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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018570
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】シート部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220120BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121770
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000104906
【氏名又は名称】クラレプラスチックス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴大
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓志
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE01Y
4J002AE03Z
4J002AE05Y
4J002BB03X
4J002BB05X
4J002BB12X
4J002BB14X
4J002BB15X
4J002BB18Y
4J002BG02Z
4J002BP01W
4J002CP03Z
4J002EG017
4J002EH007
4J002EH096
4J002EH146
4J002EP017
4J002FD026
4J002FD02Y
4J002FD177
4J002FD17Z
4J002GC00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 表面ベタツキ性が低く、シート成形時のブツの発生が少ないことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を含むシート部材を提供する。
【解決手段】 分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上1.5以下であることを特徴とするリビングアニオン共重合体(A)100質量部に対して、
(1)熱可塑性樹脂(B)1~180質量部、
(2)軟化剤(C)0~300質量部
ならびに、
(3)前記(A)、(B)、(C)の合計を100質量部とした場合に、滑剤(D)を0.01~12質量部含有する熱可塑性重合体組成物(E)
を含むシート部材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上1.5以下であることを特徴とするリビングアニオン共重合体(A)100質量部に対して、
(1)熱可塑性樹脂(B)1~180質量部、
(2)軟化剤(C)0~300質量部
ならびに、
(3)前記(A)、(B)、(C)の合計を100質量部とした場合に、滑剤(D)を0.01~12質量部含有する熱可塑性重合体組成物(E)
を含むシート部材。
【請求項2】
滑剤(D)のGPC法で測定された重量平均分子量が500~650の範囲である、請求項1に記載のシート部材。
【請求項3】
滑剤(D)の溶解度パラメーター(SP値:Fedors法)が18~22cm3/molの範囲である、請求項1または2に記載のシート部材。
【請求項4】
滑剤(D)が、脂肪酸アマイドである、請求項1~3のいずれかに記載のシート部材。
【請求項5】
熱可塑性樹脂組成物(E)を厚さ2mmに成形し、JIS K 7215に則って硬度を測定した際のデュロメータA硬度が90以下である、請求項1~4のいずれかに記載のシート部材。
【請求項6】
熱可塑性重合体組成物(E)からなる層(F)を少なくとも1層含む積層構造であり、層(F)と隣り合う層(G)を有する、請求項1~5のいずれかに記載のシート部材。
【請求項7】
前記層(F)と層(G)が、((G)-(F)-(G))の3層構造である、請求項6に記載のシート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物を含むシート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドレープ性を有するシート部材には、一般に柔軟性を有する材料が使用される。柔軟性を有する材料としては、合成ゴム、軟質塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。この中でも熱可塑性エラストマーは、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様に成形加工が可能であることから、自動車部品、家電製品部品、日用品、雑貨などの広い分野にて、加硫ゴム代替、軟質塩化ビニル代替などとして使用されている。
例えば、特許文献1には、数平均分子量5万~15万のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系共重合体、可塑剤からなる熱可塑性エラストマー組成物が記載されており、柔軟性、力学強度及びゴム弾性に優れた組成物を提供している。
一方、特許文献2には、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックと共役ジエン単位を主体とする重合体ブロックとを有するブロック共重合体、ポリオレフィン系樹脂からなる透明性、低温特性及び成形性に優れた樹脂組成物及びそれからなるシート状成形体が記載されている。
