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特開2022-185690製造不良対策情報検索システム及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185690
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】製造不良対策情報検索システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/907 20190101AFI20221208BHJP
【FI】
G06F16/907
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093460
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】青柳 拓也
(72)【発明者】
【氏名】緒方 真
(72)【発明者】
【氏名】朴 勝煥
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA10
5B175FB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造品又は製造設備の不具合に対する対策の候補を検索する製造不良対策情報検索システム及び方法を提供する。
【解決手段】製造品又は製造設備の不具合を示す複数の不具合情報の各々に対する対策の候補を示す複数の対策候補情報をセンサの計測対象の事象又は計測対象外の事象に対するものかを判別する判別情報に関連付けて記憶するデータベースと、不具合を特定するためのキーワードを含む検索情報を基にデータベースを検索する対策候補抽出部と、対策候補抽出部の検索結果を出力する検索結果出力部と、を備える。策候補抽出部は、複数の対策候補情報の中から、センサの計測対象外の事象に属し、且つ、検索情報で特定される不具合に対する対策の候補を示す第1対策候補情報を抽出し、センサの計測対象の事象に属し、且つ、検索情報で特定される不具合に対する対策の候補であり、一定の条件を満たす第2対策候補情報を抽出し、検索結果出力部に転送する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造品又は製造設備のうち少なくとも一方を計測対象とする1以上のセンサからのセンサ値を取得するセンサ値取得部と、
前記製造品又は前記製造設備のうち少なくとも一方の不具合を示す複数の不具合情報の各々に対する1以上の対策の候補を示す複数の対策候補情報を、少なくとも前記センサの計測対象又は測定対象外の事象に対するものかを判別する判別情報に関連付けて記憶するデータベースと、
前記不具合を特定するためのキーワードを含む検索情報を入力する検索情報入力部と、
前記検索情報入力部から入力された前記検索情報を基に前記データベースを検索する検索部と、
前記検索部の検索結果を出力する検索結果出力部と、を備え、
前記検索部は、
前記複数の対策候補情報の中から、前記センサの計測対象外の事象に属し且つ前記検索情報で特定される不具合に対する対策の候補を示す第1対策候補情報を1以上抽出すると共に、前記センサの計測対象の事象に属し且つ前記検索情報で特定される不具合に対する対策の候補であって、一定の条件を満たす第2対策候補情報を1以上抽出し、前記抽出された前記第1対策候補情報と前記抽出された前記第2対策候補情報を前記検索結果出力部に転送することを特徴とする製造不良対策情報検索システム。
【請求項2】
請求項1に記載の製造不良対策情報検索システムであって、
前記データベースの前記判別情報は、
前記各センサを特定するセンサ識別子を含み、
前記検索部は、
前記検索情報を基に前記データベースを検索した際に、前記複数の対策候補情報の中から、前記センサ識別子が設定されていない対策候補情報を前記第1対策候補情報として抽出し、
前記複数の対策候補情報のうち前記センサ識別子が設定された対策候補情報を前記複数の第2対策候補情報として特定することを特徴とする製造不良対策情報検索システム。
【請求項3】
請求項2に記載の製造不良対策情報検索システムであって、
前記判別情報は、
前記各センサの前記センサ値に対する判定基準値を更に含み、
前記検索部は、
前記一定の条件を満たす第2対策候補情報を抽出する場合、前記判定基準値と前記センサ値取得部により取得された前記センサ値とを比較して、前記センサ値が前記判定基準値の条件を満たし安定であるか否かを判定し、前記センサ値が前記安定であると判定された第2対策候補情報を前記一定の条件から外れた第2対策候補情報として除外し、前記センサ値が不安定であると判定された第2対策情報を前記一定の条件を満たす第2対策候補情報として抽出することを特徴とする製造不良対策情報検索システム。
【請求項4】
請求項3に記載の製造不良対策情報検索システムであって、
前記検索部は、
前記センサ値と前記判定基準値とを比較する際に、前記各センサから得られた前記センサ値からあらかじめ準備されたルールにもとづき判定されるセンサ状態値と、前記各センサを特定する前記センサ識別子に対応した前記判定基準値とが一致するか否かを判定することを特徴とする製造不良対策情報検索システム。
【請求項5】
請求項1に記載の製造不良対策情報検索システムであって、
前記製造品又は前記製造設備から少なくとも一方の不具合の種類を含む1以上のエラーコードをエラーコード情報として取得し、取得した前記エラーコード情報を前記検索部に出力するエラーコード取得部を更に備え、
前記データベースは、
前記エラーコード情報に属する前記エラーコードの各々と前記複数の不具合情報の各々とを対応づけて記録し、
前記検索部は、
前記エラーコード取得部から前記エラーコード情報を受信した場合、受信した前記エラーコード情報を基に前記データベースを検索し、前記複数の不具合情報の中から前記受信した前記エラーコード情報に属する前記エラーコードに対応した不具合情報を抽出し、抽出した前記不具合情報を基に前記第1対策候補情報と前記第2対策候補情報を抽出することを特徴とする製造不良対策情報検索システム。
【請求項6】
請求項1又は5に記載の製造不良対策情報検索システムであって、
前記対策候補情報は、
前記対策の内容を説明するための対策テキストを含み、
前記検索結果出力部は、
前記検索部の検索結果を表示する表示画面を含み、
前記表示画面上に、前記第1対策候補情報に属する前記対策テキスト及び前記第2対策候補情報に属する前記対策テキストをそれぞれ表示することを特徴とする製造不良対策情報検索システム。
【請求項7】
製造品又は製造設備のうち少なくとも一方を管理する計算機における方法であって、
前記計算機が、前記製造品又は前記製造設備のうち少なくとも一方を計測対象とする1以上のセンサからのセンサ値を取得するセンサ値取得ステップと、
前記計算機が、前記製造品又は前記製造設備のうち少なくとも一方の不具合を示す複数の不具合情報の各々に対する1以上の対策の候補を示す複数の対策候補情報を、少なくとも前記センサの計測対象又は計測対象外の事象に対するものかを判別する判別情報に関連付けてデータベースに記憶する記憶ステップと、
前記計算機が、前記不具合を特定するためのキーワードを含む検索情報を入力する検索情報入力ステップと、
前記計算機が、前記検索情報入力ステップで入力された前記検索情報を基に前記データベースを検索する検索ステップと、
前記計算機が、前記検索ステップの検索結果を出力する検索結果出力ステップと、を備え、
