(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018566
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】油含有土処理装置
(51)【国際特許分類】
B09C 1/06 20060101AFI20220120BHJP
B09C 1/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B09B3/00 303P
B09C1/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121763
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】308030570
【氏名又は名称】株式会社エム・アイ・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】中村 康行
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB02
4D004BA06
4D004BA10
4D004CA24
4D004CA30
4D004CB34
(57)【要約】
【課題】油含有土を効率よく浄化して一般土壌として使用可能な浄化土壌と、再利用可能な油分とを得ることができる油含有土処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の油含有土処理装置は、油含有土を供給する油含有土供給部と、燃料を供給する燃料供給部と、前記油含有土と前記燃料とを燃焼させる燃焼装置と、前記燃焼装置で燃焼された前記油含有土から気化した気化油分を蒸留する蒸留部と、を備え、前記燃焼装置は、前記燃料の供給を受けて、前記燃料を燃焼させる燃焼筒と、前記燃焼筒の内側を構成する内筒と、前記燃焼筒の外側を構成し、前記内筒の外側にある外筒と、前記内筒と前記外筒との間に設けられる空気空間と、前記内筒の内壁の延伸方向に沿って取り付けられる複数の空気供給ユニットと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油含有土を供給する油含有土供給部と、
燃料を供給する燃料供給部と、
前記油含有土と前記燃料とを燃焼させる燃焼装置と、
前記燃焼装置で燃焼された前記油含有土から気化した気化油分を蒸留する蒸留部と、を備え、
前記燃焼装置は、
前記燃料の供給を受けて、前記燃料を燃焼させる燃焼筒と、
前記燃焼筒の内側を構成する内筒と、
前記燃焼筒の外側を構成し、前記内筒の外側にある外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に設けられる空気空間と、
前記内筒の内壁の延伸方向に沿って取り付けられる複数の空気供給ユニットと、を有する、油含有土処理装置。
【請求項2】
前記燃焼装置で燃焼された前記含有土から油分が除去された浄化土を回収する浄化土回収部を更に備える、請求項1記載の油含有土処理装置。
【請求項3】
前記浄化土は、前記油含有土が含んでいる有機不純物も燃焼浄化された状態である、請求項2記載の油含有土処理装置。
【請求項4】
前記蒸留部において気化油分が蒸留されることで、回収油分として油分が回収される、請求項1から3のいずれか記載の油含有土処理装置。
【請求項5】
前記浄化土は、一般土壌に再利用可能であり、
前記回収油分は、化石燃料として利用可能である、請求項4記載の油含有土処理装置。
【請求項6】
前記燃料供給部は、前記油含有土供給部の内側に備わり、
前記油含有土供給部は、前記燃焼筒の前記内部空間に油含有土を供給し、
前記燃料供給部は、前記内部空間に燃料を供給し、
前記内部空間において、前記油含有土および前記燃料とが混合して燃焼される、請求項1から5のいずれか記載の油含有土処理装置。
【請求項7】
前記複数の空気供給ユニットのそれぞれは、
前記内壁に取り付けられる本体部と、
前記本体部を貫通して、前記燃焼筒の内部空間と前記空気空間とを連通させる空気孔と、を有し、
前記空気孔は、前記空気空間から前記内部空間へ、空気を供給する、請求項1から6のいずれか記載の油含有土処理装置。
【請求項8】
前記内部空間での燃焼によって、前記空気空間内部の空気は加熱される、請求項7記載の油含有土処理装置。
【請求項9】
前記空気孔は、前記内筒の延伸方向に沿って、複数の異なる位置に設けられると共に、前記内筒の前方に向かうに伴って前記空気孔の内径が大きくなる、請求項7または8記載の油含有土処理装置。
【請求項10】
前記空気孔は、前記燃焼筒の円周方向に対して斜めに形成される、請求項7から9のいずれか記載の油含有土処理装置。
【請求項11】
前記複数の空気供給ユニットのそれぞれは、前記内壁の延伸方向に沿って取り付けられ、
前記複数の空気供給ユニットは、前記内周の円周方向を分割する態様で、前記内壁の略全体に取り付けられる、請求項1から10のいずれか記載の油含有土処理装置。
【請求項12】
前記複数の空気供給ユニットのそれぞれは、前記内壁の円周方向において、相互の間に空隙をもって取り付けられ、
前記空隙には、緩衝材が備わる、請求項11記載の油含有土処理装置。
【請求項13】
前記燃焼装置に供給される以外の前記油含有土の一部を、前記蒸留部に供給する、第2油含有土供給部と、
前記燃焼装置からの燃焼熱を、前記蒸留部に蒸留部用燃焼熱として供給する燃焼熱供給部と、
前記第2油含有土供給部から供給された前記油含有土を、前記蒸留部において、前記蒸留部用燃焼熱によって加熱する加熱部と、を更に備え、
前記加熱部は、前記油含有土を加熱して含有する油分を気化すると共に、油分が除去された前記油含有土を浄化して浄化土を生じさせ、
前記蒸留部は、前記加熱部で気化された気化油分を蒸留させ、
前記油含有土の残部は、前記燃焼装置に供給されて、前記燃焼装置で生じる気化油分は、前記加熱部と並行して前記蒸留部で蒸留される、請求項1から12のいずれか記載の油含有土処理装置。
【請求項14】
前記蒸留部は、前記燃焼装置からの気化油分と前記加熱部からの気化油分の両方を蒸留して、回収油分とし、
前記燃焼装置で生じる浄化土と前記加熱部で生じる浄化土の両方が、浄化土として回収される、請求項13記載の油含有土処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油田などの液体化石燃料の採掘現場において発生する油を含有する油含有土の処理を行う油含有土処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料(石油や天然ガス)から再生可能エネルギーへの変換が進んでいる。しかしながら、世界での人口増加、都市化の進展、途上国の経済成長などによって、エネルギー需要が増加している。特に、新興国や途上国では、太陽光や風力などの先端技術を必要とする発電を実現するのは難しく、化石燃料を用いた火力発電が主である。このような新興国や途上国での、都市化、都市住民の増加、人口増加、経済発展などによって、火力発電による電力需要が高まっている。この電力需要の増加に対応するために、化石燃料の需要が増加している。
