(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185709
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】搬送加熱装置及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
F27B 9/40 20060101AFI20221208BHJP
F27B 9/02 20060101ALI20221208BHJP
F27B 9/10 20060101ALI20221208BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20221208BHJP
B23K 1/015 20060101ALI20221208BHJP
B23K 1/008 20060101ALI20221208BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
F27B9/40
F27B9/02
F27B9/10
F27D19/00 A
B23K1/015 D
B23K1/008 C
H05K3/34 507K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093491
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】志田 淳
(72)【発明者】
【氏名】釜石 路明
【テーマコード(参考)】
4K050
4K056
5E319
【Fターム(参考)】
4K050AA01
4K050BA17
4K050CA13
4K050CC08
4K050CD17
4K050CD22
4K050CG08
4K050EA05
4K050EA08
4K056AA09
4K056BA02
4K056BB10
4K056CA18
4K056FA02
4K056FA13
5E319BB05
5E319CC36
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】品種切り替え時に炉体の温度を短時間で下げることができる、搬送加熱装置を提供する。
【解決手段】連結された複数の炉体と、炉体にそれぞれ設けられた送風機及び加熱部と、 炉体内で被加熱物を搬送する搬送手段と、炉体にそれぞれ設けられた気体導入部及び気体導出部と、気体導入部及び気体導出部と連結された共通の配管と、送風機のモータをそれぞれ制御するインバータと、インバータをそれぞれ制御する制御装置とを備え、制御装置は、品種切り替え時に、インバータを通じてモータの回転数を制御して設定温度に比して実際の温度が高い炉体の温度を低下させるようにした搬送加熱装置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結された複数の炉体と、
前記炉体にそれぞれ設けられた送風機及び加熱部と、
前記炉体内で被加熱物を搬送する搬送手段と、
前記炉体にそれぞれ設けられた気体導入部及び気体導出部と、
前記気体導入部及び前記気体導出部と連結された共通の配管と、
前記送風機のモータをそれぞれ制御するインバータと、
前記インバータをそれぞれ制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、品種切り替え時に、前記インバータを通じて前記モータの回転数を制御して設定温度に比して実際の温度が高い炉体の温度を低下させるようにした搬送加熱装置。
【請求項2】
複数の前記炉体内の温度をそれぞれ検出する温度検出器を有し、前記温度検出器により検出された温度情報が前記制御装置に供給される請求項1に記載の搬送加熱装置。
【請求項3】
前記制御装置によって、
前記温度情報を使用して温度を低下させる第1の炉体と、前記第1の炉体より炉内温度が低温の第2の炉体を検出し、
前記第1の炉体の前記モータの回転数を低下させ、前記第1の炉体より炉内温度が低温の第2の炉体の前記モータの回転数を高め、
前記第2の炉体から前記第1の炉体に対して前記配管を通じて雰囲気を流すようにした請求項2に記載の搬送加熱装置。
【請求項4】
前記制御装置は、リフローゾーンに含まれる前記複数の炉体の温度が設定温度に対して所定の範囲となるように、請求項3に記載の処理を繰り返す制御を行う請求項3に記載の搬送加熱装置。
【請求項5】
前記制御装置は、温度を低下させる目標の第1の炉体の前記モータの回転数を一番低い回転数に設定し、前記第1の炉体より炉内温度が低温の第2の炉体の前記モータの回転数を一番高い回転数に設定する制御を行う請求項1から4のいずれかに記載の搬送加熱装置。
