(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185720
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】医療用フィルム送達具および医療用具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A61B17/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093504
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓弥
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM32
4C160NN03
4C160NN09
4C160NN10
(57)【要約】
【課題】体内の処置部にフィルムを展開させやすく、かつ送達具の先端部の収納操作が行いやすい医療用フィルム送達具と医療用具の製造方法を提供する。
【解決手段】医療用のフィルムを体内に送達するための医療用フィルム送達具5であって、長手方向xに遠位端11と近位端12を有し、かつ第1内腔13を有する第1シャフト10と、第1シャフト10の第1内腔13に配され、第1シャフト10に対して長手方向xに移動可能な第2シャフト20と、第2シャフト20の遠位部に配されている第1エレメント61および第2エレメント62と、を有し、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第2シャフト20の径方向において、第2エレメント62の遠位端は第1エレメント61の遠位端よりも第2シャフト20の長手方向の中心軸から遠い位置にある医療用フィルム送達具5。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用のフィルムを体内に送達するための医療用フィルム送達具であって、
長手方向に遠位端と近位端を有し、かつ第1内腔を有する第1シャフトと、
前記第1シャフトの前記第1内腔に配され、前記第1シャフトに対して前記長手方向に移動可能な第2シャフトと、
前記第2シャフトの遠位部に配されている第1エレメントおよび第2エレメントと、を有し、
前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに、前記第2シャフトの径方向において、前記第2エレメントの遠位端は前記第1エレメントの遠位端よりも前記第2シャフトの長手方向の中心軸から遠い位置にある医療用フィルム送達具。
【請求項2】
前記第1エレメントと前記第2エレメントの少なくともいずれかが前記フィルムに接触する接触部を有する請求項1に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項3】
第3内腔を有し、前記第1シャフトが前記第3内腔に配される第3シャフトをさらに有し、
前記第3内腔において前記第3シャフトの内面は、前記フィルムに接触する接触部を有する請求項1または2に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項4】
前記第1エレメントと前記第2エレメントはそれぞれ長尺な部分を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項5】
前記第1エレメントと前記第2エレメントは、前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに前記第2シャフトの長手方向に沿って延在している第1区間をそれぞれ有する請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項6】
前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに、第2シャフトの径方向において、前記第2エレメントの前記第1区間は、前記第1エレメントの前記第1区間よりも前記中心軸から遠い位置にある請求項5に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項7】
前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに、前記第1エレメントの前記第1区間は前記中心軸の延長線上に延在している請求項5または6に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項8】
前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに、前記第2シャフトの径方向において、前記第1エレメントの前記第1区間と、前記第2エレメントの前記第1区間は、それぞれ前記中心軸から離れた位置にある請求項5~7のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項9】
前記第1エレメントと前記第2エレメントの少なくともいずれかが、前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに前記第2シャフトの近位端側から遠位端側に向かって径方向の内側から外側に延在している第2区間を有する請求項5~8のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項10】
前記第2エレメントは、前記第2区間を有し、
前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに、前記第2シャフトの長手方向において、前記第2エレメントの前記第1区間は前記第2エレメントの前記第2区間よりも長い請求項9に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項11】
前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに、前記第1エレメントと前記第2エレメントは前記中心軸に対して非対称な形状を有する請求項1~10のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項12】
前記第1エレメントの近位端部と前記第2エレメントの近位端部は互いに固定されており、
前記第1エレメントの遠位端部と前記第2エレメントの遠位端部は互いに固定されていない請求項1~11のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項13】
前記第1シャフトの前記第1内腔に前記第1エレメントと前記第2エレメントを収納したときに、前記第1エレメントと前記第2エレメントの少なくともいずれかが前記第1シャフトの内面に接触する請求項1~12のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項14】
前記第1シャフトの前記第1内腔に前記第1エレメントと前記第2エレメントを収納したときに、前記第1エレメントと前記第2エレメントが互いに接触する請求項1~13のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項15】
前記第1シャフトが第2内腔を有し、
