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特開2022-185722基板処理システムおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185722
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】基板処理システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20221208BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/30 502G
H01L21/30 541Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093509
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 泰智
(72)【発明者】
【氏名】川端 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 研二
(72)【発明者】
【氏名】安齋 幹人
(72)【発明者】
【氏名】北川 純
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑
【テーマコード(参考)】
2H197
5F056
5F146
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197AA24
2H197CA09
2H197CD12
2H197CD43
2H197DA09
2H197DA10
2H197DB20
2H197DC01
2H197EA11
2H197EA25
2H197EB16
2H197HA03
2H197HA04
2H197JA09
5F056CA30
5F146AA31
5F146DB14
5F146DD01
5F146DD06
(57)【要約】
【課題】更新ソフトウェアの機能が正常に動作するか否かを事前に判定することが可能な基板処理システムを提供する。
【解決手段】基板処理システム(100)は、基板処理装置(10)と、入出力装置(40)と、第1ソフトウェアがインストールされ、入出力装置から出力された第1信号に基づいて基板処理装置を制御し、基板処理装置から出力された第2信号を取得する第1制御装置(20)と、第2ソフトウェアがインストールされ、第1制御装置と同じ演算処理を行うが基板処理装置を制御しない第2制御装置(30)と、第1信号を第2制御装置に分配する第1分配器(60a)と、第2信号を第2制御装置に分配する第2分配器(60b)とを有し、第2制御装置は、第1信号と第2信号とに基づく第3信号を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置と、
入出力装置と、
第1ソフトウェアがインストールされ、前記入出力装置から出力された第1信号に基づいて前記基板処理装置を制御し、前記基板処理装置から出力された第2信号を取得する第1制御装置と、
第2ソフトウェアがインストールされ、前記第1制御装置と同じ演算処理を行うが前記基板処理装置を制御しない第2制御装置と、
前記第1信号を前記第2制御装置に分配する第1分配器と、
前記第2信号を前記第2制御装置に分配する第2分配器と、を有し、
前記第2制御装置は、前記第1信号と前記第2信号とに基づいて第3信号を出力することを特徴とする基板処理システム。
【請求項2】
前記第2ソフトウェアは、前記第1ソフトウェアを更新したソフトウェアであることを特徴とする請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記第2制御装置から前記第3信号を取得する出力装置と、
前記第2信号に基づいて前記第1制御装置から前記入出力装置へ出力された第4信号を前記出力装置に分配する第3分配器と、を更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記出力装置は、前記第3信号に対応するデータと前記第4信号に対応するデータとを表示することを特徴とする請求項3に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記出力装置は、前記第3信号に対応するデータと前記第4信号に対応するデータとを比較することを特徴とする請求項3に記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記出力装置は、前記第3信号に対応するデータと前記第4信号に対応するデータとの差に基づいて、前記第1制御装置にインストールされた前記第1ソフトウェアを前記第2