【請求項6】
連結された複数の炉体と、前記炉体にそれぞれ設けられた送風機及び加熱部と、前記炉体内で被加熱物を搬送する搬送手段と、前記炉体にそれぞれ設けられた気体導入部及び気体導出部と、前記気体導入部及び前記気体導出部と連結された共通の配管と、前記送風機のモータをそれぞれ制御するインバータと、前記インバータをそれぞれ制御する制御装置とを備える搬送加熱装置の温度制御方法であって、
前記制御装置によって、品種切り替え時に、前記インバータを通じて前記モータの回転数を制御して設定温度に比して高い温度の炉体の温度を低下させる温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリフロー装置に適用される搬送加熱装置及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品又はプリント配線基板に対して、予めはんだ組成物を供給しておき、リフロー炉の中に基板を搬送コンベヤで搬送するリフロー装置が使用されている。リフロー装置の加熱ゾーンでは、熱風が基板に対して吹きつけられることによって、はんだ組成物内のはんだを溶融させて基板の電極と電子部品とがはんだ付けされる。リフロー装置では、被加熱物例えば基板の表面温度を所望の温度プロファイルにしたがって制御することによって、所望のはんだ付けを行うことができる。生産条件を変更した場合、例えば使用するはんだ合金組成の種類を変更した場合に、変更後のはんだ合金組成に対応した温度プロファイルを設定するため短時間で炉内の温度を低下させることが作業性の向上のために要請される。
【0003】
リフロー装置の炉内の温度を低下させるために、加熱を停止し、自然に炉内の温度を低下させる方法では、温度低下に時間がかかる。この問題を解決するために、例えば温度を低下させたい炉内に常温の不活性ガスを注入することが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、リフロー装置の複数のゾーンの中で、設定温度を変更する場合に、該設定温度の変化が大きい1 または複数のゾーンに対して、ゾーン内のガスに比して低温のガスを導入する気体導入部を設けている。特許文献1に記載のものは、不活性ガス例えば窒素ガス発生装置の圧力を利用して炉内に窒素ガスを導入する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、所望のゾーンに対して窒素ガスを導入するために窒素ガス発生装置を動作状態とし、窒素ガスの導入をバルブによって制御する必要があり、構成が複雑化し、エネルギー消費が多い問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、窒素ガス発生装置のような別の圧力源を使用しないで短時間で炉内の温度を低下させることができる搬送加熱装置及び温度制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、連結された複数の炉体と、
炉体にそれぞれ設けられた送風機及び加熱部と、
炉体内で被加熱物を搬送する搬送手段と、
炉体にそれぞれ設けられた気体導入部及び気体導出部と、
気体導入部及び気体導出部と連結された共通の配管と、
送風機のモータをそれぞれ制御するインバータと、
インバータをそれぞれ制御する制御装置を備え、
制御装置は、品種切り替え時に、インバータを通じてモータの回転数を制御して設定温度に比して実際の温度が高い炉体の温度を低下させるようにした搬送加熱装置である。
また、本発明は、連結された複数の炉体と、炉体にそれぞれ設けられた送風機及び加熱部と、炉体内で被加熱物を搬送する搬送手段と、炉体にそれぞれ設けられた気体導入部及び気体導出部と、気体導入部及び気体導出部と連結された共通の配管と、送風機のモータをそれぞれ制御するインバータと、インバータをそれぞれ制御する制御装置とを備える搬送加熱装置の温度制御方法であって、
制御装置によって、品種切り替え時に、インバータを通じてモータの回転数を制御して設定温度に比して高い温度の炉体の温度を低下させる温度制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
少なくとも一つの実施形態によれば、送風機のモータの回転数を制御することによって所望の炉体の炉内温度を低下させることができる。したがって、簡単で省エネの構成とできる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本発明中に記載されたいずれの効果であってもよい。また、以下の説明における例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明を適用できるリフロー装置の一例の概略を示す略線図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の概略的構成を示す略線図である。
