IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特開2022-185710歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム
<>
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図1
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図2
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図3
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図4
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図5
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図6
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図7
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図8
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図9
  • 特開-歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185710
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20221208BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61H1/02 R
A61B5/11 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093492
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 大河
【テーマコード(参考)】
4C038
4C046
【Fターム(参考)】
4C038VA12
4C038VB14
4C038VC20
4C046AA08
4C046AA09
4C046AA22
4C046AA25
4C046AA33
4C046AA42
4C046AA45
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD02
4C046DD14
4C046DD38
4C046DD39
4C046DD47
4C046EE05
4C046EE08
4C046EE09
4C046EE24
4C046EE25
4C046EE32
4C046FF09
4C046FF26
4C046FF31
(57)【要約】
【課題】訓練者の歩行状態の判別精度を向上させることにより訓練者に効果的な訓練を提供することが可能な歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラムを提供すること。
【解決手段】本実施の形態にかかる歩行訓練装置100は、訓練者の一方の脚に取り付けられたロボット脚と、トレッドミルと、トレッドミルのベルトに搭乗した訓練者の足裏から受ける荷重の分布を検出する荷重分布センサと、荷重分布センサによって検出された歩行訓練中の訓練者の他方の脚から受ける荷重の増加状況に基づいて、一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったか否かを判定する歩行状態判別部と、歩行状態判別部によって一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定された場合に、ロボット脚の遊脚状態向けの屈曲制御を開始させる制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練者の一方の脚に取り付けられたロボット脚と、
トレッドミルと、
前記トレッドミルに取り付けられ、前記トレッドミルのベルトに搭乗した前記訓練者の足裏から受ける荷重の分布を検出する荷重分布センサと、
前記荷重分布センサによって検出された歩行訓練中の前記訓練者の他方の脚から受ける荷重の増加状況に基づいて、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったか否かを判定する歩行状態判別部と、
前記歩行状態判別部によって前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定された場合に、前記ロボット脚による前記一方の脚の遊脚状態向けの屈曲制御を開始させる制御部と、
を備えた、歩行訓練システム。
【請求項2】
前記歩行状態判別部は、前記他方の脚から受ける荷重が所定荷重以上になった場合に、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定する、
請求項1に記載の歩行訓練システム。
【請求項3】
前記歩行状態判別部は、前記他方の脚から受ける荷重が、前記一方の脚から受ける荷重の最大値の所定割合以上になった場合に、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定する、
請求項1に記載の歩行訓練システム。
【請求項4】
前記歩行状態判別部は、前記荷重分布センサによって検出される荷重の重心位置が、前記他方の脚の位置を含む所定領域内に入った場合に、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定する、
請求項1に記載の歩行訓練システム。
【請求項5】
トレッドミルに取り付けられた荷重分布センサを用いて、前記トレッドミルのベルトに搭乗した訓練者の足裏から受ける荷重の分布を検出するステップと、
ロボット脚が取り付けられた一方の脚とは別の他方の脚から受ける荷重の増加状況に基づいて、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったか否かを判定するステップと、
前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定された場合に、前記ロボット脚による前記一方の脚の遊脚状態向けの屈曲制御を開始させるステップと、
