(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185639
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】パルプモールド容器およびパルプモールド容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 29/06 20060101AFI20221208BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B32B29/06
B65D1/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093381
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】節田 征矢
(72)【発明者】
【氏名】和田 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】植村 周平
(72)【発明者】
【氏名】畑 哲雄
【テーマコード(参考)】
3E033
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA10
3E033BA13
3E033BA30
3E033BB08
3E033CA16
3E033CA20
3E033DA08
3E033FA10
4F100AA01B
4F100AK01B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DA05
4F100DE02B
4F100DG02A
4F100DG10C
4F100EJ17
4F100GB16
4F100GB23
4F100GB66
4F100JB09B
4F100JD02B
4F100JL12D
(57)【要約】
【課題】外観上紙製品と判断することができ、容器中のプラスチックの使用割合を低減することが可能であるとともに、ガスバリア性および防湿性に優れたパルプモールド容器およびパルプモールド容器の製造方法を提供する。
【解決手段】パルプモールド容器(1A)は、パルプモールド(2A)と、パルプモールド(2)上のバリア層(4)と、バリア層(4)上の紙基材(3)とを備える。パルプモールド(2A)は複数方向に湾曲した曲面から成る第1部分を含み、少なくとも第1部分にバリア層(4)および紙基材(3)が設けられている。パルプモールド容器(1A)の外表面または内表面が、パルプモールド(2A)および紙基材(3)の少なくとも一方により構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールドと、
前記パルプモールド上のバリア層と、
前記バリア層上の紙基材と、を備えるパルプモールド容器であって、
前記パルプモールドは、複数方向に湾曲した曲面から成る第1部分を含み、少なくとも前記第1部分に前記バリア層および前記紙基材が設けられており、
前記パルプモールド容器の外表面または内表面が、前記パルプモールドおよび前記紙基材の少なくとも一方により構成されている、パルプモールド容器。
【請求項2】
前記バリア層は、水溶性樹脂と、前記水溶性樹脂中の層状無機粒子とを含む、請求項1に記載のパルプモールド容器。
【請求項3】
前記パルプモールドと前記バリア層との間のヒートシール層をさらに備える、請求項1または請求項2に記載のパルプモールド容器。
【請求項4】
前記バリア層および前記紙基材は、前記パルプモールドの外表面または内表面の形状に沿った形状で設けられており、
前記第1部分に設けられている前記バリア層および前記紙基材の絞り率が、10%以上50%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパルプモールド容器。
【請求項5】
パルプ材を材料としてパルプモールドを成形する工程と、
前記パルプモールドの少なくとも一部にバリア層および紙基材を設ける工程と、を含むパルプモールド容器の製造方法であって、
前記バリア層および紙基材を設ける工程は、前記パルプモールドと前記バリア層を積層した前記紙基材とをプレスする工程を含み、
前記パルプモールド容器の外表面または内表面が、前記パルプモールドおよび前記紙基材の少なくとも一方により構成されている、パルプモールド容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パルプモールド容器およびパルプモールド容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種食品や薬品の容器には、プラスチック製容器が多く使用されている。プラスチック製容器は、軽量で、様々な形状に成形しやすい。しかしながら、昨今、プラスチック廃棄物による環境汚染の問題がある。また、プラスチックは石油等の原料の枯渇や加工時および廃棄焼却時のCO2発生による地球温暖化の問題がある。枯渇原料の使用量削減のため植物由来等のバイオマス原料を使用したプラスチック、リサイクル容易な樹脂組成や構成、生分解性プラスチックへの転換が検討されている。また、石油原料を使用することなくリサイクルも可能な紙材料への置換も検討されている。
【0003】
このような紙製容器として、パルプモールド容器がある。パルプモールド容器は、たとえば、カップ形状またはトレー形状に成形することができ、紙としてリサイクルすることができるため、プラスチック代替として好ましい。しかしながら、パルプモールド容器は、プラスチックに比べて、防湿性およびガスバリア性に劣るため用途が限られる。パルプモールド容器の防湿性およびバリア性を向上させるために、各種プラスチックフィルムをパルプモールドに積層する技術が種々検討されている。
【0004】
