(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185650
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】パイプ接続構造
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20221208BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20221208BHJP
F16L 11/127 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
F02M37/00 301M
B60K15/04 C
F02M37/00 301P
F02M37/00 321A
F16L11/127
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093401
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 晃規
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】原口 聡
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】柳川 憲史
(72)【発明者】
【氏名】北村 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】小菅 智丈
(72)【発明者】
【氏名】下川 晋治
【テーマコード(参考)】
3D038
3H111
【Fターム(参考)】
3D038CA08
3D038CA15
3D038CB01
3D038CC13
3H111AA04
3H111BA15
3H111CB03
3H111CB14
3H111DA01
3H111DB08
(57)【要約】
【課題】電気的接続性を維持しつつ、パイプの差し込み難さを改善したアース経路を構成するパイプ接続構造を提供する。
【解決手段】パイプ接続部23は、中空状の基部24と、基部24の先端側に連通するブリーザパイプ50のパイプ先端部51を挿入可能な中空状のパイプ接続本体部25を備え、基部24には、基部24の外周面29から外側、且つパイプ接続本体部25側に断面が略L字形に突出し、ブリーザパイプ50の導電層52をブリーザパイプ50の外側から押圧する押圧部32が形成されたアース接続部31が形成され、パイプ接続本体部25の外周面29には、押圧部32との最近接部29a以外であり、且つ最近接部29aの近傍に、ブリーザパイプ50を内側から押圧する突条28が形成され、押圧部32とパイプ接続本体部25の最近接部29aとの間の距離はブリーザパイプ50の肉厚より大である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車等の車両の燃料配管に使用される導電性樹脂から形成されたパイプ接続部に、外層に導電性が付与された導電層を有するパイプを連結し、前記パイプ接続部から前記パイプへのアース経路を構成するパイプ接続部構造であって、
前記パイプ接続部は、中空状の基部と、
前記基部の先端側に連通する前記パイプのパイプ接続端を所定の長さに位置する根元まで挿入可能な中空状のパイプ接続本体部を備え、
前記パイプ接続本体部の外周面には、前記パイプの内径より外径が大きく環状に突出するパイプ抜止突起が形成され、
前記基部には、前記基部の外周面から外側、且つ前記パイプ接続本体部側に前記パイプの挿入方向の断面が略L字形に突出し、前記パイプの前記導電層を前記パイプの外側から押圧する押圧部が形成されたアース接続部が形成され、
前記パイプ接続本体部の外周面には、前記パイプの挿入方向と直角方向の断面において、前記押圧部との最近接部以外であり、且つ前記最近接部の近傍に、前記パイプを内側から押圧する突条が形成されていることを特徴とするパイプ接続構造。
【請求項2】
前記押圧部の前記パイプの挿入方向と直角方向の断面は、前記パイプの前記導電層側に短辺を有する略台形であり、
前記突条の前記パイプの挿入方向と直角方向の断面は、前記パイプ接続本体部の外周面から前記短辺と略平行、且つ前記短辺より長く形成されている請求項1に記載のパイプ接続部構造。
【請求項3】
前記押圧部の前記パイプの挿入方向と直角方向の断面は、略四角形に前記パイプの前記導電層側に突出する弧形状が形成された形状であり、