【0003】
また、発電以外においても、気候変動に伴う冬季の寒冷化が発生して、化石燃料による暖房需要が高まっている。例えば、中国や東欧などでは、化石燃料を用いた冬季暖房が広く利用されている。この暖房需要に対応するために、化石燃料の需要が高まっている。
【0004】
もちろん、発電や暖房だけに限らず、化石燃料は化学製品を製造する原料として不可欠である。あるいは、工場や輸送機器の燃料としても不可欠である。人口増加や経済発展に伴って、原料や燃料としての化石燃料の需要増加が進んでいる。これは、先進国においても発生しており、さらには新興国や途上国においては、更なる勢いで化石燃料の需要増加が進んでいる。
【0005】
この背景に加えて、近年ではシェールオイルの採掘が広がっている。頁岩(シェール)には、石油成分が含まれており、フラッキングスという処理方法で頁岩から石油成分を抽出して採掘する。これがシェールオイルの採掘である。
【0006】
また、化石燃料を使用する使用地と化石燃料の消費地とを近くするために、エネルギー需要の高まっている国や地域において、新しい油井やシェールオイルの採掘が進んでいる現状もある。このような油井やシェールオイルは、一つ一つから得られる化石燃料が少なく、小規模の採掘現場の数が増加する傾向がある。中国の油井やアメリカのシェールオイルなどは、この傾向があり、採掘現場の増加が進んでいる。
【0007】
また、地域によっては石油成分を含んだ砂であるオイルサンドを採集して、このオイルサンドから石油成分を得ることも行われている。
【0008】
このように、世界中で高まるエネルギー需要の増加に伴って、種々の方法で化石燃料を得ることが広まっている。この結果、化石燃料の需要増加と採掘量の増加が進んでいる。さらには、様々な地域での採掘が広がっている。
【0009】
このような化石燃料の採掘現場においては、採取される際に漏れ出た石油や液状ガスが、周辺の土壌に漏れ出てしまうことがある。あるいは採取の際に、石油や液状ガスが染み込んだ土壌が合わせて採掘されることもある。大規模な油井などでは、この石油や液状ガスが染み込んだ土壌(以下、「油含有土」)が、大量に発生する。あるいは、小規模であっても多数の油井がある環境では、一定量の油含有土が、様々な多くの場所で発生する。
【0010】
また、油井などのある場所に限らず、油井からの石油や液状ガスを運搬する経路などで、石油などが漏れて油含有土が発生することもあり得る。集積場所においても同様である。
【0011】
このように、我々が石油や液状ガスなどの化石燃料需要が続き、また需要増加の傾向が続いている現状では、化石燃料の採掘や運搬による油含有土の発生が避けられない。また、油含有土の発生量は増える傾向にもある。
【0012】
このような油含有土が処理されずに放置されることは、周辺環境の悪化要因となる点で好ましくない。このような状況の中で、油含有土を処理する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2017-209599号公報
【特許文献2】特開2018-51431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1は、原位置において油汚染土壌を浄化する方法であって、前記油汚染土壌域の地表面48に油回収溝1を形成する油回収溝形成工程と、前記油汚染土壌に微細気泡36を含んだ温水を注入して前記油汚染領域に含まれる水分量を高める微細気泡温水注入工程と、前記水分量を高められた前記油汚染土壌から前記微細気泡温水12によって油汚染水を前記油回収溝1に流れ込ませた後、前記流れ込んだ油汚染水から油を分離する油分離工程と、を含むことを特徴とする油汚染土壌の浄化方法を開示する。
【0015】
しかしながら、特許文献1は、温水を注入することを利用している。温水を利用して汚染土壌から油分を分離することは、精度として劣る。水による分離では、油の分離に限界があるからである。また、油汚染土壌は、水により分離可能な油分のみならず、これ以外の不純成分も含有している。このような不純成分を分離あるいは除去することは困難である。
【0016】
この困難性などにより、特許文献1の技術では、油分を分離した後でも、汚染土壌の浄化が不十分となりえる。特に、汚染土壌を浄化することは、浄化後の汚染土壌を一般の土壌に使用することが目的である。このような一般土壌としての使用が難しい問題もある。
【0017】
また分離された油分も、水による分離であるので、その精製度が低い状態である問題がある。精製度が低い分離された油分は、再利用が難しい問題もある。このような点で、特許文献1の技術は不十分である。
【0018】
特許文献2は、油分で汚染された汚染土壌を油分解細菌により浄化する方法であって、汚染土壌に対してジオレイン酸ポリエチレングリコールを添加する汚染土壌の浄化方法を開示する。
【0019】
しかしながら、特許文献2の技術では、油分が分解されてしまい、油汚染土壌に含まれる油分を再利用することができない問題がある。また、分解浄化に非常に時間が掛かり、大量の油汚染土壌を浄化することには適していない問題もある。
【0020】
大量に発生する油含有土を処理して、一般土壌に還元すると共に油含有土からの油分を利用できる状態にすることを両立させることが、従来技術では十分にできない問題があった。
【0021】
本発明は上記課題に鑑み、油含有土を効率よく浄化して一般土壌として使用可能な浄化土壌と、再利用可能な油分とを得ることができる油含有土処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の油含有土処理装置は、油含有土を供給する油含有土供給部と、
燃料を供給する燃料供給部と、
前記油含有土と燃料とを燃焼させる燃焼装置と、
燃焼装置で燃焼された油含有土から気化した気化油分を蒸留する蒸留部と、を備え、
燃焼装置は、
燃料の供給を受けて、燃料を燃焼させる燃焼筒と、
燃焼筒の内側を構成する内筒と、
燃焼筒の外側を構成し、内筒の外側にある外筒と、
内筒と外筒との間に設けられる空気空間と、
内筒の内壁の延伸方向に沿って取り付けられる複数の空気供給ユニットと、を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の油含有土処理装置は、油含有土と液体燃料とを投入して非常に高い温度で燃焼を行うことができる。このとき油含有土処理装置に備わる燃焼装置は、非常に高温での燃焼を実現できる構成を有している。このため、油含有土を十分に燃焼させて、油含有土に含まれる油分を蒸発させることができる。併せて、油含有土に含まれる不純物や有機物を燃焼させて除去することができる。
