(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185718
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】医療用フィルム送達具および医療用具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A61B17/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093502
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓弥
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM32
4C160NN03
4C160NN09
4C160NN10
(57)【要約】
【課題】体内の処置部に対してフィルムを密着させやすい医療用フィルム送達具と医療用具の製造方法を提供する。
【解決手段】医療用のフィルムを体内に送達するための医療用フィルム送達具5であって、長手方向に遠位端11と近位端12を有し、かつ第1内腔13を有する第1シャフト10と、第1シャフト10の第1内腔13に配され、第1シャフト10に対して長手方向に移動可能な第2シャフト20と、第1シャフト10の遠位部に配され、拡径可能な第1拡径部40と、第2シャフト20の遠位部に配され、拡径可能な第2拡径部50と、を有し、第1拡径部40と第2拡径部50は拡径時の形状が互いに異なっている医療用フィルム送達具5。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用のフィルムを体内に送達するための医療用フィルム送達具であって、
長手方向に遠位端と近位端を有し、かつ第1内腔を有する第1シャフトと、
前記第1シャフトの前記第1内腔に配され、前記第1シャフトに対して前記長手方向に移動可能な第2シャフトと、
前記第1シャフトの遠位部に配され、拡径可能な第1拡径部と、
前記第2シャフトの遠位部に配され、拡径可能な第2拡径部と、を有し、
前記第1拡径部と前記第2拡径部は拡径時の形状が互いに異なっている医療用フィルム送達具。
【請求項2】
前記第2拡径部は、前記フィルムに接触する接触部を有する請求項1に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項3】
第3内腔を有し、前記第1シャフトが前記第3内腔に配される第3シャフトをさらに有し、
前記第3内腔において前記第3シャフトの内面は、前記フィルムに接触する接触部を有する請求項1または2に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項4】
前記第1シャフトに対して前記第2シャフトを最も遠位に位置させたときに、前記第2拡径部は、前記第1拡径部よりも遠位側に位置する請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項5】
前記第1拡径部と前記第2拡径部は、拡径時の最大外径が互いに異なる請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項6】
前記第1拡径部の拡径時の最大外径は、前記第2拡径部の拡径時の最大外径よりも大きい請求項5に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項7】
前記第1シャフトの前記第1内腔に前記第2拡径部を収納したときに、前記第1シャフトの前記長手方向において前記第1拡径部と前記第2拡径部とが重なる請求項1~6のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項8】
第3内腔を有し、前記第1シャフトが前記第3内腔に配される第3シャフトをさらに有し、
前記第3シャフトの前記第3内腔に前記第1拡径部と前記第2拡径部を収納したときに、前記第3シャフトの長手方向において前記第2拡径部が前記第1拡径部よりも遠位側に位置する請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項9】
前記第1拡径部がバルーンであり、
前記第1シャフトは第2内腔を有し、前記第2内腔が前記バルーンの内部に連通している請求項1~8のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項10】
前記第2拡径部が第1エレメントおよび第2エレメントを有し、前記第1エレメントと前記第2エレメントはそれぞれ長尺な部分を有する請求項1~9のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項11】
前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに、前記第2シャフトの径方向において前記第1エレメントの少なくとも一部が前記第2エレメントから離れるように配される請求項10に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項12】
前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに、前記第1エレメントと前記第2エレメントは互いに平行に配されている部分を有する請求項10または11に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項13】
前記第1拡径部が直管部を有するバルーンである請求項12に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項14】
前記第2拡径部がループワイヤである請求項1~9のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項15】
前記第1拡径部が球形状または長円球形状を有するバルーンである請求項14に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項16】
医療用のフィルムと、長手方向に遠位端と近位端を有しかつ第1内腔を有する第1シャフト、前記第1シャフトの前記第1内腔に配されて前記第1シャフトに対して前記長手方向に移動可能な第2シャフト、第3内腔を有しかつ前記第1シャフトが前記第3内腔に配される第3シャフト、前記第1シャフトの遠位部に配されて拡径可能な第1拡径部、前記第2シャフトの遠位部に配されて拡径可能な第2拡径部を有し、前記第1拡径部と前記第2拡径部は拡径時の形状が互いに異なっている医療用フィルム送達具と、を準備する工程と、
前記第2拡径部に前記フィルムを取り付ける工程と、