を備えた、歩行訓練システムの制御方法。
【請求項6】
トレッドミルに取り付けられた荷重分布センサを用いて、前記トレッドミルのベルトに搭乗した訓練者の足裏から受ける荷重の分布を検出する処理と、
ロボット脚が取り付けられた一方の脚とは別の他方の脚から受ける荷重の増加状況に基づいて、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったか否かを判定する処理と、
前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定された場合に、前記ロボット脚による前記一方の脚の遊脚状態向けの屈曲制御を開始させる処理と、
をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者の歩行による所定の身体部位の経時的変化に基づいて当該使用者の動的バランス能力を評価するための動的バランス能力評価装置と、使用者が歩行訓練を行うためのトレッドミルと、を備えた歩行訓練システムが開示されている。この歩行訓練システムは、例えば、トレッドミルのベルトに圧力センサを設け、当該圧力センサの計測値から、使用者がベルトを蹴る力(床反力)を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-73525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常、圧力センサの抜重時の応答性能は加重時の応答性能よりも低い。そのため、関連技術では、歩行訓練中の使用者の一方の脚が立脚状態から遊脚状態に移行した場合でも、当該一方の脚から受けていた荷重が抜重されずに意図せず検出されてしまい、当該一方の脚の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができない。つまり、関連技術では、使用者(訓練者)の歩行状態を精度良く判別することができない。その結果、関連技術では、使用者に効果的な歩行訓練を提供することができない、という課題があった。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、訓練者の歩行状態の判別精度を向上させることにより訓練者に効果的な訓練を提供することが可能な歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様に係る歩行訓練システムは、訓練者の一方の脚に取り付けられたロボット脚と、トレッドミルと、前記トレッドミルに取り付けられ、前記トレッドミルのベルトに搭乗した前記訓練者の足裏から受ける荷重の分布を検出する荷重分布センサと、前記荷重分布センサによって検出された歩行訓練中の前記訓練者の他方の脚から受ける荷重の増加状況に基づいて、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったか否かを判定する歩行状態判別部と、前記歩行状態判別部によって前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定された場合に、前記ロボット脚による前記一方の脚の遊脚状態向けの屈曲制御を開始させる制御部と、を備える。この歩行訓練システムは、歩行訓練中の訓練者の脚の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができるため、訓練者の歩行状態の判別精度を向上させることができ、その結果、訓練者に効果的な歩行訓練を提供することができる。例えば、この歩行訓練システムは、ロボット脚を装着した脚の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができるため、ロボット脚を適切なタイミングで屈曲及び伸展させることができ、その結果、訓練者に効果的な歩行訓練を提供することができる。
【0007】
前記歩行状態判別部は、前記他方の脚から受ける荷重が所定荷重以上になった場合に、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定する。
【0008】
前記歩行状態判別部は、前記他方の脚から受ける荷重が、前記一方の脚から受ける荷重の最大値の所定割合以上になった場合に、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定する。
【0009】
前記歩行状態判別部は、前記荷重分布センサによって検出される荷重の重心位置が、前記他方の脚の位置を含む所定領域内に入った場合に、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定する。
【0010】
本発明の一実施態様に係る歩行訓練システムの制御方法は、トレッドミルに取り付けられた荷重分布センサを用いて、前記トレッドミルのベルトに搭乗した訓練者の足裏から受ける荷重の分布を検出するステップと、ロボット脚が取り付けられた一方の脚とは別の他方の脚から受ける荷重の増加状況に基づいて、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったか否かを判定するステップと、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定された場合に、前記ロボット脚による前記一方の脚の遊脚状態向けの屈曲制御を開始させるステップと、を備える。この歩行訓練システムの制御方法は、歩行訓練中の訓練者の脚の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができるため、訓練者の歩行状態の判別精度を向上させることができ、その結果、訓練者に効果的な歩行訓練を提供することができる。例えば、この歩行訓練システムの制御方法は、ロボット脚を装着した脚の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができるため、ロボット脚を適切なタイミングで屈曲及び伸展させることができ、その結果、訓練者に効果的な歩行訓練を提供することができる。
【0011】