たとえば特許文献1には、パルプモールド容器、及びバリア性積層体を含み、筒状部、底部、及びフランジ部を有するバリア性パルプモールド容器であって、バリア性積層体は、パルプモールド容器の内側に接する内層、バリア層、及び外層をこの順に有し、バリア層が、ポリ塩化ビニリデン系フィルムを有し、かつ内層及び/又は外層が、ポリアミド系フィルムを有する、バリア性パルプモールド容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のバリア性パルプモールド容器においては、パルプモールド容器の内面または外面にプラスチックフィルムが積層されるため、紙材料比率が高く、紙材料から構成されているといえるものでも、外観上はプラスチックが露出したものになる。そのため、消費者は外観上紙製品(紙廃棄物)と判断することができずに誤認するおそれがある。また、パルプモールドは、たとえば曲面や凹凸面を有するカップまたはトレー状容器等に成形することができるが、このような形状にプラスチックフィルムを積層するためには、パルプモールド容器の表面にバリア層を有する積層フィルムを真空成型等で熱成形しつつ密着させる必要がある。そのため、厚みを有する積層フィルムを使用することになり、プラスチックの使用量も多くなることから、その後のリサイクルの観点でも好ましいとは言えない。
【0007】
本開示は、外観上紙製品と判断することができ、容器中のプラスチックの使用割合を低減することが可能であるとともに、ガスバリア性および防湿性に優れたパルプモールド容器およびパルプモールド容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで開示された実施形態によれば、パルプモールドと、パルプモールド上のバリア層と、バリア層上の紙基材とを備えるパルプモールド容器であって、パルプモールドは複数方向に湾曲した曲面から成る第1部分を含み、少なくとも第1部分にバリア層および紙基材が設けられており、パルプモールド容器の外表面または内表面が、パルプモールドおよび紙基材の少なくとも一方により構成されているパルプモールド容器を提供することができる。
【0009】
ここで開示された実施形態によれば、パルプ材を材料としてパルプモールドを成形する工程と、パルプモールドの少なくとも一部にバリア層および紙基材を設ける工程と、を含むパルプモールド容器の製造方法であって、バリア層および紙基材を設ける工程は、パルプモールドとバリア層を積層した紙基材とをプレスする工程を含み、パルプモールド容器の外表面または内表面が、パルプモールドおよび紙基材の少なくとも一方により構成されているパルプモールド容器の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、外観上紙製品と判断することができ、容器中のプラスチックの使用割合を低減することが可能であるとともに、ガスバリア性および防湿性に優れたパルプモールド容器およびパルプモールド容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1のパルプモールド容器の模式的な正面図である。
【
図2】(A)は
図1のA-Aに沿った模式的な断面図の一例であり、(B)は
図1のB-Bに沿った模式的な断面図の一例である。
【
図4】実施形態1のパルプモールド容器の製造方法の一例のフローチャートである。
【
図5】(A)~(C)は、実施形態1のパルプモールド容器の製造方法の一例について説明するための図である。
【
図6】(A)および(B)は、実施形態1のパルプモールド容器の製造方法の一例について説明するための図である。
【
図7】(A)および(B)は、実施形態2のパルプモールド容器の模式的な断面図である。
【
図8】(A)および(B)は、実施形態2のパルプモールド容器の製造方法の一例について説明するための図である。
【
図9】(A)および(B)は、実施形態3のパルプモールド容器の模式的な断面図である。
【
図10】(A)および(B)は、実施形態3のパルプモールド容器の製造方法の一例について説明するための図である。
【
図11】パルプモールド容器の模式的な平面図である。
【
図12】実施例1のパルプモールド容器の模式的な断面図である。
【
図13】実施例2のパルプモールド容器の模式的な断面図である。
【
図14】比較例2のパルプモールド容器の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0013】
[実施形態1]
<パルプモールド容器の構成>
図1は、実施形態1のパルプモールド容器の模式的な正面図である。実施形態1のパルプモールド容器1Aのパルプモールド2Aは、正面から見て手前側に突出する1つの凸部2Bと、凸部2Bを取り囲むフランジ部2Cとを備えている。また、
図1に示されるように、パルプモールド容器1Aは、パルプモールド2Aと、紙基材3とを備えている。
【0014】
図2(A)は、
図1のA-Aに沿った模式的な断面図の一例である。
図2(B)は、
図1のB-Bに沿った模式的な断面図の一例である。
図2(A)および
図2(B)に示されるように、パルプモールド2Aの凸部2Bの内表面側には、凸部2Bに対応した形状の凹部2Dが形成されており、凹部2Dに商品を収容可能である。
【0015】
図1、
図2(A)および
図2(B)に示されるように、紙基材3を外表面に備えるバリア紙10が、パルプモールド2Aの凸部2Bの外表面に貼り付けられている。詳細には、1枚のバリア紙10がパルプモールド2Aの外表面の一部(
図1に示されるパルプモールド2Aの部分Xおよび部分Yに相当する部分)に、パルプモールド2Aの外表面の形状に沿った形状で貼り付けられている。また、パルプモールド容器1Aにおいて、パルプモールド2Aにバリア紙10が貼り付けられている箇所と、バリア紙10が貼り付けられていない箇所との境界に段差が生じない状態で、バリア紙10がパルプモールド2Aに貼り付けられている。なお、実質的に段差が生じない状態であればよく、実質的に段差が生じない状態とは、バリア紙10がパルプモールド2Aの外表面からほとんど出ていない状態である。
【0016】
また、
図2(A)および
図2(B)に示されるように、パルプモールド容器1Aは、パルプモールド2Aと、パルプモールド2A上のヒートシール層5と、ヒートシール層5上のバリア紙10とを備えている。バリア紙10は、バリア層4と、バリア層4上の紙基材3とを備えている。ヒートシール層5は、パルプモールド2Aとバリア層4との間に位置している。
【0017】
したがって、パルプモールド容器1Aの内表面(パルプモールド2Aの凹部2D側の表面)はパルプモールド2Aから構成されており、パルプモールド容器1Aの外表面(パルプモールド2Aの凸部2B側の表面)はパルプモールド2Aと紙基材3とから構成されている。また、パルプモールド2Aの凸部2Bの全面がバリア紙10で覆われることで、商品を収容する凹部2Bのバリア性が得られる。
【0018】
<パルプモールド>