前記フィルムが取り付けられた前記第2拡径部を前記第3シャフトの前記第3内腔に配置する工程と、を含む医療用具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を用いて体内に医療用のフィルムを送達するための術具と医療用具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下手術では、患部の治癒促進、出血緩和、臓器の癒着抑制等の目的で、体内の病変部が切除された部分にフィルムを留置し、貼り付ける手技が行われることがある。このような手技を行うための器具の一例として、特許文献1には、シートを術部に圧迫するための圧迫部を有している内視鏡下手術用デバイスが開示されている。特許文献1には、圧迫部が、内シャフトの先端側の部位に設けられたバルーンからなることも開示されている。シートは、内シャフトの先端部分に装着されたバルーンの外周面上に一重巻きあるいは複数巻きの状態で巻回又は巻き付けられて装着されていることも開示されている。
【0003】
特許文献2には、シート挿入用ディバイスが開示されている。特許文献2には、シート押し出し用の押出部材がシャフトの先端部に設けられた二股状のシート巻取部を有すること、シート巻取部は、シートを差し込める大きさの空隙をおいて相対向して配置された二つの板部を有することが開示されている。
【0004】
特許文献3には、シート保持部材と外筒部材を有するシート挿入具が開示されている。シート保持部材は、互いに束ねられた4本の棒状部材によって少なくとも先端側が形成され、各棒状部材の間に前記シートを挟み込むことによってシートを保持する。
【0005】
特許文献4には、シート状インプラントを外科的部位に送達するシステムが、遠位端部および近位端部をそれぞれ有する第1の展開アームと第2展開アームを有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-147567号公報
【特許文献2】特開2013-116337号公報
【特許文献3】特開2020-36670号公報
【特許文献4】特表2020-505183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~4に記載されたデバイスでは、体内組織へのフィルムの密着度が十分ではないことがあり、この点で改善の余地があった。そこで、本発明は、体内の処置部にフィルムを密着させやすい医療用フィルム送達具と医療用具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得た本発明の医療用フィルム送達具の一実施態様は、医療用のフィルムを体内に送達するための医療用フィルム送達具であって、長手方向に遠位端と近位端を有し、かつ第1内腔を有する第1シャフトと、第1シャフトの第1内腔に配され、第1シャフトに対して長手方向に移動可能な第2シャフトと、第1シャフトの遠位部に配され、拡径可能な第1拡径部と、第2シャフトの遠位部に配され、拡径可能な第2拡径部と、を有し、第1拡径部と第2拡径部は拡径時の形状が互いに異なっている点に要旨を有する。本発明に係る医療用フィルム送達具によれば、第1拡径部と第2拡径部の拡径時の形状が互いに異なっているため、第1拡径部と第2拡径部のいずれか一方がフィルムの展開補助機能を担い、他方がフィルムの押し付け機能を担うことが可能となる。例えば、第2拡径部を用いて処置部でフィルムを展開した後、第1拡径部を用いてフィルムを押し付けることで、処置部にフィルムを密着させやすくなる。
【0009】
上記医療用フィルム送達具において、第2拡径部は、フィルムに接触する接触部を有していてもよい。また、上記医療用フィルム送達具は、第3内腔を有しかつ第1シャフトが第3内腔に配される第3シャフトをさらに有し、第3内腔において第3シャフトの内面がフィルムに接触する接触部を有していてもよい。
【0010】
上記医療用フィルム送達具では、第1シャフトに対して第2シャフトを最も遠位に位置させたときに、第2拡径部が第1拡径部よりも遠位側に位置していてもよい。上記医療用フィルム送達具では、第1拡径部と第2拡径部は、拡径時の最大外径が互いに異なっていてもよい。上記医療用フィルム送達具では、第1拡径部の拡径時の最大外径が、第2拡径部の拡径時の最大外径よりも大きくてもよい。
【0011】
上記医療用フィルム送達具では、第1シャフトの第1内腔に第2拡径部を収納したときに、第1シャフトの長手方向において第1拡径部と第2拡径部とが重なってもよい。上記医療用フィルム送達具が、第3内腔を有しかつ第1シャフトが第3内腔に配される第3シャフトをさらに有している場合、第3シャフトの第3内腔に第1拡径部と第2拡径部を収納したときに、第3シャフトの長手方向において第2拡径部が第1拡径部よりも遠位側に位置してもよい。
【0012】
上記医療用フィルム送達具において、第1拡径部がバルーンであり、第1シャフトは第2内腔を有し、第2内腔がバルーンの内部に連通していてもよい。第2拡径部が第1エレメントおよび第2エレメントを有し、第1エレメントと第2エレメントはそれぞれ長尺な部分を有していてもよい。第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第2シャフトの径方向において第1エレメントの少なくとも一部が第2エレメントから離れるように配されていてもよい。
【0013】
上記医療用フィルム送達具において、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第1エレメントと第2エレメントは互いに平行に配されている部分を有していてもよい。第1拡径部が直管部を有するバルーンであってもよい。
【0014】
上記医療用フィルム送達具において、第2拡径部がループワイヤであってもよい。また、第1拡径部が球形状または長円球形状を有するバルーンであってもよい。
【0015】
本発明は医療用具の製造方法も提供する。本発明の医療用具の製造方法の一実施態様は、医療用のフィルムと、長手方向に遠位端と近位端を有しかつ第1内腔を有する第1シャフト、第1シャフトの第1内腔に配されて第1シャフトに対して長手方向に移動可能な第2シャフト、第3内腔を有しかつ第1シャフトが第3内腔に配される第3シャフト、第1シャフトの遠位部に配されて拡径可能な第1拡径部、第2シャフトの遠位部に配されて拡径可能な第2拡径部を有し、第1拡径部と第2拡径部は拡径時の形状が互いに異なっている医療用フィルム送達具と、を準備する工程と、第2拡径部にフィルムを取り付ける工程と、フィルムが取り付けられた第2拡径部を第3シャフトの第3内腔に配置する工程と、を含む点に要旨を有する。本発明に係る医療用具の製造方法はフィルムが取り付けられた第2拡径部を第3シャフトの第3内腔に配置する工程を含むため、フィルムが第2拡径部と第3シャフトによって保持されやすくなる。その結果、フィルムの送達中に第3シャフトからフィルムが脱落することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る医療用フィルム送達具によれば、第1拡径部と第2拡径部のいずれか一方がフィルムの展開補助機能を担い、他方がフィルムの押し付け機能を担うことが可能となる。また、本発明に係る医療用具の製造方法によれば、フィルムが第2拡径部と第3シャフトによって保持されやすくなるため、フィルムの送達中に第3シャフトからフィルムが脱落することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療用フィルム送達具の側面図(一部断面図)である。
【
図2】
図1に示した医療用フィルム送達具のII-II線における切断部端面図である。
【
図3】
図2に示した医療用フィルム送達具の変形例を示す切断部端面図である。