前記突条の前記パイプの挿入方向と直角方向の断面は、前記パイプ接続本体部の外周面から突出する弧形状である請求項1に記載のパイプ接続部構造。
【請求項4】
前記突条は、前記押圧部との最近接部を挟んで略対称の位置に形成されている請求項3に記載のパイプ接続部構造。
【請求項5】
前記アース接続部の前記押圧部と前記パイプ接続本体部の前記最近接部との距離は、前記パイプの肉厚より長い請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のパイプ接続部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の燃料配管に使用されるパイプをパイプ接続部に挿入して連結した時に、パイプ接続部からパイプにアース経路(電気的接続経路)を構成するパイプ接続部構造に関するものである。なお、「パイプ」は「ホース」とも称する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車において、フィラーネックに接続した樹脂又はゴム製の燃料パイプを通じて燃料を燃料タンクに供給するに際し、帯電した人間が燃料キャップを掴んだ時に静電気による不快感を無くすために、静電気を車体側にアースする機構が採用されている。
【0003】
このアース機構の一つとして、樹脂又はゴム製の燃料パイプの外層を、カーボンを添加した導電層とすることによりアース経路を構成する技術が知られている(特許文献1)。このアース経路の形成には、フィラーネックと樹脂又はゴム製の燃料パイプとの電気的接続を確実に行うことが重要である。
【0004】
このフィラーネックと樹脂又はゴム製の燃料パイプとの電気的接続を確実に行う構成として、特許文献2には、以下のパイプ接続構造が示されている。
図8は、フィラーネック20のパイプ接続部23のアース接続部31の付近を示すパイプ挿入方向の半断面図であり、
図9は、パイプ接続部23のアース接続部31の付近のブリーザパイプ50の挿入方向と直角方向の断面図である。
【0005】
図8と
図9に示すように、導電性樹脂から形成されパイプ接続部23を有するフィラーネック20に、パイプ接続部23に接続され外層に導電性樹脂から形成された外層(導電層52)を有するブリーザパイプ50とが連結されている。フィラーネック20からブリーザパイプ50へのアース経路を構成するパイプ接続部構造において、パイプ接続部23は、ブリーザパイプ50のパイプ接続端51を、その先端から所定長さに位置する根元まで挿入可能であるパイプ接続本体部25と、パイプ接続本体部25の外周面に、ブリーザパイプ50の内径よりその外径が大きく環状に突設されたパイプ抜止突起26と、パイプ接続本体部25の外周面であって根元から断面ほぼL字形にアース接続部31が突設され、アース接続部31とパイプ接続本体部25の外周面との間で挿入間隙31Sを形成する押圧部32を有している。
【0006】
パイプ抜止突起26を乗り越えて圧入されたブリーザパイプ50のパイプ接続端51の先端部を挿入間隙31Sに圧入することによりパイプ接続端51の外層と電気的に接続する。押圧部32は、挿入間隙31Sの径方向の高さh1を、パイプ接続端51の端部の肉厚t1以下に形成した基準面32aと、挿入間隙31Sの一部を狭くするように基準面32aから突設されパイプ接続端51の外層を押圧する接続用突起32bを有している。又、接続用突起32bは、ブリーザパイプ50の挿入方向に山脈状に形成されている。
【0007】
一方、パイプ接続本体部25には、パイプ接続本体部25の外周面であって、接続用突起32bに対向する位置に突条28が山脈状に形成されている。
【0008】
その結果、接続用突起32bは、ブリーザパイプ500のパイプ接続端51を、突条28と共に狭めることにより、ブリーザパイプ50の外層の導電層52に食い込み、アース接続部31と導電層52との接触面積を増加させ、電気的接続性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11-118073号公報
【特許文献2】特開2011-131824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
確かに、
