(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185716
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】接着剤組成物、接着フィルム、接続構造体および接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20221208BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221208BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20221208BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20221208BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20221208BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221208BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20221208BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J9/02
C09J163/00
C09J11/08
C09J7/38
H05K1/14 H
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093498
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】北爪 宏治
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5E344
5F044
【Fターム(参考)】
4J004AA13
4J004AB05
4J004BA02
4J004CB03
4J004CC02
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5E344AA02
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5F044KK03
5F044KK04
5F044KK05
5F044KK06
5F044LL09
5F044RR17
(57)【要約】
【課題】高い接着強度を有し、保管ライフ性に優れる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の接着剤組成物は、カチオン重合性成分と成膜用成分を含有するバインダ組成物と、第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤であるカチオン重合開始剤と、1分子中に2以上のメルカプト基を有し、主鎖が有機鎖であるシランカップリング剤と、を含み、前記シランカップリング剤の含有量が0.3質量%以上3質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性成分と成膜用成分を含有するバインダ組成物と、
第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤であるカチオン重合開始剤と、
1分子中に2以上のメルカプト基を有し、主鎖が有機鎖であるシランカップリング剤と、を含み、前記シランカップリング剤の含有量が0.3質量%以上3質量%以下である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記カチオン重合性成分は2官能脂環式エポキシ化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記シランカップリング剤の分子量は、500以上である請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記シランカップリング剤は、1分子中に1つ以上のアルコキシシリル基と、2つ以上のメルカプト基を有する請求項1~3のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基の基数に対しメルカプト基の基数の割合が2以上である、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載の接着剤組成物と、導電性粒子と、を含む接着フィルム。
【請求項7】
第1の電子部品と第2の電子部品とが請求項6に記載の接着フィルムにより接続されている接続構造体。
【請求項8】
第1の電子部品と第2の電子部品とを、請求項6に記載の接着フィルムを介在させて、圧着する工程を含む、接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、接着フィルム、接続構造体および接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品と回路基板等とを接着する手段として、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)や異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)などの接着剤組成物やそのフィルム状物(接着フィルム)が広く用いられている。例えば、異方性導電フィルムは、フレキシブルプリント基板(FPC)の端子と、FPDパネルのガラス基板の端子とを接続する場合(所謂、FOG)をはじめとして、種々の端子同士を接着すると共に電気的に接続する場合に用いられている。