【
図4】
図1に示した医療用フィルム送達具の第3シャフトへの第2拡径部の収納状態を示す側面図(一部断面図)である。
【
図5】
図1に示した医療用フィルム送達具の第1シャフトに第2拡径部を収納し、かつ第3シャフトから第1拡径部を突出させた状態を示す側面図(一部断面図)である。
【
図6】
図1に示した医療用フィルム送達具の第3シャフトおよび第1シャフトへの第2拡径部の収納状態を示す側面図(一部断面図)である。
【
図7】
図1に示した医療用フィルム送達具の遠位部を拡大した側面図である。
【
図8】
図7に示した医療用フィルム送達具の遠位部の変形例を示す側面図である。
【
図9】
図7に示した医療用フィルム送達具の遠位部の他の変形例を示す側面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る医療用フィルム送達具の側面図(一部断面図)である。
【
図11】医療用のフィルムの送達方法の一例を示す模式図である。
【
図12】医療用のフィルムの送達方法の一例を示す模式図である。
【
図13】医療用のフィルムの送達方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0019】
本発明の医療用フィルム送達具の一実施態様は、医療用のフィルムを体内に送達するための医療用フィルム送達具であって、長手方向に遠位端と近位端を有し、かつ第1内腔を有する第1シャフトと、第1シャフトの第1内腔に配され、第1シャフトに対して長手方向に移動可能な第2シャフトと、第1シャフトの遠位部に配され、拡径可能な第1拡径部と、第2シャフトの遠位部に配され、拡径可能な第2拡径部と、を有し、第1拡径部と第2拡径部は拡径時の形状が互いに異なっている点に要旨を有する。本発明に係る医療用フィルム送達具によれば、第1拡径部と第2拡径部の拡径時の形状が互いに異なっているため、第1拡径部と第2拡径部のいずれか一方がフィルムの展開補助機能を担い、他方がフィルムの押し付け機能を担うことが可能となる。例えば、第2拡径部を用いて処置部でフィルムを展開した後、第1拡径部を用いてフィルムを押し付けることで、処置部にフィルムを密着させやすくなる。
【0020】
医療用フィルム送達具は、内視鏡の処置具挿通チャンネルを経由して体腔内に導入され、医療用のフィルムを体内に送達および留置するために用いられる。以下では医療用フィルム送達具を単に送達具と称することがある。
【0021】
医療用のフィルムは、患部の治癒促進、出血緩和、臓器の癒着抑制等の目的で、体内の病変部が切除された部分等の処置部に留置される。医療用のフィルムには、シートまたは膜と称されるものも含まれる。以下では医療用のフィルムを単にフィルムと称することがある。フィルムの形状は特に限定されないが、例えば矩形状にすることができる。フィルムの大きさは処置部の大きさに合わせて適宜設定することができる。フィルムは、生分解性または生体吸収性を有していてもよい。
【0022】
本発明において、医療用具は、医療用のフィルムと医療用フィルム送達具を含むものである。
【0023】
図1~
図13を参照しながら送達具および医療用具の構成例について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る医療用フィルム送達具の側面図(一部断面図)である。
図2は
図1に示した医療用フィルム送達具のII-II線における切断部端面図である。
図3は
図2に示した医療用フィルム送達具の変形例を示す切断部端面図である。
図4は
図1に示した医療用フィルム送達具の第3シャフトへの第2拡径部の収納状態を示す側面図(一部断面図)である。
図5は
図1に示した医療用フィルム送達具の第1シャフトに第2拡径部を収納し、かつ第3シャフトから第1拡径部を突出させた状態を示す側面図(一部断面図)である。
図6は
図1に示した医療用フィルム送達具の第3シャフトおよび第1シャフトへの第2拡径部の収納状態を示す側面図(一部断面図)である。
図7は
図1に示した医療用フィルム送達具の遠位部を拡大した側面図である。
図8~
図9は
図7に示した医療用フィルム送達具の遠位部の変形例を示す側面図である。
図10は本発明の他の実施形態に係る医療用フィルム送達具の側面図(一部断面図)である。
図11~
図13は医療用のフィルムの送達方法の一例を示す模式図である。送達具5は第1シャフト10と第2シャフト20と第1拡径部40と第2拡径部50を有している。なお、
図7~
図9は、第1シャフト10から突出させたときの第2拡径部50の形状を示している。
【0024】
送達具5の遠位側とは、第1シャフト10の長手方向xの遠位端11側であって処置対象側を指す。送達具5の近位側とは、第1シャフト10の長手方向xの近位端12側であって使用者の手元側を指す。各部材をその長手方向で二等分割したときの近位側を近位部、遠位側を遠位部と称することがある。送達具5の内側および外側とは、第1シャフト10の径方向における内側および外側を指し、径方向の内側とは第1シャフト10の長手方向xの中心軸に近い側を指す。ここで、長手方向の中心軸とは、長手方向に延びる中心軸と言い換えることもできる。以降の説明においても同様である。
【0025】
まず、フィルム70の留置方法の一例について説明する。第3シャフト30の第3内腔33に第1シャフト10を挿入する。このとき、
図11に示すように、第1拡径部40は第3内腔33に収納されている。また、第1シャフト10内には第2シャフト20が挿入されているが、第2拡径部50は第1シャフト10から突出している。
図11に示すようにフィルム70が取り付けられた第2拡径部50は第3シャフト30の第3内腔33に配されている。
図11の状態で、内視鏡を経由して体内の処置部80の近傍まで送達具5を挿入する。第3シャフト30を近位側に動かす等の操作により、
図12に示すように、第3シャフト30から第2拡径部50を突出させてフィルム70を露出させて、フィルム70を処置部80に仮置きする。このとき、フィルム70のコシやハリによってフィルム70の少なくとも一部が自発的に展開されてもよい。フィルム70が処置部80に仮置きされたら、
図13または
図1に示すように第1拡径部40よりも第2拡径部50を遠位側に位置させる。
図13に示すように第1拡径部40がバルーン42である場合にはバルーン42を拡張させる。拡張した第1拡径部40を用いてフィルム70を処置部80に押し付ける。なお、
図13または
図1の状態に代えて、
図5に示すように第1シャフト10の第1内腔13に第2拡径部50を収納した状態で、拡張した第1拡径部40を用いてフィルム70を処置部80に押し付けてもよい。次いで、
図6に示すように、第1シャフト10を第3シャフト30の第3内腔33に収納し、送達具5全体を近位側に移動させる。これにより、フィルム70の処置部80への送達および留置が完了する。
【0026】
次に送達具5を構成する各部材について説明する。
図1~
図2に示すように第1シャフト10は長手方向xと径方向と周方向pを有している長尺な部材である。第1シャフト10は、長手方向xに遠位端11と近位端12を有している。第1シャフト10内に第2シャフト20が配置されるため、第1シャフト10は例えば筒形状を有していることが好ましく、両端が開口した筒形状を有していることがより好ましい。第1シャフト10は少なくとも第1内腔13を有している。第1内腔13には第2シャフト20が配される。
