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特開2022-185636航空機の降着装置用電動アクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185636
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】航空機の降着装置用電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B64C 25/24 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B64C25/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093378
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】福澤 充
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽量化及び整備の容易化を達成するための航空機の降着装置用電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】航空機の降着装置用電動アクチュエータは、ケーシング50に設けられたスライドヘッド機構75と、ブレーキ付モータ51と、自由落下ギア機構53と、スライドシャフトと、非常用解除機構54と、回動形連結体80と、を備えた航空機の降着装置用電動アクチュエータにおいて、スライドシャフトに設けられたクラッチ部を有し、非常用解除ソレノイド52によって回動形連結体80が傾動してスライドシャフトがその奥側へ移動し、クラッチ部がオフとなり、自由落下ギア機構53の外周回転体が自由回転し、スライドヘッド機構75からスライドヘッド78が外方へ延出するようにした構成である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(50)に設けられ、出没自在なスライドヘッド(78)を有するスライドヘッド機構(75)と、前記ケーシング(50)に設けられ、前記スライドヘッド機構(75)を駆動するためのブレーキ付モータ(51)と、前記ブレーキ付モータ(51)のモータ軸(51A)にギア(85)を介して接続された自由落下ギア機構(53)と、前記自由落下ギア機構(53)に設けられ、出没自在なスライドシャフト(71)と、前記ケーシング(50)に設けられ、非常用解除ソレノイド(52)を有する非常用解除機構(54)と、前記非常用解除ソレノイド(52)に設けられ、前記スライドシャフト(71)を直動させるための回動形連結体(80)と、を備えた航空機の降着装置用電動アクチュエータにおいて、
前記スライドシャフト(71)に設けられたクラッチ部(84)を有し、前記非常用解除ソレノイド(52)によって前記回動形連結体(80)が傾動して前記スライドシャフト(71)がその奥側(71E)へ移動し、前記クラッチ部(84)がオフとなり、前記自由落下ギア機構(53)の外周回転体(86)が自由回転し、前記スライドヘッド機構(75)から前記スライドヘッド(78)が外方へ延出するように構成したことを特徴とする航空機の降着装置用電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記スライドヘッド機構(75)は、ボールスクリュ体(61)が前記スライドヘッド(78)内に螺入されている構成からなることを特徴とする請求項1記載の航空機の降着装置用電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の降着装置用電動アクチュエータに関し、特に、航空機からの入力によって作動するアクチュエータの伸縮によって脚の揚降を行い、油圧に替えて、電動化することによって軽量化及び整備の容易化を達成するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の航空機の降着装置用アクチュエータとしては、例えば、特許文献1の構成を挙げることができる。
すなわち、図14において、第1アクチュエータ1は、中空構造で構成され、第1アクチュエータ本体1Aの第1シリンダ11内を摺動する第1ピストンロッド12aを有する第1ピストン12と、モータ2の回転により流体を供給するポンプ3と、モータ2の回転を制御するコントローラ4と、第1ピストンロッド12aの内周面と嵌合し、内側にリザーバ油室10を内蔵するスタンドパイプ16と、を備える。第2アクチュエータ31は、第2アクチュエータ本体31Aの第2シリンダ41内を摺動する第2ピストンロッド42aを有する第2ピストン42と、第1アクチュエータ本体1Aから第2アクチュエータ本体31A内に導き入れる流体をその流体圧力に応じて調整するプライオリティバルブ33と、を備えている。
尚、図15は、図14の要部である、第1ピストン12を有する第1アクチュエータ本体1Aの拡大斜視図を示しており、油圧制御によって前記第1ピストン12が伸縮自在に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-47237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の航空機の降着装置用アクチュエータは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、油圧と電動油圧を用いたアクチュエータであるため、モータ2の他に、ポンプ3、リザーバ油室10及び油圧シリンダ11,41等の各種油圧用部品を必要とし、アクチュエータ全体の小型化及び軽量化が困難であり、アクチュエータ自体の迅速な動作が不可能であった。