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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185651
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ワイヤ駆動マニピュレータ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A61B17/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093402
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】松尾 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小俣 透
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG22
4C160GG29
4C160GG30
4C160GG32
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】第1の関節が回転してもリンクを介して連結された第2の関節のトルクが変化しないワイヤ駆動マニピュレータ装置を提供する。
【解決手段】鉗子マニピュレータ装置は、第1の関節1、第2の関節2、第1の関節1と第2の関節2とを連結するリンク3、及びリンク3内に固定されたガイドプーリユニット5によって構成される。第1の関節1は駆動プーリ11及びガイドプーリ14、12、13、15を有する。第2の関節2は駆動プーリ2a及び2bを有する。ガイドプーリユニット5はガイドプーリ54、52、53、55を有する。ワイヤW11は手首関節1の駆動プーリ11に巻回され、ワイヤW12は手首関節1の駆動プーリ11に巻回される。ワイヤW2、W3は共に2つのガイドプーリ12、52;13、53によって手首関節1の回転軸1x方向から見て同一のS字状形状で屈曲する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転軸を有する第1の関節と、
前記第1の回転軸に垂直な第2の回転軸を有する第2の関節と、
前記第1の関節と前記第2の関節とを連結するリンクと、
前記第1、第2の関節間にあって前記リンク内に固定され、前記第1の回転軸に平行な第3の回転軸を有するガイドプーリユニットと、
第1、第2、第3のワイヤと
を具備し、
前記第1の関節は、前記第1の回転軸に枢着された前記リンクを駆動させるための第1の駆動プーリ及び第1、第2のガイドプーリを有し、
前記第2の関節は前記第2の回転軸に枢着された第2の駆動プーリを有し、
前記ガイドプーリユニットは前記第3の回転軸に枢着された前記第1、第2のガイドプーリに対応した第3、第4のガイドプーリを有し、
前記第1のワイヤは前記第1の駆動プーリに巻き回され、
前記第2のワイヤは前記第1、第3のガイドプーリを介して前記第2の駆動プーリの一方側から巻回され、
前記第3のワイヤは前記第2、第4のガイドプーリを介して前記第2の駆動プーリの他方側から巻回され、
前記第1の回転軸方向から見て、前記第2のワイヤの前記第1、第3のガイドプーリへの巻回状態と、前記第3のワイヤの前記第2、第4のガイドプーリへの巻回状態とは同一であるワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項2】
前記第2のワイヤの前記第1、第3のガイドプーリへの巻回状態と、前記第3のワイヤの前記第2、第4のガイドプーリへの巻回状態とは前記第1の回転軸方向から見て同一のS字形状である請求項1に記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項3】
さらに、第4、第5のワイヤを具備し、
前記第1の関節はさらに前記第1の回転軸に枢着された第5、第6のガイドプーリを有し、
前記第2の関節はさらに前記第2の回転軸に枢着された第3の駆動プーリを有し、
前記ガイドプーリユニットはさらに前記第3の回転軸に枢着され、前記第5、第6のガイドプーリに対応した第7、第8のガイドプーリを有し、
前記第4のワイヤは前記第5、第7のガイドプーリを介して前記第3の駆動プーリの一方側から巻回され、
前記第5のワイヤは前記第6、第8のガイドプーリを介して前記第3の駆動プーリの他方側から巻回され、
前記第1の回転軸方向から見て、前記第4のワイヤの前記第5、第7のガイドプーリへの巻回状態と、前記第5のワイヤの前記第6、第8のガイドプーリへの巻回状態とは同一である請求項1または2に記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項4】
前記第4のワイヤの前記第5、第7のガイドプーリへの巻回状態と、前記第5のワイヤの前記第6、第8のガイドプーリへの巻回状態とは前記第1の回転軸方向から見て同一のS字形状である請求項3に記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項5】
前記第1、第5のガイドプーリは前記第1の駆動プーリの一方側に設けられ、
前記第2、第6のガイドプーリは前記第1の駆動プーリの他方側に設けられ、
前記第3、第5のガイドプーリの径は前記第1、第7のガイドプーリの径より小さく、
前記第4、第6のガイドプーリの径は前記第2、第8のガイドプーリの径より小さい
請求項3又は4に記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項6】
さらに、
