(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185728
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】塗工装置及び塗工方法
(51)【国際特許分類】
B05C 3/132 20060101AFI20221208BHJP
B05C 11/02 20060101ALI20221208BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221208BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20221208BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B05C3/132
B05C11/02
B05D7/00 A
B05D1/18
B05D3/00 C
B05D3/00 B
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093516
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 正明
(72)【発明者】
【氏名】畑中 基
(72)【発明者】
【氏名】福田 一人
(72)【発明者】
【氏名】大熊 崇文
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AB01
4D075AB12
4D075AB15
4D075AB31
4D075AB35
4D075AB36
4D075AB51
4D075AB56
4D075BB24Z
4D075BB33Z
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4D075CA47
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4F040AA22
4F040AB04
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4F040BA50
4F040CC02
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4F042AA22
4F042AB00
4F042BA03
4F042BA08
4F042BA15
4F042BA25
4F042CA01
4F042DD11
4F042DD22
4F042DF34
4F042ED01
(57)【要約】
【課題】基材がフラット状でなくても、基材の両面に均一な厚みの塗膜を形成する。
【解決手段】塗工装置1は、搬送されるシート状の基材2の両面に対して塗液Cを塗布する。塗工装置1は、塗液Cが溜まるとともに、基材2が通る液溜り部11と、基材2をその厚み方向の両側から挟むように設けられ、基材2の両面に塗布された塗液Cを複数のワイパー20によって拭き取る一対のワイプ機構23と、を備える。ワイパー20は、厚み方向に見て、基材2の搬送方向に交差する方向に沿って設けられている。ワイパー20は、基材2に追従するように変形可能に構成されている。一対のワイプ機構23は、複数のワイパー20が基材2の両面に沿うことによって、基材2の両面に塗布された塗液Cを均すように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシート状の基材の両面に対して塗液を塗布する塗工装置であって、
前記塗液が溜まるとともに、前記基材が通る液溜り部と、
前記基材をその厚み方向の両側から挟むように設けられ、前記基材の両面に塗布された前記塗液を複数のワイパーによって拭き取る一対のワイプ機構と、を備え、
前記ワイパーは、前記厚み方向に見て前記基材の搬送方向に交差する方向に沿って設けられるとともに、前記基材に追従するように変形可能に構成されており、
前記一対のワイプ機構は、複数の前記ワイパーが前記基材の両面に沿うことによって、前記基材の両面に塗布された前記塗液を均すように構成されている、塗工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗工装置において、
前記ワイパーは、弾性体で構成されている、塗工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗工装置において、
前記一対のワイプ機構はそれぞれ、前記搬送方向に沿って配列された複数の前記ワイパーを含む、塗工装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記ワイパーは、前記厚み方向に見て、前記搬送方向に直交する方向に沿って直線状に延びている、塗工装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記ワイパーは、前記厚み方向に見て、前記搬送方向に対して傾斜した方向に沿って直線状に延びている、塗工装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記ワイパーは、前記厚み方向に見て、前記搬送方向に交差する方向に沿って前記搬送方向に振動しながら波状に延びている、塗工装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1つに記載の塗工装置において、