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、飛翔体の機体からの入力によるアクチュエータの伸縮によって脚の揚降を行い、油圧を用いないで電動化することによって軽量化及び整備の容易化を達成するための航空機の降着装置用電動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による航空機の降着装置用電動アクチュエータは、ケーシングに設けられ、出没自在なスライドヘッドを有するスライドヘッド機構と、前記ケーシングに設けられ、前記スライドヘッド機構を駆動するためのブレーキ付モータと、前記ブレーキ付モータのモータ軸にギアを介して接続された自由落下ギア機構と、前記自由落下ギア機構に設けられ、出没自在なスライドシャフトと、前記ケーシングに設けられ、非常用解除ソレノイドを有する非常用解除機構と、前記非常用解除ソレノイドに設けられ、前記スライドシャフトを直動させるための回動形連結体と、を備えた航空機の降着装置用電動アクチュエータにおいて、前記スライドシャフトに設けられたクラッチ部を有し、前記非常用解除ソレノイドによって前記回動形連結体が傾動して前記スライドシャフトがその奥側へ移動し、前記クラッチ部がオフとなり、前記自由落下ギア機構の外周回転体が自由回転し、前記スライドヘッド機構から前記スライドヘッドが外方へ延出するようにした構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による航空機の降着装置用電動アクチュエータは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、航空機の降着装置、すなわち、脚揚降用のアクチュエータを電動化することにより、従来の油圧によるアクチュエータに比べると、全体構成が小型化され、油漏れによる汚れもなく、航空機の小型化及び燃費向上と整備性の向上に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態による航空機の降着装置用電動アクチュエータの正面図である。
図2図1の裏面図である。
図3図1の構成を軸中心に反転させた状態でスライドヘッドを突出させた突出図である。
図4図3の裏面図である。
図5図3の右側面図である。
図6図3の左側面図である。
図7図3の構成の断面図である。
図8図7の非常用解除ソレノイド及び自由落下ギア機構の外観を示す外観図である。
図9図7の自由落下ギア機構の拡大断面図である。
図10図9のスライドシャフトが没した時の拡大断面図である。
図11図7図9図10における自由落下ギア機構の外周回転体を示す断面構成図である。
図12図7の左側面図である。
図13図7のA-A断面図である。
図14】従来の油圧式アクチュエータを示す構成図である。
図15図14の第1アクチュエータ本体を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、航空機からの入力によって作動するアクチュエータの伸縮によって脚の揚降を行い、油圧を用いることなく電動化することによって、軽量化及び整備の容易化を達成することである。
【実施例0010】
以下、図面と共に本発明による航空機の降着装置用電動アクチュエータの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。
図1から図4及び図7において、符号50で示されるものは、ケーシングであり、このケーシング50内には、ブレーキ付モータ51、非常用解除ソレノイド52、非常用解除機構54、自由落下ギア機構53が主として設けられている。
【0011】
前記ケーシング50の側部50aには、前記自由落下ギア機構53を駆動させるための前記ブレーキ付モータ51が設けられている。
前記ケーシング50の図7で見て下部位置には、スクリュ部60を有するボールスクリュ体61が、図7で右方向に突出する状態で延設されている。また、前記ケーシング50の上部には、第1、第2ケーブル100、101が設けられている。
【0012】
前記ケーシング50の上部に位置して設けられた前記非常用解除機構54は、突出テーパ部63と可動子としての凹状テーパ部64とがオス・メス嵌合式に接離自在な構造によって構成されている。
また、前記非常用解除ソレノイド52には、図示しない励磁コイルが前記突出テーパ部63側に設けられ、この励磁コイルに対する飛行機等の飛翔体内で発生された非常時信号70が非常用解除ソレノイド52に入力される。
【0013】
前記自由落下ギア機構53の出没自在なスライドシャフト71は、その長手方向に沿って往復動することができ、また前記非常用解除ソレノイド52の可動子としての前記凹状テーパ部64に設けられたソレノイド軸72は、その長手方向に沿って往復動することができ、前記スライドシャフト71と前記非常用解除ソレノイド52とは外周回転体86を介して連動するように構成されている。
【0014】
前記非常用解除ソレノイド52の下方位置には、ケーシング50の下部50Aに設けられた一対の第1、第2伝達ギア73、74を介して、スライドヘッド機構75が前記下部50Aと一体的に配設されている。
前記スライドヘッド機構75は、前記ケーシング50に一体的に結合され、筒状をなすヘッドケーシング76と、前記ヘッドケーシング76の外周面に設けられた制御用基板77と、前記ヘッドケーシング76内に設けられ、かつ、その軸方向Pに沿って出没自在に配設された長手状のスライドヘッド78と、前記スライドヘッド78の空隙78B内に回転自在に設けられ、前記スライドヘッド78の内壁78Aと係合するスクリュ部60を有する前記ボールスクリュ体61と、前記ケーシング50の前記側部50aに取付けられ、前記自由落下ギア機構53を駆動するためのブレーキ付モータ51と、から主として構成されている。
【0015】
図9及び図10で示される前記自由落下ギア機構53は、図9の場合が、通常電動作動時を示しており、前記非常用解除ソレノイド52がオフ状態、すなわち、前記各テーパ部63、64が互いに離間している時は、前記ソレノイド軸72と連動する前記スライドシャフト71の一部が前記ケーシング50から突出している。