前記第1シャフトの遠位部に配され、前記第2内腔に内部が連通しているバルーンをさらに有する請求項1~14のいずれか一項に記載の医療用フィルム送達具。
【請求項16】
医療用のフィルムと、長手方向に遠位端と近位端を有しかつ第1内腔を有する第1シャフト、前記第1シャフトの前記第1内腔に配され、前記第1シャフトに対して前記長手方向に移動可能な第2シャフト、第3内腔を有しかつ前記第1シャフトが前記第3内腔に配される第3シャフト、前記第2シャフトの遠位部に配されている第1エレメントおよび第2エレメント、を有し、前記第1シャフトから前記第1エレメントと前記第2エレメントを突出させたときに、前記第2シャフトの径方向において、前記第2エレメントの遠位端は前記第1エレメントの遠位端よりも前記第2シャフトの長手方向の中心軸から遠い位置にある医療用フィルム送達具と、を準備する工程と、
前記第1エレメントと前記第2エレメントに前記フィルムを取り付ける工程と、
前記フィルムが取り付けられた前記第1エレメントと前記第2エレメントを前記第3シャフトの前記第3内腔に配置する工程と、を含む医療用具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を用いて体内に医療用のフィルムを送達するための術具と医療用具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下手術では、患部の治癒促進、出血緩和、臓器の癒着抑制等の目的で、体内の病変部が切除された部分にフィルムを留置し、貼り付ける手技が行われることがある。このような手技を行うための器具の一例として、特許文献1にはシート挿入用ディバイスが開示されている。特許文献1には、シート押し出し用の押出部材がシャフトの先端部に設けられた二股状のシート巻取部を有すること、シート巻取部は、シートを差し込める大きさの空隙をおいて相対向して配置された二つの板部を有することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、シート保持部材と外筒部材を有するシート挿入具が開示されている。シート保持部材は、互いに束ねられた4本の棒状部材によって少なくとも先端側が形成され、各棒状部材の間に前記シートを挟み込むことによってシートを保持する。
【0004】
特許文献3には、シート状インプラントを外科的部位に送達するシステムが、遠位端部および近位端部をそれぞれ有する第1の展開アームと第2展開アームを有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-116337号公報
【特許文献2】特開2020-36670号公報
【特許文献3】特表2020-505183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3に記載されたデバイスでは、フィルムの展開容易性と展開後のデバイスの操作効率性を両立させる観点で改善の余地があった。そこで、本発明は、体内の処置部にフィルムを展開させやすく、かつ送達具の先端部の収納操作が行いやすい医療用フィルム送達具と医療用具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得た本発明の医療用フィルム送達具の一実施態様は、医療用のフィルムを体内に送達するための医療用フィルム送達具であって、長手方向に遠位端と近位端を有し、かつ第1内腔を有する第1シャフトと、第1シャフトの第1内腔に配され、第1シャフトに対して長手方向に移動可能な第2シャフトと、第2シャフトの遠位部に配されている第1エレメントおよび第2エレメントと、を有し、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第2シャフトの径方向において、第2エレメントの遠位端は第1エレメントの遠位端よりも第2シャフトの長手方向の中心軸から遠い位置にある点に要旨を有する。本発明に係る医療用フィルム送達具では、第1シャフトから突出させたときに上記のように第1エレメントと第2エレメントが配置されるため、第1エレメントと第2エレメントの少なくとも遠位端によってフィルムを大きく展開させやすくなり、また第1内腔への第1エレメントと第2エレメントの収納時の引き込み抵抗も抑えることができる。
【0008】
上記医療用フィルム送達具において、第1エレメントと第2エレメントの少なくともいずれかがフィルムに接触する接触部を有していてもよい。また、上記医療用フィルム送達具は、第3内腔を有しかつ第1シャフトが第3内腔に配される第3シャフトをさらに有し、第3内腔において第3シャフトの内面は、フィルムに接触する接触部を有していてもよい。
【0009】
上記医療用フィルム送達具において、第1エレメントと第2エレメントはそれぞれ長尺な部分を有していてもよい。上記医療用フィルム送達具において、第1エレメントと第2エレメントは、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに第2シャフトの長手方向に沿って延在している第1区間をそれぞれ有していてもよい。
【0010】
上記医療用フィルム送達具において、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第2シャフトの径方向において、第2エレメントの第1区間は、第1エレメントの第1区間よりも中心軸から遠い位置にあってもよい。
【0011】
上記医療用フィルム送達具において、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第1エレメントの第1区間は中心軸の延長線上に延在していてもよい。
【0012】
上記医療用フィルム送達具において、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第2シャフトの径方向において、第1エレメントの第1区間と、第2エレメントの第1区間は、それぞれ中心軸から離れた位置にあってもよい。
【0013】
上記医療用フィルム送達具において、第1エレメントと第2エレメントの少なくともいずれかが、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに第2シャフトの近位端側から遠位端側に向かって径方向の内側から外側に延在している第2区間を有していてもよい。
【0014】
上記医療用フィルム送達具において、第2エレメントは、第2区間を有し、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第2シャフトの長手方向において、第2エレメントの第1区間は第2エレメントの第2区間よりも長くてもよい。
【0015】
上記医療用フィルム送達具において、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第1エレメントと第2エレメントは中心軸に対して非対称な形状を有していてもよい。
【0016】
上記医療用フィルム送達具において、第1エレメントの近位端部と第2エレメントの近位端部は互いに固定されており、第1エレメントの遠位端部と第2エレメントの遠位端部は互いに固定されていなくてもよい。
【0017】
上記医療用フィルム送達具において、第1シャフトの第1内腔に第1エレメントと第2エレメントを収納したときに、第1エレメントと第2エレメントの少なくともいずれかが第1シャフトの内面に接触してもよい。上記医療用フィルム送達具において、第1シャフトの第1内腔に第1エレメントと第2エレメントを収納したときに、第1エレメントと第2エレメントが互いに接触してもよい。