【
図3】
図3は、炉体の構成の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施の形態について説明する。なお、以下に説明する一実施の形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0011】
図1は、本発明を適用できる従来のリフロー装置101の概略的構成を示す。リフロー装置101は、リフロー炉102と、被加熱物例えば両面に表面実装用電子部品が搭載されたプリント基板(以下、ワークと称する)Wをリフロー炉102内を通過させる搬送手段としての搬送チェーン103と、搬送チェーン103の移動経路を規定する回転体(アイドラー、スプロケットなど)105a、105b、105c、105dと、外板106とを備える。なお、
図1では、平行する2本の搬送チェーンの一方の搬送チェーン103のみが示されている。
【0012】
リフロー炉102は、ワークWを上下から加熱し、加熱後に冷却するためのものである。搬送チェーン103は、搬送方向に平行して配されている2本の搬送チェーンの一方である。例えば搬送チェーン103として、ローラチェーンが使用されている。外板106は、全体を覆うためのケースである。
【0013】
ワークWは、搬入口107からリフロー炉102内に搬入された後、搬送チェーン103によって所定速度で矢印方向(
図1に向かって左から右方向)へ搬送され、最終的に搬出口108から取り出される。図示しないが、搬入口107の前段には、ワークWを搬入するためのワーク搬入装置が設けられ、搬出口108の後段には、ワークWを外部へ送り出すためのワーク搬出装置が配置されている。
【0014】
リフロー炉102は、搬送チェーン103による搬送路の上側に位置し、インライン状に配列されるように連結された9個の上部炉体Z1~Z9と、搬送チェーン103による搬送路の下側に位置し、インライン状に配列されるように連結された9個の下部炉体Z11~Z19を有している。なお、上部炉体及び下部炉体を特に区別する必要がない場合には、単に炉体と適宜称する。搬入口107側から8個の炉体Z1,Z11~Z8,Z18が加熱ゾーンの炉体であり、搬出口108側の炉体Z9,Z19が冷却ゾーンの炉体である。冷却ゾーンの炉体ZZ9,Z19に強制冷却ユニット(図示しない)が設けられている。なお、炉体数は、一例であって、他の個数の炉体を備えても良い。複数の炉体Z1~Z19がリフロー時の温度プロファイルにしたがってワークWの温度を制御する。
【0015】
各炉体には、送風機(例えばターボファン)と炉内の温度を検出する温度検出器(例えば熱電対)が設けられている。加熱ゾーンの炉体Z11~Z8,Z18には、加熱手段としてのヒーターが設けられている。M1及びM11が炉体Z1及びZ11のそれぞれの送風機のモータである。M2~M9及びM12~M19も各炉体の送風機のモータを示す。
【0016】
上述した複数の炉体Z1,Z11~Z9,Z19がリフロー時の温度プロファイルにしたがってワークWの温度を制御する。例えば温度プロファイルは、ワークW例えば電子部品が実装されたプリント配線板を加熱するプリヒート(予熱)ゾーンと、プリヒートゾーンの次のリフロー(本加熱)ゾーンと、最後の冷却ゾーンからなる。
【0017】
プリヒートゾーンは、常温から基板を加熱する区間である。プリヒートゾーンは、フラックスを活性化し、電極、はんだ粉の表面の酸化膜を除去し、また、プリント配線板の加熱ムラをなくすための区間である。リフローゾーンは、はんだが溶融し、接合が完成する区間である。リフローゾーンは、プリヒートゾーンを経過していても、温度上昇のムラが存在するので、はんだの溶融温度を超える温度までの加熱が必要とされる。最後の冷却ゾーンは、急速にプリント配線板を冷却し、はんだ組成を形成する区間である。なお、鉛フリーはんだの場合では、リフロー部における温度は、共晶はんだに比してより高温(例えば240℃~260℃)となる。
【0018】
図1に示すリフロー装置では、プリヒートゾーンの温度制御を、主として炉体Z1,Z11~Z5,Z15が受け持つ。リフローゾーンの温度制御は、炉体Z6,Z16~Z8,Z18が受け持つ。冷却ゾーンの温度制御は、炉体Z9,Z19が受け持つ。
【0019】
