2データ)を受け付けると、補正後データ出力部18が出力した大気特性情報を用いて、熱赤外域の波長を用いて撮影された場合の大気特性と、中赤外域の波長を用いて撮影された場合の大気熱放射輝度および大気透過率との関係を示すデータが含まれるデータベース36(第6データベース)を参照し、MWIRデータの画像に係る大気熱放射輝度および大気透過率を推定する。
データベース36は、大気特性と大気熱放射・大気透過率の特性を、例えばMODTRANなどの大気伝搬特性計算ソフトなどで計算した結果をデータベースとして保有するものである。
【0052】
第2大気補正部143は、MWIRデータの画像における全体領域の放射輝度に対し、MWIR大気情報推定部142が推定した大気熱放射輝度および大気透過率を用いて大気補正を行う。
【0053】
反射率・放射率推定部151は、被写体の種類と反射率と放射率との関係を示すデータを含むデータベース37(第7データベース)を参照し、被写体推定部122で推定された被写体の種類に応じた反射率または放射率を抽出する。
データベース37には、熱赤外域の波長を用いた場合における、被写体の種類と反射率と放射率との関係を示すデータ、および、中赤外域の波長を用いた場合における、被写体の種類と反射率と放射率との関係を示すデータが格納されている。
反射率・放射率推定部151は、熱赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率を抽出するとともに、中赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率を抽出する。
【0054】
温度算出部152は、第2大気補正部143による補正後の放射輝度と、地表照度算出部132が算出した地表照度と、反射率・放射率推定部151が抽出した反射率または放射率と、を用いて被写体の温度を算出する。
具体的には、温度算出部152は、熱赤外域の波長の反射率または放射率を用いて被写体の第1温度を算出し、中赤外域の波長の反射率または放射率を用いて被写体の第2温度を算出し、第1の温度と第2の温度が一致するように、反射率・放射率推定部151が抽出する反射率または放射率を変更させる。
温度算出部152は、地表からの熱放射と太陽反射光(太陽光が大気に反射した光および地表に反射した光)の和である大気補正後の放射輝度から、放射率、反射率、地表照度と大気補正後の放射輝度を用いて、太陽反射光の影響を除くことで、被写体の温度Tを算出する。 温度算出部152は、例えば、以下の式(5)を用いて算出することができる。
L
sensor´:大気補正後の放射輝度
E:地表の照度
ρ=1-εであるため、各センサについて変数は1つである。
また、温度算出部152は、これにより得られた熱赤外域の波長を用いて撮影された画像から得られた温度と中赤外域の波長を用いて撮影された画像から得られた温度とを比較し、これが一致するよう反射率または放射率のチューニングを行う。
【0055】
推定温度出力部153は、温度算出部152が算出した温度を出力する
【0056】
実施の形態2に係る画像処理装置100の処理を説明する。
実施の形態2に係る画像処理装置100の処理は、
図6に示すフローチャートのステップST170以降が異なる。
そこで、以下の説明においては、ステップST170までの処理の詳細な説明を省略し、ステップST170以降の処理を説明する。
【0057】
図8は、実施の形態2に係る画像処理装置100の処理を示すフローチャートである。
画像処理装置100は、
図6に示すステップST170の処理が終わると、
図8に示すステップST190の処理へ移る。
【0058】
ステップST190において、補正後データ出力部18は、変換した放射温度に加え、放射温度における大気特性情報を出力する。
具体的には、補正後データ出力部18は、第1大気補正部117による補正後の放射輝度を放射温度に変換し、変換した放射温度に加え、当該放射温度を求めるためにステップST190を実行するまでに用いられた大気特性を示す大気特性情報を出力する。
【0059】
画像処理装置100においては、ステップST190の処理を実行すると、被写体推定処理(ステップST200)、地表照度算出処理(ステップST300)、MWIRデータ大気補正処理(ステップST400)に進み、被写体推定処理、地表照度算出処理、および、MWIRデータ大気補正処理が終わると、温度算出処理(ステップST500)に進み、温度算出処理が終わると、処理を終了する。
被写体推定処理、地表照度算出処理、MWIRデータ大気補正処理、および、温度算出処理を以下に説明する。
【0060】
被写体推定処理を説明する。
図9は、
図8における被写体推定処理を示すフローチャートである。
被写体推定処理(ステップST200)において、VNIRデータ取得部121は、第1データの画像を撮影した位置において可視域および近赤外域の波長を用いて撮影された画像、を含むVNIRデータ(第3データ)を取得する(ステップST210)。
VNIRデータ取得部121は、VNIRデータを被写体推定部122へ出力する。
【0061】
被写体推定部122は、VNIRデータを受け取ると、被写体の種類を推定する(ステップST220)。
