(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185631
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】超音波接合装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/08 20060101AFI20221208BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20221208BHJP
B29C 65/56 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B29C65/08
B23K20/10
B29C65/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093367
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】関本 隆司
【テーマコード(参考)】
4E167
4F211
【Fターム(参考)】
4E167AA22
4E167BE06
4E167BE09
4E167BE11
4F211AP06
4F211AP11
4F211AP12
4F211AR01
4F211AR07
4F211AR12
4F211TA01
4F211TA06
4F211TN22
4F211TN23
4F211TN75
4F211TQ05
(57)【要約】
【課題】超音波ホーンに対して超音波振動を間欠的に印加するようにして、樹脂過昇温を抑制し、無駄な時間を与えることなく効率よく高品質な超音波カシメ加工を行うことができるようにした超音波接合装置を提供する。
【解決手段】超音波ホーン40の先端を樹脂ボス31aの頭部に当接させ、超音波ホーンに超音波振動を印加することにより樹脂ボスを溶融して該樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工を行う超音波接合装置であって、超音波ホーンの変位を検知する変位計80と、変位計による超音波ホーンの変位量が所定の単位変位量になると超音波振動の印加を停止し、超音波ホーンの変位が停滞すると再び超音波振動の印加を開始し、この制御を前記樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工が完了するまで繰り返す超音波発振機70と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波ホーンの先端を樹脂ボスの頭部に当接させ、前記超音波ホーンに超音波振動を印加することにより前記樹脂ボスを溶融して該樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工を行う超音波接合装置であって、
前記超音波ホーンの変位を検知する変位検知手段と、
前記変位検知手段による前記超音波ホーンの変位量が所定の単位変位量になると前記超音波振動の印加を停止し、前記超音波ホーンの変位が停滞すると再び前記超音波振動の印加を開始し、この制御を前記樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工が完了するまで繰り返す超音波制御手段と、
を具備することを特徴とする超音波接合装置。
【請求項2】
前記超音波制御手段は、
前記変位検知手段による前記超音波ホーンの変位量が予め設定した目標変位量に達すると前記超音波カシメ加工の完了と判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波接合装置。
【請求項3】
前記超音波制御手段は、
前記超音波ホーンに印加される超音波振動がピークパワーに到達すると前記超音波カシメ加工の完了と判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波接合装置。
【請求項4】
超音波ホーンの先端を樹脂ボスの頭部に当接させ、前記超音波ホーンに超音波振動を印加することにより前記樹脂ボスを溶融して該樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工を行う超音波接合装置であって、
前記超音波ホーンの変位を検知する変位検知手段と、
前記変位検知手段による前記超音波ホーンの変位量が所定の単位変位量になると前記超音波振動の印加を停止し、一定時間経過すると再び前記超音波振動の印加を開始し、この制御を前記樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工が完了するまで繰り返す超音波制御手段と、
を具備することを特徴とする超音波接合装置。
【請求項5】
前記超音波制御手段は、
前記変位検知手段による前記超音波ホーンの変位が予め設定した目標変位量に達すると前記超音波カシメ加工の完了と判断する、
ことを特徴とする請求項4に記載の超音波接合装置。
【請求項6】
前記超音波制御手段は、
前記超音波ホーンに印加される超音波振動がピークパワーに到達すると前記超音波カシメ加工の完了と判断する、