図1に示すように第1拡径部40がバルーン42である場合には、第1シャフト10は第2内腔14を有していてもよい。第2内腔14は、第1拡径部40を拡縮させるための流体の流路として機能する。第1内腔13は、第2内腔14よりも遠位側まで延在していてもよい。
【0027】
図1~
図2では、第1シャフト10が複数の内腔を有するマルチルーメン構造である例を示したが、この態様に限られない。
図3に示すように、第1シャフト10が、長手方向を有するアウターシャフト101と、アウターシャフト101の内腔に配置されているインナーシャフト102を有していてもよい。インナーシャフト102は、アウターシャフト101の遠位端から延出していてもよい。その場合、インナーシャフト102の内腔を第1内腔13として、アウターシャフト101とインナーシャフト102との間の空間を第2内腔14として用いることができる。このように第1シャフト10を多重管構造にすることで、第1内腔13に収納される第2シャフト20が第1シャフト10の長手方向xの中心軸に近い位置に配置されやすくなる。その結果、第2拡径部50も長手方向xの中心軸に近い位置に配置されやすくなる。
【0028】
第1シャフト10は、第2拡径部50を突出させるための一または複数の開口を有している。
図1では、第1シャフト10はその遠位端面に遠位側開口15を有している。第1内腔13は、遠位側開口15を通じて第1シャフト10の外と連通している。
【0029】
第1シャフト10は可撓性を有していることが好ましい。これにより体腔形状に沿って第1シャフト10を変形させることができる。形状保持のため、第1シャフト10は弾性を有していることが好ましい。第1シャフト10は、樹脂、金属、または樹脂と金属の組み合わせから構成されていることが好ましい。第1シャフト10としては、樹脂チューブ;金属管;線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手方向xに接続したものが挙げられる。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが挙げられる。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。線材の断面の形状は、例えば、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。長円形状には楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれ、以降の説明でも同様である。網目構造の種類は特に制限されず、コイルの巻き数や密度も特に制限されない。網目構造やコイルは、第1シャフト10の長手方向xの全体に亘って一定の密度で形成されてもよく、第1シャフト10の長手方向xの位置によって密度が異なるように形成されてもよい。金属管の可撓性を高めるために、金属管の外側表面には切込みや溝が形成されていてもよい。切込みや溝の形状は、直線状、円弧状、環状、らせん状やこれらの組み合わせとすることができる。第1シャフト10が筒状の樹脂チューブである場合、第1シャフト10は単層または複数層から構成することができ、長手方向xまたは周方向pの一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0030】
第1拡径部40は、第1シャフト10の遠位部に配されている拡径可能な部分である。第1拡径部40は、第1シャフト10の径方向の外側に向かって拡張する。拡径させた第1拡径部40でフィルムを押し付けることによって処置部にフィルムを密着させることができる。処置部の近傍まで送達されたフィルムの隙間に第1拡径部40を入り込ませて拡径させることによって、一気にフィルムを広げて処置部にフィルムを圧着させることが好ましい。
【0031】
第1拡径部40は、後述する第3シャフト30内に収納可能であることが好ましい。第3シャフト30に収納することで処置部以外の場所への第1拡径部40の接触を防ぐことができる。最も収縮させたときの第1拡径部40の最大外径は、第3シャフト30の第3内腔33における最小内径よりも小さいことが好ましい。
【0032】
第1拡径部40は、例えば、バルーン、複数の弾性ワイヤを備えたバスケット、ステント、スネアであってもよい。中でも、
図1に示すように第1拡径部40はバルーン42であることが好ましい。バルーン42は生体壁と接触しても傷付けにくいからである。バルーン42を用いてフィルムの押し付け操作を行うことにより、処置部へのフィルムの密着度を高めることができる。なお、バスケット、ステント、またはスネアを用いるとこれらを構成する線材が生体壁に食い込みやすくなるため、フィルムを強固に貼り付けることができる。
【0033】
第1拡径部40がバルーン42である場合、第1シャフト10は第2内腔14を有し、第2内腔14がバルーン42の内部に連通していることが好ましい。これにより、第2内腔14を通じてバルーン42の内部に流体が導入されることでバルーン42が第1シャフト10の径方向の外側に向かって拡張する。また、バルーン42の内部から流体を除去することでバルーン42が収縮する。流体の導入と除去を行うために、第1シャフト10の近位部には流体出入口18が配されていてもよい。
【0034】
図1、
図4~
図6では、バルーン42の遠位端部と近位端部がそれぞれ第1シャフト10の外面に固定されている。詳細には、第1シャフト10のうち第2内腔14を有しない区間にバルーン42の遠位端部が固定されており、第1シャフト10のうち第1内腔13と第2内腔14を有する区間にバルーン42の近位端部が固定されている。
【0035】
バルーン42は、樹脂を成形することにより製造することができる。バルーン42を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
拡張性能や拡張圧に対する寸法安定性を高めるために、バルーン42に補強材が配されていてもよい。補強材としては、例えば繊維材料を用いることができ、具体的にはポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等が好適に用いられる。これらの繊維材料は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。
【0037】
バルーン42は、拡張圧に応じて外径が変化するコンプライアント型であってもよく、所定の拡張圧以上では、拡張圧を上げてもバルーン42の外径が殆ど増加しないノンコンプライアント型であってもよい。コンプライアント型であれば、起伏がある、または硬い処置部に対してもフィルムを柔軟に押し付けやすくなる。ノンコンプライアント型であれば、狭窄部の拡張補助が可能となり、コンプライアント型に比べて強固にフィルムを圧着することができる。
【0038】
バルーン42の形状は特に限定されないが、
図1に示すようにバルーン42は直管部43を有していることが好ましい。直管部43において、バルーン42は円筒形状を有していることが好ましい。バルーン42が円筒形状を有していることで一度にフィルムの広範囲を押し付けやすくなるため、手技時間を短縮することができる。