ソフトウェアに更新可能であるか否かを判定することを特徴とする請求項3に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記第3信号に対応するデータと前記第4信号に対応するデータとの前記差は、前記第1ソフトウェアが前記第2ソフトウェアに更新されることに伴う、基板ステージの振動の許容範囲の変更により生じることを特徴とする請求項6に記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記第3信号に対応するデータと前記第4信号に対応するデータとの前記差は、前記第1ソフトウェアが前記第2ソフトウェアに更新されることに伴う、基板のパターンとマスクのパターンとの位置ズレ算出方法の変更により生じることを特徴とする請求項6に記載の基板処理システム。
【請求項9】
前記第1制御装置および前記第2制御装置は、同一のハードウェア上で動作することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項10】
第1ソフトウェアがインストールされ、入出力装置から出力された第1信号に基づいて基板処理装置を制御し、前記基板処理装置から出力された第2信号を取得する制御部と同じ演算処理を行うが、前記基板処理装置を制御しない制御装置であって、
前記制御装置には、第2ソフトウェアがインストールされており、
前記制御装置は、第1分配器により分配された前記第1信号と第2分配器により分配された前記第2信号とに基づいて、第3信号を出力することを特徴とする制御装置。
【請求項11】
第1ソフトウェアがインストールされた第1制御装置に対して、入出力装置からの第1信号を出力するステップと、
第1分配器により、第2ソフトウェアがインストールされた第2制御装置に対して前記第1信号を分配するステップと、
前記第1信号に基づいて、前記第1制御装置が基板処理装置を制御するステップと、
前記第1信号に基づいて、前記第2制御装置が前記第1制御装置と同じ演算処理を行うが前記基板処理装置を制御しないステップと、
前記第1制御装置に対して、前記基板処理装置からの第2信号を出力するステップと、
第2分配器により、前記第2制御装置に対して前記第2信号を分配するステップと、
前記第1信号と前記第2信号とに基づいて、前記第2制御装置から第3信号を出力するステップと、を有することを特徴とする基板処理システムの制御方法。
【請求項12】
前記第1信号を出力するステップを実行する前に、前記第2制御装置にインストールされた前記第1ソフトウェアを前記第2ソフトウェアに更新するステップを更に有することを特徴とする請求項11に記載の基板処理システムの制御方法。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の基板処理システムを用いて基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置(基板処理装置)の制御を行うためのソフトウェアは、高精度化や高機能化のために随時改良される必要がある。また、ソフトウェアの改良は、新規開発のリソグラフィ装置だけでなく、既に稼動中のリソグラフィ装置に対しても、新機能の追加やハードウェアの性能を向上させる目的で頻繁に行われる。このため、稼働中のリソグラフィ装置に対するソフトウェアの更新に際して、ソフトウェアが正常に動作せず、ソフトウェアの更新を中止せざるを得ない場合がある。
【0003】
一方、未然にシミュレーター等を使ってソフトウェア更新の可否をテストするには、稼働中の装置と同等の環境情報(構成、データ、運用条件)を入手する必要があるため、困難である。また、稼働中のリソグラフィ装置に対してソフトウェア更新を行った後に、データ検証および精度検証を行うことで品質を保つことはできるが、この方法ではユーザ先のリソグラフィ装置を長時間借用する必要がある。
【0004】
特許文献1には、リソグラフィ装置に制御装置と同じ処理を行う別の制御装置とシミュレーション装置を搭載することで、リソグラフィ装置の稼働停止時間を短縮するリソグラフィシステムが開示されている。特許文献2には、ユーザ先の実データをクラウド上へアップロードすることで、より実際の使用環境に適合したソフトウェアデバッグを実行するエンジニアリングシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-066692号公報