前記第1のワイヤ用の第1のモータ及び該第1のモータを支持する第1の基台と、
前記第2、第3のワイヤを駆動するための第2のモータ及び該第2のモータを支持する第2の基台と、
前記第4、第5のワイヤを駆動するための第3のモータ及び該第3のモータを支持する第3の基台と、
前記第2、第3の基台を前記第1、第2の関節に対して互いに逆方向へ移動させるための第4のモータと
を具備し、
前記第4のモータと前記第1のモータとを連動して制御して前記第2、第3のワイヤの引張状態又は弛緩状態を弛緩方向又は引張方向に制御すると同時に、前記第4、第5のワイヤの弛緩状態又は引張状態を引張方向又は弛緩方向へ制御するようにした請求項3~5のいずれかに記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項7】
さらに、
前記第1のワイヤ用の第1のモータと、
前記第1のモータの回転軸に枢着された回転直動変換手段と、
前記第2、第3のワイヤ用の第2のモータと、
前記回転直動変換手段の一方側に嵌合し、前記第2のモータを支持する第1のラックと、
前記第4、第5のワイヤ用の第3のモータと、
前記回転直動変換手段の他方側に嵌合し、前記第3のモータを支持する第2のラックと
を具備し、
前記第1、第2のラックは平行に配置され、
前記第1の関節と前記回転直動変換手段とが同期して同一方向に回転し、前記第2、第3のモータの一方が前記第1の関節に近接すると同時に、前記第2、第3のモータの他方が前記第1の関節から遠ざかるようにした請求項3~5のいずれかに記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項8】
さらに、
前記第1、第2、第3のワイヤを収容するパイプと、
前記パイプ内に設けられた突起付シャフトと、
前記突起シャフトを回転させるためのモータと、
前記パイプ内に設けられマイクロフォンと、
前記マクロフォンによって検出された振動周波数から前記第1、第2、第3のワイヤの各張力を演算するための制御ユニットと
を具備する請求項1または2に記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項9】
前記第1、第2、第3のワイヤは前記突起付シャフトの突起位置で前記突起付シャフトの中心から同一円周上に配置された請求項8に記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項10】
さらに、
前記第1、第2、第3、第4、第5のワイヤを収容するパイプと、
前記パイプ内に設けられた突起付シャフトと、
前記シャフトを回転させるためのモータと、
前記パイプ内に設けられマイクロフォンと、
前記マイクロフォンによって検出された振動周波数から前記第1、第2,第3、第4、第5のワイヤの各張力を演算するための制御ユニットと
を具備する請求項3~7のいずれかに記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【請求項11】
前記第1、第2、第3、第4、第5のワイヤは前記突起付シャフトの突起位置で前記突起付シャフトの中心から同一円周上に配置された請求項10に記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤ駆動マニピュレータ装置たとえば鉗子マニピュレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉗子マニピュレータ装置を用いた外科手術たとえば腹腔鏡手術、ロボット遠隔操作による手術においては、力情報を術者にフィードバックして高度な手術を実現する必要がある。力情報としては、
臓器の弾力等の接触力、
縫合時の縫合糸の張力等の鉗子先端に加えられた外力、
血管等の組織を掴んだ際の鉗子グリッパの把持力
がある。
【0003】
図16は従来の鉗子マニピュレータ装置を示す斜視図である(参照:特許文献1のFig.10)。
【0004】
図16の鉗子マニピュレータ装置は、ヨー方向動作のための手首関節(第1の関節)101、ジョー102a、102bを有するピッチ方向動作のための鉗子関節(第2の関節)102、手首関節101と鉗子関節102とを連結するリンク103、及び手首関節101と鉗子関節102との間にあってリンク103に固定されたガイドプーリユニット105、106によって構成される。
【0005】
手首関節101は、回転軸101xに摺動的に軸着された比較的大きい駆動プーリ1011及び回転軸101aに摺動的に軸着された比較的小さいガイドプーリ1012、1013、1014、1015を有する。他方、鉗子関節102は、回転軸102xに摺動的に軸着され、ジョー104aに結合された比較的大きい駆動プーリ102a、及び回転軸102xに摺動的に軸着され、ジョー104bに結合された比較的大きい駆動プーリ102bを有する。ガイドプーリユニット105は回転軸105xに摺動的に軸着された比較的小さいガイドプーリ1052、1054を有し、ガイドプーリユニット106は回転軸106xに摺動的に軸着された比較的小さいガイドプーリ1063、1065を有する。尚、ガイドプーリユニット105、106の回転軸105x、106xは手首関節101の回転軸101xと平行であり、他方、鉗子関節102の回転軸102xは手首関節101の回転軸101xに垂直である。
【0006】
手首関節101について詳述する。ワイヤW11は手首関節101の駆動プーリ1011の下側に固定される。従って、ワイヤW11を張力T11で引張ると、鉗子関節102、リンク103、ガイドプーリユニット105、106はヨー方向に下降する。この状態を図17の(A)に示す。他方、ワイヤW12は手首関節101の駆動プーリ1011の上側に固定される。従って、ワイヤW12を張力T12で引張ると、鉗子関節102、リンク103、ガイドプーリユニット105、106はヨー方向に上昇する。この状態を図17の(B)に示す。
