(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185653
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】内燃機関の失火検知装置、および、失火検知方法
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
F02D45/00 368Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093407
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 遼
(72)【発明者】
【氏名】高柳 恒
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA07
3G384DA04
3G384DA54
3G384EC12
3G384FA45Z
3G384FA47Z
(57)【要約】
【課題】全筒失火をより早く検知できる内燃機関の失火検知装置、及び失火検知方法を提供する。
【解決手段】複数の気筒を有する内燃機関の失火を検知するための内燃機関の失火検知装置10は、複数の気筒の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータを周波数分析し、内燃機関の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルを取得するための脈動成分取得部11と、複数の気筒における各々の動作の差異の度合いと相関する差異パラメータを取得するための差異パラメータ取得部12と、脈動成分取得部11によって取得された脈動成分スペクトルが第1閾値を下回り、且つ、差異パラメータ取得部12によって取得された差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、内燃機関において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定部41とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有する内燃機関の失火を検知するための内燃機関の失火検知装置であって、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータを周波数分析し、前記内燃機関の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルを取得するための脈動成分取得部と、
前記複数の気筒における各々の動作の差異の度合いと相関する差異パラメータを取得するための差異パラメータ取得部と、
前記脈動成分取得部によって取得された前記脈動成分スペクトルが第1閾値を下回り、且つ、前記差異パラメータ取得部によって取得された前記差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、前記内燃機関において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定部と、
を備える内燃機関の失火検知装置。
【請求項2】
前記脈動成分取得部によって取得された前記脈動成分スペクトルが前記第1閾値を下回り、且つ、前記差異パラメータ取得部によって取得された前記差異パラメータが前記第2閾値以上の値である第3閾値以上となる場合に、前記内燃機関において部分失火が発生したと判定するための部分失火判定部をさらに備える、
請求項1に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項3】
前記差異パラメータ取得部は、単一のセンサによって検知されるセンサ値であって、前記差異の度合いと相関するセンサ値の経時的な変化を示す対象データを周波数分析し、前記内燃機関の1サイクル分の周波数におけるスペクトルであるサイクル成分スペクトルを前記差異パラメータとして取得するように構成される、
請求項1または2に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項4】
前記差異パラメータ取得部は、前記動作パラメータデータを前記対象データとして周波数分析するように構成される、
請求項3に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項5】
前記動作パラメータは、前記複数の気筒の各々から排出される排ガスによって回転するタービンの回転数、または、前記タービンの入口排ガス圧力である、
請求項3または4に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項6】
前記差異パラメータ取得部は、前記複数の気筒の各々の動作状態を検知するための複数の気筒センサのそれぞれによって検知されたセンサ値を分析し、前記差異パラメータを取得するように構成される、
請求項1または2に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項7】
前記差異パラメータ取得部は、前記複数の気筒センサのそれぞれによって検知された排ガスの温度を分析するように構成される、
請求項6に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項8】
前記差異パラメータ取得部は、複数の前記センサ値の平均値から、前記複数のセンサ値の最小値を差し引いた値を前記差異パラメータとして取得するように構成される、
請求項6または7に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項9】
複数の気筒を有する内燃機関の失火を検知するための内燃機関の失火検知装置であって、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータを周波数分析し、前記内燃機関の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルを取得するための脈動成分取得部と、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する稼働パラメータの変化の度合いを示す変化率パラメータを取得するための変化率パラメータ取得部と、
前記脈動成分取得部によって取得された前記脈動成分スペクトルが第1閾値を下回り、且つ、前記変化率パラメータ取得部によって取得された前記変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回る場合に、前記内燃機関において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定部と、
を備える内燃機関の失火検知装置。
【請求項10】
前記脈動成分取得部によって取得された前記脈動成分スペクトルが前記第1閾値を下回り、且つ、前記変化率パラメータ取得部によって取得された前記変化率パラメータの前記絶対値が前記第4閾値以下の値である第5閾値以下となる場合に、前記内燃機関において部分失火が発生したと判定するための部分失火判定部をさらに備える、
請求項9に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項11】
前記変化率パラメータ取得部は、前記動作パラメータを前記稼働パラメータとして取得するように構成される、
請求項9または10に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項12】
前記動作パラメータは、前記複数の気筒の各々から排出される排ガスによって回転するタービンの回転数、または、前記タービンの入口排ガス圧力である、
請求項9乃至11の何れか1項に記載の内燃機関の失火検知装置。
【請求項13】
複数の気筒を有する内燃機関の失火を検知するための内燃機関の失火検知方法であって、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータを周波数分析し、前記内燃機関の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルを取得するための脈動成分取得ステップと、