パルプモールド2Aは、パルプの成形品である。パルプモールド2Aの原料となるパルプとしては、たとえば、新聞紙、チラシ、中質紙、上質紙等からの印刷使用済み古紙を湿式で離解、精選、脱墨、および漂白等の処理をして得られる脱墨古紙パルプ、脱墨処理と漂白処理とを施さない古紙パルプ、他のセルロースパルプ(晒パルプまたは未晒パルプ等)、若しくはバージンパルプや非木材系パルプ(サトウキビの搾りかすであるバガス、竹など)等を用いることができる。なお、食品用途等の衛生性が求められる場合には、パルプモールド2Aの原料となるパルプとして、バージンパルプを用いることが好ましい。パルプには合成樹脂が少量(好ましくは5%程度以下)含まれていてもよい。パルプモールド2Aは、たとえば、これらのパルプに、サイズ剤、填料、染料、定着剤、または耐水化剤等を適宜添加して作製されたパルプスラリーを所望の形状に成形することによって製造されることができる。
【0019】
パルプモールド2Aは、複数方向に湾曲した曲面から成る第1部分を有する。部分Xは、第1部分に相当する。第1部分に貼り付けられているバリア紙10の絞り率は、10%以上50%以下である。パルプモールド2Aは、平面または/および曲面から成る第2部分をさらに有する。第2部分は、平面、一方向に湾曲した曲面、または湾曲の程度が第1部分よりも小さい複数方向に湾曲した曲面であってもよい。部分Yは、第2部分の一部に相当する。第2部分のうち部分Yに貼り付けられているバリア紙10の絞り率は、10%未満である。
【0020】
絞り率とは、パルプモールド2Aに貼り付けられるバリア紙10の周長と、パルプモールド2Aのうちバリア紙10が貼り付けられる領域の周長とによって算出することができる。パルプモールド2Aのうちバリア紙10が貼り付けられる領域のある位置で測定した周長をP1とし、パルプモールド2Aに貼り付けられるバリア紙10のうちP1の測定位置に相当する位置の周長をP2とした場合、絞り率は以下に示す式1により算出される。なお、絞り率の算出においては、P2を例えば2ミリメートルにする等、短い単位で算出することが好ましい。
【0021】
(式1) 絞り率=100-100×(P1/P2)
【0022】
第1部分では、パルプモールド2Aが複数方向に湾曲していることから、バリア紙10が皺になったり、折り重なったりしやすく、何らの手当ても行わなかった場合には、バリア紙10の皺や折り重なりが目立ちやすくなる。しかしながら、本実施形態において、パルプモールド2Aの第1部分にバリア紙10を10%以上50%以下の絞り率で貼り付けた場合には、バリア紙10の皺や折り重なりがパルプモールド2Aの厚みに吸収されるため、包装材として耐え得る程度に、バリア紙10の皺や折り重なりを目立たなくさせることができる。
【0023】
<バリア紙>
バリア紙10は、紙基材3とバリア層4とを含む積層体である。紙基材3は、紙からなる基材である。紙基材3としては、たとえば、純白洋紙等の洋紙や和紙、未晒クラフト紙または晒クラフト紙等を用いることができる。紙基材3の坪量は、たとえば30g/m2以上100g/m2以下とすることができる。
【0024】
バリア層4は、パルプモールド2Aにガスバリア性および防湿性を付与するための層である。
図3は、バリア層4の一例の模式的な断面図である。
図3に示されるように、バリア層4は、水溶性樹脂4aと、水溶性樹脂4a中の層状無機粒子4bとを含んでおり、水溶性樹脂4a中に層状無機粒子4bが分散された構成を有している。
【0025】
水溶性樹脂4aは、水または温水に可溶な樹脂である。水溶性樹脂4aとしては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、PVAを変性した樹脂、またはエチレンビニルアルコール共重合樹脂等を主成分として含む水溶性樹脂を用いることができる。PVA樹脂はガスバリア性を有し、さらに層状無機粒子4bを含むことによって防湿性も向上させることができる。層状無機粒子4bは、扁平な形状を有する無機物または無機化合物の粒子である。層状無機粒子4bとしては、たとえば、扁平な形状を有するマイカ、カオリン、シリカ、膨潤性マイカまたは膨潤性ベントナイト、モンモリロナイト等を用いることができる。扁平な形状は、アスペクト比が10以上であって、平均粒径が5μm以上である。なお、本明細書において、「ポリビニルアルコール樹脂を主成分として含む水溶性樹脂」とは、水溶性樹脂を構成する樹脂成分の中で最も含有量の多い樹脂成分がポリビニルアルコール樹脂であることを意味する。また、本明細書において、「平均粒径」はレーザー回折法により測定される。また、「アスペクト比」は層状無機粒子4bの平面方向および断面方向をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影し、層状無機粒子4bの粒子配向面の直径と厚さとを測定して、アスペクト比=[(直径)/(厚さ)]の式で算出される。また、バリア層4を構成する樹脂は、水溶性樹脂4aに限られず、たとえば、水蒸気バリア性を有するスチレンブタジエン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂を用いることもできる。これらの樹脂に層状無機粒子を混合することで水蒸気バリアに加えてガスバリア性を向上することができる。また、これらは、水系の溶液や分散液の状態で各種コーティング法により塗工することができる。バリア層4の前駆体となるコーティング剤のコーティング量は適宜設定できるが、たとえば、当該コーティング剤の乾燥後のバリア層4の単位面積当たりの重量が2g/m2以上20g/m2以下となるコーティング量に設定することができる。なお、バリア層4は、複数種類を積層して設けることもできる。
【0026】
バリア紙10のバリア層4として、水溶性樹脂4aを用いた場合には、パルプモールド容器1Aのリサイクルが容易となる。すなわち、パルプモールド容器1Aを水に浸漬させることによって、水溶性樹脂4aは水に溶解するとともにパルプモールド2Aおよび紙基材3はパルプに分解するため、当該分解後のパルプをパルプモールド2Aおよび紙基材3の作製に用いることができる。たとえば、パルプモールド容器1Aを細かくちぎったもの10gを容器に入れ、当該容器に水1Lを入れてミキサーで1分~3分攪拌して水分を除去し乾燥したものを目視または赤外線で確認し、プラスチックが殆ど残らないようにパルプモールド容器1Aを設計することで、パルプモールド容器1Aのリサイクルが容易となる。
【0027】