【0024】
この結果、油汚染土から油分および不純物を除去して、一般土壌に再利用可能な状態に浄化することができる。
【0025】
また、油含有土から蒸発させられた気化した油分(気化油分)を蒸留装置で蒸留することで、油含有土から油分を回収できる。
【0026】
これらの結果、油含有土処理装置は、油含有土の浄化による一般土壌への再利用および回収油分の利用を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態1における油含有土処理装置のブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における油含有土処理装置のブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における燃焼装置の側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における燃焼装置の正面図である。
【
図5】本発明の実施の形態3における油含有土処理装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の発明に係る油含有土処理装置は、油含有土を供給する油含有土供給部と、
燃料を供給する燃料供給部と、
油含有土と燃料とを燃焼させる燃焼装置と、
燃焼装置で燃焼された油含有土から気化した気化油分を蒸留する蒸留部と、を備え、
燃焼装置は、
燃料の供給を受けて、燃料を燃焼させる燃焼筒と、
燃焼筒の内側を構成する内筒と、
燃焼筒の外側を構成し、内筒の外側にある外筒と、
内筒と外筒との間に設けられる空気空間と、
内筒の内壁の延伸方向に沿って取り付けられる複数の空気供給ユニットと、を有する。
【0029】
この構成により、油田やガス田で発生する油含有土を、再利用可能な浄化土および利用可能な化石燃料として変換できる。
【0030】
本発明の第2の発明に係る油含有土処理装置では、第1の発明に加えて、燃焼装置で燃焼された含有土から油分が除去された浄化土を回収する浄化土回収部を更に備える。
【0031】
この構成により、浄化された浄化土を再利用することが容易となる。
【0032】
本発明の第3の発明に係る油含有土処理装置では、第2の発明に加えて、浄化土は、油含有土が含んでいる有機不純物も燃焼浄化された状態である。
【0033】
この構成により、浄化土は、一般土壌としての再利用が可能であるより浄化レベルの高い土となる。また、気化油分により回収される回収油分の純度も高まる。
【0034】
本発明の第4の発明に係る油含有土処理装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、蒸留部において気化油分が蒸留されることで、回収油分として油分が回収される。
【0035】
この構成により、従来は廃棄されていた油含有土に含まれる化石燃料を利用可能な状態となる。化石燃料の利用効率を高めることができ環境負荷を下げることができる。
【0036】
本発明の第5の発明に係る油含有土処理装置では、第4の発明に加えて、浄化土は、一般土壌に再利用可能であり、
回収油分は、化石燃料として利用可能である。
【0037】
この構成により、従来は廃棄物でしかなかった油含有土を、一般土壌と化石燃料として、それぞれ利用できるようになる。
【0038】
本発明の第6の発明に係る油含有土処理装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、燃料供給部は、油含有土供給部の内側に備わり、
油含有土供給部は、燃焼筒の内部空間に油含有土を供給し、
燃料供給部は、内部空間に燃料を供給し、
内部空間において、油含有土および燃料とが混合して燃焼される。
【0039】
この構成により、油含有土を効率よく燃焼処理できる。
【0040】
本発明の第7の発明に係る油含有土処理装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、複数の空気供給ユニットのそれぞれは、
内壁に取り付けられる本体部と、
本体部を貫通して、燃焼筒の内部空間と空気空間とを連通させる空気孔と、を有し、
空気孔は、空気空間から内部空間へ、空気を供給する。
【0041】
この構成により、高い燃焼熱での燃焼を実現する。併せて、複数の空気供給ユニットで内壁が分割されて覆われることで、燃焼筒2の高温化を防止し更に燃焼筒や空気供給ユニットの膨張・変形・破損などを抑制できる。
【0042】
本発明の第8の発明に係る油含有土処理装置では、第7の発明に加えて、内部空間での燃焼によって、空気空間内部の空気は加熱される。
【0043】
この構成により、空気空間での空気循環が促進されて、空気孔から内部空間への空気の供給能力が高まる。また、加熱空気の供給により、内部空間での燃焼効率が高まる。
【0044】
本発明の第9の発明に係る油含有土処理装置では、第7または第8の発明に加えて、空気孔は、内筒の延伸方向に沿って、複数の異なる位置に設けられると共に、内筒の前方に向かうに伴って空気孔の内径が大きくなる。
【0045】
この構成により、高い燃焼熱を必要とする前方側により多くの空気を供給できる。結果として、内部空間での燃焼能力を高めることができる。
【0046】
本発明の第10の発明に係る油含有土処理装置では、第7から第9のいずれかの発明に加えて、空気孔は、燃焼筒の円周方向に対して斜めに形成される。
【0047】
この構成により、供給される空気は、内部空間で対流を生じさせることができる。対流によって、内部空間での燃焼効率を更に高めることができる。
【0048】
本発明の第11の発明に係る油含有土処理装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、複数の空気供給ユニットのそれぞれは、内壁の延伸方向に沿って取り付けられ、
複数の空気供給ユニットは、内周の円周方向を分割する態様で、内壁の略全体に取り付けられる。
【0049】
この構成により、内壁の全体を覆うことを実現しつつ、一つずつは小さな空気供給ユニットであることで、燃焼熱による膨張や変形などを抑制することができる。
【0050】
本発明の第12の発明に係る油含有土処理装置では、第11の発明に加えて、複数の空気供給ユニットのそれぞれは、内壁の円周方向において、相互の間に空隙をもって取り付けられ、
空隙には、緩衝材が備わる。
【0051】
この構成により、空気供給ユニットが燃焼熱で膨張したり変形したりする場合でも、空隙によって吸収される。これにより空気供給ユニットの破損や故障などに繋がることが抑制される。
【0052】
前記燃焼装置からの燃焼熱を、前記蒸留部に蒸留部用燃焼熱として供給する燃焼熱供給部と、、