前記複数の気筒における各々の動作の差異の度合いと相関する差異パラメータを取得するための差異パラメータ取得ステップと、
前記脈動成分取得ステップによって取得された前記脈動成分スペクトルが第1閾値を下回り、且つ、前記差異パラメータ取得ステップによって取得された前記差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、前記内燃機関において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定ステップと、
を備える内燃機関の失火検知方法。
【請求項14】
複数の気筒を有する内燃機関の失火を検知するための内燃機関の失火検知方法であって、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータを周波数分析し、前記内燃機関の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルを取得するための脈動成分取得ステップと、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する稼働パラメータの変化の度合いを示す変化率パラメータを取得するための変化率パラメータ取得ステップと、
前記脈動成分取得ステップによって取得された前記脈動成分スペクトルが第1閾値を下回り、且つ、前記変化率パラメータ取得ステップによって取得された前記変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回る場合に、前記内燃機関において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定ステップと、
を備える内燃機関の失火検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の失火検知装置、および、失火検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の失火を検知するための失火検知装置が知られている。例えば、特許文献1に開示される失火検知装置は、クランク角センサの検知結果に基づき取得したエンジンの角加速度を周波数解析する。さらに、失火装置は、周波数解析の結果に基づき、角加速度の気筒間成分(内燃機関の1燃焼サイクル分の周期を内燃機関の気筒の数で割った周期に相当する成分)が閾値より小さいか否かを各気筒のそれぞれについて個別に判定する。これにより、内燃機関を構成する複数の気筒のいずれか1つにおいて失火が発生したか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記失火検知装置では、内燃機関を構成する複数の気筒の各々について失火が発生したかを個別に判定するので、全筒失火を検知するのに時間を要するおそれがある。結果として、全筒失火の発生に伴う未燃ガスが増えることが懸念される。例えば内燃機関が発電用エンジンである場合には、気筒の本数が多くなるため、全筒失火の検知が遅れて未燃ガスが大量に生じてしまうことが懸念される。
【0005】
本開示の目的は、全筒失火をより早く検知できる内燃機関の失火検知装置、及び失火検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関の失火検知装置は、
複数の気筒を有する内燃機関の失火を検知するための内燃機関の失火検知装置であって、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータを周波数分析し、前記内燃機関の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルを取得するための脈動成分取得部と、
前記複数の気筒における各々の動作の差異の度合いと相関する差異パラメータを取得するための差異パラメータ取得部と、
前記脈動成分取得部によって取得された前記脈動成分スペクトルが第1閾値を下回り、且つ、前記差異パラメータ取得部によって取得された前記差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、前記内燃機関において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定部と、
を備える。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関の失火検知装置は、
複数の気筒を有する内燃機関の失火を検知するための内燃機関の失火検知装置であって、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータを周波数分析し、前記内燃機関の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルを取得するための脈動成分取得部と、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する稼働パラメータの変化の度合いを示す絶対値である変化率パラメータを取得するための変化率パラメータ取得部と、
前記脈動成分取得部によって取得された前記脈動成分スペクトルが第1閾値を下回り、且つ、前記変化率パラメータ取得部によって取得された前記変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回る場合に、前記内燃機関において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定部と、
を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関の失火検知方法は、
複数の気筒を有する内燃機関の失火を検知するための内燃機関の失火検知方法であって、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータを周波数分析し、前記内燃機関の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルを取得するための脈動成分取得ステップと、
前記複数の気筒における各々の動作の差異の度合いと相関する差異パラメータを取得するための差異パラメータ取得ステップと、
前記脈動成分取得ステップによって取得された前記脈動成分スペクトルが第1閾値を下回り、且つ、前記差異パラメータ取得ステップによって取得された前記差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、前記内燃機関において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定ステップと、
を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関の失火検知方法は、
複数の気筒を有する内燃機関の失火を検知するための内燃機関の失火検知方法であって、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータを周波数分析し、前記内燃機関の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルを取得するための脈動成分取得ステップと、
前記複数の気筒の全体の動作状況と相関する稼働パラメータの変化の度合いを示す絶対値である変化率パラメータを取得するための変化率パラメータ取得ステップと、
