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特開2022-185618電力取引模擬装置、電力取引模擬方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185618
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】電力取引模擬装置、電力取引模擬方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20221208BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20221208BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20221208BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/04
H02J3/00 170
H02J3/00 180
H02J3/38 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093344
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 一徳
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 ほなみ
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066HB04
5L049AA04
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力取引の実績データが不充分な状態でも、電力取引を高精度に模擬する。
【解決手段】実施形態の電力取引模擬装置は、一日を複数に分割した時間帯ごとの電力商品の売買取引を模擬するための複数の事業者モデル、および、取引モデルを記憶する記憶部と、複数の前記事業者モデルのそれぞれに対応して、電力需給想定、市場取引価格、取引約定実績の入力に基づいて、電力取引の売買種別、注文価格、注文数量を決定して出力する複数の注文行動エージェントのそれぞれを動作させるとともに、前記取引モデルに対応して、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれが出力する前記売買種別、前記注文価格、前記注文数量の入力に基づいて、前記市場取引価格、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれの取引約定実績を決定して出力する取引エージェントを動作させる処理部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一日を複数に分割した時間帯ごとの電力商品の売買取引を模擬するための複数の事業者モデル、および、取引モデルを記憶する記憶部と、
複数の前記事業者モデルのそれぞれに対応して、電力需給想定、市場取引価格、取引約定実績の入力に基づいて、電力取引の売買種別、注文価格、注文数量を決定して出力する複数の注文行動エージェントのそれぞれを動作させるとともに、
前記取引モデルに対応して、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれが出力する前記売買種別、前記注文価格、前記注文数量の入力に基づいて、前記市場取引価格、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれの取引約定実績を決定して出力する取引エージェントを動作させる処理部と、
を備える電力取引模擬装置。
【請求項2】
前記注文行動エージェントは、電力需給想定の変化、および、再生可能エネルギーを利用する電源の発電量予測の変化、の少なくともいずれかがあった場合に、前記電力取引の前記売買種別、前記注文価格、前記注文数量の少なくともいずれかの変化を模擬し、
前記取引エージェントは、ザラバ取引を含む取引市場を模擬する、請求項1に記載の電力取引模擬装置。
【請求項3】
前記注文行動エージェントは、電力取引の収益推定値をさらに出力する、請求項1または請求項2に記載の電力取引模擬装置。
【請求項4】
前記注文行動エージェントは、前記事業者モデルにおける順張りと逆張りに関する注文行動の投資行動特性に基づいて、前記電力取引の収益推定値の大小に応じて、前記投資行動特性を更新する、請求項3に記載の電力取引模擬装置。
【請求項5】
前記取引エージェントは、複数の取引形態を模擬し、
前記注文行動エージェントは、前記事業者モデルにおける前記複数の取引形態への注文割合に関する注文行動の取引配分特性に基づいて、前記電力取引の収益推定値の大小に応じて、前記取引配分特性を更新する、請求項4に記載の電力取引模擬装置。