【0007】
ジョー104aについて詳述する。ワイヤW2は手首関節101のガイドプーリ1012を下回りし、ガイドプーリユニット105のガイドプーリ1052を上回りして鉗子関節102の駆動プーリ102aに反時計回りに巻回し、駆動プーリ102a上に固定されている。従って、ワイヤW2を張力T2で引張ると、ジョー104aは矢印A1に示すごとくピッチ方向の閉じる方向に移動する。他方、ワイヤW3は手首関節101のガイドプーリ1013を上回りし、ガイドプーリユニット106のガイドプーリ1063を下回りして鉗子関節102の駆動プーリ102aに時計回りに巻回し、駆動プーリ102a上に固定されている。従って、ワイヤW3を張力T3で引張ると、ジョー104aは矢印A2に示すごとくピッチ方向の開く方向に移動する。すなわち、ワイヤW2、W3は共に2つのガイドプーリ1012、1052;1013、1063によって手首関節101の回転軸101x方向から見てS字状形状に屈曲するが、ワイヤW2、W3ではS字状が逆である。
【0008】
ジョー104bについて詳述する。ワイヤW4は手首関節101のガイドプーリ1014を下回りし、ガイドプーリユニット105のガイドプーリ1054を上回りして鉗子関節102の駆動プーリ102bに反時計回りに巻回し、駆動プーリ102b上に固定されている。従って、ワイヤW4を張力T4で引張ると、ジョー104bは矢印B1に示すごとくピッチ方向の開く方向に移動する。他方、ワイヤW5は手首関節101のガイドプーリ1015を上回りし、ガイドプーリユニット106のガイドプーリ1065を下回りして鉗子関節102の駆動プーリ102bに時計回りに巻回し、駆動プーリ102b上に固定されている。従って、ワイヤW5を張力T5で引張ると、ジョー104bは矢印B2に示すごとくピッチ方向の閉じる方向に移動する。すなわち、ワイヤW4、W5は共に2つのガイドプーリ1014、1054;1015、1065によって手首関節101の回転軸101x方向から見てS字状に屈曲するが、ワイヤW4、W5ではS字状形状が逆である。
【0009】
このように、図16の従来の鉗子マニピュレータ装置によれば、ヨー方向の手首動作を行いながら、鉗子のピッチ方向の開閉動作を行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US6394998B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の図16に示す従来の鉗子マニピュレータ装置においては、手首関節101が回転すると、鉗子関節102のジョー104aを駆動する1対のワイヤW2、W3及び鉗子関節102のジョー104bを駆動する1対のワイヤW4、W5の長さの差つまり張力差に変化が発生し、従って、後述のごとく、ジョー104aのトルクを表わす1対のワイヤW2、W3の張力差及び1対のワイヤW4、W5の張力差が変化し、ジョー104aのトルク及びジョー104bのトルクが変化するという課題がある。すなわち、図18の(A)に示すごとく、ワイヤW11の長さとワイヤW12の長さとが等しい状態で、ワイヤW11、W12の張力T11、T12を変化させて手首関節101を回転させると、図18の(B)に示すごとく、ワイヤW2、W3の2つのガイドプーリ1012(1013)、1052(1063)によるS字状形状が逆になっているので、ワイヤW2の長さはワイヤW3の長さより大きくなる。この結果、ワイヤW2、W3の張力が変化し、その張力差が変化し、ジョー104aのトルクが変化する。同様に、ジョー104bのトルクも変化する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために、本発明に係るワイヤ駆動マニピュレータ装置は、第1の回転軸を有する第1の関節と、第1の回転軸に垂直な第2の回転軸を有する第2の関節と、第1の関節と第2の関節とを連結するリンクと、第1、第2の関節間にあってリンク内に固定され、第1の回転軸に平行な第3の回転軸を有するガイドプーリユニットと、第1、第2、第3のワイヤとを具備し、第1の関節は、第1の回転軸に枢着されたリンクを駆動させるための第1の駆動プーリ及び第1、第2のガイドプーリを有し、第2の関節は第2の回転軸に枢着された第2の駆動プーリを有し、ガイドプーリユニットは第3の回転軸に枢着された第1、第2のガイドプーリに対応した第3、第4のガイドプーリを有し、第1のワイヤは第1の駆動プーリに巻き回され、第2のワイヤは第1、第3のガイドプーリを介して第2の駆動プーリの一方側から巻回され、第3のワイヤは第2、第4のガイドプーリを介して第2の駆動プーリの他方側から巻回され、第1の回転軸方向から見て、第2のワイヤの第1、第3のガイドプーリへの巻回状態と、第3のワイヤの第2、第4のガイドプーリへの巻回状態とは同一であるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の関節が回転しても、1対の第2、第3のワイヤのガイドプーリへの巻回状態は同一であるので、1対の第2、第3のワイヤ長は共に増加するか減少するかである。従って、1対の第2、第3のワイヤ長の差は変化せず、1対の第2、第3の張力差は変化しない。この結果、第1の関節が回転しても、1対のワイヤの張力差に変化がなく、従って、第2の関節(第2の駆動プーリ)のトルクは変化しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る鉗子マニピュレータ装置の第1の実施の形態を示す斜視図である。