【0003】
これらの特許文献に示されているように、スチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系樹脂、場合により可塑剤を含有する熱可塑性樹脂組成物が力学的、透明性、低温特性及び成形性に優れた性質を持つことは公知である。
【0004】
しかしながら、従来公知のスチレン系熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性樹脂組成物はその配合割合により、組成物表面にベタツキを生じるという不都合がある。表面ベタツキの低減方法としては、組成物の配合割合の変更以外に、滑剤の添加を行うことが知られている。しかしながら、滑剤はその添加量を調整しなければ、表面ベタツキを十分低減することが出来ず、また過剰に添加した場合に組成物表面にブリード/ブルームアウトするという不都合を示すことがある。
【0005】
また、熱可塑性樹脂組成物をシート状に成形する際に組成物の分子量分布が広く、低分子量成分を多く含む場合、ブツやブリード/ブルームが発生しやすいという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-316287号公報
【特許文献2】特開2010-106200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上より、本発明の課題は、表面ベタツキ性が低く、シート成形時のブツの発生が少ないことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を含むシート部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記の課題は、分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上1.5以下であることを特徴とするリビングアニオン共重合体、熱可塑性樹脂、軟化剤、滑剤を所定の割合で含有する熱可塑性重合体組成物を含むシート部材を提供することによって解決される。
【0009】
すなわち本発明は、分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上1.5以下であることを特徴とするリビングアニオン共重合体(A)100質量部に対して、
(1)熱可塑性樹脂(B)1~180質量部、
(2)軟化剤(C)0~300質量部
ならびに、
(3)前記(A)、(B)、(C)の合計を100質量部とした場合に、滑剤(D)を0.01~12質量部含有する熱可塑性重合体組成物(E)
を含むシート部材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面ベタツキ性が低く、シート成形時のブツの発生が少ない熱可塑性樹脂組成物を含むシート部材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<リビングアニオン共重合体(A)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材においては(A)成分として、リビングアニオン共重合体が用いられる。本発明においてリビングアニオン共重合体とはリビングアニオン重合で得られた共重合体のことを指し、リビングアニオン共重合体は縮合及び重付加等の重合方法によって得られた共重合体に比べて分子量分布が狭いためシート成形時のブツ、ブリード/ブルームが少なくなるという利点を有する。リビングアニオン共重合体の分子量分布は具体的には、分子量分布が1.0以上1.5以下であることが必要であり、好ましくは1.0以上1.3以下であり、より好ましくは1.0以上1.2以下であるものが好ましい。
【0012】
共重合体(A)としてはリビングアニオン重合で得られたものであれば種々の構造を用いることが出来るが、その中でも、少なくとも1つの硬質重合体ブロック(a-1)と少なくとも1つの軟質重合体ブロック(a-2)を有するブロック共重合体であり、軟質重合体ブロック(a-2)のガラス転移温度Tgが-20℃以下であり、前記共重合体(A)中の硬質重合体ブロック(a-1)の含有量が10~40質量%であるものが好ましい。共重合体(A)は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。共重合体(A)の前記硬質重合体ブロック(a-1)が、芳香族ビニル系単量体由来の構造単位を主体とする重合体ブロックであるものを用いる場合、重量平均分子量が1,000~35,000であり、軟質重合体ブロック(a-2)が、共役ジエン単量体またはイソブチレン単量体由来の構造単位を主体とする水添系重合体ブロックで、且つ、重量平均分子量が25,000~330,000であり、前記共重合体(A)に((a-1)-(a-2))構造を少なくとも1つ含むものが好ましく、更に共重合体(A)が、((a-1)-(a-2)-(a-1))構造を有するトリブロック共重合体であるものがより好ましい。
【0013】
共重合体(A)として前記の硬質重合体ブロック(a-1)が、芳香族ビニル系単量体由来の構造単位を主体とする重合体ブロックで、且つ、重量平均分子量が1,000~35,000であり、前記軟質重合体ブロック(a-2)が、共役ジエン単量体またはイソブチレン単量体由来の構造単位を主体とする水添系重合体ブロックで、且つ、重量平均分子量が25,000~330,000であり、前記共重合体(A)に((a-1)-(a-2))構造を少なくとも1つ含むものを用いる場合、(A)共重合体を構成する芳香族ビニル系単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。芳香族ビニル系単量体は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。これらの芳香族ビニル系単量体の中でも、スチレン又はα-メチルスチレンを用いることが好ましい。