【請求項6】
前記注文行動エージェントは、電源構成、前記投資行動特性、前記取引配分特性、のうち1つ以上の差異に伴う、前記収益推定値の比較結果を出力する、請求項5に記載の電力取引模擬装置。
【請求項7】
前記取引エージェントは、市場流動性に関する指標情報をさらに出力する、請求項1に記載の電力取引模擬装置。
【請求項8】
前記取引エージェントは、電力における再生可能エネルギー由来電力の比率、CO2原単位、発電した地域、のうち1つ以上が異なる複数の電力商品取引を模擬する、請求項7に記載の電力取引模擬装置。
【請求項9】
前記取引エージェントは、マーケットメーカの有無、取引単位、取引手数料、値幅制限のうち1つ以上の差異に伴う前記市場流動性に関する指標情報の比較結果を出力する、請求項7に記載の電力取引模擬装置。
【請求項10】
一日を複数に分割した時間帯ごとの電力商品の売買取引を模擬するための複数の事業者モデル、および、取引モデルを用いた電力取引模擬方法であって、
複数の前記事業者モデルのそれぞれに対応して、電力需給想定、市場取引価格、取引約定実績の入力に基づいて、電力取引の売買種別、注文価格、注文数量を決定して出力する複数の注文行動エージェントのそれぞれを動作させるステップと、
前記取引モデルに対応して、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれが出力する前記売買種別、前記注文価格、前記注文数量の入力に基づいて、前記市場取引価格、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれの取引約定実績を決定して出力する取引エージェントを動作させるステップと、
を含む電力取引模擬方法。
【請求項11】
一日を複数に分割した時間帯ごとの電力商品の売買取引を模擬するための複数の事業者モデル、および、取引モデルを記憶する記憶部を有するコンピュータを、
複数の前記事業者モデルのそれぞれに対応して、電力需給想定、市場取引価格、取引約定実績の入力に基づいて、電力取引の売買種別、注文価格、注文数量を決定して出力する複数の注文行動エージェントのそれぞれを動作させるとともに、
前記取引モデルに対応して、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれが出力する前記売買種別、前記注文価格、前記注文数量の入力に基づいて、前記市場取引価格、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれの取引約定実績を決定して出力する取引エージェントを動作させる処理部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力取引模擬装置、電力取引模擬方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
国内卸電力市場には、板寄せ方式で約定するスポット市場と、ザラバ取引(以下、単に「ザラバ」ともいう。)の時間前市場がある。スポット市場は、均衡的な価格付けで約定するため、注文価格と約定価格は一致せず、計画通りに約定しないこともある。
【0003】
一方、ザラバの時間前市場は、電力供給の当日まで市場価格に応じて取引を行うことができ、発電量の予測変化などに起因する需給計画の変動分を補填する場としての役割が期待されている。また、再生可能エネルギーを利用した電源の拡大に合わせて、ザラバの時間前市場での取引の増加も見込まれる。
【0004】
このようなザラバを対象にした電力取引の支援方法として、例えば、市場実績データを用いて市場価格変動を模擬(シミュレーション)する方法や、環境データ・約定量実績データに基づいた電力価格予測方法がある。
【0005】
また、太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用した電源設備を保有する需要家の余剰電力と、再生可能エネルギーを利用した電力を安価に購買したい需要家との間で、電力オークションを介してP2P(Peer to Peer)形態の電力取引が行われるようになることも見込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-184246号公報
【特許文献2】特開2019-46281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、電力の市場価格は、電力需給バランスや需要家投資行動などの複数の要因に応じて時間的に変化する。しかしながら、従来技術では、電力取引の実績データが不充分な状態では、電力取引を高精度に模擬することができなかった。
【0008】