本発明の一実施態様に係る制御プログラムは、トレッドミルに取り付けられた荷重分布センサを用いて、前記トレッドミルのベルトに搭乗した訓練者の足裏から受ける荷重の分布を検出する処理と、ロボット脚が取り付けられた一方の脚とは別の他方の脚から受ける荷重の増加状況に基づいて、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったか否かを判定する処理と、前記一方の脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定された場合に、前記ロボット脚による前記一方の脚の遊脚状態向けの屈曲制御を開始させる処理と、をコンピュータに実行させる。この制御プログラムは、歩行訓練中の訓練者の脚の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができるため、訓練者の歩行状態の判別精度を向上させることができ、その結果、訓練者に効果的な歩行訓練を提供することができる。例えば、この制御プログラムは、ロボット脚を装着した脚の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができるため、ロボット脚を適切なタイミングで屈曲及び伸展させることができ、その結果、訓練者に効果的な歩行訓練を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、訓練者の歩行状態の判別精度を向上させることにより訓練者に効果的な訓練を提供することが可能な歩行訓練システム、その制御方法、及び、制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る歩行訓練装置の一構成例を示す全体概念図である。
図2図1に示す歩行訓練装置に設けられたトレッドミルの一部の概略側面図である。
図3図1に示す歩行訓練装置に設けられた歩行補助装置の一構成例を示す概略斜視図である。
図4図1に示す歩行訓練装置のシステム構成例を示すブロック図である。
図5】荷重分布センサの抜重時の応答性能の低さが与える影響について説明するためのタイミングチャートである。
図6図5の一部を拡大したタイミングチャートである。
図7図1に示す歩行訓練装置による訓練者の歩行状態の判別方法の一例を示すタイミングチャートである。
図8図7の一部を拡大したタイミングチャートである。
図9図1に示す歩行訓練装置による訓練者の歩行状態の判別方法の他の例を説明するための概略平面図である。
図10図1に示す歩行訓練装置による訓練者の歩行状態の判別方法の他の例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0015】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る歩行訓練装置の一構成例を示す全体概念図である。本実施形態に係る歩行訓練装置100は、訓練者(ユーザ)900のリハビリ(リハビリテーション)を支援するリハビリ支援装置の一具体例であって、特に歩行訓練を支援する歩行訓練装置の一具体例である。歩行訓練装置100は、一方の脚に麻痺を患う片麻痺患者である訓練者900が、訓練スタッフ901の指導に従って歩行訓練を行うための装置である。ここで、訓練スタッフ901は、例えば療法士(理学療法士)又は医師とすることができ、訓練者の訓練を指導又は介助などにより補助することから、訓練指導者、訓練介助者、訓練補助者などと称することもできる。歩行訓練装置100は、歩行訓練システムということもできる。なお、以下の説明における上下方向、左右方向、前後方向は、訓練者900の向きを基準とする方向である。
【0016】
歩行訓練装置100は、主に、全体の骨格を成すフレーム130に取り付けられた制御盤133と、訓練者900が歩行するトレッドミル131と、訓練者900の麻痺側の脚部である患脚に装着する歩行補助装置(ロボット脚)120と、を備える。
【0017】
トレッドミル131は、訓練者900の歩行を促す装置であって、歩行訓練を行う訓練者900は、ベルト1311に乗り、ベルト1311の移動に合わせて歩行動作を試みる。なお、訓練スタッフ901は、例えば図1に示すように訓練者900の背後のベルト1311上に立って一緒に歩行動作を行うこともできるが、通常、ベルト1311を跨いだ状態で立つなど、訓練者900の介助を行い易い状態に居ることが好ましい。
【0018】
図2は、トレッドミル131の一部の概略側面図である。
図2に示すように、トレッドミル131は、リング状のベルト1311、プーリー1312、及び、図示しないモータを少なくとも備える。また、ベルト1311の内側(訓練者900が搭乗する面のベルト1311の下側)には、ベルト1311に連動しないように荷重分布センサ222が設置されている。但し、荷重分布センサ222は、ベルト1311の上側に、当該ベルト1311に連動するように設けられてもよい。
【0019】
荷重分布センサ222は、複数のセンサによって構成されており、これらの複数のセンサは、訓練者900の足裏を支持するベルト1311の下側にマトリックス状に配置されている。荷重分布センサ222は、これらの複数のセンサを用いることにより、訓練者900の足裏から受ける面圧(荷重)の大きさ及び分布を検出することができる。例えば、荷重分布センサ222は、複数の電極がマトリックス状に配置された抵抗変化検出型の荷重検出シートである。荷重分布センサ222の検出結果により、訓練者900の歩行状態(各脚が立脚状態であるか遊脚状態であるか等)を判別することができる。荷重分布センサ222の検出結果による訓練者900の歩行状態の判別方法の詳細については、後述する。
【0020】
トレッドミル131では、例えば後述する全体制御部210が、荷重分布センサ222の検出結果に基づいて訓練者900の歩行状態を判別し、その歩行状態に応じて不図示のモータを用いてプーリー1312を回転させることにより、リング状のベルト1311を回転(移動)させる。それにより、訓練者900は、ベルト1311からはみ出ることなく歩行訓練を行うことができる。
【0021】
フレーム130は、床面に設置されるトレッドミル131上に立設され、モータやセンサの制御を行う全体制御部210を収容する制御盤133や、訓練の進捗状況等を訓練者900へ提示する例えば液晶パネルである訓練用モニタ138などを支持している。また、フレーム130は、訓練者900の頭上部前方付近で前側引張部135を、頭上部付近でハーネス引張部112を、頭上部後方付近で後側引張部137を、それぞれ支持している。また、フレーム130は、訓練者900が掴むための手摺り130aを含む。
【0022】