前記脈動成分取得ステップによって取得された前記脈動成分スペクトルが第1閾値を下回り、且つ、前記変化率パラメータ取得ステップによって取得された前記変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回る場合に、前記内燃機関において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、全筒失火をより早く検知できる内燃機関の失火検知装置、及び失火検知方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る失火検知システムの概略構成を示す概念図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る失火検知装置の構成を示す概念図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る動作パラメータデータを概念的に示すグラフである。
【
図4】本開示の一実施形態に係る動作パラメータデータに対して短時間フーリエ変換が施された結果を概念的に示すグラフである。
【
図5】本開示の一実施形態に係る脈動成分スペクトル、差異パラメータ、全筒失火、および部分失火の関係を示すマトリクスである。
【
図6A】本開示の一実施形態に係る対象データに対して短時間フーリエ変換が施された結果を概念的に示すグラフである。
【
図6B】本開示の一実施形態に係る複数の気筒センサのセンサ値と差異パラメータとの関係を概念的に示す図である。
【
図7】本開示の第1の実施形態に係る内燃機関の失火検知方法を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の第2の実施形態に係る失火検知装置の構成を示す概念図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る稼働パラメータと変化率パラメータの経時的変化を示すグラフである。
【
図10】本開示の一実施形態に係る脈動成分スペクトル、変化率パラメータ、全筒失火、および部分失火の関係を示すマトリクスである。
【
図11】本開示の第2の実施形態に係る内燃機関の失火検知方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0013】
<失火検知システム100の概略構成の例示>
図1は、本開示の一実施形態に係る失火検知システムの概略構成を示す概念図である。幾つかの実施形態では、失火検知システム100は、内燃機関1と、内燃機関の失火検知装置10(以下、単に「失火検知装置10」という場合がある)とを備える。以下、内燃機関1と失火検知装置10の概略構成を例示する。
【0014】
本例の内燃機関1は、各気筒2に供給される可燃性ガスを燃焼させることで発電機を駆動する発電用ガスエンジンである。内燃機関1は複数の気筒2を有する。気筒2の本数は、4本、8本、または16本など何本であってもよい。各々の気筒2は、給気マニホールド3を介し給気管5と連通するとともに、排気マニホールド4を介して排気管6と連通する。また、内燃機関1には、給気管5に設けられたコンプレッサー7と、排気管6に設けられたタービン24とを有するターボチャージャ15が設けられる。コンプレッサー7は、各々の気筒2に圧縮ガスを供給するように構成される。タービン24は、複数の気筒2の各々から排出される排ガスによってコンプレッサー7と共に回転するように構成される。
なお、本明細書では、排ガスは、燃焼ガスと未燃ガスとを含む概念である。
【0015】
給気管5を流れる可燃性のガスは、各々の気筒2の内部に供給された後、点火プラグ17による着火で燃焼する。燃焼ガスの発生に伴い、動力が取り出され、クランクシャフト(図示外)は回転する。各々の気筒2から排出される排ガスは排気管6を経由してタービン24に流れる。
【0016】
また、各々の気筒2における着火はECU9によって制御される。具体的には、ECU9が点火装置8に着火指示信号を送ることで、点火プラグ17による着火は実行される。複数の気筒2の各々において正常に着火が実行されれば、各気筒2で順に取り出された動力により、クランクシャフトは規定の回転数で回転する。なお、概念図である
図1では、1つの点火プラグ17が図示されているが、複数の点火プラグ17がそれぞれ、各々の気筒2の内部に設けられてもよい。
【0017】
ECU9はコンピュータで構成されており、プロセッサ、メモリ、および外部通信インタフェースを備える。プロセッサは、CPU、GPU、MPU、DSP、又はこれらの組み合わせなどである。プロセッサは、PLD、ASIC、FPGA、またはMCU等の集積回路により実現されてもよい。メモリは、各種データを一時的または非一時的に記憶するように構成され、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、またはこれらの組み合わせによって実現される。メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサがデータを処理することで、例えば点火装置8に送るための着火指示信号など、各種の制御信号が生成される。
【0018】
図示される実施形態において、ECU9は、クランク角センサ51、ターボ回転数センサ52、タービン圧力センサ53、および複数の排ガス温度センサ54の各々と電気的に接続される。但し、概念図である
図1では図面を見易くする都合、これらセンサのうちクランク角センサ51のみが、ECU9と接続されたように図示される。クランク角センサ51は、内燃機関1のクランク軸の回転角を取得するように構成される。従って、ECU9は、クランク角センサ51の検知結果に基づき内燃機関1のエンジン回転数を取得できる。ターボ回転数センサ52は、ターボチャージャ15の回転数であるターボ回転数を検知するように構成される。タービン圧力センサ53は、タービン24の入口排ガス圧力(即ち、タービン24に流入する排ガスの圧力)を検知するように構成される。複数の排ガス温度センサ54は、複数の気筒2の各々に対応して設けられる。各々の排ガス温度センサ54は、対応する気筒2から排出される排ガスの温度を検知するように構成される。
【0019】
他の実施形態では、クランク角センサ51、ターボ回転数センサ52、タービン圧力センサ53、または排ガス温度センサ54のうち、いずれかのセンサは設けられなくてもよい。例えば、クランク角センサ51とターボ回転数センサ52が設けられ、他のセンサはいずれも設けられなくてもよい。あるいは、ターボ回転数センサ52とタービン圧力センサ53が設けられ、他のセンサはいずれも設けられなくてもよい。
【0020】
本開示の一実施形態に係るECU9は、失火検知装置10を含む。失火検知装置10は、内燃機関1における失火を検知するように構成される。より具体的な一例として失火検知装置10は、複数の気筒2の全てにおける失火である全筒失火と、複数の気筒2のいずれかの気筒2においてのみの失火である部分失火とを検知するように構成される。なお、部分失火は、複数の気筒2のいずれか1本においてのみ発生する失火(1気筒失火)、および、いずれか複数の気筒2においてのみの失火を含む概念である。他の実施形態では、失火検知装置10は部分失火を検知しなくてもよい。
【0021】
以上、内燃機関1と失火検知装置10の概要について説明した。以下では、本開示の幾つかの実施形態の一例として、第1の実施形態に係る失火検知装置10A(10)と、第2の実施形態に係る失火検知装置10B(10)とを順に詳説する。
【0022】
<第1の実施形態に係る失火検知装置10A(10)の詳説>
図2は、本開示の第1の実施形態に係る失火検知装置の構成を示す概念図である。失火検知装置10A(10)は、脈動成分取得部11、差異パラメータ取得部12、および失火判定部40A(40)を備える。
【0023】
脈動成分取得部11は、動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータ61(
図3参照)を周波数分析し、内燃機関1の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトルSp(
図4参照)を取得するように構成される。動作パラメータは、複数の気筒2の全体としての動作状況と相関するパラメータである(具体例は後述する)。このため、動作パラメータは内燃機関1の脈動の有無および脈動の程度に応じて変化する。動作パラメータデータ61に対して実行される周波数分析は、FFT、BPF、またはSTFT(短時間フーリエ変換:Short-Term Fourier Transform)などである。