前記計算機は、
前記検索ステップでは、
前記複数の対策候補情報の中から、前記センサの計測対象外の事象に属し且つ前記検索情報で特定される不具合に対する対策の候補を示す第1対策候補情報を1以上抽出すると共に、前記センサの計測対象の事象に属し且つ前記検索情報で特定される不具合に対する対策の候補であって、一定の条件を満たす第2対策候補情報を1以上抽出し、前記抽出された前記第1対策候補情報と前記抽出された前記第2対策候補情報を前記検索結果出力ステップに転送することを特徴とする製造不良対策情報検索方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造不良対策情報検索方法であって、
前記データベースの前記判別情報は、
前記各センサを特定するセンサ識別子を含み、
前記計算機は、
前記検索ステップでは、
前記検索情報を基に前記データベースを検索した際に、前記複数の対策候補情報の中から、前記センサ識別子が設定されていない対策候補情報を前記第1対策候補情報として抽出し、
前記複数の対策候補情報のうち前記センサ識別子が設定された対策候補情報を前記複数の第2対策候補情報として特定することを特徴とする製造不良対策情報検索方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造不良対策情報検索方法であって、
前記判別情報は、
前記各センサの前記センサ値に対する判定基準値を更に含み、
前記計算機は、
前記検索ステップでは、
前記一定の条件を満たす第2対策候補情報を抽出する場合、前記判定基準値と前記センサ値取得ステップにより取得された前記センサ値とあらかじめ準備されたルールとにもとづき判定したセンサ状態値とを比較することで、前記センサ値が安定であるか否かを判定し、前記センサ値が前記安定であると判定された第2対策候補情報を前記一定の条件から外れた第2対策候補情報として除外し、前記センサ値が不安定であると判定された第2対策情報を前記一定の条件を満たす第2対策候補情報として抽出することを特徴とする製造不良対策情報検索方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造不良対策情報検索方法であって、
前記計算機は、
前記検索ステップでは、
前記センサ状態値と前記判定基準値とを比較する際に、前記各センサから得られた前記センサ状態値と前記各センサを特定する前記センサ識別子に対応した前記判定基準値とが一致するか否かを判定することを特徴とする製造不良対策情報検索方法。
【請求項11】
請求項7に記載の製造不良対策情報検索方法であって、
前記製造品又は前記製造設備から少なくとも一方の不具合の種類を含む1以上のエラーコードをエラーコード情報として取得し、取得した前記エラーコード情報を前記検索ステップに出力するエラーコード取得ステップを更に備え、
前記データベースは、
前記エラーコード情報に属する前記エラーコードの各々と前記複数の不具合情報の各々とを対応づけて記録し、
前記計算機は、
前記検索ステップでは、
前記エラーコード情報を受信した場合、受信した前記エラーコード情報を基に前記データベースを検索し、前記複数の不具合情報の中から前記受信した前記エラーコード情報に属する前記エラーコードに対応した不具合情報を抽出し、抽出した前記不具合情報を基に前記第1対策候補情報と前記第2対策候補情報を抽出することを特徴とする製造不良対策情報検索方法。
【請求項12】
請求項7又は11に記載の製造不良対策情報検索方法であって、
前記対策候補情報は、
前記対策の内容を説明するための対策テキストを含み、
前記計算機は、
前記検索結果出力ステップでは、
前記検索ステップの検索結果を表示する表示画面上に、前記第1対策候補情報に属する前記対策テキスト及び前記第2対策候補情報に属する前記対策テキストをそれぞれ表示することを特徴とする製造不良対策情報検索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造品又は製造設備の不具合に対する対策の候補を検索する製造不良対策情報検索システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の製造現場において、不具合が発生した際、不具合の対策に要する時間が長いほど、損失が拡大する。製造時の不具合の対策は、現場経験と専門知識に基づくものが多い。そこで、経験豊富でない人や非専門家が、先人の知識を参照して迅速に不具合への対策をするために、知識をデータベースの形で蓄積し、必要な時に検索する方法が提案されている。
【0003】
従来の方法として、特許文献1または特許文献2が開示されている。
特許文献1には、検査結果-異常要因の対応表、および、異常要因-計測項目-増減区別の対応表、計測項目-対策の対応表をあらかじめ準備し、検査結果に基づき、異常要因候補を抽出し、さらに、その増大/減少の区別に基づき、計測項目の対策を抽出する方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、対策の知識データベースをあらかじめ準備し、生産状態をモニタリングし、保守、不具合対策等のアクション実績を記録し、生産状態のグラフに時系列を合わせて重ねて表示し、グラフ内には知識データベースから対策も表示する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-142084号公報
【特許文献2】WO2015/114828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、計測対象外の事象に関する経験的な対策候補は扱われないため、計測対象を増やす努力が必要となる。特許文献2の方法では、生産量に関するデータに応じた対策を表示するが、センサ値は収集・使用がされない。製造現場の不具合に対する対策には、状況に応じて多くの種類があり、そのような多くの対策候補について、ひとつひとつ状況と照らし合わせながら対策すべきか確認する間、設備停止時間が続き、生産性を低下させてしまう。
【0007】
また、設備のセンサ値をモニタリングし、センサ値の異常を検知して不具合箇所を突き止める方法では、実際の製造現場において、不具合箇所の特定に必要なパラメータの全てをセンシングできているとは限らない。そこで新たにモニタリングしようとすると、センサ設置、基準値設定等に費用と時間がかかる。
【0008】
センサ値の異常を検知して対策を絞り込む場合、センサ値と異常検知の閾値とを比較し、センサ値が閾値から外れたか否かを判定する必要があるが、設備や製品型式により異常検知の閾値が異なるため、異常検知の閾値を決定するのに長期間の分析が必要となる。仮に、そのような閾値が既に明確な場合は、閾値が設定された事象について既に十分に管理・制御がされているはずであり、閾値が設定された事象について対策候補を表示してもその効果は十分ではない。
【0009】