【0014】
また、共重合体(A)を構成する共役ジエン単量体またはイソブチレン単量体由来の構造単位としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、イソブチレンなどが挙げられる。共役ジエン単量体またはイソブチレン単量体は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。これらの中でも、ブタジエン、イソプレン、ブタジエンとイソプレンの混合物、またはイソブチレンを用いることが好ましい。
【0015】
前記ブロック共重合体における芳香族ビニル系単量体由来の構造単位を主体とする重合体ブロックの含有量は、10~40質量%の範囲のものが望ましい。また、ブロック共重合体の重量平均分子量は1万以上50万未満が好ましく、2万以上30万未満がより好ましく、2万5000以上20万未満がさらに好ましい。重量平均分子量が1万未満であると組成物の力学的強度が低下し、成形が困難となるという不都合が生じ、重量平均分子量が50万以上であると、成形時の表面不良が発生し、シート成形性に劣るという不都合が生じる。
また、共重合体(A)において、芳香族ビニル系単量体を主体とする重合体ブロックの含有割合、及びビニル結合量、及び重量平均分子量等種々の組成が異なるものを2種類以上併用することもできる。
【0016】
<熱可塑性樹脂(B)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材には、該組成物の加工性の向上等を目的とし、(B)成分として熱可塑性樹脂を配合している。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、各種TPE等、特に制限なく用いることが出来るが、その中でもオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0017】
熱可塑性樹脂(B)としてオレフィン系樹脂を用いる場合、プロピレン単独重合体、エチレン単独重合体、プロピレン及びエチレンのブロック又はランダム共重合体、プロピレン又は/及びエチレンとα-オレフィンとのブロック又はランダム共重合体等が挙げられる。上記α-オレフィンとしては、例えば1-ブテン、1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン等が挙げられ、これらの一種類又は二種類以上を用いることができる。上記ポリオレフィン系樹脂の中でも、成形性、透明性等の観点からポリプロピレン系樹脂を配合することが好ましい。更に、ランダムポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。(B)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して1~180質量部であることが必要であり、好ましくは5~150質量部、さらに好ましくは10~100質量部である。配合量が1質量部未満であるとシート部材の加工性が悪化するという不都合を生じ、180質量部を超えるとシート部材の硬度が高くなりすぎるという不都合を生じるため好ましくない。熱可塑性樹脂(B)は1 種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
<軟化剤(C)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材においては、該組成物の低硬度化目的で、(C)成分として軟化剤を配合している。軟化剤としては、例えばフタル酸エステル、アジピン酸エステル等のエステル類、各種ゴム用軟化剤等、特に制限なく用いることが出来る。
【0019】
軟化剤(C)としてゴム用軟化剤を用いる場合、植物油系,合成系などの各種非芳香族系ゴム用軟化剤の中から適宜選択することができる。ここで、鉱物油系としては、ナフテン系,パラフィン系などのプロセス油が挙げられ、植物油系としては、ひまし油,綿実油,あまに油,なたね油,大豆油,パーム油,梛子油,落花生油,木ろう,パインオイル,オリーブ油などが挙げられる。なかでも、特に鉱物油系のパラフィン系オイル,ナフテン系オイル又は合成系のポリイソブチレン系オイルから一種類又は二種類以上を選択し使用することが望ましい。さらに40℃における動粘度が20cSt以上100cSt未満である非芳香族系ゴム用軟化剤を使用することが、シート部材の表面ベタツキ性の観点から好ましい。この動粘度が100cSt以上の非芳香族ゴム用軟化剤を使用すると、シート部材の表面にベタツキが生じるという不都合を生じるため好ましくない。
【0020】
軟化剤(C)の配合量は共重合体(A)100質量部に対して、0~300質量部であることが必要であり、好ましくは0~200質量部であり、より好ましくは0~150質量部である。この配合量が300質量部を超えると溶融時の流動性が過剰に高くなることによって成形が困難になるという不都合と軟化剤がブリード/ブルームアウトしやすくなるという不都合を生じるため好ましくない。軟化剤(C)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
