(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185726
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】塗工装置及び塗工方法
(51)【国際特許分類】
B05C 3/132 20060101AFI20221208BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221208BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20221208BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221208BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B05C3/132
B05C11/10
B05D1/18
B05D3/00 B
B05D3/00 C
B05D7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093514
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 基
(72)【発明者】
【氏名】田邉 正明
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AB01
4D075AB12
4D075AB15
4D075AB32
4D075AB35
4D075AB41
4D075AB51
4D075AB54
4D075AB56
4D075AE24
4D075BB24Z
4D075BB33Z
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4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
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4D075EA14
4F040AA22
4F040AB04
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4F040AC02
4F040BA47
4F040CC02
4F040CC14
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4F042AA22
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA15
4F042BA25
4F042CB02
4F042CB07
4F042DF23
4F042ED01
(57)【要約】
【課題】基材両面に塗膜を形成する塗工装置において基材幅方向にテンションを与える。
【解決手段】塗工装置20は、基材2の両面に対して塗液Cを塗布し、基材2の厚み方向に互いに対向する第1及び第2ブロック21,22と、第1及び第2ブロック21,22同士の隙間に塗液Cが溜まるように形成されるとともに、基材2が通る液溜り部23と、を備える。液溜り部23は、基材2の搬送方向における上流側に開口し、基材2が導入される基材導入口24と、搬送方向における下流側に開口し、基材2が排出される基材排出口25と、幅方向の両側にそれぞれ位置する側面部26と、を含む。第1ブロック21には、液溜り部23に塗液Cを供給する塗液供給口30が設けられている。第1ブロック21には、液溜り部23から塗液Cを排出する塗液排出口31が設けられている。塗液供給口30と塗液排出口31とは、幅方向において互いに間隔を空けて配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシート状の基材の両面に対して塗液を塗布する塗工装置であって、
前記基材の厚み方向に互いに対向する一対のブロックと、
前記一対のブロック同士の隙間に前記塗液が溜まるように形成されるとともに、前記基材が通る液溜り部と、を備え、
前記液溜り部は、
前記基材の搬送方向における上流側に開口し、前記基材が導入される基材導入口と、
前記搬送方向における下流側に開口し、前記基材が排出される基材排出口と、
前記搬送方向に交差する幅方向の両側にそれぞれ位置する側面部と、を含み、
前記一対のブロック及び前記側面部のうちの少なくともいずれかには、前記液溜り部に臨むとともに前記液溜り部に前記塗液を供給する塗液供給口が設けられており、
前記一対のブロック及び前記側面部のうちの少なくともいずれかには、前記液溜り部に臨むとともに前記液溜り部から前記塗液を排出する塗液排出口が設けられており、
前記塗液供給口と前記塗液排出口とは、前記幅方向において互いに間隔を空けて配置されている、塗工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗工装置において、
前記塗液供給口は、前記一対のブロックのうちの少なくとも一方のブロックに設けられている、塗工装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗工装置において、
前記塗液排出口は、少なくとも前記一方のブロックに設けられている、塗工装置。
【請求項4】
請求項3に記載の塗工装置において、
前記塗液排出口は、前記塗液供給口よりも前記幅方向の両外側にそれぞれ配置されている、塗工装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記塗液供給口は、前記一対のブロックのうちの両方のブロック各々に設けられている、塗工装置。
【請求項6】
請求項5に記載の塗工装置において、
各前記塗液供給口は、前記液溜り部を介して前記厚み方向に互いに対向している、塗工装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記塗液排出口は、前記一対のブロックのうちの両方のブロック各々に設けられている、塗工装置。
【請求項8】
請求項7に記載の塗工装置において、
各前記塗液排出口は、前記液溜り部を介して前記厚み方向に互いに対向している、塗工装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記幅方向における少なくとも片側の前記側面部には、前記基材導入口から前記基材排出口に亘って開口する露出口が設けられており、
前記露出口からは、前記基材の前記幅方向における一部が前記液溜り部の外部に突出可能である、塗工装置。
【請求項10】
請求項9に記載の塗工装置において、