被写体推定部122は、被写体の種類を推定すると、被写体の種類を示す情報を反射率・放射率推定部151へ出力する。
【0062】
地表照度算出処理を説明する。
図10は、
図8における地表照度算出処理を示すフローチャートである。
地表照度算出処理において、太陽位置取得部131は、太陽の位置を示す太陽位置情報を取得する(ステップST310)。太陽位置取得部131は、太陽位置情報を地表照度算出部132へ出力する。
【0063】
地表照度算出部132は、地表照度を算出する(ステップST320)。
具体的には、地表照度算出部132は、補正後データ出力部18が出力した大気特性情報および太陽位置取得部131が取得した太陽位置情報を用いて、大気特性と、太陽位置情報と、地表照度との関係を示すデータを含むデータベース(第5データベース)を参照し、地表照度を算出する。地表照度算出部132は、地表照度を出力する。
【0064】
MWIRデータ大気補正処理を説明する。
図11は、
図8におけるMWIRデータ大気補正処理を示すフローチャートである。
MWIRデータ大気補正処理において、MWIRデータ取得部141は、MWIRデータを取得する(ステップST410)。
MWIRデータ取得部141は、LWIRデータ(第1データ)の画像を撮影した位置において中赤外域の波長を用いて撮影された画像、を含むMWIRデータ(第2データ)を取得する。
MWIRデータ取得部141は、MWIRデータをMWIR大気情報推定部142へ出力する。
【0065】
MWIR大気情報推定部142は、大気熱放射輝度および大気透過率を推定する(ステップST420)。
具体的には、MWIR大気情報推定部142は、LWIRデータ(第1データ)の画像が撮影された位置において中赤外域の波長を用いて撮影された画像を含むMWIRデータ(第2データ)を受け付けると、補正後データ出力部18が出力した大気特性情報を用いて、熱赤外域の波長を用いて撮影された場合の大気特性と、中赤外域の波長を用いて撮影された場合の大気熱放射輝度および大気透過率との関係を示すデータが含まれるデータベース(第6データベース)を参照し、第2データの画像に係る大気熱放射輝度および大気透過率を推定する。
【0066】
第2大気補正部143は、大気補正を行う(ステップST430)。
具体的には、第2大気補正部143は、第2データの画像における全体領域の放射輝度に対し、MWIR大気情報推定部142が推定した大気熱放射輝度および大気透過率を用いて大気補正を行う。
【0067】
温度算出処理を説明する。
図12は、
図8における温度算出処理を示すフローチャートである。
温度算出処理において、反射率・放射率推定部151は、反射率または放射率を抽出する(ステップST510)。
具体的には、反射率・放射率推定部151は、被写体の種類と反射率と放射率との関係を示すデータを含むデータベース(第7データベース)を参照し、被写体推定部122で推定された被写体の種類に応じた反射率または放射率を抽出する。
反射率・放射率推定部151は、熱赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率を抽出するとともに、中赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率を抽出する。
反射率・放射率推定部151は、熱赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率と、中赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率とを、温度算出部152へ出力する。
【0068】
温度算出部152は、反射率・放射率推定部151から反射率または放射率を受け取ると、被写体の温度を算出する(ステップST520)。
具体的には、温度算出部152は、第2大気補正部143による補正後の放射輝度と、地表照度算出部132が算出した地表照度と、反射率・放射率推定部151が抽出した反射率または放射率と、を用いて被写体の温度を算出する。
このとき、温度算出部152は、熱赤外域の波長の反射率または放射率を用いて被写体の第1温度を算出し、中赤外域の波長の反射率または放射率を用いて被写体の第2温度を算出し、第1の温度と第2の温度が一致するように、反射率・放射率推定部151が抽出する反射率または放射率を変更させる。
なお、第1の温度と第2の温度が一致しない場合、温度算出部152は、一致しない旨の情報を出力する様にしてもよい。
【0069】
推定温度出力部153は、温度算出部152が算出した温度を出力する(ステップST530)。
【0070】
上記画像処理装置は、熱赤外域、中波赤外域、可視域および近赤外域の波長を用いて、被写体を推定して、反射率、放射率を推定するようにしたので、より高い精度で被写体の温度を算出できる。
また、上記画像処理装置は、熱赤外域の放射温度と中波赤外域の温度とを評価してチューニングしながら温度を算出するので、より高い精度で被写体の温度を算出できる。
【0071】