そこで、上記課題を達成するために本発明の実施形態は、電力取引の実績データが不充分な状態でも、電力取引を高精度に模擬することが可能な電力取引模擬装置、電力取引模擬方法、および、プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の電力取引模擬装置は、一日を複数に分割した時間帯ごとの電力商品の売買取引を模擬するための複数の事業者モデル、および、取引モデルを記憶する記憶部と、複数の前記事業者モデルのそれぞれに対応して、電力需給想定、市場取引価格、取引約定実績の入力に基づいて、電力取引の売買種別、注文価格、注文数量を決定して出力する複数の注文行動エージェントのそれぞれを動作させるとともに、前記取引モデルに対応して、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれが出力する前記売買種別、前記注文価格、前記注文数量の入力に基づいて、前記市場取引価格、複数の前記注文行動エージェントのそれぞれの取引約定実績を決定して出力する取引エージェントを動作させる処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態における電力取引の模擬の概要を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態における情報処理装置の機能構成を示す図である。
図3図3は、第1実施形態の情報処理装置による電力取引の模擬の処理を示すフローチャートである。
図4図4は、第1実施形態における需要家モデルの費用特性、効用特性の説明図である。
図5図5は、第1実施形態における約定量実績に応じたザラバ注文のための基準価格の算出法の説明図である。
図6図6は、第1実施形態におけるザラバ注文特性と注文価格の関係を示す図である。
図7図7は、第1実施形態におけるザラバオークションモデルの説明図である。
図8図8は、第1実施形態におけるザラバオークションの模擬結果の一例を示す図である。
図9図9は、第2実施形態における電力取引の模擬の概要を示す模式図である。
図10図10は、第2実施形態における発電事業者モデルの費用特性と、小売事業者モデルの効用特性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電力取引模擬装置、電力取引模擬方法、および、プログラムの実施形態(第1実施形態、第2実施形態)について、図面を参照して説明する。なお、上述のように、電力市場には、板寄せ方式で約定するスポット市場と、ザラバの時間前市場がある。スポット市場では、発電事業者と小売事業者は、電力取引市場において事業に応じた入札を行うので、発電事業者と小売事業者の入札を1日単位で全てまとめて突き合わせ、需要供給の関係で価格と量を均衡させる。
【0012】
また、実際の需要供給の関係は、固定的なものではなく、発電設備の故障等による電力供給の変動や、気温の変動などによる電力需要の変動などが生じる。そこで、ザラバの時間前市場は、この需要供給関係の変動を吸収し、調整するための場であり、一日を電力の計量単位(例えば、毎時0分~30分、30分~60分)で分割した48個の取引時間帯の電力商品に対してそれぞれ個別に売買注文に応じて価格と量を約定させる。
【0013】
以下、第1実施形態では、需要家同士によるP2P形態の電力オークション取引を模擬(シミュレーション)する技術について説明する。また、第2実施形態では、発電事業者と小売事業者による電力市場取引を模擬する技術について説明する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態では、再エネ(再生可能エネルギー)由来の余剰電力を持つ需要家と、再エネ電力を安価に購入したい需要家とのP2P形態の電力オークション取引を対象にした電力取引模擬について説明する。
【0015】
図1は、第1実施形態における電力取引の模擬の概要を示す模式図である。また、図2は、第1実施形態における情報処理装置1の機能構成を示す図である。
【0016】
第1実施形態の電力取引模擬方法は、図2に示す情報処理装置1(電力取引模擬装置)によって実現できる。情報処理装置1は、記憶部2と、入力部3と、表示部4と、通信部5と、処理部6と、を備える。
【0017】
記憶部2は、各種情報を記憶する手段であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などによって実現される。記憶部2の詳細については後述する。
【0018】
入力部3は、ユーザによる情報入力手段であり、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
【0019】
表示部4は、情報表示手段であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等によって実現される。
【0020】
通信部5は、外部装置との通信を行うための通信インターフェースである。
【0021】