前記露出口は、前記幅方向における両側の前記側面部にそれぞれ設けられており、
前記塗液供給口及び前記塗液排出口は、前記一対のブロックのうちの少なくとも一方のブロックに設けられている、塗工装置。
【請求項11】
請求項9に記載の塗工装置において、
前記露出口は、前記幅方向における片側の前記側面部にのみ設けられており、
前記片側とは反対側の前記側面部は、閉塞しており、
前記塗液供給口及び前記塗液排出口のうちの一方は、前記一対のブロックのうちの少なくとも一方のブロックに設けられており、
前記塗液供給口及び前記塗液排出口のうちの他方は、前記閉塞した前記側面部に設けられている、塗工装置。
【請求項12】
請求項11に記載の塗工装置を2つ備え、
各前記塗工装置の前記塗液供給口は、前記一対のブロックのうちの少なくとも一方のブロックに設けられており、
各前記塗工装置の前記塗液排出口は、前記閉塞した前記側面部に設けられており、
各前記塗工装置は、前記幅方向において互いに間隔を空け且つ前記露出口が互いに対向するとともに前記塗液排出口が前記塗液供給口よりも前記幅方向の外側に位置するように配置されてなる、塗工システムの塗工装置。
【請求項13】
請求項2から12のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記一方のブロックの内部には、前記塗液供給口に連通する塗液供給路が設けられており、
前記塗液供給路は、前記塗液供給口に向かうに従って前記幅方向において前記塗液排出口に近づくように傾斜している、塗工装置。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記幅方向における両側の前記側面部は、いずれも閉塞しており、
前記塗液供給口は、前記幅方向における片側の前記閉塞した前記側面部に設けられており、
前記塗液排出口は、前記幅方向における前記片側とは反対側の前記閉塞した前記側面部に設けられている、塗工装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記基材は、前記厚み方向に前記塗液を連通させる連通部を含む、塗工装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1つに記載の塗工装置を用いて、前記塗液供給口から前記液溜り部に前記塗液を供給しながら、前記基材を前記液溜り部に通す、塗工方法。
【請求項17】
請求項16に記載の塗工方法において、
前記塗液供給口を介して前記液溜り部に供給される前記塗液の量は、前記基材排出口を介して前記液溜り部から前記基材と伴に排出される前記塗液の量よりも多く、前記液溜り部における余剰の前記塗液は、前記塗液排出口を介して前記液溜り部から排出される、塗工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗工装置及び塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばロールtoロール法によって搬送されるシート状の基材の両面に塗膜を形成するための塗工装置に関して、種々の技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示の塗布装置(塗工装置)では、先ず、連続搬送される長尺のシート状基材を塗液が溜められた浸漬槽に浸けることによって、基材の両面に対して塗液を塗布する。その後、基材を垂直方向に上昇させながら、一対の掻き落としロールによって、基材の両面における余分な塗液を掻き落とす。これにより、基材の両面に、一定の厚みの塗膜が形成される。浸漬槽には、外部から塗液を供給するための塗液供給口や、外部へ塗液を排出するための塗液排出口が、設けられてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような塗工装置を用いて、シート状の基材の両面に塗膜を形成する場合、基材に形成される塗膜の状態が幅方向に不均一であったり、塗膜の位置が幅方向にずれていたりすること等がある。このような不均一や位置ずれは、基材の幅方向における弛み、基材への皺の発生、基材の幅方向における塗工位置ずれ等が原因であることが多く、塗工中、基材に対して幅方向にテンション(張力)を与え続けることによって抑制され得る。
【0006】
しかしながら、基材に対して幅方向にテンションを与えるだけのために、新たな機構を設けるとなると、塗工装置の構成が複雑になってしまう。
【0007】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送される基材の両面に塗膜を形成する塗工装置において、簡単な構成でもって、基材に対して幅方向にテンションを与え続けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る塗工装置は、搬送されるシート状の基材の両面に対して塗液を塗布する塗工装置であって、上記基材の厚み方向に互いに対向する一対のブロックと、上記一対のブロック同士の隙間に上記塗液が溜まるように形成されるとともに、上記基材が通る液溜り部と、を備え、上記液溜り部は、上記基材の搬送方向における上流側に開口し、上記基材が導入される基材導入口と、上記搬送方向における下流側に開口し、上記基材が排出される基材排出口と、上記搬送方向に交差する幅方向の両側にそれぞれ位置する側面部と、を含み、上記一対のブロック及び上記側面部のうちの少なくともいずれかには、上記液溜り部に臨むとともに上記液溜り部に上記塗液を供給する塗液供給口が設けられており、上記一対のブロック及び上記側面部のうちの少なくともいずれかには、上記液溜り部に臨むとともに上記液溜り部から上記塗液を排出する塗液排出口が設けられており、上記塗液供給口と上記塗液排出口とは、上記幅方向において互いに間隔を空けて配置されている。
【0009】
本開示に係る塗工方法は、上記塗工装置を用いて、上記塗液供給口から上記液溜り部に上記塗液を供給しながら、上記基材を上記液溜り部に通す。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、搬送される基材の両面に塗膜を形成する塗工装置において、簡単な構成でもって、基材に対して幅方向にテンションをかけ続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態に係る塗工装置を含む塗工システムを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る塗工装置の正面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る塗工装置の基材排出口近傍を拡大して示す拡大正面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る塗工装置の平面図である。