図9に示すように、h1≦t1となる基準面32aと、基準面32aの下方に形成した接続用突起32bを有する押圧部32と、パイプ接続本体部25において、押圧部32の接続用突起32bの最下部に対向する位置を最上部とする突条28を形成することにより、電気的接続性は高まるが、押圧部32において、基準面32aの下方に形成した接続用突起32bと、更に、押圧部32の接続用突起32bの最下部に対向する位置を最上部とする突条28を形成した部位では、接続用突起32bと突条28との間の間隔が非常に狭いので、ブリーザパイプ50を差し込み難い問題が発生した。
【0011】
発明者らは、自動車等の車両の燃料配管として使用されるフィラーパイプ、ブリーザパイプの硬度が高く、パイプ接続部のパイプの接続方向と直角の断面において、環形状から突出する部分が存在すると、突出部分の形状に対するパイプの形状追従性が悪いことを見出し、悪い形状追従性を利用して本発明に至った。本発明は、電気的接続性を維持しつつ、パイプの差し込み難さを改善したアース経路を構成するパイプ接続構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、自動車等の車両の燃料配管に使用される導電性樹脂から形成されたパイプ接続部に、外層に導電性が付与された導電層を有するパイプを連結し、パイプ接続部からパイプへのアース経路を構成するパイプ接続部構造であって、パイプ接続部は、中空状の基部と、基部の先端側に連通するパイプのパイプ接続端を所定の長さに位置する根元まで挿入可能な中空状のパイプ接続本体部を備え、パイプ接続本体部の外周面には、パイプの内径より外径が大きく環状に突出するパイプ抜止突起が形成され、基部には、基部の外周面から外側、且つパイプ接続本体部側にパイプの挿入方向の断面が略L字形に突出し、パイプの導電層をパイプの外側から押圧する押圧部が形成されたアース接続部が形成され、パイプ接続本体部の外周面には、パイプの挿入方向と直角方向の断面において、押圧部との最近接部以外であり、且つ最近接部の近傍に、パイプを内側から押圧する突条が形成されていることを特徴とするパイプ接続部構造である。
【0013】
請求項1の本発明では、自動車等の車両の燃料配管に使用される導電性樹脂から形成されたパイプ接続部のパイプ接続本体部の外周面には、パイプの内径より外径が大きく環状に突出するパイプ抜止突起が形成されているので、パイプ接続部にパイプのパイプ接続端が挿入された時に、パイプ抜止突起がパイプ接続端の内壁に食い込んで抜止めすることができる。
【0014】
一方、パイプ接続本体部の外周面には、パイプの挿入方向と直角方向の断面において、押圧部との最近接部以外であり、且つ最近接部の近傍に、パイプを内側から押圧する突条が形成されているので、最近接部の近傍に形成された突条がパイプを内側から押圧してパイプを変形させるが、パイプにおいて突条部分への形状追従性が悪く、パイプは、突条との間に、且つ最近接部上に隙間が形成されるように、アース接続部の押圧部側に膨らんで変形する。
【0015】
この時、パイプ接続本体部の基部には、基部の外周面から外側、且つパイプ接続本体部側にパイプの挿入方向の断面が略L字形に突出し、パイプの導電層をパイプの外側から押圧する押圧部が形成されたアース接続部が形成されているので、アース接続部の押圧部とパイプの外層の導電層とを当接させることができる。その結果、アース接続部の押圧部とのパイプ接続部の最近接部との間を背景技術のように狭くしなくてもパイプ接続部からパイプへアース経路を構成、確保することができ、同時に、パイプを容易にパイプ接続部に差し込むことができる。
【0016】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、押圧部のパイプの挿入方向と直角方向の断面は、パイプの導電層側に短辺を有する略台形であり、突条のパイプの挿入方向と直角方向の断面は、パイプ接続本体部の外周面から短辺と略平行、且つ短辺より長く形成されているパイプ接続部構造である。
【0017】
請求項2の本発明では、押圧部のパイプの挿入方向と直角方向の断面は、パイプの導電層側に短辺を有する略台形であり、突条のパイプの挿入方向と直角方向の断面は、パイプ接続本体部の外周面から短辺と略平行、且つ短辺より長く形成されているので、パイプは、突条の最近接部上が最も高くなる隙間が形成されるようにアース接続部の押圧部側に膨らんで変形する。その結果、アース接続部の押圧部とパイプの外層の導電層とを当接させることができるので、パイプ接続部からパイプへアース経路を構成、確保することができ、同時に、パイプを容易にパイプ接続部に差し込むことができる。
【0018】