処理部6は、各種演算処理を行う手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって実現される。処理部6の詳細については後述する。
【0022】
電力取引模擬方法は、例えば、情報処理装置1において用いられるソフトウェアとして導入することができる。また、電力取引模擬方法を実現するための装置は単独でなくてもよい。複数の装置の場合、1拠点に配置したものであってもよいし、あるいは、遠隔地に配置して連携するシステムであってもよい。
【0023】
なお、以下において、例えば、需要家モデルとは、需要家の特性等を反映させるように作成されたプログラム、または、そのプログラムの実行を指し、注文行動エージェントを含む。また、例えば、注文行動エージェントとは、需要家モデル等の一部であり、自律的に判断、決定、動作等の振る舞いを行うソフトウェアモジュールを指す。また、他のモデルやエージェントについても同様である。また、以下では、エージェントの動作についても、説明の便宜上、動作主体をモデルと記載する場合もある。
【0024】
図1に示すように、ここでは、複数の売手の需要家モデル(需要家AモデルMa等)、複数の買手の需要家モデル(需要家BモデルMb等)、P2P電力オークションモデルMc、マーケットメーカモデルMmを想定する。
【0025】
需要家AモデルMaは、売注文行動エージェントAaを含む。
需要家BモデルMbは、買注文行動エージェントAbを含む。
P2P電力オークションモデルMcは、取引エージェントAcを含む。
マーケットメーカモデルMmは、マーケットメークエージェントAmを含む。
【0026】
ここで、図2の記憶部2と処理部6について説明する。記憶部2は、一日を複数に分割した時間帯ごとの電力商品の売買取引を模擬するための複数の事業者モデル(需要家AモデルMa、需要家BモデルMb)、および、取引モデル(P2P電力オークションモデルMc)を記憶する。また、記憶部2は、電力の売買取引に関するその他の各種情報(オークション取引条件(取引手数料、取引単位)、各種パラメータ等)を記憶する。
【0027】
処理部6は、注文行動エージェント処理部61、取引エージェント処理部62、制御部63を備える。
【0028】
注文行動エージェント処理部61は、事業者モデル(需要家モデル等)に基づいて、注文行動エージェント(売注文行動エージェントAa、買注文行動エージェントAb)の処理を実行する。例えば、注文行動エージェント処理部61は、複数の事業者モデルのそれぞれを用いて、電力需給想定(電力需要想定、電力供給想定)、市場取引価格、取引約定実績の入力に基づいて、電力取引の売買種別、注文価格、注文数量を決定して出力する複数の注文行動エージェントのそれぞれを動作させる。以下、注文行動エージェント処理部61による処理について説明する場合に。、動作主体を注文行動エージェントとする場合がある。
【0029】
取引エージェント処理部62は、取引モデル(P2P電力オークションモデルMc)を用いて、複数の注文行動エージェントのそれぞれが出力する売買種別、注文価格、注文数量の入力に基づいて、市場取引価格、複数の注文行動エージェントのそれぞれの取引約定実績を決定して出力する。
【0030】
例えば、注文行動エージェントは、電力需給想定の変化、および、再生可能エネルギーを利用する電源の発電量予測の変化、の少なくともいずれかがあった場合に、電力取引の売買種別、注文価格、注文数量の少なくともいずれかの変化を模擬する。
【0031】
また、例えば、注文行動エージェントは、電力取引の収益推定値をさらに出力する。ここで、収益とは、このP2P電力オークションによる取引時の収益と、通常取引(小売事業者との売買取引)時の収益の差分を指す。
【0032】
また、例えば、注文行動エージェントは、事業者モデルにおける順張りと逆張りに関する注文行動の投資行動特性に基づいて、電力取引の収益推定値の大小に応じて、投資行動特性を更新する。
【0033】
また、例えば、取引エージェントAcは、複数の取引形態(寄り付き(板寄せ)とオークション(ザラバ))を模擬する。その場合、注文行動エージェントは、事業者モデルにおける複数の取引形態への注文割合に関する注文行動の取引配分特性に基づいて、電力取引の収益推定値の大小に応じて、取引配分特性を更新する。
【0034】
また、例えば、注文行動エージェントは、電源構成、投資行動特性、取引配分特性、のうち1つ以上の差異に伴う、収益推定値の比較結果を出力する。
【0035】
また、例えば、取引エージェントAcは、市場流動性に関する指標情報をさらに出力する。
【0036】
また、取引エージェントは、電力における再生可能エネルギー由来電力の比率、CO2原単位、発電した地域、のうち1つ以上が異なる複数の電力商品取引を模擬する。
【0037】
また、取引エージェントは、マーケットメーカの有無、取引単位、取引手数料、値幅制限のうち1つ以上の差異に伴う市場流動性に関する指標情報の比較結果を出力する。