【
図7】
図7は、第3の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
【
図8】
図8は、第4の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
【
図9】
図9は、第5の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
【
図10】
図10は、第5の実施形態に係る塗工装置の
図9におけるX-X断面を示す平面断面図を示す。
【
図12】
図12は、第7の実施形態に係る塗工装置の正面図である。
【
図13】
図13は、第7の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
【
図14】
図14は、第8の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
【
図15】
図15は、第9の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
【
図16】
図16は、第10の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
【
図17】
図17は、第11の実施形態に係る塗工装置の側面図である。
【
図18】
図18は、第12の実施形態に係る塗工システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0013】
<第1の実施形態>
(基本構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る塗工システム1を模式的に示す。塗工システム1は、基材2の両面に塗膜Fを連続的に形成するためのものである。塗工システム1は、基材供給装置10、塗工装置20及び塗液供給装置40から構成されてなる。
【0014】
基材2は、長尺のシート状に形成されている。基材2としては、例えば、金属箔、樹脂フィルム、織布、不織布、紙等がある。基材2の塗膜Fを含まない厚み寸法t(
図5参照)は、例えば1mm以下である。
【0015】
基材供給装置10は、ロールtoロール法によって、基材2を、その長手方向を搬送方向(Xで示す)として連続搬送する。具体的には、基材供給装置10は、基材2を巻出機11で巻き出して巻取機12で巻き取ることによって、基材2を連続搬送する。搬送される基材2は、途中、第1ロール13及び第2ロール14を通る。
【0016】
基材2の搬送方向において、第1ロール13と第2ロール14との間には、塗工装置20が配置されている。塗工装置20は、詳細は後述するが、連続搬送されるシート状の基材2の両面に対して塗液Cを塗布して、基材2の両面に塗膜Fを形成する。塗工装置20によって両面に塗膜Fが形成された基材2は、乾燥炉(図示せず)で乾燥されて塗膜F内に含まれる揮発成分が除去された後、巻取機12に巻き取られる。
【0017】
塗工装置20の構成について、詳細に説明する。
図2~5は本実施形態に係る塗工装置20を示し、
図2は正面図(II矢視図)、
図3は平面図(III矢視図)、
図4は側面図(IV矢視図)、
図5は後述する基材排出口25近傍の拡大正面図である。
【0018】
なお、本実施形態において、基材2の搬送方向(長手方向)及び幅方向(Yで示す)は、水平方向である。基材2の幅方向は、基材2の搬送方向に交差、具体的には直交している。基材2の厚み方向(Zで示す)は、鉛直方向である。
【0019】
塗工装置20は、
図2に示すように、一対のブロック、具体的には第1ブロック21及び第2ブロック22を備える。第1ブロック21と第2ブロック22とは、基材2の厚み方向に互いに所定の間隔を空けて配置されており、基材2の厚み方向に互いに対向している。各ブロック21,22は、略直方体状に形成されており、その長手方向が基材2の搬送方向に沿うように配置されている。
【0020】
図3,4において、L1は、各ブロック21,22の長さ寸法である。L2は、各ブロック21,22の幅寸法である。L3は、各ブロック21,22の厚み寸法である。各ブロック21,22の長さ寸法L1は、基材2の厚み寸法t(
図5参照)に対して、十分大きい(例えば100倍以上)ことが好ましい。本実施形態では、
図4に示すように、各ブロック21,22の幅寸法L2は、基材2の幅寸法Bよりも小さい。
【0021】
図2に示すように、一対のブロック同士の隙間23、すなわち第1ブロック21と第2ブロック22との隙間23には、塗液Cが溜まるように、液溜り部が形成されている(以下、「液溜り部23」という)。基材2が液溜り部23を通ることによって、基材2の両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の両面に塗膜Fが形成される。
【0022】
塗液Cは、ペースト状又はスラリー状であることが好ましい。塗液Cの粘度ηは、1mPa・s以上であることが好ましく、1Pa・s~1000Pa・sであることがより好ましい。塗液Cは、例えば、シリカ、低融点ガラス、アルミナ・酸化チタン等の金属酸化物粒子を含んだ絶縁体材料や、はんだ、銅、銀、金属被覆した粒子等の金属粒子や、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、カーボン等を含んだ導電性材料や、染料、等を用いることができる。
【0023】
Hは、第1ブロック21と第2ブロック22との隙間寸法を示す。隙間寸法Hは、基材2が通過可能なように、基材2の厚み寸法t(例えば0.1mm以下)よりも大きい。隙間寸法Hは、極力小さい方がよく、0.1mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0024】
液溜り部23は、基材2の搬送方向における上流側(
図2における左側)に開口する基材導入口24と、基材2の搬送方向における下流側(
図2における右側)に開口する基材排出口25と、を含む。基材導入口24と基材排出口25とは、搬送方向において、互いに対向している。基材2は、基材導入口24から導入されて、液溜り部23を通って、基材排出口25から排出される。
【0025】
図3,4に示すように、液溜り部23は、基材2の幅方向における両側にそれぞれ位置する側面部26を含む。側面部26とは、液溜り部23の幅方向端部を構成する搬送方向及び厚み方向に延びる面をいう。側面部26は、幅方向一方側(
