(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185619
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/361 20110101AFI20221208BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221208BHJP
H04N 5/243 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H04N5/361
H04N5/225 300
H04N5/243
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093345
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克征
【テーマコード(参考)】
5C024
5C122
【Fターム(参考)】
5C024CX32
5C024EX43
5C024GX02
5C024GZ36
5C024HX10
5C122EA23
5C122FC02
5C122FC06
5C122FG02
5C122FG11
5C122HA86
5C122HB01
5C122HB02
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】OBクランプ処理後の動画像またはライブビュー画像の画像品質の低下を抑制する。
【解決手段】撮像装置は、有効領域に含まれる画素と遮光領域に含まれる画素とを有する撮像素子と、遮光領域の画素から生成された信号に基づいて基準値を設定する設定部と、有効領域の画素から生成された信号を、基準値に基づいて補正する補正部と、を備え、設定部は、連続して画像を取得するときに所定の撮影条件が満たされると、基準値を再設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効領域に含まれる画素と遮光領域に含まれる画素とを有する撮像素子と、
前記遮光領域の画素から生成された信号に基づいて基準値を設定する設定部と、
前記有効領域の画素から生成された信号を、前記基準値に基づいて補正する補正部と、を備え、
前記設定部は、連続して画像を取得するときに所定の撮影条件が満たされると、前記基準値を再設定する、撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記補正部は、前記有効領域の画素から生成された信号の黒レベルを補正する、撮像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像装置において、
前記設定部は、所定の期間の経過または所定のフレーム数の撮影ごとに、前記基準値を再設定する、撮像装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記設定部は、撮像感度が変更されると、前記基準値を再設定する、撮像装置。
【請求項5】
請求項3に記載の撮像装置において、
前記設定部は、撮像感度が変更されると、前記基準値を再設定し、
前記撮像感度に基づいて、前記所定の期間または前記所定のフレーム数を変更する制御部を備える、撮像装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記設定部は、前記撮像素子の駆動モードが変更されると、前記基準値を再設定する、撮像装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記有効領域に含まれる前記画素は、撮影光学系を介して入射した光を光電変換して信号を生成し、
前記遮光領域に含まれる前記画素は、前記撮影光学系を介して入射した光を受光することなく信号を生成する、撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の撮像装置において、
前記有効領域に含まれる前記画素は、前記撮影光学系からの光が通過するマイクロレンズと、マイクロレンズを通過した光を光電変換して電荷を生成する光電変換部と、を備え、