バリア紙10の紙基材3は、第1デザインのみから成る第1デザイン領域を有していてもよい。第1デザインとは、たとえば、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェットプリンタ等の公知の方法で施されるもので、バリア紙10の皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインであり、たとえば、木目調、石目調、石垣模様、岩肌模様、大理石模様、空模様、砂地柄、波柄、織物柄、小花柄、草花柄、樹木柄、唐草模様、小紋柄、ボタニカル柄、ペイズリー柄、カモフラージュ柄、ドット柄、水彩柄、またはマーブル模様のうちのいずれかとすることができる。
【0028】
木目調は材木の断面に表れる年輪、繊維、または導管等で成された模様である。石目調は天然石またはレンガの地肌を表した模様である。石垣模様は城壁等に様々な形状の石が積み重ねられた雰囲気を表した模様である。空模様は様々な雲が青空に浮かんでいる景色または曇り空を表した模様である。波柄は波立つ海原または波紋を表した柄である。織物柄は綿や麻の糸を織ったり藁や竹を編んだ風合いを表した柄である。ドット柄は水玉模様を含みシャンプードット、バブルドット、コインドットまたはランダムドットと呼ばれる柄である。水彩柄は水彩絵の具で濃淡を描いた雰囲気のある柄である。
【0029】
なお、第1デザインは、上記のデザインに限られず、バリア紙10の皺または折り重なりが目立ちにくいようなデザインであればよく、他の例として、パルプモールド2Aの地模様と同一の模様、自然物を散在させたようなデザイン、または、実質的に同一の単位デザインが繰り返し並ぶように配置された連続柄のうちのいずれかとすることができる。パルプモールド2Aの地模様と同一の模様とは、パルプモールド2Aを構成するパルプの繊維が不規則に絡み合うことによりパルプモールドの表面に現れる模様のことである。また、実質的に同一の単位デザインには、大きさ、形状、および色彩が完全に同一の単位デザインだけではなく、大きさ、形状、または色彩のうち少なくとも1つが同一ではない単位デザインが含まれていてもよい。実質的に同一の単位デザインには、たとえば、種類が異なる花または植物であっても、そのそれぞれを単位デザインとして配置したものが含まれてもよい。
【0030】
第1部分に貼り付けられているバリア紙10の領域は、第1デザイン領域である。バリア紙10の第1デザイン領域がパルプモールド2Aの第1部分に加え、第2部分の少なくとも一部に貼り付けられていてもよい。
【0031】
また、バリア紙10は、第1デザインとは異なる第2デザインを含む第2デザイン領域をさらに有していてもよい。第2デザインとは、デザインが変形するとパルプモールド容器1Aの美粧性、またはパルプモールド容器1Aに収容される商品の購買欲が損なわれるようなデザインであり、極力変形しない状態での貼り付けが求められるデザインである。
【0032】
具体的には、第2デザインとは第1デザインとは異なるデザインであり、すなわち、パルプモールド2Aの地模様と同一の模様、木目調、石目調、石垣模様、岩肌模様、大理石模様、空模様、砂地柄、波柄、織物柄、小花柄、草花柄、樹木柄、唐草模様、小紋柄、ボタニカル柄、ペイズリー柄、カモフラージュ柄、ドット柄、水彩柄、およびマーブル模様とは異なるデザインである。第2デザインの一例として、パルプモールド容器1Aに収容される商品の名称若しくはブランド名、パルプモールド容器1Aに収容される商品を製造している企業の名称若しくはロゴマーク、またはパルプモールド容器1Aに収容される商品のイメージ図等である。また、第2デザインは印刷だけでなく金色等の箔転写により施してもよい。バリア紙10が第1デザイン領域に加え第2デザイン領域を有する場合には、第2デザイン領域は10%未満の絞り率で第2部分の少なくとも一部に貼り付けられる。
【0033】
したがって、パルプモールド容器1Aでは、パルプモールド2Aの部分Xと部分Yとの両方にバリア紙10の第1デザイン領域が貼り付けられていてもよいし、パルプモールド2Aの部分Xにはバリア紙10の第1デザイン領域が貼り付けられ、パルプモールド2Aの部分Yにはバリア紙10の第2デザイン領域が貼り付けられていてもよい。
【0034】
また、パルプモールド2Aの地模様と同一の模様には、パルプモールド2Aの地色と実質的に同一の色のみが付されているような場合が含まれていてもよい。
【0035】
<ヒートシール層>
ヒートシール層5は、ヒートシール可能な樹脂層である。ヒートシール層5としては、たとえば、ヒートシール性を有する水溶性樹脂等の水溶液や、ヒートシール性樹脂を水に分散させたディスパージョンやエマルジョンの状態でコーティングすることによって形成された水性ヒートシール層を用いることができる。水性ヒートシール層としては、たとえば、アクリル系樹脂を水に分散させたコーティング剤をコーティングして乾燥させた樹脂層、またはポリオレフィン系樹脂を水に分散させたコーティング剤をコーティングして乾燥させた樹脂層等を用いることができる。このようなコーティングによって形成されたヒートシール層5は水溶性樹脂でなくても分散状態で塗布されているため、水に浸漬させることによって、パルプモールド2Aおよび紙基材3とともに分解しやすくなり、紙材料としてリサイクルが容易となる。水性ヒートシール層の前駆体となるコーティング剤のコーティング量は適宜設定できるが、たとえば、当該コーティング剤の乾燥後の水性ヒートシール層の単位面積当たりの重量が2g/m2以上10g/m2以下となるコーティング量に設定することができる。なお、パルプモールド容器1Aは、ヒートシール層5とバリア紙10との間にアンカー層(図示せず)を備えていてもよい。アンカー層はバリア紙10上へのヒートシール層5のコーティングを容易にするための層である。ヒートシール層5としては、水性ヒートシール層以外のヒートシール性樹脂を含む酢酸エチルエステル等の有機溶剤溶液の状態でコーティングした後に乾燥した樹脂層等を用いてもよい。
【0036】
<パルプモールド容器の製造方法>
以下、
図4、
図5(A)~
図5(C)、
図6(A)および
図6(B)を参照して、実施形態1のパルプモールド容器1Aの製造方法の一例について説明する。
図4は、実施形態1のパルプモールド容器1Aの製造方法の一例のフローチャートである。
【0037】
<パルプモールドを成形する工程>
まず、ステップS1において、網が張られた型を材料槽に沈める工程を行なう。網が張られた型を材料槽に沈める工程は、たとえば、以下のようにして行なうことができる。まず、