図4における左側)の第1側面部26a及び幅方向他方側(
図4における右側)の第2側面部26bから構成されている。第1側面部26aと第2側面部26bとは、幅方向において、互いに対向している。
【0026】
図4に示すように、幅方向における両側の側面部26、すなわち第1側面部26a及び第2側面部26bには、露出口29がそれぞれ設けられている。各露出口29は、第1側面部26a及び第2側面部26b各々において、基材導入口24側(上流側)から基材排出口25側(下流側)に亘って、開口している(
図2参照)。すなわち、第1側面部26a及び第2側面部26bは、開放されている。
図4に示すように、露出口29からは、基材2の幅方向における一部が、液溜り部23の外部に突出可能である。
【0027】
図2,4に示すように、第1ブロック(一対のブロックのうちの一方のブロック)21における液溜り部23に臨む面には、塗液供給口30及び塗液排出口31が設けられている。塗液供給口30は、液溜り部23に臨むとともに、液溜り部23に塗液Cを供給する。塗液排出口31は、液溜り部23に臨むとともに、液溜り部23から塗液Cを排出する。
【0028】
図3,4に示すように、塗液供給口30と塗液排出口31とは、幅方向において、互いに間隔を空けて配置されている。具体的には、塗液供給口30は、幅方向中央部よりも一方側(第1側面部26a寄り)に配置されている。塗液排出口31は、幅方向中央部よりも他方側(第2側面部26b寄り)に配置されている。より詳細には、塗液供給口30は、第1ブロック21における液溜り部23に臨む面の幅方向一端部に、設けられている。塗液排出口31は、第1ブロック21における液溜り部23に臨む面の幅方向他端部に、設けられている。
【0029】
図3に示すように、塗液供給口30及び塗液排出口31は、搬送方向に並んで複数個ずつ(例えば3個ずつ)配置されている。各塗液供給口30と各塗液排出口31とは、搬送方向において互いに同じ位置にある。なお、塗液供給口30及び塗液排出口31は、1個ずつでもよい。
【0030】
図3に示すように、塗液供給口30の断面形状は、例えば円形や楕円形等である。塗液供給口30の直径は、1mm以上であることが好ましい。
【0031】
塗液供給装置40(
図1参照)は、塗液Cを塗工装置20に供給するための装置であり、塗液供給ポンプ41、塗液供給管42及び塗液排出管43で構成されている。
【0032】
ここで、
図2,4に示すように、第1ブロック(一方のブロック)21の内部には、塗液供給路32が設けられている。塗液供給路32は、その上流側で塗液供給管42を介して塗液供給ポンプ41に連通しているとともに、その下流側で塗液供給口30に連通している。塗液供給路32は、厚み方向に略真直ぐに延びている。同様に、第1ブロック21の内部には、塗液排出路33が設けられている。塗液排出路33は、その上流側で塗液排出口31に連通しているとともに、その下流側で塗液排出管43を介して塗液供給ポンプ41の付属タンク(図示せず)に連通している。塗液排出路33は、厚み方向に略真直ぐに延びている。
【0033】
塗液供給ポンプ41は、例えば、スクリューポンプ、ダイアフラムポンプ、シリンジポンプ又はチューブポンプ等の定量供給可能なものを採用することが好ましい。塗液排出管43及び塗液排出路33は、塗工停止時において液溜り部23の塗液Cを除去するためにも用いられる。塗液Cの排出については、塗液排出口31を圧力損失が小さくなるような形状にして、液溜り部23における余剰の塗液Cが自然に排出されるようにしてもよく、また、吸引機構によって積極的に吸引してもよい。塗液供給ポンプ41の代わりに、供給タンクに圧縮空気を導入して圧力送液してもよい。
【0034】
塗液供給口30を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される塗液C(塗膜F)の量と、塗液排出口31を介して液溜り部23から排出される塗液Cの量と、の和に略等しい。より具体的には、塗液供給口30を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される塗液C(塗膜F)の量よりも多い。そして、液溜り部23における余剰の塗液Cは、塗液排出口31を介して液溜り部23から排出される。
【0035】
第1ブロック21側の塗液供給口30から供給される塗液Cが、基材2を厚み方向に貫通して、第2ブロック22側に回り込むようにするために、基材2は、その厚み方向に塗液Cを連通させる連通部を、含むことが好ましい。具体的には、基材2を、例えば、パンチングメタル(第2の実施形態参照)で構成したり、櫛歯形状や梯子形状に形成したり、メッシュ状に形成したりすること等が考えられる。また、基材2を、多孔質材で構成してもよい。
【0036】
(塗工態様)
塗液供給ポンプ41を駆動することによって、塗液Cは、塗液供給管42及び塗液供給路32を通って、塗液供給口30から液溜り部23に供給される。液溜り部23に塗液Cが溜められた状態で、塗工中常時、塗液供給口30から液溜り部23に塗液Cを供給し続けながら、基材2を液溜り部23に通す。これにより、基材2の両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の両面に塗膜Fが形成される。
【0037】
塗液供給口30を介して液溜り部23に供給される塗液Cの一部は、塗膜Fとして、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される。塗液Cの残部は、塗液排出口31を介して液溜り部23から排出されて、塗液排出路33及び塗液排出管43を通って、塗液供給ポンプ41の付属タンク(図示せず)に回収される。付属タンクに回収された塗液Cは、フィルタ等で不純物が除かれた後、塗液供給ポンプ41によって、再び、液溜り部23に供給される。
【0038】
図4に示すように、塗液Cは、液溜り部23内において、幅方向一方側(
図4における左側)の塗液供給口30から幅方向他方側(
図4における右側)の塗液排出口31に向かって、幅方向他方(
図4における右方)に流れ続ける。具体的には、塗液Cは、塗液供給口30から塗液排出口31に向かって、第1ブロック21と基材2との間を、基材2に沿うようにして、幅方向他方に流れ続ける。
【0039】