図2図1の鉗子マニピュレータ装置の概観図である。
図3図1のパイプの手首関節から動力部へ見た断面図である。
図4図1のワイヤの状態を示す図である。
図5図1の鉗子マニピュレータ装置の動作を説明するための図であって、(A)は手首関節の回転前を示し、(B)は手首関節の回転後を示す。
図6図1の制御ユニットの動作を説明するためのフローチャートである。
図7図1の鉗子マニピュレータ装置において、手首関節1が回転した場合のワイヤW2、W3及びワイヤW4、W5の長さの変化を説明するための図であって、(A)は手首関節の回転前を示し、(B)は手首関節の回転後を示す。
図8】本発明に係る鉗子マニピュレータ装置の第2の実施の形態を示す斜視図であって、動力部分を示す。
図9図8の鉗子マニピュレータ装置における手首関節用のモータの動作と干渉補償用モータの動作との関係を説明するための図である。
図10図8の鉗子マニピュレータ装置において、手首関節が回転した場合のワイヤW2、W3及びワイヤW4、W5の長さの変化を説明するための図であって、(A)は手首関節の回転前を示し、(B)は手首関節の回転後を示す。
図11】本発明に係る鉗子マニピュレータ装置の第3の実施の形態を示す斜視図である。
図12図11の鉗子マニピュレータ装置の側面図である。
図13図11の鉗子マニピュレータ装置の手首関節の回転後を示す斜視図である。
図14図12の鉗子マニピュレータ装置の手首関節の回転後を示す側面図である。
図15図1の鉗子マニピュレータ装置の力覚センシング検証結果を示すグラフであって、(A)は手首関節のヨー方向発生力を示し、(B)は鉗子関節のジョー4aのピッチ方向発生力を示し、(C)は鉗子関節のジョー4bのピッチ方向発生力を示す。
図16】従来の鉗子マニピュレータ装置を示す斜視図である。
図17図16の鉗子マニピュレータ装置の動作を説明するための図であって、(A)は手首関節の第1の回転を示し、(B)は手首関節の第2の回転を示す。
図18図16の鉗子マニピュレータ装置の課題を説明するための図であって、(A)は手首関節の回転前を示し、(B)は手首関節の回転後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る鉗子マニピュレータ装置の第1の実施の形態を示す斜視図、図2図1の鉗子マニピュレータ装置の概観図である。
【0016】
図1図2の鉗子マニピュレータ装置は、ヨー方向動作のための手首関節(第1の関節)1、ジョー4a、4bを有するピッチ方向動作のための鉗子関節(第2の関節)2、手首関節1と鉗子関節2とを連結するリンク3、及び手首関節1と鉗子関節2との間にあってリンク3内に固定されたガイドプーリユニット5によって構成される。尚、ガイドプーリユニット5の回転軸5xは手首関節1の回転軸1xに平行であり、他方、鉗子関節2の回転軸2xは手首関節1の回転軸1xに垂直である。
【0017】
手首関節1は、回転軸1xに摺動的に軸着された比較的大きい駆動プーリ11、及び回転軸1aに摺動的に軸着された比較的小さいガイドプーリ14、12、13、15を有する。この場合、ガイドプーリ14、12は駆動プーリ11の上側に設けられ、ガイドプーリ13、15は駆動プーリ11の下側に設けられる。他方、鉗子関節2は、回転軸2xに摺動的に軸着され、ジョー4aに結合された比較的大きい駆動プーリ2a、及び回転軸2xに摺動的に軸着され、ジョー4bに結合された比較的大きい駆動プーリ2bを有する。ガイドプーリユニット5は回転軸5xに摺動的に軸着されたガイドプーリ54、52、53、55を有する。この場合、ガイドプーリ54、52は上側に位置し、手首関節1のガイドプーリ14、12に対応し、他方、ガイドプーリ53、55は下側に位置し、手首関節1のガイドプーリ13、15に対応している。尚、手首関節1のガイドプーリ14、12とガイドプーリユニット5のガイドプーリ54、52との間でワイヤW2、W4が接触しないように、ガイドプーリ14、52の径はガイドプーリ54、12の径より小さくなっている。同様に、手首関節1のガイドプーリ13、15とガイドプーリユニット5のガイドプーリ53、55との間でワイヤW3、W5が接触しないように、ガイドプーリ15、53の径はガイドプーリ55、13の径より小さくなっている。
【0018】
手首関節1について詳述する。ワイヤW11は手首関節1の駆動プーリ11の図1の後側から巻回される。他方、ワイヤW12は手首関節1の駆動プーリ11の図1の前側から巻回される。この場合、ワイヤW11、W12は1本のワイヤであり、モータM1で駆動される。従って、ワイヤW11の張力T11がワイヤW12の張力T12より大きいと、ガイドプーリユニット5、リンク3及び鉗子関節2は図1の後側へ移動し、他方、ワイヤW12の張力T12がワイヤW11の張力T11より大きいと、ガイドプーリユニット5、リンク3及び鉗子関節2は図1の前側へ移動する。
【0019】
ジョー4aについて詳述する。ワイヤW2は手首関節1のガイドプーリ12の図1の前側を巻回し、ガイドプーリユニット5のガイドプーリ52の図1の後側を巻回し、鉗子関節2の駆動プーリ2aを上側から下側へ巻回される。他方、ワイヤW3は手首関節1のガイドプーリ13を図1の前側に巻回し、ガイドプーリユニット5のガイドプーリ53を図1の後側に巻回して鉗子関節2の駆動プーリ2aに下側から上側へ巻回される。この場合、ワイヤW2、W3は1本のワイヤであり、モータM2によって駆動される。但し、ワイヤW2、W3は1本のワイヤとせずに駆動プーリ2aにピン固定してもよい。従って、ワイヤW2の張力T2がワイヤW3の張力T3より大きいと、鉗子関節2の駆動プーリ2aは時計回りに回転してジョー4aはピッチ方向で下降し、他方、ワイヤW3の張力T3がワイヤW2の張力T2より大きいと、鉗子関節2のプーリ2aは反時計回りに回転してジョー4aはピッチ方向で上昇する。すなわち、ワイヤW2、W3は共に2つのガイドプーリ12、52;13、53によって手首関節1の回転軸1x方向から見て同一のS字状形状で屈曲する。