前記遮光領域に含まれる前記画素は、前記撮影光学系からの光が通過するマイクロレンズと、マイクロレンズを通過した光を光電変換して電荷を生成する光電変換部と、前記マイクロレンズの入射側に設けられる遮光部とを備える、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、OB領域の画素からの出力に基づいてノイズ成分等を補正する撮像装置が知られている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、OB領域の出力と有効領域の出力との間に生じる差(OB段差)に起因して、フレームごとに画像の明るさが安定せず、画像品質が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、撮像装置は、有効領域に含まれる画素と遮光領域に含まれる画素とを有する撮像素子と、前記遮光領域の画素から生成された信号に基づいて基準値を設定する設定部と、前記有効領域の画素から生成された信号を、前記基準値に基づいて補正する補正部と、を備え、前記設定部は、連続して画像を取得するときに所定の撮影条件が満たされると、前記基準値を再設定する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】実施の形態に係る撮像装置の要部構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図3】撮像素子からの信号の出力値を模式的に示す図である。
【
図4】動画像撮影時におけるタイミングチャートである。
【
図5】動画像撮影時またはライブビュー画像撮影時の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図面を参照しながら、実施の形態による撮像装置について説明を行う。
図1は、実施の形態に係る撮像装置の一例であるカメラ1の要部構成を模式的に示すブロック図である。カメラ1は、撮影光学系(結像光学系)2と、撮像素子3と、撮像制御部4と、メモリ5と、表示部6と、操作部7とを備える。撮影光学系2は、例えば焦点調節レンズ(フォーカスレンズ)を含む複数のレンズ及び開口絞りを有し、撮像素子3に被写体像を結像する。なお、撮影光学系2は、カメラ1から着脱可能にしてもよい。
【0007】
撮像素子3は、CMOSイメージセンサ等の撮像素子である。撮像素子3は、撮影光学系2を通過した光束を受光し、撮影光学系2により形成される被写体像を撮像する。撮像素子3には、光電変換部を有する複数の画素が二次元状(行方向及び列方向)に配置される。光電変換部は、フォトダイオード(PD)によって構成される。撮像素子3は、受光した光を光電変換して信号を生成し、生成した信号を撮像制御部4に出力する。なお、撮像素子3の詳細については説明を後に行う。
【0008】
撮像素子3は、撮像感度(露光感度)を、例えば所定のステップで変更可能に構成されている。撮像感度とは、撮像素子3に蓄積される電荷の検出感度、または不図示の増幅回路の増幅利得に対応する量である。撮像素子3の撮像感度を変更する操作(ゲイン変更操作)は、ユーザにより後述の操作部7を用いて行われる。
また、撮像素子3は、静止画撮影と、動画像撮影と、表示部6に被写体のスルー画像(ライブビュー画像)を表示するライブビュー画像撮影とを行う際に、異なる駆動モードで動作する。この場合、撮像素子3は、静止画撮影と、動画像撮影と、ライビュビュー画像撮影とにおいて、信号を生成する画素行の数を異ならせる。例えば、静止画撮影の場合には撮像素子3は全ての画素行にて信号を生成し、動画像撮影の場合には撮像素子3は所定の画素行ごとに信号を生成する。ライブビュー画像撮影の場合には撮像素子3は所定の画素行ごとに、動画像撮影のときよりも少ない画素行にて画像を生成する。
【0009】
メモリ5は、メモリカード等の記憶媒体である。メモリ5には、画像データ、制御プログラム等が記録される。メモリ5へのデータの書き込み、及びメモリ5からのデータの読み出しは、撮像制御部4によって制御される。表示部6は、画像データに基づく画像、シャッター速度、絞り値等の撮影に関する情報、及びメニュー画面等を表示する。操作部7は、レリーズボタン、電源スイッチ、各種モードを切り替えるためのスイッチ、上述した撮像感度を変更させるゲイン変更操作のための感度設定スイッチ、撮像素子3の駆動モードを切り替えるスイッチ等の各種設定スイッチ等を含み、それぞれの操作に基づく信号を撮像制御部4へ出力する。
【0010】
撮像制御部4は、CPU、FPGA、ASIC等のプロセッサ、及びROM、RAM等のメモリにより構成され、制御プログラムに基づきカメラ1の各部を制御する。撮像制御部4は、撮像素子3を制御する信号を撮像素子3に供給して、撮像素子3の動作を制御する。撮像制御部4は、静止画撮影を行う場合、動画像撮影を行う場合、ライブビュー画像撮影を行う場合等に、撮像素子3を駆動モードで駆動させ、被写体像を撮像させて信号を生成させる。