【0024】
動作パラメータは、一例として、エンジン回転数、タービン24の入口排ガス圧力、またはターボ回転数などである。脈動成分取得部11は、クランク角センサ51、ターボ回転数センサ52、またはタービン圧力センサ53の検知結果を継続的に取得することで、動作パラメータデータ61を取得する。
【0025】
図3は、本開示の一実施形態に係る動作パラメータデータを概念的に示すグラフである。動作パラメータデータ61A(61)は、複数の気筒2がいずれも失火することなく正常に動作する場合を示す。このときの動作パラメータは周期的な変化を繰り返す。動作パラメータデータ61B(61)は、内燃機関1で部分失火が発生した場合を示す(
図3では1気筒失火を例示する)。この場合の動作パラメータは、失火した気筒2で燃焼が起こるはずのタイミング(t=ta)で、動作パラメータの理想的な変化が起きない。動作パラメータデータ61C(61)は、内燃機関1で全筒失火が発生した場合を示す。この場合の動作パラメータは、全筒失火したタイミング以降(t≧ta)、動作パラメータの周期的な変化が殆ど起きない。従って、全筒失火と部分失火のいずれかが発生すると、上述した脈動成分スペクトルSpは著しく下がる(
図4参照)。
【0026】
図4は、本開示の一実施形態に係る動作パラメータデータに対して短時間フーリエ変換が施された結果を概念的に示すグラフである。より具体的には、
図4では、全筒失火が発生するときの動作パラメータデータ61Cに対して短時間フーリエ変換が施された結果を例示する。
【0027】
図4で示されるグラフの縦軸において、f
cylは内燃機関1の脈動の周波数を示す。f
cylは計算式によって特定される理想的な値からずれても問題ではなく、周波数分析によって強いスペクトルが現れた周波数を、脈動の周波数とみなしてもよい。実際の計測値は、計測時における何等かの要因によって理想的な値からずれることもあるからである。
【0028】
図4から判る通り、規定のタイミング(t=ta)で全筒失火が起きた場合、脈動成分スペクトルSpは消失又は殆ど消失する。詳細な図示は省略するが、部分失火が起きた場合も、脈動成分スペクトルSpは著しく低下する。従って、脈動成分スペクトルSpに基づき、内燃機関1で全筒失火または部分失火が起きたことを判定することが可能である。以下では、この判定の基準となる閾値を第1閾値という。第1閾値は、実験によって特定されてもよいし、シミュレーションまたは解析により特定されてもよいし、これらの組み合わせによって特定されてもよい(後述の第2閾値、第3閾値、第4閾値、および第5閾値も同様である)。
【0029】
図2に戻り、差異パラメータ取得部12は、複数の気筒2における各々の動作の差異(バラつき)の度合いと相関する差異パラメータを取得するように構成される。差異パラメータの具体例は後述する。全筒失火が発生すると、複数の気筒2のいずれも正常に動作しないので、差異パラメータは小さくなる。結果、このときの差異パラメータは規定の閾値(以下、第2閾値という)を下回る。なお、複数の気筒2がいずれも正常に動作する場合においても、同様に、差異パラメータは小さく第2閾値を下回る。一方で、部分失火が発生すると、複数の気筒2のいずれかは正常に動作し、残る気筒2は正常に動作しない。従って、このときの差異パラメータは、全筒失火の発生時および失火が発生しない正常動作時と比べて大きく、規定の閾値(以下、第3閾値という)以上となる。第3閾値は第2閾値以上の値であり、第3閾値と第2閾値が互いに同一の値となる実施形態は除外されない。
【0030】
図5は、本開示の一実施形態に係る脈動成分スペクトル、差異パラメータ、全筒失火、および部分失火の関係を示すマトリクスである。上述したように、脈動成分取得部11によって取得される脈動成分スペクトルSpが第1閾値以上であれば、全筒失火および部分失火は発生していないと判定できる。そして、このときの差異パラメータが第2閾値を下回る場合には、複数の気筒2はいずれも正常に動作していると判定できる。一方で、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回る場合、全筒失火または部分失火が発生していると判定できる。この場合にさらに、差異パラメータ取得部12によって取得される差異パラメータが第2閾値を下回ると全筒失火が発生していると判定でき、差異パラメータが第3閾値以上であると部分失火が発生していると判定できる。
【0031】
図2に示される失火判定部40A(40)は、全筒失火判定部41A(41)を含む。全筒失火判定部41Aは、
図5を用いて上述した基準に則り、内燃機関1における全筒失火の発生を判定するように構成される。即ち、全筒失火判定部41は、脈動成分取得部11によって取得されたスペクトルが第1閾値を下回り、且つ、差異パラメータ取得部12によって取得された差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、内燃機関1において全筒失火が発生したと発生するように構成される。
【0032】
上記構成によれば、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回り、且つ、差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、全筒失火判定部41Aは全筒失火が発生したと判定する。複数の気筒2の各々について失火が発生したかを個別に判定する必要がないので、失火検知装置10Aは、全筒失火の発生をより早く検知できる。例えば、気筒2の本数が16本以上となる発電用エンジンに内燃機関1が適用される場合、内燃機関1が車両用のエンジンとして適用される場合などに比べて、気筒2の本数が多くなる傾向にあり、全筒失火の発生時に大量の未燃ガスが発生し得る。この点、本開示のように全筒失火判定部41Aが全筒失火の発生を早く判定することで、未燃ガスが大量に発生する前に適切な処置を施すことが可能となる。
【0033】
なお、他の実施形態では、全筒失火判定部41Aは、脈動成分取得部11によって取得されたスペクトルが第1閾値以上であり、且つ、差異パラメータ取得部12によって取得された差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、内燃機関1は正常に動作していると判定してもよい。
【0034】
図2で例示される実施形態において、失火判定部40A(40)は、部分失火判定部42A(42)を含む。部分失火判定部42Aは、
図5を用いて上述した基準に則り、内燃機関1における部分失火の発生を判定するように構成される。具体的には、部分失火判定部42Aは、脈動成分取得部11によって取得された脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回り、且つ、差異パラメータ取得部12によって取得された差異パラメータが第3閾値以上となる場合に、内燃機関1において部分失火が発生したと判定するように構成される。
【0035】
上記構成によれば、失火検知装置10Aは、部分失火判定部42Aと全筒失火判定部41Aを備えることで、内燃機関1で発生した失火が部分失火なのか全筒失火なのかを高精度に識別できる。
【0036】
<差異パラメータ取得部12の詳細の第1の例示>
図2、
図6Aを参照し、差異パラメータ取得部12の詳細の第1の例を説明する。
図6Aは、本開示の一実施形態に係る対象データに対して短時間フーリエ変換が施された結果を概念的に示すグラフである。
【0037】
差異パラメータ取得部12は、単一のセンサによって検知されるセンサ値の経時的な変化を示す対象データを周波数分析するように構成される。単一のセンサは、一例として、クランク角センサ51、ターボ回転数センサ52、またはタービン圧力センサ53である。従って、この場合のセンサ値は、エンジン回転数、ターボ回転数、またはタービン24の入口排ガス圧力である。従って、差異パラメータ取得部12によって取得されるセンサ値は、上述した脈動成分取得部11によって取得される動作パラメータと同じであってもよい。これらセンサ値はいずれも、複数の気筒2の各々の動作の差異の度合いと相関する。この相関は、センサ値の経時的な変化を示す対象データが周波数分析されることでより明確になる。そこで、差異パラメータ取得部12は対象データを周波数分析し、内燃機関1の1サイクル分の周波数におけるスペクトルであるサイクル成分スペクトルSc(