【0003】
このような接着剤組成物には、低温速硬化性を実現するために、重合性化合物として、汎用のグリシジルエーテル系化合物よりもカチオン重合反応性の高い脂環式エポキシ化合物を使用すると共に、酸素による重合阻害がなく、暗反応性を示す重合開始剤として、熱によりプロトンを発生するスルホニウム塩系熱酸発生剤を使用することが提案されている(特許文献1~3)。
【0004】
また、接着剤組成物については、商取引の国際化等により製造から実使用に至るまでの保管・運搬に係る期間が長期化する傾向にある。脂環式エポキシ化合物とスルホニウム塩系熱酸発生剤を組み合わせて使用する接着剤組成物は、製造直後に使用する場合には優れた接着性を呈するものの、保管条件に伴う製品ライフの管理が難しいため、第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤をカチオン重合開始剤として使用する技術も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-176112号公報
【特許文献2】特開2008-308596号公報
【特許文献3】国際公開第2012/018123号
【特許文献4】特開2017-152354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4に示すような第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤の使用により、接着剤組成物の経時的な変化を抑制でき、保管ライフを向上することができるが、FPCとガラス基板等の異なる基材を接合する場合、接着強度が十分でなく、配線間または配線上に接着剤組成物の浮きが発生し、接続信頼性を担保できないおそれがあった。
【0007】
本発明の課題は、FPCをガラス基板に実装するFOG実装等の基材違いにより高い接着強度が必要とされる接合にも使用可能であり、保管ライフ性にも優れる接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、下記構成を有する接着剤組成物によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] カチオン重合性成分と成膜用成分を含有するバインダ組成物と、
第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤であるカチオン重合開始剤と、
1分子中に2以上のメルカプト基を有し、主鎖が有機鎖であるシランカップリング剤と、を含み、前記シランカップリング剤の含有量が0.3質量%以上3質量%以下である、接着剤組成物。
[2] 前記カチオン重合性成分は2官能脂環式エポキシ化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
[3] 前記シランカップリング剤の分子量は、500以上である請求項1または2に記載の接着剤組成物。
[4] 前記シランカップリング剤は、1分子中に1つ以上のアルコキシシリル基と、2つ以上のメルカプト基を有する請求項1~3のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[5] 前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基の基数に対するメルカプト基の基数の割合が2以上である、請求項4に記載の接着剤組成物。
[6] 請求項1~5のいずれか一つに記載の接着剤組成物と、導電性粒子と、を含む接着フィルム。
[7] 第1の電子部品と第2の電子部品とが請求項6に記載の接着フィルムにより接続されている接続構造体。
[8] 第1の電子部品と第2の電子部品とを、請求項6に記載の接着フィルムを介在させて、圧着する工程を含む、接続構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、FPCをガラス基板に実装するFOG実装等の高い接着強度が必要とされる接合にも使用可能であり、常温・冷蔵環境下での保管を経たとしても高い接着性を保持しうる接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「脂環式エポキシ化合物」とは、分子中に脂環を有するエポキシ化合物を意味する。脂環式エポキシ化合物において、オキシラン環は、脂環を構成する2個の炭素原子と1個の酸素原子で形成されていてもよく、脂環とは離れてグリシジル基として形成されていてもよい。
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0013】
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、カチオン重合性成分と成膜用成分を含有するバインダ組成物と、第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤であるカチオン重合開始剤と、1分子中に2以上のメルカプト基を有し、主鎖が有機鎖であるシランカップリング剤と、を含み、前記シランカップリング剤の含有量が0.3質量%以上3質量%以下であることを特徴とする。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0014】
<バインダ組成物>