【0011】
撮像制御部4は、撮像素子3にて生成される信号に各種の画像処理を行って画像データ(静止画像データ、動画像データ、ライブビュー画像データ)を生成する。
撮像制御部4は、設定部41と、補正部42と、制御部43とを有する。設定部41は、後述する撮像素子3の遮光領域の画素にて生成された信号に基づいて基準値(オプティカルブラッククランプ値)を設定する。設定部41は、連続して画像を取得するとき、所定の撮影条件が満たされると、基準値を再設定する。補正部42は、後述する撮像素子3の有効領域の画素にて生成された信号の黒レベルを、設定部41により設定された基準値に基づいて補正する。制御部43は、連続して画像を取得するときに、撮像素子3に設定された撮像感度に基づいて、基準値を設定するための周期である所定期間またはフレーム数を変更する。上記の設定部41と、補正部42と、制御部43とについては、詳細な説明を後述する。
なお、設定部41、補正部42および制御部43のうちの少なくとも1つは、撮像素子3に含まれても良い。
【0012】
次に、
図2を参照して、本実施の形態の撮像素子3について説明する。
図2は撮像素子3の構成を模式的に示す図であり、
図2(a)は撮像素子3の平面を示し、
図2(b)および(c)は、撮像素子3に設けられた画素の断面構造を模式的に示す図である。
図2(a)に示すように、撮像素子3には、その中央部に形成された有効領域R1と、有効領域R1の周囲に配置されるOB領域(オプティカルブラック領域)R2とが設けられる。有効領域R1とOB領域R2とには、それぞれ複数の画素が2次元状に配列される。
【0013】
図2(b)は有効領域R1に配列される画素30aの断面構造を模式的に示す。画素30aは、撮影光学系2からの光を通過させるマイクロレンズ301と、マイクロレンズ301を通過した光を光電変換して電荷を生成する光電変換部302とを有する。撮像素子3の有効領域R1に含まれる画素30aにて生成された信号は画像の絵柄の形成に用いられる被写体像に応じた画像信号である。
【0014】
図2(c)はOB領域R2に配列される画素30bの断面構造を模式的に示す。画素30bは、画素30aと同様のマイクロレンズ301および光電変換部302に加え、マイクロレンズ301の入射側に遮光部303を有する。遮光部303は、例えばアルミニウム膜等により構成される。なお、遮光部303は、画素30bごとに設けられてもよいし、複数の画素30bごとに設けられてもよい。また、遮光部303は、マイクロレンズ301の下部(マイクロレンズ301と光電変換部302との間)に配置されても良い。上述したように、画素30bは遮光部303を有するため、OB領域R2は被写体からの光束が入射しない領域(遮光領域)である。OB領域R2に含まれる画素30bにて生成される信号は、有効領域R1に含まれる画素30aから出力される信号の暗電流に起因する成分の除去に用いられる。すなわち、OB領域R2に含まれる画素30bにて生成された信号は、画像の絵柄の形成に用いられない、被写体像と無関係な信号である。
なお、
図2(c)に示す画素30bがOB領域R2に配列されるものに限定されない。例えば、
図2(d)の断面図に示すように、マイクロレンズ301と遮光部303とを有し、光電変換部を備えていない画素30cがOB領域R2に配列されても良い。この場合も、遮光部303は複数の画素30cごとに設けられても良いし、また、遮光部303がマイクロレンズ301の下部に配置されても良い。
【0015】
撮像制御部4の設定部41は、撮影(静止画像撮影、動画像撮影、ライブビュー画像撮影)時に、OB領域R2に含まれる画素30bにて生成された信号に基づいて基準値を設定する。この場合、設定部41は、OB領域R2の画素30bにて生成された信号の平均値を基準値として設定する。
図3は、撮像素子3にて生成された信号の出力値を模式的に示す図である。
図3において、縦軸を撮像素子3にて生成された信号の出力値、横軸を撮像素子3の画素の水平方向(行方向)の位置を示し、撮像素子3にて生成された信号の出力値、すなわち明るさを符号L1で示す実線で表す。この場合、出力オフセット成分DがOB領域R2に含まれる画素30bにて生成された信号の出力値(すなわち、基準値)に相当する。
【0016】