そのため、回動形連結体80は、軸支部81を介して前記非常用解除ソレノイド52側へ向けて回動しているので、前記スライドシャフト71の端部に設けられたディテントピン82とスプリング83とからなるクラッチ部84はオンとなる。
また、前記ケーシング50に設けられたブレーキ付モータ51のモータ軸51Aは、前記自由落下ギア機構53の主ギア85と噛合している。また、前記スライドシャフト71と前記外周回転体86との間には、ローラークラッチ91が設けられている。
【0016】
前記外周回転体86の外周ギア86部Aは、前記第1伝達ギア73の一方のギア部73Aに噛合し、前記第2伝達ギア74の一方のギア部74Aは、第1伝達ギア73と噛合している。前記第2伝達ギア74の他方のギア部74Bは、前記スクリュ部60の基部ギア60Aと噛合している。
従って、前記ボールスクリュ体61のスクリュ部60の定位置回転においては、前記スライドヘッド78のみが前記軸方向Pに沿って、図3及び図4のように、往復直動することができるように構成されている。
【0017】
前記クラッチ部84は、一例として、前記ディテントピン82とスプリング83及び凹部90とから主として構成され、図9のように、通常電動作動時においては、前記非常用解除ソレノイド52に対して航空機の機体内からの入力がなされていないため、前記ソレノイド軸72は図7に示される位置に保持されている。
【0018】
前述の図7の状態では、前記回動形連結体80は軸支部81を介して前記非常用解除ソレノイド52側、すなわち、図上で右方向に傾動回動しているため、前記自由落下ギア機構53のスライドシャフト71は、前記クラッチ部84のスプリング83の反発力によって前記ケーシング50の外側50Eに突出し、前記回動形連結体80の下端80Aに接触する構成である。
一方、前記クラッチ部84は、前記ディテントピン82が奥側71E(図10の右方向)に押されると、ディテントピン82が係止部110を越えて凹部90に係合することによって外周回転体86がスライドシャフト71側とは独立して自由回転できるように構成されている。
【0019】
また、前述の図9における動作状態は、図7の動作状態と同一で、前記ブレーキ付モータ51の回転は、モータ軸51A、主ギア85及びクラッチ部84を経て、オン状態のローラークラッチ91を介して外周回転体86から前記第1伝達ギア73のギア部73A及び第2伝達ギア74のギア部74A,74Bを介して前記基部ギア60Aを駆動し、それによって、前記スクリュ部60を回転させて前記スライドヘッド78を軸方向Pに沿って往復直動することができ、図示しない機体の脚の通常の揚降に用いるアクチュエータとして用いることができる。
【0020】
次に、図9の通常電動作動時ではない、例えば、機体が飛翔時において、脚を降下させる動作がうまくいかず、緊急脚降下動作が必要となった時、機内からの非常時信号をもらって、図7で示される前記非常用解除ソレノイド52を作動させると、前記凹状テーパ部64が、図示しない、励磁コイル等を介して前記突出テーパ部63に磁気吸引されて前記非常用解除ソレノイド52がオン状態となる。
このオン状態により、前記凹状テーパ部64に固定されている前記ソレノイド軸72が前方(図7で左方向)へ突出移動する。
【0021】
この状態で、前記回動連結体80は、図9の状態から図10のように、その回動(傾動)状態が逆向きとなり、前記回動形連結体80の下端80Aが前記スライドシャフト71を前記スプリング83のバネ力に抗して内方(図10で右方向)へ移動させると、前記クラッチ部84もオフ及び前記ローラークラッチ91も前記制御用基板77を介してオフとなり、その結果、図11の外周回転体86が自由回転状態となる。
【0022】
前述の状態では、前記第1伝達ギア73、第2伝達ギア74及び基部ギア60Aを介してスライドヘッド78が直動可能となり、ここで、機体の脚部の自重が作用すると、図示しない周知の直交変換機構を介して前記脚部が降下することになる。
その結果、例えば、機体が飛翔中に、突然、脚部が降下しない緊急事態となった時に、前記非常用解除ソレノイド52の前述の動作を行うことにより、緊急時の脚下げを行うことができる。
尚、前述のブレーキ付モータ51の周知の遠心ブレーキ(図示せず)により、自重によって降下する速度を減速するように制御することができる。
また、前記クラッチ部84及びローラークラッチ91は周知のワンウェイ方式であるため、自重による脚部の降下後の戻り動作が入らないように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明による航空機の降着装置用電動アクチュエータは、電動モータの作動によって脚部の昇降を行い、脚部が降下不能となるような緊急時には、自由落下ギア機構の機能が切替わり、脚部を自重によって降下させることができ、従来の油圧を用いた構成と比べると、小型、安全、軽量化を達成でき、航空機の小型化に対しても寄与できるものである。
【符号の説明】
【0024】
50 ケーシング
50A 下部
50B ギア列
50E 外側
50a 側部
51 ブレーキ付モータ
51A モータ軸
52 非常用解除ソレノイド
53 自由落下ギア機構
54 非常用解除機構
60 スクリュ部
60A 基部ギア
61 ボールスクリュ体
63 突出テーパ部
64 凹状テーパ部
70 非常時信号
71 スライドシャフト
71E 奥側
72 ソレノイド軸
73 第1伝達ギア
73A ギア部
74 第2伝達ギア
74A、74B ギア部
75 スライドヘッド機構
76 ヘッドケーシング
77 制御用基板
78 スライドヘッド
78A 内壁
78B 空隙
80 回動形連結体
80A 下端
81 軸支部
82 ディテントピン
83 スプリング
84 クラッチ部
85 主ギア
86 外周回転体
86A 外周ギア部
90 凹部
91 ローラークラッチ
100 第1ケーブル
101 第2ケーブル
110 係止部
P 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15