【0018】
上記医療用フィルム送達具は、第1シャフトが第2内腔を有しかつ第1シャフトの遠位部に配され、第2内腔に内部が連通しているバルーンをさらに有していてもよい。
【0019】
本発明は医療用具の製造方法も提供する。本発明の医療用具の製造方法の一実施態様は、医療用のフィルムと、長手方向に遠位端と近位端を有しかつ第1内腔を有する第1シャフト、第1シャフトの第1内腔に配され、第1シャフトに対して長手方向に移動可能な第2シャフト、第3内腔を有しかつ第1シャフトが第3内腔に配される第3シャフト、第2シャフトの遠位部に配されている第1エレメントおよび第2エレメント、を有し、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第2シャフトの径方向において、第2エレメントの遠位端は第1エレメントの遠位端よりも第2シャフトの長手方向の中心軸から遠い位置にある医療用フィルム送達具と、を準備する工程と、第1エレメントと第2エレメントにフィルムを取り付ける工程と、フィルムが取り付けられた第1エレメントと第2エレメントを第3シャフトの第3内腔に配置する工程と、を含む点に要旨を有する。本発明に係る医療用具の製造方法はフィルムが取り付けられた第1エレメントと第2エレメントを第3シャフトの第3内腔に配置する工程を含むため、フィルムが第1エレメントと第2エレメントと第3シャフトによって保持されやすくなる。その結果、フィルムの送達中に第3シャフトからフィルムが脱落することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る医療用フィルム送達具によれば、第1エレメントと第2エレメントの少なくとも遠位端によってフィルムを大きく展開させやすくなり、また第1内腔への第1エレメントと第2エレメントの収納時の引き込み抵抗も抑えることができる。また、本発明に係る医療用具の製造方法によれば、フィルムが第1エレメントと第2エレメントと第3シャフトによって保持されやすくなるため、フィルムの送達中に第3シャフトからフィルムが脱落することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る医療用フィルム送達具の側面図(一部断面図)である。
【
図2】
図1に示した医療用フィルム送達具のII-II線における切断部端面図である。
【
図3】
図2に示した医療用フィルム送達具の変形例を示す切断部端面図である。
【
図4】
図1に示した医療用フィルム送達具の第3シャフトへの第1エレメントと第2エレメントの収納状態を示す側面図(一部断面図)である。
【
図5】
図1に示した医療用フィルム送達具の第1シャフトに第1エレメントと第2エレメントを収納し、かつ第3シャフトからバルーンを突出させた状態を示す側面図(一部断面図)である。
【
図6】
図1に示した医療用フィルム送達具の第3シャフトおよび第1シャフトへの第1エレメントと第2エレメントの収納状態を示す側面図(一部断面図)である。
【
図7】
図1に示した医療用フィルム送達具の遠位部を拡大した側面図である。
【
図8】
図7に示した医療用フィルム送達具の遠位部の変形例を示す側面図である。
【
図9】医療用のフィルムの送達方法の一例を示す模式図である。
【
図10】医療用のフィルムの送達方法の一例を示す模式図である。
【
図11】医療用のフィルムの送達方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0023】
本発明の医療用フィルム送達具の一実施態様は、医療用のフィルムを体内に送達するための医療用フィルム送達具であって、長手方向に遠位端と近位端を有し、かつ第1内腔を有する第1シャフトと、第1シャフトの第1内腔に配され、第1シャフトに対して長手方向に移動可能な第2シャフトと、第2シャフトの遠位部に配されている第1エレメントおよび第2エレメントと、を有し、第1シャフトから第1エレメントと第2エレメントを突出させたときに、第2シャフトの径方向において、第2エレメントの遠位端は第1エレメントの遠位端よりも第2シャフトの長手方向の中心軸から遠い位置にある点に要旨を有する。本発明に係る医療用フィルム送達具では、第1シャフトから突出させたときに上記のように第1エレメントと第2エレメントが配置されるため、第1エレメントと第2エレメントの少なくとも遠位端によってフィルムを大きく展開させやすくなり、また第1内腔への第1エレメントと第2エレメントの収納時の引き込み抵抗も抑えることができる。
【0024】
医療用フィルム送達具は、内視鏡の処置具挿通チャンネルを経由して体腔内に導入され、医療用のフィルムを体内に送達および留置するために用いられる。以下では医療用フィルム送達具を単に送達具と称することがある。
【0025】
医療用のフィルムは、患部の治癒促進、出血緩和、臓器の癒着抑制等の目的で、体内の病変部が切除された部分等の処置部に留置される。医療用のフィルムには、シートまたは膜と称されるものも含まれる。以下では医療用のフィルムを単にフィルムと称することがある。フィルムの形状は特に限定されないが、例えば矩形状にすることができる。フィルムの大きさは処置部の大きさに合わせて適宜設定することができる。フィルムは、生分解性または生体吸収性を有していてもよい。
【0026】
本明細書において、医療用具は、医療用のフィルムと医療用フィルム送達具を含むものである。
【0027】
図1~
図11を参照しながら送達具および医療用具の構成例について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る医療用フィルム送達具の側面図(一部断面図)である。
図2は
図1に示した医療用フィルム送達具のII-II線における切断部端面図である。
図3は
図2に示した医療用フィルム送達具の変形例を示す切断部端面図である。
図4は
図1に示した医療用フィルム送達具の第3シャフトへの第1エレメントと第2エレメントの収納状態を示す側面図(一部断面図)である。
図5は
図1に示した医療用フィルム送達具の第1シャフトに第1エレメントと第2エレメントを収納し、かつ第3シャフトからバルーンを突出させた状態を示す側面図(一部断面図)である。
図6は
図1に示した医療用フィルム送達具の第3シャフトおよび第1シャフトへの第1エレメントと第2エレメントの収納状態を示す側面図(一部断面図)である。
図7は
図1に示した医療用フィルム送達具の遠位部を拡大した側面図である。
図8は
図7に示した医療用フィルム送達具の遠位部の変形例を示す側面図である。
図9~
図11は医療用のフィルムの送達方法の一例を示す模式図である。送達具5は、第1シャフト10と第2シャフト20とバルーン42と第1エレメント61と第2エレメント62を有している。なお、
図7~
図8は、第1シャフト10から突出させたときの第1エレメント61と第2エレメント62の形状を示している。
【0028】
送達具5の遠位側とは、第1シャフト10の長手方向xの遠位端11側であって処置対象側を指す。送達具5の近位側とは、第1シャフト10の長手方向xの近位端12側であって使用者の手元側を指す。各部材をその長手方向で二等分割したときの近位側を近位部、遠位側を遠位部と称することがある。送達具5の内側および外側とは、第1シャフト10の径方向における内側および外側を指し、径方向の内側とは第1シャフト10の長手方向xの中心軸に近い側を指す。ここで、長手方向の中心軸とは、長手方向に延びる中心軸と言い換えることもできる。以降の説明においても同様である。