補正部42は、撮像素子3の有効領域R1に含まれる画素30aにて生成された信号の出力値から、設定部41により設定された基準値(すなわち、OB領域R2に含まれる画素30bにて生成された信号の出力値の平均値)を減算する。その結果、補正部42は、
図3における信号レンジPに含まれる信号、すなわち暗電流によるノイズが除去された画像信号を出力する(OBクランプ処理)。なお、出力オフセット成分D、すなわち暗電流による影響は温度等の要因で変化する。
【0017】
設定部41は、連続して画像を取得するとき(すなわち、動画像撮影時またはライブビュー画像撮影時)に所定の撮影条件が満たされると、上述のようにして設定した基準値を再設定する。換言すると、設定部41は、所定の撮影条件が満たされない場合は、既に設定した基準値の再設定を行わず、補正部42は設定済の基準値(すなわち直前のフレームの画像に使用した基準値と同じ値)を用いて次フレームの画像に対して補正を行う。
【0018】
上記の撮影条件としては、所定の期間の経過または所定フレーム数の撮影、撮像感度の変更、および撮像素子3の駆動モードの変更のうちの少なくとも1つである。
設定部41は、基準値を上述のようにして設定してから所定期間Tが経過すると、再度、OB領域R2に含まれる画素30bからの信号値から新たな基準値を設定する。この場合、撮像制御部4は、フレームレートtrに取得したフレーム数iを乗じて経過時間tp(=tr×i)を算出し、経過時間tpが所定期間T(T<tp=tr×i)を超えた場合に、所定期間Tが経過したと判断する。なお、撮像制御部4が不図示のタイマを有し、このタイマにより所定時間Tを計測してもよい。また、所定期間Tは、例えば数秒程度の時間の固定値であってもよいし、ユーザにより変更可能な値でもよい。または、所定時間Tに相当するフレーム数(すなわち、T/tr以上のフレーム数)の画像が撮影されると、設定部41は新たな基準値を設定する。この場合、フレーム数は固定値であってもよいし、ユーザにより設定可能は値であってもよい。
【0019】
設定部41は、撮像感度が変更されると、再度、OB領域R2に含まれる画素30bからの信号から新たな基準値を設定する。なお、制御部43は、変更された撮像感度に基づいて、上記の所定期間T(あるいは、所定期間Tに相当するフレーム数)を変更する。この場合、制御部43は、撮像感度が高感度に設定されると、所定期間Tが長くなるように設定する。
設定部41は、撮像素子3の駆動モードが変更されると、再度、OB領域R2に含まれる画素30bからの信号から新たな基準値を設定する。
【0020】
次に、動画像撮影またはライブビュー画像撮影時における基準値を設定するタイミングについて説明する。
図4は、動画像撮影時におけるタイミングチャートである。
図4において、横軸は時間であり、時刻t0にて動画像撮影が開始されたことを示している。
動画像撮影が開始されると、撮像制御部4は、第1フレームの画像を生成するために、撮像素子3を制御して、信号を生成させる。設定部41は、OB領域R2に含まれる画素30bからの信号に基づいて基準値を設定する。設定された基準値は、メモリ5に記憶される。補正部42は、メモリ5に記憶されている基準値を読み出し、有効領域R1に含まれる画素30aからの信号を、読み出した基準値を用いて補正する。基準値による補正が行われた信号に対して、撮像制御部4は各種の画像処理を施し、第1フレーム目の画像を生成する。生成された画像は、メモリ5に記憶されるとともに、表示部6に表示される。
【0021】
以後、所定期間Tが経過するまで、第2フレーム目以降の画像も同様にして生成される。すなわち、第2フレーム目以降に対しても、補正部42は、メモリ5に記憶された基準値(すなわち第1フレーム目の画像を生成する際に用いた基準値)を使用して、有効領域R1の画素30aにて生成された信号に対して補正を行う。
【0022】
所定期間Tが経過すると(時刻t1=t0+T)、設定部41は基準値を再設定する。
図4においては、時刻t1は第nフレーム目の画像の撮影のタイミングである。この場合、補正部42は、第nフレーム目の画像を生成する際には、第(n-1)フレーム目の画像を生成する際に使用した基準値(すなわち、メモリ5に記憶された基準値)を用いて有効領域R1の画素30aにて生成された信号に対して補正を行う。
【0023】