本発明の一実施形態では、
図2に概略的に示すように、上側の炉体Z1~Z9のそれぞれに気体導入部及び気体導出部が設けられ、気体導入部及び気体導出部と連結された共通の配管201が設けられる。同様に、下側の炉体Z11~Z19のそれぞれに気体導入部及び気体導出部が設けられ、気体導入部及び気体導出部と連結された共通の配管211が設けられる。気体導出部は、各炉体の送風機によって圧力が高くなった箇所に設けられ、気体導入部は、各炉体の圧力が低い箇所に設けられる。なお、全ての炉体に対して気体導入部及び気体導出部を設けずに、一部の炉体に対して気体導入部及び気体導出部を設けてもよい。例えば冷却ゾーンの炉体Z9及び部19に対して気体導入部及び気体導出部を設けなくてもよい。その理由は、炉体Z9及びZ19は、搬出口108と近いので、内部の雰囲気の酸素濃度が高いからである。また、必要に応じて気体導入部及び気体導出部と関連して気体の出入りを制御するバルブを設けてもよい。
【0020】
図3を参照して、例えば炉体Z5及びZ15の構成の一例を説明する。上部の炉体Z5と下部の炉体Z15との対向間隙内で、プリント配線板の両面に表面実装用電子部品が搭載されたワークWが搬送コンベヤ21上に置かれて搬送される。炉体Z5内及び炉体Z15内は、雰囲気ガスである例えば窒素(N2)ガスが充満している。炉体Z5及び炉体Z15は、ワークWに対して熱風(熱せられた雰囲気ガス)を噴出してワークWを加熱する。なお、熱風と共に赤外線を照射しても良い。
【0021】
炉体Z5は、主加熱源2、副加熱源3、送風機4、蓄熱部材5、熱風循環ダクト6、開口部7等からなる。なお、炉体Z15は、例えば、上述した炉体Z5とほぼ同様に、主加熱源12、副加熱源13、送風機14、蓄熱部材15、熱風循環ダクト16、開口部17等を備えている。送風機4は、モータM5と、モータ取り付け板8と、回転羽根9を有する。同様に、送風機14は、モータM15と、モータ取り付け板18と、回転羽根19を有する。送風機としては、ターボファン、シロッコファンなどの遠心ファン、軸流ブロワなどを使用してもよい。他の炉体も
図3に示す構成と同様の構成を有する。なお、
図3に示す炉体の構成は、一例であり、他の構成をとりうる。
【0022】
開口部7及び17を通じて熱風がワークWに対して吹きつけられる。主加熱源2、主加熱源12、副加熱源3及び副加熱源13は、例えば電熱ヒーターで構成される。蓄熱部材5及び蓄熱部材15は、例えばアルミニウムからなり、多数の孔が形成され、その孔を通じて熱風が通過してワークWに対して吹きつけられる。
【0023】
例えば炉体Z5において、熱風は、送風機4によって循環される。すなわち、(主加熱源2→蓄熱部材5→開口部7→ワークW→熱風循環ダクト6→副加熱源3→熱風循環ダクト6→送風機4→主加熱源2)の経路を介して熱風が循環する。炉体Z15においても同様に、(主加熱源12→蓄熱部材15→開口部17→ワークW→熱風循環ダクト16→副加熱源13→熱風循環ダクト16→送風機14→主加熱源12)の経路を介して熱風が循環する。
【0024】
炉体Z5において、上述したように、気体が循環するので、回転羽根9の周面から開口部7の出口までが圧力が高い領域であり、熱風循環ダクト6から回転羽根9の吸い込み口までが圧力の低い領域である。送風機4によって圧力が高い領域に気体導出口22が設けられ、圧力が低い領域に気体導入口23が設けられる。気体導出口22及び気体導入口23のそれぞれに取り付けられている配管が配管201に結合される。炉体Z5と同様に、炉体Z15において、送風機14によって圧力が高い領域に気体導出口24が設けられ、圧力が低い領域に気体導入口25が設けられる。気体導出口24及び気体導入口25のそれぞれに取り付けられている配管が配管211に結合される。炉体Z5及びZ15と同様に、他の炉体に関して配管201及び配管211と接続された気体導出口及び気体導入口が設けられている。
【0025】
炉体の構造として、
図3に示す例と異なり、送風機がモータと回転羽根の間の位置から雰囲気を吸い込み、回転羽根の周面から雰囲気を吹き出す構造がある。この場合には、回転羽根の周面の位置が圧力の高い領域となり、気体導出のための配管を炉体の奥まで延ばす必要がある。その結果、炉体の気密性を保持するための構成が複雑となる。
図3の構成では、回転羽根9、19が主加熱源2、12とそれぞれ対向する側から雰囲気を吸い込む構造としているので、回転羽根とモータの距離がより小さくなり、気体導出のための配管を炉体の奥まで延ばす必要がなく、構造を簡単とできる。
【0026】