【0029】
まず、フィルム70の留置方法の一例について説明する。第3シャフト30の第3内腔33に第1シャフト10を挿入する。このとき、
図9に示すように、バルーン42は第3内腔33に収納されている。また、第1シャフト10内には第2シャフト20が挿入されているが、第1エレメント61と第2エレメント62は第1シャフト10から突出している。
図9に示すようにフィルム70が取り付けられた第1エレメント61と第2エレメント62は第3シャフト30の第3内腔33に配されている。
図9の状態で、内視鏡を経由して体内の処置部80の近傍まで送達具5を挿入する。第3シャフト30を近位側に動かす等の操作により、
図10に示すように、第3シャフト30から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させてフィルム70を露出させて、フィルム70を処置部80に仮置きする。このとき、フィルム70のコシやハリによってフィルム70の少なくとも一部が自発的に展開されてもよい。フィルム70が処置部80に仮置きされたら、
図11または
図1に示すようにバルーン42よりも第1エレメント61と第2エレメント62を遠位側に位置させる。
図11に示すようにバルーン42を拡張させる。拡張したバルーン42を用いてフィルム70を処置部80に押し付ける。なお、
図11または
図1の状態に代えて、
図5に示すように第1シャフト10の第1内腔13に第1エレメント61と第2エレメント62を収納した状態で、拡張したバルーン42を用いてフィルム70を処置部80に押し付けてもよい。次いで、
図6に示すように、第1シャフト10を第3シャフト30の第3内腔33に収納し、送達具5全体を近位側に移動させる。これにより、フィルム70の処置部80への送達および留置が完了する。
【0030】
次に送達具5を構成する各部材について説明する。
図1~
図2に示すように第1シャフト10は長手方向xと径方向と周方向pを有している長尺な部材である。第1シャフト10は、長手方向xに遠位端11と近位端12を有している。第1シャフト10内に第2シャフト20が配置されるため、第1シャフト10は例えば筒形状を有していることが好ましく、両端が開口した筒形状を有していることがより好ましい。第1シャフト10は少なくとも第1内腔13を有している。第1内腔13には第2シャフト20が配される。
図1に示すように送達具5がバルーン42を有している場合には、第1シャフト10は第2内腔14を有していてもよい。第2内腔14は、バルーン42を拡縮させるための流体の流路として機能する。第1内腔13は、第2内腔14よりも遠位側まで延在していてもよい。
【0031】
図1~
図2では、第1シャフト10が複数の内腔を有するマルチルーメン構造である例を示したが、この態様に限られない。
図3に示すように、第1シャフト10が、長手方向を有するアウターシャフト101と、アウターシャフト101の内腔に配置されているインナーシャフト102を有していてもよい。インナーシャフト102は、アウターシャフト101の遠位端から延出していてもよい。その場合、インナーシャフト102の内腔を第1内腔13として、アウターシャフト101とインナーシャフト102との間の空間を第2内腔14として用いることができる。このように第1シャフト10を多重管構造にすることで、第1内腔13に収納される第2シャフト20が第1シャフト10の長手方向xの中心軸に近い位置に配置されやすくなる。その結果、第1エレメント61と第2エレメント62も長手方向xの中心軸に近い位置に配置されやすくなる。
【0032】
第1シャフト10は、第1エレメント61と第2エレメント62を突出させるための一または複数の開口を有している。
図1では、第1シャフト10はその遠位端面に遠位側開口15を有している。第1内腔13は、遠位側開口15を通じて第1シャフト10の外と連通している。
【0033】
第1シャフト10は可撓性を有していることが好ましい。これにより体腔形状に沿って第1シャフト10を変形させることができる。形状保持のため、第1シャフト10は弾性を有していることが好ましい。第1シャフト10は、樹脂、金属、または樹脂と金属の組み合わせから構成されていることが好ましい。第1シャフト10としては、樹脂チューブ;金属管;線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手方向xに接続したものが挙げられる。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが挙げられる。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。線材の断面の形状は、例えば、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状であってもよい。長円形状には楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれ、以降の説明でも同様である。網目構造の種類は特に制限されず、コイルの巻き数や密度も特に制限されない。網目構造やコイルは、第1シャフト10の長手方向xの全体に亘って一定の密度で形成されてもよく、第1シャフト10の長手方向xの位置によって密度が異なるように形成されてもよい。金属管の可撓性を高めるために、金属管の外側表面には切込みや溝が形成されていてもよい。切込みや溝の形状は、直線状、円弧状、環状、らせん状やこれらの組み合わせとすることができる。第1シャフト10が筒状の樹脂チューブである場合、第1シャフト10は単層または複数層から構成することができ、長手方向xまたは周方向pの一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0034】
第2シャフト20は長手方向と径方向と周方向を有している長尺な部材である。第2シャフト20は、長手方向に遠位端21と近位端22を有している。第2シャフト20は第1シャフト10の第1内腔13に配される。第2シャフト20は、第1エレメント61と第2エレメント62を第1シャフト10に対して進退させるための押し出し部材として機能する。第2シャフト20は、一または複数の部材から構成することができる。
【0035】
第2シャフト20は第1シャフト10の長手方向xに延在していることが好ましい。この構成により、第2シャフト20を第1シャフト10に沿うように配することができる。
【0036】
第2シャフト20は中実形状を有していることが好ましい。第2シャフト20に剛性を付与しやすくなるため、第1エレメント61と第2エレメント62の突出および収納操作が行いやすくなる。
図1~
図2では第2シャフト20が直線状を有する中実棒形状である例を示している。
【0037】
第2シャフト20は中空形状を有していてもよい。第2シャフト20は、樹脂チューブ;金属管;線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;またはこれらを組み合わせたものであってもよい。これらの構成については第1シャフト10の説明を参照することができる。
【0038】