ことを特徴とする請求項4に記載の超音波接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波接合装置に関し、詳しくは、加圧された超音波ホーンの先端を樹脂ボスの頭部に当接させ、該超音波ホーンに超音波振動を印加することにより樹脂ボスを溶融して超音波カシメ加工を行う超音波接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工を行う超音波接合装置としては特許文献1に開示された「超音波接合装置」が知られている。
【0003】
この特許文献1に開示された「超音波接合装置」は、アンビルに埋め込まれた熱流センサにより接合部位に発生する熱流をモニタし、このモニタした熱流に基づき超音波ホーンに印加する超音波振動を制御するように構成されており、その
図4乃至
図6には、樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工の実施例が記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1に開示された樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工は、超音波ホーンに対して超音波振動を連続して印加するように構成されているため、超音波振動の制御が難しく、また、超音波ホーン接触部の樹脂過昇温による樹脂の劣化、変色や、樹脂液化にともなうキャビテーション現象で超音波ホーン浸食(エロージョン)が生じ、超音波ホーンの寿命が短くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、超音波ホーンに対して超音波振動を間欠的に印加するようにして、樹脂過昇温を抑制し、無駄な時間を与えることなく効率よく高品質な超音波カシメ加工を行うことができるようにした超音波接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、超音波ホーンの先端を樹脂ボスの頭部に当接させ、該超音波ホーンに超音波振動を印加することにより前記樹脂ボスを溶融して該樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工を行う超音波接合装置であって、前記樹脂ボスの溶融にとともなう前記超音波ホーンの変位を検知する変位検知手段と、前記変位検知手段による前記超音波ホーンの変位量が所定の単位変位量になると前記超音波振動の印加を停止し、前記超音波ホーンの変位が停滞すると再び前記超音波振動の印加を開始し、この制御を前記樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工が完了するまで繰り返す超音波制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記超音波制御手段は、前記変位検知手段による前記超音波ホーンの変位が予め設定した目標変位量に達すると前記樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工の完了と判断する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記超音波制御手段は、前記超音波ホーンに印加される超音波振動がピークパワーに到達すると前記超音波カシメ加工の完了と判断する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、超音波ホーンの先端を樹脂ボスの頭部に当接させ、前記超音波ホーンに超音波振動を印加することにより前記樹脂ボスを溶融して該樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工を行う超音波接合装置であって、前記超音波ホーンの変位を検知する変位検知手段と、前記変位検知手段による前記超音波ホーンの変位量が所定の単位変位量になると前記超音波振動の印加を停止し、一定時間経過すると再び前記超音波振動の印加を開始し、この制御を前記樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工が完了するまで繰り返す超音波制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記超音波制御手段は、前記変位検知手段による前記超音波ホーンの変位が予め設定した目標変位量に達すると前記樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工の完了と判断する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記超音波制御手段は、前記超音波ホーンに印加される超音波振動がピークパワーに到達すると前記超音波カシメ加工の完了と判断する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超音波ホーンの先端を樹脂ボスの頭部に当接させ、該超音波ホーンに超音波振動を印加することにより前記樹脂ボスを溶融して該樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工を行う超音波接合装置であって、前記樹脂ボスの溶融にとともなう前記超音波ホーンの変位を検知する変位検知手段と、前記変位検知手段による前記超音波ホーンの変位量が所定の単位変