図5(A)に示すように、パルプモールド2Aに対応した形状を有する型401および網403を準備する。次に、型401に網403を張る。その後、網403が張られた型401を上述のパルプスラリーが収容された材料槽402に沈めることにより行なうことができる。
【0038】
次に、ステップS2において、吸引工程を行なう。吸引工程は、たとえば、
図5(A)に示すように、吸引用の孔が多数設けられた型401の裏側から吸引することにより行なうことができる。これにより、網403の表面にパルプ材が吸い付けられて堆積する。
【0039】
次に、ステップS3において、型を材料槽から取り出す工程を行なう。型を材料槽から取り出す工程は、たとえば、
図5(B)に示すように、型401を材料槽402から取り出すことにより行なうことができる。取り出された型401上の網403の表面にはパルプ404が堆積している。
【0040】
次に、ステップS4において、パルプを型から外して乾燥する工程を行なう。パルプを型から外して乾燥する工程は、たとえば、
図5(C)に示すように、パルプ404を型401から外した後に乾燥炉405で乾燥することにより行なうことができる。
【0041】
ステップS1~ステップS4の工程を経て、パルプ404の成形品であるパルプモールド2Aが成形される。パルプモールド2Aは、複数方向に湾曲した曲面から成る第1部分を有するように成形される。さらに、パルプモールド2Aは、平面または/および曲面から成る第2部分を有するように成形されてもよい。なお、ステップS1~ステップS4の工程を経て成形されたパルプモールド2Aは繊維が絡み合って固まった状態であるが、後述するステップS6において貼り付けられるバリア紙10の厚さを吸収できる程度の厚さと柔らかさとを有している。なお、パルプモールド2Aの厚さは、たとえば、0.8ミリメートル以上3.0ミリメートル以下とすることができ、ヒートシール層5を加えたバリア紙10の厚さ(たとえば、0.07ミリメートル以上0.15ミリメートル以下)の5倍以上、好ましくはヒートシール層5を加えたバリア紙10の厚さの8倍~30倍である。
【0042】
なお、パルプモールド2Aを成形する工程は、上述の吸引する手法に限られず、たとえば、網型で漉き上げる手法であってもよい。
【0043】
<パルプモールドの少なくとも一部にバリア層および紙基材を設ける工程>
上述のようにパルプモールド2Aを作製した後に、パルプモールド2Aの少なくとも一部にバリア層4および紙基材3を設ける工程を行なう。パルプモールド2Aの少なくとも一部にバリア層4および紙基材3を設ける工程は、たとえば以下のようにして行なうことができる。
【0044】
まず、ステップS5において、パルプモールド2A上にバリア層4および紙基材3を配置する工程を行なう。パルプモールド2A上にバリア層4および紙基材3を配置する工程は、たとえば、バリア紙10のバリア層4側がパルプモールド2Aの外表面側となるように、パルプモールド2Aの凸部2Bの外表面上にバリア紙10を設置することにより行なうことができる。
【0045】
次に、ステップS6において、パルプモールド2Aと紙基材3とをプレスする工程を行なう。パルプモールド2Aと紙基材3とをプレスする工程は、たとえば、以下のようにして行なうことができる。
【0046】
まず、
図6(A)に示すように、パルプモールド容器1Aの形状に対応した形状を有する加熱可能なプレス型として上型6aと下型6bとを準備する。上型6aおよび下型6bは金属等からなる。次に、
図6(A)に示すように、下型6bの凸部にパルプモールド2Aの凹部2Dが嵌合するように、下型6b上にパルプモールド2Aを設置する。次に、
図6(A)に示すように、バリア層4上にヒートシール層5が設置された状態のバリア紙10をパルプモールド2A上に設置する。パルプモールド2A上へのバリア紙10の設置は、たとえば、ヒートシール層5が設置された状態のバリア紙10が後述のプレス工程後にパルプモールド2Aの少なくとも第1部分の内表面上に位置するように行なうことができる。バリア紙10は、少なくとも後述するプレス工程後にパルプモールド2Aの凸部2Bを被覆可能な大きさであってもよく、好ましくはフランジ部2Cの一部に及ぶ大きさであってもよい。なお、バリア層4上へのヒートシール層5の設置は、たとえば、ヒートシール層5の前駆体となるヒートシール性樹脂を水に分散させたコーティング剤をバリア層4上に塗工した後に乾燥させることによって行なうことができる。
【0047】
次に、
図6(B)に示すように、固定された下型6bに対して上型6aをAR1の方向に移動させることによって、パルプモールド2Aとバリア紙10とを積層した状態で熱プレスする。これにより、柔らかさを有し、上述のように十分な厚みを有するパルプモールド2Aの厚さにバリア紙10の厚さが吸収される(
図6(B)参照)。また、バリア紙10が皺になったり、折り重なったりした場合であっても、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚さに皺や折り重なりが吸収される。
【0048】
紙基材3は伸縮性が乏しいことから、バリア紙10の形状をバリア紙10に皺等が生じることなく湾曲したパルプモールド2Aの外表面の形状に沿った形状にすることは難しい。しかしながら、プレス工程において、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚さにバリア紙10の厚さが吸収されるとともに、バリア紙10に生じた皺や折り重なりもまたパルプモールド2Aの厚さに吸収されて、固定されることから、パルプモールド容器1Aのバリア紙10が貼り付けられている部分と、バリア紙10が貼り付けられていない部分との境界に段差が生じない。
【0049】
また、プレス工程時に、バリア紙10上のヒートシール層5がパルプモールド2Aの外表面に熱接着することにより、バリア紙10がパルプモールド2Aの外表面の形状に沿った形状で保持される。また、バリア紙10上のヒートシール層5は、パルプモールド2Aの外表面に熱接着するだけでなく、熱接着後に固化することから、プレス工程時にバリア紙10が皺になったり、折り重なったりした場合でも、上述のようにパルプモールド2Aの厚さに吸収された状態でバリア紙10がパルプモールド2Aの外表面の形状に沿った形状でバリア性が得られる。なお、ステップS6におけるプレス工程によって、上型6aおよび下型6bのそれぞれのプレス面が滑らかに加工されていることから、パルプモールド2Aのバリア紙10が貼り付けられていない部分の表面も滑らかになるとともに、上型6aおよび下型6bによって圧縮されているため硬くなる。