本発明の課題は、製造品又は製造設備の不具合に対する複数の対策候補の中から、製造品又は製造設備を計測対象とするセンサの計測対象の事象に対するものと計測対象外の事象に対するものとを判別して抽出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、製造品又は製造設備のうち少なくとも一方を計測対象とする1以上のセンサからのセンサ値を取得するセンサ値取得部と、前記製造品又は前記製造設備のうち少なくとも一方の不具合を示す複数の不具合情報の各々に対する1以上の対策の候補を示す複数の対策候補情報を、少なくとも前記センサの計測対象又は計測対象外の事象に対するものかを判別する判別情報に関連付けて記憶するデータベースと、前記不具合を特定するためのキーワードを含む検索情報を入力する検索情報入力部と、前記検索情報入力部から入力された前記検索情報を基に前記データベースを検索する検索部と、前記検索部の検索結果を出力する検索結果出力部と、を備え、前記検索部は、前記複数の対策候補情報の中から、前記センサの計測対象外の事象に属し且つ前記検索情報で特定される不具合に対する対策の候補を示す第1対策候補情報を1以上抽出すると共に、前記センサの計測対象の事象に属し且つ前記検索情報で特定される不具合に対する対策の候補であって、一定の条件を満たす第2対策候補情報を1以上抽出し、前記抽出された前記第1対策候補情報と前記抽出された前記第2対策候補情報を前記検索結果出力部に転送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造品又は製造設備の不具合に対する複数の対策候補の中から、製造品又は製造設備を計測対象とするセンサの計測対象の事象に対するものと計測対象外の事象に対するものとを判別して抽出することができる。それにより、センサ値との関係が無いまたは不明な対策については、センサ値に関わらず漏れなく抽出し提供することができる。同時に、センサ値との関係がわかっている対策については、センサ値の状態に応じて適切に取捨選択して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る製造不良対策情報検索システムのシステム構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施例1に係る製造不良対策情報検索システムの機能ブロック図。
図3】本発明の実施例1に係る不具合マスタテーブルの構成例を示す構成図。
図4】本発明の実施例1に係る対策マスタテーブルの構成例を示す構成図。
図5】本発明の実施例1に係る不具合-対策対応テーブルの構成例を示す構成図。
図6】本発明の実施例1に係る対策-センサ対応テーブルの構成例を示す構成図。
図7】本発明の実施例1に係る表示装置の表示例を示す知識検索画面の構成図。
図8】本発明の実施例1に係る対策候補抽出部の検索処理の一例を示すフローチャート。
図9】本発明の実施例1に係る対策候補第1抽出部により抽出された第1抽出情報の構成例を示す構成図。
図10】本発明の実施例1に係るセンサ値の状態を判定するルールの概念を示すグラフ。
図11】本発明の実施例1に係るセンサモニタリング部のセンサ値状態判定処理の一例を示すフローチャート。
図12】本発明の実施例1に係る対策候補第2抽出部により抽出された第2抽出情報の構成例を示す構成図。
図13】本発明の実施例1に係る対策候補第2抽出部により抽出された第2抽出情報の他の構成例を示す構成図。
図14】本発明の実施例2に係る製造不良対策情報検索システムの構成例を示すシステム構成図。
図15】本発明の実施例2に係るエラーコード-不具合対応テーブルの構成例を示す構成図。
図16】本発明の実施例2に係る対策候補抽出部の検索処理の一例を示すフローチャート。
図17】本発明の実施例2に係る表示装置の表示例を示す知識検索画面の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例0014】
(ハードウェア構成)
本発明の実施例1は、CPU、ネットワークI/F、RAM、記憶装置、入出力I/Fを備えたコンピュータであって、製造品又は製造設備のうち少なくとも一方を管理する計算機で実現可能である。
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る製造不良対策情報検索システム101のシステム構成を示すブロック図である。製造不良対策情報検索システム101は、工業製品の製造現場における不具合による損失を低減するため、個々の製造現場に固有のプロセス順に関する情報、製造現場で経験的に得られる知識、工学理論に基づく知識等の情報を蓄積し、不具合要因の候補となる知識を迅速にできるだけ抜け漏れなく検索するデータベースシステムである。具体的には、製造不良対策情報検索システム101は、各種演算を行い、製造不良対策情報検索システム101の各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)11を備えている。CPU11には、CPU11の作業エリアとなるRAM(Random Access Memory)12と、BIOS(Basic Input Output System)等を記憶したROM13と、各種データを記憶する不揮発性の記憶装置である磁気記憶装置(HDD)14とが接続されている。なお、記憶装置は、SSD(Solid State Drive)等であってもよい。また、CPU11には、インターネット等のネットワーク113(図2)と通信を行うための通信インターフェイス(I/F)10と、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等の各種メディアである記憶媒体16のデータを読み取る光ディスク装置等の記憶媒体読取装置17とが接続されている。さらに、CPU11には、キーボード、マウス等の入力装置18と、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置19とが接続されている。磁気記憶装置14には、対策抽出プログラム20がセットアップされている。対策抽出プログラム20は、インターネット等からダウンロードして磁気記憶装置14にセットアップしてもよいし、記憶媒体16から記憶媒体読取装置17により読み取って磁気記憶装置14にセットアップしてもよい。
【0016】
図1では、便宜上、製造不良対策情報検索システム101は、単一のサーバ装置として図示しているが、互いに連携して動作するネットワーク上の複数台のサーバ装置として実施してもよい。その場合、ひとまとまりのデータとして図1中に図示している対策抽出プログラム20も複数台のサーバ装置にそれぞれ分散してセットアップされているプログラム群の集合体となる。その場合、記憶媒体16も、各サーバ装置にそれぞれ対応した記憶媒体からなる記憶媒体群の集合体となる。
【0017】
製造不良対策情報検索システム101は、対策抽出プログラム20に基づいて動作して、磁気記憶装置14やその他の不揮発性記憶装置内に後述の不具合対策記憶部102(図2)を構築し、当該不具合対策記憶部102を検索することができる。製造不良対策情報検索システム101は、ある製造現場で用いられ、その製造現場の製造ラインで生じた不具合を解決するために、様々な不具合事例について登録したデータベースを備える。なお、本明細書において、「プロセス」というときは、製造ライン中のプロセスを示す。
【0018】
(全体構成)
図2は、本発明の実施例1に係る製造不良対策情報検索システム101の機能ブロック図である。図2において、製造不良対策情報検索システム101は、データベースとして不具合対策記憶部102、データ処理手段として対策候補抽出部103及びセンサモニタリング部108、指示入力部106、結果出力部107を備える。本実施例では、対策候補抽出部103とセンサモニタリング部108とはネットワーク113でつながっている。センサモニタリング部108は、通信線を介して、製造設備112a内のセンサ111に接続される。