複数の前記ワイパーが、前記厚み方向に見て、互いに間隔を空けながら前記搬送方向に交差する方向に沿って直線状に配列されている、塗工装置。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1つに記載の塗工装置において、
複数の前記ワイパーが、前記厚み方向に見て、前記搬送方向に交差する方向に沿って千鳥配列されている、塗工装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記厚み方向の両側の各前記ワイパーは、前記基材を介して前記厚み方向に互いに対向している、塗工装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記厚み方向の両側の各前記ワイパーは、前記搬送方向において交互に配置されている、塗工装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記ワイパーの先端部は、角形状に形成されている、塗工装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記ワイパーの先端部は、円弧状に形成されている、塗工装置。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記ワイパーの先端部は、先端側に向かうに従って細くなる尖形状に形成されている、塗工装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載の塗工装置において、
前記基材の前記厚み方向の両側に配置され、前記厚み方向に互いに対向する一対のブロックをさらに備え、
前記基材は、前記一対のブロック同士の隙間を通るように構成されており、
前記隙間は、
前記搬送方向における上流側に開口し、前記基材が導入される基材導入口と、
前記搬送方向における下流側に開口し、前記基材が排出される基材排出口と、を含み、
前記ワイパーは、前記一対のブロックにおける前記基材に臨む面に固定されている、塗工装置。
【請求項15】
請求項14に記載の塗工装置において、
前記液溜り部は、浸漬槽に前記塗液が溜まるように形成されており、
前記搬送方向は、鉛直方向成分を含み、
前記ワイプ機構及び前記一対のブロックは、前記液溜り部に配置されており、
前記基材排出口は、前記鉛直方向において、前記液溜り部の液面と同じ位置又は前記液面よりも上側に配置されている、塗工装置。
【請求項16】
請求項15に記載の塗工装置において、
前記一対のワイプ機構はそれぞれ、前記鉛直方向において前記液面よりも上側に位置する前記ワイパーを含む、塗工装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の塗工装置において、
前記一対のワイプ機構はそれぞれ、前記基材排出口において前記基材を前記厚み方向の両側から挟むように設けられたブロックワイパーを含み、
前記ブロックワイパーは、前記基材排出口の前記厚み方向における径を、前記基材の厚みよりも小さくするように構成されている、塗工装置。
【請求項18】
請求項14に記載の塗工装置において、
前記一対のブロック同士の前記隙間に前記塗液を供給する塗液供給部をさらに備え、
前記液溜り部は、前記塗液供給部によって前記隙間に前記塗液が溜まるように形成される、塗工装置。
【請求項19】
請求項18に記載の塗工装置において、
前記隙間には、前記搬送方向に交差する幅方向の少なくとも片側に、前記基材導入口から前記基材排出口に亘って開口する露出口が設けられており、
前記露出口からは、前記基材の前記幅方向における一部が前記液溜り部の外部に突出可能である、塗工装置。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1つに記載の塗工装置を用いて、前記液溜り部に前記基材を通すときに、前記一対のワイプ機構における複数の前記ワイパーによって、前記基材の両面に塗布された前記塗液を均す、塗工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗工装置及び塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールtoロール法によって搬送されるシート状の基材の両面に塗膜を形成するための塗工装置について、種々の技術が知られている。
【0003】