請求項3の本発明は、請求項1の発明において、押圧部のパイプの挿入方向と直角方向の断面は、略四角形にパイプの導電層側に突出する弧形状が形成された形状であり、突条のパイプの挿入方向と直角方向の断面は、パイプ接続本体部の外周面から突出する弧形状であるパイプ接続部構造である。
【0019】
請求項3の本発明では、押圧部のパイプの挿入方向と直角方向の断面は、略四角形にパイプの導電層側に突出する弧形状が形成された形状であり、押圧部との最近接部以外であり、且つ最近接部の近傍に形成される突条のパイプの挿入方向と直角方向の断面は、パイプ接続本体部の外周面から突出する弧形状であるので、突条がパイプを内側から押圧してパイプを変形させるが、パイプにおいて突条部分への形状追従性が悪く、パイプは、最近接部との間に隙間が形成されるようにアース接続部の押圧部側に膨らんで変形する。
【0020】
一方、押圧部のパイプの挿入方向と直角方向の断面は、略四角形にパイプの導電層側に突出する弧形状が形成された形状であるので、アース接続部の押圧部側に突出する弧形状とアース接続部の押圧部側に膨らんだパイプが当接する。その結果、アース接続部の押圧部とパイプの外層の導電層とを当接させることができるので、パイプ接続部からパイプへアース経路を構成、確保することができ、同時に、パイプを容易にパイプ接続部に差し込むことができる。
【0021】
請求項4の本発明は、請求項3の発明において、突条は、押圧部との最近接部を挟んで略対称の位置に形成されているパイプ接続部構造である。
【0022】
請求項4の本発明では、突条は、押圧部との最近接部を挟んで略対称の位置に形成されているので、パイプは、隙間が、突条間の最近接部上であり、最近接部に対して対称に形成されるように変形する。そして、押圧部の最近接部上には、アース接続部の押圧部側に突出する弧形状が存在しているので、アース接続部の押圧部とパイプの外層の導電層とを当接させることができるので、パイプ接続部からパイプへアース経路を構成、確保することができ、同時に、パイプを容易にパイプ接続部に差し込むことができる。
【0023】
請求項5の本発明は、請求項1から請求項4の発明において、アース接続部の押圧部とパイプ接続本体部の最近接部との距離は、パイプの肉厚より長いパイプ接続部構造である。
【0024】
上記の通り、自動車等の車両の燃料配管として使用されるフィラーパイプ、ブリーザパイプの硬度が高く、パイプ接続部のパイプの接続方向と直角断面において、環形状から突出する部分が存在すると、突出部分の形状に対するパイプの形状追従性が悪く、パイプは、突条との間に隙間が形成されるように膨らんで変形する。
【0025】
請求項5の本発明では、アース接続部の押圧部とパイプ接続本体部の最近接部との距離をパイプの肉厚より長くしてもアース接続部の押圧部とパイプの外層の導電層とを当接させることができるので、パイプ接続部からパイプへアース経路を構成、確保することができ、同時に、パイプを容易にパイプ接続部に差し込むことができる。
【発明の効果】
【0026】
自動車等の車両の燃料配管に使用される導電性樹脂から形成されたパイプ接続部のパイプ接続本体部の外周面には、パイプの内径より外径が大きく環状に突出するパイプ抜止突起が形成されているので、パイプ接続部にパイプのパイプ接続端が挿入された時に、パイプ抜止突起がパイプ接続端の内壁に食い込んで抜止めすることができる。
【0027】
一方、パイプ接続本体部の外周面には、パイプの挿入方向と直角方向の断面において、押圧部との最近接部以外であり、且つ最近接部の近傍に、パイプを内側から押圧する突条が形成されているので、最近接部の近傍に形成された突条がパイプを内側から押圧してパイプを変形させるが、パイプにおいて突条部分への形状追従性が悪く、パイプは、突条との間に、且つ最近接部上に隙間が形成されるように、アース接続部の押圧部側に膨らんで変形する。
【0028】
この時、パイプ接続本体部の基部には、基部の外周面から外側、且つパイプ接続本体部側にパイプの挿入方向の断面が略L字形に突出し、パイプの導電層をパイプの外側から押圧する押圧部が形成されたアース接続部が形成されているので、アース接続部の押圧部とパイプの外層の導電層とを当接させることができる。その結果、アース接続部の押圧部とのパイプ接続部の最近接部との間を背景技術のように狭くしなくてもパイプ接続部からパイプへアース経路を構成、確保することができ、同時に、パイプを容易にパイプ接続部に差し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態にかかる燃料タンクへ燃料を供給する燃料供給装置を示す概略図である。