前記第2油含有土供給部から供給された前記油含有土を、前記蒸留部において、前記蒸留部用燃焼熱によって加熱する加熱部と、を更に備え、
前記加熱部は、前記油含有土を加熱して含有する油分を気化すると共に、油分が除去された前記油含有土を浄化して浄化土を生じさせ、
前記蒸留部は、前記加熱部で気化された気化油分を蒸留させ、
前記油含有土の残部は、前記燃焼装置に供給されて、前記燃焼装置で生じる気化油分は、前記加熱部と並行して前記蒸留部で蒸留される。
【0053】
加えて、より効率的に多くの油分を回収できる。
【0054】
本発明の第14の発明に係る油含有土処理装置では、第13の発明に加えて、前記蒸留部は、前記燃焼装置からの気化油分と前記加熱部からの気化油分の両方を蒸留して、回収油分とし、
前記燃焼装置で生じる浄化土と前記加熱部で生じる浄化土の両方が、浄化土として回収される。
【0055】
この構成により、より多くの油分が効率的に回収される。
【0056】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0057】
(実施の形態1)
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1における油含有土処理装置のブロック図である。
図2は、本発明の実施の形態1における油含有土処理装置のブロック図である。
図2は、
図1とは、油含有土供給部55と燃焼供給部5との構成が異なる態様を示している。
図3は、本発明の実施の形態1における燃焼装置の側面図である。
図3は、油含有土処理装置1に備わる燃焼装置20の内部が分かるように側面から見た状態を示している。
図4は、本発明の実施の形態1における燃焼装置の正面図である。
図4は、
図3の燃焼装置20を正面から見た状態を示している。
【0058】
油含有土処理装置1は、従来技術で説明したような油田、油井、シェールオイル採掘現場、ガス田などの化石燃料の採掘現場で生じる油含有土を処理する。この処理においては、油含有土を浄化して再利用可能な浄化土を生成すると共に、油含有土から油分を回収して再利用可能とする。油含有土処理装置1は、油含有土の浄化と油分回収の両方を実現でき、油含有土の処理とリサイクルとを両立させることができる。
【0059】
油含有土処理装置1は、
図1、
図2に示されるように、油含有土供給部55、燃料供給部5、燃焼装置20、蒸留部8を備える。浄化土回収部9を更に備える。
【0060】
油含有土供給部5は、燃焼装置20に油含有土を供給する。供給される油含有土は、上述したように油田などで発生して処理が必要となった油含有土である。油含有土処理装置1が油含有土の発生場所に設置されている場合には、その場所においてコンベアなどを設置して、油含有土を油含有土供給部55に移送すればよい。油含有土処理装置1が油含有土の発生場所から離れた場所に設置されている場合には、輸送された油含有土が直接あるいは間接的に油含有土供給部55に投入されればよい。
【0061】
油含有土供給部55は、燃焼装置20の内部空間21(実際に燃焼が行われる空間)に、油含有土を供給する。内部空間21への供給により、燃焼による油含有土の処理ができるからである。
【0062】
燃料供給部5は、燃料を燃焼装置20に供給する。燃料は、燃焼装置20内部での燃焼の原料であり、燃焼装置20に供給される油含有土を燃焼処理する際の燃焼の原料となる。燃料供給部5は、燃焼装置20の内部空間21に燃料を供給する。すなわち、燃焼装置20の内部空間21には、燃料と油含有土の両方が供給されることになる。内部空間21に供給された燃料が油含有土と共に燃焼する。
【0063】
図1のように、油含有土供給部55と燃料供給部5とが組み合わされた構成でもよい。あるいは、
図2のように、油含有土供給部55と燃料供給部5とが、分離した構成であってもよい。
【0064】
燃焼装置20は、供給された燃料を油含有土と共に燃焼させる。燃料に着火されて燃焼が開始され、燃料が燃料としての特性で燃焼する。燃料が燃焼すると、内部空間21にある油含有土も燃焼に含まれるようになる。
【0065】
油含有土が燃焼することで、油含有土が高温環境にさらされる。この高温環境下にさらされることにより、油含有土が含む油分が蒸発する。油含有土の含む油分の蒸発温度を超えるからである。また、油含有土が油分以外の有機不純物を含む場合には、有機不純物は燃焼により分解等される。油分が蒸発し、有機不純物が分解等されることで、油含有土が含む油分や有機不純物が取り除かれる。また、有機不純物以外の不純物も、燃焼熱によって分解等される。
【0066】
これらの結果、燃焼装置20において油含有土は燃焼処理されて浄化される。浄化されることで、油含有土から浄化土が生成される。浄化土回収部9は、この生成された浄化土を回収する。例えば、燃焼装置20の内部空間21から、手動あるいは自動で浄化土が取り出されて、浄化土回収部9が取り出された浄化土を回収する。
【0067】
浄化土は、油分やその他の不純物が除去ないしは浄化されているので、一般土壌に再利用が可能である。浄化土回収部9で回収された浄化土は、一般土壌の場所に投入されて土壌として再利用される。
【0068】
蒸留部8は、燃焼により油含有土から気化した油分である気化油分を蒸留する。燃焼装置20の内部空間21において油含有土は高温の燃焼熱により燃焼される。この燃焼によって、含有されている油分は蒸発して気化する。含有されている油分は、油田やガス田において周辺土壌に浸透した化石燃料である。すなわち、石油、シェールオイル、液化ガスなどである。すなわち、回収されることで、有効活用が可能となる(採掘される石油などと同等の油分)。
【0069】
燃焼装置20で気化した気化油分は、燃焼装置20から外部に送出される。ここで、外部にある蒸留部8に送出される。例えば、管路や誘導路を用いて、気化油分を蒸留部8に送出する。あるいは、燃焼装置20の前方の開口部22の上方に排出される気化油分を回収する袋状あるいは箱状の回収部を備える。回収部は、回収した気化油分を、蒸留部8に送る。
【0070】
蒸留部8は、冷却機能を有しており、受け取った気化油分を冷却して液化する。この液化により、液体としての油分が得られる。液体としての油分は、石油やシェールオイルなどの化石燃料である。油田やガス田などで採掘されて土壌に混ざってしまったものであり、採掘された石油やシェールオイルと同じものが再び得られる。このため、蒸留部8で蒸留によって得られる液化した化石燃料は、採掘によって得られる化石燃料と同様に利用可能である。
【0071】
また、燃焼装置20において油含有土が燃焼されて得られる気化油分から、この化石燃料は回収される。この油含有土の燃焼処理の際に、有機不純物などが除去される。このため、気化油分の純度が向上することもあり、蒸留部8で回収される液化された化石燃料は、純度が高まっていることもある。