【特許文献2】特開2020-052812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたリソグラフィシステムでは、リソグラフィ装置を制御する制御装置とシミュレーション装置を制御する制御装置は同じ処理を行うが、各制御装置へ入力される入力データは同一と保証されるものではなく、タイミングも異なる。特許文献2に開示されたエンジニアリングシステムでは、アップロードした実データを基にクラウド上のシミュレーションを行う仮想機器によってソフトウェアデバッグを行うため、同一の入力データやタイミングによるテストを行うことができない。したがって、実環境とシミュレーション環境の入力情報の誤差により、事前に行うテストの条件に差異が生じ、更新ソフトウェアの機能が正常に動作しない可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、更新ソフトウェアの機能が正常に動作するか否かを事前に判定することが可能な基板処理システム、制御装置、基板処理システムの制御方法、および物品の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての基板処理システムは、基板処理装置と、入出力装置と、第1ソフトウェアがインストールされ、前記入出力装置から出力された第1信号に基づいて前記基板処理装置を制御し、前記基板処理装置から出力された第2信号を取得する第1制御装置と、第2ソフトウェアがインストールされ、前記第1制御装置と同じ演算処理を行うが前記基板処理装置を制御しない第2制御装置と、前記第1信号を前記第2制御装置に分配する第1分配器と、前記第2信号を前記第2制御装置に分配する第2分配器とを有し、前記第2制御装置は、前記第1信号と前記第2信号とに基づく第3信号を出力する。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、更新ソフトウェアの機能が正常に動作するか否かを事前に判定することが可能な基板処理システム、制御装置、基板処理システムの制御方法、および物品の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における基板処理装置の構成図である。
図2】本実施形態における基板処理システムの構成図である。
図3】本実施形態における制御装置の構成図である。
図4】本実施形態における制御装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本実施形態では、基板の上にパターンを形成するリソグラフィ装置(基板処理装置)として、マスクを介して基板にパターンを露光する露光装置を例に説明するが、本実施形態は他の基板処理装置にも適用可能である。例えば、モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置や、荷電粒子線を基板に照射して当該基板にパターンを形成する描画装置などの基板処理装置においても本実施形態を適用しうる。また、感光媒体を基板の表面上に塗布する塗布装置、パターンが転写された感光媒体を現像する現像装置などの基板処理装置においても本実施形態を適用しうる。また、成膜装置(CVD装置等)、加工装置(レーザー加工装置等)、検査装置(オーバーレイ検査装置等)、計測装置(マーク計測装置等)などの基板処理装置においても本実施形態を適用しうる。
【0014】
まず、図1を参照して、本実施形態における露光装置(基板処理装置)10について説明する。図1は、露光装置10の構成図である。露光装置10は、露光光源11、照明光学系12、計測用カメラ13、マスクステージ15、投影光学系16、および基板ステージ18を有する。マスクステージ15にはマスク14が搭載され、基板ステージ18には基板17が搭載される。制御装置20は、露光装置10の計測用カメラ13、マスクステージ15、および基板ステージ18を制御する。露光装置10は、マスク14に描画されたパターンを、投影光学系16を介して基板17上に露光する。この際、制御装置20は、既にパターンが形成された基板17上のパターンとマスク14上のパターンとを高精度に位置合わせする必要がある。このため、計測用カメラ13で計測したパターンの位置ズレをマスクステージ15または基板ステージ18をXYθの2次元平面で制御しながら露光処理を実施する。
【0015】
次に、図2を参照して、本実施形態におけるリソグラフィシステム(基板処理システム)100について説明する。図2は、リソグラフィシステム100の構成図である。
【0016】
リソグラフィシステム100は、露光装置10、露光装置10を制御する制御装置(第1制御装置、制御部)20、制御装置20と同じ演算処理を行う制御装置(第2制御装置)30、および制御装置20に対して入出力を行う入出力装置40を有する。またリソグラフィシステム100は、分配器(第1分配器)60aおよび分配器(第2分配器)60bを有する。分配器60aは、入出力装置40からの入力情報(第1信号)を制御装置30に対して送信(分配)する。分配器60bは、露光装置10からの出力情報(第2信号)を制御装置30に対して送信(分配)する。またリソグラフィシステム100は、制御装置30から出力されたデータ(第3信号)を処理する出力装置50、および、制御装置20から出力されたデータ(第4信号)を入出力装置40および出力装置50へ分配する分配器(第3分配器)60cを有する。