【0019】
不具合対策記憶部102は、不具合マスタテーブル、対策マスタテーブル、不具合-対策対応テーブル及び対策-センサ対応テーブルを記憶している。これらのテーブルについてはあとで図3図6を用いて説明する。
【0020】
対策候補抽出部103は、対策候補第1抽出部104及び対策候補第2抽出部105を有する。対策候補抽出部103には、指示入力部106と結果出力部107が接続される。指示入力部106は、製造品又は製造設備112aのうち少なくとも一方の不具合を特定するためのキーワードを含む検索情報を入力する検索情報入力部として構成される。結果出力部107は、対策候補抽出部103の抽出結果(検索結果)を出力する検索結果出力部として構成される。
【0021】
センサモニタリング部108は、センサ値状態判定部109、センサ値取得部110を有する。センサモニタリング部108には、利用者の操作によるリセット命令を入力するモニタリング指示入力部114が接続される。
【0022】
センサ値取得部110は、製造設備112aに取り付けられたセンサ111と通信線でつながっている。センサ111は、製造品又は製造設備112aのうち少なくとも一方を計測対象として、計測対象の状態を計測し、計測値を時系列データのセンサ値として、通信線を介してセンサ値取得部110に送信する。センサ値取得部110は、センサ111から取得したセンサ値をセンサ値状態判定部109に出力する。なお、センサ111は、製造設備112aに複数個存在するが、図2では、1個のみを図示してある。
【0023】
(データベース)
図3図6は、不具合対策記憶部102に記憶するテーブルの概念図である。以下、各テーブルの内容を説明する。尚、以降の説明の中で、テーブルに格納される行単位の情報をレコードと記述する。
【0024】
図3は、本発明の実施例1に係る不具合マスタテーブルの構成例を示す構成図である。図3において、不具合マスタテーブルT1は、不具合対策記憶部102に格納されるテーブルであって、不具合を一意に識別する識別子である不具合ID301と、不具合の内容を説明するための不具合テキスト302とを含む不具合情報から構成される。不具合ID301には、不具合テキスト302のレコードを一意に識別するための重複無しキーとして、例えば、「F001」の情報が格納される。不具合テキスト302には、例えば、「F001」の不具合ID301に対して、不具合の状態を説明する文章として、「圧入時変形」の情報が格納される。
【0025】
図4は、本発明の実施例1に係る対策マスタテーブルの構成例を示す構成図である。図4において、対策マスタテーブルT2は、不具合対策記憶部102に格納されるテーブルであって、対策を一意に識別する識別子である対策ID401と、対策の内容を説明するための対策テキスト402とを含む対策候補情報から構成される。対策ID401には、対策テキスト402のレコードを一意に識別するための重複無しキーとして、例えば、「A0001」の情報が格納される。対策テキスト402には、例えば、「A0001」の対策ID401に対して、対策の内容を説明する文章として、「切削寸法を是正する」の情報が格納される。
【0026】
図5は、本発明の実施例1に係る不具合-対策対応テーブルの構成例を示す構成図である。図5において、不具合-対策対応テーブルT3は、不具合対策記憶部102に格納されるテーブルであって、不具合を一意に識別する識別子である不具合ID501と、対策を一意に識別する識別子である対策ID502とから構成される。不具合ID501には、不具合マスタテーブルT1の不具合ID301と同様の情報が格納される。対策ID501には、対策マスタテーブルT2の対策ID401と同様の情報が格納される。すなわち、不具合ID501の情報と対策ID502の情報とが、適切に紐づけられて、不具合-対策対応テーブルT3の各レコードに格納されている。この紐づけは多対多で構わない。
【0027】
図6は、本発明の実施例1に係る対策-センサ対応テーブルの構成例を示す構成図である。図6において、対策-センサ対応テーブルT4は、不具合対策記憶部102に格納されるテーブルであって、対策を一意に識別する識別子である対策ID601と、センサを一意に識別する識別子であるセンサID602と、センサ値の状態をキーワードで特定するセンサ値状態キーワード603とから構成される。対策ID601には、対策マスタテーブルT2の対策ID401と同様の情報が格納される。センサID602には、センサ111を一意に識別する識別子として、例えば、「S001」の情報が格納される。センサ値状態キーワード603には、例えば、センサ111の計測値であるセンサ値の状態が、安定下限規定値よりも小さいことを示すキーワードとして、「Low」が格納される。すなわち、対策ID601の情報、センサID602の情報、及びセンサ値状態キーワード603の情報が、適切に紐づけられて、対策-センサ対応テーブルT4の各レコードに格納されている。この紐づけは多対多で構わない。なお、センサ値によらず、常に候補として出すべき対策、及び、関係するセンサが不明または未設置である対策については、対策ID601に対して、センサID602は値が空(Null)でもよい。また、センサID602に値(判定基準値)が格納されているレコードについては、センサ値に応じて、対策の必要性や対策の種類が変わるので、センサ値状態キーワード603に値(情報)が格納されている必要がある。
【0028】
(知識検索画面)
図7は、本発明の実施例1に係る表示装置の表示例を示す知識検索画面の構成図である。図7において、知識検索画面701は、表示装置19の表示画面であって、この表示画面には、指示入力部106から入力される情報及び結果出力部107から出力される情報が表示される。
【0029】
知識検索画面701は、不具合キーワード入力枠702、検索実行ボタン703、不具合テキスト表示欄704、対策候補表示欄705を有する。不具合キーワード入力枠702には、利用者の操作により、「圧入」と「変形」の文字列の文字列データ(検索情報)が製造不良対策情報検索システム101に入力された場合、不具合キーワードとして、「圧入 変形」の情報(キーワード情報)が表示される。検索実行ボタン703は、利用者が、製造不良対策情報検索システム101に対して、検索を開始させるための操作ボタンである。不具合テキスト表示欄704には、製造不良対策情報検索システム101の検索結果であって、不具合キーワード(「圧入 変形」)に対する不具合内容として、例えば、「圧入時変形」の情報(不具合内容情報)が表示される。対策候補表示欄705には、製造不良対策情報検索システム101の検索結果であって、不具合キーワード(「圧入 変形」)に対する対策候補の情報として、例えば、「切削寸法を是正する」、「設備技術者を呼ぶ」、「環境温度を是正する」の情報が表示される。この場合、「切削寸法を是正する」と「設備技術者を呼ぶ」は、第1対策候補情報として表示され、「環境温度を是正する」は、第2対策候補情報として表示される。
【0030】
(検索処理)
図8は、本発明の実施例1に係る対策候補抽出部の検索処理の一例を示すフローチャートである。図8において、製造不良対策情報検索システム101の対策候補抽出部103は、まず、製造不良対策情報検索システム101の起動時に、知識検索画面701のうち不具合キーワード入力枠702、不具合テキスト表示欄704、及び対策候補表示欄705の状態を空の状態で表示して待機する(ステップS101)。
【0031】