上述した通り、本開示に係る画像処理装置は、補正後データ出力部は、変換した放射温度に加え、当該放射温度を求めるために用いた大気特性を示す大気特性情報を出力するものであり、さらに、第1データの画像が撮影された位置において中赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第2データを受け付けると、補正後データ出力部が出力した大気特性情報を用いて、熱赤外域の波長を用いて撮影された場合の大気特性と中赤外域の波長を用いて撮影された場合の大気熱放射輝度および大気透過率との関係を示すデータを参照し、当該第2データの画像に係る大気熱放射輝度および大気透過率を推定するMWIR大気情報推定部と、当該第2データの画像における放射輝度に対し、MWIR大気情報推定部が推定した大気熱放射輝度および大気透過率を用いて大気補正を行う第2大気補正部と、太陽の位置を示す太陽位置情報を取得する太陽位置取得部と、補正後データ出力部が出力した大気特性情報および太陽位置取得部が取得した太陽位置情報を用いて、大気特性と太陽位置情報と地表照度との関係を示すデータを参照し、地表照度を算出する地表照度算出部と、第1データの画像を撮影した位置において可視域および近赤外域の波長を用いて撮影された画像を含む第3データを受け付けると、スペクトル特性と放射温度と被写体の種類との関係を示すデータを参照し、当該第3データの画像のスペクトル特性および補正後データ出力部が出力した放射温度を用いて、被写体の種類を推定する被写体推定部と、被写体の種類と反射率と放射率との関係を示すデータを参照し、被写体推定部で推定された被写体の種類に応じた反射率または放射率を抽出する反射率・放射率推定部と、第2大気補正部による補正後の放射輝度、地表照度算出部が算出した地表照度、および、反射率・放射率推定部が抽出した反射率または放射率、を用いて被写体の温度を算出する温度算出部と、温度算出部が算出した温度を出力する推定温度出力部と、を備え、反射率・放射率推定部は、熱赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率を抽出するとともに、中赤外域の波長を用いた場合の反射率または放射率を抽出し、温度算出部は、熱赤外域の波長の反射率または放射率を用いて被写体の第1温度を算出し、中赤外域の波長の反射率または放射率を用いて被写体の第2温度を算出し、第1温度と第2温度が一致するように、反射率・放射率推定部が抽出する反射率または放射率を変更させる、ように構成した。
これにより、より高い精度で被写体の温度を算出できる、画像処理装置を提供できる、という効果を奏する。
【0072】
ここで本開示に係る画像処理装置10,100それぞれを実現するためのハードウェア構成について説明する。
図13は、画像処理装置10,100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図14は、画像処理装置10,100のハードウェア構成の別の一例を示す図である。
【0073】
図13に示す通り、画像処理装置10,100における、LWIRデータ取得部11,111、放射温度変換部12,112、低温検出部13,113、大気熱放射輝度推定部14,114、大気温度推定部15,115、大気透過率推定部16,116、大気補正部(第1大気補正部)17,117、補正後データ出力部18,118、VNIRデータ取得部121、被写体推定部122、太陽位置取得部131、地表照度算出部132、MWIRデータ取得部141、MWIR大気情報推定部142、第2大気補正部143、反射率・放射率推定部151、温度算出部152、または、推定温度出力部153、の機能が専用の処理回路1001により実現されるものであってもよい。処理回路1001は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-Chip)またはシステムLSI(Large-Scale Integration)等を用いたものである。
図13に示すハードウェア構成の場合、本開示に係るデータベースは、記憶装置1002によって実現される。記憶装置1002は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、またはフラッシュメモリ等の不揮発性もしくは揮発性の半導体メモリであってもよいし、ハードディスクまたはフレキシブルディスク等の磁気ディスクであってもよいし、CD(Compact Disc)またはDVD(Digital VersatileDisc)等の光ディスクであってもよいし、光磁気ディスクであってもよい。
図13に示すハードウェア構成の場合、画像処理装置10,100に関するデータの入出力は、入出力インタフェース1003によって実現される。
【0074】
また、
図14に示す通り、画像処理装置は、プロセッサ1004およびメモリ1005により構成されるものであってもよい。プロセッサ1004およびメモリ1005は、例えば、コンピュータに搭載されているものである。