【0072】
このように、油含有土は浄化されて浄化土として一般土壌などに再利用可能である。これと併せて、油含有土に含まれていた油分は、油含有土から分離されて回収され、化石燃料として利用される。
【0073】
蒸留部8で気化油分が蒸留されることで、回収油分として油分が回収される。
【0074】
浄化土回収部9は、燃焼装置20で燃焼されて油分が蒸発し有機不純物などが除去されて生成される浄化土を回収する。油含有土は、油分やその他の有機不純物を含んでいる。燃焼装置20での十分かつ高温での燃焼によって、がブラ含有土から油分が蒸発して有機不純物が除去される。この結果、一般土壌として再利用可能な浄化された浄化土が得られる。浄化土回収部9は、この浄化土を回収する。回収されると再利用される。
【0075】
浄化土は、油含有土が含んでいる有機不純物も燃焼浄化された状態であるからである。浄化土は一般土壌に再利用可能である。回収油分は化石燃料として利用可能である。このようにして、油含有土処理装置1は、そのままでは産業廃棄物である油含有土から、再利用可能な浄化土と利用可能な化石燃料とを得ることができる。廃棄物を廃棄物とすることなく、再利用可能な状態にできる。
【0076】
燃焼装置20は、
図3、
図4のように、燃料と油含有土の供給を受けてこれらを燃焼させる燃焼筒2、燃焼筒2の内側を構成する内筒4、燃焼筒2の外側を構成し内筒4の外側にある外筒3と、内筒4と外筒3との間に設けられる空気空間6と、内筒4の内壁の延伸方向に沿って取り付けられる複数の空気供給ユニット7とを備える。また、内筒4の内部は、実際の燃料などの燃焼を行う内部空間21である。また、内部空間21に連通する燃焼筒2の前方は、開口した開口部22を備える。
【0077】
このような構成によって、燃焼装置20は、内部空間21に供給された燃料と油含有土を燃焼させる。
【0078】
燃料供給部5は、燃料を燃料筒2の内部空間21に燃料を供給する。燃料を供給することで、燃焼筒2の内部空間21での燃料による燃焼が実現される。燃料供給部5は、回転部51を有している。この回転部51により、燃料供給部5に投入された燃料は、効率よくかつある程度の単位量を維持しながら内部空間21に供給される。回転部51が回転する。回転部51に備わる羽根が回転しながら、燃料を内部空間21に送り込むからである。
【0079】
また、並行して、油含有土供給部55が、内部空間21に油含有土を供給する。この供給により、内部空間21には燃料と油含有土の両方が存在する状態となる。燃焼筒2は、燃料の供給を受けて燃料と油含有土を燃焼させる。内部空間21において燃焼させる。
【0080】
外筒3は、内筒4の外側にある。外筒3は、燃焼筒2の外形を構築する。内筒4は、外筒3の内側に備わる。外筒3および内筒4のそれぞれは、円筒状の形状を有している。燃料供給部5と逆側の前方は開口して開口部22となっている。すなわち、外筒3と内筒4とは、その前方を開口状態としている。根元部分は、
図3のように、燃料供給部5や油含有土供給部55と接続する形態である。
【0081】
外筒3と内筒4とは、内径の異なる円筒状の部材であり、外筒3の内側に内筒4が備わる態様である。外筒3は、燃焼筒2の外側を構成し、内筒4は、燃焼筒2の内側を構成する。
【0082】
外筒3と内筒4との間には空間が形成される。内径の違いにより生じるからである。この外筒3と内筒4との間に生じる空間が空気空間6である。空気空間6は、空気供給ユニット7を介して、内部空間21に空気を供給する。このため、空気空間6の根元は、外部に連通している。外部に連通していることで、外部から空気が空気空間6に継続して入ってくる。この継続して入ってくる空気を、空気空間6は、空気供給ユニット7を介して、内部空間21に供給する。
【0083】
複数の空気供給ユニット7は、内筒4の内壁の延伸方向(
図3の横方向)に沿って取り付けられる。複数の空気供給ユニット7のそれぞれが、内壁の延伸方向に沿って取り付けられることで、内壁全体に渡って空気供給ユニット7が取り付けられたような状態となる。ただし、複数の空気供給ユニット7の組み合わせによって、内壁全体に渡って取り付けられた状態である。
【0084】
複数の空気供給ユニット7のそれぞれは、空気空間6から内部空間21に空気を供給する。
【0085】
複数の空気供給ユニット7のそれぞれは、内壁に取り付けられる本体部72と、本体部72を貫通して内部空間21と空気空間6とを連通させる空気孔71とを有する。この空気孔71が、空気空間6から内部空間21に空気を供給する。この空気孔71は、複数の空気供給ユニット7のそれぞれに設けられる。
【0086】
図4のように、内壁の内周方向においては、複数の空気供給ユニット7が取り付けられている。すなわち、内壁の円周方向は、複数の空気供給ユニット7により分割されているような態様である。このため、複数の空気供給ユニット7のそれぞれに空気孔71が設けられていることで、内周方向の分散した複数の角度方向から、空気が内部空間21に供給されるようになる。
【0087】
空気孔71は、空気空間6と内部空間21を連通させる。これにより、空気孔71は、空気空間6から内部空間21へ空気を供給できる。このとき、空気空間6には、外部から継続して空気が入るので、空気孔71も、内部空間21に継続して空気を供給することができる。
【0088】
この結果、内部空間21には十分な空気が継続的に供給される。また、内周方向の様々な角度方向から供給されることで、空気の供給状態も、燃焼効率および燃焼レベルの向上に好ましい。結果として、燃焼装置1は、燃料および油含有土を高い燃焼熱で燃焼させることができる。高い燃焼熱で燃焼させることができるので、油含有土に含まれる油分を確実に気化させて気化油分を生じさせる。併せて油含有土を浄化して浄化土を生成する。
【0089】
また、
図4に示されるように、空気供給ユニット7は、本体部72と空気孔71を備える。このとき、内部空間21に向けては、本体部72がそのほとんどを露出している。空気孔71の開口部だけが露出しており、空気孔71を構成する部材は本体部72でおおわれている。このため、参考技術のように、空気孔の部材が露出していない。また、空気パイプなどもない。
【0090】
ここで、燃焼装置1の内部空間21での燃焼熱が高温となると、空気供給ユニット7での温度上昇による影響が考えられる。しかしながら、燃焼装置1では、内壁の外周全体において、複数の空気供給ユニット7が組み合わされている。これにより、温度上昇による影響があっても、一つ一つの空気供給ユニット7は小さいので変形や破損などの問題を生じさせにくい。
【0091】
また、内部空間21に、空気孔71を形成する部材が露出していない。本体部72に設けられた空気孔71の開口部があるだけである。このため、空気供給ユニット7での、温度上昇の大きな差が生じにくくなる、この点でも、空気供給ユニット7の変形や破損などの問題を生じさせにくい。