本発明の接着剤組成物は、カチオン重合性成分と成膜用成分を含有するバインダ組成物を含む。
【0015】
(カチオン重合性成分)
本発明の接着剤組成物で使用するカチオン重合性成分は、カチオン種により重合する官能基を有する化合物であり、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、環状エーテル化合物、などが例示される。中でも、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が好ましく、高い反応性を有する脂環式エポキシ化合物を好適に使用することができる。
【0016】
脂環式エポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基を2個有する2官能脂環式エポキシ化合物、1分子中にエポキシ基を3個有する3官能脂環式エポキシ化合物、1分子中にエポキシ基を4個有する4官能脂環式エポキシ化合物、1分子中にエポキシ基を5個有する5官能脂環式エポキシ化合物等が例示される。また、脂環式エポキシ化合物は、シクロアルケンオキサイド型エポキシ化合物、及び、脂環式アルコールのジグリシジルエーテル化合物から適宜選択することができる。
【0017】
シクロアルケンオキサイド型エポキシ化合物は、エポキシシクロアルキル基を有する化合物である。エポキシシクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~10である。好適な一実施形態として、エポキシシクロアルキル基の炭素原子数は、より好ましくは4~10、さらに好ましくは6~10、さらにより好ましくは6~8であり、特に好ましくは6である。
【0018】
シクロアルケンオキサイド型エポキシ化合物は、例えば、2個以上のシクロアルケン骨格を有する化合物を直接エポキシ化したり、重合性官能基(例えば、(メタ)アクリル基、アリル基、シラノール基等)を有する1官能以上のシクロアルケンオキサイド型エポキシ化合物を重合して2官能以上とすることにより製造することができる。
【0019】
シクロアルケンオキサイド型エポキシ化合物において、エポキシシクロアルキル基以外の構造は特に限定されず、反応性を阻害しない限りにおいて任意の構造としてよい。優れた接着性を呈する接着剤組成物を実現する観点から、エポキシ当量が、好ましくは500以下、より好ましくは400以下、さらに好ましくは350以下、さらにより好ましくは300以下、特に好ましくは250以下、特により好ましくは200以下となるような構造を有することが好適である。シクロアルケンオキサイド型エポキシ化合物のエポキシ当量の下限は、特に限定されないが、好ましくは70以上、より好ましくは80以上、さらに好ましくは90以上、さらにより好ましくは95以上である。
【0020】
2官能のシクロアルケンオキサイド型エポキシ化合物の具体例としては、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ジエポキシビシクロヘキシル等が挙げられる。
【0021】
脂環式アルコールのジグリシジルエーテル化合物は、1分子中に脂環と2個以上のグリシジル基を有する化合物である。脂環は、反応性を阻害しない限りにおいて任意の構造としてよく、単環であっても縮合環であってもよく、1分子中に1個含まれてもよく、2個以上含まれていてもよい。優れた接着性を呈する接着剤組成物を実現する観点から、エポキシ当量が、上記シクロアルケンオキサイド型エポキシ化合物について説明したものと同じ範囲となるような構造を有することが好適である。
【0022】
脂環式アルコールのジグリシジルエーテル化合物は、例えば、芳香族アルコールジグリシジルエーテル(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノール型ジグリシジルエーテル)の芳香環を水添処理して脂環化したり、脂肪族アルコール(例えば、水添ビスフェノールA等の水添ビスフェノール)をグリシジルエーテル化したりすることにより製造することができる。脂環式アルコールのジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、ヘキサヒドロビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0023】
カチオン重合性成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0024】
本発明の接着剤組成物において、カチオン重合性成分の含有量は、接着剤組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは18質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上である。該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下又は50質量%以下である。
【0025】
(成膜用成分)
成膜用成分は、膜形成能を有する限り特に限定されない。成膜用成分は、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂(重量平均分子量が10000以上)、ポリビニルアセタール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。成膜用成分は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