例えばディップコーティング法に適用される塗工装置では、先ず、連続搬送される長尺のシート状基材を垂直方向に下降させて塗液が溜められた浸漬槽に浸ける。これにより、基材の両面に対して塗液が塗布される。その後、基材を浸漬槽内に配置されたシンクロールよって方向転換して、基材を垂直方向に上昇させながら、基材の厚み方向両側に配置された一対のガスワイピングノズル等によって、基材の両面における余分な塗液を除去する。これにより、基材の両面に、一定の厚みの塗膜が形成される。ロールtoロール法では、基材がシンクロールによって方向転換される際などに、基材に反り変形が発生しやすい。
【0004】
特許文献1には、ロールtoロール法によって搬送される鋼帯の反り変形を矯正する方法が開示されている。この方法では、シンクロールの上側(下流側)に鋼帯を挟む一対のサポーティングロールを配置して、基材の反り変形を物理的に矯正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基材が反り変形していると、基材の両面における余剰の塗液をガスワイピングノズルによって除去する際に、噴射されるガス流が基材の表面で不均一となり、結果として、基材の両面に形成される塗膜の厚みが不均一になるという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献1に係るサポーティングロールによって、基材の反り変形自体を物理的に矯正して、基材をフラット状にすることが考えられる。しかしながら、サポーティングロールを用いた反り変形の矯正方法は、鋼帯のような比較的幅広の基材には有効であるものの、幅狭の基材に適用するのは難しい。すなわち、基材の幅が狭くなればなるほど、基材とサポーティングロールとの接触面積が小さくなるので、基材の反り変形自体を矯正して基材をフラット状にすることが難しくなる。したがって、サポーティングロールを用いた反り変形の矯正方法は、鋼帯のような特別な基材にのみ適用可能であり、基材全般に、適用できるわけではない。
【0008】
このため、通常、基材に反り変形が発生して基材がフラット状でなくなった場合、基材の両面に均一な厚みの塗膜を形成することは難しい。基材に孔や切り欠き等の開口部が設けられて基材がフラット状でない場合も同様である。
【0009】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材がフラット状でなくても、搬送される基材の両面に均一な厚みの塗膜を形成することが可能な、塗工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る塗工装置は、搬送されるシート状の基材の両面に対して塗液を塗布する塗工装置であって、上記塗液が溜まるとともに、上記基材が通る液溜り部と、上記基材をその厚み方向の両側から挟むように設けられ、上記基材の両面に塗布された上記塗液を複数のワイパーによって拭き取る一対のワイプ機構と、を備え、上記ワイパーは、上記厚み方向に見て上記基材の搬送方向に交差する方向に沿って設けられるとともに、上記基材に追従するように変形可能に構成されており、上記一対のワイプ機構は、複数の上記ワイパーが上記基材の両面に沿うことによって、上記基材の両面に塗布された上記塗液を均すように構成されている。
【0011】
本開示に係る塗工方法は、上記塗工装置を用いて、上記液溜り部に上記基材を通すときに、上記一対のワイプ機構における複数の上記ワイパーによって、上記基材の両面に塗布された上記塗液を均す。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、基材がフラット状でなくても、搬送される基材の両面に均一な厚みの塗膜を形成することが可能な、塗工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態に係る塗工装置を示す正面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るワイプ機構を示す正面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るワイプ機構を示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る弾性ワイパーの先端部を拡大して示す拡大正面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係るワイプ機構を示す平面図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態に係るワイプ機構を示す平面図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態に係るワイプ機構を示す平面図である。
【
図8】
図8は、第5の実施形態に係るワイプ機構を示す平面図である。
【
図9】
図9は、第6の実施形態に係るワイプ機構を示す正面図である。
【
図10】
図10は、第7の実施形態に係る弾性ワイパーの先端部を拡大して示す拡大正面図である。
【
図11】
図11は、第8の実施形態に係る弾性ワイパーの先端部を拡大して示す拡大正面図である。