【0092】
これらの問題が生じにくいことで、燃焼装置1そのものの故障などを抑制できる。また、使用者が壊れたと考えてしまう問題も解消できる。また、必要であれば、空気供給ユニット全体を交換するのではなく、複数の空気供給ユニット7のいずれかを交換するだけでよい。これにより、メンテナンス性も向上する。
【0093】
このような燃焼装置20が油含有土処理装置1に組み込まれることで、確実な燃焼処理と、高い耐久性、高いメンテナンス性を実現できる。
【0094】
以上のように、実施の形態1における油含有土処理装置1は、廃棄物となるだけだった油含有土から、再利用可能な浄化土と利用可能な化石燃料を生成することができる。これにより、廃棄物問題を解消でき、環境負荷を低減できる。また、採掘時に回収できなかった化石燃料を利用可能とできる。多くの油田などで生じている油含有土を処理しつつ活用することを実現できる。
【0095】
(実施の形態2)
【0096】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、種々のバリエーションについて説明する。
【0097】
(燃料供給部)
燃料供給部5は、油含有土供給部55の内側に備わることも好適である。
図1に示される態様である。燃焼筒2の根元に円筒状の部材が接続される。この円筒状の部材の中央付近に径の小さな円筒状の部材が備わり、円筒状の部材が二重構造となっている。
【0098】
内側の円筒状の部材が、燃料供給部5となる。燃料供給部5は、燃焼を生じさせる燃料を供給する。化石燃料、液体燃料、固形燃料、バイオマス燃料などを供給する。これらの燃料は、燃焼筒2の内部空間21に供給されて燃焼を実現する。内側の円筒状の部材の周囲は、油含有土供給部55となる。
【0099】
すなわち、円筒状の部材の中央から燃料が供給され、周囲から油含有土が供給される。このような供給によって、内部空間21には燃料と油含有土が混合するような状態で供給される。この供給によって、内部空間21での燃焼では、燃料と油含有土とが混合して燃焼する。
【0100】
混合しやすい形態で供給されて燃焼することで、油含有土の浄化処理(油分の蒸発など)のための燃焼が効率的となる。また、
図3に示されるように、油含有土供給部55は、回転羽根51を備えることも好適である。回転羽根51を備えることで、油含有土を攪拌しながら内部空間21に供給することができる。また、供給をスムーズに行うこともできる。油含有土は粘度が高くなっており、回転羽根51で攪拌しながらであると、粘度に関わらずスムーズな供給ができるようになるからである。
【0101】
もちろん、
図2のように、油含有土供給部55と燃料供給部5とが分離して燃焼筒2に接続してもよい。分離して接続することで、油含有土供給部55からは油含有土が、燃料供給部5からは燃料が、速い速度で供給できる。また、油含有土供給部55への油含有土を投入することと、燃料供給部5に燃料を投入することを、独立して行える。このため、投入に係る作業効率を向上させることもできる。
【0102】
(空気空間)
空気空間6は、外筒3と内筒4との間の隙間の空間である。空気空間6の根元は、燃焼筒2の根元側(燃料供給部5側)において、外部に連通している。また、空気空間6の先端側(開口部21側)は、外部に連通あるいは、内部空間21に連通している。これらのような根元と先端との連通によって、空気空間6には、外部からの空気が常に供給される状態となる。
【0103】
また、根元と先端との連通によって、空気空間6は空気を循環させることができる。更に、空気空間6は、空気孔71によって内部空間21と連通している。このことによっても、空気空間6は、その内部において、空気を循環させることができる。
【0104】
また、内部空間21においては、燃料と油含有土が燃焼する。この燃焼熱は、内部空間21に露出している内側に熱を伝える。内部空間21に露出している内側は、
図4のように、複数の空気供給ユニット7が存在する。内部空間21での燃焼熱は、この空気供給ユニット7に放射される。この放射を受けた空気供給ユニット7は、燃焼熱を空気空間6に伝導させる。この熱伝導により、空気空間6内部の空気は、加熱される。
【0105】
後述するように、空気供給ユニット7の本体部72は、断熱材で形成されている場合もある。この場合には熱伝導は低いが、一定の熱伝導は生じる。この熱伝導によって、空気空間6の空気は加熱される。この加熱により、空気空間6の内部では、空気の循環がより促進される。
【0106】
この空気循環が促進されることで、空気供給ユニット7の空気孔71からの内部空間21への空気の供給がより効率的になる。効率的になることで、内部空間21での燃焼効率が更に高まる。また、加熱された空気が供給されることで、燃焼熱を更に高めて、燃料および油含有土を燃焼させることができる。燃焼効率や燃焼熱が高まることで、燃料と油含有土を合わせて確実に燃焼処理することができる。
【0107】
(空気供給ユニット)
複数の空気供給ユニット7は、内筒4の内壁の延伸方向に沿って取り付けられる。
図3、
図4には、この状態が示されている。複数の空気供給ユニット7のそれぞれが延伸方向に沿って取り付けられることで、内周方向は、複数の空気供給ユニット7で区画のように分割された状態となる。内周方向の断面は、
図4のように、複数の空気供給ユニット7が分割したような態様である。
【0108】
空気供給ユニット7のそれぞれは、本体部72と本体部72を貫通する空気孔71とを備える。内壁に取り付けられると、空気孔71は、空気空間6と内部空間21とを連通させる。また、取り付けられた状態では、本体部72が内部空間21に露出している。空気孔71については、開口部のみが露出している。
【0109】
このような取り付け状態により、内壁の内部空間21側においては、本体部72が空気孔71の開口部以外は本体部72が露出している態様である。ここで、本体部72は、断熱材を含む。断熱材を含むことで、内部空間21での高温の燃焼が生じても、内筒4や外筒3の温度上昇を抑制することができる。特に外筒3の温度上昇を抑えることで、燃焼装置1の使用現場での取り扱いの困難性を軽減できる。
【0110】
空気供給ユニット7は、空気孔71を備える。このとき、
図3に示す通り、空気供給ユニット7は、内筒4の延伸方向に沿って備わる。この延伸方向に沿って、
図3のように、空気供給ユニット7のそれぞれは、複数の空気孔71を備えることも好適である。複数の空気孔71が備わることで、空気空間6からより多くの空気を内部空間21に供給することができる。また、空気空間6から空気を供給する場合に、より効率的かつ効果的に送ることもできる。特に、複数の空気孔71のどれかが不純物などで塞がってしまっても、他の空気孔71からの空気供給が可能である。
【0111】