中でも、成膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好適に用いることができる。
【0026】
成膜性の観点から、成膜用成分のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上、さらに好ましくは20000以上である。該Mwの上限は、特に限定されないが、好ましくは80000以下、より好ましくは70000以下、60000以下であってもよい。他の配合物や使用目的に応じて適宜選択すればよい。成膜用成分が、Mw50000以下のフェノキシ樹脂を含むと、高温高湿環境下における信頼性試験後においても接続構造体の接続箇所に浮きが発生することを顕著に抑制することができるため好適である。成膜用成分のポリスチレン換算のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0027】
接着剤組成物中の成膜用成分の含有量は、特に限定されず目的に応じて適宜決定してよいが、接着剤組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上である。該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0028】
<カチオン重合開始剤>
本発明の接着剤組成物は、カチオン重合開始剤として、第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤を含む。
カチオン重合開始剤として第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤を用いた本発明の接着剤組成物は、常温・冷蔵環境下で一定期間保管した場合であっても、接着性の低下を抑制することができる。
【0029】
第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤としては、第4級アンモニウムカチオンと、酸アニオン又はボレートアニオンとの塩を好適に用いることができる。
第4級アンモニウムカチオンとしては、式:NRaRbRcRd+で表されるカチオンを挙げることができる。式中、Ra、Rb、Rc及びRdは、直鎖、分岐鎖若しくは環状の炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であり、それぞれ水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、エステル基等を有していてもよい。
【0030】
酸アニオンとしては、無機酸アニオン及び有機酸アニオンの何れであってもよく、例えば、6フッ化アンチモン酸アニオン、6フッ化リン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオン、ジノニルナフタレンスルホン酸アニオン、ジノニルナフタレンスルホン酸アニオン、p-トルエンスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸アニオンが挙げられる。
【0031】
ボレートアニオンとしては、アルキルボレートアニオン及びアリールボレートアニオンが挙げられる。ボレートアニオンは、ハロゲン原子を有していてもよい。中でも、フッ素原子(F-;フルオロ基)を有するアリールボレートアニオンが好ましく、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンが特に好ましい。
【0032】
第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0033】
第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤の具体例としては、King Industries,Inc.製造のCXC-1612、CXC-1733、CXC-1738、TAG-2678、CXC-1614、TAG-2689、TAG-2690、TAG-2700、CXC-1802-60、CXC-1821等が挙げられる。これらは、楠本化成(株)から入手可能である。
【0034】
接着剤組成物中の第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤の含有量は、カチオン重合性成分の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは7質量%以上である。該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0035】
<シランカップリング剤>
本発明の接着剤組成物は、1分子中に2以上のメルカプト基を有し、主鎖が有機鎖であるシランカップリング剤を含む。
【0036】
本発明の接着剤組成物で使用するシランカップリング剤は、1分子中に2以上のメルカプト基と、1以上のアルコキシシリル基と、メルカプト基およびアルコキシシリル基を側鎖または末端基として有する有機鎖を有するものであれば特に限定されるものではない。メルカプト基を2以上有するシランカップリング剤は、FPCの金属配線との接着性を向上することができるため、接着強度を向上することができる。
シランカップリング剤のアルコキシシリル基は、トリアルコキシシリル基であることが好ましく、トリメトキシシリル基がさらに好ましい。
【0037】
シランカップリング剤の好適な一実施形態として、下記式(1)で表される化合物を例示することができる。