利用者により不具合キーワード入力枠702に任意の文字列データ(検索情報)が入力され、検索実行ボタン703がクリックされたことをトリガーに、対策候補抽出部103の対策候補第1抽出部104は、入力された文字列データを不具合キーワードとして受け付ける(ステップS102)。本実施例では、不具合キーワードとして「圧入 変形」という、2個の単語がスペースで区切られて並んだ文字列データが受け付けられた例をサンプルに説明する。
【0032】
次に、対策候補第1抽出部104は、入力された不具合キーワード(文字列データ)を基に不具合マスタテーブルT1を参照し、入力された不具合キーワードと、不具合マスタテーブルT1の不具合テキスト302に記録された情報とを単語ごとに比較し、単語ごとの文字列部分の一致比較により、不具合マスタテーブルT1から一致度の最も高いレコードを抽出し、そのレコードの不具合ID301の情報を取得する(ステップS103)。この時、抽出される不具合ID301の情報は複数あってもよいが、本実施例では、「圧入時変形」という不具合テキスト302の情報を含むレコード1件の不具合ID301の情報として「F001」が抽出される。
【0033】
次に、対策候補第1抽出部104は、ステップS103で抽出した不具合ID301の情報と不具合-対策対応テーブルT3の不具合ID501に記録された情報とを突き合わせることで、不具合-対策対応テーブルT3から、不具合ID501の情報として「F001」を含む対策ID502の情報を抽出し、さらに、抽出された対策ID502の情報と対策-センサ対応テーブルT4の対策ID601の情報とを突き合わせることで、対策-センサ対応テーブルT4から、センサID602の情報、センサ値状態キーワード603の情報を抽出し、抽出した情報をそれぞれ第1抽出群に属する第1抽出情報として一時的に保持する(ステップS104)。
【0034】
図9は、本発明の実施例1に係る対策候補第1抽出部により抽出された第1抽出情報の構成例を示す構成図である。図9において、第1抽出情報900は、不具合ID901、対策ID902、センサID903、及びセンサ値状態キーワード904から構成される。ステップS104で抽出された第1抽出情報900のレコードは、本実施例では、不具合ID901-対策ID902-センサID903-センサ値状態キーワード904の組合せとして、
「F001」-「A0001」-空-空、
「F001」-「A0002」-空-空、
「F001」-「A0101」-「S001」-「Low」、
「F001」-「A0102」-「S001」-「High」、
「F001」-「A0103」-「S001」-「Other Wrong」、
「F001」-「A0201」-「S002」-「Wrong」、
の6件が抽出される。
【0035】
次に、図8に戻り、対策候補抽出部103の対策候補第2抽出部105は、第1抽出情報900のレコード1行ずつについて、以下の処理を繰り返す(ステップS105)。
【0036】
まず、対策候補第2抽出部105は、第1抽出情報900の中に、センサID903の値(情報)が格納されているか否かを判定する(ステップS106)。対策候補第2抽出部105は、第1抽出情報900の中にセンサID903の値が格納されていれば、センサID903に記録された情報でセンサ111を特定し、特定したセンサ111に関して、センサモニタリング部108にセンサ値を問合わせてそのセンサ値の状態を、判定結果ワードとして取得する(ステップS108)。この判定結果ワードのデータは、センサ値状態キーワード904に記録された情報に相当する文字列データである。
【0037】
(センサ値状態判定処理)
ここで、図10及び図11を用いて、センサモニタリング部108の動作を説明する。
図10は、本発明の実施例1に係るセンサ値の状態を判定するルールの概念を示すグラフである。図10において、グラフの横軸は時間t、縦軸はセンサ値Xtである。横軸には、リセット時刻t1と、リセット時刻t1からの規定時間P1を示す時刻t3と、現在時刻t4から規定時間P2の時刻t2が設定されている。規定時間P1と規定時間P2の長さは同じに設定されている。縦軸には、センサ値Xtに対して、センサ値が安定状態にあるときの上限値として規定された安定上限規定値Us、センサ値が安定状態にあるときの下限値として規定された安定下限規定値Lsが設定される。このグラフには、サンプルとして、センサ値Xtの推移のA、B、C、Dの4つのパターンを示している。パターンAは、センサ値が不安定の状態であって、判定結果ワード「High」に対応したパターンであり、パターンBは、センサ値が不安定の状態であって、判定結果ワード「Other Wrong」に対応したパターンであり、パターンCは、センサ値が安定の状態であって、判定結果ワードが空(Null)に対応したパターンであり、パターンDは、センサ値が不安定の状態であって、判定結果ワード「Low」に対応したパターンである。
【0038】
センサ値状態判定部109には、状態判定の計算式と、規定時間及びセンサ値取得時間間隔があらかじめ記憶されている。
【0039】
図11は、本発明の実施例1に係るセンサモニタリング部のセンサ値状態判定処理の一例を示すフローチャートである。図11において、センサモニタリング部108は、まず起動時に、判定結果ワードの情報を空(Null)の状態として待機する(ステップS200~ステップS201)。
【0040】
センサモニタリング部108は、待機状態(ステップS201)では、モニタリング指示入力部114から利用者が入力するリセット命令の受付け、時間経過、及び対策候補抽出部103からの判定結果ワードの問合せの受付けをトリガーとして他のステップへ遷移する。
【0041】
(安定規定値計算)
待機状態(ステップS201)にてモニタリング指示入力部114からリセット命令の受付けがあった場合、センサモニタリング部108のセンサ値状態判定部109は、リセット時刻t1(図10)を記憶し(ステップS202)、現在時刻t4がリセット時刻t1から規定時間P1以内であるか否かを判定する(ステップS203)。現在時刻t4が規定時間以内であれば、センサ値状態判定部109は、センサ値取得部110からセンサ値Xtを取得し(ステップS204)、時間経過を待つ(ステップS205)。センサ値状態判定部109は、時間がセンサ値取得時間間隔を過ぎたことをトリガーに、ステップS203に戻り、ステップS203~ステップS205の処理を繰り返し、ステップS204では、センサ値Xtをセンサ値群の情報として蓄積する形で記憶する。
【0042】
ステップS203にて現在時刻t4がリセット時刻t1から規定時間P1を超えた場合、センサ値状態判定部109は、蓄積されたセンサ値群から状態判定の計算式により安定上限規定値Us、安定下限規定値Ls、安定規定標準偏差Ssを計算して記憶し(ステップS206)、その後、待機状態(ステップS201)に戻る。なお、ステップS206で用いる計算式は、本実施例では、センサ値群の平均値、最大値、最小値、標準偏差を使用して、安定上限規定値Us=平均値+(最大値-平均値)×1.1、安定下限規定値Ls=平均値-(平均値-最小値)×1.1、安定規定標準偏差Ss=標準偏差×1.5、とする。
【0043】
(モニタリング)
待機状態(ステップS201)にて時間がセンサ値取得時間間隔を過ぎた時は、センサ値状態判定部109は、センサ値取得部110からセンサ値Xtを取得し、センサ値群の情報として蓄積する形で記憶する(ステップS207)。これはステップS204と同様の処理であるが、図10に示すように、現在時刻t4を起点とした規定時間P2前の時刻t2以前のセンサ値は削除することで、常に現在時刻t4から規定時間以内のセンサ値群の情報が記憶されるようにする。