【
図12】
図12は、第9の実施形態に係る塗工装置を示す正面図である。
【
図13】
図13は、第10の実施形態に係る塗工装置を示す正面図である。
【
図14】
図14は、第11の実施形態に係る塗工装置を示す正面図である。
【
図15】
図15は、第11の実施形態に係る塗工装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0015】
<第1の実施形態>
(基本構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係る塗工装置1を模式的に示す。塗工装置1は、ディップコーティング法に適用されており、ロールtoロール法によって連続搬送される基材2の両面に対して塗液Cを塗布して、基材2の両面に塗膜を連続的に形成する。基材2は、長尺のシート状に形成されている。基材2としては、例えば、金属箔、樹脂フィルム、織布、不織布、紙等がある。基材2の塗膜を含まない厚み寸法は、例えば1mm以下である。
【0016】
ディップコーティング法について簡単に説明する。塗工装置1は、浸漬槽(シンク)10に塗液Cが溜まるように形成された液溜り部11を備える。基材2は、その長手方向を搬送方向として連続搬送される。基材2の搬送方向は、鉛直方向成分(Fで示す)を含む。具体的には、基材2は、鉛直方向上側から鉛直方向下側へ斜めに搬送されて、液溜り部11に浸けられる。基材2は、途中、液溜り部11(浸漬槽10内)に設けられたシンクロール3によって方向転換して、鉛直方向下側から鉛直方向上側へ真直ぐに搬送されて、液溜り部11から排出される。
【0017】
このように、基材2が液溜り部11を通過することによって、基材2の両面に対して塗液Cが塗布されて、基材2の両面に塗膜が形成される。塗工装置1によって両面に塗膜が形成された基材2は、乾燥炉(図示せず)で乾燥されて塗膜内に含まれる揮発成分が除去される。
【0018】
塗液Cは、ペースト状又はスラリー状であることが好ましく、例えば、粘度ηが1mPa・s以上の塗液Cを基材2の両面に塗布することが可能である。また、例えば、粘度ηが1Pa・s~1000Pa・sの塗液Cを適応する場合、基材2の両面に平滑に塗膜を形成することができるため、好ましい。
【0019】
塗液Cは、例えば、シリカ、低融点ガラス、アルミナ・酸化チタン等の金属酸化物粒子を含んだ絶縁体材料や、はんだ、銅、銀、金属被覆した粒子等の金属粒子や、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、カーボン等を含んだ導電性材料や、染料、等を用いることができる。
【0020】
本実施形態に係る塗工装置1は、一対のワイプ機構23と、一対のブロック30と、を備える。一対のワイプ機構23及び一対のブロック30はともに、液溜り部11における液面11a近傍に配置されている。一対のワイプ機構23及び一対のブロック30はともに、液溜り部11(塗液C)に浸けられている。一対のワイプ機構23は、基材2をその厚み方向両側から挟むように設けられており、基材2の両面に塗布された塗液Cを、複数のワイパー20によって拭き取る。一対のワイプ機構23は、基材2の厚み方向両側各々に、基材2の搬送方向に配列された複数のワイパー20を含む。
【0021】
各ワイパー20は、基材2の形状に追従するように変形可能に構成されており、ある程度の柔軟性を有する。また、各ワイパー20は、弾性体で構成されている(以下、「弾性ワイパー20」という)。具体的には、弾性ワイパー20は、熱硬化性エラストマー(ゴム)で形成されている。
【0022】
一対のブロック30は、鉛直方向上方に搬送される基材2の厚み方向両側に、配置されている。一対のブロック30は、基材2の厚み方向に互いに間隔を空けて配置されており、基材2の厚み方向に互いに対向する。すなわち、基材2は、一対のブロック30同士の隙間33を通る。各ブロック30は、略直方体状に形成されており、その長手方向が基材2の搬送方向(鉛直方向)に沿うように配置されている。
【0023】
隙間33は、基材2の搬送方向における上流側(鉛直方向下側)に開口する基材導入口31と、基材2の搬送方向における下流側(鉛直方向上側)に開口する基材排出口32と、を含む。基材導入口31と基材排出口32とは、搬送方向において、互いに対向している。基材2は、基材導入口31から導入されて、隙間33を通って、基材排出口32から排出される。基材排出口32は、鉛直方向において、液溜り部11の液面11aと同じ位置に配置されている。
【0024】
一対のブロック30同士の隙間寸法は、基材2が通過可能なように、基材2の厚み寸法(例えば0.1mm以下)よりも大きく、例えば0.1mm~1mm程度である。
【0025】
一対のワイプ機構23は、基材2と一対のブロック30との間に、介在している。具体的には、各弾性ワイパー20は、一対のブロック30における基材2に臨む内面30aに、固定されている。
【0026】