【0038】
【化1】
上記式(1)中、Rは、水酸基、メルカプト基、または下記式(2)で表されるアルコキシルシリル基から選択され、nは1以上100以下の整数である。ただし、Rの少なくとも1つは下記式(2)で表されるアルコキシシリル基であり、Rの少なくとも2つはメルカプト基である。
【化2】
上記式(2)中、R’は炭素数1~6のアルキル基であり、Xは水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、mは1~3の整数である。
【0039】
また、シランカップリング剤の好適な一実施形態として、下記式(3)で表される化合物を例示することができる。
【化3】
上記式(3)中、Rは、水酸基、メルカプト基、または下記式(4)で表されるアルコキシルシリル基から選択され、aは4以上10以下の整数であり、b、cおよびdは0以上10以下の整数である。ただし、Rの少なくとも1つは下記式(4)で表されるアルコキシシリル基であり、Rの少なくとも2つはメルカプト基である。
【化4】
上記式(4)中、R’は炭素数1~6のアルキル基であり、Xは水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、mは1~3の整数である。
【0040】
本発明の接着剤組成物で使用するシランカップリング剤において、アルコキシシリル基の基数に対するメルカプト基の基数の割合は、2以上であることが好ましく、3以上がより好ましい。また、アルコキシシリル基の基数に対するメルカプト基の基数の割合は、10以下であることが好ましく、7以下がより好ましい。アルコキシシリル基の基数に対するメルカプト基の基数の割合が2以上であることにより、有機成分であるバインダ組成物への相溶性に優れ、バインダ組成物やFPCの絶縁性樹脂と結合することで密着性を向上することができる。一方、アルコキシシリル基の基数に対するメルカプト基の基数の割合が10以下であることにより、ガラス基板等の無機成分への接着強度を向上することができる。
【0041】
本発明の接着剤組成物で使用するシランカップリング剤は、主鎖が有機鎖であるため、バインダ組成物との相溶性、密着性に優れる。
本発明の接着剤組成物で使用するシランカップリング剤の具体例としては、信越化学工業(株)製造のX-12-1154、X-12-1156等が挙げられる。
【0042】
本発明の接着剤組成物で使用するシランカップリング剤は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が500~3000であることが好ましい。ポリスチレン換算の重量平均分子量が500未満であると製造が困難となるおそれがあり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3000より大きくなると、製造の際の作業性が悪くなるおそれがある。
【0043】
本発明の接着剤組成物において、シランカップリング剤の含有量は、接着剤組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.3質量%以上3質量%以下である。シランカップリング剤の含有量が0.3質量%未満または3質量%を超えると、接着強度が低下し、基材との間に剥離が発生するおそれがある。
【0044】
<導電性粒子>
本発明の接着剤組成物は、導電性粒子を含んでいてもよい。導電性粒子を含むことにより、接着剤組成物及びそのフィルム状物は、導電性ペースト及び導電性フィルム、異方性導電ペースト及び異方性導電フィルムとして用いることができる。
【0045】
導電性粒子としては、異方性導電フィルムにおいて用いられる公知の導電性粒子を用いてよい。導電性粒子としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の金属の粒子;これら金属の合金の粒子;金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、樹脂等の粒子の表面に金属を被覆した被覆粒子等が挙げられる。樹脂粒子の表面に金属を被覆した金属被覆樹脂粒子を用いる場合、樹脂粒子の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。なお、導電性粒子は、接続後の導通性能に支障を来さなければ、端子間でのショートリスクの回避のために、上記粒子の表面に更に絶縁薄膜を被覆したものや、絶縁粒子を表面に付着させたものなど絶縁処理を施したものであってもよい。これら導電性粒子は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0046】
導電性粒子の平均粒子径は、特に限定されず目的に応じて適宜決定してよいが、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下、さらにより好ましくは20μm以下である。該平均粒子径の下限は、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。導電性粒子の平均粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により観察し、複数個(n≧10)の導電性粒子について粒子径を測定し、その平均値を算出すればよい。もしくは、画像型粒度分布測定装置(例として、FPIA-3000(マルバーン社))を用いて測定した測定値(N=1000以上)であってもよい。
【0047】