第2シャフト20は、第1シャフト10に対して長手方向xに移動可能である。これにより、第1シャフト10の遠位側開口15から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させることができる。詳細には、第2シャフト20を第1シャフト10に対して遠位側へ移動させると、第1シャフト10の遠位側から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させることができる。例えば、第2シャフト20を第1シャフト10に対して最も遠位に位置させたときに、第1エレメント61の近位端と第2エレメント62の近位端が第1シャフト10の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましい。また、第2シャフト20を第1シャフト10に対して近位側に移動させると、第1内腔13に第1エレメント61と第2エレメント62を収納することができる。例えば、第2シャフト20を第1シャフト10に対して最も近位に位置させたときに、第1エレメント61の遠位端と第2エレメント62の遠位端が第1シャフト10の遠位端よりも近位側に位置することが好ましい。
【0039】
第2シャフト20は、第1シャフト10に対して回転可能であってもよい。第2シャフト20を回転させることにより、第1エレメント61と第2エレメント62の向きを変えることができるため、フィルムの展開が行いやすくなる、または第1エレメント61と第2エレメント62で処置部にフィルムを押し付けることができる。例えば、送達具5が第2シャフト20の近位部に接続されているハンドルをさらに有しており、ハンドルの操作により第2シャフト20はその長手方向の中心軸を中心に回転することが好ましい。
【0040】
第1シャフト10に対する第1エレメント61と第2エレメント62の長手方向xの位置を変えるための構成は特に限定されない。例えば、
図1では、第2シャフト20の近位部に第1ハンドル71が接続されている。第1ハンドル71は筒状部72を有しており、筒状部72内には接続部73が配されている。第1シャフト10の近位部は、筒状部75を有する第2ハンドル74に接続されている。第2ハンドル74の筒状部75の外側に第1ハンドル71が配されている。第1ハンドル71は、第2ハンドル74の筒状部75の長手方向に対して摺動可能に構成されている。第2シャフト20の近位部は、第1シャフト10の近位端12から近位側に延出しており、接続部73に接続されている。第1ハンドル71を第2ハンドル74に対して遠位側に移動させることによって、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させることができる。第1ハンドル71を第2ハンドル74に対して近位側に移動させることによって、第1シャフト10内に第1エレメント61と第2エレメント62を収納することができる。
【0041】
第1ハンドル71と第2ハンドル74は、それぞれ一または複数の部材から構成することができる。第1ハンドル71と第2ハンドル74の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
【0042】
図1に示すように、第1エレメント61と第2エレメント62は、第2シャフト20の遠位部に配されている。第1エレメント61と第2エレメント62は、処置部の近傍でフィルムを展開するためのトリガーとして用いられる。第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第2シャフト20の径方向において、第2エレメント62の遠位端は第1エレメント61の遠位端よりも第2シャフト20の長手方向の中心軸c、すなわち第2シャフト20の長手方向に延びる中心軸cから遠い位置にある。送達具5では、第1シャフト10から突出させたときに上記のように第1エレメント61と第2エレメント62が配されるため、第1エレメント61と第2エレメント62によってフィルムを大きく展開させやすくなり、また第1内腔13への第1エレメント61と第2エレメント62の収納時の引き込み抵抗も抑えることができる。なお、第1エレメント61と第2エレメント62はフィルムの押し付けに用いられてもよい。
【0043】
第1エレメント61と第2エレメント62は、第2シャフト20の遠位端部に接続することができる。詳細には、第1エレメント61と第2エレメント62は、第2シャフト20の遠位端21から遠位方向に延出するように配されることが好ましい。
【0044】
第1エレメント61と第2エレメント62は、第2シャフト20と一体成形されていてもよく、別々の部材から形成されてこれらが接続されていてもよい。第1エレメント61と第2エレメント62と第2シャフト20は、直接接続されてもよく、別の部材を介して接続されてもよい。第1エレメント61と第2エレメント62は、溶接、溶着、接着等の方法で第2シャフト20の遠位端部に固定されていてもよい。また、第1エレメント61の近位端部と第2エレメント62の近位端部と第2シャフト20の遠位端部をリング部材等の締付具でかしめることでこれらが互いに接続されていてもよい。
【0045】
第1エレメント61と第2エレメント62はそれぞれ長尺な部分を有していることが好ましい。これにより、第1エレメント61と第2エレメント62にフィルムを巻き付けやすくなる。第1エレメント61と第2エレメント62は例えば線状、棒状、帯状、板状、アーム状、またはこれらを組み合わせた形状を有していてもよい。第1エレメント61と第2エレメント62の形状はそれぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0046】
第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第1エレメント61と第2エレメント62は互いに平行に配されている部分を有することが好ましい。互いに平行に配されている部分にはフィルムを巻き付けやすいため、フィルムの取り付け操作が行いやすくなる。また、送達中のフィルムの脱落を防ぐこともできる。
【0047】
第1エレメント61と第2エレメント62は、第2シャフト20の径方向において対向するように配することができる。第1エレメント61と第2エレメント62によってフィルムを挟持することが好ましい。また、フィルムが第1エレメント61と第2エレメント62に巻き付けられることが好ましい。
【0048】
図7~
図8に示すように、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第1エレメント61と第2エレメント62は中心軸cに対して非対称な形状を有していることが好ましい。このように第1エレメント61と第2エレメント62を形成することで、フィルムの展開を容易にしながら、第1内腔13への収納時の引き込み抵抗を抑えることができる。ここで、第1エレメント61と第2エレメント2の形状は、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させた状態で第1エレメント61と第2エレメント62の径方向の距離が最大となる向きに送達具5を向けたときの側面視での形状を示している。なお、送達具5が第3シャフト30を有している場合には、上記側面視は、
図1のように第3シャフト30からも第1エレメント61と第2エレメント62を突出させた状態での側面視である。