図3,4に示すように、基材2の幅方向中間部2bを、塗液Cを塗布する特定部位Pとする。一方、基材2の幅方向両端部2a各々を、塗液Cを塗布しない非特定部位Qとする。基材2を液溜り部23に通す際、基材2の各非特定部位Q(幅方向両端部2a各々)を、各露出口29から液溜り部23の外部に突出させる。これにより、基材2の特定部位Pの両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の特定部位Pの両面に塗膜Fが形成される。一方、基材2の各非特定部位Qの両面には、塗液Cが塗布されないので、塗膜Fが形成されない。
【0040】
基材2が基材排出口25を介して液溜り部23から排出される際、基材排出口25の近傍において、基材2の両面に塗布された塗液Cに対して、強いせん断力が加わる。このため、
図5に示すように、基材2の塗膜Fを含めた厚み寸法Tは、基材排出口25(液溜り部23)の隙間寸法Hに対して、やや小さくなる。
【0041】
(作用効果)
本実施形態によれば、塗液供給口30と塗液排出口31とが幅方向に互いに間隔を空けて配置されているので、
図4に示すように、塗液Cは、液溜り部23内において、塗工中常時、塗液供給口30から塗液排出口31に向かって、基材2に沿うようにして、幅方向に流れ続ける。
【0042】
このような基材2に沿った幅方向への塗液Cの流れを発生させ続けることによって、基材2に対して幅方向にテンション(張力)が与えられ続ける。これにより、基材2が幅方向両側に引っ張られて、基材2の幅方向における弛み、基材2への皺の発生、基材2の幅方向における塗工位置ずれ等が、抑制される。
【0043】
また、このような基材2に対する幅方向へのテンションの付与は、基材2への塗膜Fの形成に不可欠な、液溜り部23に対する塗液Cの供給・排出機構によって、行われる。このため、基材2に対して幅方向にテンションを与えるだけのために、新たな機構を設ける必要がなく、塗工装置20の構成が複雑にならない。
【0044】
したがって、搬送される基材2の両面に塗膜Fを形成する塗工装置20において、簡単な構成でもって、基材2に対して幅方向にテンションを与え続けることができる。
【0045】
特に、本実施形態では、塗液供給口30及び塗液排出口31はともに、厚み方向において同じ側の第1ブロック21に設けられている。これにより、塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cは、第1ブロック21と基材2との間を、基材2の厚み方向一方側の面(
図4における下面)に沿うようにして、幅方向にスムーズに流れるようになる。
【0046】
図4に示すように、複数の塗液供給口30と複数の塗液排出口31とが、それぞれ搬送方向に並んでいるので、搬送方向に亘って満遍なく、基材2に対して幅方向にテンションを与えることができる。
【0047】
本実施形態では、幅方向における少なくとも片側の側面部26に露出口29が設けられているので、基材2の幅方向における一部を、露出口29から液溜り部23の外部に突出させることができる。これにより、搬送される基材2の幅方向における特定部位Pの両面に選択的に塗膜Fを形成することができる。
【0048】
特に、本実施形態では、露出口29が幅方向両側の第1側面部26a及び第2側面部26bにそれぞれ設けられているので、基材2の幅寸法Bが各ブロック21,22の幅寸法(液溜り部23の幅寸法)L2よりも大きい場合に、基材2の幅方向両端部2aの両方を、各露出口29から液溜り部23の外部に突出させることができる。
【0049】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る塗工装置20について、
図6を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0050】
本実施形態では、基材2は、パンチングメタルで構成されている。基材2には、連通部として、複数のパンチ穴3が空けられている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0051】
本実施形態によれば、第1ブロック21側の塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cの一部は、基材2のパンチ穴3を通って、第2ブロック22側に回り込むようになる。
【0052】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る塗工装置20について、
図7を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0053】
本実施形態では、基材2の幅方向一方側2cを特定部位Pとする。一方、基材2の幅方向他方側2dを非特定部位Qとする。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0054】
本実施形態によれば、第1ブロック21側の塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cの一部は、基材2の幅方向一方側の側面2eの脇を通って、第2ブロック22側に回り込むようになる。
【0055】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る塗工装置20について、
図8を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0056】
本実施形態では、基材2の幅寸法Bは、各ブロック21,22の幅寸法(液溜り部23の幅寸法)L2よりも小さい。また、基材2の幅方向全体を特定部位Pとし、非特定部位Qを設けない。すなわち、基材2の幅方向全体の両面に塗液Cが塗布されて、塗膜Fが形成される(全面塗り)。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
本実施形態によれば、第1ブロック21側の塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cの一部は、基材2の幅方向両側の側面2e各々の脇を通って、第2ブロック22側に回り込むようになる。
【0058】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る塗工装置20について、
図9,10を参照しながら説明する。なお、
図10は、第1ブロック21における液溜り部23に臨む面を示す(
図9におけるX断面図)。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0059】