導電性粒子を用いる場合、接着剤組成物中の導電性粒子の含有量は、特に限定されず目的に応じて適宜決定してよいが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。該含有量の上限は、所期の異方導電性を得る観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下である。
【0048】
本発明の接着剤組成物は、必要に応じてさらに他の成分を含んでもよい。かかる成分としては、例えば、有機充填材(例えば、ブタジエン系ゴム粒子、アクリル系ゴム粒子、シリコーン系ゴム粒子)、絶縁性無機フィラー(例えば、シリカフィラー)などの導通を阻害しない充填剤、表面改質剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤等の、接着剤組成物の製造において使用される公知の添加剤が挙げられる。
【0049】
本発明の接着剤組成物は、高い接着強度を有し、常温・冷蔵環境下で一定期間保管した場合であっても、接着性の低下を抑制し得る。したがって、本発明の接着剤組成物は、FPCをガラス基板に実装するFOG実装等の基材違いにより高い接着強度が必要とされる接合にも好適に使用することができる。また、導電性粒子を含む場合、導電性ペーストや異方性導電ペーストとして用いることが可能である。
【0050】
[接着フィルム]
本発明の接着剤組成物は、成膜性が良好であり、好適にフィルム状物(接着フィルム)とし得る。本発明は、本発明の接着剤組成物からなる接着フィルムも包含するものである。
【0051】
本発明の接着フィルムは、単層からなっても複数層からなってもよい。複数層からなる場合、接着フィルムは、本発明の接着剤組成物からなる第1接着剤層と、該第1接着剤層上に設けられた、本発明の接着剤組成物からなる第2接着剤層とを少なくとも含む。第1接着剤層と第2接着剤層の少なくとも一方は、導電性粒子を含むことが好ましい。また本発明の接着剤層に、本発明とは異なる層を設けてもよい。その層の前後を本発明の接着剤層で挟持してもよい。このとき、導電性粒子は本発明の接着剤層の少なくともいずれか一方に含まれてもよく、異なる層に含まれてもよい。この異なる層は、本発明とは異なる接着剤組成物からなる層であってもよく、接着剤層ではない(接着に寄与しない)樹脂層であってもよい。本発明とは異なる層は絶縁性であることが好ましい。
【0052】
接着フィルムは、例えば、本発明の接着剤組成物を、必要に応じて有機溶剤と混合した後に、剥離基材上に塗布し、更に乾燥させて接着剤層を形成させることにより製造することができる。接着剤組成物の塗布は、バーコーター等の塗布装置を用いて実施すればよい。ドクターブレード法など、公知の接着フィルムの塗布方式を用いることができる。複数層からなる接着フィルムを製造する場合、上記塗布、乾燥の工程を繰り返し複数回実施すればよい。もしくは個別に製造し、ラミネートなどで積層すればよい。
【0053】
剥離基材は、接着フィルムを支持することができ、所期のタイミングにて接着フィルムから剥離することができるフィルム状物である限り特に限定されない。剥離基材の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリ-4-メチルペンテン-1(PMP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のプラスチック材料を用いてよい。剥離基材はまた、接着フィルムと接合する側の表面に剥離層を有する基材であってよく、剥離層は、例えば、シリコーン樹脂やポリオレフィン樹脂等の剥離剤を含んでよい。
【0054】
剥離基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは50μm以下である。剥離基材の厚さの下限は、特に限定されないが、接着フィルムの製造時、スリット加工時の取り扱い性の観点から、好ましくは8μm以上である。
【0055】
本発明の接着フィルムの厚さは、特に限定されず目的に応じて適宜決定してよいが、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。接着剤層の厚さの上限は、特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下である。複数層で積層している場合は、合計の厚みとする。
【0056】
接着フィルムは、所期の幅を有するようにスリット加工してよい。スリット加工の際、切削屑等により接着剤層が汚染されるのを防止すべく、その露出表面にカバーフィルムを設けてよい。この場合の厚みは、目的に応じて適宜選択すればよい。カバーフィルムは、接着フィルムのスリット加工時に使用される公知のフィルムを用いてよい。カバーフィルムはスリットなどの製造工程の他、接続使用に用いる製品として、使用時の汚染防止のために剥離基材とは別に設けられていてもよい。この場合、カバーフィルムは剥離性があることが好ましく、厚みは剥離基材と同じか、より薄いことが好ましい。
【0057】
本発明の接着フィルムは、高い接着強度を有し、常温・冷蔵環境下で一定期間保管した場合であっても、接着性の低下を抑制し得る。したがって、本発明の接着剤組成物は、FPCをガラス基板に実装するFOG実装等の基材違いにより高い接着強度が必要とされる接合にも好適に使用することができる。また、導電性粒子を含む場合、導電性ペーストや異方性導電ペーストとして用いることが可能である。
【0058】
[接続構造体]