【0020】
ジョー4bについて詳述する。ワイヤW4は手首関節1のガイドプーリ14の図1の後側を巻回し、ガイドプーリユニット5のガイドプーリ54の図1の前側を巻回し、鉗子関節2の駆動プーリ2bを上側から下側へ巻回される。他方、ワイヤW5は手首関節1のガイドプーリ15の図1の後側に巻回し、ガイドプーリユニット5のガイドプーリ55の図1の前側に巻回して鉗子関節2の駆動プーリ2bに下側から上側へ巻回される。この場合、ワイヤW4、W5は1本のワイヤであり、モータM3によって駆動される。但し、ワイヤW4、W5は1本のワイヤとせずに駆動プーリ2bにピン固定してもよい。従って、ワイヤW4の張力T4がワイヤW5の張力T5より大きいと、鉗子関節2の駆動プーリ2bは反時計回りに回転してジョー4bはピッチ方向で上昇し、他方、ワイヤW5の張力T5がワイヤW4の張力T4より大きいと、鉗子関節2の駆動プーリ2bは時計回りに回転してジョー4bはピッチ方向で下降する。すなわち、ワイヤW4、W5は共に2つのガイドプーリ14、54;15、55によって手首関節1の回転軸1x方向から見て同一のS字状形状で屈曲する。
【0021】
このように、図1の鉗子マニピュレータ装置によれば、ヨー方向の手首動作を行いながら、鉗子のピッチ方向開閉動作を行える。
【0022】
図1図2においては、ワイヤW11、W12、W2、W3、W4、W5の張力T11、T12、T2、T3、T4、T5を計測するために、手首関節1の非鉗子側にワイヤW11、W12、W2、W3、W4、W5を収納するパイプ6を設ける。パイプ6内には、突起7aを有するシャフト7及びマイクロフォン8を設け、モータM4によってシャフト7を回転させてワイヤW11、W5、W3、W12、W4をパイプ6内で順次振動させ、その音声振動をマイクロフォン8で計測して張力T11、T5、T3、T12、T2、T4を演算し、トルクを演算する。マイクロフォン8及び動力部9のポテンショメータ内蔵のモータM1~M4は制御ユニット10に接続される。制御ユニット10はたとえばCPU、ROM又はフラッシュメモリ、RAM、A/D変換器、D/A変換器、入出力インタフェイス等を含むコンピュータによって構成される。
【0023】
図3図1のパイプ6の手首関節1から動力部9へ見た断面図である。
【0024】
図3に示すように、シャフト7の突起7aの位置においては、ワイヤW11、W5、W3、W12、W2、W4は同一円周上に配置され、シャフト7の回転ですべてのワイヤW11、W5、W3、W12、W2、W4を、順次振動させるようにしている。尚、ワイヤW11、W5、W3、W12、W2、W4は、図4の(A)に示すごとく、平行となっている。しかし、突起7aの位置で同一円周上になっていれば、図4の(B)に示すごとく、平行である必要はない。
【0025】
図1の鉗子マニピュレータ装置においては、手首関節1が回転しても、鉗子関節2のジョー4aを駆動する1対のワイヤW2、W3及び鉗子関節2のジョー4bを駆動する1対のワイヤW4、W5の張力差に変化が発生しない。つまり、ジョー4aのトルクを表わす1対のワイヤW2、W3の張力差及び1対のワイヤW4、W5の張力差が変化することがなく、ジョー4aのトルク及びジョー4bのトルクも変化しない。詳しくは、図5の(A)に示すごとく、ワイヤW11の長さとワイヤW12の長さとが等しい状態で、ワイヤW11、W12に張力T11、T12を与えて手首関節1を回転させると、図5の(B)に示すごとく、ワイヤW2、W3は共に2つのガイドプーリ12、52;13、53による同一のS字状形状で屈曲しているので、ワイヤW3の長さの変化とワイヤW2の長さの変化とはほとんど同一である。この結果、ワイヤW2、W3の張力が変化しても、ワイヤW2、W3の張力は共に増加するか減少するかであり、従って、その張力差は変化せず、ジョー4aのトルクは変化しない。
【0026】
次に、図1の鉗子マニピュレータ装置による鉗子のトルク演算を図6を参照して説明する。尚、図6のフローチャート(プログラム)は制御ユニット10のROM又はフラッシュメモリに格納されている。また、図6のフローチャートの実行前に、図示しない張力調整機構を用いて予め各ワイヤW11、W5、W3、W12、W2、W4のワイヤ張力T11、T5、T3、T12、T2、T4を初期設定しておく。
【0027】
始めに、ステップ601にて、モータM1、M2、M3を初期設定する。つまり、モータM1に対しては、張力差T11-T12が設定され、モータM2に対して張力差T2-T3が設定され、モータM3に対して張力差T4-T5が設定される。
【0028】
次に、ステップ602にて、モータM4の回転角度を制御することによってシャフト7を駆動する。この場合、モータM4の回転速度の周波数は各ワイヤW11、W5、W3、W12、W2、W4の音声振動の周波数f11、f、f、f12、f、fより十分小さく設定される。これにより、各ワイヤの加振と次の加振との間のワイヤの自由振動状態がサンプリングされるようにする。
【0029】
次に、ステップ603にて、シャフト7の回転角度に同期してワイヤW11、W5、W3、W12、W2、W4が発生する各音声振動をマイクロフォン8からサンプリングする。このとき、各ワイヤW11、W5、W3、W12、W2、W4毎に音声振動の周波数f11、f、f、f12、f、fを高速フーリエ変換(FFT)等を用いて演算し、各周波数f11、f、f、f12、f、fから式(1)の逆関数を用いて各ワイヤW11、W5、W3、W12、W2、W4のワイヤ張力T11、T5、T3、T12、T2、T4を演算する。この場合、ワイヤ張力T(N)とワイヤ周波数f(Hz)との関係を利用する。一般に、ワイヤを2点間に張力T(N)で張らして発生する音声振動の振る舞いの周波数f(Hz)は弦理論によって次式(1)で表すことができる。