位量になると前記超音波振動の印加を停止し、前記超音波ホーンの変位が停滞すると再び前記超音波振動の印加を開始し、この制御を前記樹脂ボスを用いた超音波カシメ加工が完了するまで繰り返す超音波制御手段と、を具備して構成したので、樹脂過昇温を抑制し、無駄な時間を与えることなく効率よく超音波カシメ加工を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る超音波接合装置の概略を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した超音波接合装置による超音波カシメ加工の動作を説明する図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した超音波接合装置による超音波カシメ加工の動作を説明するグラフである。
【
図4】
図4は、
図1に示した超音波接合装置による超音波カシメ加工の動作を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1に示した超音波接合装置による超音波カシメ加工の他の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための実施例について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る超音波接合装置の概略を示す側面図である。
【0017】
図1において、本発明に係る超音波接合装置100は、台座10に固定されたアンビル20上に樹脂ボス31aを含むワーク30を載置し、このワーク30の樹脂ボス31に図示しない加圧装置から加重を与えるとともに、超音波ホーン(以下、単にホーンという)40の先端から超音波振動を印加することにより、ワーク30の樹脂ボス31aの溶融カシメ加工を行うものである。
【0018】
ホーン40は、コーン50を介して超音波振動子(以下、単に振動子という)60に接続され、振動子60は、超音波発振機70によりその超音波振動が制御される。ここで、ワーク30の接合対象部位に対してホーン40の先端から印加される超音波振動は、接合対象部位に対して垂直な縦方向Yの振動であり、縦方向Yの振動は、樹脂に対する溶融接合等に適している
ホーン40、コーン50、振動子60を含む部分は、コーン50に取り付けられた超音波振動子ホルダ(以下、単に振動子ホルダという)61により保持され、図示しない加重装置からのワーク30への加重は、この振動子ホルダ61を介して行われ、コーンの変位は振動子ホルダ61の移動を検出する変位計80により検出される。
【0019】
この超音波接合装置100で用いられるワーク30は、
図2(A)に詳細を示すように、樹脂板31と金属板32を重ね合わせ、樹脂板31に植設された樹脂ボス31aを金属板32の孔32aを通って金属板32の上に露出させて構成されており、この超音波接合装置100においては、金属板32の上に露出させた樹脂ボス31aに、ホーン40を接触させ超音波振動を印加するとともに加重を与えることにより樹脂ボス31aを溶融させて樹脂板31と金属板32との樹脂ボス31aを行う。ここで、金属板32の代わりに樹脂板を用いてもよい。
【0020】
この溶融カシメ接合するワーク30の代表的なものとしては、例えば、自動車内装品のドアトリムなどが挙げられる。
【0021】
一般に、上記のような超音波カシメプロセスにおいては、ワーク30の温度が上昇することで、熱伝導によりホーン40の先端温度が上昇するとともに、ホーン40の先端に接触する樹脂ボス31aの過昇温が生じ、樹脂の劣化、変色や、樹脂液化にともなうキャビテーション現象によるホーン40の先端の浸食(エロージョン)が生じることがあり、この結果、適切な超音波カシメ加工ができなくなるとともに、ホーン40の寿命が短くなるという問題があった。
【0022】
そこで、本発明に係る超音波接合装置100においては、ホーン40に対して超音波振動を間欠的に印加するようにして、樹脂ボス31aの過昇温を抑制し、これにより無駄な時間を与えることなく効率よく高品質の超音波カシメ加工を行うことができるようにしている。
【0023】
図2(A)~(E)は、
図1に示した超音波接合装置100の超音波カシメ加工の動作を説明する図であり、
図3は、
図1に示した超音波接合装置による超音波カシメ加工の動作を説明するグラフである。
【0024】
図2及び
図3において、
図2(A)に示すように、ホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触すると、超音波発振機70の制御により振動子60の超音波発振動作が開始され(
図3の時点t0)、この振動子60で発振された超音波振動は、コーン50、ホーン40を経由してホーン40の先端から樹脂ボス31aの頭部に伝達される。
【0025】
ホーン40の先端には、樹脂ボス31aをカシメ加工するためのカシメ型41が形成されており、樹脂ボス31aはその頭部からカシメ型41に沿って溶融し、ホーン40の変位量は所定の単位変位量ΔZだけ下降する(
図3の時点t0から時点t1)。この状態が
図2(B)に示される。
【0026】
ここで、単位変位量ΔZは、振動子60の発振周波数、樹脂ボス31aによる超音波カシメ加工の速度等に応じた予め設定されている。
【0027】