<滑剤(D)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材には、該組成物の表面ベタツキ性の低減を図るため、(D)成分として滑剤を配合している。滑剤としてはワックス、金属せっけん、エステル、シリコーンオイル、脂肪酸アマイド等が挙げられる。滑剤としてはシート部材表面の平滑性の発現とブリード/ブルーム性の観点から、GPC法で測定された重量平均分子量が500~650の範囲であるものが好ましく、550~630の範囲である物がより好ましく、550~600の範囲である物が更に好ましい。また、同じくシート部材表面の平滑性の発現とブリード/ブルーム性の観点から、この滑剤のFedors法にて推算された溶解度パラメーター(SP値)が18~22cm3/molの範囲であるものが好ましく、18~21cm3/molの範囲であるものがより好ましく、18~20cm3/molの範囲であるものが更に好ましい。滑剤の種類としては脂肪酸アマイドであるものが特に好ましい。
【0022】
滑剤(D)の配合量は共重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、軟化剤(C)の合計を100質量部とした場合に、0.01~12質量部であることが必要であり、好ましくは0.2~10質量部であり、さらに好ましくは0.3~5質量部である。この滑剤(D)の配合量が0質量部である、つまりこの滑剤(D)を含有しない場合、シート部材の表面にベタツキが生じ取り扱いが難しくなるという不都合が生じ、配合量が12質量部を上回る場合、シート成形時の樹脂流動性が高くなる、吐出量が不安定になる等の現象により成形が困難になるという不都合、若しくはブリード/ブルームが生じるという不都合があるため好ましくない。滑剤(D)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
<その他樹脂、エラストマー>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材は、その性能を損なわない範囲で、ポリマーを含有していてもよい。ポリマーは例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のアセタール系樹脂、ポリメチルメタアクリレート系樹脂等のアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0024】
<その他添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材は、その性能を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加材を含有することができる。添加剤は例えば、難燃剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、加工助剤、着色剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材は、厚さ2mmに成形し、JIS K 7215に則って荷重をかけて3秒後に硬度を測定した際のデュロメータA硬度は90以下であることが好ましく、85以下であることがより好ましい。このデュロメータA硬度が90より大きいと、シート部材の硬度が固くなりすぎ、ドレープ性が低下するという不都合を生じるため好ましくない。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材は該熱可塑性樹脂組成物からなる層(F)を少なくとも1層含む積層構造とすることが可能であり、層(F)と隣り合う層を層(G)とした場合、シート部材表面性の観点から、該積層構造が((G)-(F)-(G))の3層構造である積層構造であることが好ましい。層(G)としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)などのオレフィン系重合体;ポリエステルエラストマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系重合体;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12などのポリアミド系樹脂;ポリアクリル酸メチルやポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;スチレン・ブタジエン共重合体ゴム、スチレン・イソプレン共重合体ゴムなどのスチレン系エラストマーおよびその水素添加物またはその変性物;天然ゴム;合成イソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴムおよびその水素添加物または変性物;クロロプレンゴム;アクリルゴム;ブチルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;フッ素ゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴム;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;軟質塩化ビニル樹脂等の任意の樹脂から選択することが出来る。
【0027】