【0044】
次に、センサ値状態判定部109は、蓄積されたセンサ値群の標準偏差Stを計算する(ステップS208)。
【0045】
次に、センサ値状態判定部109は、以下の条件判定処理により、判定結果ワードを決定する(ステップS209~ステップS215)。
【0046】
センサ値状態判定部109は、センサ値Xtが安定上限規定値Usを超えていれば、判定結果ワード=「High」(ステップS209~ステップS210)、
センサ値Xtが安定下限規定値Ls未満であれば、判定結果ワード=「Low」(ステップS211~ステップS212)、
センサ値Xtが安定上限規定値Us以下かつ安定下限規定値Ls以上で、標準偏差Stが安定規定標準偏差Ssを超えていれば、判定結果ワード=「Other Wrong」(ステップS213~ステップS214)、
いずれの条件にも該当しなければ、判定結果ワード=空(Null)(ステップS215)に決定する。
【0047】
また、センサ値状態判定部109は、ステップS208にて標準偏差Stを正常に計算できなかった場合、ステップS214に遷移し、判定結果ワードを「Other Wrong」に決定する。
【0048】
次に、センサ値状態判定部109は、決定された判定結果ワードの情報をそれぞれ記憶し(ステップS216)、待機状態(ステップS201)に戻る。
【0049】
(判定結果ワードの出力)
待機状態(ステップS201)にて対策候補抽出部103からの判定結果ワードの問合せを受付けた時は、センサ値状態判定部109は、ステップS216で記憶した判定結果ワードの情報を対策候補抽出部103に出力し、待機状態(ステップS201)に戻る。
【0050】
(第2抽出)
ここで、図8に戻り、ステップS108の続きを説明する。
対策候補第2抽出部105は、ステップS108でセンサモニタリング部108から判定結果ワードの情報を取得したのち、判定結果ワードの情報と第1抽出情報900のセンサ値状態キーワード904に記録された情報との比較を行い、センサID903及び文字列が一致したレコードがあれば、そのレコードの不具合ID901と対策ID902の情報を第2抽出群の情報として蓄積する形で記録し(ステップS109)、ループの1回分を終え(ステップS110)、次のレコードの処理を繰り返す(ステップS105)。この際、対策候補第2抽出部105は、センサID903の情報が存在する場合、図9に示す第1抽出情報900の中から、判定結果ワードの情報と第1抽出情報900のセンサ値状態キーワード904に記録された情報とが一致する情報を絞り込んで抽出する。
【0051】
ステップS106にて、レコードの第1抽出情報900のセンサID903の値(情報)が空の場合、対策候補第2抽出部105は、そのレコードの不具合ID901の情報と対策ID902の情報を第2抽出群の情報として蓄積する形で記録し(ステップS107)、ループの1回分を終え(ステップS110)、次のレコードの処理を繰り返す(ステップS105)。
【0052】
全てのレコードのループが終了したら、対策候補第2抽出部105は、蓄積された第2抽出群の情報に属する対策ID902の情報と対策ID401の情報が一致する対策テキスト402の情報を、対策候補として対策マスタテーブルT2から抽出する(ステップS111)。この際、対策候補第2抽出部105は、センサID903の値(情報)が空の場合(ステップS106でNoの場合)、例えば、そのレコードの対策ID902(「A0001」、「A0002」)で特定される対策テキスト402の情報(「切削寸法を是正する」、「設備技術者を呼ぶ」)を、センサ111の計測対象外の事象に対するものであって、第1対策候補情報となる情報として不具合対策記憶部102から抽出することができる。また、対策候補第2抽出部105は、センサID903の値(情報)が有りの場合(ステップS106でYes場合)、例えば、そのレコードの対策ID902(「A0201」)で特定される対策テキスト402の情報(「環境温度を是正する」)を、センサ111の計測対象の事象に対するものであって、第2対策候補情報となる情報として不具合対策記憶部102から絞り込んで抽出することができる。
【0053】
(結果表示)
最後に、結果出力部107は、対策候補抽出部103の対策候補第2抽出部105からの情報を取り込み、ステップS111で抽出された対策候補の情報を知識検索画面701の対策候補表示欄705に表示する。ここで、前述したように、不具合ID501と対策ID502は多対多の関係で紐づけられているため、知識検索画面701の表示欄を不具合テキスト表示欄704と対策候補表示欄705とに分け、各表示欄にはそれぞれ重複した値を省いて表示する。
【0054】
(データ例による説明)
図12は、本発明の実施例1に係る対策候補第2抽出部により抽出された第2抽出情報の構成例を示す構成図である。図12において、第2抽出情報1200は、対策候補第2抽出部105により抽出された情報であって、不具合ID1201と、対策ID1202とから構成される。本実施例において、第2抽出情報1200の不具合ID1201と対策ID1202には、センサID「S001」、「S002」の両方のセンサ値が安定し、センサ値が、図10の中のパターンCの特性を示す場合、すなわち判定結果ワードとして空(Null)のデータが、センサ値取得部110によって取得された場合の情報が格納される。例えば、不具合ID1201の「F001」と、対策ID1202の「A0001」とを含むレコードと、不具合ID1201の「F001」と対策ID1202の「A0002」とを含むレコードは、センサID903の値が空(Null)と判定されたときに(ステップS106)、図9に示す第1抽出情報900の中から抽出された情報であって、ステップS107の処理により第2抽出群に属する情報として追加された情報で構成される。一方、図9に示す第1抽出情報900のうち対策ID902に「A0101」、「A0102」、「A0103」、「A0201」の情報が記録され、センサID903の情報が存在するレコードでも、これらのレコードの中には、ステップS109でセンサID903及びセンサ値状態キーワード904と判定結果ワードとの組み合わせが一致するレコードが存在しないと判定されたため、「A0101」、「A0102」、「A0103」、「A0201」の情報は、第2抽出群に属する情報として追加されなかった。
【0055】
図13は、本発明の実施例1に係る対策候補第2抽出部により抽出された第2抽出情報の他の構成例を示す構成図である。図13において、第2抽出情報1300は、対策候補第2抽出部105により抽出された情報であって、不具合ID1301と、対策ID1302とから構成される。本実施例において、第2抽出情報1300の不具合ID1301と対策ID1302には、センサID「S001」のセンサ値が不安定な状態であって、センサ値のばらつきが増大し、図10の中のパターンBの特性を示す場合、すなわち判定結果ワードとして、「Other Wrong」のデータが、センサ値取得部110によって取得された場合の情報が格納される。例えば、不具合ID1301の「F001」と、対策ID1302の「A0001」とを含むレコードと、不具合ID1301の「F001」と対策ID1302の「A0002」とを含むレコードは、センサID903の値が空(Null)と判定されたときに(ステップS106)、図9に示す第1抽出情報900の中から抽出された情報であって、ステップS107の処理により第2抽出群に属する情報として追加された情報で構成される。