本発明の一実施形態は、上述したリフロー装置の送風機のモータM1~M19に対して設けられたインバータと、インバータによってモータM1~M19を制御する制御装置とを備えている。制御装置は、インバータを通じてモータM1~M19の回転数を制御して設定された炉体の炉内温度を低下させる。また、炉内温度を検出する温度検出器を有し、温度検出器により検出された温度情報が制御装置に供給される。
【0027】
図4は、本発明の一実施形態のシステム構成を示す。
図4は、制御信号系統を示し、電力系統についての図示は省略されている。M1~M19は、
図1に示すリフロー装置の送風機のモータを示し、INV1~INV19は、各モータを駆動及び制御するインバータである。さらに、TH1~TH19は、炉体のそれぞれの内部温度を検出するための熱検出器(例えば熱電対)である。例えば炉体Z5には、送風機の回転羽根を回転させるためのモータM5及び熱検出器TH5が設けられ、炉体Z15には、送風機の回転羽根を回転させるためのモータM15及び熱検出器TH15が設けられている。
【0028】
インバータINV1~INV19は、制御装置例えばプログラマブル・ロジック・コントローラ(programmable logic controller,
図4及び以下の説明ではPLCと称する)31とネットワーク32を介して接続されている。PLC31からインバータINV1~INV19のそれぞれに対して回転数を指令する制御信号が供給され、インバータINV1~INV19からはモニタ信号、アラーム信号などがPLC31に対して供給される。モニタ信号は、モータM1~M19の負荷の大小を示す信号である。
【0029】
熱検出器TH1~TH19の検出温度がネットワーク33を介してPLC31に対して供給される。PLC31に対してパーソナルコンピュータ34が接続されている。パーソナルコンピュータ34は、ユーザーインターフェースとして機能する。例えばPLC31へ回転数を指令したり、警報画面を表示したりする。なお、インバータINV1~INV19を制御するためにPLC以外の制御装置を使用してもよい。
【0030】
図5のフローチャート及び表1を参照してPLC31によってなされる温度制御方法について説明する。本発明による温度制御方法は、生産品目を変更する場合に、炉体の温度を短時間で設定温度に低下させるものである。なお、上下に位置する二つの炉体(例えばZ1,Z11)の各々に対する温度設定と温度変更の制御が同一であるので、一方の炉体例えば上側の炉体の温度及びその炉体の送風機のモータに対する制御のみについて説明する。また、プリヒートゾーン及びリフローゾーンに含まれる炉体Z1~Z8に対する温度設定を行うようにした例について説明する。
【0031】
【0032】
ある生産品目Aから生産品目Bへ品種切り替えを行う場合について説明する。表1は、これらの生産品目の設定温度並びにこれらの生産品目の間の設定温度の差分が示されている。PLC31は、温度を低下させる目標の第1の炉体のモータの回転数を低下させ、第1の炉体より温度が低温の第2の炉体のモータの回転数を高めるような制御を行い、その結果、第2の炉体の雰囲気を第1の炉体に流して第1の炉体の温度を低下させるものである。モータの回転数は、一例として、低(LOWと表記する)、中(MIDと表記する)、高(HIGHと表記する)の3段階のいずれかに制御される。生産品目Aと生産品目Bのそれぞれの稼働時(運転時)の回転数は、互いに等しいもの(例えばMID)とされている。
【0033】
モータM1~M19(送風機)の回転数(LOW、MID、HIGH)は、インバータINV1~INV19からの駆動信号の周波数に対応しており、その場合の配管201(及び配管211)内の圧力(閉状態)の一例を表2に示す。回転数がLOWの場合の圧力が最も低く、回転数がHIGHの場合の圧力が最も高く、回転数がMIDの場合の圧力が中間となる。
【0034】
【0035】
図5のフローチャートを参照してPLC31による制御の一例を説明する。
ステップST1:温度設定の変更処理が開始される。生産品目Aから生産品目Bへの品種切り替えが開始され、生産品目Aの温度設定条件から生産品目Bの温度設定条件への変更が開始される。表1には、二つの品目A及びBのそれぞれの設定温度の差分が示されている。
【0036】
ステップST2:炉体の温度低下が確認される。例えば開始から5分経過後のリフローゾーンの各炉体の実際の温度を検出し、開始時から温度低下していることを確認する。この時、全ての炉体の回転数の設定(周波数)は同一(例えばMID)としておく。したがって、炉体間の圧力差は生じない。
【0037】