【
図2】
図1のフィラーネック、フィラーパイプ及びブリーザパイプの一部を拡大した断面図である。
【
図3】パイプ接続部とブリーザパイプの接続箇所(
図2の楕円枠内)を示す半断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態のパイプ接続部のアース接続部付近を示す斜視図である。
【
図5】
図4のパイプ接続部のアース接続部付近の挿入方向と直角方向の断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態のパイプ接続部のアース接続部付近を示す斜視図である。
【
図7】
図6のパイプ接続部のアース接続部付近の挿入方向と直角方向の断面図である。
【
図8】従来のパイプ接続部とブリーザパイプの接続箇所を示す半断面図である(特許文献2)。
【
図9】
図8のパイプ接続部のアース接続部付近の挿入方向と直角方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本実施形態は、燃料を自動車の燃料供給装置10から燃料タンクに供給するに際し、帯電した人間が燃料キャップ60を掴んだ時に静電気による不快感を無くすために、静電気を車体側にアースするアース経路を構成するパイプ接続部構造を説明するものである。なお、背景技術と同じ部位においては、同一番号を使用して説明する。
【0031】
(1)燃料供給装置10の概略構成
図1は、本発明の実施例にかかる燃料タンクへ燃料を供給する燃料供給装置10を示す概略図である。燃料供給装置10は、燃料キャップ60と、フィラーネック20と、フィラーネック20と図示しない燃料タンクとを接続するフィラーパイプ40、給油時に燃料タンク内を外部へ通気するためのブリーザパイプ50と、フィラーパイプ40とブリーザパイプ50の両パイプを図示しない車体側部材に取り付けるためのパイプ保持装置80と、フィラーパイプ40、ブリーザパイプ50の端部を燃料タンクに接続する図示しないタンク接続部材を備えている。フィラーパイプ40とブリーザパイプ50は、そのパイプ接続端41、51でフィラーネック20に接続されている。
【0032】
フィラーパイプ40とブリーザパイプ50は、共に樹脂製のパイプであり、複数の樹脂材料、すなわち、内層が耐燃料透過性に優れた高密度ポリエチレンから形成され、外層がカーボンなどを添加することによって導電性を付与したポリエチレンからなる導電層52(
図3)が形成されている。
【0033】
この構成により、給油時に燃料キャップ60をフィラーネック20から外して、給油ガンから燃料をフィラーネック20に注入すると、燃料は、フィラーネック20とフィラーパイプ40で構成される燃料供給通路を通じて、図示しない燃料タンクに供給される。この時、ブリーザパイプ50は、燃料タンク内の燃料蒸気を燃料タンクから逃がして燃料の供給を円滑にするとともに、人体に帯電した静電気を除くアース経路の一部として作用する。以下、各部の構成について説明する。
【0034】
(2)フィラーネック20
図2は、
図1に示すフィラーネック20、フィラーパイプ40とブリーザパイプ50の一部を拡大した断面図である。
図2において、フィラーネック20は、注入口21aと流出口21bとを接続し、燃料供給通路の一部である注入通路20cを構成するネック本体21と、ネック本体21の内側から外側にかけて、燃料キャップ60を開閉自在に取り付けるための取付金具70とを備えている。なお、フィラーネック20と取付金具70は一体に形成してもよく、更に、燃料キャップ60を使用しない弁機構を備えたキャップレスタイプであってもよい。
【0035】
ネック本体21は、カーボンを添加したポリエチレンなどの導電樹脂から形成された射出成型品であり、その下部にフィラーパイプ40のパイプ接続部22、ブリーザパイプ50のパイプ接続部23を備えている。パイプ接続部22は、流出口21bを有しフィラーパイプ40を接続するための部位であり、フィラーパイプ40のパイプ接続端41を拡張させて抜止めする複数の環状突部を備えるフィラーパイプ抜止部22aが形成されている。
【0036】
パイプ接続部23は、ネック本体21の側部に形成され、ブリーザパイプ50を接続するための部位であり、ブリーザパイプ50のパイプ接続端51を拡開させて抜止めする複数の環状突部を備えるパイプ抜止突起26が形成されている。
【0037】
(3)パイプ接続部23
図3は、パイプ接続部23とブリーザパイプ50の接続箇所を示す半断面図であり、