設定部41は、時刻t2において、第(n+1)フレーム目の画像の生成に際して撮像素子3のOB領域R2の画素30bにて生成された信号を用いて新たな基準値を設定する。設定部41は、新に設定された基準値をメモリ5に既に記憶された基準値に上書きして記憶する。補正部42は、第(n+1)フレーム目の画像を生成する場合に、メモリ5に新に記憶された基準値を使用して有効領域R1の画素30aにて生成された信号に対して補正を行う。
【0024】
以後、時刻t2から所定期間Tが経過するまでの間は、補正部42は、第(n+1)フレーム目の画像を生成する際に設定した基準値を用いて補正を行う。
なお、
図4を参照して行った上述の説明では、所定期間Tが経過した場合に基準値を再設定する場合を例に挙げたが、撮像感度の変更または撮像素子3の駆動モードが変更された場合も、設定部41は同様にして基準値を再設定する。すなわち、設定部41は、第nフレーム目の画像を撮影している際に、撮像感度の変更または撮像素子3の駆動モードが変更されると、第(n+1)フレーム目の画像の生成に際して撮像素子3のOB領域R2の画像からの信号を用いて基準値を設定する。
また、
図4は動画像撮影時のタイミングチャートを示しているが、ライブビュー画像撮影の場合でも、動画像撮影の場合と同様にして設定部41による基準値の設定が行われ、補正部42による補正が行われる。
【0025】
図5に示すフローチャートを参照して、本実施の形態におけるカメラ1の動画像撮影時またはライブビュー画像撮影時の動作について説明する。
図5に示すフローチャートの各処理は撮像制御部4でプログラムを実行して行われる。このプログラムは、メモリに格納されており、撮像制御部4により起動され、実行される。
【0026】
ステップS1においては、撮像制御部4は所定期間Tの値を設定して、処理はステップS2へ進む。この所定期間Tの値は、ユーザが操作部7を操作して設定することができる。ステップS2では、撮像制御部4はフレームカウンタiの値に1を追加し、処理はステップS3へ進む。ステップS3では、フレームカウンタiの値が1であるか否かを判定する。フレームカウンタiの値が1の場合には、ステップS3が肯定判定されて、処理はステップS4へ進む。フレームカウンタiの値が1より大きい場合には、ステップS3が否定判定されて、処理は後述するステップS7へ進む。
【0027】
ステップS4では、撮像制御部4は撮像素子3に撮像を行わせ、信号を生成させ、処理はステップS5へ進む。ステップS5では、設定部41はOB領域R2の画素30bにて生成された信号を用いて基準値を設定し、メモリ5に記憶して、処理はステップS6へ進む。ステップS6では、補正部42はステップS5で設定された基準値を用いて、有効領域R1の画素30aにて生成された信号を補正し、処理は後述するステップS9へ進む。
【0028】
ステップS3が否定判定されて進んだステップS7では、撮像制御部4は撮像素子3に次フレームの画像の撮像を行わせ、信号を生成させ、処理はステップS8へ進む。ステップS8では、補正部42はステップS5で設定された基準値を用いて有効領域R1の画素30aからの信号を補正し、処理はステップS9へ進む。ステップS9では、撮像制御部4は経過時間tpを算出して、処理はステップS10へ進む。この場合、撮像制御部4は、フレームレートtrに取得したフレーム数(すなわちフレームカウンタiの値)を乗じて経過時間tp(=tr×i)を算出する。
【0029】
ステップS10では、撮像制御部4は撮像感度が変更されたか否かを判定する。撮像感度が変更された場合には、ステップS10が肯定判定されて、処理はステップS2へ戻る。この場合、撮像制御部4はフレームカウンタiの値を0にリセットする。撮像感度が変更されていない場合には、ステップS10が否定判定されて、ステップS11へ進む。ステップS11では、撮像制御部4は撮像素子3の駆動モードが変更されたか(例えばライブビュー画像撮影から動画像撮影へ切り替えられたか)否かを判定する。撮像素子3の駆動モードが変更された場合には、ステップS11が肯定判定されて、処理はステップS2へ戻る。この場合、撮像制御部4はフレームカウンタiの値を0にリセットする。撮像素子3の駆動モードが変更されていない場合には、ステップS11が否定判定されて、処理はステップS12へ進む。
【0030】
ステップS12では、撮像制御部4はステップS9で算出した経過時間tpが所定期間Tを超えたか否かを判定する。経過時間tpが所定時間Tを超えた場合には、ステップS12が肯定判定されて、処理はステップS2へ戻る。この場合、撮像制御部4はフレームカウンタiの値を0にリセットする。経過時間tpが所定時間T以下の場合には、ステップS12が否定判定されて、処理はステップS13へ進む。