【0017】
制御装置20は、入出力装置40からの操作情報および露光装置10の制御結果を入力し、露光装置10を制御するための制御命令および入出力装置40で表示するための表示情報を出力する。制御装置30は、入出力装置40からの操作情報および露光装置10の制御結果を入力し、露光装置10を制御するための制御命令および出力装置50で表示するための表示情報を出力する。なお、露光装置10は制御装置20から出力される制御命令に従って制御されるが、制御装置30から出力される制御命令は露光装置10に入力されない。すなわち制御装置30は制御装置20と同一の演算処理を行うが、露光装置10は制御装置30からの制御命令に従って実際に制御されるものではない。
【0018】
次に、図3を参照して、本実施形態における制御装置20、30のハードウェア構成について説明する。図3は、制御装置20、30の構成図である。制御装置20、30はそれぞれ同じ構成を有する。
【0019】
制御装置20、30は、パーソナルコンピュータまたはワークステーションなどのコンピュータ装置により構成される。CPU21は、制御装置20、30の全体の制御を司る中央処理装置である。RAM22は、主記憶装置として機能するメモリである。ROM23は、起動プログラムやデータを記憶しているメモリである。HDD24は、ハードディスク装置であり、オペレーティングシステム25、制御パラメータ26、および制御プログラム(制御ソフトウェア)27を含む。制御パラメータ26は、露光を行うためのパラメータであり、マスクステージ15や基板ステージ18の駆動量などを含む。制御プログラム27は、制御パラメータ26に応じた振る舞いがプログラミングされている。また制御プログラム27は、露光装置10の性能向上のために更新されてもよい。本実施形態において、更新前の旧制御プログラム(旧ソフトウェア)を第1制御プログラム(第1ソフトウェア)、更新された制御プログラム(更新されたソフトウェア)を第2制御プログラム(第2ソフトウェア)とする。
【0020】
制御装置20が露光装置10を制御する場合、制御装置20は、オペレーティングシステム25上で動作する制御プログラム27により、露光装置10への制御指示(制御命令)を行う。通信部28は、分配器60a、60bと通信するためのインターフェースを含み、分配器60a、60bに対して入出力を行う。なお制御装置20、30は、同一のハードウェア上で動作してもよい。
【0021】
入出力装置40は、露光装置10の操作および制御装置20からの表示情報に応じて表示を行うための装置である。入出力装置40は、ホストコンピュータや露光装置10に備え付けの操作端末などである。出力装置50は、制御装置30からの表示情報に応じて表示を行うための装置である。出力装置50は、ホストコンピュータや露光装置10に備え付けの操作端末などである。なお、出力装置50は入出力装置40と同一であってもよい。また出力装置50は、分配器60cにより分配された制御装置20の処理結果と制御装置30の処理結果とを比較し、比較結果を表示することができる。
【0022】
分配器60aおよび分配器60bは、入出力装置40からの操作情報、および露光装置10からの制御結果を、制御装置20、30へブロードキャスト(分配)するための装置である。分配器60cは、制御装置20から出力されたデータを入出力装置40と出力装置50とへ分配するための装置である。分配器60a、60b、60cは、例えばネットワークハブである。ブロードキャストは、例えば、制御装置20、30とネットワークハブとをLANケーブルにより接続して実現可能である。これにより、制御装置20、30は、通信部28を介して同一のデータを同一のタイミングで取得することができる。また、分配器60a、60bは、制御装置30の制御プログラム27が更新されたことを契機として、ブロードキャストを開始してもよい。
【0023】
次に、図4を参照して、リソグラフィシステム100における制御装置20、30の処理、すなわち入出力装置40からの操作情報を制御装置20、30へブロードキャストし、出力データを比較する方法について説明する。図4は、制御装置20、30の処理を示すフローチャートである。
【0024】
まずステップS101において、制御装置30は、制御装置30の外部から新規制御プログラムを読み込み、制御装置30の制御プログラム27を更新する。なお、新規制御プログラムは、露光装置10の製造ベンダにより光磁気ディスクなどの記録媒体に格納して提供されることが一般的であるが、これに限定されるものではない。インターネットなどのネットワークを介して制御プログラム27を新規制御プログラムに更新してもよい。