手摺り130aは、訓練者900の左右両側に配置されている。それぞれの手摺り130aは、訓練者900の歩行方向と平行な方向に配置されている。手摺り130aは、上下位置、及び左右位置が調整可能となっている。つまり、手摺り130aは、その高さ及び幅を変更する機構を含むことができる。さらに、手摺り130aは、例えば歩行方向の前方側と後方側とで高さを異ならせるように調整することで、その傾斜角度を変更できるように構成することもできる。例えば、手摺り130aは、歩行方向に沿って徐々に高くなるような傾斜角度を付すことができる。
【0023】
また、手摺り130aには、訓練者900から受ける荷重を検出する手摺りセンサ218が設けられている。例えば、手摺りセンサ218は、電極がマトリックス状に配置された抵抗変化検出型の荷重検出シートとすることができる。また、手摺りセンサ218は、3軸の加速度センサ(x,y,z)と3軸のジャイロセンサ(roll,pitch,yaw)とを複合させた6軸センサとすることもできる。但し、手摺りセンサ218の種類や設置位置は問わない。
【0024】
カメラ140は、訓練者900の全身を観察するための撮像部としての機能を担う。カメラ140は、訓練用モニタ138の近傍に、訓練者と相対するように設置されている。カメラ140は、訓練中の訓練者900の静止画や動画を撮影する。カメラ140は、訓練者900の全身を捉えられる程度の画角となるような、レンズと撮像素子のセットを含む。撮像素子は、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサであり、結像面に結像した光学像を画像信号に変換する。
【0025】
前側引張部135と後側引張部137の連携した動作により、歩行補助装置120の荷重が患脚の負担とならないように当該荷重を相殺し、更には、設定の程度に応じて患脚の振出し動作をアシストする。
【0026】
前側ワイヤ134は、一端が前側引張部135の巻取機構に連結されており、他端が歩行補助装置120に連結されている。前側引張部135の巻取機構は、不図示のモータをオンオフさせることにより、患脚の動きに応じて前側ワイヤ134を巻き取ったり繰り出したりする。同様に、後側ワイヤ136は、一端が後側引張部137の巻取機構に連結されており、他端が歩行補助装置120に連結されている。後側引張部137の巻取機構は、不図示のモータをオンオフさせることにより、患脚の動きに応じて後側ワイヤ136を巻き取ったり繰り出したりする。このような前側引張部135と後側引張部137の連携した動作により、歩行補助装置120の荷重が患脚の負担とならないように当該荷重を相殺し、更には、設定の程度に応じて患脚の振出し動作をアシストする。
【0027】
例えば、訓練スタッフ901は、オペレータとして、重度の麻痺を抱える訓練者に対しては、アシストするレベルを大きく設定する。アシストするレベルが大きく設定されると、前側引張部135は、患脚の振出しタイミングに合わせて、比較的大きな力で前側ワイヤ134を巻き取る。訓練が進み、アシストが必要でなくなったら、訓練スタッフ901は、アシストするレベルを最小に設定する。アシストするレベルが最小に設定されると、前側引張部135は、患脚の振出しタイミングに合わせて、歩行補助装置120の自重をキャンセルするだけの力で前側ワイヤ134を巻き取る。
【0028】
歩行訓練装置100は、さらに、装具110、ハーネスワイヤ111、及びハーネス引張部112によって構成された転倒防止ハーネス装置を備える。
【0029】
装具110は、訓練者900の腹部に巻き付けられるベルトであり、例えば面ファスナによって腰部に固定される。装具110は、吊具であるハーネスワイヤ111の一端を連結する連結フック110aを備え、ハンガーベルトと称することもできる。訓練者900は、連結フック110aが後背部に位置するように、装具110を装着する。
【0030】
ハーネスワイヤ111は、一端が装具110の連結フック110aに連結されており、他端がハーネス引張部112の巻取機構に連結されている。ハーネス引張部112の巻取機構は、不図示のモータをオンオフさせることにより、ハーネスワイヤ111を巻き取ったり繰り出したりする。このような構成により、転倒防止ハーネス装置は、訓練者900が転倒しそうになった場合に、その動きを検知した全体制御部210の指示に従ってハーネスワイヤ111を巻き取り、装具110により訓練者900の上体を支えて、訓練者900の転倒を防ぐ。
【0031】
装具110は、訓練者900の姿勢を検出するための姿勢センサ217を備える。姿勢センサ217は、例えばジャイロセンサと加速度センサとを組み合わせたものであり、装具110が装着された腹部の重力方向に対する傾斜角を出力する。
【0032】
管理用モニタ139は、主に訓練スタッフ901が監視及び操作するための表示入力装置であり、フレーム130に取り付けられている。管理用モニタ139は、例えば液晶パネルであり、その表面にはタッチパネルが設けられている。管理用モニタ139は、訓練設定に関する各種メニュー項目や、訓練時における各種パラメータ値、訓練結果などを表示する。また、管理用モニタ139の近傍には、非常停止ボタン232が設けられている。訓練スタッフ901が非常停止ボタン232を押すことで、歩行訓練装置100が非常停止する。
【0033】
歩行補助装置120は、訓練者900の患脚に装着され、患脚の膝関節における伸展及び屈曲の負荷を軽減することにより訓練者900の歩行を補助する。歩行補助装置120は、歩行訓練によって得られる運脚に関するデータを全体制御部210に送信したり、全体制御部210からの指示に従って関節部分を駆動させたりする。歩行補助装置120は、転送防止ハーネス装置の一部である装具110に取り付けられたヒップジョイント(回転部を有する接続部材)と、ワイヤなどを介して接続しておくこともできる。
【0034】
(歩行補助装置120の詳細)
図3は、歩行補助装置120の一構成例を示す概略斜視図である。歩行補助装置120は、主に、制御ユニット121と、患脚の各部を支える複数のフレームと、を備える。なお、歩行補助装置120は、ロボット脚とも称す。
【0035】