ホーン40が所定の単位変位量ΔZだけ下降すると、樹脂ボス31aの過昇温を抑制するために、振動子60の超音波発振動作を一時停止する(
図3の時点t1)。これにより、樹脂ボス31aの溶融動作は遅くなり、ホーン40の変位は停滞する(
図3の時点t1から時点t2)。
【0028】
ホーン40の変位が停滞すると、再び振動子60の超音波発振動作を開始する(
図3の時点t2)。これにより樹脂ボス31aは溶融を再開し、ホーン40の変位量は更に所定の単位変位量ΔZだけ下降する(
図3の時点t2から時点t3)。この状態が
図2(C)に示される。
【0029】
ホーン40が所定の単位変位量ΔZだけ更に下降すると、再び樹脂ボス31aの過昇温を抑制するために、振動子60の超音波発振動作を一時停止する(
図3の時点t3)。これにより、樹脂ボス31aの溶融動作は遅くなり、ホーン40の変位は停滞する(
図3の時点t3から時点t4)。
【0030】
ホーン40の変位が停滞すると、振動子60の超音波発振動作を再開する(
図3の時点t4)。これにより樹脂ボス31aは溶融し、ホーン40は変位量は所定の単位変位量ΔZだけ更に下降する(
図3の時点t4から時点t5)。この状態が
図2(D)に示される。
【0031】
ホーン40が更に所定の単位変位量ΔZだけ下降すると、再び樹脂ボス31aの過昇温を抑制するために、振動子60の超音波発振動作を一時停止する(
図3の時点t5)。これにより、樹脂ボス31aの溶融動作は遅くなり、ホーン40の変位は停滞する(
図3の時点t5から時点t6)。
【0032】
ホーン40の変位が停滞すると、振動子60の超音波発振動作を再開する(
図3の時点t6)。これにより樹脂ボス31aは溶融し、ホーン40は更に下降し(
図3の時点t6から時点t7)、
図2(E)に示すように、ホーン40の変位量がGDに達すると、樹脂冷却のため所定の時間加圧のみで保持するプロセスを経過後、この超音波カシメ加工を完了する。
【0033】
図4は、
図1に示した超音波接合装置による超音波カシメ加工の動作を説明するフローチャートである。
【0034】
この超音波カシメ加工が開始されると、まず、ホーン40を下降制御する(ステップ401)。そして、次に、ホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触したかを調べる(ステップ402)。このホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触したかの判断は変位計82の出力等を用いた周知の技術で検出できる。
【0035】
ステップ402で、ホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触していないと判断されると(ステップ402でN0)、ステップ402に戻り、ホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触するのを待つが、ホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触したと判断されると(ステップ402でYES)、ホーン40に印加する超音波発振を開始する(ステップ403)。
【0036】
次に、ホーンの変位量が単位変位量ΔZになったかを調べ(ステップ404)、ここで、ホーンの変位量が単位変位量ΔZになっていない場合は(ステップ404でNO)、ステップ404に戻って、ホーンの変位量が単位変位量ΔZになるのを待つが、ホーンの変位量が単位変位量ΔZになると(ステップ404でYES)、ホーン40に印加していた超音波発振を停止する(ステップ405)。
【0037】
ステップ405でホーン40に印加していた超音波発振を停止すると、次に、ホーン40の変位が停滞したかを調べる(ステップ406)。ここで、ホーン40の変位が停滞したかの判断は、一定時間内のホーン40の変位量を調べ、この変位量が所定の値以下になるとホーン40の変位が停滞したと判断する。
【0038】
ステップ406で、ホーン40が停滞していないと判断されると(ステップ406でNO)、ステップ406に戻り、ホーン40の変位が停滞するのを待つが、ホーン40の変位が停滞していると判断されると(ステップ406でYES)、次に、ホーン40の変位が目標変位GDに達したかを調べる(ステップ407)。
【0039】
ここで、ホーン40の変位が目標変位GDに達していないと判断されると(ステップ407でNO)、ステップ403に戻り、ステップ403からステップ407の処理を、ステップ407でホーン40の変位が目標変位GDに達したと判断されるまで繰り返す。
【0040】
ステップ407でホーン40の変位が目標変位GDに達したと判断されると(ステップ407でYES)、所定の時間加圧のみで保持するプロセスを経過後、ホーン40を上昇制御して(ステップ408)、この超音波カシメ加工を終了する。
【0041】
図5は、
図1に示した超音波接合装置による超音波カシメ加工の他の動作を説明するフローチャートである。
【0042】
この超音波カシメ加工においては、
図4のステップ406で示した「変位が停滞したか」の判断を
図5のステップ506に示すように「一定の時間経過したか」の判断に置換し、
図4のステップ407で示した「目標変位GDに達したか」の判断を