【0038】
以下、さらに具体的な例を用いて説明する。
【0039】
需要家AモデルMaは、所定のオークション取引商品kの対象時間(例えば、商品k=22、10:30~11:00電力kWh)に対して、需要家A内の再エネ発電出力(の予測値)が電力需要よりも大きく、余剰電力の発生を見込む需要家のモデルである。そして、需要家AモデルMaは、再エネ出力予測の電力量(kWh)、電力需要想定量(kWh)と、行動特性値(市場選択特性、注文価格特性、ザラバ注文特性)を入力する。
【0040】
なお、オークション時間中に気象予報情報に変化があり、再エネ出力予測の電力量や電力需要想定量が変化する模擬条件の場合、再エネ出力予測の電力量と電力需要想定量は変化後の値を入力する。また、需要家AモデルMaは、P2P電力オークションモデルMcから、オークション価格、需要家AモデルMaの注文の約定結果(約定有無、約定した場合の約定価格、約定数量)を入力する。
【0041】
また、需要家AモデルMaは、限界費用特性、売注文行動エージェントAaで算出した売注文の注文価格、注文数量(kWh)をP2P電力オークションモデルMcに出力する。ここで、限界費用特性は、P2P電力オークションの取引手数料を反映したものを出力する。また、注文価格、注文数量は、P2P電力オークションの取引価格刻み(ティックサイズ)、取引単位(kWh)を反映したものを出力する。また、需要家AモデルMaは、需要家AモデルMaの注文の約定結果と、限界費用特性をもとに、P2P電力オークションの取引における収益の推定値(推定収益)を算出する。
【0042】
一方、需要家BモデルMbは、同じ所定の電力取引対象時間帯において、再エネ出力(の予測値)が電力需要よりも小さく、電力の不足分として再エネ電力を安価に購入したい需要家のモデルである(発電設備等を持たない需要家を含む)。需要家BモデルMbの構成は需要家AモデルMaと類似するが、異なる点として、限界効用特性、買注文行動エージェントAbで算出した買注文の注文価格、注文数量(kWh)をP2P電力オークションモデルMcに出力する。
【0043】
なお、売手の需要家モデルや、買手の需要家モデルは、例えば、100以上のモデルを用いることができる。また、売手の需要家モデル、買手の需要家モデルは、同数である必要はない。
【0044】
また、P2P電力オークションモデルMcは、寄り付き(板寄せ)、オークション(ザラバ)のそれぞれの形態の電力取引ごとに、買注文と売注文のマッチングを判定し、取引価格、需要家モデルごとの注文の約定結果(約定有無、約定した場合の約定価格、約定数量)を出力する。また、P2P電力オークションモデルMcは、オークションの約定結果をもとに、オークション価格のボラティリティ(価格ボラティリティ)やオークション流動性の指標(市場流動性に関する指標の例)を算出して出力する。
【0045】
なお、市場流動性に関する指標の例としては、例えば、以下の(1)~(3)が考えられる。
(1)1取引期間の約定量(kWh)
(2)ビッド・アスク・スプレッドの平均値(円)
=最良買気配と最良売気配の剥離幅の1取引期間の平均値
(3)値幅・出来高比率(円/kWh)
=(1取引期間における約定価格の最大値と最小値の差)÷(1取引期間の約定量)
【0046】
また、マーケットメーカモデルMmは、P2P電力オークションモデルMcから買注文、売注文の板情報を入力し、売注文、買注文の両方の注文を出力する。
【0047】
また、制御部63は、注文行動エージェント処理部61、取引エージェント処理部62による処理以外の処理を実行する。
【0048】
図3は、第1実施形態の情報処理装置1による電力取引の模擬の処理を示すフローチャートである。前半では寄り付き(板寄せ)に関する処理を行い、後半ではオークション(ザラバ)に関する処理を行う。
【0049】
まず、ステップS1において、処理部6は、オークション取引条件(取引手数料、取引単位)の情報を記憶部2から入力する。
【0050】
ステップS2~S22において、処理部6は、それぞれの日にち(d=1,…,Nd)についての処理を行う。
【0051】
ステップS3において、処理部6は、それぞれの需要家モデルの行動特性(市場選択特性、注文価格特性、ザラバ注文特性)を選定する。
【0052】
ステップS4~S20において、処理部6は、それぞれのオークション取引商品(k=1,…,Nk)についての処理を行う。
【0053】
ステップS5~S9において、処理部6は、それぞれの需要家モデル(i=1,…,Ni)についての処理を行う。
【0054】
ステップS6において、注文行動エージェント(売注文行動エージェントAa、買注文行動エージェントAb)は、再エネ出力予測と電力需要想定を行う。
【0055】
次に、ステップS7において、注文行動エージェントは、限界費用特性、限界効用特性を選定する。
【0056】