【0056】
また、不具合ID1301の「F001」と対策ID1302の「A0103」の情報が記録されたレコードは、ステップS109で、図9に示す第1抽出情報900のセンサ値状態キーワード904の情報と判定結果ワードの情報とが一致したため、第2抽出情報1300に追加された情報で構成される。一方、図9に示す第1抽出情報900のうち、対策ID902に、「A0101」、「A0102」、「A0201」の情報が記録されたレコードは、この場合、ステップS109でセンサ値状態キーワード904の情報と判定結果ワードの情報とが一致しないため、第2抽出情報1300には追加されなかった。
【0057】
同様に、センサ値が、図10のパターンAの場合、すなわち、判定結果ワードとして、「High」が取得された場合、図9に示す第1抽出情報900のうち、対策ID902に、「A0102」が記録されたレコードであって、センサID903に、「S001」の情報が記録されたレコードの情報(不具合ID「F001」)が第2抽出情報1300に追加される。また、センサ値が、図10のパターンDの場合、すなわち、判定結果ワードとして、「Low」が取得された場合、図9に示す第1抽出情報900のうち、対策ID902に、「A0101」が記録されたレコードであって、センサID903に、「S001」の情報が記録されたレコードの情報(不具合ID「F001」)が第2抽出情報1300に追加される。
【0058】
センサID「S002」のセンサ値に対する判定結果ワードとして、「Wrong」が取得された場合、図9に示す第1抽出情報900のうち、対策ID902に、「A0201」が記録されたレコードであって、センサID903に、「S002」の情報が記録されたレコードの情報(不具合ID「F001」)が第2抽出情報1300に追加される。
【0059】
(実施例1まとめ)
本実施例において、各テーブルT1~T4の情報を纏めて、第1抽出情報900と同一構成のデータベースを不具合対策記憶部102に構築することができると共に、第1抽出情報900、第2抽出情報1200(または第2抽出情報1300)を不具合対策記憶部102に記録することができる。この際、不具合対策記憶部102は、製造品又は製造設備112のうち少なくとも一方の不具合を示す複数の不具合情報(不具合ID301、901)の各々に対する1以上の対策の候補を示す複数の対策候補情報(対策ID902、対策テキスト402)を、少なくともセンサ111の計測対象の事象に対するものか、或いはセンサ111の計測対象外の事象に対するものかを判別する判別情報(センサID903、センサ値状態キーワード904)に関連付けて記憶するデータベースとして構成される。
【0060】
対策候補抽出部103は、指示入力部106から入力された検索情報(キーワード「圧入 変形」)を基にデータベース(不具合対策記憶部102)を検索する検索部として構成される。この際、対策候補抽出部103は、複数の対策候補情報の中から、センサ111の計測対象外の事象に属し且つ検索情報で特定される不具合に対する対策の候補を示す第1対策候補情報(「A0001」、「A0002」)に該当するものがあれば1以上抽出すると共に、センサ111の計測対象の事象に属し且つ検索情報で特定される不具合に対する対策の候補であって、一定の条件を満たす第2対策候補情報(「A0103」)に該当するものがあれば1以上抽出し、抽出された第1対策候補情報と第2対策候補情報を検索情報に対する検索結果として検索結果出力部(結果出力部107)に転送する。これにより、複数の対策候補情報(対策ID902)の中から、第1対策候補情報と第2対策候補情報とを判別して抽出することができる。
【0061】
また、対策候補抽出部103は、検索情報を基にデータベース(不具合対策記憶部102)を検索した際に、複数の対策候補情報(対策ID902、対策テキスト402)の中から、センサ識別子(判別情報に属し、センサ111を識別するセンサID902)が設定されていない対策候補情報(「A0001」、「A0002」)を第1対策候補情報として抽出し、複数の対策候補情報のうちセンサ識別子(センサID902)が設定された対策候補情報(「A0101」、「A0102」、「A0103」、「A0201」)を複数の第2対策候補情報として特定する。これにより、複数の対策候補情報(対策ID902)の中から、第1対策候補情報を正確に抽出し、複数の対策候補情報(対策ID902)のうち複数の第2対策候補情報を正確に特定することができる。
【0062】
また、対策候補抽出部103は、一定の条件を満たす第2対策候補情報を抽出する場合、複数の第2対策候補情報(対策ID902)の各々に属する対策に対応して規定された判定基準値(センサ値状態キーワード904)と、センサ値取得部110により取得されたセンサ値にもとづきセンサ状態判定部109が判定し出力するセンサ状態値(判定結果ワード)とを突き合わせることでセンサ値が安定であるか否かを判定し、センサ値が安定であると判定された第2対策候補情報(「A0101」、「A0102」、「A0103」)を一定の条件から外れた第2対策候補情報として除外し、センサ値が不安定であると判定された第2対策情報情報(「A0201」)を一定の条件を満たす第2対策候補情報として抽出する。これにより、対策候補抽出部103は、複数の第2対策候補情報(対策ID902)の中から、一定の条件を満たす第2対策候補情報を絞り込んで抽出することができる。この際、対策候補抽出部103は、センサ状態値(判定結果ワード)と判定基準値(センサ値状態キーワード904)とを比較する際に、各センサ111を特定するセンサ識別子(センサID903)をキーに、判定基準値(センサ値状態キーワード904)とセンサ状態値とが一致するか否かを判定することができる。
【0063】
本実施例によれば、製造品又は製造設備の不具合に対する複数の対策候補の中から、製造品又は製造設備を計測対象とするセンサの計測対象の事象に対するものと計測対象外の事象に対するものとを判別して抽出することができる。
【0064】
また、本実施例によれば、センサ値の異常検知基準値が未だ不明確な、生産立ち上げの初期段階からでも、知識データベースとセンサ値との組合せにより、複数の対策候補の中から漏れなくかつ無駄のない適切な対策候補を、製造現場へ提供することができ、結果として、対策候補に対する無駄な確認作業を減らし、設備停止時間を減らすことが可能になる。さらに、本実施例によれば、知識情報のデータベースシステムを運用しながら、提示される対策候補について、未計測のものに関してセンサの新規設置の検討を始めることで、確実に効果が得られるセンサを選定し、無駄なコストを防ぐことが可能になる。また、製造不良対策情報検索システム101の構成を、試験体を切り取った後に変形評価を行う造形装置に適用した場合、造形装置の連続使用が可能になる。
【0065】
なお、図7の知識検索画面701の対策候補表示欄705に表示される対策候補の情報は、センサモニタリング部108がセンサ111のセンサ値に基づいた判定結果ワードを対策候補抽出部103に返信することを条件に、対策候補抽出部103において生成される。
【0066】