図6B参照)を、差異パラメータとして取得するように構成される。例えば4サイクルエンジンとして機能する内燃機関1の1サイクルは、内燃機関1が2回転するたびに完了し、例えば2サイクルエンジンとして機能する内燃機関1の1サイクルは、内燃機関1が1回転するたびに完了する。
【0038】
図6Aで例示されるグラフは、
図4と同様に全筒失火発生時のスペクトルを示す。また、
図6Aのグラフの縦軸におけるf
Neは、内燃機関1の1サイクル分の周期に対応する周波数である。f
Neは、f
cylと同様、計算によって求まる理想的な値からずれてもよい。全筒失火が発生すると(t=ta)、センサ値は周期的な変化を殆どしなくなり(図示外)、サイクル成分スペクトルScは消失または殆ど消失する(第2閾値を下回る)。詳細な図示は省略するが、部分失火が発生すると、センサ値は周期的な変化を部分的には行うため、サイクル成分スペクトルScは第3閾値以上となる。
【0039】
従って、第1の例示において、全筒失火判定部41Aは、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回り、且つサイクル成分スペクトルScが第2閾値を下回る場合に、全筒失火が発生したと判定できる。また、部分失火判定部42Aは、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回り、且つサイクル成分スペクトルScが第3閾値以上となる場合に、部分失火が発生したと判定できる。
【0040】
上記構成によれば、サイクル成分スペクトルScに基づいて全筒失火が発生したかを全筒失火判定部41Aは判定できる。また、差異データとしてのサイクル成分スペクトルScが単一のセンサによって検知されるセンサ値に基づき取得されるので、より簡易な構成でサイクル成分スペクトルScが検知される。よって、全筒失火の発生を検知するための構成をより簡易にできる。また、同様の理由によって、部分失火の発生を検知するための構成をより簡易にできる。
【0041】
本開示の一実施形態では、上述のセンサ値は動作パラメータと同一であり、センサ値の経時的な変化を示す対象データは、動作パラメータデータ61(
図3参照)と同一である。つまり、動作パラメータデータ61は、脈動成分取得部11と差異パラメータ取得部12の双方によって周波数分析される。この場合、
図6Aで示すグラフは、
図4で示すグラフに重畳的に反映することが可能である。上記構成によれば、単一のセンサによって検知されるセンサ値に基づくデータが周波数分析されることで、脈動成分スペクトルSpとサイクル成分スペクトルScの双方が取得される。よって、全筒失火の発生を検知するための構成をより簡易にできる。また、同様の理由によって、部分失火の発生を検知するための構成をより簡易にできる。
【0042】
本開示の一実施形態に係る動作パラメータは、ターボ回転数センサ52またはタービン圧力センサ53である。つまり、上述のセンサ値は、タービン回転数またはタービン24の入口排ガス圧力である。これら2つのセンサ値は、内燃機関1で生じる全筒失火に対して応答が早い。即ち、内燃機関1で全筒失火が発生すると、これら2つのセンサ値のいずれかに基づく脈動成分スペクトルSpは比較的早く応答(低下)する。よって、上記構成によれば、失火検知装置10Aは、全筒失火の発生をより早く検知できる。また、上述のセンサ値が動作パラメータと同一である実施形態においては、失火検知装置10は部分失火をより早く検知することもできる。
【0043】
<差異パラメータ取得部12の詳細の第2の例示>
図1、
図2、
図6Bを参照し、差異パラメータ取得部12の詳細の第2の例を説明する。
図6Bは、本開示の一実施形態に係る複数の気筒センサ18の検知結果と差異パラメータとの関係を概念的に示す図である。
【0044】
第2の例示では、第1の例示のような単一のセンサが用いられる代わりに、複数のセンサが用いられる。具体的な一例として、差異パラメータ取得部12は、複数の気筒センサ18のそれぞれによって検知されたセンサ値を分析し、差異パラメータを取得するように構成される。複数の気筒センサ18は、それぞれ、複数の気筒2の各々の動作状態を検知するように構成される。
図1で例示される実施形態では、気筒センサ18は排ガス温度センサ54であり、センサ値は気筒2における排ガスの温度である。つまり、本例の差異パラメータ取得部12は、複数の排ガス温度センサ54のそれぞれによって検知された排ガスの温度を分析するように構成される。
【0045】
従って、全筒失火判定部41Aは、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回り、且つ複数の気筒センサ18のそれぞれの検知結果に基づく差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、全筒失火が発生したと判定できる。また、部分失火判定部42Aは、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回り、且つ上記差異パラメータが第3閾値以上となる場合に、部分失火が発生したと判定できる。
【0046】
上記構成によれば、複数の気筒センサ18の各々の検知結果に基づいて取得された差異パラメータは、複数の気筒2の各々の動作の差異の度合いと強く相関する。従って、全筒失火または部分失火のいずれかが発生するかに応じて、差異パラメータは大きく変化する。よって、全筒失火判定部41Aは、内燃機関1における全筒失火をより高精度に検知できる。また、排ガス温度センサ54である気筒センサ18の検知結果に基づき、全筒失火判定部41Aは内燃機関1において全筒失火が判定したかを判定する。排ガス温度センサ54の検知結果は、複数の気筒2の動作の差異が反映され易い。よって、失火判定部40Aは全筒失火の発生を精度良く検知できる。また、発生した失火が全筒失火か部分失火かを精度良く識別することもできる。
【0047】
なお、他の実施形態では、複数の気筒センサ18は、対応する気筒2の排ガス圧力または排ガス流量を検知するように構成されてもよい。この場合であっても、複数の気筒センサ18の各々の検知結果に基づいて取得された差異パラメータは、複数の気筒2の各々の動作の差異の度合いと強く相関するので、内燃機関1における全筒失火を高精度に検知することができる。また、発生した失火が全筒失火か部分失火かを精度良く識別することもできる。
【0048】
図6Bのグラフの横軸で示される番号は、複数の気筒2のいずれかに該当し、グラフで示されるNは気筒2の本数と同じ値である。また、同図のグラフの縦軸は気筒センサ18の検知結果であるセンサ値を示す。
【0049】
本開示の一実施形態に係る差異パラメータ取得部12は、複数の気筒センサ18の各々のセンサ値の平均値Aaveから複数のセンサ値の最小値Aminを差し引いた値(長さLに相当する値)を差異パラメータとして取得するように構成される。上記構成によれば、複数の気筒2の各々の動作の差異を示す差異パラメータを簡単に特定することができる。
【0050】
<第1の実施形態に係る失火検知方法>
図7は、本開示の第1の実施形態に係る内燃機関の失火検知方法を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば失火検知装置10A(
図2参照)によって実行される。本検知方法が開始されるとき、内燃機関1は駆動している。以下の説明では、ステップを「S」と略記する場合がある。
【0051】
はじめに、脈動成分スペクトルSpが上述した脈動成分取得部11によって取得され(S11)、その後、差異パラメータが上述した差異パラメータ取得部12によって取得される(S13)。さらに、全筒失火が発生したかが上述した全筒失火判定部41Aによって判定される(S15)。全筒失火が発生したと判定された場合(S15:YES)、本検知方法は終了する。このとき、何らかの報知処理が実行されてもよい。