本発明のシート部材に含まれる熱可塑性樹脂組成物(E)を製造する方法としては、従来公知の方法が特に制限なく用いられるが、より均質な組成物を得るためには、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダー等の混練機を用いて各構成成分を加熱溶融状態で混錬することが好ましい。また、溶融混練する前に、各構成成分をミキサー、タンブラー等の混合機を用いて予めブレンドし、混合物を溶融混練することにより均質な熱可塑性樹脂組成物を得ることもできる。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)は、例えば、押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、カレンダー成形等の従来公知の方法を用いてシート状部材に加工することができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)は、二色成形法、インサート成形法、共押出等の従来公知の方法を用いて、他材料と積層化してなる積層構造体とすることもできる。
【0029】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材は特に用途を制限せずに用いることができる。例えば、各種衣料類の包装、各種食品の包装、日用雑貨包装、工業資材包装、各種ゴム製品、樹脂製品、皮革製品等のラミネート、紙おむつ等に用いられる伸縮テープ、ダイシングフィルム等の工業用品、建材や鋼板の保護に用いられるプロテクトフィルム、粘着フィルムの基材、食肉鮮魚用トレー、青果物パック、冷凍食品容器等のシート用品、テレビ、ステレオ、掃除機等の家電用品用途、バンパー部品、ボディーパネル、サイドシールなどの自動車内外装部品用途、道路舗装材、防水、遮水シート、遮蔽シート、土木パッキン、日用品、レジャー用品、玩具、工業用品、ファニチャー用品、筆記用具、透明ポケット、ホルダー、ファイル背表紙等の文具、医療用具等の幅広い用途に好適に用いることができる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において、熱可塑性樹脂組成物(E)を含むシート部材の各種物性は、以下の方法で測定または評価した。
【0031】
<成形性>
組成物を単軸押出機にて溶融混錬しテープ状に押出し、一定速度で引き取った際に問題なく表面にブツ等のない押出テープ状の成形品が得られたものを○、溶融粘度が低く一定速度で引き取ることができなかった、ブツが発生し表面性が悪化した等の種々の不具合が発生したものを×と評価した。
【0032】
<表面ベタツキ性>
射出成型機によって直径120mm、厚さ2mmの円盤状に成型した該組成物を幅24mmの帯状にカットしたものの平滑面同士で貼り合わせ、2kg圧着ローラーにて速度10mm/sで2往復圧力をかけたのち、人力によって剥離させた際の抵抗感を1~5の5段階評価とし、5が最も抵抗感が弱く、1が最も抵抗感が強いとし、評価が3以上であるものを充分な表面ベタツキ性を有するとして評価した。
【0033】
<硬度>
射出成型機によって直径120mm、厚さ2mmの円盤状に成型した該組成物をJIS K 7215に則ってデュロメータA硬度計を用いて荷重をかけてから3秒後の硬度を測定した。
【0034】
<実施例1~8および比較例1~6>
表1、2に示す配合に従って二軸押出機を用いて、各構成成分を190℃で溶融混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物(E)を得た。得られたペレットをシリンダー温度230℃、金型温度40℃に設定した射出成型機により成型して厚さ2mmのシートを作製した。得られたシートを用いて、前記の方法に従って物性の評価を行った。結果を表1、2に併せて示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
<共重合体(A)>
(1)共重合体1:リビングアニオン重合により合成された、Mw/Mn=1.0、硬質重合体ブロック含有量30質量%、重量平均分子量9万のスチレン系ブロック共重合体の水素添加物
(2)共重合体2:リビングアニオン重合により合成された、Mw/Mn=1.1、硬質重合体ブロック含有量20質量%、重量平均分子量11万のスチレン系ブロック共重合体の水素添加物
(3)共重合体3:重付加により合成された、Mw/Mn=2.1、重量平均分子量21万の熱可塑性ポリウレタン
【0038】
<熱可塑性樹脂(B)>
(1)熱可塑性樹脂1:230℃・荷重2.16kgでのMFRが1.2であるランダムポリプロピレン
【0039】
<軟化剤(C)>
(1)軟化剤1:40℃における動粘度が47cStであるパラフィン系プロセスオイル
【0040】
<滑剤(D)>
(1)滑剤1:溶解度パラメーター(SP値:Fedors法)が18.3、重量平均分子量が589である脂肪酸アマイド
(2)滑剤2:重量平均分子量が5850であるシリコーンオイル
(3)滑剤3:重量平均分子量が19万であるアクリル系高分子滑剤
【0041】
以上の結果より、実施例1~8で得られた熱可塑性樹脂組成物は良好な成形性と表面性を有し、デュロメータA硬度が90以下となった。
一方で、熱可塑性樹脂(B)を含有しない比較例1では溶融時の粘度が低く、引取が安定しないため成形性が悪化した。
熱可塑性樹脂(B)を過剰に含有する比較例2はデュロメータA硬度が96Aと高く、ドレープ性が低下した。
軟化剤(C)を過剰に含有する比較例3は溶融時の粘度が低く、成形が困難であった。
滑剤(D)を含有しない比較例4は、表面性ベタツキ性で不合格となり、滑剤(D)を過剰に含有する比較例5は成形時の吐出量が安定せず成形が困難となった。
重付加により合成され、Mw/Mn=2.1である共重合体3を用いた比較例6では、成形時のブツが多く、成形性が悪化した。