【0049】
図7~
図8に示すように、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、送達具5の側面視で第2シャフト20の径方向において、第2エレメント62の遠位端と中心軸cとの距離が第1エレメント61の遠位端と中心軸cとの距離よりも長くてもよい。このように第1エレメント61と第2エレメント62を形成することによっても、フィルムの展開を容易にしながら、第1内腔13への収納時の引き込み抵抗を抑えることができる。
【0050】
図7~
図8に示すように、第1エレメント61の近位端部と第2エレメント62の近位端部は互いに固定されており、第1エレメント61の遠位端部と第2エレメント62の遠位端部は互いに固定されていないことが好ましい。この構成により、第1エレメント61と第2エレメント62の各遠位端側でフィルムを展開させやすくなる。
【0051】
図9に示すように、第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかがフィルム70に接触する接触部(以下では第1接触部と称する)を有していることが好ましい。第1接触部が接触することにより、フィルム70が押さえられるため、フィルム70の送達中に第3シャフト30の遠位側からフィルム70が脱落することを防ぐことができる。
【0052】
第1接触部はフィルム70を保持することが好ましい。保持の具体的態様は特に限定されず、第1接触部と後述する第2接触部によってフィルム70が挟持されてもよく、第1接触部にフィルムが巻き付けられていてもよく、またはその両方によって保持されてもよい。第1エレメント61と第2エレメント62がそれぞれ第1接触部を有している場合には、2つの第1接触部によってフィルム70が挟持されてもよい。
【0053】
第1エレメント61と第2エレメント62のうち長尺な部分が第1接触部であってもよい。第1エレメント61と第2エレメント62のうち、後述する第1区間が第1接触部であってもよい。また、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに第1エレメント61と第2エレメント62が互いに平行に配されている部分が第1接触部であってもよい。第1エレメント61と第2エレメント62のうち、後述する第1区間が第1接触部であってもよい。
図9では、第1エレメント61が第1接触部64を有し、第2エレメント62が第1接触部65を有している例を示している。
【0054】
第1エレメント61と第2エレメント62は、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに第2シャフト20の長手方向に沿って延在している第1区間をそれぞれ有することが好ましい。各エレメントが第1区間を有していることで、各第1区間にフィルムを巻き付けやすくなる。
図7~
図8では、第1エレメント61が第1区間611を有し、第2エレメント62が第1区間621を有している。
【0055】
図7~
図8に示すように、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第2シャフト20の径方向において、第2エレメント62の第1区間621は、第1エレメント61の第1区間611よりも中心軸cから遠い位置にあることが好ましい。このように第1区間611,621を配することによって、第1エレメント61と第2エレメント62の拡開によってフィルムが大きく展開されやすくなる。
【0056】
図7に示すように、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第1エレメント61の第1区間611は中心軸cの延長線上に延在していることが好ましい。このように第1エレメント61の第1区間611を配することで、第1内腔13への第1エレメント61と第2エレメント62の収納時の引き込み抵抗を抑えやすくなる。
【0057】
第2エレメント62の第1区間621は、中心軸cの延長線上には延在していないことが好ましいが、第2エレメント62の一部が中心軸cの延長線上に延在していてもよい。例えば、第2エレメント62の第2区間622は中心軸cの延長線上に延在していてもよい。
【0058】
図8に示すように、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第2シャフト20の径方向において、第1エレメント61の第1区間611と、第2エレメント62の第1区間621は、それぞれ中心軸cから離れた位置にあってもよい。このように第1区間611,621を配することによっても、フィルムの展開を容易にしながら、第1内腔13への収納時の引き込み抵抗を抑えることができる。
【0059】
第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかが、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに第2シャフト20の近位端22側から遠位端21側に向かって径方向の内側から外側に延在している第2区間を有することが好ましい。このような第2区間を設けることで、第1シャフト10からこれらのエレメントを突出させたときに、第1エレメント61の遠位端と第2エレメント62の遠位端が径方向に離れるように位置させやすくなる。その結果、第1エレメント61と第2エレメント62の拡開によってフィルムが展開されやすくなる。
図7では第2エレメント62が第2区間622を有している例を示している。
図8では、第1エレメント61が第2区間612を有し、第2エレメント62が第2区間622を有している例を示している。
【0060】
第1エレメント61または第2エレメント62において、第1区間は第2区間よりも遠位側に配されていることが好ましく、第1区間は第2区間に隣接して第1区間よりも遠位側に配されていることがより好ましい。これにより、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに送達具5の遠位端に近い側で第1エレメント61と第2エレメント62が互いに離れるように配することができる。なお、第1エレメント61または第2エレメント62において、第1区間は第2区間よりも近位側に配されていてもよい。
【0061】
第2エレメント62は、第2区間を有し、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第2シャフト20の長手方向において、第2エレメント62の第1区間621は第2エレメント62の第2区間622よりも長いことが好ましい。このように第2エレメント62を形成することで、第1区間621にフィルムを保持させやすくなる。
【0062】
第1エレメント61は第2区間612を有していてもよいが、第1区間611のみを有し、第2区間を有しないことが好ましい。第1内腔13への収納時の引き込み抵抗を抑える効果を高めることができる。
【0063】
第1エレメント61と第2エレメント62では、エレメントの途中を屈曲させる、湾曲させる、またはその両方を行うことにより、エレメントの形状を変化させることができる。第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかが一または複数の湾曲部を有していてもよい。湾曲部を設けることで、エレメントを第1内腔13にスムーズに収納しやすくなる。なお、第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかは一または複数の屈曲部を有していてもよい。第1内腔13への収納を容易にするためには、各エレメントは、屈曲部を1つのみ有するか、または屈曲部を有しないことが好ましい。