一対のワイプ機構23及び各弾性ワイパー20の構成について、
図2~4を参照しながら説明する。
図2,3は本実施形態に係る一対のワイプ機構23を示し、
図2は正面図、
図3は平面図(III矢視図)である。
図4は弾性ワイパー20の先端部20bを拡大して示す。なお、
図3において、一対のブロック30を二点鎖線で示す。
【0027】
図2に示すように、基材2の厚み方向両側の各弾性ワイパー20の長さ寸法の和は、一対のブロック30同士の隙間寸法よりも大きい。
【0028】
図2に示すように、基材2の厚み方向両側の各弾性ワイパー20は、基材2を介して、基材2の厚み方向に互いに対向している。具体的には、基材2の厚み方向両側の各弾性ワイパー20の基端部20aは、基材2を介して、基材2の厚み方向に互いに対向している。また、基材2の厚み方向両側の各弾性ワイパー20の先端部20bは、基材2を介して、基材2の厚み方向に互いに対向している。
【0029】
図3に示すように、弾性ワイパー20は、基材2の厚み方向に見て、基材2の搬送方向に交差する方向、具体的には直交する方向(基材2の幅方向)に沿って設けられている。より詳細には、弾性ワイパー20は、基材2の厚み方向に見て、基材2の搬送方向に直交する方向(基材2の幅方向)に沿って直線状に延びている。
【0030】
図4に示すように、弾性ワイパー20の先端部20bは、角形状、具体的には四角形状に形成されている。弾性ワイパー20は、その先端部20bにおける辺部20c(より詳細には、辺部20cにおけるエッジ近傍)において、基材2に当接するようになっている。
【0031】
一対のワイプ機構23は、複数のワイパー20が基材2の両面に沿うことによって、基材2の両面に塗布された塗液Cを均すように構成されている。
【0032】
(作用効果)
本実施形態によれば、複数のワイパー20は、基材2の形状に追従して基材2の両面に沿うことによって、基材2の両面に塗布された塗液Cを均すことができる。これにより、基材2がフラット状でなくても、搬送される基材2の両面に均一な厚みの塗膜を形成することができる。
【0033】
特に、本実施形態では、基材2は、シンクロール3による方向転換によって、(例えば0.2μm~5μm程度)反り変形してしまうことがある。このように基材2が反り変形してフラット状でなくなった場合であっても、複数のワイパー20が基材2の形状に追従して基材2の両面に沿うので、基材2の両面に塗布された塗液Cを均して、基材2の両面に均一な厚みの塗膜を形成することができる。
【0034】
また、基材2を弾性ワイパー20で厚み方向両側から押さえることによって、基材2の反り変形自体を矯正することも、場合によっては可能である。
【0035】
基材2に孔が空けられたり、基材2が櫛歯形状や梯子形状に形成されたりすることによって、基材2に開口部が設けられて、基材2がフラット状でないことがある。このように基材2に開口部が設けられる場合であっても、複数のワイパー20が基材2の形状に追従して、基材2の開口部の側面にも沿うようになる。これにより、基材2の開口部の側面に塗布された塗液Cを均して、基材2の開口部の側面にも均一な厚みの塗膜を形成することができる。基材2がメッシュ材、パンチングメタル又は多孔質材等で形成される場合も、同様である。
【0036】
弾性ワイパー20が弾性体で構成されているので、基材2に開口部が設けられている場合、弾性ワイパー20は、基材2の表面に沿ってしなるとともに、開口部、すなわち基材2の存在しない空間では、元の形状に戻ろうとする。これにより、弾性ワイパー20は、基材2の開口部の側面に沿いやすくなる。
【0037】
複数の弾性ワイパー20が基材2の搬送方向に沿って配列されているので、基材2の両面を、基材2の搬送に伴って、複数の弾性ワイパー20によって連続的に均すことができる。
【0038】
弾性ワイパー20が、基材2の搬送方向に直交する方向(基材2の幅方向)に沿って直線状に延びているので、基材2の両面における同じ部位を、基材2の搬送方向に配列された複数の弾性ワイパー20によって連続的に均すことができる。
【0039】
基材2の厚み方向両側の各弾性ワイパー20が、基材2を介して互いに対向しているので、一対のブロック30同士の隙間33を通る基材2の厚み方向位置を、一定に保つ上で有利である。
【0040】
弾性ワイパー20の先端部20bが角形状に形成されているので、弾性ワイパー20の先端部20bにおける辺部20cが、基材2の表面に接触するようになる。これにより、弾性ワイパー20と基材2の表面との接触面積が大きくなるので、基材2の表面に塗布された塗液Cを十分に拭き取ることができる。
【0041】
弾性ワイパー20を一対のブロック30における基材2に臨む内面30aに固定することによって、簡単に、弾性ワイパー20を液溜り部11に配置することができる。
【0042】
一対のブロック30の基材排出口32が、鉛直方向において液溜り部11の液面11aと同じ位置に配置されているので、基材排出口32を介して液溜り部11から排出された基材2に対して、塗液Cが新たに塗布されてしまうことを抑制することができる。