図1では直管部43は近位側テーパー部44と遠位側テーパー部45の間に配されている。近位側テーパー部44と遠位側テーパー部45は例えば円錐台形状であってもよい。直管部43は、近位側テーパー部44と遠位側テーパー部45よりも小さい傾斜角であれば、病変の形状に応じて傾斜していてもよい。
【0039】
バルーン42は球形状または長円球形状を有していてもよい。処置部が起伏部または峡部を有していても、バルーン42が丸みを帯びていることで起伏部または峡部にフィルムを押し付けやすくなる。
【0040】
第1拡径部40がループワイヤ、鉗子、または複数の弾性ワイヤを備えたバスケットである場合、第1拡径部40は弾性変形可能な材料から構成されていることが好ましい。これにより、第3シャフト30の第3内腔33から突出させたときに第1拡径部40が拡径する。また、第1拡径部40を第3シャフト30に対して後退させたときに第1拡径部40が縮径するため第3内腔33に第1拡径部40をスムーズに収納することができる。
【0041】
第1拡径部40がループワイヤ、鉗子、またはバスケットである場合、これらは例えば、Ni-Ti系合金などの超弾性合金、SUS303、SUS304、SUS316等のステンレスから構成することができる。
【0042】
第2シャフト20は長手方向と径方向と周方向を有している長尺な部材である。第2シャフト20は、長手方向に遠位端21と近位端22を有している。第2シャフト20は第1シャフト10の第1内腔13に配される。第2シャフト20は、第2拡径部50を第1シャフト10に対して進退させるための押し出し部材として機能する。第2シャフト20は、一または複数の部材から構成することができる。
【0043】
第2シャフト20は第1シャフト10の長手方向xに延在していることが好ましい。この構成により、第2シャフト20を第1シャフト10に沿うように配することができる。
【0044】
第2シャフト20は中実形状を有していることが好ましい。第2シャフト20に剛性を付与しやすくなるため、第2拡径部50の突出および収納操作が行いやすくなる。
図1~
図2では第2シャフト20が直線状を有する中実棒形状である例を示している。
【0045】
第2シャフト20は中空形状を有していてもよい。第2シャフト20は、樹脂チューブ;金属管;線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;またはこれらを組み合わせたものであってもよい。これらの構成については第1シャフト10の説明を参照することができる。
【0046】
第2シャフト20は、第1シャフト10に対して長手方向xに移動可能となっている。これにより、第1シャフト10の遠位側開口15から第2拡径部50を突出させることができる。詳細には、第2シャフト20を第1シャフト10に対して遠位側へ移動させると、第1シャフト10の遠位側から第2拡径部50を突出させることができる。例えば、第2シャフト20を第1シャフト10に対して最も遠位に位置させたときに、第2拡径部50の近位端が第1シャフト10の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましい。また、第2シャフト20を第1シャフト10に対して近位側に移動させると第1内腔13に第2拡径部50を収納することができる。例えば、第2シャフト20を第1シャフト10に対して最も近位に位置させたときに、第2拡径部50の遠位端が第1シャフト10の遠位端よりも近位側に位置することが好ましい。
【0047】
第2シャフト20は、第1シャフト10に対して回転可能であってもよい。第2シャフト20を回転させることにより、第2拡径部50の向きを変えることができるため、フィルムの展開が行いやすくなる、または第2拡径部50で処置部にフィルムを押し付けることができる。送達具5が第2シャフト20の近位部に接続されているハンドル(以下、第1ハンドル71と称する)をさらに有していれば、第1ハンドル71の操作により第2シャフト20をその長手方向の中心軸を中心に回転させることができる。
【0048】
第1シャフト10に対する第2拡径部50の長手方向xの位置を変えるための構成は特に限定されない。例えば、
図1では、第1ハンドル71は筒状部72を有しており、筒状部72内には接続部73が配されている。第1シャフト10の近位部は、筒状部75を有する第2ハンドル74に接続されている。第2ハンドル74の筒状部75の外側に第1ハンドル71が配されている。第1ハンドル71は、第2ハンドル74の筒状部75の長手方向に対して摺動可能に構成されている。第2シャフト20の近位部は、第1シャフト10の近位端12から近位側に延出しており、接続部73に接続されている。第1ハンドル71を第2ハンドル74に対して遠位側に移動させることによって、第1シャフト10から第2拡径部50を突出させることができる。第1ハンドル71を第2ハンドル74に対して近位側に移動させることによって、第1シャフト10内に第2拡径部50を収納することができる。
【0049】
第1ハンドル71と第2ハンドル74は、それぞれ一または複数の部材から構成することができる。第1ハンドル71と第2ハンドル74の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
【0050】
第2拡径部50は、第2シャフト20の遠位部に配されている拡径可能な部分である。第2拡径部50は、処置部の近傍でフィルムを展開するためのトリガーとして用いられることが好ましいが、フィルムの押し付けに用いられてもよい。第2拡径部50は、第2シャフト20の径方向の外方に向かって拡張する。第2拡径部50はまた、後述する第3シャフト30内に収納可能であることが好ましい。このため、第2拡径部50は収縮可能であることが好ましい。
【0051】
第2拡径部50は、一または複数の部材から構成することができる。第2拡径部50は、例えばループワイヤ、鉗子、バルーン、複数の弾性ワイヤを備えたバスケットであってもよい。また、第2拡径部50は第1エレメント61および第2エレメント62を有していてもよい。第1エレメント61と第2エレメント62の構成については後述する。
【0052】
第2拡径部50は弾性変形可能な材料から構成されていることが好ましい。これにより、第1シャフト10の第1内腔13から突出させたときに第2拡径部50が拡径し、かつ第1内腔13に第2拡径部50を収納可能となる。
【0053】
第2拡径部50は、例えば、Ni-Ti系合金などの超弾性合金、SUS303、SUS304、SUS316等のステンレスから構成することができる。
【0054】
第2シャフト20と第2拡径部50は一体成形されていてもよく、別々の部材から形成されてこれらが接続されていてもよい。第2シャフト20と第2拡径部50は、直接接続されてもよく、別の部材を介して接続されてもよい。第2シャフト20と第2拡径部50は、例えば、リング部材等の締付具でかしめる、溶接、溶着、接着等の方法で接続することができる。
【0055】
図11に示すように、第2拡径部50は、フィルム70に接触する接触部(以下では第1接触部51と称する)を有することが好ましい。第1接触部51が接触することにより、フィルム70が押さえられるため、フィルム70の送達中に第3シャフト30の遠位側からフィルム70が脱落することを防ぐことができる。