【0025】
続いてステップS102において、ユーザは、入出力装置40を介して操作情報を入力する(操作入力)。操作情報の入力は、露光装置10に備え付けの操作端末を介して行われることが一般的である。続いてステップS103において、分配器60aは、入出力装置40からの操作情報を、制御装置20、30へブロードキャストする。続いてステップS104およびステップS105において、制御装置20、30は、同一のタイミングで、操作入力に応じた処理を開始する。
【0026】
続いてステップS106において、制御装置20は、露光装置10へ制御命令を出力する。一方、制御装置30は、実際には露光装置10を制御しないため、制御命令を出力しない。続いてステップS107において、露光装置10は、ステップS106にて制御装置20から出力された制御命令に従って処理を行う(制御命令に従って制御される)。続いてステップS108において、露光装置10は、制御結果を出力する。続いてステップS109において、分配器60bは、露光装置10から出力された制御結果を、制御装置20、30へブロードキャストする。続いてステップS110およびステップS111において、制御装置20、30は、同一のタイミングで、制御結果に応じた処理を開始する。
【0027】
続いてステップS112およびステップS113において、制御装置20、30は、入出力装置40および出力装置50へ処理結果を出力する。続いてステップS114において、分配器60cは、制御装置20からの処理結果を、入出力装置40および出力装置50へ送信する。続いてステップS115において、入出力装置40は、処理結果を表示する。ステップS116において、出力装置50は、制御装置20の処理結果と制御装置30の処理結果とを比較し、比較結果を表示する。
【0028】
ここで出力装置50は、例えば、制御装置20の出力と制御装置30の出力との差異が想定した差異と一致するかを判定する。制御装置20、30に対しては、ブロードキャストによる入力を行っているため、運用条件によって発生する出力の差異は発生せず、制御プログラム27の処理に依存した出力の差異のみが発生する。出力装置50での比較結果が想定した差異である場合、新規制御プログラムの処理は妥当であり、ソフトウェアの更新が正常に実施可能であると考えられる。このため制御装置20は、制御装置20の外部から新規制御プログラムを読み込み、制御プログラム27を更新できると判定される。出力装置50による比較結果が想定した差異と一致しない場合、新規制御プログラムまたは制御パラメータの少なくとも一方を修正する必要があると判定される。
【0029】
一例として、基板ステージ18の振動が露光結果に影響を与えてしまう現象を解決するため、新規制御プログラムへの更新に伴い、基板ステージ18の振動(振動の規格判定)の許容範囲を変更する(例えば狭める)ようにしてもよい。基板ステージ18には多数の制御パラメータ26があり、また露光装置10によって制御パラメータ26の値が大きく異なるため。このため、新規制御プログラムを更新した場合の効果は、リソグラフィシステム100に応じて異なる。
【0030】
また、別の一例として、基板17上のパターンとマスク14上のパターンとの位置合わせ精度を高めるため、新規制御プログラムへの更新に伴い、計測用カメラ13で計測したパターンの位置ズレ算出方法を変更してもよい。基板17上のパターンとマスク14上のパターンは、ユーザの生産プロセスに応じて異なる。このため、新規制御プログラムを更新した場合の効果は、生産プロセスに応じて異なる。
【0031】
つまり、これらの例においては、新規制御プログラムの更新が期待通りの結果をもたらさない可能性がある。場合によっては、エラーが発生し動作できなくなり、露光装置10の稼働率が落ちる可能性や、精度が低下して不良が発生する可能性がある。
【0032】
そこで本実施形態において、新規制御プログラムは、光磁気ディスクの記録媒体に格納して保存されている。制御装置30は、光磁気ディスクを読み込むことにより、制御装置30の制御プログラム27を更新する。そして、リソグラフィシステム100に備え付けの操作端末から露光を実行する操作を行う。このとき、制御装置20および制御装置30の制御パラメータ26は、前記現象の発生したものと同一とする。
【0033】
露光が終了すると、露光装置10から出力された制御結果が分配器60bによって制御装置20、30へブロードキャスト(分配)され、制御装置20、30が処理を行う。制御装置20の処理結果は、分配器60cにより出力装置50へ送信される。このため出力装置50は、制御装置20の処理結果と制御装置30の出力結果とを比較することができる。