f=(n/2L)√(T/ρ) (1)
但し、Lはワイヤの長さ(m)
ρはワイヤの線密度(kg/m)
nは振動モード次数
但し、摩擦等の影響により理論通りにはならない。従って、各ワイヤに対しては摩擦等を考慮して最適な近似式を予め設定する。
【0030】
次に、ステップ604にて、手首関節1のワイヤW11、W12による発生トルクτを、
τ=r(T11-T12) (2)
但し、rはワイヤW11、W12に対する手首関節1の駆動プーリ11の半径
を演算する。また、鉗子関節2のワイヤW2、W3によるジョー4aの発生トルクτ
τ=r(T2-T3) (3)
但し、rはワイヤW2、W3に対する鉗子関節2の駆動プーリ2aの半径
を演算する。さらに、鉗子関節2のワイヤW4、W5によるジョー4bのトルクτを、
τ=r(T4-T5) (4)
但し、rはワイヤW4、W5に対する鉗子関節2の駆動プーリ2bの半径
を演算する。
【0031】
次に、ステップ605にて、鉗子関節2の先端ジョー4a、4bに加えられた外力ベクトルFを次式に基づいて演算する。
F=J-Tτ (5)
但し、τはトルクベクトル(τ、τ
Jは2×2のヤコビ行列
-TはJの逆行列
である。一般に、ヤコビ行列は手首関節1の回転角θつまり鉗子関節2の方向で決定される。
【0032】
最後に、ステップ606にて、術者によってモータM1、M2、M3が再設定され、ステップ602~605のフローが繰返される。
【0033】
図7図1の鉗子マニピュレータ装置において、手首関節1が回転した場合のワイヤW2、W3及びワイヤW4、W5の長さの変化を説明するための図であって、(A)は手首関節1の回転前を示し、(B)は手首関節1の回転後を示す。
【0034】
図1の鉗子マニピュレータ装置においては、上述のごとく、手首関節1が回転しても、鉗子関節2のジョー4aを駆動する1対のワイヤW2、W3の張力差及び鉗子関節2のジョー4bを駆動する1対のワイヤW4、W5の張力差は変化しない。従って、ジョー4aのトルクを表わす1対のワイヤW2、W3の張力差及び1対のワイヤW4、W5の張力差が変化することがなく、ジョー4aのトルク及びジョー4bのトルクも変化しない。しかし、図7の(A)に示すごとく、ワイヤW11の長さとワイヤW12の長さとが等しい状態で、ワイヤW11、W12に張力T11、T12を与えて手首関節1を回転させると、図7の(B)に示すごとく、ワイヤW2、W3は共に短くなり引張状態が強くなる一方、ワイヤW4、W5は共に長くなり弛緩状態が強くなる。最悪の場合、ワイヤの破損を招く。これを防止するための図8図14の鉗子マニピュレータ装置を以下に説明する。
【0035】
図8は本発明に係る鉗子マニピュレータ装置の第2の実施の形態を示す図であって、動力部9’のみの詳細を示す。
【0036】
図8の動力部9’に示すように、手首関節1用のモータM1及び駆動プーリM1aはモータ基台81に設けられ、この場合、モータ基台81は固定される。他方、ジョー4a用のモータM2及び駆動プーリM2aはモータ基台82に設けられ、また、ジョー4b用のモータM3及び駆動プーリM3aはモータ基台83に設けられ、この場合、モータ基台82、83は干渉補償用モータM5によって矢印X方向に移動可能となっている。すなわち、モータ基台82、83は2本の三連結ギヤ85によって同期回転する回転軸86、87上に直交するように載置され、回転軸86、87の一方は干渉補償用モータM5によって回転駆動される。この場合、モータ基台82は回転軸86に嵌め込められたすべりねじ88によって矢印X方向に移動し、モータ基台83は回転軸87に嵌め込められたすべりねじ89によって矢印X方向に移動するが、モータ基台82、83の移動量は同一となる。尚、88’、89’はリニアブッシュ、88”はシャフト86とすべりねじ88とのカップリング、89”はシャフト87とすべりねじ89とのカップリングである。
【0037】
制御ユニット10は手首関節1用のモータM1と連動させて干渉補償用モータM5を動作させて図7の(B)のワイヤW2、W3の引張状態を弛緩側に、図7の(B)のワイヤW4、W5の弛緩状態を引張側にし、ワイヤW2、W3、W4、W5の破損を防止する。
【0038】
図9図8の鉗子マニピュレータ装置における手首関節1用のモータM1の動作と干渉補償用モータM5の動作との関係を説明するための図である。
【0039】
図9に示すごとく、制御ユニット10によって手首関節1用のモータM1を矢印Y1に示すごとく回転させてワイヤW11、W12に張力を発生すると、鉗子関節2が手首関節1の回転軸1xに関して矢印Y2に示すごとく回転する。このとき、同時に、制御ユニット10は干渉補償用モータM5を矢印Z1に示すごとく回転させる。この結果、回転軸86、87も矢印Z1に示すごとく回転する。従って、モータM2及び駆動プーリM2aとモータM3及び駆動プーリM3aとは矢印X1に示すごとく同一方向に同一量だけ移動することになる。すなわち、モータM2及び駆動プーリM2aはワイヤW2、W3を弛緩方向に移動し、他方、モータM3及び駆動プーリM3aはワイヤW4、W5を引張方向に移動する。このとき、モータM1の総回転数と干渉補償用モータM5の総回転数とは比例関係にあり、従って、鉗子関節2の矢印Y2に示す角度とモータM2、M3の矢印X1に示す移動量は比例関係にある。尚、手首関節1の回転が矢印Y2と反対方向のときには、干渉補償用モータM5の回転方向は矢印Z1と反対方向となり、従って、モータM2及び駆動プーリM2aの移動方向と、モータM3及び駆動プーリM3aの移動方向とは矢印X1と反対方向となり、この結果、モータM2及び駆動プーリM2aはワイヤW2、W3を引張方向に移動し、他方、モータM3及び駆動プーリM3aはワイヤW4、W5を弛緩方向に移動する。