制御ユニット121は、歩行補助装置120の制御を行う補助制御部220を含み、また、膝関節の伸展運動及び屈曲運動を補助するための駆動力を発生させる不図示のモータを含む。患脚の各部を支えるフレームは、上腿フレーム122と、上腿フレーム122に回動自在に連結された下腿フレーム123と、を含む。また、このフレームは、下腿フレーム123に回動自在に連結された足平フレーム124と、前側ワイヤ134を連結するための前側連結フレーム127と、後側ワイヤ136を連結するための後側連結フレーム128と、を含む。
【0036】
上腿フレーム122と下腿フレーム123は、図示するヒンジ軸Ha周りに相対的に回動する。制御ユニット121のモータは、補助制御部220の指示に従って回転して、上腿フレーム122と下腿フレーム123がヒンジ軸Ha周りに相対的に開くように加勢したり、閉じるように加勢したりする。制御ユニット121に収められた角度センサ223は、例えばロータリエンコーダであり、ヒンジ軸Ha周りの上腿フレーム122と下腿フレーム123の成す角を検出する。下腿フレーム123と足平フレーム124は、図示するヒンジ軸Hb周りに相対的に回動する。相対的に回動する角度範囲は、調整機構126によって事前に調整される。
【0037】
前側連結フレーム127は、上腿の前側を左右方向に伸延し、両端で上腿フレーム122に接続するように設けられている。また、前側連結フレーム127には、前側ワイヤ134を連結するための連結フック127aが、左右方向の中央付近に設けられている。後側連結フレーム128は、下腿の後側を左右方向に伸延し、両端でそれぞれ上下に伸延する下腿フレーム123に接続するように設けられている。また、後側連結フレーム128には、後側ワイヤ136を連結するための連結フック128aが、左右方向の中央付近に設けられている。
【0038】
上腿フレーム122は、上腿ベルト129を備える。上腿ベルト129は、上腿フレームに一体的に設けられたベルトであり、患脚の上腿部に巻き付けて上腿フレーム122を上腿部に固定する。これにより、歩行補助装置120の全体が訓練者900の脚部に対してずれることを防止している。
【0039】
(歩行訓練装置100のシステム構成例)
続いて、図4を用いて、歩行訓練装置100のシステム構成例について説明する。
図4は、歩行訓練装置100のシステム構成例を示すブロック図である。
【0040】
図4に示すように、歩行訓練装置100のシステム構成は、全体制御部210、トレッドミル駆動部211、操作受付部212、表示制御部213、引張駆動部214、ハーネス駆動部215、画像処理部216、姿勢センサ217、手摺りセンサ218、荷重分布センサ222、通信接続IF(インターフェース)219、及び、歩行補助装置120を含む。
【0041】
全体制御部210は、例えばMPU(Micro Processing Unit)であって、システムメモリから読み込んだ制御プログラムを実行することにより、装置全体の制御を実行する。
【0042】
トレッドミル駆動部211は、トレッドミル131のベルト1311を回転させるモータ及びその駆動回路を含む。全体制御部210は、トレッドミル駆動部211へ駆動信号を送ることにより、ベルト1311の回転制御を実行する。全体制御部210は、例えば、訓練スタッフ901によって設定された歩行速度に応じて、ベルト1311の回転速度を調整する。或いは、全体制御部210は、荷重分布センサ222の検出結果から判別される訓練者900の歩行状態に応じて、ベルト1311の回転速度を調整する。
【0043】
操作受付部212は、装置に設けられた操作ボタン、管理用モニタ139に重畳されたタッチパネル、又は、付属するリモコン等を介した、訓練スタッフ901による入力操作を受け付ける。操作受付部212により受け付けられた操作信号は、全体制御部210に送信される。全体制御部210は、操作受付部212によって受け付けられた操作信号に基づいて、電源のオンオフの切り替えの指示を与えたり、トレーニング開始の指示を与えたりすることができる。また、設定に関する数値の入力やメニュー項目の選択を行うことができる。なお、操作受付部212は、訓練スタッフ901の入力操作を受け付ける場合に限られず、当然ながら訓練者900の入力操作を受け付けることもできる。
【0044】
表示制御部213は、全体制御部210からの表示信号を受け取って表示画像を生成し、訓練用モニタ138又は管理用モニタ139に表示する。表示制御部213は、表示信号に従って、トレーニングの進捗を示す画像や、カメラ140で撮影したリアルタイム映像を生成する。
【0045】
引張駆動部214は、前側引張部135に設けられた、前側ワイヤ134を引張するためのモータ及びその駆動回路と、後側引張部137に設けられた、後側ワイヤ136を引張するためのモータ及びその駆動回路と、を含む。全体制御部210は、引張駆動部214へ駆動信号を送ることにより、前側ワイヤ134の巻き取り及び後側ワイヤ136の巻き取りをそれぞれ制御する。また、全体制御部210は、巻き取り動作に限らず、モータの駆動トルクを制御することにより、各ワイヤの引張力を制御する。さらに、全体制御部210は、例えば、荷重分布センサ222の検出結果から患脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わるタイミングを同定し、そのタイミングに同期して各ワイヤの引張力を増減させることにより、患脚の振出し動作をアシストする。
【0046】
ハーネス駆動部215は、ハーネス引張部112に設けられた、ハーネスワイヤ111を引張するためのモータ及びその駆動回路を含む。全体制御部210は、ハーネス駆動部215へ駆動信号を送ることにより、ハーネスワイヤ111の巻き取り、及び、ハーネスワイヤ111の引張力を制御する。全体制御部210は、例えば、訓練者900の転倒を予測した場合に、ハーネスワイヤ111を一定量巻き取って、訓練者の転倒を防止する。
【0047】
画像処理部216は、カメラ140に接続されており、カメラ140から画像信号を受け取ることができる。画像処理部216は、全体制御部210からの指示に従って、カメラ140から画像信号を受け取り、受け取った画像信号を画像処理して画像データを生成する。また、画像処理部216は、全体制御部210からの指示に従って、カメラ140から受け取った画像信号に画像処理を施して、特定の画像解析を実行することもできる。例えば、画像処理部216は、トレッドミル131に接する患脚の足の位置(立脚位置)を、画像解析により検出する。具体的には、例えば、足平フレーム124の先端近傍の画像領域を抽出し、当該先端部と重なるベルト1311上に描かれた識別マーカを解析することにより、立脚位置を演算する。