【0052】
全灯失火が発生していないと判定された場合(S15:NO)、部分失火が発生したかが上述した部分失火判定部42Aによって判定される(S17)。部分失火が発生したと判定された場合(S17:YES)、本検知方法は終了する。一方、部分失火が発生していないと判定された場合(S17:NO)、ステップはS11に戻る。内燃機関1が失火を起こすことなく正常に動作する間、S11~S17が繰り返し実行される。
なお、他の実施形態では、S17が実行されなくてもよい。また、S15が実行される前に、S17が実行されてもよい。
【0053】
<第2の実施形態に係る失火検知装置10B(10)の詳説>
図8は、本開示の第2の実施形態に係る失火検知装置の構成を示す概念図である。以下、第2の実施形態に係る失火検知装置10Bの説明において、第1の実施形態に係る失火検知装置10Aと同様の構成については、図中で同一符号を付与し、その説明の一部または全部を省略する。本例の失火検知装置10B(10)は、全筒失火と部分失火とを検知するように構成されるが、部分失火を検知しなくてもよい。
【0054】
失火検知装置10Bは、上述した差異パラメータ取得部12(
図2参照)に代えて、変化率パラメータ取得部13を含む。変化率パラメータ取得部13は、稼働パラメータの変化の度合い(変化速度)を示す変化率パラメータを取得するように構成される。稼働パラメータは、複数の気筒2の全体の動作状況と相関するパラメータである。稼働パラメータは、一例として、エンジン回転数、ターボ回転数、またはタービン24の入口排ガス圧力などである。稼働パラメータは、動作パラメータと異なるパラメータであってもよいし、動作パラメータと同一のパラメータであってもよい。
【0055】
図9は、本開示の一実施形態に係る稼働パラメータと変化率パラメータの経時的変化を示すグラフである。
図9で例示される稼働パラメータはエンジン回転数である。同図のグラフでは、t=taのタイミングで全筒失火が発生する。グラフから判るように、全筒失火が発生すると、稼働パラメータは大きく変化し(
図9の例では減少し)、変化率パラメータも大きく変化(
図9の例では減少)する。従って、変化率パラメータの絶対値は大きくなる。詳細な図示は省略するが、部分失火の発生時には、一部の気筒2が正常に動作するため、稼働パラメータおよび変化率パラメータは多少変化するものの、全筒失火の発生時ほど大きくは変化しない。また、複数の気筒2がいずれも正常に動作する場合、部分失火の発生時よりもさらに変化率パラメータの変化量は小さい。部分失火の発生時と内燃機関1の正常動作時における変化率パラメータのこれらの傾向は、稼働パラメータがエンジン回転数以外のパラメータである場合も同様である。
【0056】
従って、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回った場合において、変化率パラメータの絶対値が規定の閾値(以下、第4閾値という)を上回るとき、全筒失火が発生していると判定できる。また、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回った場合において、変化率パラメータの絶対値が第5閾値以下となる場合には、部分失火が発生したと判定できる。第5閾値は第4閾値以下の値であり、第5閾値と第4閾値が互いに同一の値となる実施形態は除外されない。さらに、脈動成分スペクトルSpが第1閾値以上になった場合において、変化率パラメータの絶対値が第5閾値以下(あるいは、第5閾値よりも小さい規定値以下)となる場合には、内燃機関1は正常に動作していると判定できる。
【0057】
図10は、本開示の一実施形態に係る周波数スペクトル、変化率パラメータ、全筒失火、および部分失火の関係を示すマトリクスである。
図5を用いて上述したように、脈動成分取得部11によって取得される脈動成分スペクトルSpが第1閾値以上であれば、全筒失火および部分失火は発生していないと判定できる。そして、このときの変化率パラメータの絶対値が第5閾値以下(あるいは、第5閾値よりも小さい規定値以下)となる場合には、内燃機関1は正常に動作していると判定できる。一方で、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回る場合、全筒失火または部分失火が発生していると判定できる。この場合さらに、変化率パラメータ取得部13によって取得される変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回ると全筒失火が発生していると判定でき、変化率パラメータの絶対値が第5閾値以下であると部分失火が発生していると判定できる。
【0058】
図8に戻り、失火検知装置10B(10)の構成要素である失火判定部40B(40)は、全筒失火判定部41B(41)を含む。全筒失火判定部41Bは、脈動成分取得部11によって取得された脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回り、且つ、変化率パラメータ取得部13によって取得された変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回る場合に、内燃機関1において全筒失火が発生したと判定するように構成される。なお、変化率パラメータが負の値となる実施形態においては、変化率パラメータが、正の値である第4閾値に対して-1を乗じた値を下回るかを判定してもよい。この判定方法であっても、変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回るか判定できる。
【0059】
上記構成によれば、脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回り、且つ、変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回る場合に、全筒失火判定部41Bは全筒失火が発生したと判定する。複数の気筒2各々について失火が発生したかを個別に判定しないので、失火検知装置10Bは、全筒失火の発生をより早く検知できる。
【0060】
なお、他の実施形態では、全筒失火判定部41Bは、脈動成分取得部11によって取得された脈動成分スペクトルSpが第1閾値以上であり、且つ、変化率パラメータ取得部13によって取得された変化率パラメータの絶対値が第5閾値以下(もしくは第5閾値よりも小さい規定値以下)である場合に、内燃機関1は正常に動作していると判定してもよい。
【0061】
一実施形態では、失火判定部40B(40)は、部分失火判定部42B(42)を含む。部分失火判定部42Bは、内燃機関1における部分失火の発生を判定するように構成される。即ち、部分失火判定部42Bは、脈動成分取得部11によって取得された脈動成分スペクトルSpが第1閾値を下回り、且つ、変化率パラメータ取得部13によって取得された変化率パラメータの絶対値が第5閾値以下となる場合に、内燃機関1において部分失火が発生したと判定するように構成される。
【0062】
上記構成によれば、失火検知装置10Bは、部分失火判定部42Bと全筒失火判定部41Bを備えることで、内燃機関1で発生した失火が部分失火なのか全筒失火なのかを高精度に識別できる。
【0063】
幾つかの実施形態では、稼働パラメータは動作パラメータと同一のパラメータである。即ち、本開示の一実施形態に係る変化率パラメータ取得部13は、動作パラメータを稼働パラメータとして取得するように構成される。上記構成によれば、動作パラメータとパラメータが同一であることで、全筒失火が発生したかを判定するための構成をより簡易にできる。また、同様の理由によって、部分失火が発生したかを検知するための構成をより簡易にできる。
【0064】
本開示の一実施形態に係る動作パラメータは、タービン回転数、または、タービン24の入口排ガス圧力である。タービン回転数、または、タービン24の入口排ガス圧力は、内燃機関1で生じる全筒失火に対する応答が早い。上記構成によれば、内燃機関1の失火検知装置10Bは、全筒失火の発生をより早く検知することができる。また、上述の稼働パラメータが動作パラメータと同一である実施形態においては、失火検知装置10は部分失火をより早く検知することもできる。