内壁には、複数の空気供給ユニット7が取り付けられる。複数の空気供給ユニット7のそれぞれは、複数の空気孔71を備える。この結果、内壁に向けては、多数の空気孔71が、空気空間6と連通して備わる。空気空間6は、外周に沿った全体に渡っており、これらの全体から、多数の空気孔71が空気を内部空間21に供給できる。
【0112】
このように複数の空気孔71が設けられることで、内部空間21に十分な量の空気が供給される。この十分な量の空気供給により、内部空間21で高温の燃焼熱で十分な燃焼が行える。高温の燃焼熱であることで、燃料と油含有土を確実に燃焼させることができる。複数の空気孔71は、異なる複数の位置のそれぞれに設けられる。
【0113】
また、内筒4の前方側(開口部22側)に向かうにつれて、複数の空気孔71の内径が大きくなっていくことも好適である。大きくなっていくことで、内部空間21の前方における空気供給量が根元側よりも大きくなり、燃焼効率を高めることができるからである。
【0114】
特に、内部空間21の根元は燃料供給部5から燃料が供給される部分である。ここで燃焼が始まり、前方に行くほど燃焼が拡大および燃焼レベルが上がっていく。このため、先端ほどより多くの空気供給を得られることは、燃焼装置1全体での燃焼レベルや燃焼効率の向上に適している。この点で、空気供給ユニット7のそれぞれの延伸方向において設けられる複数の空気孔71において、前方ほど空気孔71の内径が大きいことは好適である。
【0115】
複数の空気供給ユニット7のそれぞれは、内筒4の内壁の延伸方向に沿って取り付けられる。また、内壁の内周方向(円周方向)を、複数の空気供給ユニット7が分割する態様となって、複数の空気供給ユニット7が取り付けられる。
図4は、燃焼筒2を正面(開口部21)から見た状態を示している。複数の空気供給ユニット7が、内周方向を分割したような態様となっている。
図4では、一例として、8個の空気供給ユニット7が取り付けられている。8個の空気供給ユニット7が、内周方向を8分割した状態である。
【0116】
また、
図4のように円周方向を分割する態様であると共に、
図3のように内壁の略全体に、複数の空気供給ユニット7が取り付けられる。略全体に取り付けられることで、断熱材である本体部72が、内壁の略全体を覆うようになる。この結果、内部空間21での燃焼熱が燃焼筒2につたわることを低減できる。また、全体に空気供給ユニット7が備わることで、内壁全体に空気孔71が備わる態様となり、内部空間21に、効率よくまた満遍なく空気を供給できる。
【0117】
図4では、複数の空気供給ユニット7は、内壁の内周方向(円周方向)において、隣接する空気供給ユニット7相互の間に空隙73をもって取り付けられる。空隙73をはさむようにして、空気供給ユニット7のそれぞれが内壁に取り付けられる。
【0118】
空隙73が備わることで、内部空間21での燃焼による熱を受けた空気供給ユニット7が膨張したり若干の変形をしたりしても、この空隙がこれら膨張や変形を吸収できる。また、燃焼熱によって、内筒4や外筒3が少し膨張したり変形したりすることもありえる。これらの膨張や変形が生じると、空気供給ユニット7が、これに引きずられることがありえる。この場合も、空隙73が、これを吸収して、空気供給ユニット7の変形や破損などをより確実に防止できる。
【0119】
また、
図4に示されるように、空隙73には、緩衝材75が備わることも好適である。燃焼熱によって外筒3、内筒4および空気供給ユニット7が膨張や変形する場合でも、緩衝材75が、これらの膨張や変形を吸収できる。この九州によって、空気供給ユニット7の変形や破損などを、更に低減できる。内壁全体において、空気供給ユニット7が複数であることで、一つ一つの空気供給ユニット7は相対的に小さくなる。この結果、熱の影響による膨張や変形の度合いが低下する。これに加えて、空隙73や緩衝材75によって、膨張や変形を吸収できることになる。
【0120】
これらの特徴の結果、変形や故障あるいは不要な交換修理などの問題を解消できる。
【0121】
内壁は、内壁の延伸方向に沿っていると共に、内壁の円周方向を複数の区画に77分割する線状の突起76を更に備える。
図4では、円周方向(内壁の内周)を、8分割する区分に合わせて、線状の突起76が備わっている。言い換えれば、8つの突起76が、内周方向を8つの区画77に区分している。
【0122】
複数の空気供給ユニット7のそれぞれは、8つの区画77のそれぞれに取り付けられる。空気供給ユニット7の形状や大きさは、この区画77の形状や大きさに合っている。これにより、区画77に空気供給ユニット7が挿入されて固定されるなどするだけで、空気供給ユニット7は、区画77に取り付けられる。複数の区画77のすべてに空気供給ユニット7が取り付けられれば、内壁の略全体が、空気供給ユニット7で覆われる。
【0123】
略全体が覆われれば、内部空間21に面する内壁の略全体は、断熱材を備える本体部72で覆われることになる。これにより、内部空間21で燃焼がなされても、この燃焼熱が燃焼筒2に強く伝導することを防止できる。さらに、本体部72を貫通する複数の空気孔71が、内壁の略全体に存在する状態となる。この結果、内部空間21全体に、空気空間6から空気が供給されるようになる。
【0124】
また、複数の区画77のそれぞれに空気供給ユニット7が取り付けられる構成により、空気供給ユニット7のそれぞれは、交換可能である。交換可能であることで、いずれかの空気供給ユニット7に不具合が発生すれば、その空気供給ユニット7だけを交換すれば済むようになる。
【0125】
このように交換可能であることで、燃焼装置1のメンテナンス性が高まる。
【0126】
(空気孔の方向)
空気孔71は、燃焼筒2の円周方向に対して斜めに形成されることも好適である。
図4は、空気孔71が、円周方向に対して斜めに形成されている状態を示している。円周方向に斜めとは、内筒4の円周における接線に対して、垂直ではない角度で形成されている状態である。
【0127】
空気孔71が、このような斜めの角度で形成されていることで、空気孔71から内部空間に供給される空気は、内部空間21内部で対流特に旋回対流を生じさせやすい。斜め角度の複数の空気孔71から空気が供給されると、内部空間21に垂直方向の供給と異なり、それぞれの空気が内壁にぶつかったり相互にぶつかったりして、対流を生じさせやすい。
【0128】
また、燃焼筒2が回転しながらであると、更に内部空間21での空気の対流が生じやすい。
【0129】
空気孔71の形態により、内部空間21内部に供給される空気による対流の発生により、内部空間21での燃焼効率が更に高まる。結果として、高い燃焼熱で燃料およびを燃焼させることができる。
【0130】
また、空気孔71が斜めの角度で形成されていることで、仮に燃焼熱で空気供給ユニット7が膨張や変形などしても、空気孔71の変形に繋がりにくい効果がある。また、空気孔71が斜めであることで、空気供給ユニット7の芯棒となって、空気供給ユニット7の変形などをより抑制できるメリットもある。