【0048】
姿勢センサ217は、上述の通り訓練者900の腹部の重力方向に対する傾斜角を検出して、検出信号を全体制御部210へ送信する。全体制御部210は、姿勢センサ217からの検出信号を用いて、訓練者900の姿勢、具体的には体幹の傾斜角を演算する。なお、全体制御部210と姿勢センサ217は、有線で接続されていても良いし、近距離無線通信で接続されていても良い。
【0049】
手摺りセンサ218は、手摺り130aに加わる荷重を検出する。つまり、訓練者900が両脚で自身の体重を支えきれない分の荷重が手摺り130aに加わる。手摺りセンサ218は、この荷重を検出して、検出信号を全体制御部210へ送信する。
【0050】
荷重分布センサ222は、上述の通り訓練者900の足裏から受ける面圧(荷重)の大きさ及び分布を検出して、検出信号を全体制御部210へ送信する。全体制御部210は、検出信号を受け取り解析することにより、歩行状態の判別や切り替わり推定などを行う。
【0051】
全体制御部210は、制御に関わる様々な演算や制御を実行する機能実行部としての役割も担う。全体制御部210は、例えば、歩行評価部210a、訓練判定部210b、歩行状態判別部210c、及び、屈伸制御部210dを含む。歩行状態判別部210c及び屈伸制御部210dについては後述する。
【0052】
歩行評価部210aは、各種センサから取得したデータを用いて、訓練者900の歩行動作が異常歩行であるか否かを評価する。訓練判定部210bは、例えば、歩行評価部210aが評価した異常歩行の積算数に基づいて、一連の歩行訓練に対する訓練結果を判定する。
【0053】
なお、訓練結果の判定方法及び判定基準については、任意に設定されてよい。
例えば、歩行フェーズ毎に麻痺体部の動作量と基準とを比較することによって訓練結果の判定が行われてもよい。なお、歩行フェーズとは、患脚(又は健脚)についての1歩行周期(1歩行サイクル)を、立脚状態にある立脚期、立脚期から遊脚状態にある遊脚期への移行期、遊脚期、遊脚期から立脚期への移行期などに分類したものである。どの歩行フェーズであるかは、例えば荷重分布センサ222による検出結果などから分類(判定)することができる。なお、歩行サイクルは、上述のように、立脚期、移行期、遊脚期、移行期で1サイクルとして取り扱うことができるが、どの時期を開始期と定義するかは問わない。その他、歩行サイクルは、例えば、両脚支持状態、単脚(患脚)支持状態、両脚支持状態、単脚(健脚)支持状態で1サイクルとして取り扱うこともでき、この場合にもどの状態を開始状態と定義するかは問わない。
【0054】
また、右脚又は左脚(健脚又は患脚)に注目した歩行周期は、より細分化することもでき、例えば、立脚期を初期接地と4期、遊脚期を3期に分けて表現することができる。初期接地は、観察足部が床に接地する瞬間を指し、立脚期の4期とは、荷重応答期、立脚中期、立脚終期、及び前遊脚期を指す。荷重応答期は、初期接地から反対側の足部が床から離れた瞬間(対側離地)までの期間である。立脚中期は、対側離地から観察足部の踵が離れた瞬間(踵離地)までの期間である。立脚終期は、踵離地から反対側の初期接地までの期間である。前遊脚期は、反対側の初期接地から観察足部が床から離れる(離地)までの期間である。遊脚期の3期とは、遊脚初期、遊脚中期、及び遊脚後期を指す。遊脚初期は、前遊脚期の最後(上記離地)から両足が交差する(足部交差)までの期間である。遊脚中期は、足部交差から頸骨が垂直となる(頸骨垂直)までの期間である。遊脚終期は、頸骨垂直から次の初期接地までの期間である。
【0055】
通信接続IF219は、全体制御部210に接続されたインターフェースであり、訓練者900の患脚に装着される歩行補助装置120に指令を与えたり、センサ情報を受け取ったりするためのインターフェースである。
【0056】
歩行補助装置120は、通信接続IF219と有線又は無線によって接続される通信接続IF229を備えることができる。通信接続IF229は、歩行補助装置120の補助制御部220に接続されている。通信接続IF219、229は、通信規格に則った例えば有線LAN又は無線LAN等の通信インターフェースである。
【0057】
また、歩行補助装置120は、補助制御部220、関節駆動部221、及び、角度センサ223を備えることができる。補助制御部220は、例えばMPUであり、全体制御部210から与えられた制御プログラムを実行することにより、歩行補助装置120の制御を実行する。また、補助制御部220は、歩行補助装置120の状態を、通信接続IF219、229を介して全体制御部210へ通知する。また、補助制御部220は、全体制御部210からの指令を受けて、歩行補助装置120の起動や停止等の制御を実行する。
【0058】
関節駆動部221は、制御ユニット121のモータ及びその駆動回路を含む。補助制御部220は、関節駆動部221へ駆動信号を送ることにより、上腿フレーム122と下腿フレーム123がヒンジ軸Ha周りに相対的に開くように加勢したり、閉じるように加勢したりする。このような動作により、膝の伸展動作及び屈曲動作をアシストしたり、膝折れを防止したりする。
【0059】
角度センサ223は、上述の通りヒンジ軸Ha周りの上腿フレーム122と下腿フレーム123の成す角を検出して、検出信号を補助制御部220へ送信する。補助制御部220は、この検出信号を受け取って膝関節の開き角を演算する。
【0060】
ところで、通常、荷重分布センサ222の抜重時の応答性能は加重時の応答性能よりも低い。そのため、歩行訓練中の訓練者900の一方の脚が、立脚状態から遊脚状態に切り替わるタイミングでトレッドミル131のベルト1311から離れた場合でも、当該一方の脚から受けていた荷重分布が抜重されずに意図せず検出されてしまう可能性がある。その場合、当該一方の脚は、立脚状態から遊脚状態に移行済みであるにも関わらず、立脚状態と判定されてしまう。仮に、当該一方の脚が歩行補助装置(ロボット脚)120を装着した患脚である場合、歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を適切なタイミングで開始させることができないため、訓練者900は、効果的な歩行訓練を行うことができなくなってしまう。
【0061】
図5は、荷重分布センサ222の抜重時の応答性能の低さが与える影響について説明するためのタイミングチャートである。図6は、図5の一部を拡大したタイミングチャートである。なお、図5及び図6の例では、右脚が歩行補助装置120を装着した患脚であって、左脚が健脚である場合について説明する。