本発明の接着剤組成物又は接着フィルムを用いて、電子部品同士を接着した接続構造体を製造することができる。本発明は、第1の電子部品と第2の電子部品とが本発明の接着剤組成物又は本発明の接着フィルムにより接続されている接続構造体を包含する。
【0059】
第1の電子部品としては、例えば、一般的なPWBでよく、リジッド基板、ガラス基板、セラミック基板、プラスチック基板、FPC等が挙げられ、また、第2の電子部品としては、FPC、ICチップ、ICチップ以外の半導体素子等が挙げられる。電子部品の制約は特になく、接続構造体の用途も特に制限はない。例えば、携帯情報端末に使用してもよく、車載用の電気的実装に用いてもよい。本発明においては、一例として、FOB、FOG、FOP、FOF、COG、COP等の多用な接続構造体を製造し得る。特に、FOG、FOPに好ましく適用できる。
【0060】
[接続構造体の製造方法]
本発明の接続構造体の製造方法は、本発明の接着剤組成物又は接着フィルムにより第1の電子部品と第2の電子部品とが接続されている接続構造体を製造し得る限り特に限定されない。以下、本発明の接続構造体を製造する方法について一例を示す。
【0061】
一実施形態において、本発明の接続構造体の製造方法は、第1の電子部品と第2の電子部品とを、本発明の接着剤組成物又は接着フィルムを介在させて、圧着する工程を含む。
【0062】
はじめに第1の電子部品をステージに載置し、その上に本発明の接着剤組成物又は接着フィルムを設け、次いで第2の電子部品を載置する。ここで、ステージに載置した第1の電子部品上に本発明の接着剤組成物又は接着フィルムを設けた後、第1の電子部品の電極と第2の電子部品の電極が対向するように位置合わせし、第2の電子部品側から圧着ツールにて仮圧着を実施する。仮圧着時の温度、圧力及び時間は、具体的な設計に応じて適宜決定してよく、例えば60~80℃、0.5~2MPa、0.5~2秒間とし得る。後述する本圧着を実施するに先立ち、斯かる仮圧着を実施することにより、電子部品同士(それぞれの部品の導通部同士)をより精確に位置合わせして接続することができ好適である。仮圧着を行うことで、より高圧力で押圧する本圧着時の位置ずれの抑制が期待できる。
【0063】
仮圧着の後、第2の電子部品側から圧着ツールにて本圧着を実施する。本圧着時の温度、圧力及び時間は、接着フィルムを用いて電子部品を接着する際に用いられる公知の任意の条件としてよく、具体的な設計に応じて適宜決定してよい。例えば、低温(例えば、200℃以下、180℃以下、160℃以下)かつ短時間(例えば、10秒間以下、8秒間以下、6秒間以下)の圧着であっても、第1の電子部品と第2の電子部品を良好に接着することが可能である。
【0064】
なお、仮圧着、本圧着の別を問わず、第2の電子部品と圧着ツールの間に緩衝材(例えば緩衝シート)を設けてよい。緩衝材は、その使用の有無も含めて、電子部品の組み合わせに応じて適宜調整、決定すればよい。
【0065】
本発明の接着剤組成物又は接着フィルムは、常温・冷蔵環境下で一定期間保管した場合であっても、接着性の低下を抑制することができる。例えば、160℃、3MPa、5秒間という接着条件にて接着した場合に、本発明の接着剤組成物又は接着フィルムを用いて製造されたFPCとガラス基板との接続構造体は、製造直後の接着剤組成物(接着フィルム)を用いたか常温・冷蔵環境下で一定期間保管した接着剤組成物(接着フィルム)を用いたかによらず、90度剥離試験において10N/cm以上の接着強度を呈することができる。
【実施例0066】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0067】
[実施例1]
-接着剤組成物の調製-
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:エピコート4007P、三菱ケミカル(株)製、Mw=20,000~30,000)26.4部、フェノキシ樹脂(商品名:FX293、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、Mw=40,000~50,000)26.4部、2官能脂環式エポキシ化合物(商品名:セロキサイド2021P、(株)ダイセル製、下記式(5)で表される化合物)18.9部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YL980、三菱ケミカル(株)製、Mw=300~2,200)7.6部、シランカップリング剤(商品名:X-12-1154、信越化学工業(株)製)0.8部、第4級アンモニウム塩系熱酸発生剤(商品名:CXC-1821、King Industries,Inc.製)2.3部、導電性粒子(商品名:ミクロパール、積水化学工業(株)製、平均粒径4μmのNi樹脂粒子)5.0部、ブタジエン系ゴム(商品名:RKB-5515B、レジナス化成(株)製)12.6部を、溶媒としてPMAを全体の固形分が43.4%になるよう加え、均一に混合して、接着剤組成物を得た。
【0068】
【0069】
-接着フィルムの作製-
剥離基材として、PETフィルム(厚さ50μm)を用意した。この剥離基材上に、乾燥後の接着フィルム(接着剤層)の厚さが18μmとなるように、接着剤組成物を均一に塗布した。その後、70℃のオーブン中で5分間乾燥させて、剥離基材上に接着剤層を形成した。次いで、接着剤層の露出面に、カバーフィルムを45℃でラミネート処理した。
【0070】
[実施例2および3、比較例1および2]
シランカップリング剤等の配合量を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製し、接着フィルムを作製した。