【0056】
第1接触部51はフィルム70を保持することが好ましい。保持の具体的態様は特に限定されず、第1接触部51と後述する第2接触部によってフィルム70が挟持されてもよく、第1接触部51にフィルムが巻き付けられていてもよく、またはその両方によって保持されてもよい。第2拡径部50が第1エレメント61と第2エレメント62を有し、これらエレメントがそれぞれ第1接触部51を有している場合には、2つの第1接触部51によってフィルム70が挟持されてもよい。
【0057】
図1に示すように、送達具5は、さらに第3シャフト30を有していてもよい。第3シャフト30は第3内腔33を有し、第1シャフト10が第3内腔33に配される。第3シャフト30は、体内へのフィルムの送達時に第1シャフト10、第2シャフト20、第1拡径部40および第2拡径部50を収納するための部材である。第3シャフト30により、フィルムの送達時に第1拡径部40と第2拡径部50が処置部以外の場所に接触しにくくなる。
【0058】
第3シャフト30は、長手方向と径方向と周方向を有している長尺な部材である。第3シャフト30は、長手方向に遠位端31と近位端32を有している。第3シャフト30の長手方向は、第1シャフト10の長手方向xに延在していることが好ましい。第3シャフト30内に少なくとも第1シャフト10が配されるため、第3シャフト30は例えば筒形状を有していることが好ましく、両端が開口した筒形状を有していることがより好ましい。
【0059】
図11に示すように、第3内腔33にはフィルム70が取り付けられた第2拡径部50を収納可能であることが好ましい。第2拡径部50と第3シャフト30によってフィルム70を保持した状態で処置部まで送達することができる。
【0060】
第3シャフト30は、第1拡径部40と第2拡径部50を突出させるための一または複数の開口を有している。例えば
図1では、第3シャフト30はその遠位端面に遠位側開口35を有している。第3内腔33は、少なくとも遠位側開口35を通じて第3シャフト30の外と連通している。
【0061】
第3シャフト30は、樹脂チューブ;金属管;線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;またはこれらを組み合わせたものであってもよい。これらの構成については第1シャフト10の説明を参照することができる。
【0062】
図11に示すように、第3内腔33において第3シャフト30の内面は、フィルム70に接触する接触部(以下、第2接触部38と称する)を有することが好ましい。第2接触部38が接触することにより、フィルム70が押さえられるため、フィルム70の送達中に第3シャフト30の遠位側からフィルム70が脱落することを防ぐことができる。
【0063】
第1接触部51と第2接触部38でフィルム70が保持されることが好ましく、フィルム70が挟持されることがより好ましい。第1接触部51と第2接触部38にフィルム70が接触することで、フィルム70の送達中に第3シャフト30の遠位側からフィルム70が脱落することを防ぐことができる。
【0064】
送達具5では、第1拡径部40と第2拡径部50は拡径時の形状が互いに異なっている。このような構成であるため、第1拡径部40と第2拡径部50の少なくともいずれか一方がフィルムの展開補助機能を担い、少なくともいずれか他方がフィルムの押し付け機能を担うことが可能となる。例えば、第2拡径部50を用いて処置部でフィルムを展開した後、第1拡径部40を用いてフィルムを押し付けることで、処置部にフィルムを密着させやすくなる。なお、第1拡径部40がフィルムの展開補助機能を担い、第2拡径部50がフィルムの押し付け機能を担っていてもよい。また、第1拡径部40と第2拡径部50の両方がフィルムの展開補助機能を担ってもよい。
【0065】
第1拡径部40と第2拡径部50の形状が互いに異なっているとは、送達具5の側面視であって、第1シャフト10から第2拡径部50を突出させた状態で各拡径部の外径が最大となる向きに送達具5を向けたときの側面視において、第1拡径部40と第2拡径部50の外形(輪郭形状)が一致しないことを意味し、第1拡径部40と第2拡径部50の形状が互いに相似(拡大、縮小、平行移動、または回転移動により互いに重なるもの)である場合も含まれる。なお、送達具5が第3シャフト30を有している場合には、上記側面視は、
図1のように第3シャフト30から第1拡径部40と第2拡径部50を突出させた状態での側面視である。以降の説明において、特に断りがなく側面視といったときは上述した向きになるように送達具5を向けたときの側面視を指すものとする。
【0066】
第1シャフト10から第2拡径部50を突出させたときに、第1シャフト10の長手方向xにおいて、第1拡径部40の長さよりも第2拡径部50の長さの方が長いことが好ましい。第2拡径部50でフィルムを展開させた後に、第1拡径部40でフィルムを処置部に押し付ける手技をスムーズに行いやすくなる。なお、第1シャフト10から第2拡径部50を突出させたときに、第1シャフト10の長手方向xにおいて、第2拡径部50の長さよりも第1拡径部40の長さの方が長くてもよい。
【0067】
第1拡径部40と第2拡径部50の拡径メカニズムは同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、第1拡径部40がバルーン42のように流体の導入と除去によって拡径および縮径させるものであり、第2拡径部50が弾性変形材料から構成されるものでもよい。第2拡径部50は、第1シャフト10から突出させて第1シャフト10による規制から解放されることによって拡径し、第1シャフト10内に収納されることによって縮径するものでもよい。
【0068】
送達具5の側面視において、第1拡径部40と第2拡径部50の拡径時の最大外径は同じであってもよいが、
図1に示すように第1拡径部40と第2拡径部50の拡径時の最大外径は互いに異なっていることが好ましい。これにより2つの拡径部のいずれか一方がフィルム展開補助機能を担い、他方がフィルムの押し付け機能を担いやすくなる。
【0069】
図1に示すように、送達具5の側面視において、第1拡径部40の拡径時の最大外径は、第2拡径部50の拡径時の最大外径よりも大きいことが好ましい。これにより、第2拡径部50でフィルムの広範囲を一斉に押し付けやすくなるため、手技時間を短縮することができる。
【0070】
送達具5の側面視において、第1拡径部40の拡径時の最大外径は、第2拡径部50の拡径時の最大外径よりも小さくてもよい。第2拡径部50でフィルムを大きく広げつつ、小さな第1拡径部40でフィルムを部位毎に選択的に押し付けやすくなる。
【0071】
図1に示すように、第1シャフト10に対して第2シャフト20を最も遠位に位置させたときに、第2拡径部50は第1拡径部40よりも遠位側に位置することが好ましい。このような順に配されるように送達具5を構成することで、第2拡径部50でフィルムを展開させた後に、第1拡径部40でフィルムを処置部に押し付ける手技をスムーズに行いやすくなる。
【0072】
図5~