この際、センサモニタリング部108がセンサ111のセンサ値に基づいた判定結果ワードを対策候補抽出部103に返信することを条件に、対策候補抽出部103で対策候補の情報を生成する処理を採用するのであれば、センサ状態判定処理は、本実施例以外のルールと処理フローによってもかまわない。また、実際は、1つ1つの製造設備112aによって使用するセンサ111の種類や感度は異なるため、異なったルールと処理フローを組み込むことが望ましい。
【実施例0067】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図14は、本発明の実施例2に係る製造不良対策情報検索システムの構成例を示す構成図である。第2の実施例では、図14に示すように、第1の実施例の製造不良対策情報検索システム101に、さらに、製造設備112aとは異なる製造設備112bからエラーコードを取得するエラーコード取得部201が追加されている。なお、他の構成は、実施例1と同様である。また、製造設備112bと製造設備112aとが同一の設備でもよい。
【0068】
ここで製造設備112bが出力するエラーコードは、製造設備112b独自のものとして定められることの多い文字列データである。エラーコードの意味には、製造品の品質が不合格であった時の品質不良の種類のほか、製造設備112bの故障、部品劣化、プロセス未遂など製造プロセスそのものの不具合の種類がある。
【0069】
エラーコード取得部201は、製造品又は製造設備112bから少なくとも一方の不具合の種類を含む1以上のエラーコードをエラーコード情報として取得し、取得したエラーコード情報を対策候補抽出部103に出力する。すなわちエラーコード取得部201は、製造設備112bがエラーコードを出力した時、そのエラーコードを受信し、受信したエラーコードを対策候補抽出部103へ送信する。
【0070】
また、本実施例では、不具合対策記憶部102に、実施例1で格納していたテーブルT1~T4のほかに、図15に示すようなエラーコード-不具合対応テーブルT5を格納している。図15は、本発明の実施例2に係るエラーコード-不具合対応テーブルの構成例を示す構成図である。図15において、エラーコード-不具合対応テーブルT5は、エラーコードを一意に識別する識別子であるエラーコード1501と不具合を一意に識別する識別子である不具合ID1502とから構成される。エラーコード1501には、エラーコードを一意に識別する文字列データとして、例えば、「E01」の情報が格納される。不具合ID1502には、重複無しキーとして、例えば、「F001」の情報が格納される。エラーコード-不具合対応テーブルT5には、エラーコード1501と不具合ID1502とが、適切に紐づけられたレコードの情報が格納されている。この紐づけは多対多で構わない。この際、不具合対策記憶部102には、エラーコード情報に属するエラーコードの各々と複数の不具合情報の各々とが対応づけて記録される。
【0071】
図16は、本発明の実施例2に係る対策候補抽出部の検索処理の一例を示すフローチャートである。実施例2の処理フローが実施例1と異なる点は、図16に示すように、待機状態がエラーコードの受付待ちになっている点(ステップS121)と、エラーコードを受付ける点(ステップS122)、エラーコードに基づき不具合ID1502の情報を抽出する点(ステップS123)である。ここでは、対策候補抽出部103とエラーコード取得部201との間の処理として、ステップS121、ステップS122、ステップS123について説明する。
【0072】
まず、待機状態(ステップS121)でエラーコード取得部201からエラーコードが発報されたことをトリガーに、対策候補抽出部103の対策候補第1抽出部104は、エラーコード取得部201からのエラーコードを受け付ける(ステップS122)。実施例2では、エラーコードとして「E02」という文字列データが受け付けられた例をサンプルに説明する。
【0073】
次に、対策候補第1抽出部104は、受け付けたエラーコード(「E02」)とエラーコード-不具合対応テーブルT5のエラーコード1501の情報との、文字列一致比較により、エラーコード-不具合対応テーブルT5から一致度の最も高いレコードを抽出し、そのレコードの不具合ID1502の情報を取得する(ステップS123)。実施例2のサンプルでは、エラーコード(「E02」)に対して、2件の不具合ID1502の情報として、「F001」、「F002」が抽出される。この際、対策候補第1抽出部104は、エラーコード取得部201からエラーコードを含むエラーコード情報を受信した場合、受信したエラーコード情報を基に不具合対策記憶部(データベース)102を検索し、複数の不具合情報の中から、受信したエラーコード情報に属するエラーコードに対応した不具合情報を抽出する。
【0074】
以降の処理(ステップS104~ステップS112)は、実施例1の処理と同様である。
【0075】
図17は、本発明の実施例2に係る表示装置の表示例を示す知識検索画面の構成図である。図17において、知識検索画面701は、表示装置19の表示画面であって、この表示画面には、指示入力部106から入力される情報及び結果出力部107から出力される情報が表示される。
【0076】
本実施例における知識検索画面701は、エラーコード表示欄711、不具合テキスト表示欄704、対策候補表示欄705を有する。エラーコード表示欄711には、対策候補抽出部103がエラーコード取得部201から受信したエラーコードの内容として、「E02」の情報が表示される。不具合テキスト表示欄704には、製造不良対策情報検索システム101の検索結果であって、エラーコードに対する不具合内容として、例えば、「圧入時変形 プロセス中断」の情報が表示される。対策候補表示欄705には、製造不良対策情報検索システム101の検索結果であって、エラーコードに対する対策候補として、例えば、「切削寸法を是正する」、「設備技術者を呼ぶ」、「環境温度を是正する」、「設備プログラムをリセットする」の情報が表示される。この際、エラーコードと不具合ID1502、不具合ID501と対策ID502はそれぞれ多対多の関係で紐づけられているため、エラーコード表示欄711、不具合テキスト表示欄704、対策候補表示欄705には、それぞれ独立した欄の情報として、重複した値(情報)が省略された状態で表示される。
【0077】
本実施例によれば、発生した不具合に対して人依存となる検索キーワードの手入力を行うことなく、複数の対策候補の中から、エラーコードに対応した対策候補を自動で抽出して表示することができる。
【0078】
以上、本発明について実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施例の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、又は置換をすることができる。
【0079】
また、上述の各実施例は、単独で実施してもよいし、一部、又は全部を組み合わせて実施しても構わない。
【符号の説明】
【0080】
101・・・製造不良対策情報検索システム、102・・・不具合対策記憶部、103・・・対策候補抽出部、104・・・対策候補第1抽出部、105・・・対策候補第2抽出部、106・・・指示入力部、107・・・結果出力部、108・・・センサモニタリング部、109・・・センサ値状態判定部、110・・・センサ値取得部、111・・・センサ、112a、112b・・・製造設備
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