本実施形態では、塗液排出口31は、第1ブロック21において、塗液供給口30よりも幅方向両外側に、それぞれ配置されている。換言すると、塗液排出口31は、塗液供給口30を幅方向両外側から挟むように、配置されている。具体的には、塗液供給口30は、第1ブロック21の液溜り部23に臨む面における幅方向中央部に、設けられている。塗液排出口31は、第1ブロック21の液溜り部23に臨む面における幅方向一方側及び幅方向他方側に、それぞれ設けられている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0060】
本実施形態によれば、第1ブロック21側における幅方向中央部の塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cは、第1ブロック21と基材2との間を、基材2の厚み方向一方側の面(
図9における下面)に沿うようにして、幅方向一方側の塗液排出口31及び幅方向他方側の塗液排出口31に向かって、均等に流れ続ける。これにより、基材2に対して幅方向両外側に均等にテンションを与え続けることができる。
【0061】
<第6の実施形態>
第6の実施形態に係る塗工装置20について、
図11を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0062】
本実施形態では、塗液供給口30及び塗液排出口31は、第1ブロック21の長手方向(基材2の搬送方向)に延びる楕円形の長穴である。長穴の幅は、例えば1mm以上であることが好ましい。その他の構成は、第5の実施形態と同様である。
【0063】
<第7の実施形態>
第7の実施形態に係る塗工装置20について、
図12,13を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0064】
本実施形態では、塗液供給口30は、第1ブロック21だけでなく、第2ブロック22にも設けられている。換言すると、塗液供給口30は、第1ブロック21及び第2ブロック22(一対のブロックのうちの両方のブロック)各々に、設けられている。同様に、塗液排出口31は、第1ブロック21だけでなく、第2ブロック22にも設けられている。換言すると、塗液排出口31は、第1ブロック21及び第2ブロック22(一対のブロックのうちの両方のブロック)各々に、設けられている。
【0065】
図12に示すように、各塗液供給口30は、搬送方向において、液溜り部23を介して厚み方向に互いに対向している。
図13に示すように、各塗液供給口30は、幅方向において、液溜り部23を介して厚み方向に互いに対向している。同様に、
図12に示すように、各塗液排出口31は、搬送方向において、液溜り部23を介して厚み方向に互いに対向している。
図13に示すように、各塗液排出口31は、幅方向において、液溜り部23を介して厚み方向に互いに対向している。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態によれば、第1ブロック21だけでなく第2ブロック22にも塗液供給口30が設けられているので、第1ブロック21側の塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cの一部を、基材2の連通部(例えばパンチ穴3)や基材2の側面2eの脇等を通じて(第2~4の実施形態を参照)、第2ブロック22側に回り込ませる必要がない。このため、基材2の寸法、形状、材質等の設計自由度を高めることができる。
【0067】
第1ブロック21だけでなく第2ブロック22にも塗液供給口30及び塗液排出口31が設けられているので、第2ブロック22側の塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cは、第2ブロック22と基材2との間を、基材2の厚み方向他方側の面(
図13における上面)に沿うようにして、幅方向に流れるようになる。これにより、基材2は、厚み方向一方側(
図13における下側)だけでなく厚み方向他方側(
図13における上側)において、すなわち厚み方向両側において、幅方向にテンションが与えられるようになる。これにより、基材2は、幅方向両側により強く引っ張られる。
【0068】
第1ブロック21側の塗液供給口30(塗液排出口31)と第2ブロック22側の塗液供給口30(塗液排出口31)とが、搬送方向及び幅方向において、液溜り部23を介して厚み方向に互いに対向するので、基材2に対して厚み方向の両側から均等に圧力をかけることができる。これにより、基材2を、液溜り部23の厚み方向中央近傍に、位置付けることができる。
【0069】
<第8の実施形態>
第8の実施形態に係る塗工装置20について、
図14を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0070】
本実施形態では、第1ブロック21の内部において、塗液供給路32は、途中で2つの部分32aに枝分かれしている。塗液供給路32の各部分32aは、塗液供給口30に連通している。塗液供給路32の各部分32aは、塗液供給口30(液溜り部23)に向かうに従って、幅方向において塗液排出口31に近づくように傾斜している。塗液供給路32の各部分32aの延びる方向と基材2の幅方向とのなす角度θは、90°よりも大きく且つ180°よりも小さい。その他の構成は、第5の実施形態と同様である。
【0071】
本実施形態によれば、塗液供給路32を通って塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cは、塗液排出口31に向かう方向(幅方向)に、スムーズに方向転換するようになる。
【0072】
<第9の実施形態>
第9の実施形態に係る塗工装置20について、
図15を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0073】
本実施形態では、露出口29は、幅方向における片側の側面部26にのみ設けられている。具体的には、露出口29は、幅方向他方側の第2側面部26b(幅方向における片側の側面部)にのみ設けられている。すなわち、幅方向一方側の第1側面部26a(上記片側とは反対側の側面部)は、閉塞している。第1側面部26aは、液溜り部23の幅方向一方側を覆うサイドブロック27における液溜り部23に臨む側面で構成されている。塗液供給口30は、第1ブロック21の液溜り部23に臨む面おける幅方向他方側(
図15における右側)に、設けられている。塗液排出口31は、幅方向一方側の閉塞した第1側面部26aの厚み方向中央部に、設けられている。その他の構成は、第3の実施形態と同様である。
【0074】
本実施形態によれば、露出口29の個数が1つだけなので、上記実施形態に比べて、塗液Cが露出口29を介して液溜り部23から漏出することを抑制する上で有利になる。