【0043】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る塗工装置1について、
図5を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0044】
本実施形態では、弾性ワイパー20は、基材2の厚み方向に見て、基材2の搬送方向に交差する方向、具体的には直交する方向に沿って、基材2の搬送方向に振動しながら波状に延びている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0045】
本実施形態によれば、基材2の厚み方向に見て、弾性ワイパー20に凹凸が形成される。これにより、弾性ワイパー20に、塗液Cの溜まりやすい領域Aが形成される。弾性ワイパー20における塗液Cの溜まりやすい領域Aに対して、基材2の開口部Bを対応させて配置することによって、開口部Bの側面に塗液Cを十分に送り込んで、開口部Bの側面にも均一な厚みの塗膜を形成することができる。
【0046】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る塗工装置1について、
図6を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0047】
本実施形態では、弾性ワイパー20は、ブラシ状に形成されている。詳細には、複数の微小な弾性ワイパー20が、基材2の厚み方向に見て、互いに間隔を空けながら、基材2の搬送方向に交差する方向、具体的には直交する方向に沿って直線状に配列されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0048】
本実施形態によれば、基材2に多数の開口部が設けられる場合、多数の微小な弾性ワイパー20によって、基材2の多数の開口部の側面に塗液Cを十分に送り込んで、基材2の多数の開口部の側面にも均一な厚みの塗膜を十分に形成することができる。
【0049】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る塗工装置1について、
図7を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0050】
本実施形態では、複数の弾性ワイパー20が、基材2の厚み方向に見て、基材2の搬送方向に交差する方向、具体的には直交する方向に沿って千鳥配列されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である
本実施形態によれば、弾性ワイパー20の存在しない領域Dに塗布された塗液Cは、基材2の搬送に伴って、搬送方向前側の弾性ワイパー20によって拭き取られる。
【0051】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る塗工装置1について、
図8を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0052】
本実施形態では、弾性ワイパー20は、基材2の厚み方向に見て、基材2の搬送方向に対して傾斜した方向に沿って直線状に延びている。なお、基材2の搬送方向に配列された複数の弾性ワイパー20の傾斜方向を、交互に逆向きにしてもよい。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態によれば、塗液Cの流れ方向を、基材2の搬送方向に対して傾斜させることができる。これにより、基材2自体の側面や基材2の開口部の側面に対して、塗液Cを十分に送り込むことができる。
【0054】
<第6の実施形態>
第6の実施形態に係る塗工装置1について、
図9を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0055】
本実施形態では、基材2の厚み方向両側の各弾性ワイパー20は、基材2の搬送方向において交互に配置されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0056】
本実施形態によれば、搬送される基材2は、その表面側及び裏面側から、弾性ワイパー20によって交互に押されるようになる。このため、搬送される基材2は、その表面側及び裏面側に、交互に反り変形することになる。これにより、基材2における弾性ワイパー20によって押された面とは反対側の面に対して、次の弾性ワイパー20が接触しやすくなる。
【0057】
<第7の実施形態>
第7の実施形態に係る塗工装置1について、
図10を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0058】
本実施形態では、弾性ワイパー20の先端部20bは、円弧状に形成されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0059】