【0065】
<第2の実施形態に係る失火検知方法>
図11は、本開示の第2の実施形態に係る内燃機関の失火検知方法を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば失火検知装置10B(
図8参照)によって実行される。本検知方法が開始されるとき、内燃機関1は駆動している。
【0066】
はじめに、脈動成分スペクトルSpが上述した脈動成分取得部11によって取得され(S31)、その後、変化率パラメータが上述した変化率パラメータ取得部13によって取得される(S33)。さらに、全筒失火が発生したかが上述した全筒失火判定部41Bによって判定される(S35)。全筒失火が発生したと判定された場合(S35:YES)、本検知方法は終了する。このとき、何らかの報知処理が実行されてもよい。
【0067】
全灯失火が発生していないと判定された場合(S35:NO)、部分失火が発生したかが上述した部分失火判定部42Bによって判定される(S37)。部分失火が発生したと判定された場合(S37:YES)、本検知方法は終了する。一方、部分失火が発生していないと判定された場合(S37:NO)、ステップはS31に戻る。内燃機関1が失火を起こすことなく正常に動作する間、S31~S37が繰り返し実行される。
【0068】
<まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0069】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関の失火検知装置(10)は、
複数の気筒(2)を有する内燃機関(1)の失火を検知するための内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記複数の気筒(2)の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータ(61)を周波数分析し、前記内燃機関(1)の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトル(Sp)を取得するための脈動成分取得部(11)と、
前記複数の気筒(2)における各々の動作の差異の度合いと相関する差異パラメータを取得するための差異パラメータ取得部(12)と、
前記脈動成分取得部(11)によって取得された前記脈動成分スペクトル(Sp)が第1閾値を下回り、且つ、前記差異パラメータ取得部(12)によって取得された前記差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、前記内燃機関(1)において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定部(41)と、
を備える。
【0070】
内燃機関(1)の部分失火または全筒失火が発生すると、失火発生前の動作パラメータの周期的な変化の一部または全部が消失するため、脈動成分スペクトル(Sp)は低下する。また、内燃機関(1)の部分失火が発生すると、複数の気筒(2)における動作の差異が大きい。一方、内燃機関(1)の全筒失火が発生すると、複数の気筒(2)における動作の差異は小さく、このときの差異パラメータは小さい。上記1)の構成によれば、脈動成分スペクトが第1閾値を下回り、且つ、差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、全筒失火判定部(41)は全筒失火が発生したと判定する。複数の気筒(2)の各々について失火が発生したかを個別に判定しないので、内燃機関の失火検知装置(10)は、全筒失火の発生をより早く検知できる。
【0071】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記脈動成分取得部(11)によって取得された前記脈動成分スペクトル(Sp)が前記第1閾値を下回り、且つ、前記差異パラメータ取得部(12)によって取得された前記差異パラメータが前記第2閾値以上の値である第3閾値以上となる場合に、前記内燃機関(1)において部分失火が発生したと判定するための部分失火判定部(42)をさらに備える。
【0072】
上記2)の構成によれば、内燃機関の失火検知装置(10)は、部分失火判定部(42)と全筒失火判定部(41)を備えることで、内燃機関(1)で発生した失火が部分失火なのか全筒失火なのかを高精度に識別することができる。
【0073】
3)幾つかの実施形態では、上記1)または2)に記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記差異パラメータ取得部(12)は、単一のセンサによって検知されるセンサ値であって、前記差異の度合いと相関するセンサ値の経時的な変化を示す対象データを周波数分析し、前記内燃機関(1)の1サイクル分の周波数におけるスペクトルであるサイクル成分スペクトル(Sc)を前記差異パラメータとして取得するように構成される。
【0074】
対象データを周波数分析して取得されるサイクル成分スペクトルScは、複数の気筒2の動作の差異の度合と相関する。つまり、内燃機関(1)で部分失火が発生すると、サイクル成分スペクトル(Sc)は大きく、内燃機関(1)で全筒失火が発生すると、サイクル成分スペクトル(Sc)は小さい。上記3)の構成によれば、サイクル成分スペクトル(Sc)に基づいて全筒失火が発生したかを全筒失火判定部(41)は判定できる。また、差異データが単一のセンサによって検知されるセンサ値に基づき取得されるので、より簡易な構成で差異パラメータとしてのサイクル成分スペクトル(Sc)が検知される。よって、内燃機関(1)の全筒失火の発生を検知するための構成をより簡易にできる。
【0075】
4)幾つかの実施形態では、上記3)に記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記差異パラメータ取得部(12)は、前記動作パラメータデータ(61)を前記対象データとして周波数分析するように構成される。
【0076】
上記4)の構成によれば、単一のセンサによって検知されるセンサ値が周波数分析されることで、脈動成分スペクトル(Sp)とサイクル成分スペクトル(Sc)との双方が取得される。よって、全筒失火の発生を検知するための構成をより簡易にできる。
【0077】
5)幾つかの実施形態では、上記3)または4)に記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記動作パラメータは、前記複数の気筒(2)の各々から排出される排ガスによって回転するタービン(24)の回転数、または、前記タービン(24)の入口排ガス圧力である。
【0078】
タービン(24)の回転数およびタービン(24)の入口排ガス圧力は、内燃機関(1)で生じる全筒失火に対しての応答が早い。上記5)の構成によれば、内燃機関の失火検知装置(10)は、全筒失火の発生をより早く検知することができる。
【0079】
6)幾つかの実施形態では、上記1)または2)に記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記差異パラメータ取得部(12)は、前記複数の気筒(2)の各々の動作状態を検知するための複数の気筒センサ(18)のそれぞれによって検知されたセンサ値を分析し、前記差異パラメータを取得するように構成される。
【0080】
上記6)の構成によれば、複数の気筒センサ(18)の各々に基づいて取得され差異パラメータは、複数の気筒(2)の各々の動作の差異の度合いと強く相関する。従って、全筒失火判定部(41)は、内燃機関(1)における全筒失火をより高精度に検知することができる。
【0081】
7)幾つかの実施形態では、上記6)に記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記差異パラメータ取得部(12)は、前記複数の気筒センサ(18)のそれぞれによって検知された排ガスの温度を分析するように構成される。