図5のステップ507に示すように「所定の目標ピークパワーに達したか」の判断に置換している。その他の処理は、
図4に示したフローチャートの処理と同様である。
【0043】
すなわち、
図4のステップ406の「変位が停滞したか」の判断は、樹脂ボス31aの過昇温が抑制できたかの判断であるので、この判断を樹脂ボス31aの過昇温を抑制する「一定の時間経過したか」の判断に置換した。
【0044】
また、
図4のステップ407の「目標変位GDに達したか」の判断は、超音波カシメ加工が完了したかの判断であるので、この判断を超音波振動のパワー(W)が「所定の目標ピークパワーに達したか」の判断に置換した。
【0045】
すなわち、一般の超音波カシメ加工においては、樹脂ボスを押し潰した時に負荷が増して超音波パワーが急峻に増大する。これは、これ以上樹脂ボスを潰すことはできないのに、超音波振動は継続されるからであり、超音波発振機側で大きなパワーを消費することが要因である。したがって、パワー(W)が急峻に増大する場合は、樹脂ボスを潰し切ったと捉えることができるので、パワー(W)をモニタすることで、樹脂ボスが完全に潰されたかを判断することができる。
【0046】
この場合、超音波振動振幅を一定に保つため、駆動電流が増加するので、この
図5のフローチャートでは、パワー(W)を超音波発振機内部で演算(電流Aと電圧Vの積)してモニタし、ピークパワー(W)が目標ピークパワーGPに達すると、樹脂ボスを潰し切ったと判断するように構成されている。
【0047】
図5においては、まず、まず、ホーン40を下降制御する(ステップ501)。そして、次に、ホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触したかを調べ(ステップ502)、ここで、ホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触していないと判断されると(ステップ502でN0)、ステップ502に戻り、ホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触するのを待つが、ホーン40の先端が樹脂ボス31aの頭部に接触したと判断されると(ステップ502でYES)、ホーン40に印加する超音波発振を開始する(ステップ503)。
【0048】
次に、ホーンの変位量が単位変位量ΔZになったかを調べ(ステップ504)、ここで、ホーンの変位量が単位変位量ΔZになっていない場合は(ステップ504でNO)、ステップ504に戻って、ホーンの変位量が単位変位量ΔZになるのを待つが、ホーンの変位量が単位変位量ΔZになると(ステップ504でYES)、ホーン40に印加していた超音波発振を停止する(ステップ505)。
【0049】
ホーン40に印加していた超音波発振を停止すると、次に、超音波発振を停止してから一定の時間経過したかを調べる(ステップ506)。ここで、ステップ505で判断する一定の時間は、樹脂ボス31aの過昇温を抑制するための予め設定された一定の時間であり、ホーン40が加工するにしたがって順次大きくなる値若しくは小さくなる値を採用してもよい。
【0050】
ステップ506で、一定の時間経過したと判断されると(ステップ506でNO)、ステップ506に戻り、一定の時間経過を待つが、一定の時間経過したと判断されると(ステップ506でYES)、次に、ホーン40に印加する超音波振動のパワー(W)が目標ピークパワーGPに達したかを調べる(ステップ507)。
【0051】
ここで、超音波振動のパワー(W)が目標ピークパワーGPに達していないと判断されると(ステップ507でNO)、ステップ503に戻り、ステップ503からステップ507の処理を、ステップ507で、超音波振動のパワー(W)が目標ピークパワーGPに達したと判断されるまで繰り返す。
【0052】
ステップ507でホーン40に印加する超音波振動のパワー(W)が目標ピークパワーGPに達した判断されると(ステップ507でYES)、所定の時間加圧のみで保持するプロセスを経過後、ホーン40を上昇制御して(ステップ508)、この超音波カシメ加工を終了する。
【0053】
以上が本発明の一実施例の説明であるが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内であれば、当業者の通常の創作能力によって多くの変形が可能である。
【0054】
例えば、
図4のフローチャートで示した超音波カシメ加工においては、樹脂ボス31aの過昇温を抑制するためにホーンに印加された超音波振動を停止する判断を再開する判断をステップ406の「変位が停滞したか」の判断で行ったが、この判断を
図5のステップ506に示した「一定の時間経過したか」の判断で行ってもよい。
【0055】
また、
図5のフローチャートでは超音波カシメ加工の完了の判断をステップ507の「所定の目標ピークパワーに達したか」の判断で行ったが、この判断を
図4のステップ407に示した「目標変位GDに達したか」の判断で行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…台座
20…アンビル
30…ワーク
31…樹脂板
31a…樹脂ボス
32…金属板
40…ホーン
41…カシメ型
50…コーン
60…振動子
61…振動子ホルダ
70…超音波発振機
80…変位計