【0075】
<第10の実施形態>
第10の実施形態に係る塗工装置20について、
図16を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。その他の構成は、第9の実施形態と同様である。
【0076】
本実施形態では、液溜り部23は、塗液供給口30が配置された幅方向他方側(
図16における右側、露出口29側)から、塗液排出口31が配置された幅方向一方側(
図16における左側、第1側面部26a側)に向かうに従って、隙間(厚み)が広がるように、テーパ状に構成されている。具体的には、第1ブロック21の液溜り部23に臨む面には、テーパ部34が形成されている。同様に、第2ブロック22の液溜り部23に臨む面には、テーパ部34が形成されている。
【0077】
第1側面部26a(サイドブロック27)には、液溜り部23に臨む凹部35が、設けられている。凹部35は、サイドブロック27の内部側(幅方向一方側)に向かうに従って、径が小さくなる。塗液排出口31は、凹部35に設けられている。具体的には、塗液排出口31は、凹部35における最奥部に設けられている。より詳細には、凹部35は、サイドブロック27の内部側(幅方向一方側)に向かうに従って、厚み方向(
図16参照)及び搬送方向(図示省略)において、径が小さくなる。
【0078】
本実施形態によれば、テーパ部34によって、塗液供給口30(幅方向他方側)から塗液排出口31(幅方向一方側)へ向かう塗液Cの流路抵抗を、低減することができる。これにより、塗液供給口30から塗液排出口31に向かう幅方向への塗液Cの流れを、促進することができる。また、サイドブロック27の内部側(幅方向一方側)に向かうに従って径が小さくなる凹部35に塗液排出口31を設けることによって、塗液Cを効率的に塗液排出口31に誘導することができる。
【0079】
<第11の実施形態>
第11の実施形態に係る塗工装置20について、
図17を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0080】
本実施形態では、露出口29は、第1側面部26a及び第2側面部26bのいずれにも設けられていない。すなわち、第1側面部26a及び第2側面部26b(幅方向における両側の側面部)は、いずれも閉塞している。第1側面部26a及び第2側面部26bは、液溜り部23の幅方向両側を覆う2つのサイドブロック27における液溜り部23に臨む側面で構成されている。塗液供給口30は、幅方向他方側(幅方向における片側)の閉塞した第2側面部26bの厚み方向中央部に、設けられている。塗液排出口31は、幅方向一方側(幅方向における上記片側とは反対側)の閉塞した第1側面部26aの厚み方向中央部に、設けられている。その他の構成は、第9の実施形態と同様である。
【0081】
本実施形態によれば、露出口29が全く存在しないので、塗液Cが露出口29を介して液溜り部23から漏出することを完全に抑制することができる。また、第2側面部26b側の塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cは、第1ブロック21と基材2との間及び第2ブロック22と基材2との間を、基材2の両面に沿うようにして、幅方向に流れることもあり得る。
【0082】
<第12の実施形態>
第12の実施形態に係る塗工システム1について、
図18を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0083】
本実施形態では、塗工システム1は、第9の実施形態(
図15参照)に係る塗工装置20を2つ備える。各塗工装置20の塗液供給口30は、第1ブロック21の液溜り部23に臨む面における露出口29側(第2側面部26b側)に、設けられている。各塗工装置20の塗液排出口31は、閉塞した第1側面部26aに設けられている。各塗工装置20は、幅方向において、互いに間隔を空け且つ露出口29が互いに対向するように配置されている。これにより、必然的に、各塗工装置20の塗液排出口31は、塗液供給口30よりも、幅方向外側に位置するようになる。
【0084】
また、基材2の幅方向両側部分2f各々を特定部位Pとする。一方、基材2の幅方向中間部分2gを非特定部位Qとする。
【0085】
本実施形態によれば、基材2の幅方向両側部分2f(特定部位P)各々の両面に塗膜Fを形成する一方、基材2の幅方向中間部分2g(非特定部位Q)の両面に塗膜Fを形成しないことができる。
【0086】
ここで、液溜り部23を通る基材2は、液溜り部23から幅方向内側(
図18における左右内側)の露出口29を介して外部に漏出しようとする塗液Cの影響によって、幅方向内側に弛みやすい(
図18の二点鎖線参照)。本実施形態では、幅方向内側の各塗液供給口30から液溜り部23に供給される塗液Cが、幅方向外側の各塗液排出口31に向かって、幅方向外方に流れることによって、基材2に対して幅方向にテンションが与えられる。これにより、基材2が幅方向外側に引っ張られるので、基材2の幅方向における弛みを抑制することができる。
【0087】
<その他の実施形態>
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0088】
第2の実施形態について(
図6参照)、塗液供給口30を第1ブロック21に設ける一方、塗液排出口31を第2ブロック22に設けてもよい。この場合、第1ブロック21側の塗液供給口30を介して液溜り部23に供給される塗液Cの一部は、基材2のパンチ穴3を通って、第2ブロック22側に回り込んだ後、第2ブロック22側の塗液排出口31を介して液溜り部23から排出される。第3,4の実施形態(
図7,8参照)についても同様である。この場合、第1ブロック21側の塗液供給口30を介して液溜り部23に供給される塗液Cの一部は、基材2の側面2eの脇を通って、第2ブロック22側に回り込んだ後、第2ブロック22側の塗液排出口31を介して液溜り部23から排出される。
【0089】
第7の実施形態では、各塗液供給口30は、液溜り部23を挟んで厚み方向に互いに対向したが(
図12,13参照)、これに限定されない。各塗液供給口30は、厚み方向に互いに対向せず、搬送方向や幅方向に互いにずれて配置されてもよい。同様に、各塗液排出口31も、厚み方向に互いに対向せず、搬送方向や幅方向に互いにずれて配置されてもよい。
【0090】
第9,10の実施形態について(