【0082】
上記7)の構成によれば、排温センサとして機能する気筒センサ(18)の検知結果に基づき、全筒失火判定部(41)は、内燃機関(1)において全筒失火が発生したかを判定することができる。
【0083】
8)幾つかの実施形態では、上記6)または7)に記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記差異パラメータ取得部(12)は、複数の前記センサ値の平均値から、前記複数のセンサ値の最小値を差し引いた値を前記差異パラメータとして取得するように構成される。
【0084】
上記8)の構成によれば、複数の気筒(2)の各々の動作の差異を示す差異パラメータを簡単に特定することができる。
【0085】
9)本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関の失火検知装置(10)は、
複数の気筒(2)を有する内燃機関(1)の失火を検知するための内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記複数の気筒(2)の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータ(61)を周波数分析し、前記内燃機関(1)の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトル(Sp)を取得するための脈動成分取得部(11)と、
前記複数の気筒(2)の全体の動作状況と相関する稼働パラメータの変化の度合いを示す変化率パラメータを取得するための変化率パラメータ取得部(13)と、
前記脈動成分取得部(11)によって取得された前記脈動成分スペクトル(Sp)が第1閾値を下回り、且つ、前記変化率パラメータ取得部(13)によって取得された前記変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回る場合に、前記内燃機関(1)において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定部(41)とを備える。
【0086】
内燃機関(1)の部分失火または全筒失火が発生すると、失火発生前の動作パラメータの周期的な変化の一部または全部が消失するため、脈動成分スペクトル(Sp)は低下する。また、内燃機関(1)の部分失火が発生すると、一部の気筒2は正常に動作するため、稼働パラメータの変化率パラメータが小さい。一方、内燃機関(1)の全筒失火が発生すると、全ての気筒2が正常に動作しないため、変化率パラメータの絶対値は大きい。上記9)の構成によれば、脈動成分スペクトが第1閾値を下回り、且つ、変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回る場合に、全筒失火判定部(41)は全筒失火が発生したと判定する。複数の気筒(2)の各々について失火が発生したかを個別に判定しないので、内燃機関の失火検知装置(10)は、全筒失火の発生をより早く検知できる。
【0087】
10)幾つかの実施形態では、上記9)に記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記脈動成分取得部(11)によって取得された前記脈動成分スペクトル(Sp)が前記第1閾値を下回り、且つ、前記変化率パラメータ取得部(13)によって取得された前記変化率パラメータの前記絶対値が前記第4閾値以下の値である第5閾値以下となる場合に、前記内燃機関(1)において部分失火が発生したと判定するための部分失火判定部(42)をさらに備える。
【0088】
上記10)の構成によれば、内燃機関の失火検知装置(10)は、部分失火判定部(42)と全筒失火判定部(41)を備えることで、内燃機関(1)で発生した失火が部分失火なのか全筒失火なのかを高精度に識別することができる。
【0089】
11)幾つかの実施形態では、上記9)または10)に記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記変化率パラメータ取得部(13)は、前記動作パラメータを前記稼働パラメータとして取得するように構成される。
【0090】
上記11)の構成によれば、動作パラメータと稼働パラメータが同一であることで、全筒失火が発生したかを判定するための構成をより簡易にできる。
【0091】
12)幾つかの実施形態では、上記9)から11)のいずれかに記載の内燃機関の失火検知装置(10)であって、
前記動作パラメータは、前記複数の気筒(2)の各々から排出される排ガスによって回転するタービン(24)の回転数、または、前記タービン(24)の入口排ガス圧力である。
【0092】
タービン(24)の回転数およびタービン(24)の入口排ガス圧力は、内燃機関(1)で生じる全筒失火に対しての応答が早い。上記12)の構成によれば、内燃機関の失火検知装置(10)は、全筒失火の発生をより早く検知することができる。
【0093】
13)本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関(1)の失火検知方法は、
複数の気筒(2)を有する内燃機関(1)の失火を検知するための内燃機関(1)の失火検知方法であって、
前記複数の気筒(2)の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータ(61)を周波数分析し、前記内燃機関(1)の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトル(Sp)を取得するための脈動成分取得ステップ(S11)と、
前記複数の気筒(2)における各々の動作の差異の度合いと相関する差異パラメータを取得するための差異パラメータ取得ステップ(S13)と、
前記脈動成分取得ステップによって取得された前記脈動成分スペクトル(Sp)が第1閾値を下回り、且つ、前記差異パラメータ取得ステップによって取得された前記差異パラメータが第2閾値を下回る場合に、前記内燃機関(1)において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定ステップ(15)とを備える。
【0094】
上記13)の構成によれば、上記1)と同様の理由によって、全筒失火の派生をより早く検知できる内燃機関(1)の検知方法が実現する。
【0095】
14)本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関(1)の失火検知方法は、
複数の気筒(2)を有する内燃機関(1)の失火を検知するための内燃機関(1)の失火検知方法であって、
前記複数の気筒(2)の全体の動作状況と相関する動作パラメータの経時的な変化を示す動作パラメータデータ(61)を周波数分析し、前記内燃機関(1)の脈動の周波数におけるスペクトルである脈動成分スペクトル(Sp)を取得するための脈動成分取得ステップ(S31)と、
前記複数の気筒(2)の全体の動作状況と相関する稼働パラメータの変化の度合いを示す変化率パラメータを取得するための変化率パラメータ取得ステップ(S33)と、
前記脈動成分取得ステップによって取得された前記脈動成分スペクトル(Sp)が第1閾値を下回り、且つ、前記変化率パラメータ取得ステップによって取得された前記変化率パラメータの絶対値が第4閾値を上回る場合に、前記内燃機関(1)において全筒失火が発生したと判定するための全筒失火判定ステップ(S35)とを備える。
【0096】
上記14)の構成によれば、上記9)と同様の理由によって、全筒失火の発生をより早く検知できる内燃機関(1)の検知方法が実現する。
【符号の説明】
【0097】
1 :内燃機関
2 :気筒
10 :失火検知装置
10A :失火検知装置
10B :失火検知装置
11 :脈動成分取得部
12 :差異パラメータ取得部
13 :変化率パラメータ取得部
18 :気筒センサ
24 :タービン
40 :失火判定部
41 :全筒失火判定部
42 :部分失火判定部
61 :動作パラメータデータ
Aave :平均値
Amin :最小値
Sc :サイクル成分スペクトル
Sp :脈動成分スペクトル