図6に示すように、第1シャフト10の第1内腔13に第2拡径部50を収納したときに、第1シャフト10の長手方向において第1拡径部40と第2拡径部50とが重なることが好ましい。第2拡径部50が第1シャフト10の遠位端11に近い側に配されることで、第1シャフト10の第1内腔13の遠位側を塞ぐことができる。その結果、第1シャフト10の遠位側開口15から第1シャフト10内に体液や異物が入りにくくなる。また、第1拡径部40でフィルムを圧着させる時、第1シャフト10を操作する際に第2拡径部50が第1シャフト10に収納されていることで、不用意に体内組織を損傷するリスクを低減することができる。特に、フィルムの留置後に送達具5を身体から抜去する手技をスムーズに行うことができる。
【0073】
第1シャフト10の第1内腔13に第2拡径部50を収納したときに、第2拡径部50の遠位端が第1拡径部40の近位端よりも近位側に位置していてもよい。
【0074】
送達具5が、第3内腔33を有しかつ第1シャフト10が第3内腔33に配される第3シャフト30を有している場合、
図4に示すように、第3シャフト30の第3内腔33に第1拡径部40と第2拡径部50を収納したときに、第3シャフト30の長手方向において第2拡径部50が第1拡径部40よりも遠位側に位置することが好ましい。このような順に配置されるように送達具5を構成することで、第3内腔33のうち第1拡径部40の遠位端よりも遠位側の部分を、フィルムを収納するためのスペースとして確保しやすくなる。また、第2拡径部50でフィルムを展開させた後に、第1拡径部40でフィルムを処置部に押し付ける手技をスムーズに行いやすくなる。
【0075】
第2拡径部50の態様について説明する。
図1、
図4~
図9に示すように、第2拡径部50が第1エレメント61および第2エレメント62を有していることが好ましい。第1エレメント61と第2エレメント62は、第2シャフト20の遠位端部に接続することができる。詳細には、第1エレメント61と第2エレメント62は、第2シャフト20の遠位端21から遠位方向に延出するように配されることが好ましい。
【0076】
図7~
図9に示すように、第1エレメント61と第2エレメント62はそれぞれ長尺な部分を有していることが好ましい。これにより、第1エレメント61と第2エレメント62にフィルムを巻き付けやすくなる。第1エレメント61と第2エレメント62は例えば線状、棒状、帯状、板状、アーム状、またはこれらを組み合わせた形状を有していてもよい。第1エレメント61と第2エレメント62の形状はそれぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0077】
第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第1エレメント61と第2エレメント62は互いに平行に配されている部分を有することが好ましい。互いに平行に配されている部分にはフィルムを巻き付けやすいため、フィルムの取り付け操作が行いやすくなる。また、送達中のフィルムの脱落を防ぐこともできる。
【0078】
第1エレメント61と第2エレメント62は、第2シャフト20の径方向において対向するように配することができる。第1エレメント61と第2エレメント62によってフィルムを挟持することが好ましい。また、フィルムが第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかに巻き付けられることが好ましい。
【0079】
第1エレメント61と第2エレメント62の形状は、送達具5の側面視において、
図8に示すように第2シャフト20の長手方向の中心軸cに対して線対称であってもよく、
図7に示すように非対称であってもよい。
【0080】
図1に示すように、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第2シャフト20の径方向において第1エレメント61の少なくとも一部が第2エレメント62から離れるように配されることが好ましい。このように第1エレメント61と第2エレメント62を構成することで、処置部の近傍でフィルムを展開しやすくなる。なお、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第2シャフト20の径方向において、第2エレメント62の遠位端が第1エレメント61の遠位端が離れるように配されることが好ましい。
【0081】
図7~
図9に示すように、第1エレメント61の近位端部と第2エレメント62の近位端部は互いに固定されており、第1エレメント61の遠位端部と第2エレメント62の遠位端部は互いに固定されていなくてもよい。この構成により、第1エレメント61と第2エレメント62の各遠位端側でフィルムを展開させやすくなる。
【0082】
第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかが第1接触部51を有していることが好ましい。例えば、第1エレメント61と第2エレメント62のうち長尺な部分が第1接触部51であってもよい。また、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに第1エレメントと第2エレメントが互いに平行に配されている部分が第1接触部51であってもよい。第1エレメント61と第2エレメント62のうち、後述する第1区間が第1接触部51であってもよい。
【0083】
第1エレメント61と第2エレメント62は、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに第2シャフト20の長手方向に沿って延在している第1区間をそれぞれ有していてもよい。各エレメントが第1区間を有していることで、各第1区間にフィルムを巻き付けやすくなる。
図7~
図8では、第1エレメント61が第1区間611を有し、第2エレメント62が第1区間621を有している。
【0084】
第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかが、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに第2シャフト20の近位端22側から遠位端21側に向かって径方向の内側から外側に延在している第2区間を有していてもよい。このような第2区間を設けることで、第1シャフト10からこれらのエレメントを突出させたときに、第1エレメント61の遠位端と第2エレメント62の遠位端が径方向に離れるように位置させやすくなる。その結果、第1エレメント61と第2エレメント62の拡開によってフィルムが展開されやすくなる。
図7では第2エレメント62が第2区間622を有している例を示している。
図8では、第1エレメント61が第2区間612を有し、第2エレメント62が第2区間622を有している例を示している。
【0085】
第1エレメント61または第2エレメント62において、第1区間は第2区間よりも遠位側に配されていることが好ましく、第1区間は第2区間に隣接して第1区間よりも遠位側に配されていることがより好ましい。これにより、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに送達具5の遠位端に近い側で第1エレメント61と第2エレメント62が互いに離れるように配することができる。なお、第1エレメント61または第2エレメント62において、第1区間は第2区間よりも近位側に配されていてもよい。