図2の楕円枠内の拡大図である。パイプ接続部23は、通路を形成している円筒状の基部24と、基部24から内周に通路を形成している円筒状のパイプ接続本体部25と、パイプ接続本体部25の外周部に環状に突設されたパイプ抜止突起26と、アース接続部31を備えている。パイプ抜止突起26は、先端側から順に、第1ないし第4環状突部26a、26b、26c、26dを備えている。第1環状突部26aは、パイプ接続本体部25の先端に位置し、先端から徐々に拡径しパイプ接続本体部25に対して略直角で内周方向へ縮径する山形となっており、ブリーザパイプ50の挿入時は、挿入しやすく、ブリーザパイプ50が引き抜かれる方向に力が加わっても抜け難くなっている。第2環状突部26bは、第1環状突部26aより根元側にあって、第1環状突部26aとの間にOリング27を収納可能に離れた位置に形成されている。第3環状突部26cと第4環状突部26dは、第2環状突部26bよりも根元に形成され、第1環状突部26aとほぼ同様な形状である。
【0038】
パイプ接続部23には、基部24の一端部にアース接続部31が形成されている。アース接続部31は、パイプ接続本体部25の外周面29とでブリーザパイプ50のパイプ接続端51を挟持することにより、アース経路を構成する部位である。アース接続部31は、基部24の外周面29から外側、且つパイプ接続本体部25側にブリーザパイプ50の挿入方向の断面が略L字形に突出して形成され、パイプ接続本体部25の外周面29に挿入間隙を隔てた部分を押圧部32としている。なお、押圧部32の先端部分は、ブリーザパイプ50を押圧部32とパイプ接続本体部25との間に挿入し易いように面取りされている。
【0039】
押圧部32の下面とパイプ接続本体部25の外周面29との間の距離(間隔)h2は、ブリーザパイプ50の肉厚t1より大きい、すなわち、h2>t1である。
【0040】
又、パイプ接続部23には、ブリーザパイプ50をパイプ接続部23に対して回るのを防止するための回り止め突起33(
図4)が、アース接続部31のない箇所に形成されている。回り止め突起33は、その高さがブリーザパイプ50の肉厚t1とほぼ同じであり、先端部が楔形状に形成され、ブリーザパイプ50の端面に食い込んでブリーザパイプ50が回るのを防止する。なお、回り止め突起33は形成しなくてもよい。
【0041】
又、パイプ接続本体部25の外周面29には、ブリーザパイプ50の挿入方向と直角方向の断面において、アース接続部31の押圧部32との最近接部29a以外であり、且つ最近接部29aの近傍に、ブリーザパイプ50を内側から押圧する突条28が形成される。最近接部29a、押圧部32と突条28については、第1の実施形態及び第2の実施形態に関し、以下に説明する。
【0042】
(4)押圧部32と突条28(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態にかかるパイプ接続部23のアース接続部31の付近を示す斜視図であり、
図5は、
図4のパイプ接続部23のアース接続部31付近の挿入方向と直角方向の断面図である。
【0043】
図5に示すように、ブリーザパイプ50の挿入方向と直角方向の断面において、押圧部32は、ブリーザパイプ50の導電層52側に短辺Lを有する台形である。最近接部29aは、パイプ接続本体部25の外周面29上であり、押圧部32との間の距離が最も近い部分である。
【0044】
突条28は、パイプ接続本体部25の外周面29上であり、最近接部29aを通り、最近接部29aから離れる方向に、台形の押圧部32の短辺と平行であり、且つ短辺より長い幅L’を有して外周面29から盛り上がるように形成されている。すなわち、突条28は、最近接部29a以外であり、最近接部29aの近傍に形成されている。又、
図4と
図5に示すように、突条28は、幅L’、奥行きDの平面として形成されている。なお、突条28のパイプ接続本体部25の先端側は、ブリーザパイプ50を押圧部32と突条28との間に挿入し易いように面取りされている。
【0045】
ブリーザパイプ50をパイプ接続本体部25に挿入すると、パイプ接続本体部25の突条28がブリーザパイプ50を内側から押圧して変形させるが、ブリーザパイプ50は、硬度が高い(例えば、ショアA硬度で、60から70程度である)ので、ブリーザパイプ50は、最近接部29a上が最も高くなる隙間Sが形成されるように、すなわち、ブリーザパイプ50はアース接続部31の押圧部32側に膨らんで変形する。
【0046】