【0050】
ステップS6におけるプレス工程の条件は、たとえば、プレス型(上型6aおよび下型6b)の温度は130℃で、プレス時間は1~5秒を挙げることができる。なお、プレス温度は、70℃~200℃程度であることが好ましい。最適なプレス温度はバリア紙10上のヒートシール層5によって異なるが、パルプモールド1Aの外表面の平滑性を向上させるためには90℃~150℃程度でプレスすることがより好ましい。
【0051】
ステップS6において、バリア紙10は、たとえば10%以上50%以下の絞り率でパルプモールド2Aの第1部分(
図1に示す部分X)に貼り付けられてもよい。この場合には、複数方向に湾曲した曲面であってもバリア紙10がパルプモールド2Aの外表面の形状に沿った形状で保持される。
【0052】
また、ステップS6において、パルプモールド2Aの第1部分(
図1に示す部分X)に貼り付けられるバリア紙10の領域が上述の第1デザイン領域となるようにパルプモールド2Aにバリア紙10が貼り付けられてもよい。バリア紙10が第1デザイン領域に加え、上述の第2デザイン領域を有する場合には、第2デザイン領域が10%未満の絞り率でパルプモールド2Aの第2部分の少なくとも一部(
図1に示す部分Y)に貼り付けられるようにパルプモールド2Aにバリア紙10が貼り付けられてもよい。
【0053】
ステップS5およびステップS6の工程を経て、パルプモールド2Aにバリア紙10が貼り付けられることにより、パルプモールド容器1Aが完成する。その後、必要に応じてパルプモールド容器1Aを乾燥させてもよく、必要に応じてパルプモールド容器1Aに対して所定形状に抜き加工等が施されてもよい。
【0054】
なお、上記においては、バリア紙10上にヒートシール層5を設ける場合について説明したが、バリア紙10のバリア層4がパルプモールド2Aに対してヒートシール性を有している場合には、ヒートシール層5を設けなくてもよい。ヒートシール層5を設けない場合には、パルプモールド容器1Aにおけるプラスチックの使用量をさらに低減することができる。また、上記においては、熱プレスによりパルプモールド2Aの表面にバリア紙10をヒートシール層5により熱接着させたが、ヒートシール層5による熱接着に限らず、バリア層4に水や加湿により接着性が生じる再湿性接着剤をコーティングにより積層し、水により再湿性接着剤を活性化させた後に、プレス工程により圧着して、パルプモールド2Aの表面にバリア紙10を再湿性接着剤により接着してもよい。
【0055】
また、上記においては、固定された下型6bに対して上型6aが移動する場合について説明したが、上型6aと下型6bとの両方が移動してもよく、固定された上型6aに対して下型6bが移動してもよい。また、上記においては、上型6aと下型6bの1対の型を用いる場合について説明したが、3つ以上の型が組み合わされたものを用いてもよい。
【0056】
また、上型6aおよび/または下型6bにエンボスデザインを配置しておいてもよい。これにより、ステップS6におけるプレス工程を経ることにより、商品のロゴマーク等のエンボスデザインをパルプモールド容器1Aに刻印することができる。なお、エンボスデザインは、第2デザイン領域で深さ0.2~0.5ミリメートルが好ましい。
【0057】
<パルプモールド容器の作用効果>
実施形態1のパルプモールド容器1Aの外表面は紙基材3およびパルプモールド2Aから構成されているとともに、実施形態1のパルプモールド容器1Aの内表面はパルプモールド2Aから構成されている。したがって、実施形態1のパルプモールド容器1Aは、外観上紙製品と判断することができる。
【0058】
実施形態1のパルプモールド容器1Aにおいては、パルプモールド2Aにガスバリア性および防湿性を付与するための層として、紙基材3とバリア層4との積層体を用いている。したがって、実施形態1のパルプモールド容器1Aは、特許文献1に記載のバリア性パルプモールド容器に対して、容器中のプラスチックの使用割合を低減することが可能である。
【0059】
実施形態1のパルプモールド容器1Aは、パルプモールド2Aにガスバリア性および防湿性を付与するための層として紙基材3とバリア層4との積層体を用いているため、ガスバリア性および防湿性に優れたパルプモールド容器とすることができる。
【0060】
[実施形態2]
図7(A)および
図7(B)に、実施形態2のパルプモールド容器1Aの模式的な断面図を示す。
図7(A)は
図1のA-Aに沿った模式的な断面図に相当し、
図7(B)は
図1のB-Bに沿った模式的な断面図に相当する。実施形態2のパルプモールド容器1Aは紙基材3の一方の表面上にバリア層4を押し出すことによってバリア紙10を形成している点に特徴がある。
【0061】
また、実施形態2のパルプモールド容器1Aのバリア層4の材料としては、たとえば、紙に対する熱接着性を有し、ガスバリア性や水蒸気バリア性を有する低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、PVA樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)またはポリ乳酸(PLA)等を用いてもよい。これらの樹脂には接着性を向上させるための可塑剤や粘着性付与剤等が添加されたものでもよい。バリア層4の材料として生分解性を有するPBSまたはPLAを用いた場合には、紙基材3およびパルプモールド2Aと合わせて廃棄物による環境破壊を抑制できる。また、植物由来の原材料を用いたLDPEやPLA等の樹脂を使用することで石油資源の使用を抑制することができる。
【0062】
以下、
図4、
図8(A)および
図8(B)を参照して、実施形態2のパルプモールド容器1Aの製造方法の一例について説明する。まず、
図4のステップS1~ステップS4については、実施形態1と同様にして行なうことができる。
【0063】
次に、
図4のステップS5において、パルプモールド2A上にバリア層4および紙基材3を配置する工程を行なう。パルプモールド2A上にバリア層4および紙基材3を配置する工程は、紙基材3の一方の表面上にバリア層4を押し出すことによって形成されたバリア紙10が後述のプレス工程後にパルプモールド2Aの少なくとも第1部分の内表面上に位置するように、たとえば