【0086】
第1エレメント61と第2エレメント62では、エレメントの途中を屈曲させる、湾曲させる、またはその両方を行うことにより、エレメントの形状を変化させることができる。第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかが一または複数の湾曲部を有していてもよい。湾曲部を設けることで、エレメントを第1内腔13にスムーズに収納しやすくなる。なお、第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかは一または複数の屈曲部を有していてもよい。第1内腔13への収納を容易にするためには、各エレメントは、屈曲部を1つのみ有するか、または屈曲部を有しないことが好ましい。
【0087】
第1エレメント61と第2エレメント62は、第1シャフト10から突出したときに拡開可能な程度の弾性を有していることが好ましい。他方、第1シャフト10の第1内腔13に第1エレメント61と第2エレメント62を収納したときに、第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかが第1シャフト10の内面に接触してもよい。また、第1シャフト10の第1内腔13に第1エレメント61と第2エレメント62を収納したときに、第1エレメント61と第2エレメント62が互いに接触してもよい。
【0088】
第1エレメント61と第2エレメント62の構成材料は同じであっても異なっていてもよい。第1エレメント61と第2エレメント62の構成材料と、第2シャフト20の構成材料は、同じであってもよく異なっていてもよい。
【0089】
図7~
図8では第2拡径部50として第1エレメント61と第2エレメント62が設けられている例を示したが、さらに一または複数のエレメントが設けられていてもよい。例えば、
図9に示すように、第2拡径部50が第1エレメント61と第2エレメント62と第3エレメント63を有していてもよい。このように第3エレメント63を有することで、フィルムを押さえやすくなるため、フィルムを大きく展開させやすくなる。
【0090】
第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62と第3エレメント63を突出させたときに、第2シャフト20の径方向において第1エレメント61の少なくとも一部が第2エレメント62と第3エレメント63からそれぞれ離れるように配されることが好ましい。なお、第3エレメント63のその他の構成については、第1エレメント61と第2エレメント62の説明を参照することができる。
【0091】
図10に示すように、第2拡径部50がループワイヤ67であってもよい。ループワイヤ67は、閉じた環状であればよく、円形状、長円形状、多角形状などの形状にすることができる。ループワイヤ67の途中を屈曲させる、湾曲させる、またはその両方を行うことにより、ループ形状を変化させることができる。
【0092】
ループワイヤ67は一または複数の湾曲部を有していてもよい。湾曲部を設けることで、ループワイヤ67を第1内腔13にスムーズに収納しやすくなる。なお、ループワイヤ67は一または複数の屈曲部を有していてもよいが、第1内腔13への収納を容易にするためにはループワイヤ67は屈曲部を1つのみ有するか、または屈曲部を有しないことが好ましい。
【0093】
ループワイヤ67を第1シャフト10の第1内腔13に収納したときに、ループがたたまれてループワイヤ67の一または複数の箇所が第1内腔13における第1シャフト10の内面に接することが好ましい。
【0094】
ループワイヤ67と第2シャフト20の接続方法は、第1エレメント61と第2エレメント62と第2シャフト20の接続方法を参照することができる。
図10では、ループワイヤ67の近位端部と第2シャフト20の遠位端部が締付リング69でかしめられて結合されている例を示している。
【0095】
図1に示すように、第1拡径部40が直管部43を有するバルーン42である場合、第2拡径部50は第1エレメント61と第2エレメント62を有し、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第1エレメント61と第2エレメント62は互いに平行に配されている部分を有することが好ましい。このように第1拡径部40と第2拡径部50が直線形状の部分を有することにより、食道等の直線形状を有する臓器の壁に対してフィルムを留置しやすくなる。
【0096】
図10に示すように、第1拡径部40が球形状または長円球形状を有するバルーン42である場合、第2拡径部50がループワイヤ67であることが好ましい。このように第1拡径部40と第2拡径部50が曲線状の部分を有することにより、ひだや湾曲形状を有する臓器の壁に対してもフィルムが深部に到達するように押し付けやすくなる。
【0097】
本発明は、医療用具1の製造方法も提供する。本発明の一実施形態に係る医療用具1の製造方法は、医療用のフィルム70と医療用フィルム送達具5とを準備する工程と、第2拡径部50にフィルム70を取り付ける工程と、
図11に示すようにフィルム70が取り付けられた第2拡径部50を第3シャフト30の第3内腔33に配置する工程と、を含んでいる。
図1に示すように、医療用フィルム送達具5は、長手方向xに遠位端11と近位端12を有しかつ第1内腔13を有する第1シャフト10、第1シャフト10の第1内腔13に配されて第1シャフト10に対して長手方向xに移動可能な第2シャフト20、第3内腔33を有しかつ第1シャフト10が第3内腔33に配される第3シャフト30、第1シャフト10の遠位部に配されて拡径可能な第1拡径部40、第2シャフト20の遠位部に配されて拡径可能な第2拡径部50を有し、第1拡径部40と第2拡径部50は拡径時の形状が互いに異なっている。上記医療用具1の製造方法はフィルム70が取り付けられた第2拡径部50を第3シャフト30の第3内腔33に配置する工程を含むため、フィルム70が第2拡径部50と第3シャフト30によって保持されやすくなるため、フィルム70の送達中に第3シャフト30からフィルム70が脱落することを防ぐことができる。
【0098】
医療用のフィルム70と医療用フィルム送達具5については、上述した構成を適宜組み合わせて採用することができる。
【0099】
第2拡径部50へのフィルム70の取り付け方法は特に限定されず、例えば第2拡径部50でフィルム70を挟持してもよく、第2拡径部50にフィルム70を巻き付けてもよい。フィルム70は丸められていてもよく、折りたたまれていてもよい。
【0100】
フィルム70が取り付けられた第2拡径部50を第3シャフト30の第3内腔33に配置する工程では、第1シャフト10から突出した状態で第2拡径部50が第3内腔33に配置されることが好ましい。これにより、フィルム70が第2拡径部50と第3シャフト30によって保持されやすくなる。
【符号の説明】
【0101】
1:医療用具
5:医療用フィルム送達具
10:第1シャフト
13:第1内腔
14:第2内腔
20:第2シャフト
30:第3シャフト
33:第3内腔
40:第1拡径部
42:バルーン
50:第2拡径部
61:第1エレメント
62:第2エレメント
67:ループワイヤ
70:フィルム
80:処置部