【0034】
制御装置20は、更新前の制御プログラム27で処理を行うが、制御装置30は、更新後の制御プログラム(新規制御プログラム)27で処理を行う。このため、出力装置50が処理結果の比較を行うと、例えば、基板ステージ18の振動の規格判定結果についての差分や、パターンの位置ズレ結果についての差分が出力される。
【0035】
これらの差分は、新規制御プログラムの処理が妥当であることを示し、実際に露光装置10を制御する制御装置20の制御プログラム27を正常に更新可能であると判定することができる。また、例えば、処理結果の比較の結果、差分が生じていない場合、新規制御プログラムは妥当ではないため、修正が必要であるか、または制御パラメータ26の変更が必要である。または、新規制御プログラムは、リソグラフィシステム100の本機種や本ユーザの生産プロセスでは使用できないと判定される。この際、制御装置20は、更新前の制御プログラム27で処理を行い露光装置10を制御して生産を行っているため、エラーが発生し動作できなくなり、露光装置10の稼働率が落ちることや精度が低下し不良が発生することなどの問題は生じない。
【0036】
以上のように、基板処理システム(リソグラフィシステム100)は、基板処理装置(露光装置10)、入出力装置40、第1制御装置(制御装置20)、第2制御装置(制御装置30)、第1分配器(分配器60a)、および第2分配器(分配器60b)を有する。第1制御装置は、第1ソフトウェア(更新前の制御プログラム)がインストールされ、入出力装置から出力された第1信号に基づいて基板処理装置を制御し、基板処理装置から出力された第2信号を取得する。第2制御装置は、第2ソフトウェア(更新後の制御プログラム)がインストールされ、第1制御装置と同じ演算処理を行うが基板処理装置を制御しない。第1分配器は、第1信号を第2制御装置に分配する。第2分配器は、第2信号を第2制御装置に分配する。第2制御装置は、第1信号と第2信号とに基づいて第3信号を出力する。
【0037】
好ましくは、基板処理システムは、出力装置50および第3分配器(分配器60c)を有する。出力装置は、第2制御装置から第3信号を取得する。第3分配器は、第2信号に基づいて第1制御装置から入出力装置へ出力された第4信号を出力装置に分配する。
【0038】
好ましくは、出力装置は、第3信号に対応するデータと第4信号に対応するデータとを表示する。ユーザは、出力装置に表示された第3信号に対応するデータと第4信号に対応するデータとを比較して、ソフトウェア更新の可否を判定することができる。
【0039】
好ましくは、出力装置は、第3信号に対応するデータと第4信号に対応するデータとを比較する。ユーザは、出力装置による比較結果に基づいて、ソフトウェア更新の可否を判定することができる。
【0040】
好ましくは、出力装置は、第3信号に対応するデータと第4信号に対応するデータとの差に基づいて、第1制御装置にインストールされた第1ソフトウェアを第2ソフトウェアに更新可能であるか否かを判定する。この構成によれば、ソフトウェア更新の可否を出力装置が判定することができる。より好ましくは、第3信号に対応するデータと第4信号に対応するデータとの差は、ソフトウェアの更新に伴う、基板ステージの振動の許容範囲の変更、または基板のパターンとマスクのパターンとの位置ズレ算出方法の変更により生じる。
【0041】
<物品の製造方法の実施形態>
本実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子やフラットパネルディスプレイ等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、上述した基板処理システム(リソグラフィシステム100)を用いて基板を処理する工程と、かかる工程で処理された基板から物品を製造する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、周知の工程(露光、酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0042】
本実施形態によれば、更新ソフトウェアの機能が正常に動作するか否かを事前に判定することが可能な基板処理システム、制御装置、基板処理システムの制御方法、および物品の製造方法を提供することができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 露光装置(基板処理装置)
20 制御装置(第1制御装置)
30 制御装置(第2制御装置)
40 入出力装置
60a:分配器(第1分配器)
60b:分配器(第2分配器)
100 リソグラフィシステム(基板処理システム)
図1
図2
図3
図4