図8(A)に示すように、パルプモールド2Aの凸部2B上にバリア紙10を配置することにより行なうことができる。なお、紙基材3の一方の表面上へのバリア層4の押し出しは、たとえば、加熱溶融したバリア性樹脂をT型ダイス等から紙基材3の表面に薄膜状に押し出すことにより行なうことができる。また、バリア性やヒートシール適性を向上するため複数の樹脂を共押出する多層押出コーティングを行なうこともできる。
【0064】
次に、ステップS6において、パルプモールド2Aとバリア紙10とをプレスする工程を行なう。パルプモールド2Aとバリア紙10とをプレスする工程は、たとえば、
図8(B)に示すように、実施形態1と同様にして行なうことができる。プレス工程時に、紙基材3上のバリア層4がパルプモールド2Aの外表面に熱接着することにより、紙基材3がパルプモールド2Aの外表面の形状に沿った形状で保持される。以上により、実施形態2のパルプモールド容器1Aを製造することができる。
【0065】
実施形態2における上記以外の説明は、実施形態1と同様であるため、その説明については省略する。
【0066】
[実施形態3]
図9(A)および
図9(B)に、実施形態3のパルプモールド容器1Aの模式的な断面図を示す。
図9(A)は
図1のA-Aに沿った模式的な断面図に相当し、
図9(B)は
図1のB-Bに沿った模式的な断面図に相当する。実施形態3のパルプモールド容器1Aは、パルプモールド2Aの少なくとも第1部分の内表面上のヒートシール層5と、ヒートシール層5上のバリア紙10とを備えており、パルプモールド容器1Aの内表面が紙基材3およびパルプモールド2Aから構成されているとともに、外表面がパルプモールド2Aから構成されている点に特徴がある。したがって、実施形態3のパルプモールド容器1Aも、外観上紙製品と判断することができる。
【0067】
以下、
図4、
図10(A)および
図10(B)を参照して、実施形態3のパルプモールド容器1Aの製造方法の一例について説明する。まず、
図4のステップS1~ステップS4については、実施形態1と同様にして行なうことができる。
【0068】
次に、
図4のステップS5において、パルプモールド2A上にバリア層4および紙基材3を配置する工程を行なう。パルプモールド2A上にバリア層4および紙基材3を配置する工程は、ヒートシール層5が設置された状態のバリア紙10が後述のプレス工程後にパルプモールド2Aの少なくとも第1部分の内表面上に位置するように、たとえば
図10(A)に示すように、パルプモールド2Aの凹部2Dの外側のフランジ部2C上にバリア紙10を設置することにより行なうことができる。実施形態3においては、実施形態1とは異なり、上型6aが凸部を有し、下型6bが凹部を有している。
【0069】
次に、ステップS6において、パルプモールド2Aと紙基材3とをプレスする工程を行なう。パルプモールド2Aと紙基材3とをプレスする工程は、たとえば、
図10(B)に示すように、実施形態1と同様にして行なうことができる。
【0070】
実施形態3における上記以外の説明は、実施形態1と同様であるため、その説明については省略する。
【実施例0071】
[防湿性の評価]
<実施例1のパルプモールド容器の作製>
図10(A)および
図10(B)に示されるプレス工程によって、容器基材としてのパルプモールド2Aの内表面となる凹部2Dに、水性ヒートシール層であるヒートシール層5を積層したバリア紙10をヒートシール層5を介して貼り付けた後に
図11の模式的平面図に示される玉子型形状に打ち抜くことによって、
図12の模式的断面図に示される実施例1のパルプモールド容器1Aを作製した。これにより、実施例1のパルプモールド容器1Aのパルプモールド2Aは複数方向に湾曲した曲面から成る第1部分を含み、パルプモールド2Aの少なくとも第1部分の内表面にバリア層4および紙基材3が設けられた。また、実施例1のパルプモールド容器1Aの内表面は紙基材3から構成され、実施例1のパルプモールド容器1Aの外表面はパルプモールド2Aから構成されたため、外観上紙製品と判断することができた。
【0072】
実施例1のパルプモールド容器のバリア紙10としては、外表面に印刷がされた紙基材3と、紙基材3上のバリア層4とを備えた日本製紙株式会社製のシールドプラス(登録商標)を用いた。また、ヒートシール層5としては、三井化学株式会社製のケミパール(登録商標)をバリア紙10のバリア層4上に塗布した後に乾燥して得られた樹脂を用いた。
【0073】
<実施例2のパルプモールド容器の作製>
ヒートシール層5を設けなかったこと以外は
図10(A)および
図10(B)に示されるプレス工程と同様のプレス工程によって、容器基材としてのパルプモールド2Aの内表面となる凹部2Dに直接、紙基材3の一方の表面上にバリア層4を押し出すことにより形成されたバリア紙10を設置した後に
図11に示される玉子型形状に打ち抜くことによって、
図13の模式的断面図に示される実施例2のパルプモールド容器1Aを作製した。これにより、実施例2のパルプモールド容器1Aのパルプモールド2Aは複数方向に湾曲した曲面から成る第1部分を含み、パルプモールド2Aの少なくとも第1部分の内表面にバリア層4および紙基材3が設けられた。実施例2のパルプモールド容器1Aの内表面は紙基材3とパルプモールド2Aとから構成され、実施例2のパルプモールド容器1Aの外表面はパルプモールド2Aから構成されたため、外観上紙製品と判断することができた。
【0074】
実施例2のパルプモールド容器1Aの紙基材3としては一方の外表面に印刷がされた坪量が50g/m2の純白洋紙を用い、バリア層4としては紙基材3の他方の表面上にヒートシール性があり水蒸気バリア性に優れた低密度ポリエチレン樹脂を厚さ20μmに押し出した樹脂を用いた。
【0075】
<比較例1のパルプモールド容器の作製>
比較例1のパルプモールド容器としては、
図11の模式的平面図に示される玉子型形状に打ち抜かれたパルプモールド2Aのみを用いた。
【0076】
<防湿性の評価方法>