本実施形態によれば、弾性ワイパー20は、先端部20bにおける円弧部20dにおいて、基材2の表面に接触する。これにより、弾性ワイパー20と基材2の表面との接触面積が、第1の実施形態(角形状、辺部20c)に比較して小さくなるので、基材2が弾性ワイパー20から受ける力を小さくすることができる。したがって、基材2の破損を抑制する上で有利である。
【0060】
<第8の実施形態>
第8の実施形態に係る塗工装置1について、
図11を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0061】
本実施形態では、弾性ワイパー20の先端部20bは、先端側に向かうに従って細くなる尖形状に形成されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0062】
本実施形態によれば、弾性ワイパー20は、先端部20bにおける尖形部2eにおいて、基材2の表面にわずかに接触する。これにより、弾性ワイパー20と基材2の表面との接触面積が、第1の実施形態(角形状、辺部20c)及び第7の実施形態(円弧状、円弧部20d)に比較して小さくなるので、基材2が弾性ワイパー20から受ける力をさらに小さくすることができる。さらに、弾性ワイパー20の尖形部2eが基材2の開口部に入り込むことによって、弾性ワイパー20は、基材2の開口部の側面に沿いやすくなる。
【0063】
<第9の実施形態>
第9の実施形態に係る塗工装置1について、
図12を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0064】
本実施形態では、一対のワイプ機構23は、基材2の厚み方向両側各々に、鉛直方向において液溜り部11の液面11aよりも上側に位置する弾性ワイパー21を、含む。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0065】
本実施形態によれば、基材2が一対のブロック30の基材排出口32を介して液溜り部11から排出されて以降も、液溜り部11の液面11aよりも上側の位置において、基材2の両面における塗液Cを、弾性ワイパー21によって均すことができる。
【0066】
<第10の実施形態>
第10の実施形態に係る塗工装置1について、
図13を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0067】
本実施形態では、一対のワイプ機構23は、基材2の厚み方向両側各々に、ブロックワイパー22を、含む。ブロックワイパー22は、一対のブロック30の基材排出口32において、基材2を厚み方向両側から挟むように設けられている。ブロックワイパー22は、基材排出口32の厚み方向における径(隙間)を、基材2の厚みよりも小さくするように構成されている。ブロックワイパー22は、弾性体で構成されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0068】
本実施形態によれば、搬送される基材2の両面における塗液Cは、基材排出口32(液溜り部11の液面11a)において、ブロックワイパー22によって確実に拭き取られる。
【0069】
<第11の実施形態>
第11の実施形態に係る塗工装置1について、
図14,15を参照しながら説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0070】
本実施形態では、塗工装置1は、一対のブロック30同士の隙間33に塗液Cを供給する塗液供給部39を、さらに備える。本実施形態では、液溜り部は、上記実施形態とは異なり、浸漬槽10に溜められるのではなく、塗液供給部39によって隙間33に塗液Cが溜まるように形成される(以下、「液溜り部33」という)。
【0071】
塗液供給部39は、塗液供給口35と、塗液供給路36と、塗液供給管37と、塗液供給ポンプ38と、を含む。塗液供給口35は、片方のブロック30における液溜り部(隙間)33に臨む内面30aに設けられている。塗液供給路36は、片方のブロック30の内部を延びており、その上流側で塗液供給管37を介して塗液供給ポンプ38に連通しているとともに、その下流側で塗液供給口35に連通している。塗液供給ポンプ38は、塗液供給管37、塗液供給路36及び塗液供給口35を介して、液溜り部(隙間)33に塗液Cを供給する。
【0072】
塗液供給ポンプ38は、例えば、スクリューポンプ、ダイアフラムポンプ、シリンジポンプ、チューブポンプ又はモーノポンプ等の定量供給可能なものを採用することが好ましい。塗液供給ポンプ38の代わりに、供給タンクに圧縮空気を導入して圧力送液してもよい。
【0073】
一対のブロック30同士の隙間33には、基材2の搬送方向に交差、具体的には直交する幅方向の両側に、露出口34が設けられている。露出口34は、基材2の搬送方向において、基材導入口31から基材排出口32に亘って開口している。露出口34からは、基材2の幅方向における一部が、液溜り部33の外部に突出可能である。一対のブロック30の幅寸法は、基材2の幅寸法よりも小さい。