メモリ1005には、当該コンピュータをLWIRデータ取得部11,111、放射温度変換部12,112、低温検出部13,113、大気熱放射輝度推定部14,114、大気温度推定部15,115、大気透過率推定部16,116、大気補正部(第1大気補正部)17,117、補正後データ出力部18,118、VNIRデータ取得部121、被写体推定部122、太陽位置取得部131、地表照度算出部132、MWIRデータ取得部141、MWIR大気情報推定部142、第2大気補正部143、反射率・放射率推定部151、温度算出部152、または、推定温度出力部153、として機能させるためのプログラムが記憶されている。メモリ1005に記憶されたプログラムをプロセッサ1004が読み出して実行することにより、LWIRデータ取得部11,111、放射温度変換部12,112、低温検出部13,113、大気熱放射輝度推定部14,114、大気温度推定部15,115、大気透過率推定部16,116、大気補正部(第1大気補正部)17,117、補正後データ出力部18,118、VNIRデータ取得部121、被写体推定部122、太陽位置取得部131、地表照度算出部132、MWIRデータ取得部141、MWIR大気情報推定部142、第2大気補正部143、反射率・放射率推定部151、温度算出部152、または、推定温度出力部153、の機能が実現される。
図14に示すハードウェア構成の場合、本開示に係るデータベースは、記憶装置1002によって実現される。
【0075】
プロセッサ1004は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラまたはDSP(Digital Signal Processor)などを用いたものである。
【0076】
メモリ1005は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、またはフラッシュメモリ等の不揮発性もしくは揮発性の半導体メモリであってもよいし、ハードディスクまたはフレキシブルディスク等の磁気ディスクであってもよいし、CD(Compact Disc)またはDVD(Digital VersatileDisc)等の光ディスクであってもよいし、光磁気ディスクであってもよい。
【0077】
図14に示すハードウェア構成の場合、画像処理装置10,100に関するデータの入出力は、
図13と同様に入出力インタフェース1003によって実現される。
【0078】
また、LWIRデータ取得部11,111、放射温度変換部12,112、低温検出部13,113、大気熱放射輝度推定部14,114、大気温度推定部15,115、大気透過率推定部16,116、大気補正部(第1大気補正部)17,117、補正後データ出力部18,118、VNIRデータ取得部121、被写体推定部122、太陽位置取得部131、地表照度算出部132、MWIRデータ取得部141、MWIR大気情報推定部142、第2大気補正部143、反射率・放射率推定部151、温度算出部152、または、推定温度出力部153、のうちの一部の機能がプロセッサ1004およびメモリ1005により実現され、かつ、残りの機能が処理回路1001により実現されるものであっても良い。
【0079】
なお、LWIRデータ取得部11,111、放射温度変換部12,112、低温検出部13,113、大気熱放射輝度推定部14,114、大気温度推定部15,115、大気透過率推定部16,116、大気補正部(第1大気補正部)17,117、補正後データ出力部18,118、VNIRデータ取得部121、被写体推定部122、太陽位置取得部131、地表照度算出部132、MWIRデータ取得部141、MWIR大気情報推定部142、第2大気補正部143、反射率・放射率推定部151、温度算出部152、または、推定温度出力部153、の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、画像処理装置における処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の機能を実現することができる。
【0080】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、または各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 画像処理装置、11,111 LWIRデータ取得部、12,112 放射温度変換部、13,113 低温検出部、14,114 大気熱放射輝度推定部、15,115 大気温度推定部、16,116 大気透過率推定部、17,117 大気補正部(第1大気補正部)、18,118 補正後データ出力部、20,21 LWIRセンサ、22 MWIRセンサ、23 VNIRセンサ、31 データベース(第1データベース)、32 データベース(第2データベース)、33 データベース(第3データベース)、34 データベース(第4データベース)、35 データベース(第5データベース)、36 データベース(第6データベース)、37 データベース(第7データベース)、121 VNIRデータ取得部、122 被写体推定部、131 太陽位置取得部、132 地表照度算出部、141 MWIRデータ取得部、142 MWIR大気情報推定部、143 第2大気補正部、151 反射率・放射率推定部、152 温度算出部、153 推定温度出力部、200 地表、210 大気、220 地表熱放射、221 大気熱放射、222 大気熱放射の地表反射、1001 処理回路、1002 記憶装置、1003 入出力インタフェース、1004 プロセッサ、1005 メモリ。