【0071】
[比較例3~6]
シランカップリング剤を、1分子中にエポキシ基を1つ有するもの(商品名:A187、東レ・ダウコーニング(株)製)、1分子中にエポキシ基を2以上有するもの(商品名:X-12-981S、信越化学工業(株)製)、1分子中にイソシアネート基を2以上有するもの(商品名:X-12-1159L、信越化学工業(株)製)、1分子中にアミノ基を2以上有するもの(商品名:X-12-972F、信越化学工業(株)製)に変更し、各成分の配合量を表1に示す通り変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製し、接着フィルムを作製した。
【0072】
[実施例4、比較例7~10]
4官能チオール化合物(商品名:カレンズMT PE1、昭和電工(株)製)を配合し、シランカップリング剤の種類、各成分の配合量を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製し、接着フィルムを作製した。
【0073】
以下、試験・評価方法について説明する。
【0074】
<圧着状態>
-接続構造体の作製-
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを幅1.0mmにスリット加工した後、カバーフィルムを剥離した。次いで、接着剤層の露出面がAlMoIZOガラス基板(厚さ0.7mm)と接合するように、接着フィルムをガラス基板のエッジに貼り、45℃のホットプレート上で均一に力を加えた。その後、剥離基材を剥離し、接着剤層の露出面が完全に覆われるようにフレキシブルプリント基板(FPC;厚さ50μm)の金配線部分を接続し貼り合わせた。接着剤層を介在させてFPCとガラス基板とを熱圧着し、FPCとガラス基板の対向した導通部を全て接着剤層の硬化物により接着することで接続された接続構造体を得た。熱圧着の条件は、160℃、3MPa、5秒間であった。
【0075】
得られた接続構造体について、接着直後と、プレッシャークッカー装置(110℃、85%RH)内に32時間保持した後に、微分干渉顕微鏡を用いてAlMoIZOガラス基板上の金属薄膜を観察した。評価は、極微小な凹凸状態が強く観察され圧着が強い(〇)、凹凸状態が弱く圧着が弱い(△)、凹凸が確認できず接合が不十分(×)の3段階で判断した。
【0076】
<接着剤層の浮き>
-接続構造体の作製-
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを幅1.0mmにスリット加工した後、カバーフィルムを剥離した。次いで、接着剤層の露出面がSiNガラス基板またはITOガラス基板(厚さ各0.7mm)と接合するように、接着フィルムをガラス基板のエッジに貼り、45℃のホットプレート上で均一に力を加えた。その後、剥離基材を剥離し、接着剤層の露出面が完全に覆われるようにフレキシブルプリント基板(FPC;厚さ50μm)の金配線部分を接続し貼り合わせた。接着剤層を介在させてFPCとガラス基板とを熱圧着し、FPCとガラス基板の対向した導通部を全て接着剤層の硬化物により接着することで接続された接続構造体を得た。熱圧着の条件は、160℃、3MPa、5秒間であった。
【0077】
得られた接続構造体について、接着直後と、プレッシャークッカー装置(110℃、85%RH)内に32時間保持した後に、視認により接着剤層の浮き状態を確認した。評価は、浮きがない(〇)、わずかに浮きあり(△)、浮きあり(×)の3段階で行った。
【0078】
<導通抵抗の評価>
接着剤層の浮きを評価したITOガラス基板とFPCとの接続構造体について、接着直後と、プレッシャークッカー装置(110℃、85%RH)内に32時間保持した後に、導通抵抗を測定した。
【0079】
<接着強度の評価>
圧着状態を評価した接続構造体について、90度剥離試験により接着強度を測定した。詳細には、FPCおよび硬化物を長さ1.0cmになるよう切り込み、その長さ1.0cmのFPCをつかみ具で掴み、室温(25℃)下、50mm/分の速度で垂直方向にFPCがガラス基板から剥離するまで引き剥がした時の荷重(N/cm)を測定した。なお、測定には、テンシロン試験機(株式会社オリエンテック製:STA-1150)を使用した。また、55℃、12時間保管した接続構造体についても、同様に接着強度について評価した。
【0080】
実施例及び比較例の構成成分および評価結果を表1に示す。
【0081】
【0082】
表1の結果から、1分子中に2以上のメルカプト基を有するシランカップリング剤を使用した場合、ガラスとFPCの異なる基材を接合する際にも、10N/cmという高い接着強度が発現することが確認された。
【0083】
また、比較例3~6によれば、主鎖が有機鎖であって、メルカプト基以外の反応基、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、およびアミノ基を1分子中に2以上有するシランカップリング剤を使用した場合、接着強度が十分でなく、圧着状態や浮きの問題が発生し、導通抵抗も高くなることが確認された。
【0084】
さらに、メルカプト基の影響を確認するために4官能チオール化合物を配合した接着剤組成物(比較例7~10、実施例4)では、4官能チオール化合物を配合しない接着剤組成物(比較例3~6、実施例2)と、接着強度や圧着状態等に大きな相違が認められず、1分子中に2以上のメルカプト基を有するシランカップリング剤が接着強度当の向上に有用であることが確認された。