【0074】
本実施形態によれば、液溜り部11を形成するための浸漬槽10が不要であるので、塗工装置1を小型化することができる。
【0075】
また、一対のブロック30同士の隙間33の幅方向における少なくとも片側に、露出口34が設けられているので、基材2の幅方向における一部を、露出口34から液溜り部33の外部に突出させることができる。これにより、搬送される基材2の幅方向における特定部位(
図15における幅方向中間部)の両面にのみ、選択的に塗膜を形成することができる。
【0076】
<その他の実施形態>
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0077】
第1の実施形態(特に
図1参照)について、一対のブロック30の基材排出口32は、鉛直方向において、液溜り部11の液面11aよりも上側の位置に、配置されてもよい。
【0078】
弾性ワイパー20を固定するための一対のブロック30は、必ずしも必要ではない。弾性ワイパー20は、例えば、浸漬槽10の壁面に固定されてもよい。
【0079】
弾性ワイパー20は、基材2の厚み方向両側各々に1つずつ設けられればよい。
【0080】
ワイパー20の材質は、弾性体に限定されない。ワイパー20は、全体として、基材2の形状に追従するように変形可能であればよい。ワイパー20は、例えば、基端部(支持部)20aにバネが装着された硬い材料でもよい。
【0081】
上記実施形態では、塗工装置1は、ロールtoロール法によって連続搬送される基材2の両面に対して塗液Cを塗布するために用いられるが、これに限定されない。塗工装置1は、例えば、ベルトコンベヤによって搬送されるガラス基板の両面に対して塗液Cを塗布するために用いられてもよい。
【0082】
本開示に係る塗工方法は、塗工装置1を用いて、液溜り部11,33に基材2を通すときに、一対のワイプ機構23における複数のワイパー20によって、基材2の両面に塗布された塗液Cを均す。
【実施例0083】
<設定条件>
(実施例1)
基材2として、厚み0.1mmのSUS304材を用いた。
【0084】
塗液Cとして、粘度ηが約100Pa・sの導電性ペーストを用いた。塗液Cの粘度ηは、回転式粘度計(Thermo Scientific Mars40、HAAKE製)を用いて測定した。なお、粘度ηの測定条件は、ステージの直径20mm、測定子の直径20mm、角度1°、測定ギャップ0.05mm、せん断速度1/秒、測定温度25℃とした。
【0085】
第1の実施形態に係る塗工装置1(
図1~4参照)を用いた。ただし、弾性ワイパー20の先端部20bを、尖形状とした(第8の実施形態、
図11参照)。各ブロック30は、SUS304材で形成した。各ブロック30の長さ寸法を40mm、幅寸法を50mm、厚み寸法を10mmとした。弾性ワイパー20の材質をシリコンゴムとした。
【0086】
一対のブロック30同士の隙間33の隙間寸法を0.2mmとした。塗工速度(搬送速度)を毎分0.2mとした。基材2を反り変形させ、その変形量を、幅方向中央部と幅方向端部との間で0.002mmとした。
【0087】
塗膜の形成後、熱風乾燥炉(DKM-400、ヤマト科学製)を用いて、設定温度200℃、ファン回転数500rpmにて、30分間乾燥し、乾燥膜を得た。
【0088】
(実施例2)
第11の実施形態に係る塗工装置1(
図14,15参照)を用いた。具体的には、塗工装置1は、卓上型塗工装置(ミニラボ、康井精機製)を用いた。塗液供給ポンプ38として、モーノポンプ(3HMC010F、兵神装備製)を用いた。その他の設定条件は、実施例1と同様である。
【0089】
(比較例)
本開示とは異なる従来の塗工装置として、一般的なロールtoロール法によって搬送されるシート状の基材2の両面に塗膜を形成した。具体的には、比較例において、塗工装置の構成は、ワイパー20を備えていないこと以外、実施例1と同じである。また、比較例において、塗液C及び基材2の条件等は、実施例1,2と同じである。
【0090】
<測定条件>
塗膜の膜厚を、マイクロメータ(ミツトヨ製)を用いて測定した。膜厚は、塗膜形成後における基材2の厚み寸法から、塗膜形成前における基材2の厚み寸法を差し引いた値とした。膜厚平均値は、膜厚を塗工方向(搬送方向)に5mm間隔で5点測定して、その測定値より算出した。膜厚バラツキは、5点の測定値より標準偏差3σを計算し、これを膜厚平均値で割った値(パーセント表示)とした。表面粗さは、ワンショット3D形状測定機(VR-3200、Keyence製)を用いて、算術平均粗さを測定した。
【0091】
<測定結果>
(実施例1)
平均膜厚は27.6μm、膜厚バラツキは32%、表面粗さは7.4μmであった。
【0092】
(実施例2)
平均膜厚は13.2μm、膜厚バラツキは22%、表面粗さは5.4μmであった。
【0093】
(比較例)
平均膜厚は50.4μm、膜厚バラツキは35%、表面粗さは10.3μmであった。