その結果、第1に、押圧部32の下面とパイプ接続本体部25との距離(間隔)h2は、ブリーザパイプ50の肉厚t1より長くても、押圧部32は、ブリーザパイプ50の導電層52と少なくとも線又は面で当接することができる。
【0047】
第2に、突条28は、台形の押圧部32の短辺と平行であり、且つ短辺より長い幅L’を有し、奥行きDの平面として形成されているので、ブリーザパイプ50は、突条28によって押圧部32との最近接部29aから離れる位置においても外側に膨らむように変形し、隙間Sが形成されるので、台形の押圧部32の短辺と全面、若しくは、短辺の全面とその外側の斜面にかけて当接する。
【0048】
ただし、h2が長すぎるとブリーザパイプ50の導電層52が押圧部32に当接することができないので、隙間Sの最近接部29a上の高さをhsとすると、t1<h2≦t1+hsを満たす範囲に設定する。
【0049】
その結果、アース接続部31の押圧部32とブリーザパイプ50の外層の導電層52とを当接させることができ、パイプ接続部23からブリーザパイプ50へアース経路を構成、確保することができ、同時に、ブリーザパイプ50を容易にパイプ接続部23に差し込むことができる。
【0050】
(5)押圧部32と突条28(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態にかかるパイプ接続部23のアース接続部31の付近を示す斜視図であり、
図7は、
図6のパイプ接続部23のアース接続部付近の挿入方向と直角方向の断面図である。
【0051】
図7に示すように、ブリーザパイプ50の挿入方向と直角方向の断面において、押圧部32は、四角形の下方、すなわち、ブリーザパイプ50の導電層52側に突出する円弧の弧形状であり、突条28は、押圧部32とパイプ接続本体部25の外周面29上であり、押圧部32との最近接部29aの近傍に、最近接部29aに対して対称の位置に弧形状に突出して形成されている。
【0052】
又、押圧部32と突条28は、ブリーザパイプ50の挿入方向に山脈状に形成されている。なお、突条28のパイプ接続本体部25側は、ブリーザパイプ50を押圧部32と突条28との間に挿入し易いように面取りされている。
【0053】
ブリーザパイプ50をパイプ接続本体部25に挿入すると、パイプ接続本体部25の突条28がブリーザパイプ50を内側から押圧してブリーザパイプ50を変形させるが、ブリーザパイプ50は、硬度が高いので、ブリーザパイプ50は、最近接部29a上に隙間Sを有し、隙間Sが、最近接部29a側に湾曲し、最近接部29aを挟んで略対称に形成されるように、アース接続部31の押圧部32側に膨らんで変形する。
【0054】
この時、押圧部32は、四角形の下方、すなわち、ブリーザパイプ50の導電層52側に突出する円弧の弧形状を有しているので、ブリーザパイプ50の導電層52と押圧部32の弧形状の下面との接触面積が増大する。
【0055】
その結果、押圧部32の下面とパイプ接続本体部25との間の距離(間隔)h2は、ブリーザパイプ50の肉厚t1より長くても、押圧部32は、ブリーザパイプ50の導電層52と少なくとも線又は面で当接することができる。
【0056】
なお、第1の実施形態と同様に、h2が長すぎるとブリーザパイプ50の導電層52が押圧部32の弧形状の下面に当接することができないので、隙間Sの最近接部29a上の高さをhsとすると、t1<h2≦t1+hsを満たす範囲に設定する。
【0057】
その結果、アース接続部31の押圧部32とブリーザパイプ50の外層の導電層52とを当接させることができ、パイプ接続部23からブリーザパイプ50へアース経路を構成、確保することができ、同時に、ブリーザパイプ50を容易にパイプ接続部23に差し込むことができる。
【0058】
なお、本第2の実施形態において、弧形状の突条28を形成する位置は、少なくとも、ブリーザパイプ50が突条28の形状に沿って外側に膨んだ時に、最近接部29a上に隙間Sが形成され、ブリーザパイプ50の外層の導電層52が当接する位置に形成する。
【0059】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
20 フィラーネック
21 ネック本体部
23 パイプ接続部
24 基部
25 パイプ接続本体部
26 パイプ抜止突起
28 突条
29 外周面
29a 最近接部
31 アース接続部
32 押圧部
40 フィラーパイプ
50 ブリーザパイプ
51 パイプ接続端
52 導電層
S 隙間