【0131】
以上のように、燃焼装置20は、より高い燃焼熱での効率よい燃焼を実現できる。高い燃焼熱、燃焼レベル、燃焼効率により、油含有土の浄化処理を確実に行う燃焼ができる。
【0132】
また、これを実現する空気供給ユニット7が、複数により内壁に取り付けられる。これにより、燃焼熱による空気供給ユニット7の変形、膨張、破損などの発生を抑制できる。また、変形などの抑制により、使用者への不安を減少させることもできる。更に、高いメンテナンス性を実現できる。
【0133】
以上より、実施の形態2における油含有土処理装置1は、高い燃焼能力で油含有土の浄化処理を実現できる。また、燃焼熱を高くすることによるデメリット(燃焼装置20の変形や故障、あるいは不具合と利用者が思い込んでしまうこと)を、解消できる。
【0134】
(実施の形態3)
【0135】
次に実施の形態3について説明する。実施の形態3では、燃焼装置での油含有土の燃焼による油分の回収と浄化土への変換に加えて、油含有土を蒸留部で熱を利用して油分を回収すると共に浄化土への変換を行うハイブリッド型について説明する。
【0136】
図5は、本発明の実施の形態3における油含有土処理装置のブロック図である。
図5の油含有土処理装置1では、実施の形態1とは異なり、油含有土の全部が燃焼装置20に供給されず、その一部が燃焼装置20に供給されて、残部は、直接蒸留部8に供給される。燃焼装置20における油含有土の燃焼処理(油分を利かして気化油分を生じさせると共に、油含有土から油分や不純物を除去して浄化した浄化土を生じさせる)は、実施の形態1、2で説明した通りである。
【0137】
これと並列して、油含有土の一部は、燃焼装置20を経ずに蒸留部8に供給される。蒸留部8において、燃焼装置20からの燃焼熱を受けて、同様に、油含有土の油分を気化油分として生じさせると共に、油含有土から油分や不純物を除去して浄化した浄化土を生じさせる。
【0138】
すなわち、実施の形態3における油含有土処理装置1は、燃焼装置20での処理と蒸留部8での処理を並列して行う。一種のハイブリッド型である。
【0139】
油含有土の一部は、油含有土供給部55から燃焼装置20に供給される。これと並行して油含有土の残部は、第2含有土供給部81により蒸留部8に供給される。この第2油含有土供給部81から蒸留部8に供給された油含有土は、燃焼装置20とは別系統として処理される。
【0140】
燃焼装置20では、実施の形態1、2で説明したように、油含有土と燃料を燃焼させる。この燃焼で、油含有土の浄化と気化油分の生成をする。このとき、燃焼装置20では、燃焼による燃焼熱が発生する。実施の形態3における油含有土処理装置1は、燃焼熱供給部82を更に備える。燃焼熱供給部82は、蒸留部8に燃焼装置20で生じる燃焼熱を供給する。燃焼装置20では、火炎が生じてこの火炎が燃焼熱を有する。この火炎や火炎から通じる熱せられた空気が、燃焼熱として、燃焼熱供給部82を通じて供給される。これは、蒸留部で用いられる蒸留部用燃焼熱である。
【0141】
蒸留部8は、第2油含有土供給部81を通じて供給された油含有土に蒸留部用燃焼熱で加熱する加熱部83を備える。加熱部83において、燃焼装置20から燃焼熱供給部82を介して供給された蒸留部用燃焼熱は、油含有土を加熱する。
【0142】
この加熱によって、油含有土が含有する油分は気化する。すなわち、気化油分が発生する。
図5には、この状態が示されている。この気化油分が生じることで、油含有土が含む油分や不純物が除去される。この除去により、油含有土は浄化される。浄化により浄化土が生じる。
【0143】
すなわち、燃焼装置20での、気化油分と浄化土の発生と同様のことが、蒸留部8においても生じる。蒸留部8内部には、燃焼装置20から送られた気化油分を冷却して蒸留する機能が備わる。この機能は、蒸留部8の加熱部83で生じる気化油分に対しても発揮される。
【0144】
すなわち、蒸留部8は、燃焼装置20からの気化油分と加熱部83からの気化油分の両方を、蒸留液化して、回収油分とできる。
【0145】
また、加熱部83で生じる浄化土は、燃焼装置20で生じる浄化土と共に、浄化土回収部9で回収される。なお、加熱部83を中心とする加熱処理を行う要素は、
図5では、蒸留部8の内部にあるように示されているが、外部にある要素として実現されてもよい。油含有土の一部が燃焼装置20以外の経路で、燃焼装置からの燃焼熱で処理されることが実現できる構成であればよい。
【0146】
実施の形態3における油含有土処理装置1のように、燃焼装置20での処理と蒸留部8での処理とが並列に行われることで、より多くの油含有土を処理できる。また、燃焼装置20での燃焼熱が、加熱部83での処理に用いられることで、燃焼熱の有効活用がなされる。また、燃焼装置20においては油含有土が燃料と共に燃焼させられるので、含有する油分の一部は気化するのではなく燃焼の燃料として燃焼してしまう。このため、含有油分の回収が減ることもあり得る。
【0147】
これに対して、加熱部83での燃焼熱による油含有土の加熱であれば、より多くの割合の油分を気化油分として回収できる。一方で、油含有土が燃焼装置20で燃焼されて油分も燃料の一部として活用されることで、より強力な燃焼熱を、燃焼装置20が生むことができる。勿論、燃焼熱は、これ以外の様々な用途に用いられる。
【0148】
この燃焼熱が、加熱部83で用いられるので、
図5の油含有土処理装置1全体では、油含有土の含有する油分の実利用と回収とのトータルバランスが優れている。燃焼熱は、加熱部83でも利用されるし、別の目的でも利用される。その燃焼熱を生じさせるのに油含有土の油分が使われつつ、燃焼装置20と加熱部83との両方から、気化油分を生じさせて、最終的に回収油分として回収できる。
【0149】
すなわち、油含有土の処理としてのトータルバランスに優れた装置となる。
【0150】
以上のように、実施の形態3では、油含有土からの油分の回収能力や回収効率を高めつつ、燃焼熱利用の効率も上げて、それぞれのバランスを最適化することができる。
【0151】
なお、油含有土の内、燃焼装置20に供給される割合と加熱部83に供給される割合とは、上記のトータルバランスを最適化するのに合わせて調整されればよい。
【0152】
以上、実施の形態1~2で説明された油含有土処理装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0153】
1 油含有土処理装置
2 燃焼筒
20 燃焼装置
21 内部空間
22 開口部
3 外筒
4 内筒
5 燃料供給部
55 油含有土供給部
6 空気空間
7 空気供給ユニット
71 空気孔
72 本体部
73 空隙
75 緩衝材
76 突起
8 蒸留部
9 浄化土回収部