ここで、図4は、第1実施形態における、(a)売手需要家モデルの費用特性、(b)買手需要家モデルの効用特性の説明図である。図4を用いて、需要家AモデルMaの費用特性、需要家BモデルMbの効用特性の選定方法について説明する。
【0057】
余剰電力の売手の需要家AモデルMaは、図4(a)に示すように、小売事業者に単価Psで売電が可能である場合、P2P取引の手数料を含めて単価Ps未満でP2P取引により売電する経済的メリットはない。したがって、限界費用特性は単価Psより高い側に描かれる。なお、余剰電力量には予測誤差が含まれるので余剰電力予測量Qに近づくにつれて、その予想外れのリスクに見合うよう限界費用曲線は上がる。
【0058】
一方、再エネ電力の買手の需要家BモデルMbは、図4(b)に示すように、小売事業者から単価Pbで買電が可能である場合、P2P取引の手数料を含めて単価Pb以上でP2P取引により買電する経済的メリットはない。したがって、限界効用曲線は単価Pbより低い側に描かれる。また、需要電力量も同様に予測誤差が含まれるので需要想定電力量に近づくにつれて、その予想外れリスクに見合うよう限界効用曲線は下がる。
【0059】
図3に戻って、ステップS7の後、ステップS8において、注文行動エージェント処理部61は、寄り付き注文を行う。
【0060】
ステップS5~S9の後、ステップS10において、取引エージェント処理部62は、約定処理(板寄せ)を行う。例えば、各需要家モデルの注文価格特性α(後述)を加味した費用特性、効用特性をそれぞれ合成して、交点から約定価格が決定する板寄せ方式の模擬を行う。
【0061】
次に、ステップS11~S19において、処理部6は、それぞれのオークション取引時間(t=0,…,Nt)についての処理を行う。
【0062】
ステップS12~S18において、処理部6は、それぞれの需要家モデル(i=1,…,Ni)についての処理を行う。
【0063】
ステップS13において、注文行動エージェントは、再エネ出力予測と電力需要想定を行う。
【0064】
次に、ステップS14において、注文行動エージェントは、基準価格を算出する。
【0065】
また、需要家AモデルMaの市場選択特性β(0≦β≦1)は、再エネ出力から需要想定を差し引いた余剰電力量Qに合致する注文数量のうち、寄り付きに注文する割合を表す。寄り付きに注文しなかった余剰電力量(1-β)Q分の注文数量、および寄り付きで約定しなかった注文数はザラバのオークションに注文する。
【0066】
また、注文価格特性(板寄せ価格特性)α(0≦α≦1)は、板寄せ取引において売手の場合は限界費用特性を基準に1/(1-α)倍に上乗せした注文価格となること(図4(a))、買手の場合は限界効用特性を基準に注文価格から割り引く割合(図4(b))を示している。
【0067】
また、ザラバ注文特性γ(0≦γ≦1)は、基準価格Pfを基準に逆張りの価格水準で注文するファンダメンタル特性、オークション取引価格トレンドに順張りのタイミングで注文するテクニカル特性のうちのテクニカル特性の比率を表したものである。
この他に、最小注文単位数量などの行動特性を注文行動エージェントごとに入力してよい。
【0068】
ステップS14の後、ステップS15において、注文行動エージェントはザラバオークションへの注文を行う。ここで、図5を参照して、注文行動エージェントによるザラバオークションへの注文行動について説明する。
【0069】
図5は、第1実施形態における約定量実績に応じたザラバ注文のための基準価格の算出法の説明図である。売注文行動エージェントAaの場合は、オークション時間内に取引完了するように売電量の目標軌道を設けて、売電約定量が目標軌道より少ない場合(図5(a)の点P1~点P2)は約定を優先して基準価格を下げる。また、売電約定量が目標軌道より多い場合(図5(a)の点P2以降)は収益性を優先して基準価格を上げる特性を模擬する。
【0070】
これを図5(b)のフィードバック制御で模擬する。つまり、売電約定(数)量と売電量目標軌道の差を用いたPI制御(P:Proportional(比例) I:Integral(積分))によって、基準価格Pf(t)を算出する。なお、PI制御の代わりに、PID制御(D:Differential(微分))やP制御を使ってもよい。
【0071】
また、ザラバオークション価格P(t)に応じた期待リターンをもとに各需要家の注文行動を模擬する。期待リターンRe(t)と注文価格Ro(t)は以下の通りである。
【数1】
【0072】
なお、期待リターンRe(t)の右辺の第1項はファンダメンタル特性、第2項はテクニカル特性の期待リターンである。
【0073】
また、買注文行動エージェントAbの場合は、図6の注文価格特性となる。図6は、第1実施形態におけるザラバ注文特性と注文価格の関係を示す図である。また、図7は、第1実施形態におけるザラバオークションモデルの説明図である。また、図8は、第1実施形態におけるザラバオークションの模擬結果の一例を示す図である。