【0064】
第1エレメント61と第2エレメント62は、第1シャフト10から突出したときに拡開可能な程度の弾性を有していることが好ましい。他方、第1シャフト10の第1内腔13に第1エレメント61と第2エレメント62を収納したときに、第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかが第1シャフト10の内面に接触してもよい。また、第1シャフト10の第1内腔13に第1エレメント61と第2エレメント62を収納したときに、第1エレメント61と第2エレメント62が互いに接触してもよい。
【0065】
第1エレメント61と第2エレメント62の構成材料としては、第2シャフト20の説明で挙げたものを用いることができる。第1エレメント61と第2エレメント62の構成材料は同じであっても異なっていてもよい。第1エレメント61と第2エレメント62の構成材料と、第2シャフト20の構成材料は、同じであってもよく異なっていてもよい。
【0066】
第1シャフト10が第2内腔14を有している場合、送達具5は、第1シャフト10の遠位部に配されておりかつ第2内腔14に内部が連通しているバルーン42を有していることが好ましい。第2内腔14を通じてバルーン42の内部に流体が導入されることでバルーン42は第1シャフト10の径方向の外側に向かって拡張する。また、バルーン42の内部から流体を除去することでバルーン42が収縮する。拡径させたバルーン42でフィルムを押し付けることによって処置部にフィルムを密着させることができる。処置部の近傍まで送達されたフィルムの隙間にバルーン42を入り込ませて拡径させることによって、一気にフィルムを広げて処置部にフィルムを圧着させることが好ましい。流体の導入と除去を行うために、第1シャフト10の近位部には流体出入口18が配されていてもよい。
【0067】
図1、
図4~
図6では、バルーン42の遠位端部と近位端部がそれぞれ第1シャフト10の外面に固定されている。詳細には、第1シャフト10のうち第2内腔14を有しない区間にバルーン42の遠位端部が固定されており、第1シャフト10のうち第1内腔13と第2内腔14を有する区間にバルーン42の近位端部が固定されている。
【0068】
バルーン42は、樹脂を成形することにより製造することができる。バルーン42を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
拡張性能や拡張圧に対する寸法安定性を高めるために、バルーン42に補強材が配されていてもよい。補強材としては、例えば繊維材料を用いることができ、具体的にはポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等が好適に用いられる。これらの繊維材料は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。
【0070】
バルーン42は、拡張圧に応じて外径が変化するコンプライアント型であってもよく、所定の拡張圧以上では、拡張圧を上げてもバルーン42の外径が殆ど増加しないノンコンプライアント型であってもよい。コンプライアント型であれば、起伏がある、または硬い処置部に対してもフィルムを柔軟に押し付けやすくなる。ノンコンプライアント型であれば、狭窄部の拡張補助が可能となり、コンプライアント型に比べて強固にフィルムを圧着することができる。
【0071】
バルーン42の形状は特に限定されないが、
図1に示すように直管部43を有していてもよい。直管部43において、バルーン42は円筒形状を有していることが好ましい。バルーン42が円筒形状を有していることで一度にフィルムの広範囲を押し付けやすくなるため、手技時間を短縮することができる。
図1では直管部43は、近位側テーパー部44と遠位側テーパー部45の間に配されている。近位側テーパー部44と遠位側テーパー部45は例えば円錐台形状であってもよい。直管部43は、近位側テーパー部44と遠位側テーパー部45よりも小さい傾斜角であれば、病変の形状に応じて傾斜していてもよい。
【0072】
バルーン42は球形状または長円球形状を有していてもよい。処置部が起伏部または峡部を有していても、バルーン42が丸みを帯びていることで起伏部または峡部にフィルムを押し付けやすくなる。
【0073】
バルーン42は、後述する第3シャフト30内に収納可能であることが好ましい。第3シャフト30に収納することで処置部以外の場所へのバルーン42の接触を防ぐことができる。最も収縮させたときのバルーン42の最大外径は、第3シャフト30の第3内腔33における最小内径よりも小さいことが好ましい。
【0074】
図1に示すように、第1シャフト10に対して第2シャフト20を最も遠位に位置させたときに、第1エレメント61と第2エレメント62はバルーン42よりも遠位側に位置することが好ましい。このような順に配置されるように送達具5を構成することで、第1エレメント61と第2エレメント62でフィルムを展開させた後に、バルーン42でフィルムを処置部に押し付ける手技をスムーズに行いやすくなる。
【0075】
図5~
図6に示すように、第1シャフト10の第1内腔13に第1エレメント61と第2エレメント62を収納したときに、第1シャフト10の長手方向xにおいて第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかとバルーン42とが重なることが好ましい。第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかが第1シャフト10の遠位端11に近い側に配されることで、第1シャフト10の第1内腔13の遠位側を塞ぐことができる。その結果、第1シャフト10の遠位側開口15から第1シャフト10内に体液や異物が入りにくくなる。また、バルーン42でフィルムを圧着させる時、第1シャフト10を操作する際に第1エレメント61と第2エレメント62が第1シャフト10に収納されていることで、不用意に体内組織を損傷するリスクを低減することができる。特に、フィルムの留置後に送達具5を身体から抜去する手技をスムーズに行うことができる。
【0076】
第1シャフト10の第1内腔13に第1エレメント61と第2エレメント62を収納したときに、第1エレメント61の遠位端と第2エレメント62の遠位端がそれぞれバルーン42の近位端よりも近位側に位置していてもよい。
【0077】
第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第1シャフト10の長手方向xにおいて、バルーン42よりも、第1エレメント61と第2エレメント62のうち長い側の方が長いことが好ましい。第1エレメント61と第2エレメント62でフィルムを展開させた後に、バルーン42でフィルムを処置部に押し付ける手技をスムーズに行いやすくなる。なお、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第1シャフト10の長手方向xにおいて、第1エレメント61と第2エレメント62の長さよりもバルーン42の長さの方が長くてもよい。