実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのパルプモールド容器のパルプモールド2Aの凹部2Dに設けられた紙基材3上に20gの塩化カルシウムを設置し、パルプモールド容器のフランジ部に接着剤でアルミニウム箔を積層したフィルム基材を接着して密封した。その状態で、温度40℃および湿度75%の環境下で、2日間放置し、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのパルプモールド容器中の塩化カルシウムの重量を測定した。その結果を表1の「2日間の吸湿量[g/m2/day]」の欄に示す。表1の「2日間の吸湿量[g/m2/day]」の欄の数値は、上記の環境下で2日間放置した後に増加したパルプモールド容器中の塩化カルシウムの重量をパルプモールド容器外面の表面積から1日当たりの吸湿量に換算した値を表しており、「2日間の吸湿量[g/m2/day]」の欄の数値が小さい方が防湿性に優れることを示す。
【0077】
【0078】
<防湿性の評価結果>
表1に示すように、実施例1および実施例2のパルプモールド容器は、比較例1のパルプモールド容器と比べて防湿性に優れることが確認された。また、実施例1のパルプモールド容器は、実施例2のパルプモールド容器と比べて防湿性に優れることが確認された。
【0079】
[ガスバリア性の評価]
<ガスバリア性の評価方法>
上記のようにして作製した実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのパルプモールド容器のパルプモールド2Aの凹部2Dに設けられた紙基材3またはバリア層4上に芳香剤として入浴剤(株式会社バスクリンの「きき湯、スキンケアシリーズ」)を設置し、パルプモールド容器のフランジ部にアルミニウム箔を積層したフィルム基材を接着して密封した。その状態で、1時間放置した後、実施例1、実施例2および比較例1のそれぞれのパルプモールド容器からの匂いの漏れ状態を男性および女性のそれぞれで確認することで以下のガスバリア性の評価基準により評価した。その結果を表2の「ガスバリア性の評価」の欄に示す。なお、表2の「ガスバリア性の評価」において、Aが最もガスバリア性に優れることを示し、Cが最もガスバリア性に優れていないことを示し、BがAとCとの間の評価を示している。
【0080】
<ガスバリア性の評価基準>
A…容器に近づいて(容器からの距離がゼロ)も容器からの匂いがしなかった。
B…容器に近づく(容器からの距離が1cm程度)と容器からほんのり匂いがした。
C…容器に近づかなくても(容器からの距離が3cm)容器から匂いがした。
【0081】
【0082】
<ガスバリア性の評価結果>
表2に示すように、実施例1および実施例2のパルプモールド容器は、比較例1のパルプモールド容器と比べて匂いのバリア性に優れることからガスバリア性に優れることが確認された。また、実施例1のパルプモールド容器は、実施例2のパルプモールド容器と比べてガスバリア性に優れることが確認された。
【0083】
[容器中のプラスチックの使用割合の評価]
<実施例3~5のパルプモールド容器の作製>
以下の表3に示す表面積[m
2]、坪量[g/m
2]、および重量[g]を有する紙基材A、紙基材Bおよび紙基材Cのそれぞれの一方の表面上に、表3に示す比重[g/cm
2]を有するLDPEを表3に示す厚さ[μm]で押し出して実施例3(紙基材A)、実施例4(紙基材B)および実施例5(紙基材C)のそれぞれのバリア紙を作製した。次に、実施例3~5のそれぞれのバリア紙を
図11に示す玉子型形状の内表面よりも広めの大きさに切断し、パルプモールド2Aの内表面上に押し出されたLDPE側を設置し、実施例3~5のそれぞれのバリア紙とパルプモールド2Aとを熱プレスした。その後、
図11に示す玉子型形状に打ち抜くことによって、表3に示すパルプモールドの表面積[m
2]を有する実施例3(紙基材A)、実施例4(紙基材B)および実施例5(紙基材C)のパルプモールド容器1Aを作製した。実施例3~5のパルプモールド容器1Aのパルプモールド2Aは複数方向に湾曲した曲面から成る第1部分を含み、パルプモールド2Aの少なくとも第1部分の内表面にバリア層4および紙基材3が設けられた。また、実施例3~5のパルプモールド容器の内表面は紙基材3とパルプモールド2Aとから構成され、実施例3~5のパルプモールド容器の外表面はパルプモールド2Aから構成されたため、実施例3~5のパルプモールド容器はそれぞれ外観上紙製品と判断することができた。
【0084】
<比較例2のパルプモールド容器の作製>
比較例2のパルプモールド容器としては、表3に示す表面積[m
2]および重量[g]を有するパルプモールド2Aの内表面上に、
図14の模式的断面図に示すように、表3に示す表面積[m
2]、比重[g/cm
2]、厚さ[μm]および重量[g]を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム40を加熱軟化させてパルプモールド2Aに真空吸着することにより貼り付けた後に、
図11に示す玉子型形状に打ち抜くことによって、表3に示すパルプモールドの表面積[m
2]を有する
図14に示す断面を有する比較例2のパルプモールド容器1Bを作製した。
【0085】
【0086】
<容器中のプラスチックの使用割合の評価方法>
上記のようにして作製した実施例3~5および比較例2のそれぞれのパルプモールド容器の構成材料の重量割合[%]を算出し、それぞれの容器を構成する紙とプラスチックの重量割合[%]を算出した。その結果を表4に示す。
【0087】
【0088】
<容器中のプラスチックの使用割合の評価結果>
表4に示すように、実施例3~5のパルプモールド容器の紙とプラスチックの重量割合は2.5~2.8[%]であり、比較例2のパルプモールド容器の14.8[%]よりも小さかった。したがって、実施例3~5のパルプモールド容器は、比較例2のパルプモールド容器と比べて容器中のプラスチックの使用割合を大幅に低減できることが確認された。また、表4に示す結果から、本実施形態のパルプモールド容器においては、容器中のプラスチックの使用割合を10%未満、特に5%未満とすることが可能であると考えられる。
【0089】
以上のように実施形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0090】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1A,1B パルプモールド容器、2A パルプモールド、2B 凸部、2C フランジ部、2D 凹部、3 紙基材、4 バリア層、4a 水溶性樹脂、4b 層状無機粒子、5 ヒートシール層、6a 上型、6b 下型、10 バリア紙、40 PET、401 型、402 材料槽、403 網、404 パルプ、405 乾燥炉。