【0074】
買手の需要家モデルは順番(エージェント番号の順番)に一定間隔ごとに注文を出すものとする。
【0075】
図3のステップS15の後、ステップS16において、マーケットメーカモデルMmのマーケットメークエージェントAmは、注文を行う。例えば、マーケットメークエージェントAmは、P2P電力オークションモデルMcにおける買注文、売注文の板情報等に基づいて、買注文と売注文の中間を基準に所定の価格スプレッドの注文価格に売注文、買注文の両方の注文を出力する。
【0076】
次に、ステップS17において、P2P電力オークションモデルMcの取引エージェントAcは、ザラバの約定処理を行う。例えば、取引エージェントAcは、各需要家モデルの注文を元に、図7のように、価格優先、時間優先の原則で個別の注文を付け合わせて随時に取引を約定させるザラバ方式を模擬する。図7(a)は、マーケットメーカモデル無しのザラバオークションモデルである。図7(b)は、マーケットメーカモデルありのザラバオークションモデルである。
【0077】
また、図8は、ザラバオークションの模擬の一例を示す。再エネ余剰電力が大きい日時を想定した模擬((c)(d))では、そうでない模擬((a)(b))と比較して、オークション価格が低下している。
【0078】
図3のステップS4~S20の後、ステップS21において、各需要家モデルは、注文の約定結果等に基づいて、P2P電力オークションの取引における収益の推定値(推定収益)を算出する。
【0079】
図3のステップS2~S22の後、ステップS23において、取引エージェントAcは、オークション取引期間における約定価格、約定量、あるいは注文価格の模擬結果をもとに、オークション価格のボラティリティやオークション流動性情報(スプレッド、デプスなど)を算出する。これで、図3の説明を終了する。
【0080】
なお、需要家モデルは、推定収益Rが向上するように行動特性を更新し、需要家の学習を模擬する。一例として、市場選択特性βを以下の式で示す勾配法アルゴリズムで更新する。R(d)、R(d-1)はそれぞれ当日、前日の同時間を対象にしたP2Pオークションの推定収益、Δβは更新幅である。なお、Δβは需要家モデル毎に異なるものとしてもよい。また、sign(・)は、(・)内の数の符号に応じて-1,0,1のいずれかの値を返す符号関数である。
【数2】
【0081】
さらに、予め設定したルールに基づき自動注文を行うアルゴリズム取引を模擬した注文行動エージェントを構築して、模擬に導入してもよい。さらに、AI(Artificial Intelligence)によって学習するアルゴリズムを注文行動エージェントに導入してもよい。
【0082】
また、再エネ電力と非再エネ電力商品の取引オークション、あるいは、発生した地域が異なる電力商品を取引するオークション、小口を含む複数取引単位(例えば、1kWhでなく0.1kWh)の電力商品を含む取引オークション等を対象として電力取引の模擬を実施することもできる。
【0083】
このように、第1実施形態によれば、電力取引の実績データが不充分な状態でも、電力取引を高精度に模擬することができる。具体的には、以下の通りである。
【0084】
取引実績がなくデータが揃っていない電力取引の形態においても、経済原理に基づいて構築した売手の費用特性および買手の効用特性と、取引者の行動特性の組合せを持つ複数の注文行動エージェントを用いることで、高精度な電力取引の模擬を実現することができる。また、約定量実績に基づいて注文のための基準価格を注文行動エージェントが算出するので、オークション全体の需給バランスを反映したオークション価格変化を模擬することができる。
【0085】
また、所定期間ごとの推定収益結果に基づき、推定収益が向上するように注文行動エージェントの行動特性を更新することで、取引経験をもとに学習して注文行動を変化する取引者を含む電力取引の模擬を実現することができる。さらに、注文行動エージェントの行動特性と推定収益の関係を比較し、収益性を高めるための行動特性を推定することで、各取引者の電力取引支援に役立てることもできる。
【0086】
また、取引時間における太陽光発電出力予測の変化や電力需要予測の変化を反映したP2P電力オークションの取引価格変化の模擬を含む電力取引の模擬を実現することができる。
【0087】
また、P2P電力取引オークションの最小単位や取引手数料の変更時、マーケットメーカ導入時における価格ボラティリティやオークション流動性等の相対的変化の大きさを模擬で推定することができる。さらに、オークション流動性を確保するためのP2P電力オークションのシステム設計の支援に役立てることもできる。
【0088】
また、注文行動エージェントが電源構成、投資行動特性、取引配分特性のうち1つ以上の差異に伴う収益推定値の比較結果を出力(表示)するようにすれば、どのパラメータが収益にどの程度影響しているのかを知る参考にすることができる。