【0031】
ステップS13では、動画像撮影またはライブビュー画像撮影を終了するか否かを判定する。動画像撮影またはライブビュー画像撮影を終了する場合、例えば静止画像の撮影やカメラ1の電源オフがユーザにより指示された場合、ステップS13が肯定判定され処理を終了する。動画像の撮影またはライブビューモード画像の撮影を終了しない場合、ステップS13が否定判定されて、処理はステップS2へ戻る。
【0032】
なお、基準値の再設定をする際の撮影条件として撮像感度の変更を含まない場合には、上記のステップS10の処理をスキップしてよい。また、基準値の再設定をする際の撮影条件として撮像素子3の駆動モードの変更を含まない場合には、上記のステップS11の処理をスキップしてよい。
また、制御部43が変更された撮像感度に基づいて所定期間Tを変更する場合には、ステップS10が肯定判定されると、制御部43が新たな所定期間Tを設定して、処理がステップS2に戻ればよい。
また、撮影されたフレーム数に基づいて所定期間Tの経過を判断する場合には、ステップS9の処理をスキップして、ステップS12においてフレームカウンタiの値がT/tr以上である場合に、処理がステップS2へ戻るようにすればよい。
【0033】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)撮像素子3は、有効領域R1に含まれる画素30aとOB領域R2(遮光領域)に含まれる画素30bとを有する。設定部41は、OB領域R2の画素30bから生成された信号に基づいて基準値を設定し、補正部42は、有効領域R1の画素30aから生成された信号を、基準値に基づいて補正する。そして、設定部41は、連続して画像を取得するときに所定の撮影条件が満たされると、基準値を再設定する。これにより、動画像撮影またはライブビュー画像撮影の際に、複数のフレームの画像を生成する際に、同一の基準値を用いてOBクランプ処理を行うことができる。
OB領域の画素で生成された信号と有効領域の画素で生成された信号との間に出力値に差(OB段差)がある場合、OBクランプ処理後の有効領域の画素にて生成された信号の出力値が想定した値よりも高い値、または低い値になる。動画像またはライブビュー画像の撮影時にOB段差が毎フレームごとに発生すると、各フレームの画像を生成するごとに基準値を設定してOBクランプ処理が行われる場合、生成された動画像またはライブビュー画像が各フレームごとに画像全体の明るさが異なり、ちらつきが生じる。本実施の形態においては、複数のフレーム画像に対して同一の基準値を設定してOBクランプ処理を行うため、各フレームの画像を生成するごとに基準値を設定する場合と比較して、上記のちらつきの発生を抑制し、画像品質の劣化を抑えることができる。
【0034】
(2)設定部41は、所定の期間Tの経過または所定のフレーム数の撮影ごとに、基準値を再設定する。これにより、各フレームごとに基準値を設定してクランプ処理をする場合と比較してフレームごとにちらつきが発生することを抑制できるとともに、撮像素子3の動作中の温度等の要因により変動した黒レベルの補正を行うことができる。
【0035】
(3)設定部41は、撮像感度が変更されると、基準値を再設定する。これにより、撮像感度ごとに基準値を記憶させる領域をメモリ5内に確保する必要がなくなる。また、撮像素子3の固体ごとに固定の基準値を調整する必要がなくなるので、生産時のタクトタイムを短縮することができる。
【0036】
(4)制御部43は、撮像感度に基づいて所定期間Tまたは所定のフレーム数を変更する。これにより、例えば高い撮像感度が設定された場合にはノイズが多くなるが、所定期間Tを長く設定する等、ノイズの発生状況に応じた所定期間Tにて基準値が更新されることにより、頻繁に基準値が変更されて、動画像またはライブビュー画像にちらつきが発生することを抑制することができる。
【0037】
(5)設定部41は、撮像素子3の駆動モードが変更されると、基準値を再設定する。これにより、駆動モードごとに基準値を記憶させる領域をメモリ5内に確保する必要がなくなる。また、撮像素子3の固体ごとに固定の基準値を調整する必要がなくなるので、生産時のタクトタイムを短縮することができる。
【0038】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…カメラ
3…撮像素子
4…撮像制御部
30a、30b…画素
41…設定部
42…補正部
43…制御部
303…遮光部