【0040】
図10図8の鉗子マニピュレータ装置において、手首関節1が回転した場合のワイヤW2、W3及びワイヤW4、W5の長さの変化を具体的に説明するための図であって、(A)は手首関節1の回転前を示し、(B)は手首関節1の回転後を示す。尚、図10において、アークガイド90はワイヤW2、W3を直角方向に曲げる作用をし、アークガイド91はワイヤW4、W5を直角方向に曲げる作用をする。この結果、ワイヤW2、W3のモータM2の駆動プーリM2aへの方向とワイヤW4、W5のモータM3の駆動プーリM3aへの方向とは逆方向となる。尚、ワイヤW2、W3の駆動プーリM2aへの方向とワイヤW4、W5の駆動プーリM3aへの方向とが逆方向になれば、アークガイド90、91は他の手段たとえばプーリでもよい。
【0041】
図8の鉗子マニピュレータ装置においては、上述のごとく、手首関節1が回転しても、鉗子関節2のジョー4aを駆動する1対のワイヤW2、W3の張力差及び鉗子関節2のジョー4bを駆動する1対のワイヤW4、W5の張力差は変化しない。従って、ジョー4aのトルク及びジョー4bのトルクも変化しない。そこで、ワイヤW11の長さとワイヤW12の長さとが等しい図10の(A)の状態で、ワイヤW11、W12に張力T11、T12を与えると、図10の(B)の矢印Y2に示すごとく、手首関節1は回転する。この結果、ワイヤW2、W3は共に短くなり、引張状態が強くなろうとするが、モータM2及び駆動プーリM2aが矢印X1に示すごとく弛緩方向へ移動するので、この引張状態は緩和する。同時に、ワイヤW4、W5は共に長くなり弛緩状態が強くなるが、モータM3及び駆動プーリM3aも矢印X1に示すごとく引張方向へ移動するのでこの弛緩状態が緩和する。この結果、ワイヤの破損を回避できる。
【0042】
図11は本発明に係る鉗子マニピュレータ装置の第3の実施の形態を示す斜視図、図12図11の鉗子マニピュレータ装置の側面図である。尚、図11図12においては、パイプ6、シャフト7、マイクロフォン8は省略してある。
【0043】
図11図12の鉗子マニピュレータ装置においては、図8の鉗子マニピュレータ装置と同一の作用を行うために、図8の干渉補償用モータM5、回転軸86、87を設けずに、手首関節1用のモータM1の駆動プーリM1aと手首関節1の駆動プーリ11とをワイヤW11、W12で連結する。この場合、たとえば、駆動プーリM1aの径と駆動プーリ11の径とは等しい。また、ジョー4a用のモータM2及び駆動プーリM2aは図8の台座82の代りにラック92に固定し、ジョー4b用のモータM3及び駆動プーリM3aは図8の台座83の代りにラック93に固定する。ラック92、93は、それぞれ、回転直動変換手段としてのピニオンギヤ94、95に噛み合い、ラックピニオン機構を構成している。すなわち、ジョー4a用のモータM2及び駆動プーリM2aはラック92の移動と共に移動し、ジョー4b用のモータM3及び駆動プーリM3aはラック93の移動と共に移動する。さらに、この場合、ピニオンギヤ94、95及び駆動プーリM1aは手首関節1用のモータM1の回転軸M1xに軸着され、ラック92とラック93とはピニオンギヤ94、95に対して反対側に位置している。また、ラック92、93は手首関節1、鉗子関節2の方向に平行に配置されているが、ワイヤW11、W12、W2、W3、W4、W5に依存するので、必ずしも手首関節1、鉗子関節2の方向に平行とならない。従って、手首関節1の回転と共に、ラックピニオン機構によってジョー4a用のモータM2及び駆動プーリM2a及びジョー4b用のモータM3及び駆動プーリM3aとは同時にしかも反対方向に移動する。尚、モータM2及び駆動プーリM2aの移動量と、モータM3及び駆動プーリM3aの移動量との比はピニオンギヤ94、95のギヤ比で決定される。図11図12においては、モータM2及び駆動プーリM2aの移動量がモータM3及び駆動プーリM3aの移動量より大きくなっているが、これに限定されない。
【0044】
図13図14図11図12の鉗子マニピュレータ装置の手首関節1を回転させた場合を示す斜視図及び側面図である。
【0045】
図11図12の鉗子マニピュレータ装置においても、上述のごとく、手首関節1が回転しても、鉗子関節2のジョー4aを駆動する1対のワイヤW2、W3の張力差及び鉗子関節2のジョー4bを駆動する1対のワイヤW4、W5の張力差は変化しない。従って、ジョー4aのトルク及びジョー4bのトルクも変化しない。そこで、ワイヤW11の長さとワイヤW12の長さとが等しい図11図12の状態で、図13図14の示すごとく、モータM1の回転軸M1xを矢印Y1で回転させ、ワイヤW11、W12に張力T11、T12を与えると、図13図14の矢印Y2に示すごとく、手首関節1は回転する。この結果、ワイヤW2、W3は共に長くなり、弛緩状態が強くなろうとするが、モータM2及び駆動プーリM2aが矢印X2に示すごとく引張方向へ移動するので、この弛緩状態は緩和する。同時に、ワイヤW4、W5は共に短くなり引張状態が強くなるが、モータM3及び駆動プーリM3aは矢印X3に示すごとく弛緩方向へ移動するのでこの引張状態が緩和する。この結果、ワイヤの破損を回避できる。
【0046】
尚、図11図14の鉗子マニピュレータ装置においては、ピニオンギヤ94、95を設けているが、ラック92、93を反対方向に同一量移動させる場合には、ピニオンギヤ94、95をいずれか1つにしてもよい。