ステップST3:温度を低下させる目標の第1の炉体Xを特定する。生産品目Bの設定温度と実際の温度を比較し、(設定温度<実際の温度)で、両者の差分が最も大きい炉体を第1の炉体として特定する。通常、第1の炉体Xは、リフローゾーンに含まれる炉体となる。本例の場合では、炉体Z6が第1の炉体として特定される。
【0038】
ステップST4:第2の炉体、すなわち、雰囲気の移動元の炉体Yを特定する。
生産品目Bの設定温度と実際の温度を比較して、(設定温度-実際の温度)の値が最も小さい炉体を特定する。通常は低温設定のプリヒートゾーンに含まれる炉体となる。本例の場合では、炉体Z2が特定される。
【0039】
ステップST5:送風機の回転数の設定が変更される。低温雰囲気であり、移動元と特定したプリヒートゾーンの炉体Z2の送風機の回転数を高くする。その結果、炉体Z2内の圧力が向上する。同時に高温雰囲気であり、温度を低下させる目標の炉体と特定したリフローゾーンの炉体Z6の回転数を低くする。その結果、炉体Z6内の圧力が低下する。炉体Z2と炉体Z6の間の圧力差によって、配管201を通じてプリヒートゾーンの雰囲気がリフローゾーンへ移動する。
【0040】
ステップST6:特定の炉体Z6の温度が(設定温度+/-5℃)になったかどうかが判定される。5℃は、温度誤差の許容値の一例であって、他の値に設定してもよい。炉体Z6の温度がこの範囲となるまで、ステップST6の処理が繰り返される。ステップST6において、リフローゾーンの炉体Z6の温度が(設定温度+/-5℃)に入ったことが検出されると、炉体Z2及びZ6の両者の回転数をMIDとし、圧力差を生じないようにする。そして、処理が次のステップST7に移る。
【0041】
ステップST7:全ての炉体の回転数の設定(周波数)を同一(例えばMID)とした状態で、例えばリフローゾーンに含まれる他の全ての炉体Z7、Z8の各々の温度が(設定温度+/-5℃)になったかどうかが判定される。ステップST6の処理によって、炉体Z6の実際の温度が(設定温度+/-5℃)に入ったので、今度はリフローゾーンの他の炉体(炉体Z7、Z8)の設定温度と実際の温度の差分を確認する。これらの炉体に関する差分が(設定温度+/-5℃)に入っていない場合はその炉体を特定し、ステップST3の処理に戻る。特定された炉体に対して上述したのと同様に温度を低下させる処理がなされる。そして、ステップST7において、リフローゾーン内の全ての炉体の各々の温度が(設定温度+/-5℃)に入ったことが検出されると、処理が次のステップST8(温度設定変更完了)に進む。なお、炉体の温度が下がりすぎた場合に、その炉体のヒーターをオンとして温度を上げる制御を行ってもよい。
【0042】
図6は、上述した本発明の一実施形態の炉体Z6の温度測定の結果を示す。炉体Z2と炉体Z6の間の圧力差によって、配管201を通じて炉体Z2の雰囲気が、炉体Z6へ移動する場合、約128℃の雰囲気が約650L/minで流れて、
図6のグラフに示すように、炉体Z6の温度が低下する。その結果、約2分間で240℃から220℃へ温度が低下する。さらに、約2分間で220℃から210℃へ温度が低下する。このような温度低下は、自然放熱による温度低下に比して短時間で生じ、品種切り替え作業の効率化を図ることができる。
【0043】
上述した本発明の一実施形態は、圧力発生源を設けることなく、既存の送風機の回転数を制御することによって、品種切り替えの温度制御に要する時間を短縮化することができ、構成の簡単化、省エネを実現できる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。本発明は、プリント基板に限らず、フレキシブル基板、リジッド基板とフレキシブル基板とを貼り合わせた基板、これらを組み合わせたリジッドフレキ基板のリフローに対しても適用できる。また、加熱炉が1段(1ゾーン)のリフロー装置に対して本発明を適用できる。さらに、リフロー装置に限らず、樹脂の硬化のための加熱装置等に対しても適用できる。また、上述の実施の形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。また、上述の実施の形態の構成、方法、工程、形状、材料及び数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
101・・・リフロー装置、103・・・搬送チェーン、W・・・ワーク、
4,14・・・送風機、9,19・・・回転羽根、22,24・・・気体導出口、
23,25・・・気体導入口、31・・・PLC、Z1~Z19・・・炉体、
M1~M19・・・送風機のモータ、INV1~INV19・・・インバータ、
TH1~TH19・・・温度検出器、201,211・・・配管