図15,16参照)、第1側面部26aが鉛直方向下側に臨むとともに、第2側面部26b(露出口29)が鉛直方向上側に臨んでもよい。これにより、液溜り部23における塗液Cは、重力によって、鉛直方向下側の第1側面部26aに設けられた塗液排出口31に向かって流れやすくなる。
【0091】
第9,10の実施形態について(
図15,16参照)、塗液供給口30が閉塞した側面部26(第1側面部26a又は第2側面部26b)に設けられるとともに、塗液排出口31が第1ブロック21又は第2ブロック22に設けられてもよい。
【0092】
上記実施形態では、基材2の搬送方向は、水平方向であったが、これに限定されない。基材2は、例えば鉛直方向上方から下方へ、また鉛直方向下方から上方へ搬送されてもよい。
【0093】
上記実施形態では、塗工装置20は、ロールtoロール法によって連続搬送される基材2の両面に対して塗液Cを塗布するために用いられるが、これに限定されない。塗工装置20は、例えば、ベルトコンベヤによって搬送されるガラス基板の両面に対して塗液Cを塗布するために用いられてもよい。
【0094】
本開示に係る塗工方法は、塗工装置20を用いて、塗液供給口30から液溜り部23に塗液Cを供給しながら、基材2を液溜り部23に通す。塗液供給口30を介して液溜り部23に供給される塗液Cの量は、基材排出口25を介して液溜り部23から基材2と伴に排出される塗液Cの量よりも多く、液溜り部23における余剰の塗液Cは、塗液排出口31を介して液溜り部23から排出される。
【実施例0095】
<設定条件>
(実施例)
基材2として、厚み0.1mmのSUS304材を用いた。
【0096】
塗液Cとして、粘度ηが約100Pa・sの導電性ペーストを用いた。塗液Cの粘度ηは、回転式粘度計(Thermo Scientific Mars40、HAAKE製)を用いて測定した。なお、粘度ηの測定条件は、ステージの直径20mm、測定子の直径20mm、角度1°、測定ギャップ0.05mm、せん断速度1/秒、測定温度25℃とした。
【0097】
第9の実施形態に係る塗工装置20(
図15参照)を用いた(ただし、第1ブロック21だけでなく、第2ブロック22にも塗液供給口30を設けた)。具体的には、塗工装置20は、卓上型塗工装置(ミニラボ、康井精機製)を用いた。第1ブロック21及び第2ブロック22は、SUS304材で形成した。各ブロック21,22の長さ寸法L1を40mm、幅寸法L2を50mm、厚み寸法L3を10mmとした。各ブロック21,22の幅方向他方側(
図15における右側)、具体的には各ブロック21,22における幅方向他端(
図15における右端)から10mm内側の位置に、直径2mmの円形の塗液供給口30を、10mm間隔で搬送方向に並べて、計3個ずつ設けた。幅方向他方側の露出口29に対向する幅方向一方側の第1側面部26aの厚み方向中央に、直径2mmの円形の塗液排出口31を、10mm間隔で搬送方向に並べて、計3個ずつ設けた。
【0098】
塗液供給ポンプ41として、モーノポンプ(3HMC010F、兵神装備製)を用いた。基材供給装置10の巻出側トルク及び巻取側トルクは、いずれも60N・mとした。
【0099】
第1ブロック21と第2ブロック22との隙間寸法Hは、SUS304製のシムを用いて、任意に設定した。塗工速度(搬送速度)は、任意に設定し、基材厚み方向が鉛直方向を向くように水平に搬送した。
【0100】
塗膜Fの形成後、熱風乾燥炉(DKM-400、ヤマト科学製)を用いて、設定温度200℃、ファン回転数500rpmにて、30分間乾燥し、乾燥膜を得た。
【0101】
<測定条件>
塗膜Fの膜厚を、マイクロメータ(ミツトヨ製)を用いて測定した。膜厚は、塗膜F形成後における基材2の厚み寸法Tから、塗膜F形成前における基材2の厚み寸法tを差し引いた値とした(
図5参照)。膜厚平均値は、膜厚を塗工方向(搬送方向)に5mm間隔で5点測定して、その測定値より算出した。膜厚バラツキは、5点の測定値より標準偏差3σを計算し、これを膜厚平均値で割った値(パーセント表示)とした。表面粗さは、ワンショット3D形状測定機(VR-3200、Keyence製)を用いて、算術平均粗さを測定した。
図19に示すように、基材2の上面における塗布領域(塗布部位)Pにおいて基材幅方向一方側の塗布端面(側面)2eを基準とした基材幅方向他方側の塗布端面2iの位置を、顕微鏡(VHX-6000、Keyence製)により、塗工方向(搬送方向)に10mm間隔で5点測定し、5点の最大値と最小値との差を塗布端面位置バラツキとした。
【0102】
基材2の幅方向における弛み、及び液溜り部23から露出口29を介しての塗液Cの漏れを、目視にて確認した。
【0103】
<測定結果>
(実施例1)
隙間寸法Hを0.2mm、塗工速度(搬送速度)を毎分0.2mとした。平均膜厚は7.6μm、膜厚バラツキは28%、表面粗さは2.5μm、塗布端面位置バラツキは0.05mmであり、良好な結果が得られた。また、基材2の弛み及び塗液Cの漏れは、確認されなかった。
【0104】
(実施例2)
隙間寸法Hを0.2mm、塗工速度(搬送速度)を毎分0.5mとした。平均膜厚は14.8μm、膜厚バラツキは29%、表面粗さは2.0μm、塗布端面位置バラツキは0.05mmであり、良好な結果が得られた。また、基材2の弛み及び塗液Cの漏れは、確認されなかった。
【0105】
(実施例3)
隙間寸法Hを0.2mm、塗工速度(搬送速度)を毎分1mとした。平均膜厚は17.9μm、膜厚バラツキは29%、表面粗さは2.8μm、塗布端面位置バラツキは0.05mmであり、良好な結果が得られた。また、基材2の弛み及び塗液Cの漏れは、確認されなかった。
【0106】
(比較例1)
ディップコータにて塗膜を形成した。塗工速度(搬送速度)を毎分0.1mとした。平均膜厚は38μm、膜厚バラツキは39%、表面粗さは3.1μm、塗布端面位置バラツキは0.35mmであった。塗布端面位置バラツキが実施例よりも特に悪化した。
【0107】
(比較例2)
ロール転写にて塗膜を形成した。ギャップを0mm、塗工速度(搬送速度)を毎分1mとした。平均膜厚は7.2μm、膜厚バラツキは65%、表面粗さは3.8μm、塗布端面位置バラツキは0.1mmであった。膜厚バラツキ及び表面粗さが実施例よりも特に悪化した。
【0108】
(比較例3)
第9の実施形態に係る塗工装置20(
図15参照)の塗液排出口31が無い場合において、隙間寸法Hを0.2mm、塗工速度(搬送速度)を毎分0.2mとした。平均膜厚は7.6μm、膜厚バラツキは28%、表面粗さは2.5μm、塗布端面位置バラツキは0.3mmであった。塗布端面位置バラツキが実施例よりも特に悪化した。また、塗液Cの露出口29からの漏れが一部確認された。なお、比較例3に係る塗工装置は、本願発明者等が開発したものである。