【0062】
図5の例では、患脚である右脚の荷重値が閾値D5未満に低下したタイミングで、当該右脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定されている(時刻t51,t52,t53)。しかしながら、時刻t51付近を拡大した図6のタイミングチャートを見ても分かるように、右脚は、実際には時刻t51より前の時刻t50に遊脚状態に移行しているにも関わらず、抜重の遅れによって、時刻t51に遊脚状態に移行していると判断されてしまっている。それにより、右脚に装着された歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御の開始タイミングが遅れてしまうため、訓練者900は、効果的な歩行訓練を行うことができなくなってしまう。
【0063】
そこで、本実施の形態では、歩行状態判別部210cが、歩行補助装置120を装着していない脚(健脚)から荷重分布センサ222が受ける荷重の増加状況に基づいて、歩行補助装置120を装着している脚(患脚)が立脚状態から遊脚状態に切り替わったか否かを判定している。そして、本実施の形態では、屈伸制御部210dが、歩行補助装置120を装着している脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと歩行状態判別部210cによって判定された場合に、歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を開始させている。
【0064】
ここで、荷重分布センサ222の加重時の応答性能は抜重時の応答性能よりも高い。そのため、歩行状態判別部210cは、歩行補助装置120を装着している脚(患脚)の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができる。つまり、歩行状態判別部210cは、訓練者900の歩行状態を精度良く判別することができる。また、それにより、屈伸制御部210dは、歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を適切なタイミングで開始させることができる。その結果、訓練者900は、効果的な歩行訓練を行うことができる。
【0065】
(訓練者900の歩行状態の判別方法の一例)
図7は、歩行訓練装置100による訓練者900の歩行状態の判別方法の一例を示すタイミングチャートである。図8は、図7の一部を拡大したタイミングチャートである。なお、図7及び図8の例では、右脚が歩行補助装置120を装着した患脚であって、左脚が健脚である場合について説明する。また、図7及び図8の例では、主に、患脚である右脚の立脚状態から遊脚状態の切り替わりタイミングの検出について説明する。
【0066】
図7を参照すると、歩行状態判別部210cは、荷重分布センサ222によって検出された左脚(健脚)の荷重値が閾値D1以上に増加したタイミング(閾値D1未満から閾値D1以上に変化したタイミング)で、右脚(患脚)が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定している(時刻t11,t12,t13)。そして、屈伸制御部210dは、歩行状態判別部210cによって右脚(患脚)が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定された場合に、当該右脚に装着された歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を開始させる。
【0067】
ここで、時刻t11付近を拡大した図8のタイミングチャートを見ても分かるように、荷重分布センサ222の加重時の応答性能は抜重時の応答性能よりも高い。そのため、歩行状態判別部210cは、歩行補助装置120を装着している脚(患脚)の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができる。つまり、歩行状態判別部210cは、訓練者900の歩行状態を精度良く判別することができる。また、それにより、屈伸制御部210dは、歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を適切なタイミングで開始させることができる。その結果、訓練者900は、効果的な歩行訓練を行うことができる。
【0068】
なお、閾値D1は、訓練者900毎に任意の荷重値に設定可能である。例えば、閾値D1は、訓練者900や訓練スタッフ901の操作によって所定の荷重値に設定される。具体的には、閾値D1は、例えば5kg程度の荷重値に設定される。或いは、閾値D1は、患脚から受ける荷重の最大値(患脚のみで立脚したときに当該患脚から受ける荷重値)の所定割合の荷重値に設定されてもよい。具体的には、閾値D1は、例えば患脚から受ける荷重の最大値の60%程度の荷重値に設定されてもよい。
【0069】
或いは、閾値D1は、両脚から受ける荷重の合計値の所定割合の荷重値に設定されてもよい。このとき、歩行状態判別部210cは、例えば健脚である左脚から受ける荷重が、両脚から受ける荷重の合計値の所定割合未満から所定割合以上に変化したタイミングで、患脚である右脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定する。
【0070】
(訓練者900の歩行状態の判別方法の他の例)
図9は、歩行訓練装置100による訓練者900の歩行状態の判別方法の他の例を説明するための概略平面図である。図10は、歩行訓練装置100による訓練者900の歩行状態の判別方法の他の例を示すタイミングチャートである。なお、図9及び図10の例では、右脚が歩行補助装置120を装着した患脚であって、左脚が健脚である場合について説明する。また、図9及び図10の例では、主に、患脚である右脚の立脚状態から遊脚状態の切り替わりタイミングの検出について説明する。
【0071】
図9に示すように、まず、歩行状態判別部210cは、荷重分布センサ222によって検出された荷重から訓練者900の重心位置COPを特定する。ここで、重心位置COPは、左脚荷重が右脚荷重に対して大きくなるほど左脚の接地領域に近づき、右脚荷重が左脚荷重に対して大きくなるほど右脚の接地領域に近づく。そのため、重心位置COPの左脚(健脚)側への近寄り度合い(即ち、左脚から受ける荷重の増加状況)から、右脚(患脚)が立脚状態から遊脚状態に切り替わったか否かを判定することが可能である。