【0047】
図15図1の鉗子マニピュレータ装置の力覚センシング検証結果を示すグラフであって、(A)は手首関節1のヨー方向発生力を示し、(B)は鉗子関節2のジョー4aのピッチ方向発生力を示し、(C)は鉗子関節2のジョー4bのピッチ方向発生力を示す。
【0048】
図15の(A)に示すように、フォースゲージでヨー方向外力Fを閉じたジョー4a、4bの横方向に与え、加振後ワイヤW11、W12の音声振動をマイクロフォンでサンプリングしてFFT等を用いて周波数を演算し、式(2)に基づいて発生トルクを演算し、手首関節1の回転軸1xと外力Fを与えた点との距離で除して測定値Mを得た。最大誤差は0.22Nであり、平均誤差は0.07Nと小さかった。
【0049】
図15の(B)に示すように、ジョー4bを離してフォースゲージでピッチ方向外力Fをジョー4aの把持面の反対面に与え、加振後ワイヤW2、W3の音声振動をマイクロフォンでサンプリングしてFFT等を用いて周波数を演算し、式(3)に基づいて発生トルクを演算し、鉗子関節2の回転軸2xと外力Fを与えた点との距離で除して測定値Mを得た。最大誤差は0.16Nであり、平均誤差は0.10Nと小さかった。
【0050】
図15の(C)に示すように、ジョー4aを離してフォースゲージでピッチ方向外力Fをジョー4bの把持面に与え、加振後ワイヤW4、W5の音声振動をマイクロフォンでサンプリングしてFFT等を用いて周波数を演算し、式(4)に基づいて発生トルクを演算し、鉗子関節2の回転軸2xと外力Fを与えた点との距離で除して測定値Mを得た。最大誤差は0.12Nであり、平均誤差は0.07Nと小さかった。
【0051】
尚、上述の実施の形態においては、手首関節(第1の関節)は1方向型であるが、本発明はユニバーサルジョイント型の手首関節(第1の関節)を有する鉗子マニピュレータ装置にも適用できる。
【0052】
また、上述の実施の形態においては、ワイヤ閉ループ駆動鉗子マニピュレータ装置を示しているが、本発明はワイヤ拮抗駆動鉗子マニピュレータ装置にも適用できる。尚、ワイヤ拮抗駆動鉗子マニピュレータ装置においては、2本のワイヤを関節の各ジョーに掛るので、モータ数は2倍となる。
【0053】
さらに、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は鉗子マニピュレータ装置以外に、ロボット等のマニピュレータ装置にも利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1:手首関節(第1の関節)
11:駆動プーリ
12、13、14、15:ガイドプーリ
2:鉗子関節(第2の関節)
2a、2b:駆動プーリ
3:リンク
4a、4b:ジョー
5:ガイドプーリユニット
52、53、54、55:ガイドプーリ
6:パイプ
7:シャフト
8:マイクロフォン
9、9’:動力部
10:制御ユニット
W11、W12、W2、…:ワイヤ
M1:手首関節用モータ
M2:ジョー4a用モータ
M3:ジョー4b用モータ
M4:シャフト7用モータ
M5:干渉補償用モータ
81、82、83:モータ基台
85:三連結ギヤ
86、87:回転軸
88、89:すべりねじ
88’、89’:リニアブッシュ
88”、89”:カップリング
90、91:アークガイド
92、93:ラック
94、95:ピニオンギヤ(回転直動変換手段)
101:手首関節(第1の関節)
1011:駆動プーリ
1012、1013、1014、1015:ガイドプーリ
102:鉗子関節(第2の関節)
102a、102b:駆動プーリ
103:リンク
104a、104b:ジョー
105、106:ガイドプーリユニット
1052、1054、1063、1065:ガイドプーリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2021-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
図8の動力部9’に示すように、手首関節1用のモータM1及び駆動プーリM1aはモータ基台81に設けられ、この場合、モータ基台81は固定される。他方、ジョー4a用のモータM2及び駆動プーリM2aはモータ基台82に設けられ、また、ジョー4b用のモータM3及び駆動プーリM3aはモータ基台83に設けられ、この場合、モータ基台82、83は干渉補償用モータM5によって矢印X方向に移動可能となっている。すなわち、モータ基台82、83は三連結ギヤ85によって同期回転する2本の回転軸86、87上に直交するように載置され、回転軸86、87の一方は干渉補償用モータM5によって回転駆動される。この場合、モータ基台82は回転軸86に嵌め込められたすべりねじ88によって矢印X方向に移動し、モータ基台83は回転軸87に嵌め込められたすべりねじ89によって矢印X方向に移動するが、モータ基台82、83の移動量は同一となる。尚、88’、89’はリニアブッシュ、88”はシャフト86とすべりねじ88とのカップリング、89”はシャフト87とすべりねじ89とのカップリングである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
さらに、
前記第1、第2、第3のワイヤを収容するパイプと、
前記パイプ内に設けられた突起付シャフトと、
前記突起シャフトを回転させるためのモータと、
前記パイプ内に設けられマイクロフォンと、
前記マイクロフォンによって検出された振動周波数から前記第1、第2、第3のワイヤの各張力を演算するための制御ユニットと
を具備する請求項1または2に記載のワイヤ駆動マニピュレータ装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正の内容】
図10