【0078】
送達具5の側面視において、バルーン42の拡径時の最大外径は、第1エレメント61と第2エレメント62の径方向の最大距離よりも大きいことが好ましい。これにより、バルーン42でフィルムの広範囲を一斉に押し付けやすくなるため、手技時間を短縮することができる。
【0079】
送達具5の側面視において、バルーン42の拡径時の最大外径は、第1エレメント61と第2エレメント62の径方向の最大距離よりも小さくてもよい。第1エレメント61と第2エレメント62でフィルムを大きく広げつつ、小さなバルーン42でフィルムを部位毎に選択的に押し付けやすくなる。
【0080】
第1エレメント61と第2エレメント62に加えて、さらに一または複数のエレメントが設けることもできるが、第2シャフト20の遠位部には第1エレメント61と第2エレメント62のみが設けられ、他のエレメントは設けられないことが好ましい。
【0081】
図1に示すように、送達具5は、さらに第3シャフト30を有していてもよい。第3シャフト30は、第3内腔33を有し、第1シャフト10が第3内腔33に配される。第3シャフト30は、体内へのフィルムの送達時に第1シャフト10、第2シャフト20、バルーン42、第1エレメント61および第2エレメント62を収納するための部材である。第3シャフト30により、フィルムの送達時にバルーン42、第1エレメント61および第2エレメント62が処置部以外の場所に接触しにくくなる。
【0082】
第3シャフト30は、長手方向と径方向と周方向を有している長尺な部材である。第3シャフト30は、長手方向に遠位端31と近位端32を有している。第3シャフト30の長手方向は、第1シャフト10の長手方向xに延在していることが好ましい。第3シャフト30内に少なくとも第1シャフト10が配されるため、第3シャフト30は例えば筒形状を有していることが好ましく、両端が開口した筒形状を有していることがより好ましい。
【0083】
図9に示すように、第3内腔33には、フィルム70が取り付けられた第1エレメント61と第2エレメント62を収納可能であることが好ましい。第1エレメント61と第2エレメント62と第3シャフト30によってフィルム70を保持した状態で処置部まで送達することができる。
【0084】
第3シャフト30は、バルーン42、第1エレメント61および第2エレメント62を突出させるための一または複数の開口を有している。例えば
図1では、第3シャフト30はその遠位端面に遠位側開口35を有している。第3内腔33は、少なくとも遠位側開口35を通じて第3シャフト30の外と連通している。
【0085】
第3シャフト30は、樹脂チューブ;金属管;線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内面または外面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;またはこれらを組み合わせたものであってもよい。これらの構成については第1シャフト10の説明を参照することができる。
【0086】
図9に示すように、第3内腔33において第3シャフト30の内面は、フィルム70に接触する接触部(以下、第2接触部38と称する)を有することが好ましい。第2接触部38がフィルムに接触することにより、フィルム70が押さえられるため、フィルム70の送達中に第3シャフト30の遠位側からフィルム70が脱落することを防ぐことができる。
【0087】
第1接触部と第2接触部38でフィルム70が保持されることが好ましく、フィルム70が挟持されることがより好ましい。第1接触部と第2接触部38にフィルム70が接触することで、フィルム70の送達中に第3シャフト30の遠位側からフィルム70が脱落することを防ぐことができる。
【0088】
送達具5が、第3内腔33を有しかつ第1シャフト10が第3内腔33に配される第3シャフト30を有している場合、
図4に示すように、第3シャフト30の第3内腔33に第1エレメント61と第2エレメント62とバルーン42を収納したときに、第3シャフト30の長手方向において第1エレメント61と第2エレメント62がバルーン42よりも遠位側に位置することが好ましい。このような順に配されるように送達具5を構成することで、第3内腔33のうちバルーン42の遠位端よりも遠位側の部分を、フィルムを収納するためのスペースとして広く確保しやすくなる。また、第1エレメント61と第2エレメント62でフィルムを展開させた後に、バルーン42でフィルムを処置部に押し付ける手技をスムーズに行いやすくなる。
【0089】
本発明は、医療用具の製造方法も提供する。本発明の一実施形態に係る医療用具1の製造方法は、医療用のフィルム70と医療用フィルム送達具5とを準備する工程と、第1エレメント61と第2エレメント62にフィルム70を取り付ける工程と、
図9に示すようにフィルム70が取り付けられた第1エレメント61と第2エレメント62を第3シャフト30の第3内腔33に配置する工程と、を含んでいる。
図1に示すように、医療用フィルム送達具5は、長手方向xに遠位端11と近位端12を有しかつ第1内腔13を有する第1シャフト10、第1シャフト10の第1内腔13に配され、第1シャフト10に対して長手方向xに移動可能な第2シャフト20、第3内腔33を有しかつ第1シャフト10が第3内腔33に配される第3シャフト30、第2シャフト20の遠位部に配されている第1エレメント61および第2エレメント62、を有し、第1シャフト10から第1エレメント61と第2エレメント62を突出させたときに、第2シャフト20の径方向において、第2エレメント62の遠位端は第1エレメント61の遠位端よりも第2シャフトの長手方向の中心軸cから遠い位置にある。上記医療用具1の製造方法はフィルム70が取り付けられた第1エレメント61および第2エレメント62を第3シャフト30の第3内腔33に配置する工程を含むため、フィルム70が第1エレメント61および第2エレメント62と第3シャフト30によって保持されやすくなるため、フィルム70の送達中に第3シャフト30からフィルム70が脱落することを防ぐことができる。
【0090】
医療用のフィルム70と医療用フィルム送達具5については、上述した構成を適宜組み合わせて採用することができる。
【0091】
第1エレメント61と第2エレメント62へのフィルム70の取り付け方法は特に限定されず、例えば第1エレメント61と第2エレメント62でフィルム70を挟持してもよく、第1エレメント61と第2エレメント62の少なくともいずれかにフィルム70を巻き付けてもよい。フィルム70は丸められていてもよく、折りたたまれていてもよい。
【0092】
フィルム70が取り付けられた第1エレメント61と第2エレメント62を第3シャフト30の第3内腔33に配置する工程では、第1シャフト10から突出した状態で第1エレメント61と第2エレメント62が第3内腔33に配置されることが好ましい。これにより、フィルム70が第1エレメント61と第2エレメント62と第3シャフト30によって保持されやすくなる。
【符号の説明】
【0093】
1:医療用具
5:医療用フィルム送達具
10:第1シャフト
13:第1内腔
14:第2内腔
20:第2シャフト
30:第3シャフト
33:第3内腔
42:バルーン
61:第1エレメント
611:第1区間
612:第2区間
62:第2エレメント
621:第1区間
622:第2区間
70:フィルム
80:処置部