【0072】
例えば、重心位置COPが右脚の接地領域に位置する場合(即ち、右脚のみで立脚している場合)における当該重心位置COPの左脚への近寄り度合いを0%とする。また、重心位置COPが左脚の接地領域に位置する場合(即ち、左脚のみで立脚している場合)における当該重心位置COPの左脚への近寄り度合いを100%とする。このとき、図10を参照すると、歩行状態判別部210cは、重心位置COPの左脚への近寄り度合いが例えば80%に達したタイミングで、右脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定している(時刻t21,t22,t23)。なお、図10の例では、重心位置COPの左右方向の成分COPyが示されている。そして、屈伸制御部210dは、歩行状態判別部210cによって右脚(患脚)が立脚状態から遊脚状態に切り替わったと判定された場合に、当該右脚に装着された歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を開始させる。
【0073】
このような判別方法でも、訓練者900の歩行状態を精度良く判別することができるため、歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を適切なタイミングで開始させることができる。その結果、訓練者900は、効果的な歩行訓練を行うことができる。
【0074】
以上のように、本実施の形態に係る歩行訓練装置100は、歩行補助装置120を装着していない脚(健脚)から荷重分布センサ222が受ける荷重の増加状況に基づいて、歩行補助装置120を装着している脚(患脚)が立脚状態から遊脚状態に切り替わったことを検出し、歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を開始させている。ここで、荷重分布センサ222の加重時の応答性能は抜重時の応答性能よりも高い。そのため、歩行訓練装置100は、歩行補助装置120を装着している脚(患脚)の立脚状態から遊脚状態への切り替わりタイミングを精度良く検出することができる。つまり、歩行訓練装置100は、訓練者900の歩行状態を精度良く判別することができる。また、それにより、歩行訓練装置100は、歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を適切なタイミングで開始させることができる。その結果、訓練者900は、効果的な歩行訓練を行うことができる。
【0075】
本実施の形態では、右脚に歩行補助装置120が装着された場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、左脚に歩行補助装置120が装着されてもよい。この場合、歩行訓練装置100は、右脚から荷重分布センサ222が受ける荷重の増加状況に基づいて、左脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったことを検出し、当該左脚に装着された歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を開始させる。或いは、右脚及び左脚のそれぞれに歩行補助装置120が装着されてもよい。この場合、歩行訓練装置100は、右脚から荷重分布センサ222が受ける荷重の増加状況に基づいて、左脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったことを検出し、当該左脚に装着された歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を開始させるとともに、左脚から荷重分布センサ222が受ける荷重の増加状況に基づいて、右脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わったことを検出し、当該右脚に装着された歩行補助装置120による遊脚状態向けの屈曲制御を開始させる。
【0076】
また、本実施の形態では、歩行補助装置120が装着された一方の脚の立脚状態から遊脚状態の切り替わりが、他方の脚から荷重分布センサ222が受ける荷重の増加状況に基づいて検出される場合を例に説明したが、これに限られない。当然ながら、歩行補助装置120が装着されていない一方の脚の立脚状態から遊脚状態の切り替わりも、他方の脚から荷重分布センサ222が受ける荷重の増加状況に基づいて検出されることができる。
【0077】
さらに、本開示は、歩行訓練装置100における処理の一部又は全部を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0078】
上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0079】
100 歩行訓練装置
110 装具
110a 連結フック
111 ハーネスワイヤ
112 ハーネス引張部
120 歩行補助装置
121 制御ユニット
122 上腿フレーム
123 下腿フレーム
124 足平フレーム
126 調整機構
127 前側連結フレーム
127a 連結フック
128 後側連結フレーム
128a 連結フック
129 上腿ベルト
130 フレーム
130a 手摺り
131 トレッドミル
133 制御盤
134 前側ワイヤ
135 前側引張部
136 後側ワイヤ
137 後側引張部
138 訓練用モニタ
139 管理用モニタ
140 カメラ
210 全体制御部
210a 歩行評価部
210b 訓練判定部
210c 歩行状態判別部
210d 屈伸制御部
211 トレッドミル駆動部
212 操作受付部
213 表示制御部
214 引張駆動部
215 ハーネス駆動部
216 画像処理部
217 姿勢センサ
218 手摺りセンサ
219 通信接続IF
220 補助制御部
221 関節駆動部
222 荷重分布センサ
223 角度センサ
229 通信接続IF
232 非常停止ボタン
900 訓練者
901 訓練スタッフ
1311 ベルト
1312 プーリー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10