【0089】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については、重複する説明を適宜省略する。図9は、第2実施形態における電力取引の模擬の概要を示す模式図である。また、図10は、第2実施形態における発電事業者モデルの費用特性と、小売事業者モデルの効用特性の説明図である。
【0090】
第2実施形態では、図9に示すように、複数の注文行動エージェントと板寄せ・ザラバ約定計算で、複数の発電事業者と小売事業者等が参加する電力市場取引を模擬する。具体的には、モデルとして、発電事業者AモデルM1、発電事業者BモデルM2、小売事業者AモデルM3、小売事業者BモデルM4、電力市場モデルM5を備える。
【0091】
発電事業者AモデルM1は、売注文行動エージェントAdを含む。
発電事業者BモデルM2は、売注文行動エージェントAeを含む。
小売事業者AモデルM3は、買注文行動エージェントAfを含む。
電力市場モデルM5は、取引市場エージェントAg(取引エージェントの例)を含む。
【0092】
各発電事業者モデルは、再エネ出力予測、電源・コスト特性、行動特性(市場選択特性、注文価格特性、ザラバ注文特性)を入力する。そして、各発電事業者モデルは、模擬結果をもとに各発電事業者の推定収益を出力する。小売事業者モデルは、図1の買手の需要家モデルとほぼ同様なので、説明を省略する。
【0093】
また、発電事業者モデルと小売事業者モデルの費用特性、効用特性は、図10に示すように想定できる。図10(a)に示すように、発電事業者モデルの費用特性は、発電電力量が増加するにつれて電力単価が階段状に増加するものとして定義できる。また、図10(b)に示すように、小売事業者モデルの効用特性は、需要想定電力量が増加するにつれて電力単価が折れ線状に減少するものとして定義できる。
【0094】
なお、実績データがある場合には、市場価格変動特性を合わせるように、各事業者の電源コスト特性や行動特性を決めるようにしてもよい。
【0095】
このようにして、第2実施形態によれば、経済原理に基づいて構築した発電事業者の費用特性および小売事業者の効用特性と、取引者の行動特性の組合せを持つ複数の注文行動エージェントを用いることで、電力需給バランスと取引事業者の行動特性の双方を反映した電力取引模擬を実現ことができる。また、約定量実績に基づいて注文のための基準価格を各注文行動エージェントが算出するので、市場全体の需給バランスに応じた市場価格変化を模擬することができる。
【0096】
また、取引時間における太陽光発電出力予測の変化や電力需要予測の変化を反映した電力取引の市場価格変化の模擬を含む電力取引模擬を実現することができる。
【0097】
また、発電事業者の電源構成や小売事業者の行動特性が各事業者の収益性に係わる相対的な影響を模擬で推定することができる。さらに、電力取引における収益性を高めるための発電事業者の電源構成や小売事業者の行動特性(市場選択、注文価格特性、ザラバ注文特性)を模擬で推定することで、各事業者の電力取引支援に役立てることができる。
【0098】
本実施形態の情報処理装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されるようにしてもよい。
【0099】
また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、当該プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0100】
また、当該プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するようにしてもよい。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1…情報処理装置、2…記憶部、3…入力部、4…表示部、5…通信部、6…処理部、61…注文行動エージェント処理部、62…取引エージェント処理部、63…制御部、Aa、Ad、Ae…売注文行動エージェント、Ab、Af…買注文行動エージェント、Ac…取引エージェント、Ag…取引市場エージェント、Ma…需要家Aモデル、Mb…需要家Bモデル、Mc…P2P電力オークションモデル、Mm…マーケットメーカモデル、M1…発電事業者Aモデル、M2…発電事業者Bモデル、M3…小売事業者Aモデル…、M4…小売事業者Bモデル、M5…電力市場モデル
図1
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図6
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図8
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図10